説明

監視装置および監視方法

【課題】より少ない負担で高い監視精度を得ることができる監視装置を提供すること。
【解決手段】監視装置100は、所定の領域を対象として移動オブジェクトの検出を行うセンサ110を用いて、移動オブジェクトを監視する監視装置であって、監視に用いられる、センサ110の検出尤度の推定値を記憶する検出尤度推定値管理部150と、センサ110の検出結果から、所定の領域に移動オブジェクトが存在することの確からしさを示すオブジェクト尤度を算出するオブジェクト尤度算出部170と、検出尤度推定値管理部150が記憶する検出尤度の推定値と、オブジェクト尤度算出部170が算出するオブジェクト尤度との比較に基づいて、検出尤度推定値管理部150が記憶する検出尤度の推定値の更新が必要であるか否かを判定する不検知領域更新判定部180と、不検知領域更新判定部180による判定結果を通知する通知部190とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の領域を対象として移動オブジェクトを監視する監視装置および監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場やオフィス等において、人物や物体の位置を含む移動体の動きを監視することが行われている。監視結果は、例えば、人物の動線や作業効率の解析に用いられ、作業環境の改善に役立てられる。
【0003】
人物等の、監視の対象であって移動するオブジェクト(以下「移動オブジェクト」という)検出には、各種のセンサが用いられる。このセンサは、例えば、カメラ撮影画像と、画像中の移動オブジェクトの位置を算出するための付随情報とを出力するカメラである。また、他のセンサとしては、移動オブジェクトに取り付けられた、もしくは移動オブジェクトが所持する無線タグからの電波を検出することによって移動オブジェクトの位置を検出するセンサである。
【0004】
センサは、機材や机等の物体の陰となる領域に移動オブジェクトが存在している場合、これを検出することができない、あるいは検出が不安定となる。以下、センサによる移動オブジェクト検出の障害となる物体を、「障害物」という。また、障害物に起因してセンサが移動オブジェクトの位置を検出することができない領域、あるいは不安定となる領域を、ここでは「不検知領域」という。
【0005】
監視装置が現在の不検知領域を管理していれば、例えば、センサによる移動オブジェクトの検出が不可能なはずの位置に移動オブジェクトが存在すると推定することを防ぐことが可能になり、高い監視精度を確保できる。
【0006】
ところが、工場やオフィスでは、製造ラインの変更や人員配置の変化に応じて、機材や机などの位置を変更することが度々行われるのが一般的であり、不検知領域も変化する。
【0007】
そこで、例えば特許文献1に記載された技術を用いて、レイアウトの変更を認識することが考えられる。
【0008】
図1は、特許文献1に開示されたレイアウト構成管理システムの構成を示すブロック図である。
【0009】
図1において、システム10は、カメラ11、画像伝送装置12、画像監視PC(personal computer)13、画像蓄積DB(database)14、ルータ15、レイアウト構成変更受付サーバ21、構成管理サーバ22、構成管理DB23、ルータ24等を有する。
【0010】
ライトタグ32は、独特な点滅を周期的に行う小型のライトを有しており、点滅の周期の違い等によって、他のライトタグ32と識別可能となっている。カメラ11は、ライトタグ32が取り付けられた管理対象機器(障害物)31を撮像し、映像信号を画像伝送装置12へ送信する。画像伝送装置12は、デジタル化した映像データを画像監視PC13へ送信する。画像監視PC13は、入力された映像データからライトタグ32の位置を判定する。このように、システム10は、ライトタグ32の位置を、障害物の位置として検出することができる。
【0011】
更に、画像監視PC13は、検出された管理対象機器31の位置と、画像蓄積DB14に記録された過去のレイアウト構成図とを比較することにより、管理対象機器31の移動があったことを検出する。画像監視PC13は、このようなレイアウト構成変更を見出すと、レイアウト構成変更通知を、ルータ15、公衆網/インターネット4を介して、サービスセンタ装置へ送信する。
【0012】
このような技術を用いることにより、各障害物の位置から、レイアウトが変更されたことが認識可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−332734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1記載のシステムは、障害物となり得る物体の全てにライトタグが必要であり、かつ、全てのライトタグとライトタグの検出のための画像処理方式との対応を常に取らなければならない。したがって、特許文献1記載のシステムは、以下のような課題を有する。まず、障害物の多くがライトタグ付きのものではない場合には、ライトタグを後付けするのに多大な労力とコストが掛かる。一方、障害物の多くがライトタグ付きのものである場合には、タグの種類変更やバージョンアップの可能性を鑑みると、汎用性に欠け、設備コストが掛かる。すなわち、いずれの場合も、高い監視精度を得るためには多大な負担が掛かる。
【0015】
本発明の目的は、より少ない負担で高い監視精度を得ることができる監視装置および監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の監視装置は、所定の領域を対象として移動オブジェクトの検出を行うセンサを用いて、前記移動オブジェクトを監視する監視装置であって、前記監視に用いられる、前記センサの検出尤度の推定値を記憶する推定値管理部と、前記センサの検出結果から、前記所定の領域に前記移動オブジェクトが存在することの確からしさを示すオブジェクト尤度を算出する尤度算出部と、前記推定値管理部が記憶する前記検出尤度の推定値と、前記尤度算出部が算出する前記オブジェクト尤度との比較に基づいて、前記推定値管理部が記憶する前記検出尤度の推定値の更新が必要であるか否かを判定する更新判定部と、前記更新判定部による判定結果を通知する通知部とを有する。
【0017】
本発明の監視方法は、所定の領域を対象として移動オブジェクトの検出を行うセンサを用いて、前記移動オブジェクトを監視する監視方法であって、前記センサの検出結果から、前記所定の領域に前記移動オブジェクトが存在することの確からしさを示すオブジェクト尤度を算出するステップと、前記監視に用いられる、予め記憶された前記センサの検出尤度の推定値と、算出された前記オブジェクト尤度との比較に基づいて、記憶された前記検出尤度の推定値の更新が必要であるか否かを判定するステップと、前記検出尤度の推定値の更新が必要であるか否かの判定結果を通知するステップとを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より少ない負担で高い監視精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のレイアウト構成管理システムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態に係る監視装置が使用される環境の概要を示す図
【図3】本実施の形態における不検知領域の判定の様子の一例を示す図
【図4】本実施の形態に係る監視装置の構成の一例を示すブロック図
【図5】本実施の形態に係る監視装置の全体動作の一例を示すフローチャート
【図6】本実施の形態における不検知領域判定処理の一例を示すフローチャート
【図7】本実施の形態における不検知領域判定部による判定結果の一例を示す図
【図8】本実施の形態における分割領域情報の記述例を示す図
【図9】本実施の形態における不検知領域番号情報の記述例を示す図
【図10】本実施の形態における検出尤度推定処理の一例を示すフローチャート
【図11】本実施の形態における検出尤度推定部による設定結果の一例を示す図
【図12】本実施の形態における検出尤度推定値情報の記述例を示す図
【図13】本実施の形態における出力画面の一例を示す図
【図14】本実施の形態における出力画面の他の例を示す図
【図15】本実施の形態における監視処理の一例を示すフローチャート
【図16】本実施の形態におけるオブジェクト尤度情報の一例を示す図
【図17】本実施の形態における更新判定処理の一例を示すフローチャート
【図18】本実施の形態におけるオブジェクト尤度と検出尤度推定値との差の一例を示す図
【図19】本実施の形態におけるオブジェクト尤度と検出尤度推定値との差の他の例を示す図
【図20】本実施の形態における通知画面の一例を示す図
【図21】本実施の形態における通知画面の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図2は、本発明の一実施の形態に係る監視装置が使用される環境の概要を示す図である。ここでは、監視装置が、工場において製品の製造を行う作業者の位置を監視する用途で使用される場合を一例として説明する。
【0022】
図2において、監視装置100は、ステレオカメラを有するセンサ110と、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置121とから成る。センサ110は、その監視領域(撮影範囲)110aを工場200内に向けて、配置されており、画像データと撮影対象の三次元位置を取得するための情報とを得ることが可能である。工場200内には、機材や机等の管理対象機器が、障害物210として存在する。センサ110は、監視領域を撮影する。そして、情報処理装置121は、センサ110で撮影された画像データと三次元位置を取得するための情報とから成るセンシング情報を解析し、作業者220の存在する位置を推定する。作業者220の存在する位置は、例えば、工場200の床面に沿って設定されたXY座標系の座標値を用いて表される。
【0023】
この際、監視装置100が、不検知領域210aの位置を示す情報(以下「不検知領域情報」という)を予め記憶していれば、不検知領域210aでは検出の精度が低いことを考慮した判定結果を生成することが可能となる。
【0024】
ところが、工場200のレイアウト変更等により障害物210の種類や位置が変化した場合には、実際の不検知領域210aは、記憶されていた不検知領域情報に対応しなくなり、監視装置100の監視精度が確保できなくなる。このような場合は、不検知領域の再設定が必要となる。
【0025】
図3は、不検知領域の判定の一例を示す図である。
【0026】
図3に示すように、まず、ユーザは、監視領域110aを分割した分割領域の代表点である計測ポイントそれぞれに、認識対象物となるマーカ300を置く。ここで、マーカ300は、予め定められた格子状の図形パターンとする。そして、図2に示す監視装置100は、撮像した画像データに対してマーカ300の図形パターンを抽出する画像認識処理を行い、マーカ300の認識レベルを算出する。そして、監視装置100は、認識レベルが閾値未満のマーカ300が置かれた計測ポイントを代表点とする分割領域を不検知領域であると判定し、不検知領域情報を生成・更新する。この結果、図3に示すように、認識できない、あるいは認識レベルの低いマーカ300aが置かれた分割領域が、不検知領域として記憶される。ユーザは、不検知領域情報の更新が終了した後に、マーカ300を撤去する。
【0027】
すなわち、不検知領域の判定には、マーカ300を各計測ポイントに配置して撤去するという作業が必要となる。また、監視装置100の監視精度を維持するためには、不検知領域の判定および不検知領域情報の更新を行う必要がある。具体的には、少なくとも、監視装置100の作業者220に対する検出の精度に影響を及ぼす変化(以下、単に「状況変化」という)がある毎に、更新を行うことが求められる。
【0028】
ユーザの負担を軽減するには、状況変化があったときにのみ、不検知領域の判定および不検知領域情報の更新を行うことが望ましい。しかしながら、例えば、障害物210の状態が変化したからといって、必ずしも不検知領域が大きく変化するとは限らない。したがって、ユーザが、状況変化が生じたといえるかどうかの判断を正しく行うことは困難である。
【0029】
そこで、本実施の形態に係る監視装置100は、状況変化が生じたか否かを逐次判定し、判定結果をユーザに通知する。これにより、ユーザは、不検知領域の判定および不検知領域情報の更新を行うべきタイミングを知ることができる。したがって、少ないユーザ負担で、高い監視精度を得ることができる。
【0030】
図4は、監視装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0031】
図4において、監視装置100は、センサ110、不検知領域判定部120、不検知領域管理部130、検出尤度推定部140、検出尤度推定値管理部150、出力部160、オブジェクト尤度算出部170、不検知領域更新判定部180、および通知部190を有する。
【0032】
センサ110は、監視領域110aを撮影し、画像データを含むセンシング情報を、不検知領域判定部120およびオブジェクト尤度算出部170へ出力する。
【0033】
不検知領域判定部120は、センサ110から入力された画像データに対して画像認識処理を行い、不検知領域を判定する。具体的には、不検知領域判定部120は、監視領域110aを分割した分割領域の代表点である計測ポイントそれぞれに置かれたマーカ300の認識レベルに基づいて、各分割領域が不検知領域か否かを判定する。そして、不検知領域判定部120は、判定結果を、不検知領域管理部130へ出力する。
【0034】
不検知領域管理部130は、不検知領域判定部120から入力された判定結果に基づき、不検知領域情報を生成・管理する。不検知領域情報は、分割領域毎に、領域番号、分割領域の基準位置の座標値、および不検知領域であるか否かを示す不検知ID(identifier)を対応付けた情報である。なお、不検知領域管理部130は、キーボード等の入力装置(図示せず)を介して、ユーザから、既存の不検知領域情報に対する編集や、新規の不検知領域情報の手入力を受け付けても良い。
【0035】
検出尤度推定部140は、不検知領域管理部130において管理されている不検知領域情報に基づいて、分割領域毎の検出尤度を推定する。そして、検出尤度推定部140は、推定した検出尤度を、分割領域毎の検出尤度推定値(後述するオブジェクト尤度算出部の作業者の画像の認識レベルの推定値)として、領域番号と対応付けて、検出尤度推定値管理部150へ出力する。
【0036】
検出尤度は、分割領域毎に算出される、状況変化の判定の基準となる値である。具体的には、当該分割領域内に作業者が存在すると推定された場合に算出されるであろう作業者の画像の認識レベルの推定値であり、分割領域が検知可能領域である場合には高く、分割領域が不検知領域である場合には低くなる傾向がある。
【0037】
検出尤度推定値管理部150は、検出尤度推定部140によって入力された検出尤度推定値に基づき、検出尤度推定値情報を生成・管理する。検出尤度推定値情報は、分割領域毎に、領域番号と、検出尤度推定値とを対応付けた情報である。
【0038】
出力部160は、不検知領域管理部130が管理する不検知領域情報の内容や、検出尤度推定値管理部150が管理する検出尤度推定値情報の内容を、液晶ディスプレイ等の表示部(図示せず)を用いて出力する。
【0039】
オブジェクト尤度算出部170は、本来の監視用の処理である作業者位置情報生成処理と、オブジェクト尤度算出処理とを行う。作業者位置情報生成処理は、不検知領域管理部130において管理されている不検知領域情報と、センサ110から入力されるセンシング情報とに基づいて、監視領域110a内を移動する作業者220の位置を推定し、作業者位置情報を生成する処理である。作業者位置情報は、作業者の位置と、作業者の画像の認識レベルとから成る。
【0040】
作業者位置情報は、例えば「(500,200),89%」のようなデータとなる。「(500,200)」は、作業者の監視領域内の位置を示す。「89%」は、「(500,200)」という位置における作業者の画像の認識レベルを示し、例えば、0〜100%の値をとり得る。
【0041】
オブジェクト尤度算出処理は、状況変化の可能性があると判断されたときに、対応する分割領域毎に、上述の認識レベルの平均値を算出する処理である。ここで、状況変化の可能性がある場合とは、検出された位置が不検知領域に存在し、かつ認識レベルの高い作業者位置情報が生成された場合、つまり不検知領域内に作業者が存在する可能性が高いと推定された場合である。また、状況変化の可能性がある場合とは、検出された位置が検知可能領域に存在し、かつ認識レベルの低い作業者位置情報が生成された場合である。
【0042】
オブジェクト尤度算出部170は、作業者220の位置を示す作業者位置情報を、通知部190へ出力する。また、オブジェクト尤度算出部170は、各分割領域の領域番号と算出した作業者の画像の認識レベルの平均値とを対応付けたオブジェクト尤度情報を、不検知領域更新判定部180へ出力する。認識レベルの平均値は、例えば、同一の分割領域で検出された作業者の画像全ての認識レベルの合計値を、その検出個数で除した値である。
【0043】
オブジェクト尤度は、抽出された各画像の認識レベルに対応した値である。したがって、オブジェクト尤度は、分割領域が検知可能領域である場合には高く、分割領域が不検知領域である場合には低くなる傾向がある。
【0044】
不検知領域更新判定部180は、検出尤度推定値管理部150が管理する検出尤度推定値と、オブジェクト尤度算出部170から入力されたオブジェクト尤度情報を各分割領域毎に比較することにより、状況変化があったか否かを判定する。すなわち、不検知領域更新判定部180は、不検知領域情報の更新が必要か否かを判定する。そして、不検知領域更新判定部180は、不検知領域情報の更新が必要であると判定したときに、その旨を示す更新通知情報を、通知部190へ出力する。
【0045】
状況変化が無い場合には、各分割領域のオブジェクト尤度の変化は小さく、分割領域毎のオブジェクト尤度と検出尤度推定値との差も小さい。しかし、状況変化があった場合には、オブジェクト尤度の変化は大きくなり、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差も大きくなる。また、より大きな状況変化があるほど、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差はより大きくなる。そこで、不検知領域更新判定部180は、上述の数値範囲が揃えられた状態において、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差の大小に基づいて、状況変化の有無、つまり不検知領域情報の更新が必要か否かを判定する。
【0046】
通知部190は、更新通知情報の通知の他に、オブジェクト尤度算出部170から入力される作業者位置情報の内容を、上述の表示部を用いて出力する。また、通知部190は、不検知領域更新判定部180から更新通知情報が入力されたとき、不検知領域情報の内容を表示部により出力する。
【0047】
なお、監視装置100は、図示しないが、例えば、CPU(central processing unit)、制御プログラムを格納したROM(read only memory)、RAM(random access memory)等の作業用メモリを有する。この場合、監視装置100は、CPUにおける制御プログラムの実行によって、上述した各部の機能を実現する。
【0048】
このような構成を有する監視装置100は、作業者位置情報生成処理を実行することにより、作業者220の位置を、リアルタイムで監視して画像表示することができる。また、監視装置100は、作業者位置情報生成処理において推定される作業者220の位置に対するオブジェクト尤度を用いて、監視領域の状況変化の有無を判定する。これにより、本実施の形態の監視装置100は、不検知領域情報の更新が必要である旨をユーザに通知することができる。
【0049】
次に、監視装置100の動作について説明する。
【0050】
図5は、監視装置100の全体動作の一例を示すフローチャートである。
【0051】
図5に示すように、監視装置100は、不検知領域判定処理(S1000)、検出尤度推定処理(S2000)、および監視処理(S3000)を、この順序で実行する。不検知領域判定処理は、不検知領域情報を得るための処理である。検出尤度推定処理は、分割領域毎の検出尤度推定値を得るための処理である。監視処理は、作業者220の監視および不検知領域情報の更新の通知を行うための処理である。
【0052】
図6は、不検知領域判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
まず、ステップS1100において、センサ110は、監視領域110aを撮影し、画像データを不検知領域判定部120へ出力する。このとき、監視領域110aの各分割領域の代表点である計測ポイントにはそれぞれ、マーカ300が置かれた状態となっている(図3参照)。センサ110は、全ての計測ポイントにマーカ300が置かれた状態で、1回で全てのマーカ300の撮影を行っても良いし、マーカ300を移動させながら複数回に分けて撮影を行っても良い。
【0054】
そして、ステップS1200において、不検知領域判定部120は、分割領域を1つ選択する。各分割領域の位置および領域番号は、予め不検知領域判定部120に設定されている。
【0055】
そして、ステップS1300において、不検知領域判定部120は、画像データのうち選択中の分割領域に対応する部分に対して、マーカ300の図形パターンを抽出する画像認識処理を行い、マーカ300の認識レベルを算出する。画像認識処理は、例えば、画像特徴量の抽出と、予め用意された格子点の画像の画像特徴量とのパターンマッチングとにより行われる。
【0056】
そして、ステップS1400において、不検知領域判定部120は、例えば、検出された格子点の数が予め定められた第1の閾値を超えているか否かを判定する。不検知領域判定部120は、格子点の数が第1の閾値を超えている場合には(S1400:YES)、ステップS1500へ進み、格子点の数が第1の閾値以下の場合には(S1400:NO)、ステップS1600へ進む。
【0057】
ステップS1500において、不検知領域判定部120は、選択中の分割領域を検知可能領域と判定し、判定結果を不検知領域管理部130へ出力して、ステップS1700へ進む。
【0058】
また、ステップS1600において、不検知領域判定部120は、選択中の分割領域を不検知領域と判定し、判定結果を不検知領域管理部130へ出力して、ステップS1700へ進む。
【0059】
ステップS1700において、不検知領域判定部120は、全ての分割領域について不検知領域の判定を完了したか否かを判断する。不検知領域判定部120は、未処理の分割領域が残っている場合には(S1700:NO)、ステップS1200へ戻り、未処理の分割領域を1つ選択して処理を繰り返す。不検知領域判定部120は、全ての分割領域について処理を完了した場合には(S1700:YES)、ステップS1800へ進む。
【0060】
図7は、不検知領域判定部120による判定結果の一例を示す図である。
【0061】
図7に示すように、不検知領域判定部120は、例えば、監視領域110aをX軸およびY軸に沿って3×3マトリクス状に分割した9個の分割領域のそれぞれを、領域番号によって識別する。
【0062】
例えば、領域番号6、8の分割領域に置かれたマーカ300が、充分な認識レベルで検出されなかった(つまり、認識された格子点の数が第1の閾値以下であった)とする。この場合、不検知領域判定部120は、領域番号6、8の分割領域を、不検知領域と判定し、その他の分割領域を、検知可能領域と判定する。
【0063】
図6のステップS1800において、不検知領域管理部130は、不検知領域判定部120から入力された判定結果に基づいて、不検知領域情報を生成し、生成した不検知領域情報を登録する。登録された不検知領域情報は、不検知領域管理部130によって、他の装置部から読み出し可能な状態で管理される。不検知領域情報は、例えば、各分割領域の位置情報をリスト化した分割領域情報と、不検知領域の領域番号をリスト化した不検知領域番号情報とから成る。
【0064】
図8は、分割領域情報の記述例を示す図である。
【0065】
図8に示すように、分割領域情報410は、領域番号411に対応付けて、X軸座標値412およびY軸座標値413を記述する。X軸座標値412およびY軸座標値413は、分割領域の基準位置の座標値である。
【0066】
図9は、不検知領域番号情報の記述例を示す図である。
【0067】
図9に示すように、不検知領域番号情報420は、不検知ID421に対応付けて、領域番号422を記述する。
【0068】
ここで、分割領域の大きさは所定の固定値であり、分割領域の基準位置は分割領域の中心位置であるものとする。この場合、分割領域情報410および不検知領域番号情報420を参照することにより、監視領域110aの任意の位置が、どの分割領域に属するか、および不検知領域に属するか否かを、容易に判断することができる。
【0069】
このような不検知領域判定処理により、監視装置100は、監視領域110aの不検知領域情報を得ることができる。
【0070】
図10は、検出尤度推定処理の一例を示すフローチャートである。
【0071】
まず、ステップS2100において、検出尤度推定部140は、分割領域を1つ選択する。この選択は、例えば、不検知領域管理部130に登録された不検知領域情報のうち、分割領域情報(図8参照)に記述された領域番号を選択することにより行われる。
【0072】
そして、ステップS2200において、検出尤度推定部140は、選択中の分割領域が不検知領域であるか否かを判断する。この判断は、例えば、不検知領域管理部130に登録された不検知領域情報のうち、不検知領域番号情報(図9参照)に、選択中の領域番号が記述されているか否かを判断することにより行われる。検出尤度推定部140は、選択中の分割領域が不検知領域である場合には(S2200:YES)、ステップS2300へ進み、選択中の分割領域が検知可能領域である場合には(S2200:NO)、ステップS2400へ進む。
【0073】
ステップS2300において、検出尤度推定部140は、選択中の分割領域の検出尤度推定値を「0」に設定し、ステップS2500へ進む。
【0074】
一方、ステップS2400において、検出尤度推定部140は、選択中の分割領域が、不検知領域と隣接するか否かを判断する。検出尤度推定部140は、選択中の分割領域が不検知領域と隣接する場合には(S2400:YES)、ステップS2700へ進み、選択中の分割領域が不検知領域と隣接しない場合には(S2400:NO)、ステップS2800へ進む。
【0075】
ステップS2700において、検出尤度推定部140は、選択中の分割領域の検出尤度推定値を「50」に設定し、ステップS2500へ進む。
【0076】
また、ステップS2800において、検出尤度推定部140は、選択中の分割領域の検出尤度推定値を「100」に設定し、ステップS2500へ進む。
【0077】
そして、ステップS2500において、検出尤度推定部140は、全ての分割領域について検出尤度推定値の設定を完了したか否かを判断する。検出尤度推定部140は、未処理の分割領域が残っている場合には(S2500:NO)、ステップS2100へ戻り、未処理の分割領域を1つ選択して処理を繰り返す。検出尤度推定部140は、全ての分割領域について処理を完了した場合には(S2500:YES)、ステップS2600へ進む。
【0078】
図11は、検出尤度推定部140による設定結果の一例を示す図である。
【0079】
ここでは、図7〜図9で説明した例の不検知領域情報430が、不検知領域管理部130に管理されているものとする。この場合、図11に示すように、設定される検出尤度推定値情報440は、不検知領域(領域番号6、8)を「0」とし、検知可能領域のうち不検知領域から遠い領域(領域番号1、2、4)を「100」とする内容となる。また、設定される検出尤度推定値440は、残りの領域(領域3、5、7、9)を「50」とする内容となる。
【0080】
ある分割領域の大部分を陰とする大きな障害物の端部は、通常、隣接する他の分割領域に掛かり、隣接する分割領域を部分的に陰にする。このような部分的に陰となる分割領域では、作業者220の認識レベルに低い値と高い値とが混在することになり、作業者220の認識レベルの平均値は中間値となる。したがって、検出尤度推定部140は、不検知領域(大部分が陰となる分割領域)に隣接する分割領域(部分的に陰となる分割領域)を中間値「50」とする。これにより、検出尤度推定部140は、作業者220の認識レベルにより近い値を、検出尤度推定値として得ることができる。
【0081】
以上のように、検出尤度推定部140は、選択中の分割領域の不検知領域との領域間距離に応じて、検出尤度推定値を設定する。なお、検出尤度推定部140は、選択中の分割領域の不検知領域との領域間距離に応じて、更に細分化された検出尤度推定値を設定してもよい。領域間距離は、例えば、分割領域の計測ポイントと不検知領域の計測ポイントとの間の距離である。この場合、領域間距離と検出尤度推定値との関係は、例えば、正比例関数、二次関数、量子化関数で定義される関係を採用することができる。
【0082】
図10のステップS2600において、検出尤度推定部140は、各分割領域の設定結果を検出尤度推定値管理部150へ出力する。検出尤度推定値管理部150は、入力された設定結果に基づいて、検出尤度推定値情報を生成し、生成した検出尤度推定値情報を登録する。登録された検出尤度推定値情報は、検出尤度推定値管理部150によって、他の装置部から読み出し可能な状態で管理される。
【0083】
図12は、検出尤度推定値情報の記述例を示す図である。
【0084】
図12に示すように、検出尤度推定値情報440は、領域番号441に対応付けて、検出尤度推定値442を記述する。
【0085】
なお、出力部160は、例えば、ユーザからの指示入力をトリガとして、監視領域110aの撮影画像に、各分割領域が不検知領域であるか否かを示す画像を、対応する分割領域の位置で重畳して表示部に表示する。または、出力部160は、監視領域110aの撮影画像を、検出尤度推定値が低い分割領域ほど見え難くした状態で、表示部に表示する。これらの場合には、出力部160は、センサ110から出力される画像データを入力するか、予め監視領域110aの撮影画像を記憶しておく必要がある。
【0086】
図13および図14は、表示部で表示される出力画面の例を示す図である。
【0087】
図13に示すように、出力画面450は、例えば、撮影画像に、分割領域の境界線を重畳して表示する。また、出力画面450は、不検知領域に対応する領域の撮影画像を半透明に遮蔽して見え難くする。これにより、監視装置100は、ユーザに対して、映し出された監視領域110aの不検知領域を、作業者220が存在し得る領域として通知することができる。
【0088】
また、図14に示すように、出力画面460は、例えば、各分割領域の検出尤度推定値を数値や色で示しても良い。これにより、監視装置100は、ユーザに対して、監視領域110aの各所の検出尤度推定値の詳細を通知することができる。
【0089】
このような検出尤度推定処理により、監視装置100は、監視領域110aの検出尤度推定値情報を得ることができる。
【0090】
図15は、監視処理の一例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、ステップS3100において、オブジェクト尤度算出部170は、フラグ(flg)に初期値として、「false」を設定する。このフラグは、状況変化の可能性があることを検出するために用いられるフラグである。
【0092】
そして、ステップS3200において、センサ110は、監視領域110aを撮影し、画像データをオブジェクト尤度算出部170へ出力する。このとき、監視領域110aの検知可能領域に作業者220が存在すれば、その姿が撮影画像に映し出される。
【0093】
そして、ステップS3300において、オブジェクト尤度算出部170は、撮影画像のうち選択中の分割領域に対応する部分に対して、作業者220の画像を検出する画像認識処理を行う。
【0094】
そして、ステップS3400において、オブジェクト尤度算出部170は、作業員220の画像が検出されたか否かを判断する。オブジェクト尤度算出部170は、作業員220の画像が検出された場合には(S3400:YES)、ステップS3500へ進み、作業員220の画像が検出されない場合には(S3400:NO)、後述のステップS4100へ進む。
【0095】
そして、ステップS3500において、オブジェクト尤度算出部170は、検出された作業者220の画像を1つ選択し、画像の認識レベルを算出する。
【0096】
ここでは、オブジェクト尤度算出部170は、検出尤度推定値が取り得る数値範囲と同一の数値範囲において、認識レベルを算出するものとする。より具体的には、オブジェクト尤度算出部170は、例えば、作業者220の画像が全く認識されなかった場合、認識されたものの不鮮明の場合、あるいは画像の大きさが小さい場合には、認識レベルを「0」とする。また、オブジェクト尤度算出部170は、例えば、作業者220の全身の鮮明な画像が認識されたときや、画像の大きさが大きいとき、認識レベルを「100」とする。また、オブジェクト尤度算出部170は、作業者220の画像の認識の度合いに応じて、認識レベルを決定する。例えば、オブジェクト尤度算出部170は、作業者220の画像が認識されたものの、その画像が全身ではないときには、全身の何割が認識されたかに応じて、認識レベルを決定する。オブジェクト尤度算出部170は、例えば、パターンマッチングの対象となる複数の身体部品のうち認識された部品の割合に応じて、認識レベルと決定する。また、例えば、オブジェクト尤度算出部170は、作業者220の画像が認識されたものの、その画像が不鮮明であるときには、どの程度不鮮明であるかに応じて、認識レベルを決定する。オブジェクト尤度算出部170は、例えば、パターンマッチングの際に算出される相関係数の大小に応じて、認識レベルを決定する。
【0097】
そして、ステップS3600において、オブジェクト尤度算出部170は、選択中の分割領域が不検知領域であるか否かを判断する。この判断は、例えば、不検知領域管理部130に登録された不検知領域情報のうち、不検知領域番号情報(図9参照)に、選択中の領域番号が記述されているか否かを判断することにより行われる。オブジェクト尤度算出部170は、選択中の分割領域が不検知領域ではない場合(検知可能領域である場合)には(S3600:NO)、ステップS3700へ進む。
【0098】
ステップS3700において、オブジェクト尤度算出部170は、算出された認識レベルが予め定められた第2の閾値を超えているか否かを判断する。オブジェクト尤度算出部170は、認識レベルが第2の閾値を超えている場合には(S3700:YES)、ステップS3800へ進む。
【0099】
ステップS3800において、オブジェクト尤度算出部170は、認識された作業者220の作業者位置情報を生成し、生成した作業者位置情報を、通知部190へ出力し、ステップS4000へ進む。この結果、作業者220の位置が、表示部における画像表示によってユーザに通知される。例えば、通知部190は、監視領域110aの撮影画像に、作業者220の位置を示すアイコンを、作業者位置情報が示す位置で重畳して表示する。この場合には、通知部190は、センサ110から出力される画像データを入力するか、予め監視領域110aの撮影画像を記憶しておく必要がある。
【0100】
また、オブジェクト尤度算出部170は、選択中の分割領域が不検知領域である場合(S3600:YES)には、ステップS3750へ進む。
【0101】
ステップS3750において、オブジェクト尤度算出部170は、オブジェクト尤度算出部170は、算出された認識レベルが予め定められた第3の閾値を超えているか否かを判断する。オブジェクト尤度算出部170は、認識レベルが第3の閾値以下である場合には(S3750:YES)、そのままステップS3800へ進む。
【0102】
一方、オブジェクト尤度算出部170は、選択中の分割領域が検知可能領域であるにもかかわらず認識レベルが第2の閾値以下である場合には(S3700:NO)、ステップS3900へ進む。また、オブジェクト尤度算出部170は、選択中の分割領域が不検知領域であるにもかかわらず認識レベルが第3の閾値を超えている場合も(S3750:NO)、ステップS3900へ進む。
【0103】
ステップ3900において、オブジェクト尤度算出部170は、フラグ(flg)に「true」に設定して、ステップS3800へ進む。すなわち、登録された不検知領域情報において、次の場合には、フラグが「true」となる。フラグが「true」となるのは、不検知領域であるにもかかわらず作業者220が高い認識レベルで検出された場合、または、検知可能領域であるにもかかわらず作業者220が低い認識レベルで検出された場合である。なお、第2の閾値および第3の閾値は、経験または実験から求められる、所定の監視精度を確保するのに適切な値である。
【0104】
そしてステップS4000において、オブジェクト尤度算出部170は、全ての作業員220の画像について認識レベルの判定を完了したか否かを判断する。オブジェクト尤度算出部170は、未処理の作業員220の画像が残っている場合には(S4000:NO)、ステップS3500へ戻り、未処理の作業員220の画像を1つ選択して処理を繰り返す。オブジェクト尤度算出部170は、全ての作業員220の画像について処理を完了した場合には(S4000:YES)、ステップS4100へ進む。
【0105】
ステップS4100において、オブジェクト尤度算出部170は、フラグ(flg)が「true」となっているか否かを判断する。すなわち、オブジェクト尤度算出部170は、不検知領域となっているにもかかわらず作業者220が高い認識レベルで検出されたか、および検知可能領域となっているにもかかわらず作業者220が低い認識レベルで検出されたかを判断する。オブジェクト尤度算出部170は、フラグが初期値「false」のままとなっている場合には(S4100:NO)、ステップS4200へ進む。一方、オブジェクト尤度算出部170は、フラグが「true」となっている場合には(S4100:YES)、ステップS4300へ進む。
【0106】
ステップS4300において、オブジェクト尤度算出部170は、分轄領域毎の認識レベルの蓄積を開始する。
【0107】
そして、ステップS4400において、オブジェクト尤度算出部170は、認識レベルの蓄積を開始してから、予め定めた一定時間が経過したか否かを判断する。オブジェクト尤度算出部170は、一定時間が経過していない場合には(S4400:NO)、ステップS4200へ進み、一定時間が経過した場合には(S4400:YES)、ステップS4500へ進む。
【0108】
ステップS4500において、オブジェクト尤度算出部170は、分轄領域毎に、蓄積された認識レベルの平均値を、オブジェクト尤度として算出し、オブジェクト尤度情報を不検知領域更新判定部180へ出力する。
【0109】
図16は、オブジェクト尤度情報の一例を示す図である。
【0110】
図16に示すように、オブジェクト尤度情報470は、分轄領域毎のオブジェクト尤度を含む。上述のように部分的に陰となる分割領域では、時刻毎に作業者220の認識レベルにばらつきが出る。また、できるだけ多くの分轄領域について作業者220が存在するときの認識レベルが取得されることが望ましい。したがって、本実施の形態では、一定時間に得られた認識レベルの平均値を採用することにより、センサ110の実際の認識レベルをより正確に示す指標として、オブジェクト尤度を得ることができる。
【0111】
そして、ステップS4600において、不検知領域更新判定部180は、更新判定処理を実行する。更新判定処理は、不検知領域情報の更新が必要か否かを判定する処理である。
【0112】
そして、ステップS4700において、オブジェクト尤度算出部170は、フラグ(flg)を初期状態の「false」に戻し、ステップS4200へ進む。
【0113】
ステップS4200において、オブジェクト尤度算出部170は、監視処理を継続するか否かを判断する。例えば、オブジェクト尤度算出部170は、ユーザ操作により監視処理の終了が指示された場合には監視処理を終了すると判断し、その他の場合には監視処理を継続すると判断する。オブジェクト尤度算出部170は、監視処理を継続すると判断した場合には(S4200:YES)、ステップS3200へ戻り、監視処理を終了すると判断した場合には(S4200:NO)、一連の処理を終了する。
【0114】
このような監視処理により、監視装置100は、状況変化があった可能性があると判断したとき、分轄領域毎のオブジェクト尤度を算出し、算出したオブジェクト尤度に基づいて、更新判定処理を行うことができる。
【0115】
なお、更新判定処理を開始する条件は、上述の例に限定されない。監視装置100は、例えば、定期的に、または認識レベルの値が一定個数蓄積される毎に、認識レベルの蓄積およびオブジェクト尤度の算出を行った上で更新判定処理を行っても良い。
【0116】
図17は、更新判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0117】
まず、ステップS4610において、不検知領域更新判定部180は、分轄領域を1つ選択する。この選択は、例えば、オブジェクト尤度情報に含まれる領域番号の中から1つの領域番号を選択することによって行われる。なお、不検知領域更新判定部180は、オブジェクト尤度算出部170からのオブジェクト尤度が「0」の分割領域を選択対象から除外しても良い。このような分割領域は、作業者220が存在しなかったのか、それとも不検知領域であるために作業者220が存在していても検出できなかったのかが不明だからである。
【0118】
そして、ステップS4620において、不検知領域更新判定部180は、選択中の分轄領域のオブジェクト尤度と、選択中の分割領域の検出尤度推定値との差が、予め定められた第4の閾値を超えるか否かを判断する。不検知領域更新判定部180は、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差が第4の閾値を超えている場合には(S4620:YES)、ステップS4630へ進む。一方、不検知領域更新判定部180は、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差が第4の閾値以下である場合には(S4620:NO)、後述のステップS4640へ進む。
【0119】
ステップS4630において、不検知領域更新判定部180は、初期値を「0」とする内部カウンタのカウント値を1つ増加させ、ステップS4640へ進む。
【0120】
そして、ステップS4640において、不検知領域更新判定部180は、全ての分割領域について、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差と第4の閾値との比較を完了したか否かを判断する。不検知領域更新判定部180は、未処理の分割領域が残っている場合には(S4630:NO)、ステップS4610へ戻り、未処理の分割領域を1つ選択して処理を繰り返す。不検知領域更新判定部180は、全ての分割領域について処理を完了した場合には(S4630:YES)、ステップS4650へ進む。
【0121】
すなわち、オブジェクト尤度との検出尤度推定値との差が大きい分轄領域が多ければ多いほど、カウント値は大きくなる。
【0122】
図18は、状況変化が無い場合の、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差の一例を示す図である。また、図19は、状況変化があった場合の、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差の一例を示す図である。
【0123】
図18に示すように、状況変化が無い場合、オブジェクト尤度情報470における各分割領域のオブジェクト尤度は、検出尤度推定値情報440で示される当該分割領域の検出尤度推定値との差が少ない。したがって、各分割領域の演算結果480の値は小さい。ここでは、図17のステップ4620の第4の閾値を「20」とする。この場合、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差が第4の閾値を超える分割領域は1個であり、カウント値は「1」となる。
【0124】
一方、図19に示すように、状況変化があった場合、各分割領域のオブジェクト尤度情報470の値は、検出尤度推定値情報440で示される当該分割領域の検出尤度推定値との差が大きい。したがって、各分割領域の演算結果480の値は大きい。ここで、第4の閾値を「20」とした場合、差が第4の閾値を超える分割領域は6個であり、カウント値は「6」となる。
【0125】
図17のステップS4650において、不検知領域更新判定部180は、カウント値が予め定められた第5の閾値を超えているか否かを判断する。不検知領域更新判定部180は、カウント値が第5の閾値以下である場合には(S4650:NO)、ステップS4660へ進み、カウント値が第5の閾値を超えている場合には(S4650:YES)、ステップS4670へ進む。
【0126】
ステップS4660において、不検知領域更新判定部180は、状況変化なしと判定し、不検知領域情報の更新が必要ではないことを示す更新通知情報を、通知部190へ出力する。不検知領域更新判定部180は、通知部190へ所定の信号を出力しないことをもって、かかる更新通知情報の出力としても良い。
【0127】
一方、ステップS4670において、不検知領域更新判定部180は、状況変化ありと判定し、不検知領域情報の更新が必要であることを示す更新通知情報を、通知部190へ出力する。不検知領域更新判定部180は、通知部190へ所定の信号を出力することをもって、かかる更新通知情報の出力としても良い。通知部190に更新通知情報が入力された結果、不検知領域情報の内容が、表示部から出力される。
【0128】
監視装置100は、ステップ4650の第5の閾値を「2」とした場合、図18に示す例では、カウント値が第5の閾値以下であるため、状況変化なしと判定し、図19に示す例では、カウント値が第5の閾値を超えるため、状況変化ありと判定して通知を行う。
【0129】
このような更新判定処理により、監視装置100は、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差に基づいて、監視領域110aに状況変化があったか否かを判定し、判定結果をユーザに通知することができる。
【0130】
なお、状況変化があったか否かの判定基準は、上述の例に限定されない。
【0131】
例えば、ステップS4620の第4の閾値は、比較の対象となるオブジェクト尤度または検出尤度推定値の大きさに応じた可変値としても良い。具体的には、例えば、不検知領域更新判定部180は、オブジェクト尤度が中間的な値である場合には、より高い値を第4の閾値として採用する。これにより、センシング情報のノイズによる判定への影響を抑えることが可能となる。
【0132】
また、例えば、不検知領域更新判定部180は、オブジェクト尤度と検出尤度推定値との差の絶対値の監視領域全体での合計値に基づいて、状況変化があったか否かを判定しても良い。これにより、局所的に大きなオブジェクト尤度の変化があったような場合にも、的確な判定を行うことが可能となる。
【0133】
また、例えば、不検知領域更新判定部180は、監視領域内のオブジェクト尤度または検出尤度推定値の分布を考慮して、状況変化があったか否かの判定を行っても良い。具体的には、例えば、不検知領域更新判定部180は、監視領域上でのオブジェクト尤度の変化が大きい場所と、監視領域上での検出尤度推定値の変化が大きい場所とが、一致しているか否かに基づいて、上記判定を行う。
【0134】
図20および図21は、表示部における通知画面の例を示す図である。
【0135】
図20に示すように、通知画面490は、例えば、不検知領域情報の更新が必要であるとき、予め定められた図形を、表示部に表示される出力画面450(図13参照)に重畳して表示する形態を取る。
【0136】
また、図21に示すように、通知画面490は、例えば、図形ではなく、不検知領域の設定を促すテキスト文のメッセージを表示しても良い。
【0137】
以上説明したように、本実施の形態によれば、監視装置100は、分割領域毎に、不検知領域であるか否かに対応する検出尤度推定値と、作業者の画像の実際の認識レベルに対応するオブジェクト尤度との差を算出する。そして、監視装置100は、算出した差に基づいて、検出尤度に影響を及ぼす変化があったか否かを判定し、判定結果をユーザに通知する。これにより、ユーザは、不検知領域情報の更新が必要となったときにこれを知ることが可能となり、むやみに不検知領域の判定を実施することなく、監視装置に記憶された不検知領域を正しい情報に保つことができる。すなわち、より少ない負担で高い監視精度を得ることができる。
【0138】
また、本実施の形態に係る監視装置は、本来の監視用の処理において算出される情報を活用して上記判定を行うので、既存の監視装置に対する軽微な変更により実現することができる。
【0139】
なお、作業者の検出には、タグリーダ等、他の各種センサを用いることができる。タグリーダの場合には、作業者に取り付けられるタグと同種のタグを、不検知領域を判定するための試験オブジェクトとして用意する。また、この場合、不検知領域判定部およびオブジェクト尤度算出部が判定する認識レベルは、例えば、電解強度に対応した値となる。
【0140】
また、複数のセンサを用いて監視を行う場合には、個別に不検知領域の更新判定処理を行うことが望ましい。センサ毎に不検知領域が異なる場合があるからである。
【0141】
また、本発明は、工場の作業者の他、オフィスの事務員、学校の児童、市街地の車両等、移動オブジェクトを監視する各種の監視装置および監視方法に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明に係る監視装置および監視方法は、より少ない負担で高い監視精度を得ることができる監視装置および監視方法として有用である。すなわち、監視領域の不検知領域の更新を効率よく行うことが出来る効果があるため、工場、オフィスなどの人物の位置特定技術に特に有用である。
【符号の説明】
【0143】
100 監視装置
110 センサ
110a 監視領域
120 不検知領域判定部
121 情報処理装置
130 不検知領域管理部
140 検出尤度推定部
150 検出尤度推定値管理部
160 出力部
170 オブジェクト尤度算出部
180 不検知領域更新判定部
190 通知部
200 工場
200a 検知可能領域
210 障害物
220 作業者
210a 不検知領域
300 マーカ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域を対象として移動オブジェクトの検出を行うセンサを用いて、前記移動オブジェクトを監視する監視装置であって、
前記監視に用いられる、前記センサの検出尤度の推定値を記憶する推定値管理部と、
前記センサの検出結果から、前記所定の領域に前記移動オブジェクトが存在することの確からしさを示すオブジェクト尤度を算出する尤度算出部と、
前記推定値管理部が記憶する前記検出尤度の推定値と、前記尤度算出部が算出する前記オブジェクト尤度との比較に基づいて、前記推定値管理部が記憶する前記検出尤度の推定値の更新が必要であるか否かを判定する更新判定部と、
前記更新判定部による判定結果を通知する通知部と、
を有する監視装置。
【請求項2】
前記推定値管理部は、
前記所定の領域を分割した分割領域毎に前記検出尤度の推定値を記憶し、
前記尤度算出部は、
前記分割領域毎に前記オブジェクト尤度を算出し、
前記更新判定部は、
前記分割領域毎の前記オブジェクト尤度と前記検出尤度の推定値との差に基づいて前記判定を行う、
請求項1記載の監視装置。
【請求項3】
前記更新判定部は、
複数の前記分割領域における前記オブジェクト尤度の平均値と、複数の前記分割領域における前記検出尤度の推定値の平均値との差に基づいて、前記判定を行う、
請求項2記載の監視装置。
【請求項4】
前記更新判定部は、
複数の前記分割領域における前記オブジェクト尤度の合計値と、複数の前記分割領域における前記検出尤度の推定値の合計値との差に基づいて、前記判定を行う、
請求項2記載の監視装置。
【請求項5】
前記分割領域のそれぞれに試験オブジェクトを配置したときの、前記センサの前記試験オブジェクトに対する認識レベルから、前記センサの検出尤度の推定値を求める検出尤度推定部、を更に有する、
請求項2記載の監視装置。
【請求項6】
前記検出尤度推定部は、
前記認識レベルが最も高い前記分割領域に対して最も高い前記検出尤度の推定値を設定し、前記認識レベルが最も低い前記分割領域に対して最も低い前記検出尤度の推定値を設定し、かつ、他の前記分割領域に対して前記所定の領域全体において平滑化された前記検出尤度の推定値を設定する、
請求項5記載の監視装置。
【請求項7】
所定の領域を対象として移動オブジェクトの検出を行うセンサを用いて、前記移動オブジェクトを監視する監視方法であって、
前記センサの検出結果から、前記所定の領域に前記移動オブジェクトが存在することの確からしさを示すオブジェクト尤度を算出するステップと、
前記監視に用いられる、予め記憶された前記センサの検出尤度の推定値と、算出された前記オブジェクト尤度との比較に基づいて、記憶された前記検出尤度の推定値の更新が必要であるか否かを判定するステップと、
前記検出尤度の推定値の更新が必要であるか否かの判定結果を通知するステップと、
を有する監視方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−35663(P2011−35663A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179893(P2009−179893)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】