説明

相対角度検出装置および電動パワーステアリング装置

【課題】ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを簡易な構成で実現する技術を提供する。
【解決手段】内外を連通する連通孔161が形成されたハウジング140内に収納され、2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサ30と、センサ30から出力される電気信号をハウジング140外の電子制御ユニット200に伝送する電線310と、連通孔161に嵌合されて電線310を保持するグロメット320と、連通孔161におけるグロメット320よりも外側の部位に配置されるソケット330と、を備え、ソケット330は、連通孔161の孔方向と交差する方向に分割可能な下側部材340および上側部材331を有し、下側部材340および上側部材331の内部に電線310を通すとともに下側部材340および上側部材331で押圧することでハウジング140外の電線310の向きを孔方向と交差する方向に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対角度検出装置および電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の装置は、トーションバーにより同軸的に連結された第1の回転体及び第2の回転体が有する磁気回路形成部材の外周りに軸線方向へ離隔して配置され、該磁気回路形成部材が発生した磁束を集める2つの集磁環と、各集磁環が集めた磁束の密度に基づいて第1の回転体に加わったトルクを検出する検出部と、集磁環及び検出部を保持し、且つ外周部にハウジングに取着される取着部を有する保持環と、検出部に接続された導線とを備えている。そして、検出部は集磁環の凸片間に発生する磁束密度の変化に応じて検出信号が変わるように構成されており、その検出信号は導線を介してマイクロプロセッサを用いてなる制御部に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジング内に収納されるセンサ(検出部)と、センサからの検出信号が与えられるとともにハウジング外に配置される装置とが、ハウジングの貫通孔に挿入される電線保持部材(グロメット)などに保持された電線(導線)にて接続される構成である場合、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ぶおそれがある。そして、例えば電線の端部がコネクタに連結され、コネクタが接続端子に差し込まれている場合、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ぶと、コネクタから電線が脱落したり、コネクタが差し込まれた接続端子が折れたりしてしまうおそれがある。また、ハウジング外にて電線に力が作用することで、電線保持部材(グロメット)における電線のシール性が悪化するおそれがある。
【0005】
これに対して、例えば板金で形成されたプレートをハウジングの外側に配置することで、ハウジングに形成された貫通孔に挿入された電線保持部材(グロメット)の抜け止めと、電線の支持とを行うことも考えられる。しかしながら、かかる構成において、ハウジングがアルミニウム製である場合には、プレートとハウジングとの間に電気化学的腐蝕が生じることに起因して電線保持部材(グロメット)が脱落するおそれがある。また、プレートをハウジングの外側に配置する分の組立て工数が増加してしまう。
本発明は、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、電線保持部材における電線保持部、およびハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを簡易な構成で実現する装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に配置される外側部材と、を備え、前記外側部材は、前記ハウジングに形成された前記連通孔の孔方向と交差する方向に分割可能な一対の分割部材を有し、当該一対の分割部材の内部に前記電線を通すとともに当該一対の分割部材で押圧することで当該ハウジング外の当該電線の向きを当該孔方向と交差する方向に変更することを特徴とする相対角度検出装置である。
【0007】
ここで、前記一対の分割部材の内部の前記電線の通路の前記連通孔の孔方向の形状は、前記ハウジング外の当該電線の向きとは反対方向に凸となる山形状であるとよい。
また、前記一対の分割部材は、前記ハウジングに形成された前記連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有するとよい。
また、前記一対の分割部材の前記凸部は、当該一対の分割部材の分割方向と交差する交差方向の両端部それぞれに当該交差方向に弾性変形可能に設けられ、当該凸部が前記ハウジングの前記凹部に嵌り合っている状態のときに当該凸部の内側に配置されて当該凸部の弾性変形を抑制する変形抑制部材をさらに備えているとよい。
また、前記変形抑制部材は、前記一対の分割部材の前記凸部が前記ハウジングの前記凹部に嵌り合っている状態のときに当該凸部の内側に配置されて当該凸部の弾性変形を抑制する変形抑制部と、当該ハウジングにおける前記連通孔を形成する周囲の壁と前記外側部材との間の隙間をカバーするカバー部と、が一体的に成形されているとよい。
【0008】
他の観点から捉えると、本発明は、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、前記センサを収納するとともに、内外を連通する連通孔が形成されたハウジングと、前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に配置される外側部材と、を備え、前記外側部材は、前記ハウジングに形成された前記連通孔の孔方向と交差する方向に分割可能な一対の分割部材を有し、当該一対の分割部材の内部に前記電線を通すとともに当該一対の分割部材で押圧することで当該ハウジング外の当該電線の向きを当該孔方向と交差する方向に変更することを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、電線保持部材における電線保持部、およびハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを、簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る検出装置を適用した電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図2】実施の形態に係る検出装置の斜視図である。
【図3】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図4】図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図5】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図6】磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図7】(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。(b)は、(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
【図8】磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
【図9】MRセンサの他の例を示す図である。
【図10】磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。
【図11】MRセンサの配置の例を示す図である。
【図12】MRセンサの他の例を示す図である。
【図13】本実施の形態に係るハーネスコンプの外観図である。
【図14】グロメットおよびソケットの概略構成図である。
【図15】(a)は、第2ハウジングの概略構成図である。(b)は、(a)におけるB−B断面図である。(c)は、ハーネスコンプが第2ハウジングに装着された状態を示す図である。
【図16】ハウジングの他の形態を示す図である。
【図17】他の実施形態に係るハーネスコンプのソケットおよび抜け止め部材の概略構成図である。
【図18】他の形態に係るハーネスコンプが第2ハウジングに装着された状態を示す図である。
【図19】(a)は、図18のXIX−XIX部の断面図であり、(b)は、抜け止め部材を取り外す様子を示す図である。
【図20】他の実施形態に係る抜け止め部材の概略構成を示す図である。
【図21】他の形態に係る抜け止め部材を有するハーネスコンプが第2ハウジングに装着された状態を示す図である。
【図22】図21のXXII−XXII部の断面図である。
【図23−1】他の実施形態に係るソケットの概略構成図である。
【図23−2】他の実施形態に係るソケットの概略構成図である。
【図24】図23−1のXXIV−XXIV部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る検出装置10を適用した電動パワーステアリング装置100の断面図である。図2は、実施の形態に係る検出装置10の斜視図である。なお、図2においては、構成を分かり易くするために後述するベース50およびフラットケーブルカバー60の一部は省略して示している。
【0012】
電動パワーステアリング装置100は、同軸的に回転する第1の回転軸110と第2の回転軸120とを備えている。第1の回転軸110は、例えばステアリングホイールが連結される回転軸であり、第2の回転軸120は、トーションバー130を介して第1の回転軸110に同軸的に結合されている。そして、第2の回転軸120に形成されたピニオン121が、車輪に連結されるラック軸(不図示)のラック(不図示)と噛み合っており、第2の回転軸120の回転運動がピニオン121,ラックを介してラック軸の直線運動に変換され、車輪が操舵される。
【0013】
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110および第2の回転軸120を回転可能に支持するハウジング140を備えている。ハウジング140は、例えば自動車などの乗り物の本体フレーム(以下、「車体」と称する場合もある。)に固定される部材であり、第1ハウジング150、第2ハウジング160および第3ハウジング170から構成される。
第1ハウジング150は、第2の回転軸120を回転可能に支持する軸受け151を、第2の回転軸120の回転軸方向(以下、単に「軸方向」と称する場合もある。)の一方の端部側(図1においては下側)に有し、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)が開口した部材である。
【0014】
第2ハウジング160は、軸方向の両端部が開口した部材であり、その軸方向の一方の端部側の開口部が第1ハウジング150における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置される。そして、第2ハウジング160は、例えばボルトなどにより第1ハウジング150に固定される。第2ハウジング160の側面には、内外を連通する連通孔161が形成されている。連通孔161は、後述するハーネスコンプ300のグロメット320が嵌合される略楕円柱状の内側連通孔161aと、ハーネスコンプ300のソケット330が嵌合される略楕円柱状の外側連通孔161bと、を含んで構成されている。外側連通孔161bは、内側連通孔161aに対して、楕円の短辺方向は同じであるが長辺方向には大きく形成されている。また、第2ハウジング160には、連通孔161における楕円柱の柱方向(連通孔方向)の途中に、連通孔161の外側連通孔161bを形成する面から凹んだ凹部162(図15参照)が楕円における長辺方向の両側に形成されている。凹部162は、半月柱状であり、柱方向に垂直な面である2つの垂直面162aを有する。
第3ハウジング170は、第1の回転軸110を回転可能に支持する軸受け171を、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)に有し、軸方向の一方の端部側(図1においては下側)が開口した部材である。そして、軸方向の一方の端部側の開口部が第2ハウジング160における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置されるとともに、例えばボルトなどにより第2ハウジング160に固定される。
【0015】
また、電動パワーステアリング装置100は、例えば圧入などにより第2の回転軸120に固定されたウォームホイール180と、このウォームホイール180と噛み合うウォームギヤ191が出力軸に連結されるとともに第1ハウジング150に固定される電動モータ190とを備えている。
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する検出装置10と、この検出装置10からの出力値に基づいて電動モータ190の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)200とを備えている。
【0016】
ECU200は、各種演算処理を行うCPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、を用いて、検出装置10からの出力値を基に第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を演算する相対角度演算部210を備えている。
検出装置10については、後で詳述する。
【0017】
以上のように構成された電動パワーステアリング装置100においては、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクが第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度として現れることに鑑み、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に基づいて操舵トルクを把握する。つまり、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を検出装置10にて検出し、検出装置10からの出力値に基づいてECU200が操舵トルクを把握し、把握した操舵トルクに基づいて電動モータ190の駆動を制御する。そして、電動モータ190の発生トルクをウォームギヤ191、ウォームホイール180を介して第2の回転軸120に伝達する。これにより、電動モータ190の発生トルクが、ステアリングホイールに加える運転者の操舵力をアシストする。
【0018】
以下に、検出装置10について詳述する。
検出装置10は、第1の回転軸110に取り付けられる磁石20と、この磁石20の磁場(磁石20から発生される磁界)に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサ30と、この相対角度センサ30を実装するプリント基板40と、を備えている。また、検出装置10は、第2の回転軸120に取り付けられるとともにプリント基板40を支持するベース50と、後述するフラットケーブル70を収納する有底円筒状のフラットケーブルカバー60と、を備えている。また、検出装置10は、一方の端部がプリント基板40に設けられた端子に接続されるとともに、他方の端部がフラットケーブルカバー60に固定された端子に接続されるフラットケーブル70と、フラットケーブルカバー60に固定された端子とECU200とを接続するハーネスコンプ300と、を備えている。
【0019】
磁石20は、円筒(ドーナツ)状であり、その内側に第1の回転軸110が嵌合され、この第1の回転軸110と共に回転する。そして、第1の回転軸110の円周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに円周方向に着磁されている。
相対角度センサ30は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石20の外周面の外側であり、第1の回転軸110の軸方向には磁石20が設けられた領域内となるように配置されている。本実施の形態に係る相対角度センサ30は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであるMRセンサ(磁気抵抗素子)である。そして、この相対角度センサ30が、磁石20の磁場(磁石20から発生される磁界)に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力することで、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する。この相対角度センサ30および相対回転角度の検出手法については後で詳述する。
【0020】
プリント基板40は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石20の外周面の外側に配置されるように、例えばボルトなどによりベース50に固定される。
ベース50は、円盤状の部材であり、第2の回転軸120に嵌合され、この第2の回転軸120と共に回転する。
フラットケーブルカバー60は、有底円筒状の部材であり、ハウジング140に固定される。フラットケーブルカバー60をハウジング140に固定する態様としては、以下の態様を例示することができる。すなわち、フラットケーブルカバー60の外周面に、円周方向に等間隔に複数個(本実施の形態においては90度間隔に4個)の凸部61を、外側に延出するように形成する。一方、ハウジング140の第1ハウジング150に、凸部61が嵌合される凹部151を、凸部61と同数個形成する。そして、フラットケーブルカバー60の凸部61を第1ハウジング150に形成した凹部151に嵌合することで、第2の回転軸120の回転方向の位置決めを行う。そして、第2ハウジング160でフラットケーブルカバー60の上面を押さえることで軸方向の位置決めを行う。あるいは、フラットケーブルカバー60を、例えばボルトなどにより第1ハウジング150または第2ハウジング160に固定してもよい。
【0021】
フラットケーブル70は、一方の端部がプリント基板40の端子41に接続されるとともに他方の端部がフラットケーブルカバー60の内側に設けられた接続端子62に接続されて、ベース50における軸方向の一方の端面とフラットケーブルカバー60の内側とで形成される空間内に、渦状に巻かれた状態で収納される。そして、フラットケーブル70は、軸方向の他方の端部側から見た場合に、図2に示すように、右方向に巻かれており、ステアリングホイール、言い換えれば第1の回転軸110および第2の回転軸120が右方向に回転された場合には、一方の端部が第2の回転軸120の回転に従って右方向に回転するので、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が増加する。他方、ステアリングホイールが左方向に回転された場合には、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が減少する。
ハーネスコンプ300は、相対角度センサ30からの出力信号をECU200に伝送する機能を有する。このハーネスコンプ300については後で詳述する。
【0022】
以下に、本実施の形態に係る相対角度センサ30について説明する。
本実施の形態に係る相対角度センサ30は、磁場(磁界)によって抵抗値が変化することを利用したMRセンサ(磁気抵抗素子)である。
【0023】
先ず、MRセンサの動作原理について説明する。
MRセンサは、Si若しくはガラス基板と、その上に形成されたNi−Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜で構成されており、その薄膜強磁性金属の抵抗値は、特定方向の磁界の強度に応じて抵抗値が変化する。
【0024】
図3は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図4は、図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図3に示すように、基板の上に矩形状に形成した薄膜強磁性金属に、矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流す。一方、磁界Hを、電流方向(Y方向)に対して垂直方向(図中X方向)に印加し、その状態で、磁界の強さを変更する。このときに、薄膜強磁性金属の抵抗値がどのように変化するかを示したのが図4である。
【0025】
図4に示すように、磁界の強さを変化させたとしても、無磁界(磁界強度ゼロ)時からの抵抗値変化は最大で約3%となる。
以下では、抵抗値変化量(ΔR)が、近似的に「ΔR∝H」の式で表すことができる領域外を「飽和感度領域」と称す。そして、飽和感度領域においては、ある磁界強度(以下、「規定磁界強度」と称す。)以上になると3%の抵抗値変化は変わらない。
【0026】
図5は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図6は、磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図5のように、矩形状に形成した薄膜強磁性金属の矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流し、磁界の方向として電流方向に対して角度変化θを与える。このとき、磁界の向きに起因する薄膜強磁性金属の抵抗値の変化を知るために、印加する磁界強度は、磁界強度に起因しては抵抗値が変化しない上述した規定磁界強度以上とする。
【0027】
図6(a)に示すように、抵抗変化量は、電流方向と磁界の方向が垂直(θ=90度、270度)の時に最大となり、電流方向と磁界の方向が平行(θ=0度、180度)の時に最小となる。かかる場合の抵抗値の最大の変化量をΔRとすると、薄膜強磁性金属の抵抗値Rは、電流方向と磁界方向の角度成分として変化し、式(1)のように示され、図6(b)に示すようになる。
R=R0−ΔRsinθ・・・(1)ここで、R0は、規定磁界強度以上の磁界を電流方向と平行(θ=0度あるいは180度)に印加した場合の抵抗値である。
式(1)により、規定磁界強度以上の磁界の方向は、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握することで検出することができる。
【0028】
次に、MRセンサの検出原理について説明する。
図7(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。図7(b)は、図7(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
図7(a)に示すMRセンサの薄膜強磁性金属は、縦方向が長くなるように形成された第1のエレメントE1と横方向が長くなるように形成された第2のエレメントE2とが直列に配置されている。
【0029】
かかる形状の薄膜強磁性金属においては、第1のエレメントE1に対して最も大きな抵抗値変化を促す垂直方向の磁界は、第2のエレメントE2に対し最小の抵抗値変化の磁界方向となる。そして、第1のエレメントE1の抵抗値R1は式(2)、第2のエレメントE2の抵抗値R2は式(3)で与えられる。
R1=R0−ΔRsinθ・・・(2)
R2=R0−ΔRcosθ・・・(3)
【0030】
図7(a)に示すようなエレメント構成のMRセンサの等価回路は図7(b)に示すようになる。
図7に示すように、第1のエレメントE1の、第2のエレメントE2と接続されていない方の端部をグランド(Gnd)とし、第2のエレメントE2の、第1のエレメントE1と接続されていない方の端部の出力電圧をVccとした場合に、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutは式(4)で与えられる。
Vout=(R1/(R1+R2))×Vcc…(4)
【0031】
式(4)に、式(2)、(3)を代入し整理すると、式(5)の通りとなる。
Vout=Vcc/2+α×cos2θ…(5)ここで、αは、α=(ΔR/(2(2×R0−ΔR)))×Vccである。
式(5)により、磁界の方向は、Voutを検出することで把握することができる。
【0032】
図8は、磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
図8(a)に示すように、N極とS極が交互に配列された磁石に対して、図7に示したMRセンサを、規定磁界強度以上の磁界強度が印加されるギャップ(磁石とMRセンサとの距離)Lで、かつ磁界の方向変化がMRセンサのセンサ面に寄与するように配置する。
【0033】
そして、磁石を、図8(c)に示した、N極中心からS極中心までの距離(以下、「着磁ピッチ」と称する場合もある。)λ分、図8(a)に示すように左方向に移動させる。かかる場合、MRセンサには、磁石の位置に応じて図8(c)に示した矢印の向きの磁界が印加されることとなり、磁石が着磁ピッチλを移動したとき、センサ面では磁界の方向が1/2回転する。ゆえに、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutの波形は、式(5)に示した「Vout=Vcc/2+α×cos2θ」より、図8(d)に示すように1周期の波形となる。
【0034】
図9は、MRセンサの他の例を示す図である。
図7に示したエレメント構成の代わりに図9(a)に示すようなエレメント構成にすれば、図9(b)に示すように、一般的に知られているホイートストン・ブリッジ(フルブリッジ)の構成にすることができる。ゆえに、図9(a)に示すエレメント構成のMRセンサを用いることにより検出精度を高めることが可能となる。
【0035】
磁石の運動の方向を検出する手法について説明する。
図6に示した磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係および式(1)「R=R0−ΔRsinθ」からすると、図5で見た場合に、磁界の向きを電流の方向に対して時計回転方向に回転させても反時計回転方向に回転させても薄膜強磁性金属の抵抗値は同じである。ゆえに、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握できても磁石の運動の方向は把握できない。
【0036】
図10は、磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。図10のように1/4周期の位相差を持った2つの出力を組み合わせることで磁石の運動方向の検知が可能となる。これらの出力を得る為には、図8で示す(i)と(ii)又は(i)と(iv)の位相関係となるように、二つのMRセンサを配置すればよい。
図11は、MRセンサの配置の例を示す図である。図11に示すように2つのMRセンサを重ね、一方のセンサを他方のセンサに対して45度傾けて配置することも好適である。
【0037】
図12は、MRセンサの他の例を示す図である。図12(a)に示すように、2組のフルブリッジ構成のエレメントを互いに45度傾けて一つの基板上に形成し、図12(b)に示すような等価回路となるエレメント構成にすることも好適である。これにより、一つのMRセンサで、図12(c)に示すように、正確な正弦波、余弦波の出力が可能となる。それゆえ、図12に示すエレメント構成のMRセンサの出力値により、MRセンサに対する磁石の運動方向及び運動量を把握することができる。
【0038】
上述したMRセンサの特性に鑑み、本実施の形態に係る検出装置10においては、相対角度センサ30として、図12に示すエレメント構成のMRセンサを用いる。相対角度センサ30は、上述したように、磁石20の外周面に対して垂直に配置され、第2の回転軸120の軸方向の位置は、磁石20の領域内である。それゆえ、かかる場合には、第1の回転軸110と共に回転する磁石20の磁場により、相対角度センサ30では、磁石20の位置に応じて、図8(c)に示すような磁場方向の変化となる。
【0039】
その結果、磁石20が着磁ピッチλを移動(回転)したとき、相対角度センサ30の感磁面では磁場の方向が1/2回転すると共に、相対角度センサ30からの出力値VoutA,VoutBは、それぞれ図12(c)に示すような1/4周期の位相差となる余弦曲線(余弦波)および正弦曲線(正弦波)となる。
すなわち、運転者がステアリングホイールを回転すると、これに伴って第1の回転軸110が回転し、トーションバー130が捩れる。そして、第2の回転軸120が第1の回転軸110より少し遅れて回転する。この遅れは、トーションバー130に連結された第1の回転軸110と第2の回転軸120との回転角度の差となって現れる。検出装置10は、この回転角度の差に応じた、1/4周期の位相差の、余弦曲線および正弦曲線となるVoutA,VoutBを出力する。
なお、相対角度センサ30の感磁面とは、相対角度センサ30において磁場を検出することができる面のことである。
【0040】
ECU200の相対角度演算部210は、相対角度センサ30の出力値VoutAおよびVoutBを基に、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度θtを以下の式(6)を用いて演算する。θt=arctan(VoutB/VoutA)…(6)
このようにして、相対角度演算部210は、相対角度センサ30からの出力値に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度及び捩れ方向、つまりはステアリングホイールに加わるトルクの大きさ及び向きを把握することが可能となる。
【0041】
また、上述のように構成された検出装置10を組み付ける際には、フラットケーブルカバー60と、プリント基板40を取り付けたベース50と、フラットケーブルカバー60とベース50との間に収容するフラットケーブル70と、を予めユニット化しておく。そして、そのユニットを、第2の回転軸120が組み付けられた第1ハウジング150に、フラットケーブルカバー60の凸部61が第1ハウジング150の凹部151に嵌るように取り付ける。その際、ベース50を、第2の回転軸120に取り付ける。
このように、検出装置10を予めユニット化が可能な構造とすることで組み付け性を向上させることができる。
【0042】
次に、ハーネスコンプ300について説明する。
図13は、本実施の形態に係るハーネスコンプ300の外観図である。
ハーネスコンプ300は、複数の電線310と、これら複数の電線310を保持する電線保持部材の一例としてのグロメット320と、グロメット320の移動を抑制するソケット330と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、複数の電線310の一方の端部に連結される第1のコネクタ350と、複数の電線310の他方の端部に連結される第2のコネクタ360と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、グロメット320と第1のコネクタ350との間において複数の電線310を束ねる第1のカバー370と、グロメット320と第2のコネクタ360との間において複数の電線310を束ねる第2のカバー380と、を備えている。
【0043】
そして、本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が、第1のコネクタ350などを介してプリント基板40に、4本の電線310の他方の端部が、第2のコネクタ360などを介してECU200に接続されている。そして、4本の電線310が、ECU200から相対角度センサ30への電源供給や、相対角度センサ30からECU200への出力値の伝送に用いられる。
【0044】
電線310は、線状に引き伸ばされた金属などの導体が絶縁体で覆われたものであり、電気を伝導する。本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が第1のコネクタ350に接続され、他方の端部が第2のコネクタ360に接続されるとともに、絶縁体の第1のカバー370および第2のカバー380にて束ねられている。
【0045】
図14は、グロメット320およびソケット330の概略構成図である。(a)は、第2のコネクタ360側から見た斜視図であり、(b)は、第1のコネクタ350側から見た斜視図である。(c)は、(a)におけるA−A断面図である。
図15(a)は、第2ハウジング160の概略構成図である。図15(b)は、(a)におけるB−B断面図である。図15(c)は、ハーネスコンプ300が第2ハウジング160に装着された状態を示す図である。
【0046】
グロメット320は、略楕円柱状の楕円柱部321と、円筒状の円筒部322とを備えている。そして、楕円柱部321には、電線310を通すために柱方向に形成された電線孔323が電線310の数と同数(本実施の形態においては4つ)形成されている。また、楕円柱部321の外周面には、周方向の全周に亘って外周面から外側に突出する突起324が、柱方向(電線孔323の孔方向(以下、「電線孔方向」と称する場合もある。))に複数(本実施の形態においては3つ)設けられている。突起324の最外周部の大きさは第2ハウジング160の連通孔161の内側連通孔161aの大きさよりも大きい。楕円柱部321の外周面は、第2ハウジング160の連通孔161の内側連通孔161aを形成する周囲の壁163の内周面の大きさと同じかやや小さく、第2ハウジング160に嵌合された状態では、その外周面から外側に突出する突起324が周囲の壁163に押されることにより全体的に内側に弾性変形する。これにより、グロメット320は、第2ハウジング160の連通孔161の内側連通孔161aをシールするとともに、電線孔323の周囲部分にて電線孔323に挿入された電線310を押圧し、電線310の移動を抑制する。なお、このグロメット320は、ゴムなどの弾性材料を加硫成形することで上記所定形状に成形されている。
【0047】
ソケット330は、第2ハウジング160の連通孔161の孔方向と交差する方向に分割可能な一対の分割部材を有している。本実施の形態においては、軸方向に分割可能であり、図14では下側に配置される下側部材340と、上側に配置される上側部材331とを有している。また、ソケット330は、下側部材340と上側部材331との間に配置され、ソケット330が第2ハウジング160の連通孔161から抜けるのを防止する抜け止め部材336を、複数(本実施の形態においては2つ)有している。このソケット330は、樹脂をインジェクション成形することで下記所定形状に成形されている。また、ソケット330は、第2ハウジング160の連通孔161におけるグロメット320よりも外側の部位に配置される外側部材の一例として機能する。
【0048】
下側部材340は、上側部材331を支持する支持部341と、中央部に第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を通す貫通孔342aが形成された楕円柱状の楕円柱部342と、を有している。また、下側部材340は、楕円柱部342における支持部341が配置された側とは反対側の端面から外側に三日月柱状に突出した三日月柱部343を楕円の長辺方向の両側に2つ備える。これら支持部341、楕円柱部342および三日月柱部343は、第2のコネクタ360側から順に電線孔方向に並んでいる。
【0049】
支持部341は、上側部材331の後述する凸部332が嵌合される凹部341aと、上側部材331の後述する下面333を支持する支持面341bと、が形成されている。凹部341aおよび支持面341bは、楕円柱部342における楕円の長辺方向に2つ形成されている。
また、支持部341には、楕円柱部342における楕円の長辺方向の中央部に、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の通路である電線路344が形成されている。電線路344は、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の下部が載る載置面344aを有し、楕円柱部342における楕円の長辺方向への電線310の移動を規制する2つの規制壁344bにて区画されている。載置面344aの電線孔方向の形状は、図1に示すように、楕円柱部342側が電線孔方向に平行であり、第2のコネクタ360側の端部は軸方向の一方の端部方向(図1では下方向)に向かうように形成され、その間は、軸方向の他方の端部方向(図1では上方向)に凸となる山形状に形成されている。
【0050】
楕円柱部342は、基本的には楕円柱状の板状の部位であり、その支持部341側の端面から電線孔方向に支持部341側に突出し、長辺方向、言い換えれば下側部材340と上側部材331との分割方向と交差する方向に弾性変形するフック390を、楕円の長辺方向の両端部に備えている。フック390は、その外側の面が楕円柱部342の外周面に沿うように形成されている。そして、フック390は、楕円柱部342の楕円柱状の外周面から外側に突出するように電線孔方向に対して傾斜した傾斜面391と、傾斜面391の終端から長辺方向の内側に長辺方向と平行に向かう面、言い換えれば電線孔方向に垂直な面である垂直面392とを、電線孔方向の途中に備えている。そして、傾斜面391の始端と楕円柱部342の本体との間には、傾斜面391および垂直面392が長辺方向に弾性変形し易くなるように長孔393が形成されている。
そして、下側部材340の支持部341には、フック390の周囲に、フック390が所望量弾性変形しても干渉しないように凹んだフック用凹部345が形成されている。
【0051】
上側部材331は、下側部材340の支持部341に支持される被支持部334と、被支持部334よりも外側に配置されて第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を、軸方向の一方の端部方向(図14では下方向)に向かうように案内する案内部335と、を有している。
上側部材331の被支持部334における軸方向の一方の端部側の面(図14では下側の面)である下面333には、この下面333から軸方向の一方の端部方向に突出する円柱状の凸部332が楕円柱部342における楕円の長辺方向に2つ設けられている。また、下面333の、楕円柱部342における楕円の長辺方向の中央部に、下側部材340の電線路344と協働して第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の通路を形成する電線路(不図示)が形成されている。この電線路は、上側部材331が下側部材340に取り付けられ、上側部材331の下面333と下側部材340の支持面341bとが接触した状態で、下側部材340の電線路344との間に、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310が通る空間を形成するように形成されている。
【0052】
また、被支持部334には、フック390の周囲に、フック390が所望量弾性変形しても干渉しないように凹んだフック用凹部331aが形成されている。
上側部材331の凸部332が下側部材340の凹部341aに嵌合され、上側部材331の下面333と下側部材340の支持面341bとが接触した状態では、上側部材331の被支持部334および下側部材340の支持部341の外周面は、楕円柱部342の外周面と同じとなるように形成されている。
【0053】
案内部335は、被支持部334におけるグロメット320が配置された側とは反対側の端面から外側に突出し、この端面から軸方向の一方の端部方向(図14では下方向)に屈曲するとともに、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の周囲3方向を覆う。つまり、下側部材340の電線路344と協働して通路を形成するように、電線路344の載置面344aと対向する部位に壁が設けられておらず、また、軸方向の一方の端部(図14では最下端部)が開口している。
【0054】
抜け止め部材336は、ソケット330の楕円の長辺方向の両側に設けられたフック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に配置される。抜け止め部材336は、フック390が第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌り合っている状態のときにフック390の内側に配置されてフック390の弾性変形を抑制する変形抑制部材の一例である。抜け止め部材336は、電線孔方向に伸びる直方体状の基体336aと、基体336aの電線孔方向の外側の端部から電線路344の方へ向かう屈曲部336bと、を有している。
【0055】
基体336aは、軸方向の一方の端面(図14では下側の端面)から下側(下側部材340側)に突出する下側突起336cと、軸方向の他方の端面(図14では上側の端面)から上側(上側部材331側)に突出する上側突起336dと、楕円の長辺方向の電線路344側の端面から電線路344側に突出する内側突起336eと、を有している。これら下側突起336c、上側突起336dおよび内側突起336eは、それぞれ電線孔方向に対して傾斜した傾斜面と、この傾斜面の終端から電線孔方向に垂直な方向と平行に向かう垂直面と、を有している。
屈曲部336bは、ソケット330の楕円の長辺方向に対して傾斜した傾斜面を、その先端であって、電線孔方向の内側に有している。屈曲部336bには、屈曲部336bの軸方向の中央部には先端から凹んだ凹部336fが形成されている。
【0056】
以上のように構成されたハーネスコンプ300は、以下のようにして組み立てられる。
すなわち、先ず、グロメット320に形成された複数の電線孔323それぞれに電線310を挿入する。その後、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤を塗布し、グロメット320に対して複数の電線310が動かないように位置決めを行う。また、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。
そして、グロメット320の円筒部322側に配置された第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、ソケット330の下側部材340の楕円柱部342の貫通孔342aに通し、下側部材340の電線路344の載置面344aに載せる。その後、上側部材331を下側部材340に取り付ける。つまり、上側部材331の凸部332が下側部材340の凹部341aに嵌合し、上側部材331の下面333を下側部材340の支持面341bに接触させる。その結果、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310は、図13に示すように、上側部材331の案内部335により下方向に案内される。つまり、本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、上側部材331と下側部材340とで押圧することで、グロメット320の電線孔323の孔方向(電線孔方向)と交差する方向であり、電線孔方向とは直交する方向の下方向へ屈曲させる。また、ソケット330の内部において、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310は、下側部材340の電線路344と上側部材331の被支持部334の電線路とで、図13で上方向に凸となる山形状に屈曲させられている。なお、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤が塗布されているので、ソケット330の上側部材331を下側部材340に嵌合する際に複数の電線310に力を加えたとしても電線310がずれることが抑制される。
そして、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。他方、グロメット320の円筒部322が配置された側とは反対に配置された第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続する。
【0057】
また、このハーネスコンプ300は、以下のようにして電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
すなわち、第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、検出装置10などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、グロメット320の突起324が連通孔161の内周面に接触するように嵌合するとともに、ソケット330のフック390が、第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌るまで、グロメット320およびソケット330を押し込んでいく。ソケット330を連通孔161に差し込むと、フック390の傾斜面391が第2ハウジング160における連通孔161の周りの壁に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて傾斜面391が第2ハウジング160の凹部162に嵌り込むことで変形状態から復帰する。グロメット320は、その楕円柱部321における円筒部322が配置された側の面がソケット330の三日月柱部343に押されることにより、連通孔161の周囲の壁163との間に生じる摩擦力に抗して内側へ移動する。このようにして、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160に装着する。そして、抜け止め部材336を、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込む。また、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子に、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。
【0058】
他方、ハーネスコンプ300を取り外す場合には、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子から取り外した後、抜け止め部材336を引き抜くとともに、第2ハウジング160の外側からソケット330のフック390を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。抜け止め部材336には凹部336fが形成されていることから、この凹部336fに、工具(例えばマイナスドライバ)の先端を差し込むことで、抜け止め部材336を容易に取り外すことが可能である。そして、その後、第1のコネクタ350を第2ハウジング160の連通孔161から引き抜き、ハーネスコンプ300を取り外す。
【0059】
以上のように構成され、第2ハウジング160に装着されるハーネスコンプ300においては、グロメット320が第2ハウジング160に嵌合されると、主にグロメット320の突起324にてハウジング140内を密封する。また、グロメット320の突起324が第2ハウジング160の連通孔161の周囲の壁163に押されることで電線孔323の径が小さくなるように弾性変形し、複数の電線310をより強く保持する。また、複数の電線310は、グロメット320の円筒部322の内側に塗布された接着剤にて接着されている。また、ソケット330の上側部材331と下側部材340とでソケット330内部では山形状に屈曲させられるとともに、ハウジング140の外側では、電線孔方向とは直交する方向の下方向へ屈曲させられる。これらにより、組み付けられた後、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320が電線310を保持している部位にはその力が伝わり難くなり、電線310がグロメット320に対して移動することが抑制される。例えば、ハウジング140の外側にて第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310が軸方向の一方の端部方向(図1では下方向)に引っ張られたとしても、ソケット330の内部では、電線310がソケット330の上側部材331と下側部材340とで押圧され、軸方向の他方の端部方向(図1では上方向)に凸となる山形状に変形させられているのでグロメット320が電線310を保持している部位にはその力が伝わり難い。なお、グロメット320の円筒部322の半径方向の大きさは、ソケット330の三日月柱部343および楕円柱部342の貫通孔342aの内面との間に隙間が空くように設定されており、また、円筒部322の電線孔方向には楕円柱部342の貫通孔342aがあることから、グロメット320の電線孔323の径が小さくなり、電線孔方向に大きくなるように弾性変形することが許容される。
【0060】
また、抜け止め部材336が、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込まれているので、ソケット330のフック390が内側に変形することが抑制される。抜け止め部材336の下側突起336c、上側突起336dおよび内側突起336eは、傾斜面と垂直面とを有していることで、抜け止め部材336の差し込みを容易にする一方で抜け止め部材336自体を抜け難くしている。また、ソケット330のフック390の垂直面392が第2ハウジング160の凹部162の垂直面162aと接触することでソケット330およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することが抑制される。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320は連通孔161から脱落し難くなるので、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0061】
また、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込まれた抜け止め部材336の下側突起336cは下側部材340を下方へ、上側突起336dは上側部材331を上方へ押圧するので、上側部材331および下側部材340と連通孔161を形成する周囲の壁163の内周面とを接触し易くする。これにより、上側部材331および下側部材340が、連通孔161を形成する周囲の壁163の内周面に強い力で頻繁に接触することに起因して摩耗することが抑制される。
【0062】
また、ハーネスコンプ300単体で持ち運びされるとしても、電線310がグロメット320に対して移動しないように保持されているので、このハーネスコンプ300を組み付ける作業者は、グロメット320から第1のコネクタ350までの電線310の長さに注意を払うことなく容易に組み付けることができる。
【0063】
図16は、ハウジング140の他の形態を示す図である。
図2および図15を用いて説明した外側連通孔161bの一部あるいは全部を、図16に示すように、第2ハウジング160と第3ハウジング170とで形成してもよい。言い換えれば、第3ハウジング170がボルトなどにより第2ハウジング160に固定されることで、第2ハウジング160と第3ハウジング170とが協働して外側連通孔161bを形成するようにしてもよい。つまり、図16(a)に示すように、第2ハウジング160における外側連通孔161bの、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)の壁面をなくして、外側連通孔161bを開放する。一方で、第3ハウジング170に、第2ハウジング160との締結面から外側に電線孔方向に延出する延出部172を設ける。
【0064】
ハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける際には、上述した実施の形態と同様にグロメット320、およびソケット330の下側部材340,上側部材331を第2ハウジング160に装着し、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子に差し込んだ後に、第3ハウジング170を第2ハウジング160に取り付ける。これにより、図16(b)に示すように、ソケット330の上面が第3ハウジング170の延出部172により覆われることとなる。そして、抜け止め部材336を、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込む。
ハーネスコンプ300を取り外す際には、第3ハウジング170を第2ハウジング160から外せば、ソケット330の上面が開放される。したがって、ソケット330およびグロメット320を容易に第2ハウジング160から取り外すことが可能となる。
【0065】
<ハーネスコンプの他の実施形態>
次に、上述したハーネスコンプ300の他の実施形態について説明する。
他の実施形態に係るハーネスコンプ300は、上述した実施の形態に係るハーネスコンプ300に対して、ソケット330および抜け止め部材336が異なる。以下では異なる点について説明する。
【0066】
図17は、他の実施形態に係るハーネスコンプ300のソケット330および抜け止め部材430の概略構成図である。(a)は、第2のコネクタ360側から見た斜視図であり、(b)は、第1のコネクタ350側から見た斜視図である。
他の実施形態に係るハーネスコンプ300のソケット330は、図14を用いて説明した上述した実施の形態に係るソケット330に対して、以下の点が異なる。
すなわち、ソケット330の下側部材340のフック用凹部345を形成する支持部341の側面には、電線路344の方へ凹んだ凹部である、突起用下側凹部341c、変形用下側凹部341d、屈曲部用下側凹部341eが、グロメット320側から順に電線孔方向に並んで設けられている。他方、ソケット330の上側部材331のフック用凹部331aを形成する上側部材331の側面には、電線路344の方へ凹んだ凹部である、突起用上側凹部331b、変形用上側凹部331c、屈曲部用上側凹部331dが、グロメット320側から順に電線孔方向に並んで設けられている。
【0067】
そして、突起用下側凹部341cと突起用上側凹部331bとが協働して、後述する抜け止め部材430の撓み部432の内側突起432aが嵌まり込む凹部として機能する。また、変形用下側凹部341dと変形用上側凹部331cとが協働して、後述する抜け止め部材430の撓み部432を変形させるための工具を差し込む空間を形成する。また、屈曲部用下側凹部341eと屈曲部用上側凹部331dとが協働して、後述する抜け止め部材430の屈曲部433が嵌まり込む凹部として機能する。
【0068】
他の実施形態に係るハーネスコンプ300の抜け止め部材430は、ソケット330の楕円の長辺方向の両側に設けられたフック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に配置される。抜け止め部材430は、フック390が第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌り合っている状態のときにフック390の内側に配置されてフック390の弾性変形を抑制する変形抑制部材の一例である。抜け止め部材430は、電線孔方向に伸びる平板状の基体431と、基体431の内側に配置されて電線孔方向に直交する方向に撓むように弾性変形可能な撓み部432と、基体431の電線孔方向の外側の端部から電線路344の方へ向かう屈曲部433と、を有している。
【0069】
基体431は、軸方向の一方の端面(図17では下側の端面)から下側(下側部材340側)に突出する下側突起431aと、軸方向の他方の端面(図17では上側の端面)から上側(上側部材331側)に突出する上側突起431bと、を有している。これら下側突起431aおよび上側突起431bは、それぞれ電線孔方向に対して傾斜した傾斜面と、この傾斜面の終端から電線孔方向に垂直な方向と平行に向かう垂直面と、を有している。また、基体431には、下側突起431aを軸方向の他方側(図17では上側)に変位し易くするための切り欠きと、上側突起431bを軸方向の一方側(図17では下側)に変位し易くするための切り欠きと、が形成されている。
【0070】
撓み部432は、屈曲部433から電線孔方向に突出した直方体状の部位であり、その先端部には、電線路344側に突出する内側突起432aが設けられている。内側突起432aは、電線孔方向に対して傾斜した傾斜面と、この傾斜面の終端から電線孔方向に垂直な方向と平行に向かう垂直面と、を有している。
屈曲部433は、平板状の部位であり、その中央部には、この屈曲部433を貫通する貫通孔433aが形成されている。
【0071】
図18は、他の形態に係るハーネスコンプ300が第2ハウジング160に装着された状態を示す図である。
図19(a)は、図18のXIX−XIX部の断面図であり、図19(b)は、抜け止め部材430を取り外す様子を示す図である。
この他の実施形態に係るハーネスコンプ300は、上述した手法で電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
ただ、複数の電線310、これら複数の電線310を束ねる第2のカバー380を保持したグロメット320およびソケット330を第2ハウジング160に装着した後、抜け止め部材430を、ソケット330の下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に押し込んでいく。抜け止め部材430を差し込むと、撓み部432の内側突起432aの傾斜面が、ソケット330の下側部材340および上側部材331の側面に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて、内側突起432aが突起用下側凹部341cと突起用上側凹部331bとに嵌り込むことで変形状態から復帰する(図19(a)参照)。
【0072】
他方、ハーネスコンプ300を取り外す場合には、抜け止め部材430をソケット330から引き抜く。その際、図19(b)に示すように、抜け止め部材430の屈曲部433に形成された貫通孔433aから、工具(例えばマイナスドライバ)の先端を差し込み、撓み部432の内側突起432aを外側に弾性変形させながら手前に引けばよい。抜け止め部材430をソケット330から引き抜いた後は、第2ハウジング160の外側からソケット330のフック390を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。
【0073】
以上のように構成された他の形態に係るハーネスコンプ300においては、抜け止め部材430が、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込まれているので、ソケット330のフック390が内側に変形することが抑制される。抜け止め部材430の下側突起431a、上側突起431bおよび内側突起432aは、傾斜面と垂直面とを有していることで、抜け止め部材430の差し込みを容易にする一方で抜け止め部材430自体を抜け難くしている。また、ソケット330のフック390の垂直面392が第2ハウジング160の凹部162の垂直面162aと接触することでソケット330およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することが抑制される。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320は連通孔161から脱落し難くなるので、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0074】
また、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込まれた抜け止め部材430の下側突起431aは下側部材340を下方へ、上側突起431bは上側部材331を上方へ押圧するので、上側部材331および下側部材340と連通孔161を形成する周囲の壁163の内周面とを接触し易くする。これにより、上側部材331および下側部材340が、連通孔161を形成する周囲の壁163の内周面に強い力で頻繁に接触することに起因して摩耗することが抑制される。
【0075】
<抜け止め部材の他の実施形態>
次に、上述したハーネスコンプ300の抜け止め部材の他の実施形態について説明する。
他の実施形態に係る抜け止め部材530は、図14を用いて説明した抜け止め部材336、図17を用いて説明した抜け止め部材430に対して、以下が異なる。
図20は、他の実施形態に係る抜け止め部材530の概略構成を示す図である。(a)は、第2のコネクタ360側から見た斜視図であり、(b)は、第1のコネクタ350側から見た斜視図である。
【0076】
他の実施形態に係る抜け止め部材530は、ソケット330のフック390が第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌り合っている状態のときに、フック390の内側に配置されてフック390の弾性変形を抑制する変形抑制部材の一例である。また、ソケット330をカバーするカバー部材の一例でもある。
この抜け止め部材530は、ソケット330の楕円の長辺方向の両側に設けられたフック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に配置される抜け止め部540を長辺方向の両側それぞれに有している。また、抜け止め部材530は、第2ハウジング160の連通孔161の開口部およびソケット330の案内部335を覆うカバー部550を有しており、このカバー部550における電線孔方向の一方の端面から、上述した2つの抜け止め部540が突出している。
【0077】
抜け止め部540は、それぞれ、電線孔方向に伸びる平板状の基体541と、基体541の内側に配置されて電線孔方向に直交する方向に撓むように弾性変形可能な撓み部542と、基体541の電線孔方向の外側の端部から電線路344の方へ向かう屈曲部543と、を有している。
【0078】
基体541は、軸方向の一方の端面(図20では下側の端面)から下側(下側部材340側)に突出する下側突起541aと、軸方向の他方の端面(図20では上側の端面)から上側(上側部材331側)に突出する上側突起541bと、を有している。これら下側突起541aおよび上側突起541bは、それぞれ電線孔方向に対して傾斜した傾斜面と、この傾斜面の終端から電線孔方向に垂直な方向と平行に向かう垂直面と、を有している。また、基体541には、下側突起541aを軸方向の他方側(図20では上側)に変位し易くするための切り欠きと、上側突起541bを軸方向の一方側(図20では下側)に変位し易くするための切り欠きと、が形成されている。
【0079】
撓み部542は、カバー部550から電線孔方向に突出した直方体状の部位であり、その先端部には、電線路344側に突出する内側突起542aが設けられている。内側突起542aは、電線孔方向に対して傾斜した傾斜面と、この傾斜面の終端から電線孔方向に垂直な方向と平行に向かう垂直面と、を有している。
屈曲部543は、長辺方向に延びる直方体状の部位である。
【0080】
カバー部550は、第2ハウジング160における連通孔161を形成する周囲の壁163の電線孔方向の端面よりも大きな外形の平板状の部位である平板状部551と、ソケット330の案内部335の形状に沿うように形成されてこの案内部335をカバーする案内部カバー部552と、を有している。
【0081】
平板状部551における周囲の縁には、抜け止め部540が突出する方向に突出する突出部551aが設けられている。また、平板状部551における、抜け止め部540の撓み部542よりも電線路344側の部位それぞれには、平板状部551を貫通する貫通孔551bが形成されている。この貫通孔551bの上部と電線路344とは反対側の側部には、平板状部551から電線孔方向に突出する孔カバー551cが設けられている。
【0082】
図21は、他の形態に係る抜け止め部材530を有するハーネスコンプ300が第2ハウジング160に装着された状態を示す図である。
図22は、図21のXXII−XXII部の断面図である。
この他の実施形態に係る抜け止め部材530を有するハーネスコンプ300は、上述した手法で電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
ただ、複数の電線310、これら複数の電線310を束ねる第2のカバー380を保持したグロメット320およびソケット330を第2ハウジング160に装着した後、抜け止め部材530の抜け止め部540がソケット330の下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に嵌るように、抜け止め部材530を押し込んでいく。抜け止め部材530を差し込むと、撓み部542の内側突起542aの傾斜面が、ソケット330の下側部材340および上側部材331の側面に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて、内側突起542aが突起用下側凹部341cと突起用上側凹部331bとに嵌り込むことで変形状態から復帰する(図22(a)参照)。
【0083】
他方、ハーネスコンプ300を取り外す場合には、抜け止め部材530をソケット330から引き抜く。その際、図22(b)に示すように、抜け止め部材530のカバー部550に形成された貫通孔551bから、工具(例えばマイナスドライバ)の先端を差し込み、撓み部542の内側突起542aを外側に弾性変形させながら抜け止め部材530を手前に引けばよい。抜け止め部材530をソケット330から引き抜いた後は、第2ハウジング160の外側からソケット330のフック390を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。
【0084】
以上のように構成された他の形態に係るハーネスコンプ300においては、抜け止め部材530の抜け止め部540が、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込まれているので、ソケット330のフック390が内側に変形することが抑制される。抜け止め部材530の抜け止め部540の下側突起541a、上側突起541bおよび内側突起542aは、傾斜面と垂直面とを有していることで、抜け止め部材530の差し込みを容易にする一方で抜け止め部材530自体を抜け難くしている。また、ソケット330のフック390の垂直面392が第2ハウジング160の凹部162の垂直面162aと接触することでソケット330およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することが抑制される。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320は連通孔161から脱落し難くなるので、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0085】
また、フック390と、下側部材340のフック用凹部345および上側部材331のフック用凹部331aとの間に差し込まれた抜け止め部材530の下側突起541aは下側部材340を下方へ、上側突起541bは上側部材331を上方へ押圧するので、上側部材331および下側部材340と連通孔161を形成する周囲の壁163の内周面とを接触し易くする。これにより、上側部材331および下側部材340が、連通孔161を形成する周囲の壁163の内周面に強い力で頻繁に接触することに起因して摩耗することが抑制される。
【0086】
また、この他の形態に係る抜け止め部材530は、第2ハウジング160の連通孔161の開口部よりも大きな外形の平板状部551を有するカバー部550を備えているので、第2ハウジング160における連通孔161を形成する周囲の壁163とソケット330との間の隙間から水などの液体が入り込むことを抑制することができる。
また、この他の形態に係る抜け止め部材530は、抜け止め部540とカバー部550とが一体的に成形された部材である。それゆえ、この抜け止め部材530を用いることで、ソケット330およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することを抑制すること、第2ハウジング160における連通孔161を形成する周囲の壁163とソケット330との間の隙間から水などの液体が入り込むことを抑制すること、などを抜け止め部材5301つを組み込むという簡易な構成で実現することができる。
【0087】
<ソケットの他の実施形態>
次に、上述したハーネスコンプ300のソケットの他の実施形態について説明する。
他の実施形態に係るソケット600は、図14を用いて説明したソケット330に対して、以下が異なる。
図23−1および図23−2は、他の実施形態に係るソケット600の概略構成図である。(a)は、第2のコネクタ360側から見た斜視図であり、(b)は、第1のコネクタ350側から見た斜視図である。(c)は、ソケット600の非結合状態を示す図である。(d)は、ソケット600の非結合状態と結合状態との間の状態を示す図である。
図24は、図23−1のXXIV−XXIV部の断面図である。
【0088】
ソケット600は、内部に電線が通る貫通孔605が形成されるとともに、相対的に回転することで貫通孔605を開閉する一対の開閉部材を有する。つまり、ソケット600は、外面から突出する突出部611を有する雄側部材610と、外面の外側に突出部611の先端部を受け入れる受け部621が設けられた雌側部材620とから構成される。雄側部材610および雌側部材620は、それぞれ一対の連結部650のいずれか一方を有している。雄側部材610は、一対の連結部650の雄側連結部651を有しており、雌側部材620は、一対の連結部650の雌側連結部652を有している。そして、雄側部材610、雌側部材620および一対の連結部650が射出成形にて一体的に一部品に成形されている。
【0089】
雄側連結部651および雌側連結部652の一般形状は薄板状である。そして、雄側連結部651と雌側連結部652との接合部653は、この接合部653にて、図23−2(d)のように両者を折り曲げることを可能にするべく、一般形状の部位よりも薄肉に成形され、接合部653の両側であって折り曲げた状態での外側の部位には、一般形状の部位から接合部653にかけて肉厚が徐々に薄くなるように成形されている。つまり、図23−2(c)の状態では、雄側連結部651および雌側連結部652が1つの薄板状の部位であり、その中央部に、接合部653が底部となるV溝が形成された形状である。
【0090】
また、雄側部材610と雄側連結部651との接合部位も一般形状の部位よりも薄肉に成形されており、雄側連結部651が雄側部材610に対して任意に角度を変え易くなっている。同様に、雌側部材620と雌側連結部652との接合部位も一般形状の部位よりも薄肉に成形されており、雌側連結部652が雌側部材620に対して任意に角度を変え易くなっている。
【0091】
雄側部材610と雌側部材620とには、雄側部材610の突出部611が雌側部材620の受け部621に挿入されることで結合されたときに、他方の部材と対向する側面がそれぞれに設けられている。以下では、雄側部材610の側面を雄側側面615、雌側部材620の側面を雌側側面625と称す。
そして、このソケット600は、雄側部材610の突出部611が雌側部材620の受け部621に挿入されることで両者が結合したときに、一対の連結部650は、ソケット600の外周面よりも内側に収納される(図23−1(b)の状態)。つまり、雄側部材610の雄側側面615における貫通孔605よりも上方の部位には雄側連結部凹部615cが、雌側部材620の雌側側面625における貫通孔605よりも下方の部位には雌側連結部凹部625cが設けられており、雄側連結部凹部615cと雌側連結部凹部625cとで形成された空間に一対の連結部650が収納される。
【0092】
雄側部材610の突出部611は、雄側側面615から雌側部材620側に横方向に伸びる横方向部位611aを有しており、横方向部位611aの先端には、横方向に対して下方向に傾斜した傾斜面611bと、傾斜面611bの終端の高さから横方向部位611aの下面まで上方に向かう垂直面611cとが形成されている。また、雄側部材610の下面における、突出部611が設けられている部位の周辺には凹み611dが設けられている。
【0093】
雌側部材620の受け部621は、雌側部材620の下面から下方に伸びる下方部位(不図示)と、この下方部位の下端部から雄側部材610側に横方向に伸びる横方向部位621aとから構成されている。横方向部位621aの先端には、横方向に対して上方向に傾斜した傾斜面621bと、傾斜面621bの終端の高さから横方向部位621aの上面まで下方に向かう垂直面621cとが形成されている。また、雌側部材620の下面における、受け部621が設けられている部位の周辺には凹み621dが設けられている。
【0094】
そして、雄側部材610の突出部611が、雌側部材620の受け部621の横方向部位621aと下面との間に挿入されることで、雄側部材610と雌側部材620とは結合される。雄側部材610および雌側部材620は、一対の分割部材の一例であり、結合した状態では、雄側部材610の突出部611の垂直面611cと、雌側部材620の受け部621の垂直面621cとが接触することで、雌側部材620に対する雄側部材610の回転移動が抑制され、結合状態が保たれる。
【0095】
ソケット600は、雄側部材610と雌側部材620とが結合した状態では、外周面601の形状が基本的には略楕円柱状であり、内部には、中央部に、複数の電線310および第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を通すための貫通孔605が形成されている。貫通孔605は、その断面形状が略真円であるとともに、長さ方向の形状としては、グロメット320側の端部の孔方向である一方の方向605aと、グロメット320とは反対側の端部の孔方向である他方の方向605bとが交差するように形成されている。本実施の形態においては、一方の方向605aと他方の方向605bとが直交するように形成されている。つまり、一方の方向605aが連通孔方向(電線孔方向)と同じ方向で、水平方向とした場合に、他方の方向605bは下方に向かう方向である。また、貫通孔605は、一方の端部から他方の端部にかけて、他方の端部側とは反対側に向かった後に他方の端部側へ向かうようにくの字状に湾曲している。付言すると、貫通孔605は、ハウジング140外の電線310の向きとは反対方向に凸となる山形状に湾曲している。
【0096】
貫通孔605は、雄側部材610における雄側側面615から内側に凹んだ雄側貫通孔凹部605cと、雌側部材620における雌側側面625から内側に凹んだ雌側貫通孔凹部605dとから形成される。雄側部材610と雌側部材620とが結合した状態では、雄側部材610の雄側側面615および雌側部材620の雌側側面625と、貫通孔605の孔中心とが一致しないように形成されており、これら雄側側面615および雌側側面625は貫通孔605の孔中心よりも雄側部材610側となるように形成されている。ゆえに、雌側部材620の雌側貫通孔凹部605dの大きさ(領域)が、雄側部材610の雄側貫通孔凹部605cの大きさ(領域)よりも大きい。そして、雄側部材610の雄側貫通孔凹部605cおよび雌側部材620の雌側貫通孔凹部605dの周囲の壁は、貫通孔605をくの字状に湾曲させるために、雄側部材610および雌側部材620における貫通孔605の下側の部位に、鋭角に曲がった鋭角部600aが設けられている。
【0097】
ソケット600は、柱方向の一方の端面(グロメット320側の端面)側に、この端面から柱方向の外側に三日月柱状に突出した三日月柱部632を楕円の長辺方向の両側に2つ備えるとともに、中央部にこの端面から円柱状に凹んだ円柱部633が形成されている。三日月柱部632は、雄側部材610および雌側部材620にそれぞれ1つずつ設けられている。円柱部633は、雄側部材610における柱方向の一方の端面から内側に凹んだ雄側円柱部凹部633aと、雌側部材620における柱方向の一方の端面から内側に凹んだ雌側円柱部凹部633bとから形成される。
【0098】
ソケット600における楕円柱状の外周面601の大きさは、第2ハウジング160の連通孔161の外側連通孔161bを形成する周囲の壁163の内周面の大きさと同じかやや小さい。楕円柱状の外周面601における他方の端部(グロメット320とは反対側の端部)には、楕円柱状の外周面601よりも横方向に外側に突出した突出部635が雄側部材610および雌側部材620にそれぞれ2つずつ設けられている。
【0099】
また、ソケット600におけるグロメット320とは反対側の端部には、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を他方の方向605bに案内する案内部636が設けられている。案内部636は、貫通孔605におけるくの字状に湾曲した後の部位から他方の端部までの部位の周囲を覆う壁であり、雄側部材610の雄側案内部636aと、雌側部材620の雌側案内部636bとから構成される。そして、雄側部材610の雄側案内部636aには、貫通孔605の通路面積を狭めるように貫通孔605の孔中心側に突出した突出部636cが設けられている。また、雄側案内部636aと雌側案内部636bとには、それぞれ、雄側部材610と雌側部材620とが結合したときに嵌り合う凹部636dと凸部636eとが設けられている。
【0100】
付言すると、雄側部材610の雄側案内部636aの突出部636cは、貫通孔605を形成する壁面から貫通孔605の孔中心側へ突出する部位であり、その先端の断面形状は、図24に示すように、円弧状である。そして、この突出部636cの先端と対向する雌側案内部636bにおける貫通孔605を形成する壁面と、この突出部636cの先端との間の半径方向の隙間が略電線310の大きさと同じになるように設定されている。それゆえ、ソケット600は、雄側部材610と雌側部材620とが結合されているときには、雄側案内部636aの突出部636cの先端と、雌側案内部636bにおける貫通孔605を形成する壁面とで、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を円周方向に並べるように電線310を押圧する。このように、雄側部材610の突出部636cと、雌側案内部636bにおける貫通孔605を形成する壁面とは、ハウジング140の連通孔161の外部にて電線310を押圧する押圧部として機能する。
【0101】
また、グロメット320側の端部と雄側部材610に突出部636cが設けられている部位(押圧部)との間の貫通孔605における孔の大きさは、4本の電線310の大きさより大きく、また、複数の電線310を束ねた状態の第2のカバー380の外形よりも大きくなるように形成されている。それゆえ、第2のカバー380にて束ねられた4本の電線310は、貫通孔605内を動き易い。
【0102】
また、雄側側面615と雌側側面625とにおけるグロメット320側の部位には、雄側部材610と雌側部材620とが結合したときに嵌り合う凸部615aと凹部625aとが設けられている。凸部615aと凹部625aとが嵌り合うことで、雄側部材610と雌側部材620とが結合したときに、雄側部材610と雌側部材620とが互いに、雄側側面615、雌側側面625の面方向にずれることが抑制される。
【0103】
ソケット600は、楕円柱状の外周面601の柱方向の一方の端部(グロメット320側の端部)側から貫通孔605における一方の方向605aに突出部635側に突出し、長辺方向に弾性変形するフック690を、長辺方向の両端部に備えている。つまり、フック690は、雄側部材610および雌側部材620にそれぞれ1つずつ設けられている。フック690は、その外側の面が楕円柱状の外周面634に沿うように形成されている。そして、フック690は、楕円柱状の外周面634から外側に突出するように連通孔方向に対して傾斜した傾斜面691と、傾斜面691の終端から長辺方向の内側に長辺方向と平行に向かう面、言い換えれば連通孔方向に垂直な面である垂直面692とを備えている。そして、傾斜面691の始端と上記一方の端部との間には、傾斜面691および垂直面692が長辺方向に弾性変形し易くなるように長孔693が2つ形成されている。
【0104】
また、ソケット600には、フック690それぞれの周囲に、フック690が所望量弾性変形しても干渉しないように凹んだフック用凹部645が形成されている。また、フック用凹部645を形成するソケット本体の側面には、貫通孔605の方へ凹んだ凹部である、突起用凹部(不図示)、変形用凹部645a、屈曲部用凹部645bが、グロメット320側から順に電線孔方向に並んで設けられている。
【0105】
以上のように構成されたソケット600は、雄側部材610の突出部611と雌側部材620の受け部621とが結合されていないときには、貫通孔605を開放する(図23−2(c)の状態)。この状態では、雌側部材620の雌側貫通孔凹部631bに、横方向から、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を押し込むことが可能である。その後、雄側部材610の突出部611が雌側部材620の受け部621に挿入されることで結合されると、貫通孔605が閉じられる。その際、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310は、雄側部材610の雄側案内部636aに設けられた突出部636cにて押圧される。また、このとき、雄側案内部636aの突出部636cの先端と、雌側案内部636bにおける貫通孔605を形成する壁面とで、円周方向に第2のカバー380内の4本の電線310を並べるように電線310を押圧するので、電線310が強く押されることに起因して電線310が切れてしまうことを抑制することが可能となる。
【0106】
そして、以上のように構成されたハーネスコンプ300は、以下のようにして組み立てられる。
すなわち、先ず、グロメット320に形成された複数の電線孔323それぞれに電線310を挿入する。その後、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤を塗布し、グロメット320に対して複数の電線310が動かないように位置決めを行う。また、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。そして、第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続し、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。
【0107】
そして、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、結合されていない状態のソケット600における雌側部材620の雌側貫通孔凹部605dに、横方向から押し込む。その際、貫通孔605の形状に沿うように第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を押し込み、貫通孔605の他方の端部から複数の電線310が飛び出させる。
なお、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を雌側部材620の雌側貫通孔凹部605dに押し込むのは、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する前であってもよい。
【0108】
また、このハーネスコンプ300は、以下のようにして電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
すなわち、第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、検出装置10などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、グロメット320の突起324が連通孔161の内周面に接触するように嵌合するとともに、ソケット600のフック690が、第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌るまで、グロメット320およびソケット600を押し込んでいく。
【0109】
ソケット600を連通孔161に差し込むと、フック690の傾斜面691が第2ハウジング160における連通孔161の周りの壁に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて傾斜面691が第2ハウジング160の凹部162に嵌り込むことで変形状態から復帰する。グロメット320は、その楕円柱部321における円筒部322が配置された側の面がソケット600の三日月柱部632に押されることにより、連通孔161の周囲の壁163との間に生じる摩擦力に抗して内側へ移動する。このようにして、グロメット320およびソケット600を第2ハウジング160に装着する。そして、図14を用いて説明した抜け止め部材336、図17を用いて説明した抜け止め部材430または図20を用いて説明した抜け止め部材530を、フック用凹部645に差し込む。また、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の内側に設けられた接続端子62に、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。
【0110】
他方、ハーネスコンプ300を取り外す場合には、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子から取り外した後、抜け止め部材(336、430、530のいずれか)を引き抜くとともに、第2ハウジング160の外側からソケット600のフック690を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット600を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。そして、その後、第1のコネクタ350を第2ハウジング160の連通孔161から引き抜き、ハーネスコンプ300を取り外す。
【0111】
以上のように構成され、第2ハウジング160に装着されるハーネスコンプ300においては、グロメット320が第2ハウジング160に嵌合されると、主にグロメット320の突起324にてハウジング140内を密封する。また、グロメット320の突起324が第2ハウジング160の連通孔161の周囲の壁163に押されることで電線孔323の径が小さくなるように弾性変形し、複数の電線310をより強く保持する。また、複数の電線310は、グロメット320の円筒部322の内側に塗布された接着剤にて接着されている。また、ソケット600の貫通孔605を通る第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310は、ソケット600の内部でくの字状に屈曲させられて、ハウジング140の外側では、電線孔方向とは直交する方向の下方向へ出される。また、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310は、ハウジング140の外部にて、雄側部材610の雄側案内部636aに設けられた突出部636cにて押圧される。これらにより、組み付けられた後、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320が電線310を保持している部位(電線保持部)にはその力が伝わり難くなり、電線310がグロメット320に対して移動することが抑制される。
【0112】
例えば、ハウジング140の外側にて第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310が軸方向の一方の端部方向(図1では下方向)に引っ張られたとしても、電線310はソケット600の雄側部材610の突出部636cにて押圧されているので、電線310はソケット600に対して移動し難い。また、電線310がソケット600に対して軸方向の一方の端部方向(図1では下方向)に移動したとしても、ソケット600の内部では、電線310がソケット600の鋭角部600aで押圧されるので、グロメット320が電線310を保持している部位にはその力が伝わり難い。なお、グロメット320の円筒部322の半径方向の大きさは、ソケット600の三日月柱部632および円柱部633の内面との間に隙間が空くように設定されており、また、円筒部622の電線孔方向には円柱部633があることから、グロメット320の電線孔323の径が小さくなり、電線孔方向に大きくなるように弾性変形することが許容される。
【0113】
また、抜け止め部材(336、430、530のいずれか)が、フック用凹部645に差し込まれているので、ソケット600のフック690が内側に変形することが抑制される。また、ソケット600のフック690の垂直面692が第2ハウジング160の凹部162の垂直面162aと接触することでソケット600およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することが抑制される。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320は連通孔161から脱落し難くなるので、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0114】
また、上述したように、第2のカバー380にて束ねられた4本の電線310は、ソケット600における、グロメット320側の端部と雄側部材610に突出部636cが設けられている部位(押圧部)との間で貫通孔605内を動き易い。そのため、複数の電線310が、グロメット320における電線保持部とソケット600における押圧部との間で、電線310の円周方向の位相がずれた状態(ねじれた状態)でハーネスコンプ300が組み立てられ、その状態で第2ハウジング160に装着されたとしても、電線310の円周方向の位相ずれが、グロメット320における電線保持部とソケット600における押圧部との間で解消される。それゆえ、たとえ電線310がねじれた状態で組み付けられたとしても、ねじれた状態の電線310がねじれ状態を解消するためにグロメット320を動かしてしまうことに起因してグロメット320と第2ハウジング160との間のシール性が悪化してしまうのを抑制することが可能である。また、ねじれた状態の電線310がねじれ状態を解消しようとする力がグロメット320の電線保持部に与える影響を緩和することができ、電線310がグロメット320に対して移動することを抑制することが可能となる。
【0115】
また、図20を用いて説明した抜け止め部材530を用いることで、以下の利点を有する。すなわち、抜け止め部材530のカバー部550の平板状部551が、第2ハウジング160における連通孔161を形成する周囲の壁163とソケット600との間の隙間から水などの液体が入り込むことを抑制することができる。また、抜け止め部材530のカバー部550の案内部カバー部552が、ソケット600の雄側部材610の雄側案内部636aと、雌側部材620の雌側案内部636bとの間の隙間から水などの液体が入り込むことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0116】
10…検出装置、20…磁石、30…相対角度センサ、40…プリント基板、50…ベース、60…フラットケーブルカバー、70…フラットケーブル、100…電動パワーステアリング装置、110…第1の回転軸、120…第2の回転軸、130…トーションバー、140…ハウジング、180…ウォームホイール、190…電動モータ、200…電子制御ユニット(ECU)、210…相対角度演算部、300…ハーネスコンプ、310…電線、320…グロメット、330、600…ソケット、331…上側部材、336,430,530…抜け止め部材、340…下側部材、350…第1のコネクタ、360…第2のコネクタ、370…第1のカバー、380…第2のカバー、390…フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、
前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に配置される外側部材と、を備え、
前記外側部材は、前記ハウジングに形成された前記連通孔の孔方向と交差する方向に分割可能な一対の分割部材を有し、当該一対の分割部材の内部に前記電線を通すとともに当該一対の分割部材で押圧することで当該ハウジング外の当該電線の向きを当該孔方向と交差する方向に変更することを特徴とする相対角度検出装置。
【請求項2】
前記一対の分割部材の内部の前記電線の通路の前記連通孔の孔方向の形状は、前記ハウジング外の当該電線の向きとは反対方向に凸となる山形状であることを特徴とする請求項1に記載の相対角度検出装置。
【請求項3】
前記一対の分割部材は、前記ハウジングに形成された前記連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の相対角度検出装置。
【請求項4】
前記一対の分割部材の前記凸部は、当該一対の分割部材の分割方向と交差する交差方向の両端部それぞれに当該交差方向に弾性変形可能に設けられ、当該凸部が前記ハウジングの前記凹部に嵌り合っている状態のときに当該凸部の内側に配置されて当該凸部の弾性変形を抑制する変形抑制部材をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の相対角度検出装置。
【請求項5】
前記変形抑制部材は、前記一対の分割部材の前記凸部が前記ハウジングの前記凹部に嵌り合っている状態のときに当該凸部の内側に配置されて当該凸部の弾性変形を抑制する変形抑制部と、当該ハウジングにおける前記連通孔を形成する周囲の壁と前記外側部材との間の隙間をカバーするカバー部と、が一体的に成形されていることを特徴とする請求項4に記載の相対角度検出装置。
【請求項6】
互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、
前記センサを収納するとともに、内外を連通する連通孔が形成されたハウジングと、
前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に配置される外側部材と、を備え、
前記外側部材は、前記ハウジングに形成された前記連通孔の孔方向と交差する方向に分割可能な一対の分割部材を有し、当該一対の分割部材の内部に前記電線を通すとともに当該一対の分割部材で押圧することで当該ハウジング外の当該電線の向きを当該孔方向と交差する方向に変更することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−7733(P2013−7733A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277790(P2011−277790)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】