説明

監視装置及び放送電波再送信システム

【課題】放送電波再送信システムの異常時に、その旨を携帯機用の公衆パケット通信網を介して監視センタに通知するよう構成された監視装置において、監視センタへの異常通知に失敗した際、その原因を簡単且つ正確に識別できるようにする。
【解決手段】監視装置6においては、監視制御部94が、当該システムを構成する分岐装置8や送信増幅器10から、その動作状態を表す監視データを取得し、その取得した監視データからシステムの異常を検出すると、その旨を監視センタに通知するための通知データを生成して通信制御部91に送信する。すると、通信制御部91は、この通知データを、パケット通信モジュール90を介して外部の監視センタに通知するが、この通知データの送信時には、通知データの送信が正常に行われたか否かを監視して、通知データの送信に異常が生じた場合には、その旨を送信異常履歴としてEEPROM91dに格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送局からの放送電波を受信してその電波が届かない領域に再送信する放送電波再送信システムにおいて、その動作状態を監視して異常発生時にその旨を外部の監視センタに通知するのに好適な監視装置、及び、その監視装置を備えた放送電波再送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工衛星を利用した移動体用のデジタル放送(モバイル放送)が実用化されている。そして、このモバイル放送では、人工衛星からの放送電波が届かない場所(ビル陰地域、地下街、トンネル内等)でも、放送電波を受信できるように、その放送電波を再送信することが行われている。
【0003】
こうした放送電波の再送信システムは、所謂ギャップフィラー装置として知られており、一般的には、まず、人工衛星から送信された放送電波を受信アンテナにて受信し、その受信信号を増幅装置等で増幅したり、ダウンコンバータ等で周波数変換することにより再送信用の放送信号を生成し、その生成した放送信号を、放送電波が届かない地域に設置された送信増幅器まで伝送して、送信増幅器にて放送信号を増幅させ、その増幅後の放送信号を送信アンテナに入力することで、送信アンテナから放送電波を再送信させるように構成されている。
【0004】
また、この種の再送信システムには、通常、送信増幅器への放送信号の入力レベルや送信増幅器から送信アンテナへの放送信号の出力レベル等を検出することにより、システムの動作状態を監視する監視装置が設けられており、監視装置が、システムの異常を検出すると、その旨を外部の監視センタに自動で通知するようにされている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【特許文献1】特開2003−332964号公報
【特許文献2】特開2004−248078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした放送電波再送信システムにおいて、システム内の監視装置から外部の監視センタに異常を通知する際には、通常、配線が不要な無線通信が利用される。また、無線通信でも、システム専用の無線通信回線を利用するようにすると、専用の無線端末を設置しなければならず、コストアップになるので、携帯機(携帯電話や携帯型情報端末)用のパケット通信網を利用するのが一般的である。
【0006】
しかしながら、監視装置から監視センタへのシステム異常の通知に、携帯機用の公衆パケット通信網を利用すると、時間帯によっては、他の携帯機から基地局へのアクセスが集中することによって、監視装置から監視センタへシステム異常を通知できなくなることがある。
【0007】
そして、このように監視装置から監視センタへシステム異常を通知できなかった場合、システム管理者は、利用者から放送電波を受信できない旨の苦情を受けて、再送信システムの点検・修理等の対策を行うことになるが、その点検・修理の際には、監視装置の点検も行わなければならず、その作業が煩雑になるという問題があった。
【0008】
つまり、監視装置から監視センタへシステム異常を通知できなかった原因としては、監視装置自体の故障(突発的な故障も含む)によるものと、上述した公衆パケット通信網の混雑によるものと、の2つが考えられるが、従来では、監視装置から監視センタへシステム異常を通知できなかった場合に、その原因が公衆パケット通信網の混雑によるものであるかどうかを判定することができなかった。
【0009】
このため、監視装置から監視センタへシステム異常を通知できなかった場合、従来では、その原因が公衆パケット通信網の混雑によるものであったとしても、監視装置を点検して、その原因を特定しなければならず、その作業が面倒で、コストがかかるという問題があった。
【0010】
また、この場合、例えば、監視装置が環境変化等で一時的に動作不良を起こしたような場合には、点検時に、その動作不良を再現することができず、システム異常を通知できなかった原因は公衆パケット通信網の混雑によるものであると誤判定して、異常動作する監視装置を継続して使用してしまう、という問題もある。
【0011】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、放送電波再送信システム(所謂ギャップフィラー装置)の異常時に、その旨を携帯機用の公衆パケット通信網を介して監視センタに通知するよう構成された監視装置において、監視装置からシステム異常を監視センタに通知できなかったときに、その原因を簡単且つ正確に識別して、放送電波再送信システムの点検・修理を効率よく行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、放送局から送信された放送電波を受信すると共に、その受信信号を処理して、再送信用の放送信号として出力する受信手段と、前記放送電波が届かない領域に設置され、前記放送信号を所定の送信レベルまで増幅して送信アンテナに出力することにより、該送信アンテナから前記放送信号に対応した放送電波を再送信させる送信手段と、を備えた放送電波再送信システムに設けられ、当該システムの動作状態を監視して、異常発生時には、その旨を外部の監視センタに通知する監視装置であって、携帯機用の公衆パケット通信網を介して外部装置との間で無線にてデータ通信を行うためのパケット通信手段と、前記システムの異常発生時に、その旨を通知するための通知データを、前記パケット通信手段を介して前記監視センタに送信する通知データ送信手段と、該通知データ送信手段による通知データの送信が正常に行われたか否かを判定する通信状況判定手段と、該通信状況判定手段にて前記通知データの送信に異常が生じたと判定されると、その旨を送信異常履歴として記憶手段に格納する送信異常履歴格納手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の監視装置において、前記パケット通信手段が、前記公衆パケット通信網を介して前記監視センタを含む外部装置から前記送信異常履歴の送信要求を受けると、前記記憶手段に記憶された送信異常履歴を、前記パケット通信手段から前記外部装置に返信させる送信異常履歴送信手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の監視装置において、前記パケット通信手段が、前記公衆パケット通信網を介して前記外部装置から前記送信異常履歴の消去指令を受けると、前記記憶手段に記憶された送信異常履歴を消去する第1の送信異常履歴消去手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
また次に、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れかに記載の監視装置において、外部の情報処理装置を直接接続してデータ通信を行うための通信インターフェイスと、該通信インターフェイスを介して、前記情報処理装置から前記送信異常履歴の送信要求を受けると、前記記憶手段に記憶された送信異常履歴を、前記通信インターフェイスを介して前記情報処理装置に出力する送信異常履歴出力手段と、を備えた特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の監視装置において、前記通信インターフェイスを介して前記情報処理装置から前記送信異常履歴の消去指令を受けると、前記記憶手段に記憶された送信異常履歴を消去する第2の送信異常履歴消去手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
また次に、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れかに記載の監視装置において、前記通信状況判定手段にて前記通知データの送信に異常が生じたと判定されると、前記通知データ送信手段に対し前記通知データを再送信させる再送信指令手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れかに記載の監視装置において、前記送信異常履歴格納手段は、前記通信状況判定手段にて通知データの送信異常が判定された回数を予め設定された時間帯毎にカウントし、該カウント結果を送信異常履歴として記憶手段に格納することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7の何れかに記載の監視装置において、前記記憶手段は、電源が遮断されても記憶内容を保持可能な不揮発性メモリであることを特徴とする。
【0020】
一方、請求項9に記載の発明は、放送局から送信された放送電波を受信すると共に、その受信信号を処理して、再送信用の放送信号として出力する受信手段と、前記放送電波が届かない領域に設置され、前記放送信号を所定の送信レベルまで増幅して送信アンテナに出力することにより、該送信アンテナから前記放送信号に対応した放送電波を再送信させる送信手段と、を備えた放送電波再送信システムであって、当該システムの動作状態を監視して、異常発生時には、その旨を外部の監視センタに通知する監視装置として、請求項1〜請求項8の何れかに記載の監視装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の監視装置は、放送電波再送信システムの動作状態を監視するものであるが、その監視によって、システムの異常を検出すると、通知データ送信手段が、その旨(つまりシステムの異常)を通知するための通知データを、パケット通信手段を介して、外部の監視センタに通知する。
【0022】
そして、このように通知データ送信手段が通知データを外部の監視センタに通知した際には、通信状況判定手段が、その通知データの送信が正常に行われたか否かを判定し、通信状況判定手段にて通知データの送信に異常が生じたと判定された際には、送信異常履歴格納手段が、その旨(つまり通知データの送信の異常)を、送信異常履歴として記憶手段に格納する。
【0023】
つまり、本発明において、パケット通信手段は、携帯機用の公衆パケット通信網を介して外部装置との間で無線にてデータ通信を行うものであるため、他の携帯機の利用が集中する通勤時間帯等には、監視センタへ通知データを送信できなくなることがある。
【0024】
そこで、本発明の監視装置では、システムの異常を表す通知データを外部の監視センタに通知した際には、その通知データを監視センタに通知できたかどうかを監視して、通知データの送信に異常が生じたときには、その旨を送信異常履歴として残すようにしているのである。
【0025】
このため、本発明の監視装置によれば、監視装置から監視センタへ放送電波再送信システムの異常を通知することができず、システム管理者が、利用者から放送電波を受信できない旨の苦情を受けて、放送電波再送信システムの点検・修理等の対策を行う際には、監視装置から監視センタへシステム異常を通知できなかった原因が、公衆パケット通信網の混雑によるものであるのか、或いは、監視装置の動作不良によるものであるのかを、記憶手段に格納された送信異常履歴に基づき、簡単且つ正確に識別することができるようになる。
【0026】
よって、本発明の監視装置によれば、監視装置から監視センタへ放送電波再送信システムの異常を通知することができなかった場合の、放送電波再送信システムの点検・修理を効率よく行うことができるようになり、その作業に要するコストを低減することができる。
【0027】
次に、請求項2に記載の監視装置においては、パケット通信手段が公衆パケット通信網を介して外部装置から送信異常履歴の送信要求を受けると、送信異常履歴送信手段が、記憶手段に記憶された送信異常履歴を、パケット通信手段から外部装置に返信させる。
【0028】
従って、本発明の監視装置によれば、放送電波再送信システムの異常時に、監視装置から監視センタへその旨を通知することができなかった場合、システム管理者は、監視センタ若しくは他の情報端末を利用して、監視装置側に記憶されている送信異常履歴を遠隔操作で確認することができるようになり、その確認作業を簡単に行うことができるようになる。
【0029】
また、請求項3に記載の監視装置においては、パケット通信手段が公衆パケット通信網を介して外部装置から送信異常履歴の消去指令を受けると、第1の送信異常履歴消去手段が、記憶手段に記憶された送信異常履歴を消去する。
【0030】
従って、本発明の監視装置によれば、放送電波再送信システムの異常時に、監視装置から監視センタへその旨を通知することができなかった場合、システム管理者は、監視センタ若しくは他の情報端末を利用して、監視装置側に記憶されている送信異常履歴を確認することができるだけでなく、その確認後に、記憶手段から送信異常履歴を消去して、新たな送信異常履歴の記憶領域を確保することができるようになる。
【0031】
また次に、請求項4に記載の監視装置においては、外部の情報処理装置を直接接続してデータ通信を行うための通信インターフェイスが備えられており、この通信インターフェイスを介して、外部の情報処理装置から送信異常履歴の送信要求を受けると、送信異常履歴出力手段が、記憶手段に記憶された送信異常履歴を通信インターフェイスを介して情報処理装置に出力する。
【0032】
よって、本発明の監視装置によれば、監視装置から監視センタへ放送電波再送信システムの異常を通知することができなかった場合に、放送電波再送信システムの点検・修理を行う作業者が、情報処理装置を利用して、監視装置から直接送信異常履歴を読み取ることができるようになり、作業者が現場で送信異常履歴を確認することができるようになる。
【0033】
また、請求項5に記載の監視装置においては、通信インターフェイスを介して情報処理装置から送信異常履歴の消去指令を受けると、第2の送信異常履歴消去手段が、記憶手段に記憶された送信異常履歴を消去する。
【0034】
従って、本発明の監視装置によれば、放送電波再送信システムの異常時に、監視装置から監視センタへその旨を通知することができなかった場合、放送電波再送信システムの点検・修理を行う作業者は、現場で送信異常履歴を確認することができるだけでなく、その確認後に、記憶手段から送信異常履歴を消去して、新たな送信異常履歴の記憶領域を確保することができるようになる。
【0035】
次に、請求項6に記載の監視装置によれば、通信状況判定手段にて通知データの送信に異常が生じたと判定されると、再送信指令手段が、通知データ送信手段に対して通知データを再送信させることから、監視センタに通知データを送信できる確率を上昇させることができるようになり、通知データの送信異常によって放送電波再送信システムの点検作業が遅れるのを抑制することができる。
【0036】
なお、再送信指令手段は、通信状況判定手段にて通知データの送信に異常が生じたと判定される度に、繰り返し通知データの再送信を実行させるようにしてもよいが、時間帯によっては、何度再送信しても通知データを送信できないことがあるので、その再送信回数は所定回数に制限するとよい。つまり、このようにすれば、パケット通信手段からのデータ送信が繰り返し実行されて、他の携帯機の通信に悪影響を与えるのを防止することができる。
【0037】
また、記憶手段に記憶された送信異常履歴からは、公衆パケット通信網が空いていて送信異常が発生しないであろう時間帯を検出することができることから、再送信指令手段は、その送信異常が発生しないであろう時間帯に、通知データの再送信を実行させるように構成してもよい。
【0038】
またこの場合、送信異常が発生しないであろう時間帯については、システム管理者が適宜判定して、再送信指令手段が再送信する時間帯として設定するようにしてもよく、或いは、再送信指令手段が、送信異常履歴を解析して自動で再送信の時間帯を設定するようにしてもよい。
【0039】
次に、請求項7に記載の監視装置によれば、送信異常履歴格納手段は、通信状況判定手段にて通知データの送信異常が判定された回数を予め設定された時間帯毎にカウントし、そのカウント結果を送信異常履歴として記憶手段に格納する。
【0040】
つまり、送信異常履歴としては、通信状況判定手段にて通知データの送信に異常が生じたと判定された時刻を順次記憶しておくようにしてもよく、更に、この時刻と送信できなかった通知データの種別とを順次記憶しておくようにしてもよいが、請求項7に記載のように送信異常履歴を記憶するようにすれば、記憶手段に格納される送信異常履歴のデータ量を少なくすることができる。
【0041】
なお、送信異常履歴を記憶する記憶手段としては、請求項8に記載のように、電源が遮断されても記憶内容を保持可能な不揮発性メモリにて構成することが望ましい。
一方、請求項9に記載の放送電波再送信システムにおいては、当該システムの動作状態を監視する監視装置として、上述した本発明(請求項1〜請求項8)の監視装置を備えることから、上述した本発明の監視装置と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された放送電波再送信システム(以下、単に再送信システムという)の構成を表すブロック図である。
【0043】
本実施形態の再送信システムは、人工衛星から2.6GHz帯の周波数帯を使って配信されるモバイル放送用の放送電波を受信アンテナ2で受信し、その受信信号(放送信号)を受信増幅器4にて増幅して、人工衛星からの放送電波を直接受信できない領域に設置された送信アンテナ12まで伝送することにより、送信アンテナ12からその領域内にモバイル放送用の放送電波を再送信するためのもの(所謂ギャップフィラー装置)である。
【0044】
そして、図1に示すように、本実施形態の再送信システムには、ビルの各階に設置された駐車場等、再送信の対象となる複数の領域毎に放送電波を再送信できるよう、各領域毎に2つずつ設けられた複数の送信アンテナ12と、各送信アンテナ12に対して、所定レベルまで増幅した放送信号をそれぞれ入力する複数の送信増幅器10と、が備えられている。
【0045】
また、受信アンテナ2には、上記各領域を通るように配線された同軸ケーブルからなる伝送路が接続されている。そして、この伝送線路(同軸ケーブル)上には、各領域毎に、放送信号の一部を分岐させて各領域の送信増幅器10(本実施形態では2つの送信増幅器10)に出力する、分岐装置8が設置されている。
【0046】
また、受信アンテナ2から、受信アンテナ2に最も近い上流の分岐装置8に至る伝送線路(同軸ケーブル)上には、受信アンテナ2から出力された放送信号を増幅する受信増幅器4と、この受信増幅器4から出力された放送信号を分岐装置8側に出力すると共に、分岐装置8側から送信されてくる監視信号に基づき、当該再送信システムの動作状態を監視して、監視結果を、監視用アンテナ7を介して外部の監視センタへ無線にて送信する監視装置6と、が設けられている。
【0047】
なお、この監視装置6には、電源プラグ6aを介して外部の商用電源のコンセントから電源供給を受けることにより、自らが動作するための電源電圧や直流定電圧(例えばDC12V)を生成する電源回路88(図4参照)が内蔵されており、監視装置6から上流の受信増幅器4には、この電源回路88にて生成された直流定電圧(DC12V)が電源電圧として供給され、監視装置6から下流の分岐装置8には、その電源回路88にて生成された直流定電圧(DC12V)が送信増幅器10への給電指令信号として出力される。
【0048】
また、監視装置6は、外部の監視センタからの指令に従い、端末側の分岐装置8や送信増幅器10に制御信号を送信して、これら各部からその動作状態を表す監視信号を送信させる。
【0049】
次に、図2は、送信増幅器10の構成を表すブロック図である。
図2に示すように、送信増幅器10には、同軸ケーブルを介して分岐装置8の分岐端子に接続される入力端子21と、同軸ケーブルを介して送信アンテナ12に接続される出力端子25と、信号分離避雷回路22とが備えられている。
【0050】
なお、この信号分離避雷回路22は、分岐装置8側から入力端子21に入力された入力信号を、2.6GHz帯の放送信号と、放送信号よりも周波数が低い制御信号と、直流信号(つまりDV12V)とに分離すると共に、制御信号の分離経路を介して、当該送信増幅器10の動作状態を表す監視信号を入力端子21から分岐装置8側に出力させるためのフィルタ回路と、落雷等により生じるサージ電圧を吸収する避雷回路とから構成されている。
【0051】
そして、分岐装置8側から入力され、信号分離避雷回路22を介して分離された放送信号は、増幅回路23にて所定の送信レベルまで増幅された後、放送信号のみを選択的に通過させるバンドパスフィルタ(以下、BPFという)24を介して出力端子25まで伝送され、出力端子から、送信アンテナ12へと出力される。
【0052】
また、分岐装置8側から入力され、信号分離避雷回路22を介して分離された制御信号は、監視信号の通過を阻止して制御信号を選択的に通過させるローパスフィルタ(以下、LPFという)26を介して、データ復調部27に入力され、データ復調部27にて制御用のデジタルデータ(制御データ)に変換されて、マイクロコンピュータからなる通信制御部28に入力される。
【0053】
この通信制御部28は、データ復調部27から入力された制御データに従い、増幅回路23に内蔵された温度センサ31、入力レベル検出回路32、出力レベル検出回路33、電圧検出回路34等から、増幅回路23の温度、放送信号の入力レベル、放送信号の出力レベル、電源電圧等の検出信号を取り込み、その検出信号に自己の識別情報等を付加したデータをデータ変調部35に出力することで、データ変調部35に、当該送信増幅器10の動作状態を表す監視信号を生成させるものである。
【0054】
そして、このようにデータ変調部35にて生成された監視信号は、制御信号の通過を阻止して監視信号を選択的に通過させるハイパスフィルタ(以下、HPFという)36を介して、信号分離避雷回路22に入力され、信号分離避雷回路22から、入力端子21を介して、分岐装置8に出力される。
【0055】
また、分岐装置8側から入力され、信号分離避雷回路22を介して分離された直流信号(DC12V)は、電源回路38に入力され、電源回路38にて、増幅回路23等の内部回路駆動用の電源電圧に変換されて、内部回路に供給される。
【0056】
次に、図3は、分岐装置8の構成を表すブロック図である。
図3に示すように、分岐装置8には、監視装置6から端末側に至る伝送線路(同軸ケーブル)の監視装置6側に接続される入力端子41と、この伝送線路の端末側に接続される出力端子44と、2つの送信増幅器10を各々接続するための分岐端子49、50とが備えられている。
【0057】
そして、分岐装置8内には、送信増幅器10の信号分離避雷回路22と同様、監視装置6から入力端子41に入力された入力信号を、2.6GHz帯の放送信号と、放送信号よりも周波数が低い制御信号と、直流信号(つまりDV12V)とに分離すると共に、制御信号の分離経路を介して、当該分岐装置8や分岐端子49、50に接続された送信増幅器10の動作状態を表す監視信号を入力端子41から監視装置6側に出力させるためのフィルタ回路と、落雷等により生じるサージ電圧を吸収する避雷回路とからなる信号分離避雷回路42が備えられている。
【0058】
また、分岐装置8には、分岐装置8内を通過した制御信号、放送信号、及び、後述の定電圧回路66にて生成された直流定電圧Vc(DC12V)を混合して、出力端子44から端末側に出力させると共に、端末側から出力端子44に入力された監視信号を制御信号の入力経路に導くフィルタ回路と、落雷等により生じるサージ電圧を吸収する避雷回路とからなる信号分離避雷回路43が内蔵されている。
【0059】
また、同様に、分岐装置8には、分岐装置8内を通過した制御信号、放送信号、及び、後述の定電圧回路66にて生成された直流定電圧Vc(DC12V)を混合して、分岐端子49、50から送信増幅器10側にそれぞれ出力させると共に、送信増幅器10側から分岐端子49、50に入力された監視信号を制御信号の入力経路側に導くフィルタ回路と、落雷等により生じるサージ電圧を吸収する避雷回路とからなる信号分離避雷回路47、48も内蔵されている。
【0060】
そして、伝送線路の上流側から入力端子41に入力され、信号分離避雷回路42を介して分離された放送信号は、分岐回路45に入力され、分岐回路45の入出力経路を介して信号分離避雷回路43へと低損失で伝送されて、分離避雷回路43及び出力端子44を介して端末側に出力される。
【0061】
また、分岐回路45は、放送信号の一部を分岐させるが、その分岐された放送信号は、分配回路46に入力されて、2分配される。そして、その2分配された放送信号は、分岐端子49、50に接続された分離避雷回路47、48にそれぞれ入力される。このため、この放送信号は、分離避雷回路47、48及び分岐端子49、50を介して、各分岐端子49、50に接続された送信増幅器10へとそれぞれ出力されることになる。
【0062】
また次に、伝送線路の上流側から入力端子41に入力され、信号分離避雷回路42を介して分離された制御信号は、分岐回路51に入力され、分岐回路51の入出力経路を介して信号分離避雷回路43へと低損失で伝送され、分離避雷回路43及び出力端子44を介して端末側に出力される。
【0063】
また、分岐回路51にて分岐された制御信号は、監視信号の通過を阻止して制御信号を選択的に通過させるLPF52を介して、データ復調部53に入力される。そして、このデータ復調部53では、制御信号が制御データに変換され、その変換された制御データは、マイクロコンピュータからなる幹線系の通信制御部54に入力される。
【0064】
この通信制御部54は、データ復調部53から入力された制御データに従い、温度センサ54a、電圧検出回路54b等から、当該分岐装置8の温度や電源電圧等の検出信号を取り込み、その検出信号に自己の識別情報等を付加したデータをデータ変調部55に出力することで、データ変調部55に、当該分岐装置8の動作状態を表す監視信号を生成させるものである。
【0065】
そして、このようにデータ変調部55にて生成された監視信号は、制御信号の通過を阻止して監視信号を選択的に通過させるHPF56を介して、分岐回路51に入力され、分岐回路51から、信号分離避雷回路42及び入力端子41を介して、伝送線路の上流側(つまり分岐装置8側)に出力される。
【0066】
また、分岐装置8には、幹線系の通信制御部54の他、分岐系の通信制御部57も設けられている。この通信制御部57は、通信制御部54と同様、マイクロコンピュータにて構成されており、分岐端子49、50に接続された送信増幅器10との間で制御信号や監視信号を送受信するためのものである。
【0067】
つまり、幹線系の通信制御部54は、監視装置6から送信されてきた制御信号(データ復調部53にて復調された制御データ)が、当該分岐装置8に対するものであれば、上述したように、その制御データに従い、検出信号の取り込み、監視信号の送信等を行うが、監視装置6から送信されてきた制御信号(データ復調部53にて復調された制御データ)が、当該分岐装置8に対するものでなければ、その制御データを、分岐系の通信制御部57に転送する。
【0068】
そして、このように通信制御部54から制御データが転送されてくると、分岐系の通信制御部57は、その制御データは分岐端子49、50に接続された送信増幅器10に対するものであるか否かを判定し、そうであれば、その制御データをデータ変調部58に出力することで、データ変調部58に制御信号を生成させる。
【0069】
すると、データ変調部58にて生成された制御信号は、監視信号の通過を阻止して制御信号を選択的に通過させるLPF59を介して、分配回路60に入力され、この分配回路60にて2分配される。そして、この2分配された制御信号は、それぞれ、信号分離避雷回路47、48及び分岐端子49、50を介して、分岐端子49、50に接続された送信増幅器10へと出力される。
【0070】
一方、送信増幅器10から分岐端子49、50に入力された監視信号は、信号分離避雷回路47、48、分配回路60、及び、HPF61を介して、データ復調部62に入力され、データ復調部62にて、一旦、送信増幅器10の動作状態を表す監視データに変換されて、分岐系の通信制御部57に入力される。
【0071】
すると、分岐系の通信制御部57は、この監視データを幹線系の通信制御部54に転送し、幹線系の通信制御部54は、この監視データをデータ変調部55に出力することで、データ変調部55に、送信増幅器10の動作状態を表す監視信号を生成させて、監視装置6側に送信させる。
【0072】
このように、分岐系の通信制御部57は、当該分岐装置8の分岐端子49、50に接続された送信増幅器10と監視装置6との間で送受信されるデータを中継するのである。
また次に、分岐装置8には、外部の商用電源のコンセントから交流電源を取り込むための電源プラグ8aが設けられている。そして、この電源プラグ8aから入力される交流電圧は、手動操作用の電源スイッチ63、過電流保護のためのヒューズ64及び避雷回路65を介して、定電圧回路66に入力される。
【0073】
この定電圧回路66は、当該分岐装置8の内部電源(後述の制御電圧Vs、駆動電圧Vd等)を生成するのに必要で、しかも、送信増幅器10に駆動電源として供給したり、当該分岐装置8よりも下流に設置された分岐装置8に対して給電指令信号として供給するのに必要な、直流定電圧Vc(DC12V)を生成するためのものである。そして、この定電圧回路66にて生成された直流定電圧Vcは、電圧検出回路67に入力される。
【0074】
電圧検出回路67は、信号分離避雷回路42において、伝送線路から入力端子41に入力された入力信号の中から、給電指令信号としての直流定電圧(DC12V)が分離されているか否か、つまり、伝送線路の上流側に設置された装置(詳しくは監視装置6又は他の分岐装置8)から当該分岐装置8に対して、給電指令信号としての直流定電圧(DC12V)が入力されているか否か、を検出するためのものである。
【0075】
そして、入力端子41に、給電信号としての直流定電圧(DC12V)が入力されていると判定すると、定電圧回路66にて生成された直流定電圧Vcを、制御電圧生成回路68、駆動電圧生成回路69、及び、信号分離避雷回路43、47、48に接続された直流電圧出力回路71、72、73に出力する。
【0076】
ここで、制御電圧生成回路68は、通信制御部54、57を動作させるための制御電圧Vs(DC3.3V)を生成するためのものであり、その生成された制御電圧Vsは、上記各通信制御部54、57に供給される。
【0077】
このため、通信制御部54、57は、電源スイッチ63がオン状態で、伝送線路の上流側に設置された監視装置6又は他の分岐装置8から当該分岐装置8に、給電指令信号としての直流定電圧(DC12V)が入力されたときに起動され、その後、電源スイッチ63がオフ状態に切り換えられるか、或いは、伝送線路の上流側に設置された監視装置6又は他の分岐装置8から当該分岐装置8への給電指令信号の入力が遮断されるまで、上述した通信制御を実行することになる。
【0078】
また、駆動電圧生成回路69は、データ変調部55、58やデータ復調部53、62、或いは、直流電圧出力回路71、72、73内の駆動回路70b等、マイクロコンピュータにて構成された通信制御部54、57以外の内部回路を動作させるための駆動電圧Vd(DC5V)を生成するためのものであり、その生成された駆動電圧Vdは、これら各部に供給される。
【0079】
従って、データ変調部55、58、データ復調部53、62、直流電圧出力回路71、72、73内の駆動回路70b等、通信制御部54、57以外の内部回路も、電源スイッチ63がオン状態で、伝送線路の上流側に設置された監視装置6又は他の分岐装置8から当該分岐装置8に、給電指令信号としての直流定電圧(DC12V)が入力されたときに動作を開始し、その後、電源スイッチ63がオフ状態に切り換えられるか、或いは、伝送線路の上流側に設置された監視装置6又は他の分岐装置8から当該分岐装置8への給電指令信号の入力が遮断されると、動作を停止することになる。
【0080】
次に、直流電圧出力回路71、72、73は、信号分離避雷回路43、47、48を介して、出力端子44又は分岐端子49、50から、直流定電圧(DC12V)を出力させるか否か、換言すれば、当該分岐装置8の出力端子44又は分岐端子49、50に接続された分岐装置8又は送信増幅器10を動作させるか否か、を切り換えるためのものである。
【0081】
そして、これら各直流電圧出力回路71、72、73には、定電圧検出回路67を介して出力された直流定電圧Vcを、信号分離避雷回路43、47、48に出力するか否かを切り換える常閉型の切換スイッチ70aと、上述した駆動電圧Vdを受けて、この切換スイッチ70aをオンさせる駆動回路70bとが設けられている。
【0082】
このため、当該分岐装置8が給電指令信号により起動されると、出力端子44に接続された下流側の分岐装置8、及び、分岐端子49、50に接続された送信増幅器10に給電指令信号(DC12V)が出力され、これら各部が当該分岐装置8よりも若干遅れて起動することになる。
【0083】
なお、図1に示すように、同軸ケーブルからなる伝送線路に沿って従属接続される分岐装置8のうち、監視装置6から最も離れた最終段の分岐装置8の出力端子44には、直流成分をカットし、且つ、伝送線路の末端をその線路のインピーダンスにて終端するための終端装置14が接続されている。
【0084】
次に、図4は、監視装置6の構成を表すブロック図である。
図4に示すように、監視装置6には、同軸ケーブルを介して受信増幅器4の出力端子に接続される入力端子81と、同軸ケーブルを介して分岐装置8の入力端子41に接続される出力端子84とが備えられている。
【0085】
そして、入力端子81には、受信増幅器4から入力端子81に入力された放送信号を出力端子84側に出力すると共に、後述の電源回路88にて生成された直流定電圧(DC12V)を入力端子81から受信増幅器4へと出力する電源分離フィルタと、落雷等により生じるサージ電圧を吸収する避雷回路とからなる電源分離避雷回路82が接続されている。
【0086】
また、出力端子84には、この電源分離避雷回路82を介して入力される放送信号と、後述の電源回路88にて生成された直流定電圧(DC12V)と、分岐装置8や送信増幅器10に送信するための制御信号とを混合して、出力端子84から端末側に出力すると共に、端末側から出力端子84に入力される監視信号を制御信号の入力経路側に導くフィルタ回路と、落雷等により生じるサージ電圧を吸収する避雷回路とからなる信号分離避雷回路83が接続されている。
【0087】
また、監視装置6には、電源プラグ6aを介して外部の商用電源から交流電源を安全に取り込むために、手動操作用の電源スイッチ85、過電流保護のためのヒューズ86、及び、避雷回路87が設けられており、これら各部を介して、電源回路88に、外部の商用電源から交流電源が供給される。
【0088】
電源回路88は、監視装置6を構成する内部回路に供給するための電源電圧や、受信増幅器4及び分岐装置8に供給するための直流定電圧(DC12V)を生成するためのものであり、電源回路88にて生成された直流定電圧(DC12V)は、電源分離避雷回路82と入力端子81を介して受信増幅器4に供給されると共に、信号分離避雷回路83と出力端子84を介して当該監視装置6よりも下流に設置された他の分岐装置8に供給され、内部回路駆動用の電源電圧は、以下に説明する内部回路に供給される。
【0089】
次に、監視装置6には、監視用アンテナ7を介して携帯機用の公衆パケット通信網に接続し、この公衆パケット通信網を介して外部の監視センタとの間で無線によるデータ通信を行うためのパケット通信モジュール90と、このパケット通信モジュール90を介して監視センタとの間で各種データをやりとりするための通信制御部91とが備えられている。
【0090】
また、監視装置6には、出力端子84及び信号分離避雷回路83を介して入力される端末側からの監視信号を、制御信号の通過を阻止して監視信号を選択的に通過させるHPF95と、このHPF95を通過した監視信号から、この監視信号を送信してきた分岐装置8或いは送信増幅器10の動作状態を表す監視データを復元するデータ復調部93と、このデータ復調部93にて復元された監視データに基づき、当該再送信システムの動作状態を監視する監視制御部94とが備えられている。
【0091】
そして、この監視制御部94は、データ復調部93から入力される監視データから、当該再送信システムの動作状態の異常を検出すると、その異常状況を監視センタへ通知するための通知データを生成して、通信制御部91に転送することで、通信制御部91から外部の監視装置へ、当該再送信システムの異常を通知させる。
【0092】
また、監視制御部94は、端末側の分岐装置8や送信増幅器10に対して、個々に監視信号(監視データ)を要求する制御データを生成して、データ変調部95に出力することで、データ変調部95に対し、その制御データを伝送用の制御信号に変換させる。そして、このデータ変調部95にて生成された制御信号は、監視信号の通過を阻止して制御信号を選択的に通過させるLPF96を介して信号分離避雷回路83に入力され、信号分離避雷回路83から出力端子84を介して端末側に出力される。
【0093】
次に、通信制御部91は、監視制御部94から通知データを受けたときに監視センタに通知データを送信するだけではなく、監視用アンテナ7を介して監視センタからの制御指令を受信すると、その制御指令に従い各種制御を実行する。
【0094】
例えば、監視センタから、当該再送信システムの動作状況を要求する指令を受けると、監視制御部94から、その要求に対応した動作状況を表す監視データを取得して、これを監視センタに転送し、監視センタから、端末側の分岐装置8や送信増幅器10に対する制御指令を受けると、監視制御部94にその制御指令を送信することで、監視制御部94に対し、その制御指令に対応した制御データを、分岐装置8や送信増幅器10に送信させる。
【0095】
また、通信制御部91には、携帯型のパーソナルコンピュータ等、他の情報処理装置をケーブルを介して直接接続するための外部機器接続用コネクタ6bが設けられており、このコネクタ6bを介して、他の情報処理装置から当該再送信システムの動作状況を要求する指令を受けた際にも、その指令に対応した処理を実行するようにされている。
【0096】
以下、この通信制御部91の構成及びその動作について詳しく説明する。
まず、図5は、通信制御部91の構成を表すブロック図である。
図5に示すように、通信制御部91は、CPU91a、RAM91b、ROM91cを中心とするマイクロコンピュータにて構成されている。
【0097】
そして、この通信制御部91には、不揮発性メモリであるEEPROM91b、監視制御部94を接続するための監視制御部接続用I/F(I/F:インターフェイス、以下同様)91e、外部機器接続用コネクタ6bを接続するための外部機器接続用I/F91f、時刻を計時するための計時用タイマ91g、パケット通信モジュール90を接続するためのパケット通信用I/F91h、及び、これら各部を相互に接続するためのバスライン91iが備えられており、CPU91aは、ROM91cに記憶されたプログラムに従い、これら各I/Fを介して外部装置との間でデータ通信を行う。
【0098】
次に、図6は、CPU91aにおいて実行される通信制御処理を表すフローチャートである。
この通信制御処理は、監視装置6に電源が投入されて通信制御部91が起動してから、CPU91にて繰り返し実行される処理であり、この処理が開始されると、まずS110(Sはステップを表す)にて、監視制御部94から、当該再送信システムの異常時に外部の監視センタに通知すべき通知データを取得したか否かを判断する。
【0099】
そして、監視制御部94から通知データを取得していれば、S120にて、その通知データをパケット通信モジュール90から外部の監視センタに送信させ、続くS130にて、通知データの送信は正常に実行できたか否かを判断する。
【0100】
次に、S130にて、通知データの送信は正常に実行できたと判断されると、再度S110に移行し、逆に通知データの送信は正常に実行できなかったと判断されると、S140に移行して、その旨を送信異常履歴として、記憶手段としてのEEPROM91dに格納する。
【0101】
なお、EEPROM91dには、図7に示すように、送信異常履歴として、毎日、1時間単位で、各時間帯に発生した送信異常の回数(送信失敗回数)を送信異常が検出された場合に限り記憶するようにされており、S140では、送信異常が発生したときの時刻を計時用タイマ91gから読み込み、その時刻が属する時間帯での送信失敗回数をカウントアップ(+1)する、といった手順で送信異常履歴を更新する。
【0102】
また、S140では、この送信異常履歴(つまり、各時間帯毎の送信異常のカウント値)を、EEPROM91dに格納可能な数値の最大値(所謂カウンタにおける最大カウント値)を上限値として更新するようにされており、EEPROM91dに送信異常履歴として記憶されているカウント値が最大値に達している場合には、その後、監視センタ側からの指令によって送信異常履歴が初期化されるまで、カウント動作を中止する。
【0103】
これは、更新異常履歴としてのカウント値が、EEPROM91dに記憶可能な最大値(例えば「9999」)に達しているときに、そのカウント値をカウントアップして、更新異常履歴が、初期値(例えば「0000」)に戻ってしまうのを防止するためである。
【0104】
こうして、S140にて送信異常履歴が更新されると、今度は、S150に移行して、通知データの送信回数mをカウントアップ(+1)し、続くS160にて、その送信回数mは予め設定された上限値Mに達しているか否かを判断する。
【0105】
そして、送信回数mが上限値Mに達していなければ、再度S120に移行して、通知データを監視センタに再送信させ、逆に、送信回数mが上限値Mに達していれば、S165に移行して、次に送信すべき通知データの送信回数mをカウントできるように、送信回数mに初期値「0」をセットし、再度S110に移行する。
【0106】
なお、S150及びS160の処理は、通知データの送信に失敗した場合に、その送信動作を最大M回実行させることで、通知データをできるだけ監視センタに送信できるようにするための処理である。そして、CPU91aの起動時には、図示しない初期化の処理によって、送信回数mに初期値0が設定される。
【0107】
次に、S110にて、監視制御部94から通知データを取得していないと判断された場合には、S170に移行し、パケット通信モジュール90を介して、外部の監視センタからの制御指令を受信したか否かを判断する。
【0108】
そして、監視センタからの制御指令を受信していれば、S180に移行して、その制御指令が、EEPROM91dに記憶されている送信異常履歴を要求する指令であるか否かを判定し、監視センタからの制御指令が送信異常履歴を要求する指令でなければ、S220にて、その指令に対応した制御処理を実行した後、S110に移行する。
【0109】
また、逆に、監視センタからの制御指令が送信異常履歴を要求する指令であれば、S190に移行して、EEPROM91dから、送信異常履歴を読み込み、パケット通信モジュール90を介して監視センタに送信する。
【0110】
そして、S190にて、送信異常履歴を監視センタに送信した後は、S200に移行して、パケット通信モジュール90を介して、今回送信した送信異常履歴をEEPROM91dから消去するか否かを監視センタに問い合わせる。
【0111】
そして、この問い合わせの結果、送信異常履歴を消去するとの応答があった場合には、S210にて、EEPROM91dに記憶された送信異常履歴を消去した後、S110に移行し、逆に、送信異常履歴を消去するとの応答がない場合には、そのままS110に移行する。
【0112】
次に、S170にて、監視センタからの制御命令を受信していないと判断された場合には、S230に移行して、今度は、外部機器接続用I/F91fを介して、外部機器接続用コネクタ6bに接続された情報処理装置(以下、外部機器という)からの制御指令を受信したか否かを判断する。
【0113】
そして、外部機器からの制御指令を受信していなければ、再度S110に移行し、逆に、外部機器からの制御命令を受信していれば、S240に移行して、その制御指令が、EEPROM91dに記憶されている送信異常履歴を要求する指令であるか否かを判定する。
【0114】
そして、外部機器からの制御指令が送信異常履歴を要求する指令でなければ、S280にて、その指令に対応した制御処理を実行した後、S110に移行し、逆に、外部機器からの制御指令が送信異常履歴を要求する指令であれば、S250に移行して、EEPROM91dから、送信異常履歴を読み込み、外部機器接続用I/Fを介して、外部機器接続用コネクタ6bに接続された外部機器(情報処理装置)に送信異常履歴を送信する。
【0115】
次に、S250にて、送信異常履歴を外部機器に送信した後は、S260に移行して、今回送信した送信異常履歴をEEPROM91dから消去するか否かを外部機器に問い合わせる。
【0116】
そして、この問い合わせの結果、送信異常履歴を消去するとの応答があった場合には、S270にて、EEPROM91dに記憶された送信異常履歴を消去した後、S110に移行し、逆に、送信異常履歴を消去するとの応答がない場合には、そのままS110に移行する。
【0117】
以上説明したように、本実施形態の再送信システムには、再送信システムを構成する分岐装置8や送信増幅器10の動作状態を監視する監視装置6が設けられている。そして、この監視装置6においては、監視制御部94が、これら各部(分岐装置8や送信増幅器10)に個々に制御信号を送信することで、これら各部からその動作状態を表す監視信号(監視データ)を取得し、その取得した監視データから何等かの異常を検出すると、その旨を監視センタに通知するための通知データを生成して、通信制御部91に送信する。
【0118】
一方、通信制御部91は、この通知データを、携帯機用の公衆パケット通信網を利用して外部機器との間でデータ通信が可能なパケット通信モジュール90を介して、外部の監視センタに通知するが、この通知データの送信時には、通知データの送信が正常に行われたか否かを監視して、通知データの送信に異常が生じた場合には、その旨を送信異常履歴としてEEPROM91dに格納する。
【0119】
そして、このEEPROM91dに格納された送信異常履歴は、公衆パケット通信網を介して監視センタや、外部機器接続用コネクタ6bを介して直接接続された外部機器(情報処理装置)から読み取ることができ、しかも、必要に応じて消去することもできる。
【0120】
このため、本実施形態の監視装置6によれば、監視装置6から外部の監視センタへ再送信システムの異常を通知することができなかった場合に、その原因が、公衆パケット通信網の混雑によるものであるのか、或いは、監視装置の動作不良によるものであるのかを、EEPROM91dに格納された送信異常履歴によって簡単且つ正確に識別することができる。
【0121】
よって、本実施形態によれば、監視装置6から監視センタへ再送信システムの異常を通知することができなかった場合に、再送信システムの点検・修理を効率よく行うことができるようになり、その作業に要するコストを低減することができる。
【0122】
また、EEPROM91dに記憶された送信異常履歴は、公衆パケット通信網を使って、管理センタ側の管理者が遠隔操作で確認することができるし、また、監視装置6に情報処理装置を接続することにより、その使用者が現場にて確認することもできることから、送信異常履歴の確認作業についても効率よく簡単に行うことができるようになる。
【0123】
また、こうした確認作業の際に、EEPROM91dに記憶された送信異常履歴を消去することもできることから、EEPROM91dには未確認の送信異常履歴のみを記憶させることもできるようになり、EEPROM91dの容量を必要最小限に抑えることもできる。
【0124】
また特に、本実施形態では、EEPROM91dには、送信異常履歴として、所定の時間帯毎(1時間毎)に送信異常が発生した回数をカウントして、その値を記憶するようにしているので、送信異常が発生した時刻を順に記憶しておくようにした場合に比べて、EEPROM91dの容量をより抑制することができる。
【0125】
また更に、本実施形態の監視装置においては、監視センタへの通知データの送信に失敗した場合には、その送信動作を最大M回実行するように構成されているので、通知データを監視センタに送信できる確率を高め、通知データの送信異常によって再送信システムの点検作業が遅れるのを抑制することもできる。
【0126】
なお、本実施形態においては、受信アンテナ2及び受信増幅器4が本発明の放送電波再送信システムにおける受信手段に相当し、分岐装置8、送信増幅器10及び送信アンテナ12が本発明の放送電波再送信システムにおける送信手段に相当する。
【0127】
また、監視装置6において、パケット通信モジュール90は、本発明のパケット通信手段に相当し、監視制御部94は、本発明の通信状況判定手段に相当し、監視制御部6において、EEPROM91dは、本発明の記憶手段に相当し、外部機器接続用I/F91fは本発明の通信インターフェイスに相当する。
【0128】
そして、監視制御部6のCPU91aにて実行される通信制御処理のうち、S120の処理は、本発明の通知データ送信手段に相当し、S140の処理は、本発明の第1の送信異常履歴格納手段に相当し、S150及びS160の処理は、本発明の再送信指令手段に相当し、S190の処理は、本発明の送信異常履歴送信手段に相当し、S210の処理は、本発明の送信異常履歴消去手段に相当し、S250の処理は、本発明の送信異常履歴出力手段に相当し、S270の処理は、本発明の第2の送信異常履歴消去手段に相当する。
【0129】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施形態では、通知データの送信に失敗した場合には、その直後に通知データを再送信するものとして説明したが、例えば、管理者が、EEPROM91bに記憶された送信異常履歴に基づき、公衆パケット通信網が空いていて送信異常が発生しないであろう時間帯を再送信用の時間帯として設定することにより、その時間帯に送信異常が発生した通知データの再送信を実行するように監視装置6の通信制御部91を構成してもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、モバイル放送の放送電波を再送信する再送信システムについて説明したが、本発明は、例えば、CSデジタル放送、BSデジタル放送、地上波デジタル放送等の放送電波を、その放送電波が届かない地域に再送信するシステムであっても、上記実施形態と同様に適用して、同様の効果を得ることができる。
【0131】
また、上記実施形態では、受信アンテナ2からの受信信号を増幅して送信アンテナ12まで伝送することにより、送信アンテナ12から放送信号を再送信させるシステムについて説明したが、例えば、受信アンテナ12からの受信信号を周波数変換(ダウンコンバート)した放送信号を送信アンテナ12から再送信するシステムであっても、本発明を適用して、同様の効果を得ることができる。
【0132】
例えば、モバイル放送用の再送信システムとして、人工衛星から12GHz帯の周波数で配信された放送電波(TDM信号(TDM:時分割多重))を受信アンテナにて受信し、その受信信号(TDM信号)を、2.6GHz帯の放送信号(CDM信号(CDM:符号分割多重))に変換して送信アンテナまで伝送することにより、この放送信号(CDM信号)を送信アンテナから再送信させるシステムが知られているが、本発明は、この種の再送信システムに適用しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0133】
また、上記実施形態では、分岐装置8内に分岐系の通信制御部57を設けることで、送信増幅器10からの放送信号を複数の送信増幅器10及び送信アンテナ12に伝送することにより、複数の送信アンテナ12から各アンテナ12の送信領域に放送電波を再送信するものとして説明したが、本発明は、一つの送信アンテナ12から放送電波を再送信するシステムであっても、本発明を適用して、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】実施形態の放送電波再送信システムの構成を表すブロック図である。
【図2】実施形態の送信増幅器の構成を表すブロック図である。
【図3】実施形態の分岐装置の構成を表すブロック図である。
【図4】実施形態の監視装置の構成を表すブロック図である。
【図5】実施形態の監視装置内の通信制御部の構成を表すブロック図である。
【図6】通信制御部にて実行される通信制御処理を表すフローチャートである。
【図7】EEPROMに記憶される送信異常履歴の構成を表す説明図である。
【符号の説明】
【0135】
2…受信アンテナ、4…受信増幅器、6…監視装置、6a,8a…電源プラグ、6b・・・外部機器接続用コネクタ、7…監視用アンテナ、8…分岐装置、10…送信増幅器、12…送信アンテナ、14…終端装置、21,41,81…入力端子、22,42,43,47,48,83…信号分離避雷回路、23…増幅回路、24…BPF、25,44,84…出力端子、26,52,59…LPF、27,53,62,93…データ復調部、28,54,57…通信制御部、31,54a…温度センサ、32…入力レベル検出回路、33…出力レベル検出回路、34,54b…電圧検出部、35,55,58,95…データ変調部、36,56,61…HPF、38,88…電源回路、45,51…分岐回路、46,60…分配回路、49,50…分岐端子、63,85…電源スイッチ、64,86…ヒューズ、65,87…避雷回路、66…定電圧回路、67…電圧検出回路、68…制御電圧生成回路、69…駆動電圧生成回路、71〜73…直流電圧出力回路、70a…切換スイッチ、70b…駆動回路、82・・・電源分離避雷回路、90・・・パケット通信モジュール、91…通信制御部、91a…CPU、91b…ROM、91c…RAM、91d…EEPROM、91e…監視制御部接続用I/F、91f…外部機器接続用I/F、91g…計時用タイマ、91h…パケット通信用I/F、91i…バスライン、94…監視制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送局から送信された放送電波を受信すると共に、その受信信号を処理して、再送信用の放送信号として出力する受信手段と、
前記放送電波が届かない領域に設置され、前記放送信号を所定の送信レベルまで増幅して送信アンテナに出力することにより、該送信アンテナから前記放送信号に対応した放送電波を再送信させる送信手段と、
を備えた放送電波再送信システムに設けられ、当該システムの動作状態を監視して、異常発生時には、その旨を外部の監視センタに通知する監視装置であって、
携帯機用の公衆パケット通信網を介して外部装置との間で無線にてデータ通信を行うためのパケット通信手段と、
前記システムの異常発生時に、その旨を通知するための通知データを、前記パケット通信手段を介して前記監視センタに送信する通知データ送信手段と、
該通知データ送信手段による通知データの送信が正常に行われたか否かを判定する通信状況判定手段と、
該通信状況判定手段にて前記通知データの送信に異常が生じたと判定されると、その旨を送信異常履歴として記憶手段に格納する送信異常履歴格納手段と、
を備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記パケット通信手段が、前記公衆パケット通信網を介して前記監視センタを含む外部装置から前記送信異常履歴の送信要求を受けると、前記記憶手段に記憶された送信異常履歴を、前記パケット通信手段から前記外部装置に返信させる送信異常履歴送信手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記パケット通信手段が、前記公衆パケット通信網を介して前記外部装置から前記送信異常履歴の消去指令を受けると、前記記憶手段に記憶された送信異常履歴を消去する第1の送信異常履歴消去手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
外部の情報処理装置を直接接続してデータ通信を行うための通信インターフェイスと、
該通信インターフェイスを介して、前記情報処理装置から前記送信異常履歴の送信要求を受けると、前記記憶手段に記憶された送信異常履歴を、前記通信インターフェイスを介して前記情報処理装置に出力する送信異常履歴出力手段と、
を備えた特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の監視装置。
【請求項5】
前記通信インターフェイスを介して前記情報処理装置から前記送信異常履歴の消去指令を受けると、前記記憶手段に記憶された送信異常履歴を消去する第2の送信異常履歴消去手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の監視装置。
【請求項6】
前記通信状況判定手段にて前記通知データの送信に異常が生じたと判定されると、前記通知データ送信手段に対し前記通知データを再送信させる再送信指令手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の監視装置。
【請求項7】
前記送信異常履歴格納手段は、前記通信状況判定手段にて通知データの送信異常が判定された回数を予め設定された時間帯毎にカウントし、該カウント結果を送信異常履歴として記憶手段に格納することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の監視装置。
【請求項8】
前記記憶手段は、電源が遮断されても記憶内容を保持可能な不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の監視装置。
【請求項9】
放送局から送信された放送電波を受信すると共に、その受信信号を処理して、再送信用の放送信号として出力する受信手段と、
前記放送電波が届かない領域に設置され、前記放送信号を所定の送信レベルまで増幅して送信アンテナに出力することにより、該送信アンテナから前記放送信号に対応した放送電波を再送信させる送信手段と、
を備えた放送電波再送信システムであって、
当該システムの動作状態を監視して、異常発生時には、その旨を外部の監視センタに通知する監視装置として、請求項1〜請求項8の何れかに記載の監視装置を備えたことを特徴とする放送電波再送信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−158394(P2007−158394A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346470(P2005−346470)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】