説明

眼の光力学的治療による視力改善用組成物

【課題】眼における、不所望の血管新生とりわけ年齢関連性斑状変性などによる不所望の血管新生によって特徴付けられる状態の患者の視力改善のための反復可能な光力学的療法(ホトダイナミックセラピー:photodynamictherapy)に使用する組成物を提供すること。
【解決手段】ホトダイナミックセラピーの条件設定の指標として視力測定を行い、それにより設定された条件下で光活性化合物としてグリーンポルフィリン、ヘマトポルフィリン誘導体、クロリン、フロリン又はプルプリンを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼に対して光力学的治療(ホトダイナミックセラピー、photodynamictherapy:PDT)を施すことによって視力を改善する方法に使用する組成物(薬剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
視力の低下は、眼の老化及び種々の条件に関連した共通の問題である。特に困るのは、角膜、網膜及び脉(脈)絡膜の不所望の血管新生の進行である。脉絡膜の血管新生は、出血及び線維症をもたらし、その結果として、斑状の変性、眼のヒストプラズマ症候群、近視、及び炎症性の疾病などの、多くの認識された眼の疾患による、視力の低下がもたらされる。年齢に関連した斑状の変性(age-related macular degeneration:AMD)は、高年齢者の新しい盲目の主な原因であり、脉絡膜の血管新生は、この疾病をもった患者の著しい視力の低下の原因の80%を占めている。この疾病の自然な推移は、血管新生のプロセスの停止とその回復であるが、その代償として、網膜大の線維症と視力の低下とが通常生ずる。
【0003】
AMDの最新の治療は、レーザーによる光凝固を用いた血管の閉塞によっている。しかしこの治療は、新生した血管の繊維を熱により破壊することを必要とし、全厚に亘る網膜の損傷と、中程度以上の脉絡膜の血管の損傷を伴っている。更に、患者には、萎縮性の裂傷及び視覚上のめまいが後遺症として残る。また再発が普通であり、視力の予後もよくない。
【0004】
上方部位の神経感覚的な網膜を保存するためのより選択的な血管閉止の戦略が求められている。1つのそうした戦略は、ホトダイナミックセラピーであり、これは、感光化された組織に低輝度の光を露光して有害な効果をもたらすことに存する。光活性化合物を投与して特別の不所望の組織に到達させ、光活性化合物によって吸収される光を照射する。その結果として周囲の組織が損傷又は破壊される。
【0005】
眼の状態のホトダイナミックセラピーは、種々の光活性化合物、例えばポルフィリン誘導体(ヘマトポルフィリン誘導体など)及びホトフリンポルフィマーナトリウム(Photofrin porfimer sodium);「グリーンポルフィリン:greenporphyrins」、例えばベンゾポルフィリン誘導体(benzoporphyrin derivative:BPD)、MA並びにフタロシアニン類を用いて、数10年来試みられている。
【0006】
U.Schmidt等は、ウサギの眼に移植されたグリーンメラノーマ:Green melanoma(非着色の腫瘍)の治療のために、低密度のリポたん白質(low density lipoprotein:LDL)に結合されたBPDを用いた実験を行い、このコンテクストにおいて壊死を達成したことを記述している(IOVS(1992)33:1253アブストラクト2802)。このアブストラクトは、また、角膜の血管新生モデルにおいてLDL−BPDが血栓を生成させたことも記述している。角膜の組織は、網膜ないしは脉絡膜のそれとは異なっている。
【0007】
LDL−BPD又はリポソームBPDを用いて詠絡膜の血管新生を治療することは、IOVS(1993)34:1303:U.Schmidt−Erfurth等(アブストラクト2956)、R.Haimovici等(アブストラクト2955)、A.W.Walsh等(アブストラクト2954)、S.C.Lin等(アブストラクト2953)に報告されている。別の刊行物として、R.S.Moulton等(アブストラクト2294)、IOVS(1993)34:1169がある。
【0008】
眼の状態のホトダイナミックセラピーによって患者の視力が予期に反して改善されることが今や見出された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光力学的治療法(photodynamic treatment methods)を用いて視力を改善する方法に使用する組成物に向けられる。この方法は、光力学的治療のプロトコルによって不所望の血管新生、特に脉(脈)絡膜の血管新生(neovasculature of choroid)の減少をもたらす場合には特に有効である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、その1つの形態として、本発明は人の視力を改善するに当り、そのための処置を必要とする患者に、当該患者の眼中にその有効量を局在化させるに足る量の光活性化合物を反復投与し、当該光活性化合物の該有効量を眼中に局在化させるに足る時間を経過させ、当該光活性化合物によって吸収される光を眼に照射することを含む人の視力を増大する方法における光活性化合物に向けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の対象を構成する一般的な形態において、改善を要する視力をもつ患者は、眼の光活性化合物の有効な濃度を得るのに十分な量の適切な光活性化合物の反復投与を受ける。眼の所望の領域に該化合物が有効な濃度において蓄積されることを許容する適切な時間の後に、この領域に、該光活性化合物によって吸収される光を照射する。この照射によって化合物が活性化され、それによって直ぐ近傍の組織に損傷効果を生ずる。この最終的な結果は、患者の視力の回復である。
【0012】
[光活性化合物]
本発明によるホトダイナミックセラピー(photodynamic therapy)は、多くの光活性化合物のいずれかを用いて行うことができる。一例として、米国特許5,028,621号、4,866,168号、4,649,151号及び5,438,071号(これらの全内容は参考により本明細書の一部に組込まれる。)に記載されているような、ヘマトポルフィリン誘導体自体に関する種々の改良を含む種々のヘマトポルフィリン誘導体(hematoporphyrin derivative)が挙げられる。その他にも、フエオホルビド(pheophorbides)が、米国特許第5,198,460号、5,002,962号及び5,093,349号に記述され、バクテリオクロリン(bacteriochlorins)が米国特許第5,171,741号及び第5,173,504号に、ヘマトポルフィリンの二量体及び三量体が米国特許第4,968,715号及び第5,190,966号に、それぞれ記載されている。これらの米国特許の内容も参考により本明細書の一部に組込まれる。更に、米国特許5,079,262号は、光活性化合物のソースとして、ヘマトポルフィリン、アミノレブリン酸(ALA)の先駆物質の使用を記述している。PDTにおいてのフタロンアニン感光物質の使用は、米国特許第5,166,197号に記述されている。全ての上記米国特許の内容も参考により本明細書の一部に組込まれる。その他の可能な光活性化合物には、プルプリン類(purpurins)、メロシアニン類(merocyanines)及びポルフィセン類(porphycenes)が含まれる。本発明において用いられる特に好ましい光活性化合物は、グリーンポルフィリン類である。これらのポルフィリンは、米国特許第4,883,790号、4,920,143号、5,095,030号及び5,171,749号に記述されている。これらの米国特許の全内容も、参考により、本明細書の一部に組込まれる。これらの光活性化合物は、特に好ましい具体的な例を示しているので、これらの化合物のための典型的な化学式は、図1に示されている。
【0013】
図1を参照して好ましい実施形態を説明すると、R1及びR2は独立に、カルボアルコキシル(carbalkoxyl;2−6C)、アルキル(1−6C)、アリールスルホニル(6−10C)、シアノ及び−CONR5CO(ここでR5はアリール(6−10C)又はアルキル(1−6C)である。)より成る群から選択され、各々のR3は独立に、カルボキシル、カルボキシアルキル(2−6C)、又はその塩、そのアミド、そのエステル若しくはそのアシルヒドラゾンであり、又はアルキル(1−6C)であり、R4はCH=CH2又は−CH(OR4')CH3であり、ここでR4'は、H又は親水性の置換基によって任意に置換されていることのあるアルキル(1−6C)である。特に好ましいのは、図1の化合物(3)又は(4)に示された式に含まれるグリーンポルフィリン又はその混合物である。
【0014】
より好ましい実施形態によれば、グリーンポルフィリンが、図1の化合物(3)又は(4)に示された式に含まれたもの又はその混合物である。ここでR1及びR2は、各々独立に、カルボアルコキシル(carbalkoxyl:2−6C)であり、一つのR3はカルボキシアルキル(2−6C)で、他方のR3はカルボキシアルキル(2−6C)置換基のエステルであり、R4はCH=CH2又は−CH(OH)CH3である。
【0015】
更に好ましい実施形態においては、グリーンポルフィリンが、図1の化合物(3)に示された式に含まれるものであり、ここでR1及びR2はメトキシカルボニルであり、一つのR3は−CH2CH2COOCH3で、他方のR3は−CH2CH2COOHであり、R4は、CH=CH2、即ちBPD−MAである。
【0016】
前述したどの光活性化合物も本発明において使用し得る。もちろん、2以上の光活性化合物を使用しても良いが、処置の効力は、光活性化合物による光の吸収に依存するので混合物を使用する場合、類似した吸収極大を示す化合物が好ましい。
【0017】
[調合物]
光活性化合物は、標的とする眼の組織への有効な濃度を得るように調合される。光活性化合物は、標的としての眼の組織の特異な表面成分に結合可能な特異の結合配位子に結合されていてもよい。また、目標とする組織への高濃度を与える担体(carrier)との調合によってもよい。
【0018】
調合物の性質は、部分的に、投与の形態と、選択された光活性化合物の性質とに依存する。薬理学的に容認可能な賦形剤又は特別の光活性化合物にとって適切なその組合わせを用いてもよい。即ち、光活性化合物は、水性組成物、経粘膜若しくは経皮化合物又は経口調合物の形で投与することができる。調合物は、リポソームを含有してもよい。リポソーム組成物は、光活性化合物がグリーンポルフィリンである場合には特に好ましい。リポソーム組成物は、血漿の低密度のリポたん白質成分にグリーンポルフィリンを選択的に供与すると考えられており、このリポたん白質成分は、希望する部位に活性成分をより有効に供与するための担体として作用する。LDL受容体の数を多くすることが血管新生に関連していることが示されている。血液のリポたん白質相へのグリーンポルフィリンの配分量を大きくすることによって血管新生により効率的に供与されると考えられる。
【0019】
前述したように、本発明の組成物は、患者の視力の低下が不所望の血管新生に関連している場合に特に有効である。グリーンポルフィリン、特にBPD−MAは、これらのリポたん白質と強く相互作用する。LDL自身は、担体として使用し得るが、LDLは、リポソーム調合物よりも相当に高価で、実用性が低い。従って、LDL又は好ましくはリポソームは、グリーンポルフィリンの担体として好適である。それはグリーンポルフィリンがリポたん白質と強く相互作用し、リポソーム中に容易にパッケージされるからである。リポソームを含むリポ複合体から構成されるグリーンポルフィリンの組成物は、米国特許第5,214,036号及び米国特許出願番号07/832,542(出願日:1992年2月5日)に記載されている。これら両方の開示内容は参考により本明細書の一部に組込まれる。経静脉(脈)投与用のリポソームBPD−MAは、B.C.バンクーバー、QLT Photo Therapeutics Inc.から入手できる。
【0020】
[投与及び用量]
光活性化合物は、経口、注射、経直腸などの任意の形態で投与してよく、また化合物を直接点眼してもよい。静脈注射、筋肉注射又は皮下注射などの注射による投与が望ましい。静脈注射は特に好ましい。
【0021】
光活性化合物の用量は、投与形態、それが担持されている調合物(例えばミリポソームの形態)又はそれが標的特異の配位か否か、例えば抗体若しくは免疫活性フラグメントに結合されているか否か、によって、大きく変動し得る。一般に認識されているように、光活性化合物の種類、調合、投与形態並びに用量レベルの間にはある関連性が存在する。特別の組合わせに適合するように、これらのパラメーターを調整することができる。
【0022】
種々の光活性化合物は、異なる用量範囲を必要とするが、グリーンポルフィリンを使用した場合、典型的な用量は、0.1−50mg/M2(体表面積)、好ましくは約1−10mg/M2、より好ましくは、約2−8mg/M2である。
【0023】
本発明において、有効で選択的なホトダイナミックセラピーのために用いられる種々のパラメーターは、相互に関連されている。従って用量は、他のパラメーター、例えば放射量(fluence)、放射照度(irradiance)、ホトダイナミックセラピーに用いる光の持続時間(duration)、投与と治療照射との間の時間、について調節する必要もある。これらの全てのパラメーターは眼の組織に大きな損害を与えずに視力を大きく増大させるように調節すべきである。
【0024】
換言すれば、光活性化合物の用量を少なくすると、脈絡膜の新生血管組織を閉止するのに必要な放射量は増大する傾向を示す。
【0025】
[光による処置]
光活性化合物を投与した後、標的としての眼の組織は、選択された物質が吸収する波長において照射される。前述した光活性化合物のスペクトルは、当該技術では既知となっている。どんな特別な光活性化合物についてもこのスペクトルを確認することは容易にできる。しかし、グリーンポルフィリンについては、所望の波長範囲は、一般に550〜695nmである。この波長範囲は、身体組織への透過の増大にとって特に好ましい。
【0026】
照射の結果として、励起状態の光活性化合物は、他の化合物と相互作用して、細胞構造を分断させることのできる反応性の中間体、例えば一重項の酸素、を生成する。可能な細胞標的には、細胞膜、ミトコンドリア、リポソーム膜並びに核がある。腫瘍及び新生血管モデルからの証左は、血管の塞止(occlusion)がホトダイナミックセラピーの主要なメカニズムであり、この塞止は、内皮細胞の破壊、その後の血小板の付着、脱顆粒及び血栓の形成によって生ずることを示している。
【0027】
照射治療の間の放射量は、組織の種類、標的の組織の深さ、上部にある体液又は血液の量によって、大きく変動し得るが、好ましい変動の範囲は、約50−200ジュール(Joules)/cm2である。
【0028】
放射照度は、典型的には、約150−900mW/cm2の範囲で変動し、好ましい変動幅は、約150−600mW/cm2である。しかし、より高い放射照度も、処置時間を短縮させる利点をもつものとして、有効であり、選択することができる。
【0029】
光活性化合物の投与後の最適の時間は、投与形態、投与形式及び特別の標的組織によって大きく変動し得る。光活性化合物の投与後の典型的な時間は、約1分から約2時間、好ましくは約5−30分、より好ましくは10−25分である。
【0030】
光照射の持続時間は、所望の放射量に依存する。放射照度600mW/cm2については、放射量50J/cm2には、90秒の照射が必要とされ、また150J/cm2には、270秒の照射が必要とされる。
【0031】
[処置の評価]
臨床試験及び眼底写真は、患者によっては約24時間後にわずかな網膜の白化が生ずるが、ホトダイナミックセラピーの直後には、色の変化は、通常は示さない。脈絡膜の血管新生の閉止は、内皮細胞の損傷の観察によって好ましくは組織学的に確認される。血管化した細胞質及び新生血管組織の破損に関連した異常な核を検出するための観察も評価され得る。
【0032】
一般に、血管新生を減少させる上での、ホトダイナミックセラピーの効果は、処置後の特定の期間毎に標準的なフルオレセインによる血管造影技術を用いて検査することができる。
【0033】
本発明に関し特に重要なのは、視力の評価である。これは、当該技術において標準的な手段と、慣用される「アイチャート(eye charts)」(ある大きさの文字、通常は所定の大きさの線上の5文字、を識別する能力によって視力を評価する)とを用いて行う。視力の目安は、当該技術においては周知であり、本発明に従って視力を評価するために、標準的な手段が使用される。
【0034】
次に、実施例を参照して本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0035】
[種々のPDT訓練の比較]
年齢に関連した斑状の変性(年齢関連性斑状変性:AMD)の実験的処置について資格をもつと診断された患者群を、3つの群に分けた。
【0036】
22人の患者の群Aは、BC.バンクーバー、QLT Photo Therapeuticsから入手可能な市販のリポソーム静脈注射組成物中BPD−MA6mg/M2(体表面積)の投与を受けた。この投与は、静脈注射によった。
【0037】
注入開始後30分してから、患者に、コヒ−レントアルゴン染料レーザーNo.920、Coherent Medical Laser、Palo Alto,CA(Ohkuma,H.等、Arch Ophthalmol(1983)101:1102−1110;Ryan,S.J.,Arch Ophthalmol(1982)100:1804−1809)の光を、全放射量50J/cm2、75J/cm2、100J/cm2、105J/cm2又は150J/cm2のいずれかにおいて、600mW/cm2の放射照度において照射した。
【0038】
第2群(B群)の15人の患者には、群Aと同様に、静脈注射によって、リポソーム調合物中BPD−MAを6mg/M2投与したが、A群と同様にして行った照射は、注入開始後20分してから開始するようにした。
【0039】
第3群(C群)の15人の患者には、BPD−MAを12mg/M2投与したことを除いて、A群の患者と同じ訓練を与えた。
【0040】
処置後において、患者を評価するために、処置後1週間、4週間及び12週間してから、フルオレセインによる血管造影を行った。標準的なアイチャートを用いた視力試験は、処置後3カ月して実施した。投与した光の全放射量とは関係なく、各群について視力変化の平均値を求めた。
【0041】
3カ月後に、訓練Aを受けた患者は、+0.10の視力の改善を示した(1.0の改善は、慣用されるアイチャートにおいて線1本分の改善に相当する。)。
訓練Bを受けた患者は、+0.53の視力の改善を、また訓練Cを受けた患者は、平均して−0.40の視力の低下を示した。
【0042】
比較として、斑状光凝固研究グループ(Macular Photocoagulation Study Group)、Clinical Sciences(1991)109:1220−1231.に記載された標準の光凝固処置を用いて処置された184人の患者は、処置後3カ月において、−3.0の視力の低下を示した。これは、同じ期間においてAMDにかかっている179人の患者のサンプルが−2.0の視力の低下を示している無処置の結果よりも悪い結果であった。
【0043】
従って、リポソーム調合物中BPD6mg/M2を投与し、照射が20分後に開始された、訓練Bが、3つの試験されたプロトコルの中で最良であったように観察された。
【実施例2】
【0044】
[視力の増大の時間推移]
この研究中の16人の患者は、前述した実施例1に記載された訓練Bを受け、1週間後、4週間後及び3カ月後にそれぞれ視力検査を受けた。これらの患者は、処置後1週間、4週間及び3カ月後に、平均して、+2.13、+1.25及び+0.53の視力の増大を示した。
【0045】
これらの結果は、少なくとも部分的に、脈絡膜の新生血管(choroidalneovasculature:CNV)の閉止(closure)の成功に相関されるように思われた。訓練Bを受けた患者については、フルオレセイン血管造影試験を受けた16人中10人は、4週間後、CNVの50%を超える閉止を示し、それに対応して視力が+1.6回復した。4週間後にCNVの50%未満の閉止を示した残りの6人の患者は、+0.7の視力の回復を示した。
【0046】
実施例1の訓練Cを受けた15人の患者の内7人は、CNV閉止が50%を超えており、視力の回復は+1.4であった。15人中3人は、CNV閉止が50%より少なく、視力は−0.3低下した。15人中3人は、従来のCNV再発を示し、視力は−1.6低下した。
【0047】
他方では、訓練Aの処置後4週間して、21人の患者中9人は、CNV閉止50%を超えたのに、視力は−0.2低下した。21人中9人は、CNV閉止50%未満で、視力の改善は+0.9であった。処置された21人の患者中3人は、従来のようなCNVの再発を示し、視力の変化は見られなかった。
【0048】
3カ月後の結果は、表1に示す通りであった。視力の変化の観察された値もこの表に示されている。
【0049】
【表1】

【0050】
このように、完全とは全く言えないが、ある程度のCNV閉止と視力の改善との相関が見られるように思われる。従って、本発明の組成物は、特に脈絡膜に不所望の血管新生を示す患者に特に容易に適用することができる。従って、適切な指示は、斑状の変性、眼のヒストプラズマ症候群、近視及び炎症性疾患である。
【0051】
図2は、訓練Bを受けた個々の患者の視力の時間変化を示す線図である。症例によっては、処置後の時間と共に、改善が減少するとしても、全ての患者について改善が見られた。
【実施例3】
【0052】
[反復処置による効果]
個々の患者について、実施例1に示した訓練Bの処置を行い、最初の処置から2週間及び6週間後に、再処置を行った。処置を反復すると、視力の改善の度合が高められるように思われた。結果を図3に示す。
【0053】
図3に示すように、例えば基線20/126でスタートした患者No.901は、2週間後に視力が+2回復し、2回目の処置から2週間後に、基線上+5まで改善された。患者906については、第1回の処置後の増大は+2であり、これは、第2回の処置後1週間で+3に改善された。多少の低下を示す患者はあったが、一般に訓練の反復によって視力が維持され、又は改善された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の組成物として有用なグリーンポルフィリンの好ましい形態を示す。
【図2】PDT治療を受けた患者の視力の時間応答を示す。
【図3】改善された視力を維持する上での患者へのPDTの反復効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記段階を含む反復ホトダイナミックセラピーにより、眼に不所望の血管新生を含有する人の視力を改善するための組成物であって、薬理学的に許容可能な賦形剤と光活性化合物を含有し、該光活性化合物がグリーンポルフィリン、ヘマトポルフィリン誘導体、クロリン、フロリン又はプルプリンである組成物:
該光活性化合物により吸収される少なくとも1つの波長の光を、その治療を必要とする人の眼に対し、該組成物を投与して該眼中に該化合物の有効量が局在化した後に照射する段階(但し、該光活性化合物の投与用量は、2〜8mg/M体表面積の範囲のグリーンポルフィリン投与に相当する用量とする)。
【請求項2】
前記血管新生が脈絡膜の血管新生であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
年齢関連性斑状変性(AMD)、その他の斑状変性、眼のヒストプラズマ症候群、近視、又は、炎症性疾患と診断された患者用であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記光活性化合物がプルプリンであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の組成物。
【請求項5】
前記光活性化合物がグリーンポルフィリンであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の組成物。
【請求項6】
前記グリーンポルフィリンが下記一般式(3)又は(4)で示される化合物であり、
及びRは、各々独立に、カルボアルコキシル(2−6C)、アルキル(1−6C)、アリールスルホニル(6−10C)、シアノ及び−CONRCOから成る群から選択され、Rはアリール(6−10C)又はアルキル(1−6C)であり、
各々のRは、独立に、カルボキシル、カルボキシアルキル(2−6C)、又はその塩、アミド、エステル若しくはアシルヒドラゾンであり、又はアルキル(1−6C)であり、
はCH=CH又は−CH(OR4’)CHであり、R4’はH若しくは親水性置換基により任意に置換されることのあるアルキル(1−6C)であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。

(3) (4)
【請求項7】
前記グリーンポルフィリンが、下記一般式(3)又は(4)で示される化合物であり、R及びRは、各々独立に、カルボアルコキシル(2−6C)であり、
一つのRはカルボキシアルキル(2−6C)、他方のRはカルボキシアルキル(2−6C)置換基のエステルであり、RはCH=CH又は−CH(OH)CHであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。

(3) (4)
【請求項8】
前記グリーンポルフィリンが、下記一般式(3)で示される化合物であり、
式中R,及びRはメトキシカルボニルであり、一つのRは−CHCHCOOCH、他方のRはCHCHCOOHであり、RはCH=CH(すなわちBPD−MA)であることを特徴とする請求項7に記載の組成物。

(3)
【請求項9】
前記光活性化合物が低密度リポ蛋白質と複合体を形成した状態にあることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の組成物。
【請求項10】
リポソーム製剤の形態にあることを特徴とする請求項1〜9の何れか一つに記載の組成物。
【請求項11】
前記光活性化合物が標的眼組織に結合する特異的な結合配位子に結合されることを特徴とする請求項1〜10の何れか一つに記載の組成物。
【請求項12】
前記照射が放射照度約600mW/cmで当該光の50〜150J/cmの全放射量を供給することを特徴とする請求項1〜11の何れか一つに記載の組成物。
【請求項13】
前記照射がレーザーから放射された光によることを特徴とする請求項1〜12の何れか一つに記載の組成物。
【請求項14】
前記照射が当該組成物の投与後凡そ5−30分に始まることを特徴とする請求項1〜13の何れか一つに記載の組成物。
【請求項15】
前記照射が当該組成物の投与後凡そ10−25分に始まることを特徴とする請求項1〜13の何れか一つに記載の組成物。
【請求項16】
前記照射が当該組成物の投与後凡そ20分に始まることを特徴とする請求項1〜13の何れか一つに記載の組成物。
【請求項17】
前記ホトダイナミックセラピーが、最初の処置から凡そ2週間後に少なくとも1回繰り返されることを特徴とする請求項1〜16の何れか一つに記載の組成物。
【請求項18】
前記ホトダイナミックセラピーが、最初の処置から凡そ6週間後に更に1回繰り返されることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
下記段階を含む反復ホトダイナミックセラピーにより、眼に不所望の血管新生を含有する人の視力を改善するための薬剤調製への光活性化合物の使用であって、薬理学的に許容可能な賦形剤と光活性化合物を含有し、該光活性化合物がグリーンポルフィリン、ヘマトポルフィリン誘導体、クロリン、フロリン又はプルプリンである使用:
該光活性化合物により吸収される少なくとも1つの波長の光を、その治療を必要とする人の眼に対し、該組成物を投与して該眼中に該化合物の有効量が局在化した後に照射する段階(但し、該光活性化合物の投与用量は、2〜8mg/M体表面積の範囲のグリーンポルフィリン投与に相当する用量とする)。
【請求項20】
前記血管新生が脈絡膜の血管新生であることを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項21】
年齢関連性斑状変性(AMD)、その他の斑状変性、眼のヒストプラズマ症候群、近視、又は、炎症性疾患と診断された患者用であることを特徴とする請求項19又は20に記載の使用。
【請求項22】
前記光活性化合物がプルプリンであることを特徴とする請求項19〜21の何れか一つに記載の使用。
【請求項23】
前記光活性化合物がグリーンポルフィリンであることを特徴とする請求項19〜21の何れか一つに記載の使用。
【請求項24】
前記グリーンポルフィリンが下記一般式(3)又は(4)で示される化合物であり、
及びRは、各々独立に、カルボアルコキシル(2−6C)、アルキル(1−6C)、アリールスルホニル(6−10C)、シアノ及び−CONRCOから成る群から選択され、Rはアリール(6−10C)又はアルキル(1−6C)であり、
各々のRは、独立に、カルボキシル、カルボキシアルキル(2−6C)、又はその塩、アミド、エステル若しくはアシルヒドラゾンであり、又はアルキル(1−6C)であり、
はCH=CH又は−CH(OR4’)CHであり、R4’はH若しくは親水性置換基により任意に置換されることのあるアルキル(1−6C)であることを特徴とする請求項23に記載の使用。

(3) (4)
【請求項25】
前記グリーンポルフィリンが、下記一般式(3)又は(4)で示される化合物であり、R及びRは、各々独立に、カルボアルコキシル(2−6C)であり、
一つのRはカルボキシアルキル(2−6C)、他方のRはカルボキシアルキル(2−6C)置換基のエステルであり、RはCH=CH又は−CH(OH)CHであることを特徴とする請求項24に記載の使用。

(3) (4)
【請求項26】
前記グリーンポルフィリンが、下記一般式(3)で示される化合物であり、
式中R,及びRはメトキシカルボニルであり、一つのRは−CHCHCOOCH、他方のRはCHCHCOOHであり、RはCH=CH(すなわちBPD−MA)であることを特徴とする請求項25に記載の使用。

(3)
【請求項27】
前記光活性化合物が低密度リポ蛋白質と複合体を形成した状態にあることを特徴とする請求項19〜26の何れか一つに記載の使用。
【請求項28】
リポソーム製剤の形態にあることを特徴とする請求項19〜27の何れか一つに記載の使用。
【請求項29】
前記光活性化合物が標的眼組織に結合する特異的な結合配位子に結合されることを特徴とする請求項19〜28の何れか一つに記載の使用。
【請求項30】
前記照射が放射照度約600mW/cmで当該光の50〜150J/cmの全放射量を供給することを特徴とする請求項19〜29の何れか一つに記載の使用。
【請求項31】
前記照射がレーザーから放射された光によることを特徴とする請求項19〜30の何れか一つに記載の使用。
【請求項32】
前記照射が当該組成物の投与後凡そ5−30分に始まることを特徴とする請求項19〜31の何れか一つに記載の使用。
【請求項33】
前記照射が当該組成物の投与後凡そ10−25分に始まることを特徴とする請求項19〜31の何れか一つに記載の使用。
【請求項34】
前記照射が当該組成物の投与後凡そ20分に始まることを特徴とする請求項19〜31の何れか一つに記載の使用。
【請求項35】
前記ホトダイナミックセラピーが、最初の処置から凡そ2週間後に少なくとも1回繰り返されることを特徴とする請求項19〜34の何れか一つに記載の使用。
【請求項36】
前記ホトダイナミックセラピーが、最初の処置から凡そ6週間後に更に1回繰り返されることを特徴とする請求項35に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−273853(P2006−273853A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64119(P2006−64119)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【分割の表示】特願平9−532132の分割
【原出願日】平成9年2月25日(1997.2.25)
【出願人】(502254176)キュー エル ティー インク. (13)
【氏名又は名称原語表記】QLT Inc.
【住所又は居所原語表記】887 Great Northern Way, Vancouver,British Columbia, Canada V5T 4T5
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】