説明

相対位置検知装置、及び相対位置検知システム

【課題】3台以上の移動体間の相対位置を干渉測位によって求めると共に、干渉測位に関する信頼性判定を効率的に行なうこと。
【解決手段】自己が搭載された移動体を含む3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、基準移動体である場合には観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを非基準移動体に送信し、非基準移動体である場合には観測データ取得手段により取得された観測データ及び基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって基準移動体との相対位置を算出すると共に、干渉測位の結果として算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して干渉測位に関する信頼性判定結果を受信する処理と、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して干渉測位に関する信頼性判定を行なう処理とのいずれか一方を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載され、他の移動体との相対位置を検知する相対位置検知装置、及び当該相対位置検知装置が3台以上の移動体に搭載されて構成される相対位置検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星電波を観測して観測データを取得し、測位演算を行なって移動体等の位置を算出する装置が、車載ナビゲーション装置、船舶、携帯電話等の用途に用いられている。
【0003】
測位演算の手法として主流となっているのは、単独測位と称される手法である。単独測位とは、単独の観測点において取得された観測データに基づき複数の衛星との疑似距離を算出し、三角測量の原理により観測点の位置を算出する手法である。
【0004】
これに対し、より高精度に位置を算出することができる手法として、干渉測位と称される手法が知られており、実用化が図られている。干渉測位とは、観測点において取得された観測データに基づき既知点から計測点への基線ベクトルを求めることにより、計測点の位置を算出する手法である。干渉測位には、単独測位において通常使用されるC/Aコードに比してサイクルの短い搬送波位相が使用される。これに伴い、衛星から観測点までに存在する波数(整数値バイアス)を特定しなければならない。
【0005】
この干渉測位に関する発明であって、基準側および測位側のそれぞれの位置で受信した同じ衛星からの衛星信号について、搬送波位相の差と、搬送波位相の差に含まれる整数の搬送波位相バイアスと、搬送波位相の観測で基準とした位相に関する基準側および測位側の位相差と、基準側および測位側で受信された衛星信号を送信した衛星の位置と、基準側および測位側の位置との関係式を求め、複数の観測タイミングで得た関係式が同時に成り立つ条件で、測位側の位置と基準とした位相の差とを定める条件式を求め、条件式で求めた条件を関係式に代入することにより、測位側の位置と基準とした位相の差とに相当する変数を消去した式を求め、変数を消去した式について、互いに小さな偏差で成立する条件によって整数値バイアスを求めることを特徴とする衛星測位演算方法についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−270319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、2点間で整数値バイアスを演算する手法が開示されているが、これを3台以上の移動体が相対位置を測位する場合に適用すると、種々の問題が生じる。例えば、3台以上の移動体が他の各車両とそれぞれ相対位置を測位すると、通信負荷や演算負荷が増大し、複数の車両間の位置関係の整合性が取れなくなってしまうという問題が生じ得る。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、3台以上の移動体間の相対位置を干渉測位によって求めると共に、干渉測位に関する信頼性判定を効率的に行なうことが可能な相対位置検知装置、及び相対位置検知システムを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
移動体に搭載され、他の移動体との相対位置を検知する相対位置検知装置であって、
衛星電波を観測して観測データを取得する観測データ取得手段と、
他の移動体との通信を行なうための通信手段と、
該観測データ取得手段により取得された観測データ、及び前記通信手段により他の移動体から受信された観測データを用いて測位演算を行なう測位演算手段と、を備え、
自己が搭載された移動体を含む3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、
自己が搭載された移動体が基準移動体である場合には、前記観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを該基準移動体でない非基準移動体に送信し、
自己が搭載された移動体が前記非基準移動体である場合には、前記観測データ取得手段により取得された観測データ及び前記基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって前記基準移動体との相対位置を算出すると共に、該干渉測位において算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して前記干渉測位に関する信頼性判定結果を受信する処理と、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して前記干渉測位に関する信頼性判定を行なう処理とのいずれか一方を行なう、
相対位置検知装置である。
【0009】
この本発明の第1の態様によれば、3台以上の移動体間の相対位置を干渉測位によって求めると共に、干渉測位に関する信頼性判定を効率的に行なうことができる。
【0010】
本発明の第1の態様において、
自己が基準移動体であるか、非基準移動体であるかを、他の移動体との通信に基づき決定するものとしてもよい。
【0011】
また、本発明の第1の態様において、
自己が非基準移動体である場合に、前記干渉測位において算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して前記干渉測位に関する信頼性判定結果を受信するか、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して前記干渉測位に関する信頼性判定を行なうかを、他の非基準移動体との通信に基づき決定するものとしてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様は、
移動体に搭載され、他の移動体との相対位置を検知する相対位置検知装置であって、
衛星電波を観測して観測データを取得する観測データ取得手段と、
他の移動体との通信を行なうための通信手段と、
該観測データ取得手段により取得された観測データ、及び前記通信手段により他の移動体から受信された観測データを用いて測位演算を行なう測位演算手段と、を備え、
自己が搭載された移動体を含む3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、
自己が搭載された移動体が基準移動体である場合には、前記観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを該基準移動体でない非基準移動体に送信し、
自己が搭載された移動体が前記非基準移動体である場合には、前記観測データ取得手段により取得された観測データ及び前記基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって前記基準移動体との相対位置を算出すると共に該干渉測位に関するレシオテストを行ない、該レシオテストのレシオ値が所定値以下であるときには、レシオ値を低下させている衛星を特定すると共に該特定した衛星を除外して再度レシオテストを行なう、
相対位置検知装置である。
【0013】
この本発明の第2の態様によれば、レシオテストにより信頼性の高さが確認できなかった場合でも、レシオRを低下させている衛星を除外して再度レシオテストを行なうため、干渉測位に関する信頼性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明の第2の態様において、
自己が基準移動体であるか、非基準移動体であるかを、他の移動体との通信に基づき決定するものとしてもよい。
【0015】
また、本発明の第2の態様において、
前記レシオテストを再度行なった際に得られるレシオ値が所定値以下であるときには、他の非基準移動体との観測データ授受を行なって、該他の非基準移動体と自己の関係について干渉測位を行ない又は該他の非基準車両に干渉測位を行なわせ、該干渉測位の結果と前記基準移動体と自己の関係についての干渉測位の結果との比較に基づき信頼性判定を行ない又は前記他の非基準車両から信頼性判定結果を受信するものとしてもよい。
【0016】
この場合、
他の非基準移動体と自己の関係について干渉測位を行なうか、該他の非基準車両に干渉測位を行なわせるかを、該他の非基準移動体との通信に基づき決定するものとしてもよいし、更に、前記他の非基準移動体と自己の関係についての干渉測位は、前記基準車両と自己の関係についての干渉測位において用いられなかった衛星を採用可能とするものとしてもよい。
【0017】
本発明の第3の態様は、
衛星電波を観測して観測データを取得する観測データ取得手段と、他の移動体との通信を行なう通信手段と、該観測データ取得手段により取得された観測データ、及び前記通信手段により他の移動体から受信された観測データを用いて測位演算を行なう測位演算手段と、を備える相対位置検知装置が搭載された3台以上の移動体により構成される相対位置検知システムであって、
該相対位置検知システムを構成する3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、
前記3台以上の移動体のうち基準移動体は、前記観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを他の移動体に送信し、
前記3台以上の移動体のうち前記非基準移動体は、前記観測データ取得手段により取得された観測データ及び前記基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって前記基準移動体との相対位置を算出すると共に、該干渉測位において算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して前記干渉測位に関する信頼性判定結果を受信する処理と、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して前記干渉測位に関する信頼性判定を行なう処理と、のいずれか一方を行なう、
相対位置検知システムである。
【0018】
この本発明の第3の態様によれば、3台以上の移動体間の相対位置を干渉測位によって求めると共に、干渉測位に関する信頼性判定を効率的に行なうことができる。
【0019】
本発明の第3の態様において、
該相対位置検知システムを構成する3台以上の移動体が互いに通信を行なって、各移動体を基準移動体又は非基準移動体として決定するものとしてもよい。
【0020】
また、本発明の第3の態様において、
各非基準移動体が互いに通信を行なって、各非基準移動体が、前記干渉測位において算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して前記干渉測位に関する信頼性判定結果を受信するか、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して前記干渉測位に関する信頼性判定を行なうかを決定するものとしてもよい。
【0021】
本発明の第4の態様は、
衛星電波を観測して観測データを取得する観測データ取得手段と、他の移動体との通信を行なう通信手段と、該観測データ取得手段により取得された観測データ、及び前記通信手段により他の移動体から受信された観測データを用いて測位演算を行なう測位演算手段と、を備える相対位置検知装置が搭載された3台以上の移動体により構成される相対位置検知システムであって、
該相対位置検知システムを構成する3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、
前記3台以上の移動体のうち基準移動体は、前記観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを該基準移動体でない非基準移動体に送信し、
前記3台以上の移動体のうち前記非基準移動体は、前記観測データ取得手段により取得された観測データ及び前記基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって前記基準移動体との相対位置を算出すると共に該干渉測位に関するレシオテストを行ない、該レシオテストのレシオ値が所定値以下であるときにはレシオ値を低下させている衛星を特定すると共に該特定した衛星を除外して再度レシオテストを行なう、
相対位置検知システムである。
【0022】
この本発明の第4の態様によれば、レシオテストにより信頼性の高さが確認できなかった場合でも、レシオRを低下させている衛星を除外して再度レシオテストを行なうため、干渉測位に関する信頼性の向上を図ることができる。
【0023】
本発明の第4の態様において、
該相対位置検知システムを構成する3台以上の移動体が互いに通信を行なって、各移動体を基準移動体又は非基準移動体として決定するものとしてもよい。
【0024】
また、本発明の第4の態様において、
前記レシオテストを再度行なった非基準移動体は、該レシオテストを再度行なった際に得られるレシオ値が所定値以下であるときには、他の非基準移動体との観測データ授受を行なって、該他の非基準移動体と自己の関係について干渉測位を行ない又は該他の非基準車両に干渉測位を行なわせ、該干渉測位の結果と前記基準移動体と自己の関係についての干渉測位の結果との比較に基づき信頼性判定を行ない又は前記他の非基準車両から信頼性判定結果を受信するものとしてもよい。
【0025】
この場合、
各非基準移動体が互いに通信を行なって、各非基準移動体が、他の非基準移動体と自己の関係について干渉測位を行なうか、該他の非基準車両に干渉測位を行なわせるかを決定するものとしてもよいし、更に、前記他の非基準移動体と自己の関係についての干渉測位において、前記基準車両と自己の関係についての干渉測位において採用されなかった衛星を採用可能とするものとしてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、3台以上の移動体間の相対位置を干渉測位によって求めると共に、干渉測位に関する信頼性判定を効率的に行なうことが可能な相対位置検知装置、及び相対位置検知システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0028】
<第1実施例>
以下、本発明の第1実施例に係る相対位置検知システム1について説明する。図1は、相対位置検知システム1のシステム構成を模式的に示す図である。相対位置検知システム1は、3台以上の移動体(以下、車両であるものとして説明する)A、B、C、…に、相対位置検知装置30A、30B、30C、…が搭載されて構成される。各車両は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星10(k=1、2、…)から送信される衛星電波を受信して測位演算を行なって、車両間の相対位置を検知する。なお、移動体の他の例として、自動二輪車、鉄道、船舶、航空機、ホークリフト、ロボットや、人の移動に伴い移動する携帯電話等の情報端末等が挙げられる。
【0029】
各GPS衛星は、地球周りを周回しており、航法メッセージを地球に向けて常時放送している。航法メッセージには、自己の軌道情報、時計の補正値、電離層の補正係数、ヘルスメッセージ等が含まれている。航法メッセージは、C/Aコードにより拡散されL1搬送波(周波数:1575.42MHz)に乗せられて、地球に向けて常時放送されている。
【0030】
なお、現在、24個のGPS衛星が高度約20,000kmの上空で地球を一周しており、各4個のGPS衛星が55度ずつ傾いた6つの地球周回軌道面に均等に配置されている。従って、天空が開けている場所であれば、地球上のどの場所にいても、常時、少なくとも5個以上のGPS衛星が観測可能である。
【0031】
各車両は、それぞれ相対位置検知装置30を搭載する(ここでは、車両を識別するA、B、C…の符号は省略する)。図2は、相対位置検知装置30の構成例を示す図である。相対位置検知装置30は、GPS受信機40と、通信装置50と、制御装置60と、を有する。
【0032】
GPS受信機40には、その周波数がGPS衛星10の搬送周波数と一致する発振器(図示せず)が内蔵されている。GPS受信機40は、GPSアンテナ42を介して各GPS衛星から受信した電波(衛星信号)を中間周波数に変換後、内部で発生させたC/Aコードを用いてC/Aコード同期を行い、航法メッセージを取り出している。
【0033】
GPS受信機40は、GPS衛星10からの搬送波に基づいて、次式に示すように、時刻tにおける搬送波位相の積算値Φk(t)を計測している。位相積算値Φkは、L1波及びL2波(周波数:1227.6MHz)の双方に対してそれぞれ計測されてもよい。式中、Nkは、整数値バイアスを示し、τuは、GPS衛星10からGPS受信機40までのトラベル時間を示し、εkは、ノイズ(誤差)を示す。
【0034】
Φk(t)=Θk(t)−Θk(t−τk)+Nk+εk(t) …(1)
【0035】
また、GPS受信機40は、GPS衛星10からの各搬送波に乗せられるC/Aコードに基づいて、擬似距離ρkを計測している。式中、cは光速であり、bkは、クロックバイアスと称され、GPS受信機22内の時計誤差による距離誤差に対応する。
【0036】
ρk(t)=c・τk+bk …(2)
【0037】
通信装置50は、他の車両との通信を行なうための装置であり、例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communication)で使用される5.8GHzの周波数帯域を利用して、他車両との情報の送受信を行なう。また、これに限らず、ビーコン等を用いて無線通信を行なってもよいし、Bluetooth(登録商標)等の短距離無線通信方式によって無線通信を行なってもよい。通信装置50は、他車両から受信した電波等を復号し、得られた情報を制御装置60に出力する。
【0038】
制御装置60は、例えばCPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピューターであり、その他、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)ドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ、フラッシュメモリ等の記憶装置やI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。また、制御装置60は、ROMに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより機能する主要な機能ブロックとして、通信制御部62と、単独測位演算部64と、干渉測位演算部66と、信頼性判定部68と、を有する。
【0039】
なお、これらの機能ブロックが明確に別のプログラムに基づくものである必要はなく、同一プログラムの中に複数の機能ブロックを実現する部分が含まれていてもよい。また、制御装置60は、その機能の全部又は一部がGPS受信機40や通信装置50に統合されてもよい。
【0040】
通信制御部62は、2台以上の他車両と通信可能な所定の場面において、当該他車両と通信を行なって、自車両を含む3台以上の車両に対して、(1)基準車両、(2)非基準車両(信頼性判定担当)、(3)非基準車両(信頼性判定担当せず)のいずれかの役割を設定する。基準車両、及び非基準車両(信頼性判定担当)はそれぞれ1台とする。係る役割設定の具体的手法について特段の制限はなく、如何なる手法を用いてもよい。例えば、最初に呼びかけを行なった車両を基準車両とし、以下、応答を行なった順に非基準車両(信頼性判定担当)、非基準車両(信頼性判定担当せず)等と設定してよい。
【0041】
単独測位演算部64、干渉測位演算部66、信頼性判定部68は、自車両に上記のいずれの役割が設定されたかによって処理を行なったり、行なわなかったりする。従って、各車両の役割に即して各機能ブロックの処理について説明する。
【0042】
図3は、相対位置検知システム1において各車両が行なう処理の分担を示す図である。以下、車両Aが基準車両、車両Bが非基準車両(信頼性判定担当せず)、車両Cが非基準車両(信頼性判定担当)に設定されたものとして説明する。また、GPS受信機40で計測した位相積算値Φk及び擬似距離ρkのデータを必要に応じて「観測データ」と総称し、位相積算値Φkのデータを、L1波及びL2波のそれぞれに対応して、それぞれ「L1データ」及び「L2データ」と称する。また、擬似距離ρkのデータを「C/Aデータ」と称する。
【0043】
また、図4は、相対位置検知システム1において各車両(に搭載された相対位置検知装置;以下略)が行なう処理の流れを示すシーケンス図である。以下の説明におけるステップ番号は、本図に対応している。
【0044】
基準車両Aは、5衛星分のL1データ、L2データ及びC/Aデータと、単独測位演算部64により算出された単独測位による車両の位置xを、これらの算出基準となった電波の受信時刻と共に非基準車両B、Cに送信する(S100、S102)。単独測位演算部64は、GPS受信機40が計測した4個以上のGPS衛星10kとの擬似距離ρkを用いて、単独測位による自車両の位置を算出する。単独測位による位置算出については、当業者にとって周知であるため説明を省略する。なお、非基準車両B、Cにおいて擬似距離ρkを用いて車両の位置xを算出させる場合、基準車両Aからの単独測位による車両の位置xの送信を省略してもよい。
【0045】
非基準車両Bにおいては、干渉測位演算部66が、基準車両Aから受信した受信時刻と同期して自己が有するGPS受信機40が計測した5衛星分の観測データ(L1データ、L2データ)と、基準車両Aから受信した観測データに基づいて1サンプルのRTK測位演算を行ない、ベクトルXAB、及び整数値バイアスの二重位相差NjhABを算出する(S104)。なお、これらにおいて、上付文字のj、hは、5衛星から選択された2衛星を示す符号である。受信時刻の同期はGPS時刻やPSS信号等を利用する。
【0046】
非基準車両Cにおいても同様に、干渉測位演算部66が、基準車両Aから受信した受信時刻と同期して自己が有するGPS受信機40が計測した観測データ(L1データ、L2データ)と、基準車両Aから受信した観測データに基づいて1サンプルのRTK測位演算を行ない、ベクトルXAC、及び整数値バイアスの二重位相差NjhACを算出する(S106)。RTK測位演算は、干渉測位の一種である。
【0047】
ここで、非基準車両B、Cにおいて行なわれるRTK測位演算について概説する。なお、簡略化のために非基準車両Bにおける演算についてのみ説明する。
【0048】
非基準車両Bの干渉測位演算部66は、観測データの二重位相差ΦjhABを観測量とし、非基準車両Bの位置xと整数値バイアスの二重位相差NjhABとを状態変数として、最小二乗法により、基準車両Aに対する非基準車両Bの相対位置(ベクトルXAB)及び整数値バイアスの二重位相差NjhABを算出する。以下では、説明を簡略化するために、L1データのみを用いる場合について説明するが、L2データも用いる場合、L2波の位相積算値を、L1波の位相積算値と同様の態様で、追加すればよい。
【0049】
まず、ある時刻tにおける、車両A、Bと、ペアリングされた2つのGPS衛星10、10(j≠h)に関する位相積算値の二重位相差を、次式(5)により求める。
【0050】
ΦjhAB=(Φ(t)−Φ(t))−(Φ(t)−Φ(t)) …(3)
【0051】
この位相積算値の二重位相差ΦjhABは、(GPS衛星とGPS受信機の距離)=(搬送波の波長L)×(位相積算値)という物理的な意味合いから、次のようになる。
【0052】
【数1】

ここで、式(4)における[X(t)、Y(t)、Z(t)]は、時刻tにおける基準車両Aのワールド座標系における座標値であり、基準車両Aについて単独測位により算出された値を用いることができる。また、[X(t)、Y(t)、Z(t)]は、時刻tにおける非基準車両Bの座標値(未知)であり、[X(t)、Y(t)、Z(t)]及び[X(t)、Y(t)、Z(t)]は、時刻tにおける各GPS衛星10、10の座標値である。また、NjhABは、整数値バイアスの二重位相差であり、次式(5)が成立する。
【0053】
jhAB=(N−N)−(N−N) …(5)
【0054】
また、時刻tにおける各GPS衛星10、10(j≠h)に関する擬似距離の二重位相差を、次式(6)により求める。
【0055】
ρjhAB=(ρjA(t)−ρjB(t))−(ρhA(t)−ρhB(t)) …(6)
【0056】
擬似距離の二重位相差ρjhABは、次のようにも表せる。
【0057】
【数2】

式(7)における[X(t)、Y(t)、Z(t)]、[X(t)、Y(t)、Z(t)]、[Xj(t)、Yj(t)、Zj(t)]及び[Xh(t)、Yh(t)、Zh(t)]は、式(4)と同様である。
【0058】
そして、観測量Z(i)と状態変数η(i)の関係は、次の線形モデルで表現される。
Z(i)=H(i)・η(i)+V(i) …(8)
【0059】
ここで、Vは観測雑音を示す。η(i)は、観測周期i(=1,2、…)での状態変数を表わし、非基準車両Bの座標値(未知)及び整数値バイアスの二重位相差である。例えばペアリングされたGPS衛星10のペア(j、h)が(1,2)、(1,3)、(1,4)及び(1,5)の4組である場合、η=[X、Y、Z、N12AB、N13AB、N14AB、N15ABである(は転置を表す)。式(8)の観測量Zは、位相積算値の二重位相差ΦjhAB及び擬似距離の二重位相差ρjhABである。例えば、ペアリングされたGPS衛星10のペア(j、h)が(1,2)、(1,3)、(1,4)及び(1,5)の4組である場合、Z=[Φ12AB、Φ13AB、Φ14AB、Φ15AB、ρ12AB、ρ13AB、ρ14AB、ρ15ABである。
【0060】
ここで、式(8)の観測方程式は線形であるが、式(4)及び式(7)では、観測量Zは、状態変数X、Y及びZに関して非線形であるため、式(4)及び式(7)の各項を状態変数X、Y及びZのそれぞれで偏微分し、上記式(8)の観測行列Hを求める。例えば、ペアリングされたGPS衛星10のペア(j、h)が(1,2)、(1,3)、(1,4)及び(1,5)の4組である場合、観測行列Hは、以下の通りである。
【0061】
【数3】

式(9)のHは、観測量Z=[Φ12AB、Φ13AB、Φ14AB、Φ15ABとした場合の観測行列であり、Hは、観測量Z=[ρ12AB、ρ13AB、ρ14AB、ρ15ABとした場合の観測行列であり、観測行列Hは、2つの観測行列H、Hが組み込まれた形となる。
【0062】
上記式(8)を、式(9)の観測行列Hを用いて最小二乗法で解くと、以下の通りη(i)の実数解(フロート解)が得られる。
【0063】
η(i)=(H(i)・H(i))−1・H(i)・Z(i) …(10)
【0064】
干渉測位演算部66は、更に、上記の如く算出された整数値バイアスの実数解(フロート解)に基づいて、整数値バイアスの整数解、すなわち整数値バイアスの二重位相差NjhABを算出する。具体的には、例えば算出された実数解に対して最も誤差の小さい整数解(即ち、波数)を第1候補として求め、次に誤差の小さい整数解を第2候補として求める。この手法としては、整数値バイアスの無相関化をはかり、整数解の探索空間を狭めて解を特定するLAMBDA法が使用されてよい。或いは、LAMBDA法に代えて、他の整数最小二乗法や簡易の四捨五入により整数解を導出してもよい。
【0065】
係る処理により、基準車両Aの座標を既知値とした非基準車両Bの座標xが求められ、従ってベクトルXABが求められる。また、整数値バイアスの二重位相差NjhABが求められる。本実施例では、1サイクルのデータを用いてRTK測位演算を行なうため、カルマンフィルター等を用いて時系列にRTK測位演算を行なうものに比して、簡易且つ迅速な処理が期待できる。
【0066】
非基準車両BがベクトルXAB及び整数値バイアスの二重位相差NjhABを、非基準車両CがベクトルXAC及び整数値バイアスの二重位相差NjhACを、それぞれ算出すると、非基準車両Bから非基準車両Cに、ベクトルXAB、2衛星分の(すなわち1組の)整数値バイアスの二重位相差NjhAB、及び同じ1組の衛星に関する位相積算値の一重位相差Φjh(=Φ−Φ)を送信する(S108)。
【0067】
そして、非基準車両Cにおいて、信頼性判定部68が信頼性判定を行なう(S110)。信頼性判定は、次式(11)を満たすか否かによって判定する。式(11)を満たす場合、算出された整数値バイアスの二重位相差は信頼性が高く、従って、算出された車両A、B、C間の相対位置は信頼性が高いと判断できる。式中、ΦjhBCは位相積算値の二重位相差(=Φjh−Φjh)であり、λは搬送波の波長(20[cm]程度)であり、αは2/λ以下の値(例えば5〜10[cm]程度)に予め設定された所定値である。なお、f(x,x)は、次式(12)により表される。非基準車両Bの座標xは、基準車両Aの座標xにベクトルXABを加算して求める。また、非基準車両Cの座標xは、基準車両Aの座標xにベクトルXACを加算して求める。
【0068】
|ΦjhBC−{f(x,x)+λ(NjhAB、NjhAC)}|<α …(11)
f(x,x)=[√{(x−x)}−√{(x−x]−[√{(x−x}−√{(x−x)}] …(12)
【0069】
非基準車両Cは、係る信頼性判定の結果を基準車両A及び非基準車両Bに送信する(S112、S114)。非基準車両Cが、信頼性が高い旨の判定結果を得た場合には、各車両で当該整数解をFIXし(S116、S118、S120)、以後、当該整数解を用いたRTK測位演算により車両間の相対位置を算出する。一方、非基準車両Cが、信頼性が低い旨の判定結果を得た場合には、各車両で当該整数解をFIXせず、前回求められた整数解を暫定的に用いて相対位置を算出する等の経過措置がとられることとなる。
【0070】
係る処理によって、3台以上の車両がRTK測位演算によって相対位置を検知する際に、整数値バイアスの信頼性を効率良く判定することができる。非基準車両Bから非基準車両Cに送信されるデータは、ベクトルXAB、2衛星分の(すなわち1組の)整数値バイアスの二重位相差NjhAB、及び同じ1組の衛星に関する位相積算値の一重位相差Φjh
であるが、車両BC間でRTK測位演算をする場合には、少なくとも5衛星分の位相積算値に加え、必要に応じていずれかの車両の単独測位による位置等を送信しなければならない。また、RTK測位演算自体の処理負荷も比較的大きいものである。
【0071】
従って、車両AB間、AC間、BC間でそれぞれRTK測位演算を行なってレシオテスト等により信頼性を判定する場合に比して、通信負荷及び処理負荷を小さくすることができる。また、車両AB間、AC間、BC間でそれぞれRTK測位演算を行なった結果が矛盾する場合の処理の煩わしさが発生しない。よって、3台以上の移動体間の相対位置を干渉測位によって求めると共に、干渉測位に関する信頼性判定を効率的に行なうことができる。
【0072】
本実施例の相対位置検知システム1及びこれを構成する相対位置検知装置30によれば、3台以上の移動体間の相対位置を干渉測位によって求めると共に、干渉測位に関する信頼性判定を効率的に行なうことができる。
【0073】
<第2実施例>
以下、本発明の第2実施例に係る相対位置検知システム2について説明する。相対位置検知システム2は、第1実施例と同様のハードウエア構成により実現されるため、図1、図2及び第1実施例の説明を参照することとし、各構成要素のハードウエアや技術背景についての説明を省略する。
【0074】
本実施例に係る制御装置60は、第1実施例と同様に、通信制御部62と、単独測位演算部64と、干渉測位演算部66と、信頼性判定部68と、を有する。
【0075】
通信制御部62は、2台以上の他車両と通信可能な所定の場面において、当該他車両と通信を行なって、自車両を含む3台以上の車両に対して、(1)基準車両、(2)非基準車両のいずれかの役割を設定する。
【0076】
単独測位演算部64及び干渉測位演算部66は、第1実施例と同様の機能を有する。すなわち、単独測位演算部64は単独測位による自車両の位置を算出し、干渉測位演算部66は、自車両が非基準車両である場合に、基準車両との相対位置や、基準車両との関係についての整数値バイアスの二重位相差を算出する。
【0077】
本実施例のシステム2においても、第1実施例と同様に、基準車両から非基準車両に5衛星分のL1データ、L2データ及びC/Aデータと、単独測位演算部64により算出された単独測位による車両の位置が送信される、非基準車両では、受信データと自己が観測した観測データを用いてRTK測位演算を行ない、基準車両との相対位置(ベクトル)及び基準車両との関係についての整数値バイアスの二重位相差を算出する。そして、非基準車両が、レシオテスト等を行なってRTK測位演算に関する信頼性判定を実行する。以下、基準車両をA、非基準車両をB、Cとして説明する。
【0078】
図5は、非基準車両の制御装置60(主に信頼性判定部68)が、RTK測位演算を行なった後に実行する処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、非基準車両Bにおける処理についてのみ説明する。
【0079】
まず、信頼性判定部68は、干渉測位演算部66が算出した整数値バイアスNjhABについてレシオテストを実行する(S200)。
【0080】
レシオテストは、以下の如く実行される。例えば、ペアリングされたGPS衛星10のペア(j、h)が(1,2)、(1,3)、(1,4)及び(1,5)の4組であり、それぞれ4つの整数値バイアスの実数解(n12、n13、n14、n15)、整数値バイアスの整数解の第1候補(N121、N131、N141、N151)及び第2候補(N122、N132、N142、N152)が算出される場合を想定する。このとき、レシオRは、以下に示すように、整数値バイアスの実数解と整数値バイアスの整数解の第1候補との間の距離(ノルム)と、整数値バイアスの実数解と整数値バイアスの整数解の第2候補との間の距離と、の比である。レシオRは、一般的に、高い値であるほど整数値バイアスの整数解の第1候補の信頼性が高いことを表している。
【0081】
R={(n12−N122+(n13−N132+(n14−N142+(n15−N152}/{(n12−N121+(n13−N131+(n14−N141+(n15−N151} …(13)
【0082】
そして、レシオRを所定値β、βと比較し、信頼性を例えば「高」、「中」、「低」の三段階で判定する(S202)。すなわち、レシオRが所定値β(例えば、3程度の値)以上であれば信頼性を「高」とし、レシオRが所定値β(例えば、1.5程度)以上、所定値β未満であれば信頼性を「中」とし、レシオRが所定値β未満であれば信頼性を「低」とする。
【0083】
信頼性が「高」である場合は、その旨を示す信号を他の非基準車両Cに送信する(S204)。そして、非基準車両Cからも非基準車両Cで判定した信頼性が「高」である旨を示す信号を受信した場合には、今回非基準車両B、Cで算出された整数値バイアスの整数解が正しいと判断し、各車両で当該整数解をFIXし、以後、当該整数解を用いたRTK測位演算により車両間の相対位置を算出する(S206、S208)。
【0084】
一方、信頼性は「中」である場合は、非基準車両Cに要求して非基準車両Cにおける観測データを取得する(S210)。そして、非基準移動体Cと自車両の関係についてRTK測位演算を行なうように干渉測位演算部66に指示する(S212)。更に、算出された整数値バイアスの二重位相差NjhBCが、NjhABとNjhACの差分と一致するか否かを判定し(S214)、整数値バイアスの二重位相差が上記差分と一致する場合は、信頼性が「高」であるとみなして、信頼性が「高」である旨を他の非基準車両Cに送信する(S204)。
【0085】
S202において信頼性が「低」と判定された場合、及びS214において整数値バイアスの二重位相差が一致しなかった場合は、レシオRを低下させている衛星を特定する(S216)。具体的には、上記の例では、(1,2)、(1,3)、(1,4)及び(1,5)のうち1つを順番に除外してレシオテストをそれぞれ実行し、例えば(1,3)を除外した場合にレシオRが所定値以上上昇した場合には、3番目の衛星がレシオRを低下させていると判断する。
【0086】
そして、特定した衛星を除外して行なったレシオテストにより算出されたレシオRを所定値β、βと比較し、信頼性を判定する(S218)。ここで信頼性が「高」となった場合には、信頼性が「高」であるとみなして、信頼性が「高」である旨を他の非基準車両Cに送信する(S204)。
【0087】
S218において信頼性が「中」又は「低」であった場合は、S212において取得された観測データにより算出される位相積算値ΦjhBC(S212を経由していない場合は、非基準車両Cに要求して非基準車両Cにおける観測データを取得する)を用いて、第1実施例で説明した式(11)の不等式を満たすか否かを判定する(S220)。この際に、基準車両Aでは電波信号が観測されなかった衛星についての観測データを位相積算値ΦjhBCに反映させてよい。また、式(11)は2衛星を選択して計算するものであるため、S216において特定した衛星を除外した組み合わせを選択する。式(11)の不等式を満たす場合は、信頼性が「高」であるとみなして、信頼性が「高」である旨を他の非基準車両Cに送信する(S204)。
【0088】
S220において否定的な判定を得た場合は、今回算出された整数値バイアスが信頼できないものとして、非基準車両Bから非基準車両Cに信頼性が「高」である旨の送信を行なわない(S222)。すなわち、整数値バイアスの整数解をFIXしない。この場合、既に算出されている整数値バイアスを引き続き使用する等の暫定措置がとられることとなる。
【0089】
本実施例の相対位置検知システム2によれば、レシオテストにより信頼性の高さが確認できなかった場合でも、レシオRを低下させている衛星を除外して再度レシオテストを行なうため、干渉測位に関する信頼性の向上を図ることができる。
【0090】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0091】
例えば、各実施例において瞬時測位法により整数値バイアスの実数解を求めているが、整数値バイアスの実数解の算出方法は、多種多様であり、上述の方法以外の他の方法が採用されてもよい。例えば、擬似距離の二重位相差を用いずに、位相積算値の二重位相差だけを用いる方法も可能である。
【0092】
また、GPS受信機が、GPS衛星から発信されるL1波及びL2波(周波数:1227.6MHz)の双方を受信可能な2周波受信機である場合には、L2波に対する位相積算値の二重位相差が追加的若しくは代替的に観測量Zとして用いられてよい。また、他の帯域の搬送波(例えば、今後追加が予定されているL5帯の電波)に対する位相積算値の二重位相差が追加的若しくは代替的に観測量Zとして用いられてよい。同様に、擬似距離の二重位相差についても、C/Aコード以外の同様のPRNコード(擬似雑音符号)(例えば、Pコード等)に基づく擬似距離の一重又は二重位相差が、追加的若しくは代替的に観測量Zとして用いられてよい。上述した整数値バイアスの実数解の算出方法では、上述の如く二重位相差を取ることでGPS受信機内での発振器の初期位相、及び、時計誤差等の影響を消去しているが、一重位相差を取る構成であってもよい。また、上述の方法では、電離層屈折効果、対流圏屈折効果及びマルチパスの影響を無視しているが、これらを考慮するものであってもよい。
【0093】
また、第1実施例において、非基準車両Cが信頼性が低いと判定した後に、第2実施例のS212、S214と同様に、非基準車両Bに要求して非基準車両Bにおける観測データを取得し、非基準移動体Bと自車両の関係について干渉測位を行なって算出された整数値バイアスの二重位相差NjhBCが、NjhABとNjhACの差分と一致するか否かを判定し、一致する場合は信頼性が高いとみなしてもよい。
【0094】
また、上述の実施例では、GPSに本発明が適用された例を示したが、本発明は、GPS以外の衛星システム、例えばガリレオ等の他のGNSS (Global Navigation Satellite System)にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】相対位置検知システム1のシステム構成を模式的に示す図である。
【図2】相対位置検知装置30の構成例を示す図である。
【図3】相対位置検知システム1において各車両が行なう処理の分担を示す図である。
【図4】相対位置検知システム1において各車両が行なう処理の流れを示すシーケンス図である。
【図5】第2実施例に係る非基準車両の制御装置60(主に信頼性判定部68)が、RTK測位演算を行なった後に実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
1、2 相対位置検知システム
30、30A、30B、30C、… 相対位置検知装置
40 GPS受信機
50 通信装置
60 制御装置
62 通信制御部
64 単独測位演算部
66 干渉測位演算部
68 信頼性判定部
A、B、C、… 移動体(車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、他の移動体との相対位置を検知する相対位置検知装置であって、
衛星電波を観測して観測データを取得する観測データ取得手段と、
他の移動体との通信を行なうための通信手段と、
該観測データ取得手段により取得された観測データ、及び前記通信手段により他の移動体から受信された観測データを用いて測位演算を行なう測位演算手段と、を備え、
自己が搭載された移動体を含む3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、
自己が搭載された移動体が基準移動体である場合には、前記観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを該基準移動体でない非基準移動体に送信し、
自己が搭載された移動体が前記非基準移動体である場合には、前記観測データ取得手段により取得された観測データ及び前記基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって前記基準移動体との相対位置を算出すると共に、該干渉測位において算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して前記干渉測位に関する信頼性判定結果を受信する処理と、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して前記干渉測位に関する信頼性判定を行なう処理とのいずれか一方を行なう、
相対位置検知装置。
【請求項2】
自己が基準移動体であるか、非基準移動体であるかを、他の移動体との通信に基づき決定する、請求項1に記載の相対位置検知装置。
【請求項3】
自己が非基準移動体である場合に、前記干渉測位において算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して前記干渉測位に関する信頼性判定結果を受信するか、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して前記干渉測位に関する信頼性判定を行なうかを、他の非基準移動体との通信に基づき決定する、請求項1又は2に記載の相対位置検知装置。
【請求項4】
移動体に搭載され、他の移動体との相対位置を検知する相対位置検知装置であって、
衛星電波を観測して観測データを取得する観測データ取得手段と、
他の移動体との通信を行なうための通信手段と、
該観測データ取得手段により取得された観測データ、及び前記通信手段により他の移動体から受信された観測データを用いて測位演算を行なう測位演算手段と、を備え、
自己が搭載された移動体を含む3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、
自己が搭載された移動体が基準移動体である場合には、前記観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを該基準移動体でない非基準移動体に送信し、
自己が搭載された移動体が前記非基準移動体である場合には、前記観測データ取得手段により取得された観測データ及び前記基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって前記基準移動体との相対位置を算出すると共に該干渉測位に関するレシオテストを行ない、該レシオテストのレシオ値が所定値以下であるときには、レシオ値を低下させている衛星を特定すると共に該特定した衛星を除外して再度レシオテストを行なう、
相対位置検知装置。
【請求項5】
自己が基準移動体であるか、非基準移動体であるかを、他の移動体との通信に基づき決定する、請求項4に記載の相対位置検知装置。
【請求項6】
前記レシオテストを再度行なった際に得られるレシオ値が所定値以下であるときには、他の非基準移動体との観測データ授受を行なって、該他の非基準移動体と自己の関係について干渉測位を行ない又は該他の非基準車両に干渉測位を行なわせ、該干渉測位の結果と前記基準移動体と自己の関係についての干渉測位の結果との比較に基づき信頼性判定を行ない又は前記他の非基準車両から信頼性判定結果を受信する、請求項4又は5に記載の相対位置検知装置。
【請求項7】
他の非基準移動体と自己の関係について干渉測位を行なうか、該他の非基準車両に干渉測位を行なわせるかを、該他の非基準移動体との通信に基づき決定する、請求項6に記載の相対位置検知装置。
【請求項8】
前記他の非基準移動体と自己の関係についての干渉測位は、前記基準車両と自己の関係についての干渉測位において用いられなかった衛星を採用可能とする、請求項6又は7に記載の相対位置検知装置。
【請求項9】
衛星電波を観測して観測データを取得する観測データ取得手段と、他の移動体との通信を行なう通信手段と、該観測データ取得手段により取得された観測データ、及び前記通信手段により他の移動体から受信された観測データを用いて測位演算を行なう測位演算手段と、を備える相対位置検知装置が搭載された3台以上の移動体により構成される相対位置検知システムであって、
該相対位置検知システムを構成する3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、
前記3台以上の移動体のうち基準移動体は、前記観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを他の移動体に送信し、
前記3台以上の移動体のうち前記非基準移動体は、前記観測データ取得手段により取得された観測データ及び前記基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって前記基準移動体との相対位置を算出すると共に、該干渉測位において算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して前記干渉測位に関する信頼性判定結果を受信する処理と、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して前記干渉測位に関する信頼性判定を行なう処理と、のいずれか一方を行なう、
相対位置検知システム。
【請求項10】
該相対位置検知システムを構成する3台以上の移動体が互いに通信を行なって、各移動体を基準移動体又は非基準移動体として決定する、請求項9に記載の相対位置検知システム。
【請求項11】
各非基準移動体が互いに通信を行なって、各非基準移動体が、前記干渉測位において算出される整数値バイアスを含むデータを他の非基準移動体に送信して前記干渉測位に関する信頼性判定結果を受信するか、他の非基準移動体から整数値バイアスを含むデータを受信して前記干渉測位に関する信頼性判定を行なうかを決定する、請求項9又は10に記載の相対位置検知システム。
【請求項12】
衛星電波を観測して観測データを取得する観測データ取得手段と、他の移動体との通信を行なう通信手段と、該観測データ取得手段により取得された観測データ、及び前記通信手段により他の移動体から受信された観測データを用いて測位演算を行なう測位演算手段と、を備える相対位置検知装置が搭載された3台以上の移動体により構成される相対位置検知システムであって、
該相対位置検知システムを構成する3台以上の移動体が互いに通信可能な所定の場面において、
前記3台以上の移動体のうち基準移動体は、前記観測データ取得手段により取得された観測データを含むデータを該基準移動体でない非基準移動体に送信し、
前記3台以上の移動体のうち前記非基準移動体は、前記観測データ取得手段により取得された観測データ及び前記基準移動体から受信した観測データを含むデータを用いた干渉測位を行なって前記基準移動体との相対位置を算出すると共に該干渉測位に関するレシオテストを行ない、該レシオテストのレシオ値が所定値以下であるときにはレシオ値を低下させている衛星を特定すると共に該特定した衛星を除外して再度レシオテストを行なう、
相対位置検知システム。
【請求項13】
該相対位置検知システムを構成する3台以上の移動体が互いに通信を行なって、各移動体を基準移動体又は非基準移動体として決定する、請求項12に記載の相対位置検知システム。
【請求項14】
前記レシオテストを再度行なった非基準移動体は、該レシオテストを再度行なった際に得られるレシオ値が所定値以下であるときには、他の非基準移動体との観測データ授受を行なって、該他の非基準移動体と自己の関係について干渉測位を行ない又は該他の非基準車両に干渉測位を行なわせ、該干渉測位の結果と前記基準移動体と自己の関係についての干渉測位の結果との比較に基づき信頼性判定を行ない又は前記他の非基準車両から信頼性判定結果を受信する、請求項12又は13に記載の相対位置検知システム。
【請求項15】
各非基準移動体が互いに通信を行なって、各非基準移動体が、他の非基準移動体と自己の関係について干渉測位を行なうか、該他の非基準車両に干渉測位を行なわせるかを決定する、請求項14に記載の相対位置検知システム。
【請求項16】
前記他の非基準移動体と自己の関係についての干渉測位において、前記基準車両と自己の関係についての干渉測位において採用されなかった衛星を採用可能とする、請求項14又は15に記載の相対位置検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−264844(P2009−264844A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112968(P2008−112968)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】