説明

盗難防止システム及びそれに用いる盗難防止装置並びにそれを用いた電子機器

【課題】 盗難の有効防止を可能としたうえに、仮にPCの盗難にあってもデータの流出を効果的に防止することが可能な盗難防止システムを提供する。
【解決手段】 盗難防止用ワイヤ24と、ワイヤの一端に接続されかつ電子機器の本体に機構的にロック可能なロック部2と、ワイヤ24の他端に設けられた電池と、電池の電源をワイヤに沿って当該ワイヤの一端へ導通するための配線とを含み、ロック部2には、電子機器との間で予め定められたデータの無線通信をなす通信機能と、ロック部のロック状態に応じて電池の電源を通信機能へ供給制御するスイッチ部とが設けられており、電子機器には、ロック部内の通信機能とデータの無線通信を行ってデータ通信が途絶えた時にこれを検知して盗難を通知する信号を生成する機能12とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は盗難防止システム及びそれに用いる盗難防止装置並びにそれを用いた電子機器に関し、特に無線通信を利用した電子機器の盗難防止方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のIT(Information Technology)化の発展に伴って、広くPC(Personal computer)が普及している。PCは持ち運びが簡単なために、盗難や紛失によるデータの流出が頻発しており、特に企業にとっては、CSR(Corporate Social Responsibility)の観点から、すなわち企業の社会的責任の観点から、データの流出を防止することは、極めて重要な位置を占めるようになっていきている。
【0003】
そこで、特許文献1〜3などには、PCの盗難防止に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1を参照すると、PCをチェーンなどのワイヤにより固定物に取付けて、機構的に施錠しておき、この施錠によるロックを解除するために電子的な開錠を行う技術が提案されている。
【0004】
より具体的には、チェーンなどのワイヤの先端に取付けられたロック装置の突起部を、PCの側面に設けた鍵穴に挿入し、この状態でキーロックを行っておき、このワイヤの他端を固定物に取付けて盗難防止を図るようにしたものである。
【0005】
そして、このキーロックを解除する場合には、ロック装置に、PC本体との間の無線通信機能を設けておき、更にこのロック装置に設けられているメモリに予め開錠コードを設定して記憶しておき、PC本体側の入力部(キーボード)から当該開錠コードを入力して、この入力開錠コードとロック装置内の記憶開錠コードとが一致したときにのみキーロックを解除するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−134556号公報
【特許文献2】特開2007−255037号公報
【特許文献3】特開2007−265310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の盗難防止の技術では、チェーンなどのワイヤを切断してしまえば、PCを持ち運べるので、盗難や紛失によるデータの流出を、有効に防止することはできないという欠点がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、盗難時にPC操作を不可能とすることにより、盗難の有効防止を可能としたうえに、仮にPCの盗難にあっても、データの流出を効果的に防止することが可能な盗難防止システム及びそれに用いる盗難防止装置並びにそれを用いた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電子機器の盗難防止システムは、
盗難防止用ワイヤと、
前記ワイヤの一端に接続されかつ前記電子機器の本体に機構的にロック可能なロック部と、
前記ワイヤの他端に設けられた電池と、
前記電池の電源を前記ワイヤに沿って前記一端へ導通するための配線とを含み、
前記ロック部には、
前記電子機器との間で予め定められたデータの無線通信をなす通信手段と、前記ロック部のロック状態に応じて、前記電池の電源を前記通信手段へ供給制御するスイッチ手段とが設けられており、
前記電子機器には、
前記ロック部内の通信手段と前記データの無線通信をなす通信手段と、この通信手段によるデータ通信が途絶えた時に、これを検知して盗難を通知する信号を生成する手段とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明による、電子機器の盗難を防止するための装置は、
盗難防止用ワイヤと、
前記ワイヤの一端に接続されかつ前記電子機器の本体に機構的にロック可能なロック部と、
前記ワイヤの他端に設けられた電池と、
前記電池の電源を前記ワイヤに沿って前記一端へ導通するための配線とを含み、
前記ロック部には、
前記電子機器との間で予め定められたデータの無線通信をなす通信手段と、前記ロック部のロック状態に応じて、前記電池の電源を前記通信手段へ供給制御するスイッチ手段とが設けられており、
前記電子機器において、前記ロック部とのデータ通信が途絶えた時に、前記電子機器の機能を無効とするようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明による電子機器は、上記の盗難防止装置を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機構的な盗難防止機能の他に、電子的な盗難防止機能を付加するようにしたので、PCなどの電子機器の盗難及びデータ流出を効果的に防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の概要を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の基本動作を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるロック部2の機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるPC内蔵部12の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態の概要を示す全体斜視図であり、図2はその基本動作を説明するための斜視図である。両図において、同等部分は同一符号により示している。
【0015】
図1及び図2を参照すると、PC1と、このPC1を機構的及び電子的にロックするためのロック部2とが示されている。PC1には、その回路基板(図示せず)に組み込まれたPC内蔵部12(その機能の詳細は、後述の図4参照)が設けられている。このPC内蔵部12は、外部のロック部2のロック本体部21内に組み込まれている電子回路部分(その機能の詳細は、後述の図3参照)と近距離無線通信を行うようになっている。
【0016】
ロック部2は、図3に示す回路機能が内蔵されたロック部本体21と、このロック部本体21に一端が取付けられ他端が図示せぬ固定物に取付けられた盗難防止用のワイヤ(チェーンなどを含む)24と、ロック部本体21の先端に設けられて矢印Aのように回動自在でかつPC1の側面のロック穴11に嵌合自在なロック用突起22と、このロック用突起22を矢印Aのように回動せしめつつ施錠するための鍵穴23とを有している。
【0017】
図2に示しているように、PC1の側面のロック穴11に、ロック部2のロック用突起22を嵌合させつつ鍵穴23に図示せぬ鍵を挿入して、矢印A方向に鍵を回してロックする。そして、盗難防止用ワイヤ24の他端を、例えば、南京錠などを用いて固定物に取付ける。これにより、機構的な盗難防止が可能となる。
【0018】
しかしながら、盗難防止用ワイヤ24を切断したり、またロック部2の鍵穴23に挿入する合鍵に対しては、この機構的盗難防止は無防備となる。そこで、本発明では、この機構的盗難防止機能に、更に電子的盗難防止機能を付加しているのである。
【0019】
そのために、ロック部2のロック本体部21に、図3に示すような回路機能を内蔵し、またPC1の本体内部に、図4に示すような回路機能を内蔵しているのである。
【0020】
先ず、図3を参照すると、ロック本体部21には、無線部211と、処理部212と、記憶部213と、スイッチ部214と、電源部215とが設けられている。無線部211は、PC1におけるPC内蔵部12との近距離無線通信機能を有しており、処理部212は、無線部211及び記憶部213の制御や信号処理を行うものである。
【0021】
記憶部213は、無線通信に必要な設定値を予め記憶しておくものである。スイッチ部214は、鍵穴23に挿入された鍵と連動するようになっており、電源部215のオンオフの制御を行うものである。すなわち、鍵穴23に鍵が挿入されてロックがなされると、電源部215の電源をオンとし、ロック解除がなされると、電源部215の電源をオフとするようになっているものとする。
【0022】
この電源部215への電源供給は、ロック本体部21の外部の電池25によりなされるものであり、この電池25は、固定物に取付けられているワイヤ24の他端に装着されており、ワイヤ24内に設けられている配線26により、電源部215に接続されているものとする。
【0023】
次に、図4を参照すると、PC内蔵部12には、無線部121と、処理部122と、記憶部123と、電源部124とが設けられている。
【0024】
無線部121は、ロック部2におけるロック本体部21との近距離無線通信機能を有しており、処理部122は、無線部121及び記憶部123の制御や信号処理を行い、またPC本体とのインタフェース(IF)機能を有するものである。記憶部123は、無線通信に必要な設定値を予め記憶しておくものである。電源部124は、PC本体から電源供給を受けて、各部へ電源を供給するものである。
【0025】
ロック本体部21とPC内蔵部12とは無線通信を行い、通信ができない場合には、PC内蔵部12の処理部122が盗難と判断して、PC本体1へ通知する。このとき、PC本体1には、専用のアプリケーションソフトが予めインストールされており、PC内蔵部12の処理部122から盗難である旨の信号を受けた場合には、PC機能の一部もしくは全部を無効とする処理が行われるようになっているものとする。
【0026】
また、ロック本体部21とPC内蔵部12との通信は、1対1の通信であることが必要であるので、その通信にはユニークな情報が必要となる。そこで、ロック本体部21の記憶部213とPC内蔵部12の記憶部123には、上述したアプリケーションソフトにより、予め当該一意のユニークな情報をそれぞれに設定しておく。なお、この通信の内容の例については、後述するものとし、また、この情報の内容は個別に設定変更可能であるものとする。
【0027】
なお、ロック本体部21の記憶部213の設定内容の変更は、PC内蔵部12との無線通信データの内容によって実現可能とし、ロック本体部21の処理部212が当該記憶部213の書き換えかどうかの判断及び処理を行うものとする。
【0028】
かかる構成において、図2に示したロック状態では、電池25からケーブル26を通して電源が電源部215に供給されているので、ロック本体部21とPC内蔵部12の間で、記憶部に記憶されているユニーク情報が、予め設定されている一定間隔で通信されることになる。このときの通信間隔や通信電力は、これまたアプリケーションソフトにより任意に設定可能である。
【0029】
この状態では、PC本体1は正常に動作可能となっているが、第三者が合鍵などを用いてロック状態を解除すると、スイッチ部214がこれを検出して、電源部の電源供給をオフとする。よって、無線通信が不可能となり、PC本体部12の処理部122がこれを検出して盗難と判断し、PC本体へ通知する。これにより、PCの動作の一部または全部が停止することになる。
【0030】
また、第三者がワイヤ24を切断したとすると、これまたロック本体部21内の電源供給がなされなくなり、無線通信が不可能となる。その結果、これまたPCの動作の一部または全部が停止することになる。このように、機構的ロックの他に更に電子的ロックを併用しているので、悪意の第三者によるPCの盗難やデータの流出がより効果的に防止できることになるのである。
【0031】
なお、上記の実施の形態では、第三者ではなく、正当な使用者がこのPC1を使用する場合には、常に、ロック状態にしている必要がある。なぜなら、ロック部2のロックを外せば、ロック本体部とPC内蔵部との間の無線通信は断となってしまい、PCは盗難と判断して動作不能になるからである。
【0032】
しかしながら、正当使用者がこのローック状態を解除してPCを使用したい状況も十分に考えられる。そこで、図3に示したPC内蔵部21の機能を携帯型の端末として構成し、当該使用者のポケットに入れておいたり、PC近傍においておくという構成を採用することができる。
【0033】
この場合には、図3の電池25は、当然に、この携帯型の端末内に実装するようにしておき、図3のスイッチ部214は、省略するか、手動によるオンオフスイッチとしても良い。また、この携帯型の端末を使用する場合には、PCのアプリケーションソフトにより、当該携帯型の端末に固有の通信データに切替えて、通信相手を切替えるように構成することもできるものである。
【0034】
なお、上記実施の形態においては、PC内蔵部12をPC1内に設けるようにしているが、PCに広く用いられているUSB(Universal Serial Bus)IFに挿入して使用する、いわゆるドングル形式としても良いことは勿論である。
【0035】
ここで、PC内蔵部12とロック部本体21との通信内容の例について説明する。PC内蔵部12の記憶部123とロック部本体21の記憶部213とには、予めIDが設定されているものとする。盗難判定のための通信は、上述した様に、一定間隔で定期的に実行されるが、この場合、PC内蔵部からIDと返送要求(コマンド)とを送信し、ロック部本体は、受信データ内のIDが自身の記憶部内のIDと一致した場合には、当該IDを送信する(コマンド応答はなし)。
【0036】
ID変更を行う場合には、PC内蔵部からIDとID変更要求(コマンド)と新しいIDとを送信する。ロック部本体は、受信データ内のIDが自身の記憶部内のIDと一致した場合には、ID変更処理を行った後に、当該IDとID変更OK(コマンド応答)を送信する。
【0037】
通信間隔変更を行う場合には、PC内蔵部からIDと通信間隔変更要求(コマンド)と新通信間隔を送信する。ロック部本体は、受信データ内のIDが自身のIDと一致した場合には、IDと通信間隔変更OK(コマンド応答)を送信する。
【0038】
なお、ロック部2のロック機構については、単に一例を示したものにすぎず、機構的ロックが可能なものであれば良く、これに限定されないことは明白である。更には、例としてPCに適用した場合について説明したが、広く情報処理機能を有する電子機器に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 PC
2 ロック部
11 ロック穴
12 PC内蔵部
21 ロック本体部
22 ロック用突起
23 鍵穴
24 ワイヤ(チェーン)
25 電池
26 配線
121,211 無線部
122,212 処理部
123,213 記憶部
124,215 電源部
214 スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の盗難防止システムであって、
盗難防止用ワイヤと、
前記ワイヤの一端に接続されかつ前記電子機器の本体に機構的にロック可能なロック部と、
前記ワイヤの他端に設けられた電池と、
前記電池の電源を前記ワイヤに沿って前記一端へ導通するための配線とを含み、
前記ロック部には、
前記電子機器との間で予め定められたデータの無線通信をなす通信手段と、前記ロック部のロック状態に応じて、前記電池の電源を前記通信手段へ供給制御するスイッチ手段とが設けられており、
前記電子機器には、
前記ロック部内の通信手段と前記データの無線通信をなす通信手段と、この通信手段によるデータ通信が途絶えた時に、これを検知して盗難を通知する信号を生成する手段とが設けられていることを特徴とする盗難防止システム。
【請求項2】
前記電子機器において、前記盗難を通知する信号に応答して、前記電子機器の機能を無効とすることを特徴とする請求項1記載の盗難防止システム。
【請求項3】
前記データは、予め定められたユニークな情報であることを特徴とする請求項1または2記載の盗難防止システム。
【請求項4】
前記無線通信は一定間隔で行われることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の盗難防止システム。
【請求項5】
電池と、この電池により作動し前記電子機器との間で予め定められたデータの無線通信をなす通信手段とを内蔵した携帯型端末を、更に含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の盗難防止システム。
【請求項6】
電子機器の盗難を防止するための装置であって、
盗難防止用ワイヤと、
前記ワイヤの一端に接続されかつ前記電子機器の本体に機構的にロック可能なロック部と、
前記ワイヤの他端に設けられた電池と、
前記電池の電源を前記ワイヤに沿って前記一端へ導通するための配線とを含み、
前記ロック部には、
前記電子機器との間で予め定められたデータの無線通信をなす通信手段と、前記ロック部のロック状態に応じて、前記電池の電源を前記通信手段へ供給制御するスイッチ手段とが設けられており、
前記電子機器において、前記ロック部とのデータ通信が途絶えた時に、機器の機能を無効とするようにしたことを特徴とする盗難防止装置。
【請求項7】
前記データは、予め定められたユニークな情報であることを特徴とする請求項6記載の盗難防止装置。
【請求項8】
前記無線通信は一定間隔で行われることを特徴とする請求項6または7記載の盗難防止装置。
【請求項9】
請求項6〜8いずれか記載の盗難防止装置を用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−221929(P2011−221929A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92702(P2010−92702)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】