直列接続された電圧駆動型半導体素子の駆動装置
【課題】 直列接続された素子を備えた電力変換装置において、素子をばらつきなく同時にオン・オフさせるために、これら素子のゲート線をコアにより磁気結合させてスイッチングタイミングをバランスさせる方法において、コアを励磁したエネルギーを如何に高速にリセットする。
【解決手段】 直列接続された電圧駆動型半導体素子3、4と、これらの電圧駆動型半導体素子をオン・オフするためのゲート駆動回路1、2と、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコア5で磁気結合した半導体スイッチ回路において、各電圧駆動型半導体素子をターンオンまたはターンオフする時のゲート駆動回路のゲート抵抗値15、17、25、27を、これらが定常状態になった後、より大きな抵抗値16、18、26、28を用いるように切替える抵抗値切替え手段を備え、前記コアの消磁を短時間に行う。
【解決手段】 直列接続された電圧駆動型半導体素子3、4と、これらの電圧駆動型半導体素子をオン・オフするためのゲート駆動回路1、2と、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコア5で磁気結合した半導体スイッチ回路において、各電圧駆動型半導体素子をターンオンまたはターンオフする時のゲート駆動回路のゲート抵抗値15、17、25、27を、これらが定常状態になった後、より大きな抵抗値16、18、26、28を用いるように切替える抵抗値切替え手段を備え、前記コアの消磁を短時間に行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数個直列接続された電圧駆動型半導体素子(以下、素子と略する)の素子電圧をバランスさせるためにゲートに磁気結合用磁性体を有する場合の駆動方式に関する。
【背景技術】
【0002】
直列接続された素子を備えた電力変換装置において、素子をばらつきなく同時にオン・オフさせるために、これら素子のゲート線をコアにより磁気結合させてスイッチングタイミングをバランスさせる方法がある(特許文献1参照)。この方法を適用した時の動作を、図5に示すように素子が2個直列接続されている半導体スイッチ回路を例に説明する。
この回路において、3、4がIGBTで、直列接続されている。また、1A、2Aは、それぞれIGBT3、4のゲート駆動回路であり、お互いのゲート線は、コア5によって磁気結合されている。磁気結合させるには、図6の例のようにそれぞれのゲート線を同じコアに巻き付ける方法が知られている。これにより、IGBT3のゲート電流Ig1が流れるとコア5にはΦ1の磁束が発生し、これがゲート駆動回路2AとIGBT4間のゲート線を横切る。同様に、ゲート電流Ig2が流れるとΦ2の磁束が発生し、これがゲート駆動回路1AとIGBT3間のゲート線を横切る。これらの動作によって各ゲート線が磁気結合される。この時、コア5へのゲート線の巻数N1、N2を等しくしてIg1=Ig2の時に|Φ1|=|Φ2|となるようにし、Ig1とIg2が同極性の時に、Φ1とΦ2が逆極性となるように巻き方向を決める。
【0003】
このような構成におけるターンオフ時の回路動作例を、図8に基づいて説明する。
図8(a)がIGBT3と4のターンオフのタイミングが同時の場合の動作波形である。それぞれのゲート(G)−ミッタ(E)間電圧波形VGE(3),VGE(4)はほぼ等しくなる。IGBTのG−E間は図7に示すように等価的にコンデンサCiesと見なすことができるため、図8(a)のようにIg1、Ig2には同波形で過渡的にCiesの放電電流が流れる。この時、コア5の巻線N1に流れる電流Ig1と巻線N2に流れる電流Ig2の極性とレベルが同じとなり、磁束Φ1とΦ2は同レベルで逆極性となるためコアに発生する磁束はΦ1とΦ2が互いに打ち消しあい零となる。そのため、磁気結合はせず、電流Ig1とIg2はそれぞれのCiesから放電電流として流れ続ける。
次に、図8(b)に示すようにIGBT3と4のターンオフタイミングがアンバランスした時(この場合、素子3が先にターンオフ)、すなわち電流Ig1がIg2よりも先に流れ出した時、|Φ1|>|Φ2|となるため、磁性体には |Φ1−Φ2|の磁束が発生し、コア5が励磁されてゲート線が磁気結合され、コア5の端子間には図9に示す向きに電圧Vc1、Vc2が発生する。この電圧は、ゲート電流Ig1に対しては減少する方向に、Ig2に対しては増加する方向に印加され、Ig1=Ig2となるように動作する。
【0004】
以上の方法により、IGBT3と4のターンオフタイミングのゲート電流を一致させる方向にコア5が動作して、スイッチングタイミングをバランスさせることができる。これは、ターンオンタイミングのばらつき抑制に対しても同様に有効に動作する。
【特許文献1】特開2002−204578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法によってスイッチングタイミングをバランスさせた場合の問題点は、ゲート駆動回路1Aと2Aの回路モードが同じになった時に、コア5を励磁したエネルギーを如何に高速にリセットするかである。即ちリセット電流の振動が減衰してリセットが終了するまでにかかる時間を如何に短縮するかである。ここで、コアを磁気リセットする際の回路動作について説明する。
図9にターンオフ動作時のコアのリセット時におけるゲート駆動回路内部の回路を含めた等価回路を、図10に各部波形例を示す。
この回路では簡単化のため、コアの漏れインダクタンスは無視する。ここで、1A、2Aはゲート駆動回路、10A、20Aはパルス分配回路、11,21はゲート駆動回路の順バイアス用トランジスタ、13および23が逆バイアス用トランジスタ、15、25がオン用ゲート抵抗、17、27がオフ用ゲート抵抗、19F、29Fが順バイアス用電源、19R、29Rが逆バイアス用電源、Lmがコアの励磁インダクタンス、Cies1及びCies2がIGBT3及び4の入力容量である。ゲート駆動回路1Aが2Aより先に逆バイアス状態、即ちトランジスタ13がトランジスタ23より先にオンすると、図11に示すように励磁電流Imが流れてコアが励磁され、Vc1、Vc2の電圧が印加される。
次にゲート駆動回路2Aが逆バイアス状態となりゲート駆動回路1Aと2Aの回路モードが同じになると、コアがリセット動作に入る。この時、図12のように励磁電流Imの経路は経路1と経路2に分流する。等価回路は図13のようになり、励磁インダクタンスLmとIGBT3、4の入力容量Cies1、Cies2によって振動して、それぞれのゲート抵抗17、27によって減衰する。しかし通常ゲート抵抗は数Ω程度であるため、振動が減衰するまで長い時間がかかってしまう。即ち、コアがリセットされるまで長い時間がかかることとなり、素子のスイッチング周波数が高くなると、コアがリセットされる前に励磁され、電圧バランス効果の低下や、コアの飽和といった可能性がある。
【0006】
従って、この発明の課題は、コアに励磁されたエネルギーを、短時間でリセットすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、請求項1の発明では、直列接続された複数個の電圧駆動型半導体素子と、これらの電圧駆動型半導体素子をオン・オフするためのゲート駆動回路と、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコアで磁気結合した半導体スイッチ回路において、各電圧駆動型半導体素子をターンオンまたはターンオフする時のゲート抵抗値を、これらが定常状態になった後、より大きな抵抗値に切替える抵抗値切替え手段を備え、前記コアの消磁を短時間に行うようにする。
請求項2の発明においては、前記抵抗値切替え手段は、半導体スイッチと抵抗の直列回路を並列接続し、半導体スイッチを交互に切替える方式である。
また、請求項3の発明においては、前記抵抗値切替え手段は、半導体スイッチと抵抗の直列回路を並列接続し、半導体スイッチの同時オンと選択的オンを切替える方式である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電圧駆動型半導体素子を多数個直列接続し、これらの素子の電圧アンバランスを抑制するために、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコアで磁気結合した半導体スイッチ回路において、スイッチング終了後にゲート抵抗値を切替える回路を付加することでコアのリセットを短時間で行え、スイッチング周波数の高い変換回路においても、コアを飽和させることなく動作させることができ、直列素子の電圧アンバランスの生じない直列接続を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の要点は、電圧駆動型半導体素子を多数個直列接続し、これらの素子の電圧アンバランスを抑制するために、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコアで磁気結合した半導体スイッチ回路において、ターンオンあるいはターンオフ時のゲート抵抗値をスイッチング終了後に抵抗値の大きな抵抗に切替え、コアのリセットを短時間で行うようにした点である。
【実施例1】
【0010】
本発明の第1の実施例を図1〜図3に示す。図1の回路構成は、図9に示す従来のゲート駆動回路に、新たにトランジスタと抵抗の直列回路を付加したものである。即ち、ゲート駆動回路1においては、従来のトランジスタ11と抵抗15の直列回路と並列にトランジスタ12と抵抗16の直列回路を、従来のトランジスタ13と抵抗17の直列回路と並列にトランジスタ14と抵抗18の直列回路を、各々接続し、ゲート駆動回路2においては、従来のトランジスタ21と抵抗25の直列回路と並列にトランジスタ22と抵抗26の直列回路を、従来のトランジスタ23と抵抗27の直列回路と並列にトランジスタ24と抵抗28の直列回路を、各々接続した回路構成である。ここで、抵抗16、26の抵抗値は抵抗15、25の抵抗値に比べ各々十分大きく選定する。また、抵抗18、28の抵抗値は抵抗17、27の抵抗値に比べ各々十分大きく選定する。
【0011】
この回路の等価回路を図2に、各部動作を図3に示す。IGBTのオフ動作時を例に、ゲート駆動回路1を用いて回路動作を説明する。図3に示すように、オフ用トランジスタ13、14がオンする時の動作を3つのモード(モード1〜モード3)に分けて説明する。モード1は各ゲート信号のタイミングにアンバランスが発生している期間、モード2はモード1の後、各IGBTが定常状態になるまでの期間、モード3はゲート抵抗を切替えてコアをリセットする期間である。モード1ではゲートタイミングを同調するように、コア5の巻線に電圧Vc1、Vc2が発生する。その後、モード2になるとコアがリセット動作を始める。
従来技術で説明したように、この回路の状態ではリセットの経路で振動が継続するため、IGBTが定常状態になった後、トランジスタ13をオフ、トランジスタ14をオンとする。抵抗18はコアのリセット経路において、振動が継続しないような十分大きな抵抗値とすることで、コア5の巻線端子電圧Vc1、Vc2は図3の実線波形のように急速に減衰し、短時間でコアをリセットすることができる。オン動作の場合も同様にトランジスタ11、12を切替えることでコアのリセットを短時間に行うことができる。また、ゲート駆動回路2についても同様の動作となる。
【実施例2】
【0012】
図4は本発明の第2の実施例を示す動作波形である。第1の実施例と回路構成は同じであるが、トランジスタの制御動作が異なる。
図4に回路動作を示す。第1の実施例では、抵抗値を切替える場合、二つのトランジスタ13、14を選択的に動作させているが、本実施例では、二つのトランジスタの同時オンで小さな抵抗値を、選択的オンで大きな抵抗値を作り出している。抵抗値の小さな抵抗は一般には電力用であり、小電力用で抵抗値の小さな抵抗はメーカの標準系列品からは選択しにくいという課題があるが、本方式を適用することにより、解決できる。
図4の動作例は、オン動作からオフ動作へ移行する時にはトランジスタ13と14を同時にオンさせ、IGBTが定常状態になった後、トランジスタ13をオフさせる方式である。即ち、抵抗17と18を並列接続して小さな抵抗値を作り出している。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、電圧駆動型スイッチング素子を直列接続や並列接続して、電力変換回路を構成する高圧の変換装置や大容量の変換装置への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例を示す回路構成
【図2】図1の等価回路
【図3】図2の第1の動作例
【図4】図2の第2の動作例
【図5】従来例を示す回路図
【図6】磁気結合を実現する構造例
【図7】IGBTのゲート・エミッタ間等価回路
【図8】ターンオフ時の回路動作例
【図9】図5の等価回路
【図10】コアリセット時の動作波形
【図11】ゲート駆動回路1Aが逆バイアス状態となった時の回路動作
【図12】ゲート駆動回路1A、2Aが共に逆バイアス状態となった時の回路動作
【図13】図12の等価回路
【符号の説明】
【0015】
1、2、1A、2A・・・ゲート駆動回路 3、4・・・IGBT
5・・・コア 10、20、10A、20A・・・パルス分配回路
11〜14、21〜24・・・トランジスタ
15〜18、25〜28・・・抵抗 19、29・・・ゲート駆動電源
19F、29F・・・順バイアス用電源
19R、29R・・・逆バイアス用電源
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数個直列接続された電圧駆動型半導体素子(以下、素子と略する)の素子電圧をバランスさせるためにゲートに磁気結合用磁性体を有する場合の駆動方式に関する。
【背景技術】
【0002】
直列接続された素子を備えた電力変換装置において、素子をばらつきなく同時にオン・オフさせるために、これら素子のゲート線をコアにより磁気結合させてスイッチングタイミングをバランスさせる方法がある(特許文献1参照)。この方法を適用した時の動作を、図5に示すように素子が2個直列接続されている半導体スイッチ回路を例に説明する。
この回路において、3、4がIGBTで、直列接続されている。また、1A、2Aは、それぞれIGBT3、4のゲート駆動回路であり、お互いのゲート線は、コア5によって磁気結合されている。磁気結合させるには、図6の例のようにそれぞれのゲート線を同じコアに巻き付ける方法が知られている。これにより、IGBT3のゲート電流Ig1が流れるとコア5にはΦ1の磁束が発生し、これがゲート駆動回路2AとIGBT4間のゲート線を横切る。同様に、ゲート電流Ig2が流れるとΦ2の磁束が発生し、これがゲート駆動回路1AとIGBT3間のゲート線を横切る。これらの動作によって各ゲート線が磁気結合される。この時、コア5へのゲート線の巻数N1、N2を等しくしてIg1=Ig2の時に|Φ1|=|Φ2|となるようにし、Ig1とIg2が同極性の時に、Φ1とΦ2が逆極性となるように巻き方向を決める。
【0003】
このような構成におけるターンオフ時の回路動作例を、図8に基づいて説明する。
図8(a)がIGBT3と4のターンオフのタイミングが同時の場合の動作波形である。それぞれのゲート(G)−ミッタ(E)間電圧波形VGE(3),VGE(4)はほぼ等しくなる。IGBTのG−E間は図7に示すように等価的にコンデンサCiesと見なすことができるため、図8(a)のようにIg1、Ig2には同波形で過渡的にCiesの放電電流が流れる。この時、コア5の巻線N1に流れる電流Ig1と巻線N2に流れる電流Ig2の極性とレベルが同じとなり、磁束Φ1とΦ2は同レベルで逆極性となるためコアに発生する磁束はΦ1とΦ2が互いに打ち消しあい零となる。そのため、磁気結合はせず、電流Ig1とIg2はそれぞれのCiesから放電電流として流れ続ける。
次に、図8(b)に示すようにIGBT3と4のターンオフタイミングがアンバランスした時(この場合、素子3が先にターンオフ)、すなわち電流Ig1がIg2よりも先に流れ出した時、|Φ1|>|Φ2|となるため、磁性体には |Φ1−Φ2|の磁束が発生し、コア5が励磁されてゲート線が磁気結合され、コア5の端子間には図9に示す向きに電圧Vc1、Vc2が発生する。この電圧は、ゲート電流Ig1に対しては減少する方向に、Ig2に対しては増加する方向に印加され、Ig1=Ig2となるように動作する。
【0004】
以上の方法により、IGBT3と4のターンオフタイミングのゲート電流を一致させる方向にコア5が動作して、スイッチングタイミングをバランスさせることができる。これは、ターンオンタイミングのばらつき抑制に対しても同様に有効に動作する。
【特許文献1】特開2002−204578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法によってスイッチングタイミングをバランスさせた場合の問題点は、ゲート駆動回路1Aと2Aの回路モードが同じになった時に、コア5を励磁したエネルギーを如何に高速にリセットするかである。即ちリセット電流の振動が減衰してリセットが終了するまでにかかる時間を如何に短縮するかである。ここで、コアを磁気リセットする際の回路動作について説明する。
図9にターンオフ動作時のコアのリセット時におけるゲート駆動回路内部の回路を含めた等価回路を、図10に各部波形例を示す。
この回路では簡単化のため、コアの漏れインダクタンスは無視する。ここで、1A、2Aはゲート駆動回路、10A、20Aはパルス分配回路、11,21はゲート駆動回路の順バイアス用トランジスタ、13および23が逆バイアス用トランジスタ、15、25がオン用ゲート抵抗、17、27がオフ用ゲート抵抗、19F、29Fが順バイアス用電源、19R、29Rが逆バイアス用電源、Lmがコアの励磁インダクタンス、Cies1及びCies2がIGBT3及び4の入力容量である。ゲート駆動回路1Aが2Aより先に逆バイアス状態、即ちトランジスタ13がトランジスタ23より先にオンすると、図11に示すように励磁電流Imが流れてコアが励磁され、Vc1、Vc2の電圧が印加される。
次にゲート駆動回路2Aが逆バイアス状態となりゲート駆動回路1Aと2Aの回路モードが同じになると、コアがリセット動作に入る。この時、図12のように励磁電流Imの経路は経路1と経路2に分流する。等価回路は図13のようになり、励磁インダクタンスLmとIGBT3、4の入力容量Cies1、Cies2によって振動して、それぞれのゲート抵抗17、27によって減衰する。しかし通常ゲート抵抗は数Ω程度であるため、振動が減衰するまで長い時間がかかってしまう。即ち、コアがリセットされるまで長い時間がかかることとなり、素子のスイッチング周波数が高くなると、コアがリセットされる前に励磁され、電圧バランス効果の低下や、コアの飽和といった可能性がある。
【0006】
従って、この発明の課題は、コアに励磁されたエネルギーを、短時間でリセットすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、請求項1の発明では、直列接続された複数個の電圧駆動型半導体素子と、これらの電圧駆動型半導体素子をオン・オフするためのゲート駆動回路と、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコアで磁気結合した半導体スイッチ回路において、各電圧駆動型半導体素子をターンオンまたはターンオフする時のゲート抵抗値を、これらが定常状態になった後、より大きな抵抗値に切替える抵抗値切替え手段を備え、前記コアの消磁を短時間に行うようにする。
請求項2の発明においては、前記抵抗値切替え手段は、半導体スイッチと抵抗の直列回路を並列接続し、半導体スイッチを交互に切替える方式である。
また、請求項3の発明においては、前記抵抗値切替え手段は、半導体スイッチと抵抗の直列回路を並列接続し、半導体スイッチの同時オンと選択的オンを切替える方式である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電圧駆動型半導体素子を多数個直列接続し、これらの素子の電圧アンバランスを抑制するために、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコアで磁気結合した半導体スイッチ回路において、スイッチング終了後にゲート抵抗値を切替える回路を付加することでコアのリセットを短時間で行え、スイッチング周波数の高い変換回路においても、コアを飽和させることなく動作させることができ、直列素子の電圧アンバランスの生じない直列接続を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の要点は、電圧駆動型半導体素子を多数個直列接続し、これらの素子の電圧アンバランスを抑制するために、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコアで磁気結合した半導体スイッチ回路において、ターンオンあるいはターンオフ時のゲート抵抗値をスイッチング終了後に抵抗値の大きな抵抗に切替え、コアのリセットを短時間で行うようにした点である。
【実施例1】
【0010】
本発明の第1の実施例を図1〜図3に示す。図1の回路構成は、図9に示す従来のゲート駆動回路に、新たにトランジスタと抵抗の直列回路を付加したものである。即ち、ゲート駆動回路1においては、従来のトランジスタ11と抵抗15の直列回路と並列にトランジスタ12と抵抗16の直列回路を、従来のトランジスタ13と抵抗17の直列回路と並列にトランジスタ14と抵抗18の直列回路を、各々接続し、ゲート駆動回路2においては、従来のトランジスタ21と抵抗25の直列回路と並列にトランジスタ22と抵抗26の直列回路を、従来のトランジスタ23と抵抗27の直列回路と並列にトランジスタ24と抵抗28の直列回路を、各々接続した回路構成である。ここで、抵抗16、26の抵抗値は抵抗15、25の抵抗値に比べ各々十分大きく選定する。また、抵抗18、28の抵抗値は抵抗17、27の抵抗値に比べ各々十分大きく選定する。
【0011】
この回路の等価回路を図2に、各部動作を図3に示す。IGBTのオフ動作時を例に、ゲート駆動回路1を用いて回路動作を説明する。図3に示すように、オフ用トランジスタ13、14がオンする時の動作を3つのモード(モード1〜モード3)に分けて説明する。モード1は各ゲート信号のタイミングにアンバランスが発生している期間、モード2はモード1の後、各IGBTが定常状態になるまでの期間、モード3はゲート抵抗を切替えてコアをリセットする期間である。モード1ではゲートタイミングを同調するように、コア5の巻線に電圧Vc1、Vc2が発生する。その後、モード2になるとコアがリセット動作を始める。
従来技術で説明したように、この回路の状態ではリセットの経路で振動が継続するため、IGBTが定常状態になった後、トランジスタ13をオフ、トランジスタ14をオンとする。抵抗18はコアのリセット経路において、振動が継続しないような十分大きな抵抗値とすることで、コア5の巻線端子電圧Vc1、Vc2は図3の実線波形のように急速に減衰し、短時間でコアをリセットすることができる。オン動作の場合も同様にトランジスタ11、12を切替えることでコアのリセットを短時間に行うことができる。また、ゲート駆動回路2についても同様の動作となる。
【実施例2】
【0012】
図4は本発明の第2の実施例を示す動作波形である。第1の実施例と回路構成は同じであるが、トランジスタの制御動作が異なる。
図4に回路動作を示す。第1の実施例では、抵抗値を切替える場合、二つのトランジスタ13、14を選択的に動作させているが、本実施例では、二つのトランジスタの同時オンで小さな抵抗値を、選択的オンで大きな抵抗値を作り出している。抵抗値の小さな抵抗は一般には電力用であり、小電力用で抵抗値の小さな抵抗はメーカの標準系列品からは選択しにくいという課題があるが、本方式を適用することにより、解決できる。
図4の動作例は、オン動作からオフ動作へ移行する時にはトランジスタ13と14を同時にオンさせ、IGBTが定常状態になった後、トランジスタ13をオフさせる方式である。即ち、抵抗17と18を並列接続して小さな抵抗値を作り出している。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、電圧駆動型スイッチング素子を直列接続や並列接続して、電力変換回路を構成する高圧の変換装置や大容量の変換装置への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例を示す回路構成
【図2】図1の等価回路
【図3】図2の第1の動作例
【図4】図2の第2の動作例
【図5】従来例を示す回路図
【図6】磁気結合を実現する構造例
【図7】IGBTのゲート・エミッタ間等価回路
【図8】ターンオフ時の回路動作例
【図9】図5の等価回路
【図10】コアリセット時の動作波形
【図11】ゲート駆動回路1Aが逆バイアス状態となった時の回路動作
【図12】ゲート駆動回路1A、2Aが共に逆バイアス状態となった時の回路動作
【図13】図12の等価回路
【符号の説明】
【0015】
1、2、1A、2A・・・ゲート駆動回路 3、4・・・IGBT
5・・・コア 10、20、10A、20A・・・パルス分配回路
11〜14、21〜24・・・トランジスタ
15〜18、25〜28・・・抵抗 19、29・・・ゲート駆動電源
19F、29F・・・順バイアス用電源
19R、29R・・・逆バイアス用電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数個の電圧駆動型半導体素子と、これらの電圧駆動型半導体素子をオン・オフするためのゲート駆動回路と、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコアで磁気結合した半導体スイッチ回路において、各電圧駆動型半導体素子をターンオンまたはターンオフする時のゲート抵抗値を、これらが定常状態になった後、より大きな抵抗値に切替える抵抗値切替え手段を備え、前記コアの消磁を短時間に行うことを特徴とする、直列接続された電圧駆動型半導体素子の駆動回路。
【請求項2】
前記抵抗値切替え手段は、半導体スイッチと抵抗の直列回路を並列接続し、半導体スイッチを交互に切替える方式であることを特徴とする、請求項1に記載の直列接続された電圧駆動型半導体素子の駆動回路。
【請求項3】
前記抵抗値切替え手段は、半導体スイッチと抵抗の直列回路を並列接続し、半導体スイッチの同時オンと選択的オンを切替える方式であることを特徴とする、請求項1に記載の直列接続された電圧駆動型半導体素子の駆動回路。
【請求項1】
直列接続された複数個の電圧駆動型半導体素子と、これらの電圧駆動型半導体素子をオン・オフするためのゲート駆動回路と、各ゲート駆動回路からの信号を同調するためにゲート線を互いにコアで磁気結合した半導体スイッチ回路において、各電圧駆動型半導体素子をターンオンまたはターンオフする時のゲート抵抗値を、これらが定常状態になった後、より大きな抵抗値に切替える抵抗値切替え手段を備え、前記コアの消磁を短時間に行うことを特徴とする、直列接続された電圧駆動型半導体素子の駆動回路。
【請求項2】
前記抵抗値切替え手段は、半導体スイッチと抵抗の直列回路を並列接続し、半導体スイッチを交互に切替える方式であることを特徴とする、請求項1に記載の直列接続された電圧駆動型半導体素子の駆動回路。
【請求項3】
前記抵抗値切替え手段は、半導体スイッチと抵抗の直列回路を並列接続し、半導体スイッチの同時オンと選択的オンを切替える方式であることを特徴とする、請求項1に記載の直列接続された電圧駆動型半導体素子の駆動回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−28705(P2007−28705A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203074(P2005−203074)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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