説明

真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムおよび難燃性真空断熱材

【課題】車両に好適に使用できる真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムおよび難燃性真空断熱材を提供する。
【解決手段】最外層から最内層に向かって、少なくとも難燃性部材層、ガスバリア層および熱融着性樹脂層とを積層してなる真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムであって、
前記難燃性部材層は、難燃紙、および天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体から選択される1種以上であることを特徴とする。難燃性、曲げ加工適性に優れ、自動車、鉄道、船舶などの車両の真空断熱材として好適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最外層に難燃性部材が配された真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム、および該真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムを用いて減圧密封されてなる難燃性真空断熱材に関し、難燃性および曲げ加工性に優れ、自動車、船舶、鉄道などの車両に好適に使用できる難燃性真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため温室効果ガスの削減が推進され、省エネルギー化を達成するため真空断熱材によって熱移動を遮断し、冷暖房にかかるエネルギーを削減する取り組みがなされている。このような真空断熱材は、10mm以下の厚みで高い断熱性能を発揮することができ、室内空間を広げるために鉄道、自動車、船舶などの輸送用機材に使用される有効な材料となっている。
【0003】
しかしながら、輸送用機材として断熱材を使用する場合には、真空断熱材が難燃性または不燃性を有することが要求される。また、任意の曲面を有する構造体に対応して密着可能な可撓性を有する必要もある。
【0004】
このような不燃性または難燃性を有する真空断熱材として、真空断熱材の外被材にアルミニウム箔を使用するものが開示されている(特許文献1)。製作の合理化や高速化に伴う軽量化と耐圧性向上の観点から、車体に、軽合金製の大形中空型材あるいは軽合金製ハニカム構造材を活用したダブルスキン構造が採用されているが、ダブルスキン構造は壁の厚さが厚いために広い車内空間の確保が困難である。そこで、このようなダブルスキン構造でも広い車内空間を確保できるよう、構体とぎ装用内張りの間に装着できる薄肉の断熱材を提供する、というものである。断熱材の不燃性を確保するため、真空断熱材の外被材に50μm以上の厚手のアルミニウム箔かステンレス製箔を使用する旨が記載されている。また、真空断熱材のコア材として、鉄道車両の構体形状の最小半径の曲面に対して局部的な変形と破損を生じない可撓性の繊維系材料が好適であるとし、ロックウールやグラスウールを例示している。
【0005】
また、鉄道車両の車体の外壁および内壁の窓枠以外の部分および空調用ダクト部に配設する、平板状から車体形状に合わせて屈曲させた可撓性を有する真空断熱材であって、真空断熱材の少なくとも一方の面が難燃性を有するシート状物で覆われた真空断熱材も開示されている(特許文献2)。真空断熱材に不燃性を付与するために、真空断熱材の外被材の最外層に50μm以上アルミニウム箔を用いている。ガラス繊維を抄造によりシート状にした繊維を芯材として使用することで真空断熱材の可撓性を向上させ、これにより真空断熱材の適用範囲を任意の場所に可能な限り広く取ることができ、鉄道車両の車体や鉄道保冷車両の車内空間を広く確保しうる、という。
【0006】
また、外被材のガスバリア層が金属箔または蒸着した樹脂フィルム、熱溶着層が融点150℃以上200℃以下のフィルム、最外層が融点200℃以上の自己消火性フィルムである外被材からなる真空断熱材もある(特許文献3)。特許文献3は、冷蔵庫や電気湯沸し器のように使用雰囲気が100℃以下の場合には経時的に十分に断熱性能を維持することができるが、コピー機やプリンターなどの使用雰囲気が150℃程度になる場合には断熱性の維持が困難になることに鑑みて、高温領域でも断熱性を維持しうる真空断熱材を提供するものである。このため、外被材の最外層としてフッ素系フィルムまたはイミド系フィルムなどの融点が高いかあるいは存在しないものを使用し、使用の適用温度範囲を広く確保する、というものである。また、フッ素系フィルムまたはイミド系フィルムは、屈曲性に優れるため、真空断熱材を製造する際に生じるヒレ部を折り曲げて高温で使用しても、前記ヒレの折り曲げ部のフィルムにクラックが発生するのを防止でき、それらが引き金となって真空断熱材の外被材にピンホールが発生することも防止できる、という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−258736号公報
【特許文献2】特開2006−117133号公報
【特許文献3】特開2005−114013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1、特許文献2は、難燃性を付与するために、外被材に50μm以上の厚手のアルミニウム箔などの金属箔を使用するものである。しかしながら、アルミニウム箔によって難燃性は付与しうるが、金属箔の熱伝導性により真空断熱材の表面から裏面へと熱架橋が発生し、真空断熱材の特性である本来の断熱性を発揮することが困難となる場合がある。
【0009】
また、例えば特許文献2記載の真空断熱材は、芯材と外被材とから構成され、外被材は少なくともガスバリア層および熱融着層を有し、かつ前記外被材の最外層にアルミニウムフィルムを用いるというものである。真空断熱材の芯材にガラスウールなどを使用することで芯材の可撓性は確保できても、前記芯材を被覆する外被材の可撓性が確保されなければ、実質的に真空断熱材を製造する際の曲げ加工性が十分でなく、真空断熱材として実質的な可撓性を付与することも困難となる。
【0010】
また、上記特許文献3は、金属箔に代えてフッ素系フィルムまたはイミド系フィルムの難燃性フィルムを使用し、真空断熱材の難燃性と可撓性とを確保するものであるが、熱分解によるガス発生を考慮すると、高温分解時にはフッ素系のフィルムは有毒性のフッ化水素や発ガン性のテトラフッ化エチレンを発生する危険性がある。また、高温では外被材が溶融したり、または熱の回り込みが発生し、真空断熱材の特性である本来の断熱性を損なう場合がある。
【0011】
特に、鉄道、自動車、船舶などの輸送用機材に使用される断熱材は、薄型でも高度の断熱性が要求され、車両は任意の曲面を有する構造体であるため、曲げ加工性も要求される。加えて、火災発生時を想定して、難燃性であること、特に天井部に装着される断熱材は、熱による溶融滴下がないことが求められる。
【0012】
そこで、本発明は、難燃性および曲げ加工適性に優れる、真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムを提供することを目的とする。
また、本発明は、このような真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムで減圧密封されてなる難燃性真空断熱材を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、鉄道、自動車、船舶などの曲げ加工性が要求される車両に好適に使用できる、車両用難燃性真空断熱材を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記車両用難燃性真空断熱材を配設した車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、真空断熱材の外被材について詳細に検討した結果、最外層から最内層に向かって難燃性部材層、ガスバリア層および熱融着性樹脂層とを積層してなるガスバリア性積層フィルムであって、最外層の前記熱融着性樹脂層を、難燃紙、および天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体から選択される1種以上の難燃性部材で構成することで真空断熱材の難燃性を確保できること、前記難燃性部材層を所定厚に制限することで曲げ加工性を確保できること、このような真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムを用いて芯材を減圧密封してなる真空断熱材は、加熱時の溶融滴下がなく、車両の天井部に装着しても安全性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち本発明は、最外層から最内層に向かって、少なくとも難燃性部材層、ガスバリア層および熱融着性樹脂層とを積層してなる真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムであって、前記難燃性部材層は、難燃紙、および天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体から選択される1種以上であることを特徴とする、真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムを提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムで減圧密封されてなる難燃性真空断熱材を提供するものである。
また、本発明は、前記難燃性真空断熱材からなる、車両用難燃性真空断熱材を提供するものである。
【0017】
また、前記車両用難燃性真空断熱材を配設した車両を提供するものである。
さらに、前記車両用難燃性真空断熱材を、天井部に配設した鉄道車両を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムによれば、外被材の最外層が難燃性部材で構成されるため、これを用いた真空断熱材に難燃性を確保することができる。
また、本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムによれば、最外層に金属箔を使用しないため熱架橋を防止し、これを用いた真空断熱材の本来の特性である優れた断熱性を発揮することができる。
【0019】
本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムによれば、前記難燃性部材が、天然布帛または紙基材に不燃性または難燃性物質を含浸または塗工してなるため、これを用いた真空断熱材の熱の回り込みを防止でき、かつ曲げ加工性に優れる。
【0020】
また、本発明の難燃性真空断熱材は、難燃性や曲げ加工性に優れるため、鉄道、自動車、船舶などの車両に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の難燃性真空断熱材(200)の好適な態様を示す図であり、最外層から最内層に向かって、難燃性部材層(40)、ガスバリア層(30)および熱融着性樹脂層(20)とを積層してなる真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)で芯材(10)が減圧密封されてなる難燃性真空断熱材(200)の断面図である。
【図2】図2は、本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)の層構成を説明する図であり、最外層から最内層に向かって、難燃性部材層(40)、ドライラミネート用接着剤層(70)、ガスバリア層(30)および熱融着性樹脂層(20)が順次積層される態様を示す図である。
【図3】図3は、本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)の層構成を説明する図であり、最外層から最内層に向かって、難燃性部材層(40)、ドライラミネート用接着剤層(70)、プラスチックフィルム層(60)、ドライラミネート用接着剤層(70)、ガスバリア層(30)および熱融着性樹脂層(20)が順次積層される態様を示す図である。
【図4】図4は、本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)の層構成を説明する図であり、最外層から最内層に向かって、難燃性部材層(40)、ドライラミネート用接着剤層(70)、プラスチックフィルム層(60)、ドライラミネート用接着剤層(70)、ガスバリア層(30)、ドライラミネート用接着剤層(70)および熱融着性樹脂層(20)が順次積層される態様を示す図である。
【図5】図5は、本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)の層構成を説明する図であり、最外層から最内層に向かって、難燃性部材層(40)、ドライラミネート用接着剤層(70)、プラスチックフィルム層(60)、ドライラミネート用接着剤層(70)、ガスバリア層(30)、ドライラミネート用接着剤層(70)および熱融着性樹脂層(20)が順次積層される態様を示す図である。図5のガスバリア層(30)は、基材フィルム(31)に蒸着層(33)、ガスバリア性塗布膜(35)とが積層された多層フィルムである。
【図6】図6は、車両に本発明の車両用難燃性真空断熱材(200)を配置する態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第一は、最外層から最内層に向かって、少なくとも難燃性部材層、ガスバリア層および熱融着性樹脂層とを積層してなる真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムであって、前記難燃性部材層は、難燃紙、および天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体から選択される1種以上であることを特徴とする、真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムである。また、本発明の第二は、上記真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムで減圧密封されてなる難燃性真空断熱材である。
【0023】
芯材を減圧密封する包材として、最外層から最内層に向かって、少なくとも難燃性部材層、ガスバリア層および熱融着性樹脂層とを積層してなる真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムを使用するため、真空断熱材に難燃性を付与することができ、かつ難燃性部材が難燃紙、および天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体から選択される1種以上であるため、高温時の溶融滴下を防止でき、かつ所定厚の難燃性部材を使用することで曲げ加工性を確保することができる。このため、溶融滴下が回避され、かつ曲げ加工性が要求される鉄道、自動車、船舶などの車両に好適に使用することができる。
【0024】
本発明の好適な態様の一例を示す図1を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
(1)難燃性真空断熱材
本発明の難燃性真空断熱材(200)の好適な態様の断面図を図1に示す。
【0025】
本発明の難燃性真空断熱材(200)は、芯材(10)を、最外層から最内層に向かって、少なくとも前記難燃性部材層(40)、ガスバリア層(30)および熱融着性樹脂層(20)を積層してなる真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)で減圧密封されたものである。前記芯材(10)を、前記熱融着性樹脂層(20)を対向させた2枚の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)で被覆および減圧し、前記真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)の重畳部(50)を熱融着して密封する。
【0026】
本発明の難燃性真空断熱材において、芯材(10)の減圧は、0.1〜10Paであることが好ましく、より好ましくは1〜5Paである。この範囲であれば、断熱性に優れる。
【0027】
本発明の難燃性真空断熱材(200)は、芯材(10)を2枚の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)によって減圧密封したものであるが、芯材(10)の形状は用途に応じて適宜選択することができる。前記図1は、方形の芯材を減圧密封してなる真空断熱材の1態様を示すものであるが、このような平板に限定されるものでなく、難燃性真空断熱材の配設場所に適した形状を適宜選択することができる。
【0028】
(2)真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム
本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムは、最外層から最内層に向かって、少なくとも前記難燃性部材層(40)、ガスバリア層(30)および熱融着性樹脂層(20)が積層されてなる。最外層が、難燃性部材層(40)であるため、真空断熱材(100)に難燃性を付与することができる。難燃性部材層(40)がドライラミネート用接着剤層(70)によってガスバリア層(30)および熱融着性樹脂層(20)に積層されるガスバリア性積層フィルム(100)の層構成を図2に示す。
【0029】
一方、本発明で使用する真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)としては、前記ガスバリア層(30)と難燃性部材層(40)との間にプラスチックフィルム層(60)がドライラミネート用接着剤層(70)で積層されるものであってもよい。この層構成を図3に示す。また、前記熱融着性樹脂層(20)がドライラミネート用接着剤層(70)によって積層されるものであってもよい。この態様を図4に示す。更に、前記ガスバリア層(30)は、基材フィルム(31)に蒸着層(33)、ガスバリア性塗布膜(35)からなる多層構造フィルムであってもよい。この態様を図5に示す。
【0030】
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムは、最外層を構成する難燃性部材層(40)とガスバリア層(30)とをドライラミネート用接着剤層(70)を介して接着し、更に得られた積層体の前記ガスバリア層(30)にドライラミネート用接着剤層(70)を介して最内層を構成する熱融着性樹脂層(20)を積層して調製することができる。ガスバリア性積層フィルムの厚さに限定はないが、一般には12〜38μmである。
【0031】
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムは、UL94規格(Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances.)において、HBの難燃性を有することが好ましい。
【0032】
なお、真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(A)は、ガスバリア性として、酸素透過度、水蒸気透過度がそれぞれ0.5(cc/m2・day)、0.2(g/m2・day)以下であると好ましく、0.1(cc/m2・day)、0.1(g/m2・day)以下であるとさらに好ましい。
【0033】
(i)難燃性部材層
本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)における難燃性部材層(40)は、難燃紙、および天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体から選択される。
【0034】
本発明において「難燃紙」とは、坪量が100〜250g/m2の紙状物を意味し、紙基材を含む場合に限定されない。また、「天然布帛」とは、綿、芭蕉などの植物性繊維や、絹、ウールなどの動物性繊維、鉱物やガラスなどからなる繊維や粒子の1種以上を編んだ布帛、または前記繊維や粒子を織った布帛、または前記繊維や粒子からなる不織布を意味し、「不織布」とは、繊維シート、ウェブ又はバットで、繊維が一方向またはランダムに配向しており、交流、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたものである。
【0035】
例えば、前記天然布帛を構成する各種繊維や粒子の一種以上をバインダーで複合的に結合して得た紙状物は、紙基材を含まないが、「難燃紙」として使用することができる。例えば、含水ケイ酸マグネシウム化合物からなる粒子を主成分とし、これにパルプ、ガラス繊維を配合し、バインダーで紙状に結合したものを難燃紙として例示することができる。また、本発明では市販の難燃紙を使用することもでき、このような難燃紙としては、グランデックス株式会社、商品名「不燃紙GP」がある。
【0036】
また、上記天然布帛が、鉱物やガラスなどからなる繊維からなり、それ自体で難燃性を有し、坪量が100〜250g/m2の紙状物に調製される場合には、上記「難燃紙」に含まれるものとする。
【0037】
また、本発明において、「難燃性物質担持体」とは、前記天然布帛(41)や紙基材(43)に難燃性物質(45)を担持し、不燃性を付与した難燃性部材(40)である。
難燃性部材層(40)を構成する天然布帛(41)としては、前記した綿、芭蕉などの植物性繊維や、絹、ウールなどの動物性繊維、鉱物やガラスからなる繊維や粒子の1種以上を編んだ布帛、または前記繊維や粒子を織った布帛、または前記繊維や粒子からなる不織布であり、天然布帛がそれ自体で難燃性であるか否かは問わない。
【0038】
また、難燃性部材層(40)を構成する紙基材(43)としては、賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができ、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材を広く使用することができる。紙基材を抄造するために使用する製紙用パルプは、通常の製紙で使用されるものはどれでも使用することができ、例えば針葉樹未晒クラフトパルプ(N−UKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(N−BSP)等の木材パルプを主材とし、麻、木綿、藁パルプ、ケナフ等の非木材パルプも使用できる。上記パルプの他にも、紙力増強および/または寸法安定性のために、ポリオレフィン系合成パルプ、ポリエステル繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維の群からなる有機合成繊維及びガラス繊維、炭素繊維の群からなる無機繊維の中から各種の繊維を少なくとも1種類併用してもよい。また、紙料中には内添サイズ剤、紙力剤、填料、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、歩留り向上剤、染料、蛍光染料等が適宜用いられる。内添サイズ剤としては、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジン、酸性ロジン等が適宜用いられる。紙力剤としては、澱粉、変性澱粉、ポリアクリルアミド等が適宜用いられる。填料としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、二酸化チタン等が適宜用いられる。歩留り向上剤としては、コロイダルシリカ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等が適宜用いられる。難燃塗工紙に用いる含浸用原紙の製法は、特に限定されるものでなく、公知の抄紙機、すなわち長網、丸網、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等を用いて単層で又は多層で抄造し、プレス工程、乾燥工程を経て通常、坪量約70〜220g/m2程度の該原紙を作成する。抄紙方法は、特に限定されず酸性紙、中性紙又はアルカリ性紙のいずれであってもよいが、中性紙が好ましい。また、市販の紙基材を使用することもできる。たとえば、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、その他等の各種の紙基材を例示することができる。
【0039】
難燃性部材層(40)を構成する天然布帛(41)や紙基材(43)としては、坪量20〜60g/m2であることが好ましく、より好ましくは30〜50g/m2である。所定の難燃性を確保するには、所定量の不燃性または難燃性物質を天然布帛(41)や紙基材(43)に担持する必要があるが、坪量が20g/m2を下回ると難燃性物質の担持が困難となる場合があり、一方、坪量が60g/m2を超えると曲げ加工性が低下する場合がある。
【0040】
難燃性物質担持体に使用しうる難燃性物質(45)としては、無機化合物、アンモニウム塩、グアニジン塩及び金属塩などの難燃性物質(水不溶)がある。より具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸化カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、燐酸、縮合燐酸、スルファミン酸、硫酸、ほう酸等の無機酸類などの無機化合物、例えば燐酸アンモニウム、ポリ燐酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ほう酸アンモニウム、珪酸アンモニウム、臭化アンモニウム,塩化アンモニウム等のアンモニウム塩、例えばスルファミン酸グアニジン、メチロール化グアニジン、メチロールスルファミン酸グアニジン、硫酸グアニジン,燐酸2グアニジン、燐酸1グアニジン、メチロール燐酸グアニジン、燐酸エステルグアニジン塩、燐酸エステルジメチロールグアニジン、臭化水素酸グアニジン、テトラブロムフタル酸グアニジン、塩酸グアニジン、メチロール塩酸グアニジン、ほう酸グアニジン、テトラほう酸グアニジン等のグアニジン塩類、例えばほう砂、水ガラス、錫酸ソーダ、タングステン酸ソーダ等の金属塩類があげられる。燃焼時に有害なハロゲン化物を発生させないため、ハロゲンを含まない無機酸、ハロゲンを含まないアンモニウム塩、ハロゲンを含まないグアニジン塩及びハロゲンを含まない金属塩が好ましく、さらに少量でより顕著な難燃性を示す、スルファミン酸、硫酸、ほう酸、リン酸及びスルファミン酸アンモニウム,硫酸アンモニウム,リン酸アンモニウム等がさらに好ましい。これらは一種を単独で使用できるほか、2種以上を併用することもできる。これら難燃性物質には、更にバインダーを併用することができる。
【0041】
これらが水溶性である場合には、上記天然布帛(41)や紙基材(43)に含浸させて担持することができ、不溶性の場合には塗工によって上記天然布帛(41)や紙基材(43)に担持させることができる。
【0042】
前記天然布帛(41)や紙基材(43)への難燃性物質(45)の含浸はオンマシンサイズプレス装置又は含浸コーターで行うことができるが、これらに限定されるものではない。これらの含浸量は、40〜240g/m2(乾燥質量)、好ましくは70〜150g/m2(乾燥質量)である。この範囲で難燃性に優れ、かつ曲げ加工性にも優れるからである。
【0043】
本発明では、前記天然布帛(41)や紙基材(43)への難燃性物質(45)の塗工は、調製した塗工組成物を公知のコーター、例えばパイプコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、ショートドウェルコーター、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター等から選ばれたコーターを用いて、オフマシンコーター又はオンマシンコーターで、単層若しくは多層に分けて塗布すればよい。塗料の液性からはエアーナイフコーター、カーテンコーター、ロッドコーター等が好ましく、更に好ましくはエアーナイフコーターである。
【0044】
塗布層は、前記天然布帛(41)や紙基材(43)の片面又は両面に、単層若しくは二層以上設けることも可能である。塗布量は、片面当たり40〜240g/m2(乾燥質量)未満が好ましく、より好ましくは70〜150g/m2(乾燥質量)である。この範囲で難燃性に優れ、かつ曲げ加工性にも優れるからである。また、難燃性部材層(40)として、坪量を70〜150g/m2、より好ましくは120〜200g/m2に制限しうるからである。
【0045】
本発明では、天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体として市販品を使用することもできる。例えば、紙基材(43)に水酸化アルミニウムや炭酸カルシウムを主成分とする不燃性または難燃性物質を高内填した王子製紙株式会社製、商品名「OKコスモ」などを好適に使用することができる。
【0046】
本発明で使用する難燃性部材層は、JIS K7201に規定される酸素指数が24〜35の難燃性を有する。なお、本発明における「難燃性」には、不燃性を含むものとする。
【0047】
(ii)ガスバリア層
ガスバリア層(30)としては、芯材を減圧密封しうるガスバリア性を有するものであればよく、例えば、アルミニウム箔などの金属箔、ポリビニルアルコールフィルムやエチレンビニル共重合体フィルムなどのポリビニルアルコール系樹脂、その他、ポリエチレンテレフタレートなどの基材フィルムに金属、金属酸化物、酸化珪素などの蒸着層を積層した蒸着フィルム、さらにこのような蒸着フィルムにポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するするガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたものを例示することができる。
【0048】
金属箔を使用する場合には、金属箔の厚さは、一般には、5〜9μmである。ガスバリア層として金属箔を使用する場合でも、金属箔の厚さが上記範囲であれば熱の伝導を回避し、断熱性を高く維持することができる。
【0049】
また、ガスバリア層として市販品を使用することもでき、例えば、大日本印刷株式会社製の商品名「IB−PET」や「IB−PET−PXB」、東レフィルム加工株式会社、商品名「バリアロックス1011」などを好適に使用することができる。特に、IB−PETやIB−PET−PXBは、ガスバリア性に優れ、かつ可撓性、機械的強度に優れるため、たとえ真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)に皺などが発生したした場合でも、真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)に亀裂が発生するのを回避し、真空断熱効果を長く維持することができる。
【0050】
(iii)熱融着層
熱融着層(20)は、最内層を構成し、芯材の周囲を減圧密封して真空断熱材を製造する際に、熱融着によって密封できる。熱融着層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を好ましく使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂である。
【0051】
熱融着層は、一般には、20〜100μmであり、熱溶着フィルムをガスバリア層に積層するものであっても、熱融着層をガスバリア層に押し出し積層するものであってもよい。熱融着フィルムを使用する場合には、ドライラミネート用接着剤層を介してガスバリア層に積層すればよい。
【0052】
(iv)プラスチックフィルム層
本発明で使用する真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)に剛性、機械的強度を付与するため、ガスバリア層(30)と難燃性部材層(40)との間にプラスチックフィルム層(60)を積層してもよい。
【0053】
前記プラスチックフィルム層(60)としては、例えば、各種6,6ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。基材フィルムは、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができる。基材フィルムの膜厚としては、6〜2000μm位、より好ましくは、9〜100μm位が望ましい。
【0054】
(v)ラミネート用接着剤
本発明では、熱融着層(20)とガスバリア層(30)との積層や、プラスチックフィルム層(60)と難燃性部材層(40)との接着などに、ラミネート用接着剤(70)を介してドライラミネート積層法を用いて積層することができる。その他、いずれかの2層を積層する際に、ラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法により接着することができる。
【0055】
ラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
【0056】
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、蒸着膜やコーティング膜に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、蒸着膜やコーティング膜へのクラックなどの発生を回避することができる。
【0057】
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。
【0058】
ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0059】
(3)芯材
本発明の難燃性真空断熱材で使用する芯材(10)は、芯材空隙率が50%以上、より好ましくは90%以上の多孔質であり、熱伝導度の低い材質を広く使用することができる。
【0060】
このような芯材を構成する物質としては、粉体、発泡体、繊維などがある。粉体としては、無機系、有機系のいずれでもよく、乾式シリカ、湿式シリカ、導電性粉体、パーライト等がある。乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の劣化が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。更に、酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。また、発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等があり、これらの中でも連続気泡を形成する発泡体を好ましく使用することができる。更に、繊維体としては、無機系、有機系があり、断熱性能の観点から無機繊維を好適に使用することができる。このような無機繊維としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等がある。熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である。
【0061】
本発明で使用する芯材(10)としては、これらを単独で使用する場合に限定されず、2種以上を混合した複合材であってもよい。なお、本発明では、鉄道や地下鉄などの曲面が多用される車体に使用することを目的とするため、このような曲面に変形しうる芯材を使用することが好ましく、断熱性および可撓性を付与しうる点で、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等を好適に使用することができる。
【0062】
(4)真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムの製造
本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムは、最外層に上記難燃性部材層が積層されたものであり、従来公知の方法でガスバリア層(30)および熱融着層(20)とを積層してなる積層体に、たとえばドライラミネート用接着剤層などを介して前記難燃性部材層を積層して製造することができる。
【0063】
(5)難燃性真空断熱材の製造
本発明の難燃性真空断熱材は、本発明の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムの最内層を対抗させ、その間に前記芯材を載置し、製袋機によって前記芯材の外周の一方を開口部とし、残り三方のガスバリア性積層フィルムを熱シールし、次いでこれを真空封止機に装着し、内部圧力3Paに減圧した状態で前記開口部を密封して製造することができる。
【0064】
(6)車両用難燃性真空断熱材および車両
本発明の難燃性真空断熱材の最外層は難燃性部材で構成されているため、真空断熱材に難燃性を付与することができる。このため、例えば、難燃性や不燃性への要求が高い、鉄道、地下鉄、船舶、自動車などの車体の断熱材として好適に使用することができる。
【0065】
また、鉄道車両では製作の合理化および高速化に伴う軽量化と耐圧性向上の観点から、いわゆるダブルスキン構造が採用され、これらの車体では、軽量化と耐圧性向上を図るためその側および屋根構体が曲面を有する構造となっている。本発明の難燃性真空断熱材は、薄型で断熱性に優れかつ可撓性に優れるため、地下鉄や鉄道の車両の通路幅を広く確保するため、曲面を有する車体の窓より下面の部位に好適に配設することができる。
【0066】
また、本発明の難燃性真空断熱材で使用する難燃性部材は、難燃紙、および天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体から選択されるため、フッ素系フィルムやイミド系フィルムなどの合成樹脂からなる難燃性物質と相違して、加熱による溶融滴下を生じることが無い。また、難燃性部材としてアルミニウム箔を使用する場合より、熱伝導率が低いため断熱性にも優れる。このため、高度の断熱性、難燃性が要求され、かつ火災時にも天井部からの溶融滴下の回避が要求される鉄道、地下鉄、船舶、自動車などの車体の天井部に好適に使用することができる。鉄道車両の内装に使用される態様を図6に示す。図6では、車両の床部、ドア部を除く座席下部周辺、天井部に本発明の難燃性真空断熱材(200)が配置される態様を示すが、これに限定されるものではない。ただし、車体の室内側の、底部、腰部、天井部、その他、空調用ダクト部などのいずれかに配置することで高度の断熱性と安全性とを確保することができる。
【0067】
本発明の難燃性真空断熱材は、後記する実施例に示すように、発煙や炭化も生じないため、安全性に優れ、かつ優れた曲げ加工性を有する。このため、図6に示すように、多くの曲面で構成される鉄道、地下鉄、船舶、自動車などの車体の底部、腰部、天井部、その他、空調用ダクト部など、断熱性が要求される箇所に好適に使用することができる。なお、本発明の難燃性真空断熱材が配置される車両としては、ダブルスキン構造に限定されず、シングルスキン構造の車体にも好適に使用することができる。
【0068】
上記したように、本発明の車両用難燃性真空断熱材は、車体の周方向について曲面に形成された鉄道車両の車体の室内側にこれを配置することで、断熱性に優れ、室内空間が広く確保され、かつ火災時にも天井部からの溶融滴下がなく、安全性に優れる車両とすることができる。
【実施例】
【0069】
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。

(実施例1)
厚さ15μmの延伸ナイロンに、ガスバリア層として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートに物理蒸着法によってアルミナを蒸着してなるガスバリア性フィルム(大日本印刷株式会社製、商品名「IB−PET−PXB」)をドライラミネート用接着剤で接着し、前記ガスバリア性フィルムに厚さ50μmのポリエチレンフィルムをドライラミネート用接着剤で接着し、および前記延伸ナイロンに難燃性部材として王子製紙株式会社製、無機粉体充填紙(水酸化アルミニウム紙:坪量130g/m2)をドライラミネート用接着剤で接着して真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)を製造した。
【0070】
上記で使用した難燃性部材の坪量、酸素指数、酸素透過度、水蒸気透過度を下記方法で評価した。結果を表1に示す。また、得られた真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)の厚さ、難燃性試験を下記方法で評価した。結果を表2に示す。

(測定方法)

(1)坪量
坪量:JIS P 8124 1998年、23℃、50%RH調湿後、「紙及び板紙−坪量測定方法」によって評価した。
【0071】
(2)酸素指数
酸素指数:JIS K7201に規定される酸素指数によって評価した。
(3)酸素透過度
温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN2/21)〕にて測定した。
【0072】
(4)水蒸気透過度
温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パ−マトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。
【0073】
(5)厚さ
厚さ:JIS P 8118 1998年、23℃、50%RH調湿後、「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」によって評価した。
【0074】
(6)難燃性試験
難燃性試験:安全規格 UL(Underwriters Laboratories Inc.)94「Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances, fifth edition, (Edition Date October 29, 1996)」水平燃焼試験(HB)法に準じて行った。

(実施例2)
厚さ15μmの延伸ナイロンに、ガスバリア層として厚さ7μmのアルミニウム箔をドライラミネート用接着剤で接着し、前記ガスバリア層に厚さ50μmのポリエチレンフィルムをドライラミネート用接着剤で接着し、前記延伸ナイロンに難燃性部材層として王子製紙株式会社製、無機粉体充填紙(水酸化アルミニウム紙:坪量200g/m2)をドライラミネート用接着剤で接着して真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(2)を製造した。
【0075】
また、実施例1と同様にして難燃性部材および真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(2)の物性を評価した。結果を表1、表2に示す。

(比較例1)
厚さ15μmの延伸ナイロンに、ガスバリア層として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートに物理蒸着法によってアルミナを蒸着してなるガスバリア性フィルム(大日本印刷株式会社製、商品名「IB−PET−PXB」)をドライラミネート用接着剤で接着し、前記ガスバリア性フィルムにポリエチレンを溶融押し出しにより厚さ50μmで積層し、前記延伸ナイロンに難燃性部材層として厚さ40μmのアルミニウム箔をドライラミネート用接着剤で接着して比較真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)を製造した。
【0076】
また、実施例1と同様にして難燃性部材および比較真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)その物性を評価した。結果を表1、表2に示す。

(比較例2)
ガスバリア層として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートに物理蒸着法によってアルミナを蒸着してなるガスバリア性フィルム(大日本印刷株式会社製、商品名「IB−PET−PXB」)にポリエチレンを溶融押し出しにより厚さ50μmで積層し、前記ガスバリア性フィルムに難燃性部材層として王子製紙株式会社製、無機粉体充填紙(水酸化アルミニウム紙:坪量260g/m2)をドライラミネート用接着剤で接着して比較真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(2)を製造した。
【0077】
また、実施例1と同様にして難燃性部材および比較真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(2)その物性を評価した。結果を表1、表2に示す。

(実施例3)
坪量2.5kg/m2のグラスウールを、縦182mm、横257mmの正方形にカットして芯材とした。
【0078】
前記芯材の上下から実施例1で得た真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)を、そのポリエチレン層が前記芯材に対向するように積層した。
次いで、製袋機によって、芯材の外周の一方を開口部とし、残り三方の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)を熱シールした。
【0079】
次いで、これを真空封止機に装着し、内部圧力3Paに減圧した状態で前記開口部を密封し、難燃性真空断熱材を製造した。また、フッ素系テープ(日東電工株式会社製、商品名「二トフロン高強度フィルム粘着テープ」)でシール部を折り返して止めた。得られた難燃性真空断熱材の芯材の部分の厚さは、10mmであった。
【0080】
得られた真空断熱材の燃焼性、熱伝導率、曲げ加工性を下記方法で評価した。結果を表3に示す。

(1)熱伝導率
熱伝導率は、JIS A1412−3 熱流計法により、英弘精機製、熱伝導率測定装置オートラムダHC−074を使用して行った。
【0081】
(2)燃焼性
得られた真空断熱材を45°に傾斜し、燃焼容器の底の中心が、真空断熱材の下面中心の垂直下方25.4mmのところにくるように台にのせ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置する。燃焼性判定は、エチルアルコール燃焼中の着火、発煙、燃焼後の炭化、変形を評価した。
【0082】
(3)曲げ加工適性
曲げ加工が容易であるか否かで判断した。

(実施例4)
実施例1で得た真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)に代えて、実施例2で得た真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(2)を使用した以外は実施例3と同様に操作し、難燃性真空断熱材を製造した。
【0083】
得られた難燃性真空断熱材について、実施例3と同様にして燃焼性、熱伝導率、曲げ加工性を評価した。結果を表3に示す。

(比較例3)
実施例1で得た真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)に代えて、比較例1で得た比較真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)を使用した以外は実施例3と同様に操作し、比較難燃性真空断熱材を製造した。
【0084】
得られた比較難燃性真空断熱材について、実施例3と同様にして燃焼性、熱伝導率、曲げ加工性を評価した。結果を表3に示す。

(比較例4)
実施例1で得た真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(1)に代えて、比較例2で得た比較真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(2)を使用した以外は実施例3と同様に操作し、比較難燃性真空断熱材を製造した。
【0085】
得られた比較難燃性真空断熱材について、実施例3と同様にして燃焼性、熱伝導率、曲げ加工性を評価した。結果を表3に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

(結果)
(1)比較例3と実施例3とを比較すると、使用する真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムの厚さは略同じであるが、アルミニウム箔を最外層に有する比較例3は、熱伝導率が0.03W/m・Kであり、実施例3は熱伝導率が0.003W/m・Kであった。すなわち、実施例3の真空断熱材は、アルミニウム箔を難燃性部材とする比較例3より10倍以上の断熱性を有していた。
【0089】
(2)比較例4と実施例3とを比較すると、使用する真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムの厚さは略同じであるが、難燃性部材層として坪量260g/m2の無機粉体充填紙を使用した比較例4は、曲げ加工性に劣るが、実施例3は坪量130g/m2の無機粉体充填紙を使用したため曲げ加工性に優れた。
【0090】
(3)比較例3と実施例3とを比較すると、使用する真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムの厚さは略同じであるが、難燃性部材層として厚さ40μmのアルミニウム箔を使用した比較例3は、曲げ加工性に劣るが、実施例3は坪量130g/m2の無機粉体充填紙を使用したため曲げ加工性に優れた。このことは、従来、真空断熱材の外被材として使用されるアルミニウム箔は、断熱性に劣るのみならず、曲げ加工性も不十分であったことが判明した。
【0091】
(4)比較例3と実施例4とを比較すると、使用する真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムの厚さは略同じであるが、難燃性部材層として厚さ40μmのアルミニウム箔を使用した比較例3は、曲げ加工性に劣るが、実施例4は坪量200g/m2の無機粉体充填紙を使用したため曲げ加工性に優れた。このことは、難燃性部材として無機粉体充填紙を使用する場合は、250g/m2未満であれば、曲げ加工性に優れることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の難燃性真空断熱材は、熱架橋が少なく断熱性に優れ、かつ曲げ加工性に優れ、鉄道、船舶、車両などに配設する真空断熱材として適用できる。
【符号の説明】
【0093】
10・・・芯材、
20・・・熱融着性樹脂層、
30・・・ガスバリア層、
40・・・難燃性部材層、
50・・・真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム(100)の重畳部、
60・・・プラスチックフィルム層、
70・・・ドライラミネート用接着剤層、
100・・・真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム、
200・・・真空断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層から最内層に向かって、少なくとも難燃性部材層、ガスバリア層および熱融着性樹脂層とを積層してなる真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムであって、
前記難燃性部材層は、難燃紙、および天然布帛または紙基材に難燃性物質を担持してなる難燃性物質担持体から選択される1種以上であることを特徴とする、真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム。
【請求項2】
前記難燃性部材層は、坪量が100〜250g/m2であることを特徴とする、請求項1記載の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルム。
【請求項3】
請求項1または2記載の真空断熱材用ガスバリア性積層フィルムで減圧密封されてなる難燃性真空断熱材。
【請求項4】
請求項3記載の難燃性真空断熱材からなる、車両用難燃性真空断熱材。
【請求項5】
請求項4記載の車両用難燃性真空断熱材を配設した車両。
【請求項6】
請求項4記載の車両用難燃性真空断熱材を、天井部に配設した鉄道車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−5693(P2011−5693A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149808(P2009−149808)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】