説明

眼内レンズの形状計測方法、眼内レンズ検査装置、及び検査トレイ

【課題】 眼内レンズの形状計測を省スペースかつ高い測定精度で行うことができ、眼内レンズの計測及び検査時間を大幅に短縮することができる眼内レンズの計測方法、検査装置を提供する。
【解決手段】
検査装置10は眼内レンズ500を異なる2方向からそれぞれCCDカメラ50A,50Bにて撮像し、眼内レンズ500をZ方向及びY方向から撮像して得られた画像を連続で画像処理する。Z方向から撮像して得られた上方画像の画像処理により、眼内レンズ500の光学部径A、全長B、有効光学部径C、及び光学部中心Dの形状計測を行う。Y方向から撮像して得られた側方画像の画像処理により、眼内レンズ500の支持部角度E1,E2、サジッタH、ボールトハイトG、及び光学部中心厚さFの形状計測を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼内レンズの形状計測方法、眼内レンズ検査装置及び検査トレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、白内障患者の水晶体を摘出した後、眼内に挿入移植して視力補正するために眼内レンズが用いられている。この眼内レンズ500は、図2(a)、(b)に示すようにレンズ本体となる平面視略円形状をなす光学部510と、該光学部510の互いに180°反対側の部位から突出するように設けられた一対の支持部材(以下では、説明の便宜上、単に支持部520という。)とから構成されている。
【0003】
眼内レンズは、厚生省の眼内レンズ承認基準などで定められた規格を満足させるために、眼内レンズの寸法及び光学的特性について種々の規格検査をする必要がある。寸法上の規格検査の項目は、例えば、光学部径A、全長B、有効光学部径C、支持部角度E1及びE2、サジッタH、ボールトハイトG、及び光学部中心厚さFの項目が挙げられる。
【0004】
図2(a)に示すように、光学部径Aは光学部510の直径である。眼内レンズ500の全長B(=B1+B2)は支持部520を含めた長径である。ここで、B1は、光学部中心Dから一方の支持部520までの最長距離、B2は光学部中心Dから他方の支持部520までの最長距離である。有効光学部径Cは、光学部510の中で、実際に使用可能な径であり、図2(a)に示す例では、光学部510に対して支持部520の取付端が侵入した部分までは有効に使用できない部分があるため、光学部中心Dから支持部520の取付端までの径である。
【0005】
支持部角度E及びE2は、光学部510の光軸に垂直な平面に対しての支持部520の傾きである。サジッタHは、図2(b)に示すように、光学部510の光軸に垂直で最前部を含む平面と最後部を含む平面までの高さである。さらに、図2(b)に示すように、ボールトハイトGは、光軸に垂直で支持部520の先端から光学部510の前面までの高さである。これらボールトハイトG及びサジッタHの定義は、眼内レンズ承認基準による。又、図2(b)に示すように、光学部中心厚さFは光学部510の中心の厚さである。
【0006】
上記のような規格検査を行う検査装置としては、特許文献1が公知である。特許文献1では、眼内レンズ全体像撮影用の低倍率顕微鏡及び眼内レンズの部分撮影用の高倍率顕微鏡を使用して、眼内レンズ検査を行う際に、両顕微鏡を切り替えし、オートフォーカス機構によって、高倍率顕微鏡のピント合わせを行うようにしている。
【0007】
ところで、眼内レンズを検査する際に使用する検査トレイとして、特許文献2に検査用トレイの従来技術が示されている。この特許文献2の検査トレイではレンズの光学面でレンズを支えるようにした状態で上記の項目の検査を行うようにしている。
【特許文献1】特開平11−337320号公報
【特許文献2】特開平11−332903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、低倍率顕微鏡及び高倍率顕微鏡を切り替えして使用したり、オートフォーカス機構により、ピント合わせを行うことによって、計測のための動作に多くの時間を要する問題がある。又、眼内レンズの高さ方向の検査(例えば、光学部中心厚さF)では、オートフォーカス機構により、光学部のピント面を検出するようにして、焦点があった高さ情報に基づいて、測定結果を出力するために、複数回の焦点合わせを行う必要がある。このため、自動検査装置として満足できる検査タクトではなく、又、高さ方向に関する検査の焦点合わせは、特に困難であり、十分な測定精度が得られない問題がある。
【0009】
又、一般にレンズは高い光学性が求められるため、レンズにキズやゴミや汚れがないことが要求される。特に眼内レンズは人体内に埋法することから、キズやゴミや汚れのないことが高度に要求される。特許文献2の検査トレイでは、眼内レンズの光学部の光学面で眼内レンズを支え、かつ、完全に眼内レンズを固定していないため、振動などによって前記光学面にキズが付く可能性が高い問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記の従来の課題を解決するためになされたものであり、眼内レンズの形状計測を省スペースかつ高い測定精度で行うことができ、眼内レンズの計測及び検査時間を大幅に短縮することができる眼内レンズの計測方法を提供することにある。
【0011】
又、本発明の他の目的は、前記眼内レンズの計測方法を使用する眼内レンズ検査装置を提供することを目的としている。さらに、本発明の他の目的は、前記眼内レンズの計測方法に使用することができ、眼内レンズの形状検査を行う際に、エッジ以外の光学部表面にキズがついたり汚れの付着の虞がない検査トレイの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、眼内レンズを異なる2方向からそれぞれ撮像手段にて撮像し、前記眼内レンズを互いに異なる第1方向及び第2方向から撮像して得られた画像を同時に或いは連続で画像処理し、前記画像処理には、前記第1方向から撮像して得られた画像の画像処理を含み、この画像処理により、前記眼内レンズの光学部径、全長、有効光学部径、及び光学部中心のうちの少なくとも1つの形状計測を行うことと、前記第2方向から撮像して得られた画像の画像処理を含み、この画像処理により、前記眼内レンズの支持部角度、サジッタ、ボールトハイト、及び光学部中心厚さのうち、少なくとも1つの形状計測を行うことを含むことを特徴とする眼内レンズの形状計測方法を要旨とするものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記撮像手段は、前記眼内レンズの光軸上に位置して撮像する第1の撮像手段と、前記眼内レンズの光軸に直交する軸上に位置し、前記眼内レンズの側面を撮像する第2の撮像手段を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2において、前記第2の撮像手段は、前記眼内レンズが有する全ての支持部が撮像可能な位置に配置することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記眼内レンズを挟んで前記各撮像手段とは反対側に照明手段をそれぞれ配置し、各撮像手段にて前記眼内レンズを撮像する際に、該照明手段により、照射することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4において、前記照明手段は、可視光領域のうちの短波長を主波長として持つ単色の光源、又は測定対象である眼内レンズの少なくとも一部の色の補色関係の色又は補色関係の色と類似色を主波長として持つ単色の光源を備えることを特徴とする。
【0016】
ここで照明手段による発光色の代表的な色における波長について説明する。
(1) 汎用的な撮像素子(CCD,CMOS等)は、可視光(約380〜800nm)に感度が集中し、それ以外の領域での感度が低いことが知られている。
【0017】
(2) 紫外領域(約380nm以下)は人体に有害である。
(3) 一般的な単色LED(発光ダイオード)が発光する波長領域は次の通りである。
【0018】
青では、約430〜500nm間に主波長を持ち、波長のレンジは主波長付近のみを有する。緑では、約500〜560nm間に主波長を持ち、波長のレンジは主波長付近のみを有する。又、赤では、約600〜750nm間に主波長を持ち、波長のレンジは主波長付近のみを有する。本明細書では、可視光領域(約380〜800nm)の範囲内で青色の波長以下を発する波長領域を短波長と定義する。
【0019】
又、請求項5で述べる補色関係とは、色相学の色相環において、180°反対の位置にある色のことをいう(図15参照)。なお、図15は、一般的な色相環を示している。又、補色関係の色と類似色とは、前記色相環において、前記補色関係の色に隣接する色や、その隣接する色にさらに隣接する色のことである。例えば、図15に示す色相環において、「あか(赤)」に対する補色関係の色は、「みどりあお(緑青)」である。又、「あか(赤)」に対する補色関係の色と類似色は、一般的な類似色よりも広義の意味で使用しており、「みどりあお(緑青)」に隣接する「あおみどり(青緑)」、「あお(青)」、「みどり(緑)」及び「きみどり(黄緑)」である。
【0020】
請求項6の発明は、眼内レンズを配置するための検査トレイと、前記検査トレイ上に配置した眼内レンズを異なる2方向から撮像する一対の撮像手段と、前記一対の撮像手段が撮像して得られた画像を画像処理して、該画像に基づいて、眼内レンズの光学部径、全長、有効光学部径、及び光学部中心のうちの少なくとも1つの形状測定と、前記眼内レンズの支持部角度、サジッタ、ボールトハイト、及び光学部中心厚さのうち、少なくとも1つの形状測定とを行う測定手段と、前記測定手段の測定結果の適否判定を行う検査手段を備えたことを特徴とする眼内レンズ検査装置を要旨とするものである。
【0021】
請求項7の発明は、請求項6において、前記一対の撮像手段は、前記眼内レンズの光軸上に位置して撮像する第1の撮像手段と、前記眼内レンズの光軸に直交する軸上に位置し、前記眼内レンズの側面を撮像する第2の撮像手段を含むことを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7において、前記検査トレイには、眼内レンズの配置を許容する眼内レンズ配置空間が設けられ、該眼内レンズ配置空間を挟んで前記各撮像手段とは反対側にそれぞれ一対の照明手段が配置され、前記各撮像手段にて前記眼内レンズを撮像する際に、該照明手段により、照射することを特徴とする。
【0023】
請求項9の発明は、請求項8において、前記照明手段は、可視光領域のうちの短波長を主波長とした、又は測定対象である眼内レンズの少なくとも一部の色の補色関係の色又は補色関係の色と類似色を主波長として持つ単色の光源を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9において、前記眼内レンズ配置空間を挟んで互いに反対側に位置する前記撮像手段と前記照明手段の間には、光遮断性部材を配置し、前記光遮断性部材の配置位置は、前記撮像手段による眼内レンズの全体像の撮像を阻害しない位置であって、前記撮像手段により撮像可能な位置であることを特徴とする。
【0025】
請求項11の発明は、眼内レンズの形状に関する検査をするために、前記眼内レンズを載置するための載置部を備えた検査トレイにおいて、前記載置部の表面には、前記眼内レンズの光学部を載置可能なテーパー面を備えるテーパー孔が形成され、前記テーパー孔と連通するとともに、前記載置部を貫通する貫通孔が形成され、前記載置部の表面には、前記テーパー孔の軸心を横切るように溝が形成されていることを特徴とする検査トレイを要旨とするものである。
【0026】
請求項12の発明は、請求項11において、前記載置部には、眼内レンズを保持するための保持部を備え、該保持部は、眼内レンズの光学部から突出された支持部毎に、2個以上設けられたことを特徴とする。
【0027】
請求項13の発明は、請求項12において、眼内レンズの支持部毎に設けられた前記保持部のうち、前記貫通孔の軸心に最も近い保持部は、前記貫通孔の軸心を中心とした円上に位置し、かつ、前記テーパー面上若しくは前記テーパー面に接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、眼内レンズの形状計測(寸法計測)を省スペースかつ高精度で行うことができ、眼内レンズを2方向から撮像し、得られた画像を同時処理、或いは連続処理するため、眼内レンズの計測及び検査時間を大幅に短縮することができる効果を奏する。
【0029】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果を容易に実現できる。
請求項3の発明によれば、第2の撮像手段により、眼内レンズに設けられた全ての支持部が撮像できる。
【0030】
請求項4の発明によれば、照明手段から発せられた光は、眼内レンズを透過し、若しくは、遮断され、そのときに生じた陰影を撮像手段が撮像することができる。この結果、支持部を有する眼内レンズのような特殊形状を陰影として撮像することができる。
【0031】
請求項5の発明によれば、短波長の光は、光学部を通過する際、屈折の影響を受けやすく、散乱しやすいため、光学部を通過し、撮像手段に到達する光が少なくなり、光学部(レンズ)のような透明体の陰影のコントラストを向上させる、さらに形状計測(寸法計測)の精度を向上させることができる。
【0032】
又、光学部(レンズ)が、光(照明光)と同色の場合、光を通過しやすく、光学部(レンズ)の色が光(照明光)と補色の関係の場合は、光を吸収しやすい性質がある。このため、光学部(レンズ)の色と補色関係又は補色関係の色と類似色である照明光を選択することにより、陰影のコントラストが向上し、寸法計測の精度をさらに向上させることができる。
【0033】
請求項6の発明によれば、眼内レンズの検査装置として、眼内レンズの寸法計測を省スペースかつ高精度で行うことができ、眼内レンズを2方向から撮像し、得られた画像を同時処理、或いは連続処理するため、眼内レンズの計測及び検査時間を大幅に短縮することができる効果を奏する。
【0034】
請求項7の発明によれば、請求項6の眼内レンズ検査装置の効果を容易に実現できる。
請求項8の発明によれば、照明手段から発せられた光は、眼内レンズを透過し、若しくは、遮断され、そのときに生じた陰影を撮像手段が撮像することができる。この結果、支持部を有する眼内レンズのような特殊形状を陰影として撮像することができる。
【0035】
請求項9の発明によれば、短波長の光は、光学部を通過する際、屈折の影響を受けやすく、散乱しやすいため、光学部を通過する光が少なくなり、光学部(レンズ)のような透明体の陰影のコントラストを向上させる、さらに寸法計測の精度を向上させることができる。又、光学部(レンズ)が、光(照明光)と同色の場合、光を通しやすく、光学部(レンズ)の色が光(照明光)と補色の関係の場合は、光を吸収しやすい性質がある。このため、光学部(レンズ)の色と補色関係又は、補色関係の色と類似色である照明光を選択することにより、陰影のコントラストが向上し、寸法計測の精度をさらに向上させることができる。
【0036】
請求項10の発明によれば、光遮断性部材により、眼内レンズの光学部(レンズ)の外側からの照明手段からの光を遮断し、撮像手段に到達するエッジ若しくはエッジ付近で屈折又は散乱した光を低減することができるため、撮像手段から得られた画像は、光学部(レンズ)のエッジのコントラストを向上できる。このため、光学部に関する計測を行う場合、その計測精度も向上する。さらに、光遮断性部材を基準画像としてパターンマッチング等の位置決め方法を用いることにより、治具や眼内レンズの形状に左右されない計測箇所の位置決めができる。
【0037】
請求項11の発明によれば、載置部の表面にテーパー面を形成することにより、眼内レンズの光学部(レンズ)をテーパー面に載置した際、該光学部を自身のエッジにて支持することが可能となる。この結果、眼内レンズの形状検査を行う際に、エッジ以外の光学部表面にキズがついたり汚れの付着の虞がなくなる。
【0038】
さらに、請求項11の発明によれば、検査トレイは、眼内レンズの光学部のエッジを支えるため、柔軟性に富む眼内レンズであっても形状保持性が向上する。又、眼内レンズを安定して保持することができる。又、貫通孔を有するため、例えば光学部を貫通孔と同軸となるように配置し、光学部と貫通孔を介して検査用の標識を観察することにより、光学部の解像力、レンズ度数の計測もできる。
【0039】
このようにこの検査トレイでは、1つの検査トレイに眼内レンズを載置することにより、複数の検査装置での測定が可能となる。すなわち、この検査トレイでは、貫通孔の軸心方向からの観察することにより行われる測定による検査と、溝が延びる方向からの観察することにより行われる測定による検査ができる。この結果、対応する検査装置の数が多くなるにつれ、眼内レンズを載せる作業時間が削減できるとともに、眼内レンズに作業者が触れる回数も少なくなることから、ゴミの付着やキズの発生などを大幅に軽減できる。又、この検査トレイでは、溝が延びる方向から、眼内レンズの光学部を観察できるため、眼内レンズの検査トレイに対する傾きを容易に知ることができる。
【0040】
請求項12の発明によれば、保持部を支持部毎に2個以上設けたことにより、支持部毎に、2個以上の保持部に保持して、眼内レンズの回転を抑制することができる。
請求項13の発明によれば、保持部が前記貫通孔の軸心を中心とした円上に位置し、かつ、前記テーパー面上若しくは前記テーパー面に接していることにより、保持部がテーパー面に載置された光学部の外径よりも外側となる。このため、眼内レンズの光学部をテーパー面に載せる操作の際に保持部が該操作の邪魔になることがなく、該操作の操作性の向上ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の眼内レンズ検査装置を具体化した実施形態を図1〜図16を参照して説明する。
図1に示すように眼内レンズ検査装置(以下、単に検査装置10という)は、検査トレイ20、一対の照明装置30A,30B、一対のX−Y−Zステージ40A、40B、各X−Y−Zステージ40A、40Bに設けられた一対のCCDカメラ50A,50B,コントローラ60、モニタ70、及び外部装置80等を備えている。検査トレイ20は、有蓋四角箱状をなす枠体110を介して、テーブル等の台100に載置されている。
【0042】
(枠体110)
図1に示すように、枠体110の上壁111は、その中央に、図13(b)に示すように上下に貫通する断面四角形をなす透孔112が形成されている。又、上壁111において、透孔112の周縁には、四角環状の突部114が形成されている。
【0043】
(検査トレイ20)
検査トレイ20は、透明のポリプロピレンからなり、図13(a)に示すように有蓋四角箱状のベース200と、該ベース200から上方に突出された低円筒状をなす試料支持部210を備えている。該ベース200は、その下面周縁に四角環状の嵌合壁205が形成されており、同嵌合壁205にて、枠体110の突部114に対して着脱自在に嵌合されている。
【0044】
試料支持部210の表面中央は、テーパー孔220及び該テーパー孔220と同軸の貫通孔230により貫通されている。テーパー孔220は、試料支持部210の内部側に向かうテーパー面222を備えている。すなわち、テーパー面222は、断面円形をなしており、下部に行くほどその断面円形の径が短くなるように形成されている。テーパー面222は、図14(a)に示すように眼内レンズ500の光学部510を載置可能である。テーパー面222は、試料支持部210表面から−10°〜−20°をなすように形成されている。なお、テーパー面222の角度は試料支持部210表面から上方に向かうように計測する場合を+で表記している。
【0045】
この角度の範囲にする理由は、テーパー面222の試料支持部210表面からの角度を−10°以上にすると、眼内レンズ500をテーパー面222にて支持する際、検査トレイ側に向く面が凸形状の場合、テーパー面222にて光学部510のエッジで支えることができなくなるためである。又、テーパー面222の試料支持部210表面からの角度を−20°未満にすると、光学部510が傾き易くなり、その傾き度合いによっては光学部510から突出して配置されている支持部520が試料支持部210に接してしまい、眼内レンズ500の汚染に繋がるため好ましくない。又、支持部520が変形し角度などが正しく測定できない。ここで、試料支持部210は、載置部に相当する。
【0046】
テーパー孔220の下部は、前記貫通孔230と連通されている。前記貫通孔230は断面円形に形成されており、その全長に亘って、同径に形成されている。貫通孔230の半径は、2.75mm未満とされている。貫通孔230の半径を2.75mm未満としている理由は、眼内レンズ500の光学部510の径がφ5.5mmより小さいものは、一般的に市場ニーズが低いため、貫通孔230の半径が2.75mm未満であれば、市場ニーズがある多くの眼内レンズの形状測定に使用することができるためである。
【0047】
又、試料支持部210において、テーパー孔220の軸心Otを横切るように溝240が形成されている。溝240の幅は図13(a)に示すように、貫通孔230の直径以下とされている。具体的には、溝240の幅は2.5〜5.5mmであり、溝の深さは0.5mm以上とすることが好適である。このようにすると、光学部510の検査トレイ20側に向く面も溝240が延びる方向から見えるようになり、光学部510の反検査トレイ側の面と検査トレイ側の面とを合わせることにより、光学部510(レンズ)の傾きを認識でき、計測時に補正を行うことができる。
【0048】
なお、溝240の幅を2.5mm未満にすると、光学部510の検査トレイ20側に向く面も溝240が延びる方向から見えにくく、或いは後述するCCDカメラ50Bによる撮像がしにくくなるため、計測精度が悪化する虞がある。又、溝240のより好ましい溝240の深さは、0.9mm以上である。
【0049】
前記試料支持部210表面において、溝240が形成された部分の貫通孔230を挟んだ部分には図14(a)に示すように下部が開口された一対の開口部242が形成されている。又、開口部242は、貫通孔230と連通されている。
【0050】
又、図13(a),図14(a)に示すように、テーパー孔220の上部周縁には、軸心Otを挟んで一対を一組とする2組のピン250,251、260,261が上方へ突出されている。ピン250,251、260,261は、前記試料支持部210表面に一体に設けられており、透明である。
【0051】
図13(a)に示すように、ピン250,260は、軸心Otを通過する直線L1上に位置するように配置されている。又、ピン251,261は、軸心Otを通過する直線L2上に位置するように配置されている。図13(a)に示すように、直線L1,L2とのなす角度であって、ピン250,251間の角度θ1は、直線L1,L2とのなす角度であって、ピン250,261間の角度θ2よりも、小さくされている。この角度θ1は、図14(a)に示すように、眼内レンズ500の各支持部520が通過できるともに、ピン250,251、及びピン260,261により、係止できる程度が好ましい。
【0052】
又、ピン251,261は、ピン250,260よりも、軸心Otに対して寄り近い位置に配置されており、テーパー孔220の軸心Ot(すなわち、貫通孔230の軸心)を中心とした円上に位置するように配置されている。このように構成することにより、テーパー面222により、眼内レンズ500の光学部510のエッジを支えることができる。
【0053】
なお、ピン250,260よりも、軸心Otに対して寄り近い位置に配置されたピン251,261の、軸心Otの離間距離は、2.8〜3.4mmの範囲が好ましい。
この理由は、下記の通りである。
【0054】
まず、市場ニーズで光学部の径が最も小さいφ5.5mmの眼内レンズをテーパー面222に載せて、ピン251,261が最も貫通孔230に近い状態を想定する。この場合、貫通孔230の軸心(すなわち、テーパー孔220の軸心Ot)に最も近いピン251,261はテーパー面222の外周に接する位置、すなわち、貫通孔230の軸心から2.75mmの位置に設けられるとする。しかし、この場合、眼内レンズをテーパー面に載置する際、ピンが、光学部に近接しすぎであり、載置する操作性が悪くなる。
【0055】
このため、実用を考慮して2.75mmに0.05mmを加えた2.80mmの位置(貫通孔230の軸心を中心とした円上の位置)にピン251,261を設置すれば、検査時の操作性が向上できる。すなわち、この場合、検査を行う際、テーパー面222に載置される光学部の外径よりも余裕をもってその外側にピン251,261が位置するため、光学部510をテーパー面に載せる操作の際、ピン251,261が該操作の邪魔になることがなく、該操作の操作性の向上ができる。
【0056】
又、貫通孔230の軸心に最も近いピン251,261の位置が、貫通孔230の軸心から3.4mmよりも離れると、検査作業を行っている際、何らかの原因で、眼内レンズ500に力が加わった際、眼内レンズ500の回転の抑制が困難になるからである。ピン250,251,260,261は保持部に相当する。
【0057】
なお、図13(b)に示すように、枠体110において、開口部242と対応する位置には、光遮断性部材としての棒材270,271がそれぞれ、図示しないブラケットを介して支持されている。そして、図13(a)、図14(a)に示すように平面視した場合、開口部242を介して後述するCCDカメラ50Aにて撮像可能である。すなわち、棒材270,271の配置位置は、CCDカメラ50Aによる眼内レンズの全体像の撮像を阻害しない位置であって、CCDカメラ50Aにより撮像可能な位置である。
【0058】
ここで、試料支持部210上は、眼内レンズの配置を許容する眼内レンズ配置空間を有する。すなわち、テーパー面222よりも上方の空間領域は、眼内レンズの光学部の配置を許容する空間であり、又、ピン250,251間,及びピン260,261間を含む試料支持部210の上方空間は、支持部の配置を許容する空間である。この両空間により、眼内レンズ配置空間が構成されている。支持部角度が0°以下となる場合において、支持部が試料支持部210に接着しないように、試料支持部210は窪み形状或いは空孔が設けられていても良い。
【0059】
(照明装置30A,30B)
次に、照明手段としての一対の照明装置30A,30Bについて説明する。
枠体110内において、台100上には、光源となる照明装置30Aが配置されており、検査トレイ20の裏面全体に対して裏面側(図1において、下面側)から照明可能である。照明装置30Aは、バックライト方式の青色LED(発光ダイオード)照明装置で構成されている。
【0060】
又、図1に示すように、枠体110の側方には、同じく光源となる照明装置30Bが配置されており、検査トレイ20の一側方全体に対して一側方側(図1において、Y方向側)から照明可能である。照明装置30Bは、バックライト方式の赤色LED(発光ダイオード)照明装置で構成されている。
【0061】
ここで、バックライト方式のLED照明装置の構造を図16を参照して簡単に説明する。なお、両照明装置30A,30Bは、発光色が異なるだけであるため、その構造については、同一符号を付して説明する。照明装置30A,30Bは、LED光源部300に対して導光板310がその側端面にて組み付けされている。導光板310は、表面が光を照射する面とされ、その裏面側には拡散シート320と反射シート330が積層されている。なお、図16は、原理説明のため便宜上、反射シート330を拡散シート320から離間して配置している。前記LED光源部300が発光した光は全反射を繰り返えして導光板310内部を進行するようになっている。導光板310の裏面側の拡散シート320は、拡散シート320内に侵入した光を照射面側に集める機能を有する。又、反射シート330は、拡散シートを通過した光を導光板310の表面側へ再び反射させる機能を有する。
【0062】
本実施形態では、照明装置30Aが発光する光の主波長は約470nmであり、照明装置30B発光する光の主波長は、約660nmである。又、本実施形態では、照明装置30Bの発光色に赤色を用いている理由は、眼内レンズを撮像する際に、側方画像からの測定では、支持部520を検出することが重要となっているためである。本実施形態では、支持部520は青色を有するため、補色関係にある「きだいだい(黄橙)」や或いは類似色である「赤」を用いると、コントラストが向上することが明らかである。このため、本実施形態では、安価に手に入れやすい赤色LED照明を採用している。
【0063】
(X−Y−Zステージ40A、40B及びCCDカメラ50A,50B)
CCDカメラ50Aを支持するX−Y−Zステージ40Aは、検査トレイ20の上方に位置するように図示しない支持装置にて支持されている。X−Y−Zステージ40Aは、X軸モータ45a、Y軸モータ45b、Z軸モータ(図示しない)を備えている。そして、前記各モータをそれぞれ駆動制御することにより、CCDカメラ50Aを、図1において図面に直交する方向(X方向)、図面の左右方向(Y方向)、及び図1において上下方向(Z方向)の3次元的に移動可能である。CCDカメラ50Aは、X−Y−Zステージ40Aにて互いに直交するX,Y,Z方向へ移動することにより、検査トレイ20上に配置される試料(すなわち、眼内レンズ)を平面視した状態で撮像可能である。このCCDカメラ50Aが撮像する方向(すなわち、Z方向)は、第1方向に相当する。
【0064】
CCDカメラ50Bを支持するX−Y−Zステージ40Bは、検査トレイ20の一側方に位置するように図示しない支持装置にて支持されている。X−Y−Zステージ40Bは、X軸モータ47a、Y軸モータ47b、Z軸モータ(図示しない)を備えている。そして、前記各モータをそれぞれ駆動制御することにより、CCDカメラ50Bを、図1において図面に直交する方向(X方向)、図面の左右方向(Y方向)、及び図1において上下方向(Z方向)の3次元的に移動可能である。CCDカメラ50Bは、X−Y−Zステージ40Bにて互いに直交するX,Y,Z方向へ移動することにより、検査トレイ20上に配置される試料(すなわち、眼内レンズ)を側面視した状態、すなわち、眼内レンズ500の光学部510及び両支持部520の全体像が撮像可能である。CCDカメラ50Bが撮像する方向(すなわち、Y方向)は、第2方向に相当する。X−Y−Zステージ40A及びX−Y−Zステージ40Bは、ステージ手段に相当する。
【0065】
各CCDカメラ50A,50Bは、コントローラ60からの撮像開始の信号を受けて、検査トレイ20上の眼内レンズ500を撮像し、その画像データをコントローラ60に出力する。
【0066】
CCDカメラ50Aは撮像手段及び第1の撮像手段に相当する。又、CCDカメラ50Bは撮像手段及び第2の撮像手段に相当する。
(コントローラ60)
コントローラ60は、パーソナルコンピュータ等のCPUからなり、入力装置(図示しない)を備えるとともに、図示しない記憶装置に格納した画像処理プログラムに基づいて、画像処理部60aを制御する。画像処理部60aは、前記コントローラ60の制御を受け、前記画像データを入力すると、該画像データに基づいて画像処理を行う。又、コントローラ60は、照明装置30A,30Bのオンオフ制御が可能であり、CCDカメラ50A,50Bに撮像開始の信号を出力する前に、照明装置30Aに対して照明のオン信号を出力し、CCDカメラ50A,50Bの撮像終了後に、照明装置30A,30Bに対してオフ信号を出力する。
【0067】
(外部装置80)
外部装置80は、パーソナルコンピュータ等のCPUからなる。外部装置80は、X−Y−Zステージ40A,40BのX,Y,Z方向への駆動制御を行うために、X軸モータドライバ81A,81B、Y軸モータドライバ82A,82B、Z軸モータドライバ83A,83Bを備えている。外部装置80は、各ドライバを介して、前記X軸モータ45a、47a,Y軸モータ45b,47b、Z軸モータ(図示しない)をそれぞれ制御する。
【0068】
この制御により、CCDカメラ50Aを検査トレイ20上に配置された眼内レンズ500の光学部510の光軸上に位置させることが可能である。又、前記制御により、CCDカメラ50Bを検査トレイ20上に配置された眼内レンズ500の光学部510、及び両支持部520の側面の全体像を撮像する位置に位置させることが可能である。すなわち、このX−Y−Zステージ40A,40BのX,Y,Z方向への駆動制御により、CCDカメラ50A,50Bによって、検査トレイ20上に配置された眼内レンズ500を撮像することが可能である。又、外部装置80は、コントローラ60との間で、各種のデータ通信が可能である。
【0069】
さて、上記のように構成された検査装置10の作用について説明する。
眼内レンズ500の検査を行う場合、検査員は、図14(a),(b)に示すように検査トレイ20上に、眼内レンズ500を配置する。このとき、光学部510は、下方に向かう光学面の周囲のエッジが図14(b)に示すようにテーパー面222上に接することにより、支持される。又、一対の支持部520は、それぞれピン250,251間、及びピン260,261間に通される。このように支持部520がピン250,251間、及びピン260,261間に通されることにより、該ピンに係止保持されるため、眼内レンズ500に力が加わっても眼内レンズ500が、例えば、テーパー孔220において回転することがない。
【0070】
図3は、CCDカメラ50A,50Bを制御して、眼内レンズ500が撮像され、得られた画像データ(単に画像ということもある。)を画像処理する際のコントローラ60の制御処理のフローチャートである。検査員による入力装置(図示しない)の撮像開始の入力操作があると、コントローラ60により、図示しない制御プログラムに従って図3に示すフローチャートの処理が開始される。
【0071】
この制御処理が開始されると、まず、コントローラ60は、照明装置30A,30Bを同時に点灯させて(S10A,S10B参照)、照明装置30A,30Bにて検査トレイ20を照明した状態で、CCDカメラ50A,50Bにて、眼内レンズ500を同時に撮像する(S20A,S20B参照)。なお、図3〜図5、図8〜10中、Sは、ステップを表す。そして、続く,S30A,S30Bにおいて、CCDカメラ50A,50Bにて撮像して得られた画像の転送要求をコントローラ60が行い、画像を入力する。そして、S40では、コントローラ60は、入力された画像の画像処理と、画像処理に基づいて眼内レンズ500の形状計測を行った後、このフローチャートを終了する。
【0072】
(上方画像の処理及び計測))
次に、S40の処理の詳細な説明を図4〜図12を参照して説明する。S40では、大きく分けて、CCDカメラ50Aで撮像して得られた眼内レンズ500の上方画像の処理及び計測と、CCDカメラ50Bで撮像して得られた眼内レンズ500の側方画像の処理及び計測とが、それぞれ行われる。
【0073】
図4及び、図5は、CCDカメラ50Aから入力した上方画像に基づき画像処理部60aが行う画像処理のフローチャートである。
図4のS100では、画像処理部60aは、予め図示しない記憶装置に格納されて眼内レンズ500を載置していない検査トレイ20の上方画像である基準画像を基に正規化相関を用いたパターンマッチングによる基準点算出を行う、すなわち、入力した上方画像の基準点を決定する(図6(a)参照)。前記基準点は、任意の箇所であり、予め基準画像を基にして設定されている。又、前記基準画像は、眼内レンズ500が撮像されていない、検査トレイ20のみを平面視した状態の画像であり、棒材270,271の画像を含むものである。そして、本実施形態では、基準画像中の棒材270を含む所定領域と、眼内レンズ500が撮像された画像中の、棒材270の領域をマッチング箇所としている。
【0074】
S101では、画像処理部60aは、前記上方画像の基準点を基に、計測を行う全領域を示す全計測領域を補正する。なお、図6,図7、図11,及び図12は、画像処理における画像を示すものであるが、説明の便宜上、該画像について眼内レンズ及び検査トレイの構成に相当する部分には該相当する部分に付した符号と同符号を付す。
【0075】
(光学部径A及び光学部中心Dの計測処理)
S102では、画像処理部60aは、開口部242上の光学部エッジの中から異なる位置に位置する点P1〜P3を検出する(図6(b)参照)。S103では、画像処理部60aは、点P1〜P3を通る円を算出し、半径とその円の中心を算出する。S104では、画像処理部60aは、S103で算出した半径の2倍を光学部径Aとし、中心を光学部中心Dとする。このように、S102〜S104は、光学部径A及び光学部中心Dの計測処理である。
【0076】
(全長Bの計測処理)
S105では、画像処理部60aは図示しない記憶装置の最長距離B1,B2の記憶領域を0にリセットする。
【0077】
S106では、画像処理部60aは、全長検出領域K1,K2が、支持部520の自由端側の終点(すなわち、自由端の外周エッジ)に達しているか否かを判定する。全長検出領域K1,K2は、両支持部520の円弧部520bに対応してそれぞれ設けられた走査窓であり、図6(c)に示すように、支持部520の円弧部520bが検出可能な領域に設定される。そして、図6(c)に示すように全長検出領域K1,K2は、走査方向に光学部中心Dを回転中心として、回転されることにより、支持部520の円弧部520bが検出可能である。この全長検出領域K1,K2は、光学部中心Dを挟んで互いに180°反対位置に位置しており、所定の初期位置、例えば、図6(c)に示す位置から、走査を開始する。
【0078】
S106では、この全長検出領域K1,K2の走査によって、支持部520の自由端側の終点(すなわち、自由端の外周エッジ)が共に検出されない場合は、画像処理部60aは「YES」と判定して、S118に移行し、そうでない場合には、「NO」と判定する。S106において、「NO」と画像処理部60aが判定した場合、S107では、画像処理部60aは、全長検出領域K1,K2の回転角α(なお、回転角αについては後述する)に進めるべく、全長検出領域K1,K2を光学部中心Dを中心に回転移動する。
【0079】
S108では、画像処理部60aは、全長検出領域K1,K2により、支持部520の検出を行う。すなわち、支持部520の外周エッジ部位上の点P4,P5の検出を行う。S109では、画像処理部60aは、一方の支持部520に、点P4の検出の有無の確認を行い(図7(a)参照)、点P4の検出ができなかった場合には、S113にジャンプする。又、S109で、画像処理部60aは、点P4の検出が有りと判定した場合には、S110に移行する。
【0080】
S110では、画像処理部60aは、光学部中心Dと、点P4の距離β1を算出する。S111では、画像処理部60aは、距離β1と、図示しない記憶装置の記憶領域に格納している最長距離B1との比較を行い、距離β1が、最長距離B1よりも長ければ、S112で、最長距離B1を距離β1の値にして更新し、S113に移行する。S111において、画像処理部60aは、距離β1が、最長距離B1以下であると判定するとS113に移行する。
【0081】
S113では、画像処理部60aは、他方の支持部520に、点P5の検出の有無の確認を行い(図7(a)参照)、点P5の検出ができなかった場合には、S117にジャンプする。又、S113で、画像処理部60aは、点P5の検出が有りと判定した場合には、S114に移行する。
【0082】
S114では、画像処理部60aは、光学部中心Dと、点P5の距離β2を算出する。S115では、画像処理部60aは、距離β2と、図示しない記憶装置の記憶領域に格納している最長距離B2との比較を行い、距離β2が、該最長距離B2よりも長ければ、S116で、最長距離B2を距離β2の値にして更新し、S117に移行する。S115において、画像処理部60aは、距離β2が、最長距離B2以下であると判定するとS117に移行する。
【0083】
S117では、画像処理部60aは、前回の回転角αに回転角補正量Δαを増分して、新たな回転角αとして更新し、S106に戻る。この新たな回転角αが前記したS107にて使用される。
【0084】
次に、S106にて「YES」と画像処理部60aが判定した場合、S118で、画像処理部60aは、更新された最長距離B1と最長距離B2とを加算して全長Bの算出を行う。このように、S105〜S118は、全長Bの計測処理のステップである(図5参照)。
【0085】
(有効光学部径Cの計測処理)
S119では、画像処理部60aは図示しない記憶装置の最短距離C1,C2の記憶領域を100にセットする。このセットされる数値は、画素数であり、この数値は、有効光学部径Cの想定される長さに応じて予め設定された数である。
【0086】
S120では、画像処理部60aは、有効光学部検出領域U1,U2が、支持部520の取付端側の終点(すなわち、取付端の内周側エッジ)に達しているか否かを判定する。有効光学部検出領域U1,U2は、両支持部520の直線部520aに直交するように配置された走査窓であり、図7(b)に示すように、支持部520の直線部520aにおいて、光学部510内の取付端が検出可能な領域に設定される。そして、有効光学部検出領域U1,U2は、図7(b)に示す走査方向に平行移動されることにより、支持部520の直線部520aの取付端が検出可能である。この有効光学部検出領域U1,U2は、所定の初期位置から、例えば、図7(b)に示すように、各直線部520aから離間した位置から走査を開始する。
【0087】
S120では、この有効光学部検出領域U1,U2の走査によって、支持部520の取付端側の終点(すなわち、取付端の内周側エッジ)が共に検出されていた場合は、画像処理部60aは「YES」と判定してS132に移行し、そうでない場合には、「NO」と判定する。
【0088】
S120において、「NO」と画像処理部60aが判定した場合、S121では、画像処理部60aは、有効光学部検出領域U1,U2をそれぞれ目標位置(目標位置については後述するS131において述べる)に進める。S122では、画像処理部60aは、有効光学部検出領域U1,U2により、支持部520の取付端の検出を行う。すなわち、支持部520の取付端のエッジ部位上の点P6,P7の検出を行う。
【0089】
S123では、画像処理部60aは、一方の支持部520に、点P6の検出の有無の確認を行い(図7(c)参照)、点P6の検出ができなかった場合には、「NO」と判定して、S127にジャンプする。又、S123で、画像処理部60aは、点P6の検出が有りと判定した場合には、S124に移行する。
【0090】
S124では、画像処理部60aは、光学部中心Dと、点P6の距離β3を算出する。S125では、画像処理部60aは、距離β3と、図示しない記憶装置の記憶領域に格納している最短距離C1との比較を行い、距離β3が、最短距離C1未満であれば、S126で、最短距離C1を距離β3の値にして更新し、S127に移行する。S125において、画像処理部60aは、距離β3が、最短距離C1以上であると判定するとS127に移行する。
【0091】
S127では、画像処理部60aは、他方の支持部520に、点P7の検出の有無の確認を行い(図7(c)参照)、点P7の検出ができなかった場合には、S131にジャンプする。又、S127で、画像処理部60aは、点P7の検出が有りと判定した場合には、S128に移行する。
【0092】
S128では、画像処理部60aは、光学部中心Dと、点P7の距離β4を算出する。S129では、画像処理部60aは、距離β4と図示しない記憶装置の記憶領域に格納している最短距離C2との比較を行い、距離β4が、該最短距離C2未満であれば、S130で、最短距離C2を距離β4の値にして更新し、S131に移行する。S129において、画像処理部60aは、距離β4が、最短距離C2以上であると判定するとS131に移行する。S131では、画像処理部60aは、前回の有効光学部検出領域U1,U2の位置に位置補正量分を加味して、目標位置を更新し、S120に戻る。この新たな目標位置が前記S121にて使用される。
【0093】
S120において、「YES」と判定して、S132に移行した場合、画像処理部60aは、図示しない記憶装置に格納した最短距離C1と最短距離C2との大小を比較する。S132において、最短距離C1>最短距離C2の場合は、S133において、画像処理部60aは、最短距離C2の2倍を算出して、この算出値を有効光学部径Cとし、このフローチャートを終了する。又、S132において、最短距離C1≦最短距離C2の場合は、S134において、画像処理部60aは、最短距離C1の2倍を算出して、この算出値を有効光学部径Cとし、このフローチャートを終了する。
【0094】
(側方画像の処理及び計測)
続いて、CCDカメラ50Bから入力した側方画像の画像処理及び計測について説明する。図8〜図10は、CCDカメラ50Bから入力した側方画像に基づき画像処理部60aが行う画像処理のフローチャートである。
【0095】
図8のS200では、画像処理部60aは、予め図示しない記憶装置に格納されて、眼内レンズ500を載置していない検査トレイ20の側方画像である基準画像を基に正規化相関を用いたマッチングによる基準点算出を行う、すなわち、入力した側方画像の基準点を決定する(図11(a)参照)。
【0096】
前記基準点は、任意の箇所であり、予め基準画像を基にして設定されている。又、前記基準画像は、眼内レンズ500が撮像されていない、検査トレイ20のみを側面視した状態の画像であり、ピン250,251の画像を含むものである。そして、本実施形態では、基準画像中のピン250,251を含む所定領域と、眼内レンズ500が撮像された画像中の、ピン250,251の領域をパターンマッチング箇所としている。
【0097】
S201では、画像処理部60aは、前記側方画像の基準点を基に計測を行う全領域を示す全計測領域を補正する。
(光学部中心厚さFの計測処理)
続いて、図11(b)に示すようにS202では、画像処理部60aは、光学部510の上側の光学面のエッジ上において、異なる3点を検出する。この3点をそれぞれ点P11,P12,P13とする。又、S203では、画像処理部60aは、光学部510の下側の光学面のエッジ上において、異なる3点を検出する。図11(b)に示すように、この3点をそれぞれ点P14,P15,P16とする。なお、本実施形態では、眼内レンズ500の光学部510は、両光学面が凸であるバイコンベックスである。
【0098】
画像処理部60aは、S204では、点P11〜P13を通る円R1を算出し、S205では、点P14〜P16を通る円R2を算出する。次に、S206では、画像処理部60aは、円R1と円R2の交点Q1,Q2を算出する。
【0099】
次に図11(c)に示すように、画像処理部60aは、S207では、交点Q1,Q2を通る直線M1を算出し、S208では、交点Q1,Q2間において、直線M1の垂直二等分線N1を算出する。次に、図11(d)に示すように、画像処理部60aは、S209では、円R1と垂直二等分線N1の交点Q3を算出する。
【0100】
次に、画像処理部60aは、S210では、円R2と垂直二等分線N1の交点Q4を算出する(図11(d)参照)。そして、画像処理部60aは、S211において、交点Q3,Q4の距離を算出し、この算出結果を光学部中心厚さFとする。このように、S202〜S211は、光学部中心厚さFの計測処理のステップである。
【0101】
(支持部角度E1及びE2の計測処理)
次に、画像処理部60aは、S212では、円R2上の交点Q4を通る接線Jを算出し(図12(a)参照)、S213では、各支持部520における上面側のエッジにおいて、それぞれ2つの点(すなわち、合計4点)の検出を行う。これらの点をそれぞれ点P17〜P20で表す(図12(b)参照)。次に、画像処理部60aは、S214では、一方の支持部520側の点P17,P18を通る直線M2を算出し、S215では、他方の支持部520側の点P19,P20を通る直線M3を算出する。
【0102】
続いて、画像処理部60aは、S216では、接線Jと、直線M2の交わる角(以下、交角という)γ1を算出し、S217では、接線Jと、直線M3の交角γ2を算出する。そして、画像処理部60aは、S218において、交角γ1を一方の支持部角度E1(図12(b)では、左側の支持部520の支持部角度)とし、交角γ2を他方の支持部角度E2(図12(b)では、右側の支持部520の支持部角度)とする。このように、S213〜S218は、支持部角度の計測処理のステップである。
【0103】
(サジッタH、ボールトハイトGの計測処理)
続いて、画像処理部60aは、S219では、図示しない記憶装置の最長距離W1,W2の記憶領域を0にリセットする。次に、S220では、画像処理部60aは、支持部最高点検出領域V1,V2が、支持部520の終点に達しているか否かを判定する。支持部最高点検出領域V1,V2は、図12(a)に示す接線Jに直交するように配置された走査窓であり、図12(c)に示すように、支持部520が検出可能な領域に設定される。そして、支持部最高点検出領域V1,V2は、図12(c)に示す走査方向(接線Jが延びる方向)に平行移動されることにより、支持部520の最高点が検出可能である。この支持部最高点検出領域V1,V2は、所定の初期位置、例えば、図12(c)に示す位置から走査を開始する。
【0104】
S220では、この支持部最高点検出領域V1,V2の走査によって、支持部520の終点が共に検出されていた場合は、画像処理部60aは「YES」と判定してS232に移行し、そうでない場合には、「NO」と判定する。
【0105】
S220において、「NO」と画像処理部60aが判定した場合、S221では、画像処理部60aは、支持部最高点検出領域V1,V2をそれぞれ目標位置(目標位置については後述するS231において述べる)に進める。S222では、画像処理部60aは、支持部最高点検出領域V1,V2により、支持部520の上側エッジ部の点P21,P22の検出を行う。
【0106】
S223では、画像処理部60aは、一方の支持部520に、点P21の検出の有無の確認を行い(図12(d)参照)、点P21の検出ができなかった場合には、「NO」と判定して、S227にジャンプする。又、S223で、画像処理部60aは、点P21の検出が有りと判定した場合には、S224に移行する。S224では、画像処理部60aは、点P21から接線J迄の垂線の長さ(以下、距離T1という)を算出する。
【0107】
S225では、画像処理部60aは、距離T1と図示しない記憶装置の記憶領域に格納している最長距離W1との比較を行い、距離T1が、最長距離W1以上であれば、S226で、最長距離W1を距離T1の値にして更新し、S227に移行する。S225において、画像処理部60aは、距離T1が最長距離W1未満であると判定するとS227に移行する。
【0108】
S227では、画像処理部60aは、他方の支持部520に、点P22の検出の有無の確認を行い(図12(d)参照)、点P22の検出ができなかった場合には、S231にジャンプする。又、S227で、画像処理部60aは、点P22の検出が有りと判定した場合には、S228に移行する。
【0109】
S228では、画像処理部60aは、点P22から接線J迄の垂線の長さ(以下、距離T2という)を算出する。S229では、画像処理部60aは、距離T2と図示しない記憶装置の記憶領域に格納している最長距離W2との比較を行い、距離T2が、最長距離W2以上であれば、S230で、最長距離W2を距離T2の値にして更新し、S231に移行する。S229において、画像処理部60aは、距離T2が、最長距離W2未満であると判定するとS231に移行する。
【0110】
S231では、画像処理部60aは、前回の支持部最高点検出領域V1,V2の位置に位置補正量分を加味して、目標位置を更新し、S220に戻る。この新たな目標位置が前記S221にて使用される。
【0111】
S220において、画像処理部60aが「YES」と判定して、S232に移行した場合、画像処理部60aは、S232では、図示しない記憶装置に格納した最長距離W1と、最長距離W2との大小を比較する。S232において、最長距離W1≧最長距離W2の場合は、S233において、画像処理部60aは、ボールトハイトGの算出を行う。具体的には、画像処理部60aは、最長距離W1から光学部中心厚さFを減算することにより、ボールトハイトGを算出し、S234に移行する。
【0112】
S234では、画像処理部60aは、最長距離W1≧光学部中心厚さFか否かを判定し、最長距離W1≧光学部中心厚さFである場合には、S235において、サジッタHを最長距離W1の値にして、このフローチャートを終了する。又、S234において、最長距離W1<光学部中心厚さFの場合は、S239において、画像処理部60aは、サジッタHの値を光学部中心厚さFの値にしてこのフローチャートを終了する。
【0113】
又、S232において、画像処理部60aは、最長距離W1<最長距離W2の場合は、S236において、ボールトハイトGの算出を行う。具体的には、画像処理部60aは、最長距離W2から光学部中心厚さFを減算することにより、ボールトハイトGを算出し、S237に移行する。
【0114】
S237では、画像処理部60aは、最長距離W2≧光学部中心厚さFか否かを判定し、最長距離W2≧光学部中心厚さFである場合には、S238において、サジッタHを最長距離W2の値にして、このフローチャートを終了する。又、S237において、最長距離W2<光学部中心厚さFの場合は、S239において、画像処理部60aは、サジッタHの値を光学部中心厚さFの値にしてこのフローチャートを終了する。
【0115】
上記のように、画像処理部60aの画像処理により形状計測が行われ、得られた光学部径A、全長B、有効光学部径C、支持部角度E1,E2、サジッタH、ボールトハイトG、及び光学部中心厚さFの各種データをコントローラ60は、外部装置80に出力する。
【0116】
外部装置80は、コントローラ60から、前記各種データの入力を受けて、それらのデータの適否判定、すなわち、検査を行う。この適否判定のために前記各種データの計測項目に対応して予め設定された判定値は、外部装置80が備える図示しない記憶装置に格納されている。そして、外部装置80が、前記入力された各種データと前記判定値と比較することにより検査が行われる。
【0117】
外部装置80は、これらの判定値に基づいて、前記各種データの適否判定を行い、この適否判定の結果、すなわち検査結果は、外部装置80からコントローラ60に出力される。そして、コントローラ60により、モニタ70にその検査結果が表示され、検査員に知らせる。このように、外部装置80は、検査手段に相当する。
【0118】
さて、上記のように構成された実施形態においては下記の特徴がある。
(1) 上記の眼内レンズ500の形状計測方法及び検査装置10では、眼内レンズ500を異なる2方向からそれぞれCCDカメラ50A,50Bにて撮像し、眼内レンズ500をZ方向及びY方向から撮像して得られた画像を連続で画像処理するようにした。そして、Z方向から撮像して得られた上方画像の画像処理により、眼内レンズ500の光学部径A、全長B、有効光学部径C、及び光学部中心Dの形状計測を行うようした。又、Y方向から撮像して得られた側方画像の画像処理により、眼内レンズ500の支持部角度E1,E2、サジッタH、ボールトハイトG、及び光学部中心厚さFの形状計測を行うようにした。
【0119】
この結果、眼内レンズ500の形状計測(寸法計測)を省スペースでかつ高精度で行うことができる。又、眼内レンズ500を2方向から撮像し、得られた画像を連続処理するため、眼内レンズ500の計測及び検査時間を大幅に短縮することができる。
【0120】
(2) 本実施形態では、CCDカメラ50B(第2の撮像手段)は、眼内レンズ500を側面視した状態、すなわち、眼内レンズ500の光学部510及び両支持部520の全体像が撮像可能な位置に配置しているため、CCDカメラ50Bにより、眼内レンズ500に設けられた全ての支持部520が撮像できる。
【0121】
(3) 本実施形態では、眼内レンズ500を挟んでCCDカメラ50A,50Bとは反対側に照明装置30A,30Bをそれぞれ配置し、CCDカメラ50A,50Bにて眼内レンズ500を撮像する際に、照明装置30A,30Bにより、照射するようにした。
【0122】
この結果、照明装置30A,30Bから発せられた光は、眼内レンズ500を透過し、若しくは、遮断され、そのときに生じた陰影を撮像手段が撮像することができる。この結果、支持部520を有する眼内レンズ500のような特殊形状を陰影として撮像することができる。
【0123】
(4) 本実施形態では、照明装置30Bは、眼内レンズ500の支持部520が青色を有するため、補色関係にあるとともに、安価に手に入れやすい赤色LED照明を採用した。この結果、透明体である支持部520の陰影のコントラストを向上させることができ、さらに形状計測(寸法計測)の精度を向上させることができる。
【0124】
(5) 本実施形態では、照明装置30Aは、可視光領域のうちの短波長を主波長として持つ青色を発するようにしている。この結果、短波長の光は、光学部510を通過する際、屈折の影響を受けやすく、散乱しやすいため、光学部510を通過し、撮像手段に到達する光が少なくなり、光学部510(レンズ)のような透明体の陰影のコントラストを向上させる、さらに形状計測(寸法計測)の精度を向上させることができる。
【0125】
(6) 本実施形態では、CCDカメラ50Aに対して配置される照明装置30Aはバックライト方式の青色発光ダイオードを使用し、CCDカメラ50Bに対して配置される照明装置30Bは、バックライト方式の赤色発光ダイオードを使用した。この結果、バックライト方式の発光ダイオードを照明装置として使用しているため、眼内レンズ500から離間して該眼内レンズ500に光を照射した場合、該光学部510に到達する光は平行に近い成分に限定され、平行ではない光、すなわち散乱した光は該光学部510に到達しなくなる。散乱した光が該光学部510に到達する場合、該光学部によって屈折し、その一部が撮像手段にしばしば到達するため、該光学部510のコントラストを低下させる一因となる。そのため、照明装置を眼内レンズ500から離間することにより、該光学部510のコントラストを向上でき、さらに光学部のような透明体の計測精度をさらに向上させることができる。
【0126】
(7) 本実施形態では、CCDカメラ50A,50Bを3次元的に移動可能に支持するX−Y−Zステージ40A,40Bを備えている。この結果、X−Y−Zステージ40A,40Bにより、CCDカメラ50A,50Bを3次元的に移動することにより、CCDカメラ50A,50Bの位置調節ができるため、眼内レンズ500を撮像する際、好適な画像を得ることができる。
【0127】
(8) 本実施形態の検査トレイ20は、試料支持部210の表面にテーパー面222を形成することにより、眼内レンズ500の光学部510を該テーパー面222に載置した際、光学部510を自身のエッジにて支持することができる。この結果、眼内レンズ500の形状検査を行う際に、エッジ以外の光学部表面にキズがついたり汚れの付着の虞がなくなる。さらに、検査トレイ20は、眼内レンズ500の光学部510のエッジを支えるため、柔軟性に富む眼内レンズ500であっても形状保持性が向上する。又、眼内レンズ500を安定して保持することができる。
【0128】
(9) 本実施形態の検査トレイ20は、貫通孔230を有するため、例えば光学部510を貫通孔230と同軸となるように配置し、光学部510と貫通孔230を介して検査用の標識を観察することにより、光学部の解像力、レンズ度数の計測もできる。
【0129】
このようにこの検査トレイ20では、1つの検査トレイ20に眼内レンズ500を載置することにより、複数の検査装置での測定が可能となる。すなわち、この検査トレイ20では、貫通孔230の軸心方向からの観察することにより行われる測定による検査と、溝240が延びる方向からの観察することにより行われる測定による検査ができる。この結果、対応する検査装置の数が多くなるにつれ、眼内レンズ500を載せる作業時間が削減できるとともに、眼内レンズ500に作業者が触れる回数も少なくなることから、ゴミの付着やキズの発生などを大幅に軽減できる。
【0130】
又、この検査トレイ20では、溝240が延びる方向から、眼内レンズ500の光学部510を観察できるため、眼内レンズ500の検査トレイ20に対する傾きを容易に知ることができる。
【0131】
(10) ここで、一般には、検査トレイの材質は、アクリル樹脂や、ポリアセタール樹脂が透明性や加工性から特に好ましいとされている。しかし、これらの樹脂は、大量加工には不向きであるため、検査トレイを、眼内レンズ毎に用意して使用することはなく、1つの検査トレイを繰り返して使用することになる。従って、従来の検査では、1つの検査トレイの使用頻度が蓄積されるにつれ、該検査トレイが汚染され、眼内レンズの光学部に対するゴミや、汚れなどの付着の悪影響が懸念される。さらに、検査トレイが半透明である場合、光の透過ムラなどの発生が生じることにより、背景のコントラストは著しく低下する。すると、光学部(レンズ)エッジが不明確になり、形状計測の精度が著しく低下する虞がある。
【0132】
それに対して、本実施形態の検査トレイ20は、透明のポリプロピレンにて形成した。ポリプロピレンは、成形が容易であり、コストも低廉なため、使い捨てもできる。仮に、検査トレイを使い回すと、ゴミが付着する機会が多くなり、次の検査を行うために載せた眼内レンズに対してゴミの付着やキズの発生が生じやすくなるが、使い捨てする場合は、そのような虞がなくなる。又、検査トレイは、透明であるため、光の透過ムラなどの発生が生じることがなく、背景のコントラストは著しく低下することもないため、光学部(レンズ)エッジが不明確になったり、形状計測の精度が著しく低下する虞もなくなる。
【0133】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、下記の通りに構成してもよい。
(1) 前記実施形態では、眼内レンズの光学部径A、全長B、有効光学部径C、光学部中心D、眼内レンズの支持部角度E1,E2、サジッタH、ボールトハイトG、及び光学部中心厚さFを計測したが、これらの全てを計測するのではなく、下記のようにしてもよい。
【0134】
上方画像の画像処理により、眼内レンズの光学部径A、全長B、有効光学部径C、光学部中心Dの中から少なくとも1つの形状計測を行う。併せて、側方画像の画像処理により支持部角度E1,E2、サジッタH、ボールトハイトG、及び光学部中心厚さFの中から少なくともいずれか1つの形状計測を行う。
【0135】
(2) 前記実施形態では、CCDカメラ50AとCCDカメラ50Bとにより、同時に眼内レンズ500を同時に撮像するようにしたが、同時に撮像する必要はなく、撮像の順番を決めて連続して撮像してもよい。
【0136】
(3) 前記実施形態では、上方画像の画像処理の後、側方画像の画像処理を連続して行うようにしたが、上方画像の画像処理の後、側方画像の画像処理を同時に、行うようにしてもよい。
【0137】
(4) 前記実施形態では、組を構成するピン250等は、一対(すなわち、2個)を一組としたが、3個以上のピンを設けて、これらを1組としてもよい。要は、眼内レンズ500の支持部520を各ピン間に通して、係止保持することにより、眼内レンズが回転しないようにできる個数であればよい。
【0138】
(5) 前記実施形態では、ピン251,261は、テーパー孔220の軸心Ot(すなわち、貫通孔230の軸心)を中心とした円上に位置するように配置し、テーパー孔220の軸心Ot(すなわち、貫通孔230の軸心)を中心とした円上に位置するように配置したが、これに限定されるものでいない。例えば、ピン251,261をテーパー孔220の軸心Ot(すなわち、貫通孔230の軸心)を中心とした円上に位置するように配置し、かつ、テーパー面222に接するように配置してもよい。このように構成しても、テーパー面222により、眼内レンズ500の光学部510のエッジを支えることができる。
【0139】
(6) 実施形態では、検査トレイ20は、透明としたが、透明に限定するものではなく、半透明の材料にて形成してもよい。検査トレイが半透明であっても、眼内レンズの像を得ることができ、該眼内レンズの形状計測を行うことができる。半透明で、視認性(又はコントラスト)が悪くなる場合は、試料支持部に空孔を設けても良い。
【0140】
(7) 前記実施形態では、棒材270,271を枠体110に対して図示しないブラケットを介して設けたが、検査トレイ20に設けてもよい。
(8) 前記実施形態では、一対の光遮断性部材として、棒材270,271を設けたが、形状は棒形状に限定するものではなく、他の形状でもよい。
【0141】
(9) 前記実施形態では、撮像手段としてのCCDカメラ50A,50BをX−Y−Zステージ40A,40Bにて3次元移動可能にしたが、照明装置30A,30BをX−Y−Zステージ40A,40Bにて3次元移動可能にしてもよい。このようにした場合、照明装置30A,30Bの位置調節ができるため、眼内レンズを撮像する際、CCDカメラ50A,50Bが得ることができる露光量を好適に調節ができることにより、好適な画像を得ることができる。
【0142】
(10) 前記実施形態では、図3のフローチャートでは、S10A〜S30AとS10B〜S30Bとを並行処理するようにしたが、S10A〜S30Aの次に、S10B〜S30Bを実行したり、S10B〜S30Bの後にS10A〜S30Aを実行してもよい。
【0143】
(11) 前記実施形態では、眼内レンズ500の光学部510は、バイコンベックスとしたが、光学部510のレンズ形状が、メニスカスの場合は、下記のようにしてもよい。すなわち、光学部510のレンズ形状が、メニスカスの場合、光学部510の下側の光学面が実際には見えないため、3点から円を算出することが不可能である。そこで、この場合は、S203では、撮像されて得られた画像上での下面のみレンズエッジ上の2点を検出し、直線を算出する。この直線を前記円R2の代わりに置き換えて、バイコンベックスと同様の測定を行う。なお、この方法で測定される光学部中心厚さFは、見かけ上の光学部中心厚さ(上側の光学面頂点と下側のレンズエッジの距離となる。)となる。
【0144】
(12) CCDカメラ50A,50Bでは、イメージセンサである固体撮像デバイスとして、CCDを使用しているが、撮像手段としてCMOSを使用してもよく、或いは撮像管等を使用してもよい。
【0145】
(13) 前記眼内レンズの形状計測は、3P(スリーピース)−IOL(眼内レンズ)の形状測定を行うようにしたが、3P−IOLの形状計測に限定するものではなく、1P(ワンピース)−IOL、調節性IOL等、支持部を有するIOLであれば、それらの形状測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の眼内レンズの検査装置の全体概略図。
【図2】(a)、(b)は、眼内レンズの検査項目の説明図。
【図3】のコントローラ60の制御処理のフローチャート。
【図4】画像処理を示すフローチャート。
【図5】画像処理を示すフローチャート。
【図6】(a)〜(c)は画像処理の説明図。
【図7】(a)〜(c)は画像処理の説明図。
【図8】画像処理を示すフローチャート。
【図9】画像処理を示すフローチャート。
【図10】画像処理を示すフローチャート。
【図11】(a)〜(d)は画像処理の説明図。
【図12】(a)〜(d)は画像処理の説明図。
【図13】(a)は検査トレイの平面図、(b)は同じく縦断面図。
【図14】(a)は検査トレイの作用を示す平面図、(b)は、同じく検査トレイの作用を示す要部断面図。
【図15】色相環の説明図。
【図16】照明装置の説明図。
【符号の説明】
【0147】
10…検査装置
20…検査用トレイ
30A…照明装置(照明手段)
30B…照明装置(照明手段)
40A,40B…X−Y−Zステージ(ステージ手段)
50A…CCDカメラ(撮像手段、第1の撮像手段)
50B…CCDカメラ(撮像手段、第2の撮像手段)
60…コントローラ
60a…画像処理部(測定手段)
70…モニタ
80…外部装置(検査手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを異なる2方向からそれぞれ撮像手段にて撮像し、
前記眼内レンズを互いに異なる第1方向及び第2方向から撮像して得られた画像を同時に或いは連続で画像処理し、
前記画像処理には、
前記第1方向から撮像して得られた画像の画像処理を含み、この画像処理により、前記眼内レンズの光学部径、全長、有効光学部径、及び光学部中心のうちの少なくとも1つの形状計測を行うことと、
前記第2方向から撮像して得られた画像の画像処理を含み、この画像処理により、前記眼内レンズの支持部角度、サジッタ、ボールトハイト、及び光学部中心厚さのうち、少なくとも1つの形状計測を行うことを含むことを
特徴とする眼内レンズの形状計測方法。
【請求項2】
前記撮像手段は、前記眼内レンズの光軸上に位置して撮像する第1の撮像手段と、前記眼内レンズの光軸に直交する軸上に位置し、前記眼内レンズの側面を撮像する第2の撮像手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の眼内レンズの形状計測方法。
【請求項3】
前記第2の撮像手段は、前記眼内レンズが有する全ての支持部が撮像可能な位置に配置することを特徴とする請求項2に記載の眼内レンズの形状計測方法。
【請求項4】
前記眼内レンズを挟んで前記各撮像手段とは反対側に照明手段をそれぞれ配置し、各撮像手段にて前記眼内レンズを撮像する際に、該照明手段により、照射することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の眼内レンズの形状計測方法。
【請求項5】
前記照明手段は、可視光領域のうちの短波長を主波長として持つ単色の光源、又は測定対象である眼内レンズの少なくとも一部の色の補色関係の色又は補色関係の色と類似色を主波長として持つ単色の光源を備えることを特徴とする請求項4に記載の眼内レンズの形状計測方法。
【請求項6】
眼内レンズを配置するための検査トレイと、
前記検査トレイ上に配置した眼内レンズを異なる2方向から撮像する一対の撮像手段と、
前記一対の撮像手段が撮像して得られた画像を画像処理して、該画像に基づいて、眼内レンズの光学部径、全長、有効光学部径、及び光学部中心のうちの少なくとも1つの形状測定と、前記眼内レンズの支持部角度、サジッタ、ボールトハイト、及び光学部中心厚さのうち、少なくとも1つの形状測定とを行う測定手段と、
前記測定手段の測定結果の適否判定を行う検査手段を備えたことを特徴とする眼内レンズ検査装置。
【請求項7】
前記一対の撮像手段は、前記眼内レンズの光軸上に位置して撮像する第1の撮像手段と、前記眼内レンズの光軸に直交する軸上に位置し、前記眼内レンズの側面を撮像する第2の撮像手段を含むことを特徴とする請求項6に記載の眼内レンズ検査装置。
【請求項8】
前記検査トレイには、眼内レンズの配置を許容する眼内レンズ配置空間が設けられ、
該眼内レンズ配置空間を挟んで前記各撮像手段とは反対側にそれぞれ一対の照明手段が配置され、
前記各撮像手段にて前記眼内レンズを撮像する際に、該照明手段により、照射することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の眼内レンズ検査装置。
【請求項9】
前記照明手段は、可視光領域のうちの短波長を主波長とした、又は測定対象である眼内レンズの少なくとも一部の色の補色関係の色又は補色関係の色と類似色を主波長として持つ単色の光源を備えることを特徴とする請求項8に記載の眼内レンズ検査装置。
【請求項10】
前記眼内レンズ配置空間を挟んで互いに反対側に位置する前記撮像手段と前記照明手段の間には、光遮断性部材を配置し、
前記光遮断性部材の配置位置は、前記撮像手段による眼内レンズの全体像の撮像を阻害しない位置であって、前記撮像手段により撮像可能な位置であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の眼内レンズ検査装置。
【請求項11】
眼内レンズの形状に関する検査をするために、前記眼内レンズを載置するための載置部を備えた検査トレイにおいて、
前記載置部の表面には、前記眼内レンズの光学部を載置可能なテーパー面を備えるテーパー孔が形成され、
前記テーパー孔と連通するとともに、前記載置部を貫通する貫通孔が形成され、
前記載置部の表面には、前記テーパー孔の軸心を横切るように溝が形成されていることを特徴とする検査トレイ。
【請求項12】
前記載置部には、眼内レンズを保持するための保持部を備え、
該保持部は、眼内レンズの光学部から突出された支持部毎に、2個以上設けられたことを特徴とする請求項11に記載の検査トレイ。
【請求項13】
眼内レンズの支持部毎に設けられた前記保持部のうち、前記貫通孔の軸心に最も近い保持部は、前記貫通孔の軸心を中心とした円上に位置し、かつ、前記テーパー面上若しくは前記テーパー面に接していることを特徴とする請求項12に記載の検査トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−71638(P2007−71638A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257772(P2005−257772)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】