説明

眼科用薬剤

本発明は一般に眼科用薬に関する。より具体的には、本発明は、角膜を通してその浸透を高めるための眼科用薬を変性(誘導体形成)する方法に関する。本発明は、本方法にしたがって変性(誘導体形成)した薬剤、及び高眼圧に関連する症状、特に緑内障の処置におけるその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、35USCセクション119(e)のもと、2004年10月21日出願の米国仮特許出願第60/620,320号に優先権を主張する。そのすべての内容は、本明細書中、参照として含まれる。
技術分野
【0002】
本発明は、一般に眼科用薬剤、特に角膜を通して前房への浸透を高めるための眼科用薬剤を変性する方法に関する。本発明はさらに、その変性した薬剤ならびに、緑内障及び高い眼圧に関連するほかの疾患などの目の疾患/疾病の処置におけるその薬剤の使用に関する。
技術背景
【0003】
緑内障は、アメリカ合衆国において失明の主たる三原因のうちのひとつであり、世界における失明の主な原因である。アメリカ合衆国では2200万人を超える人々が緑内障に罹患しており、数百万人以上で緑内障を発症する危険性がある。緑内障は年寄りに偏って発症するので、人口が高齢化するにつれ、緑内障の罹患数は増え続けるだろう。
【0004】
緑内障は、ひとつの疾患に過ぎないのではなく、それどころか、視神経の神経構成要素の後天的な、進行性の機能低下の最終共通経路を共有する一連の症状である。一度かなりの数の神経が損なわれると、神経細胞の死によって失明する。
【0005】
緑内障及びその進行に関連する因子は同定され、はっきりしている。高眼圧(elevated intraocular pressure:IOP)が緑内障の主な原因である。目の中の流体の排水が悪くなるので、圧力が上昇する。
【0006】
現在の緑内障治療では、発生している流体量を減らすことにより、または機械的若しくは他の手段により目からの流体の流れを促進することによって、眼圧を下げることに注力している。現在使用されている局所薬剤としては、流体の流出を高める縮瞳薬(miotic)[これらの例としてはIsopto(登録商標)Carpine、Ocusert(登録商標)、Pilocar(登録商標)、及びPilopine(登録商標)が挙げられる];これも流体の流出を高めるエピネフィリン(epinephrine)[これらの例としては、Epifrin(登録商標)及びPropine(登録商標)が挙げられる];流体量を減らすベータ-遮断薬[これらの例としてはBetagan(登録商標)、Betimol(登録商標)、Betoptic(登録商標)、Ocupress(登録商標)、Optipranalol(登録商標)、及びTimoptic(登録商標)が挙げられる];ならびにこれも流体の量を減らす炭酸脱水酵素阻害剤及びアルファ-アドレナリン作用薬[これらの例としてはAlphagan(登録商標)、Iopidine(登録商標)、及びTrusopt(登録商標)が挙げられる]が挙げられる。これも使用するプロスタグランジン類似体は、補助的な排路を通して流体の流出を高める[これらの例としては、Lumigan(登録商標)、Rescula(登録商標)、Travatan(登録商標)、及びXalatan(登録商標)が挙げられる]。[一般的な経口投薬としては、炭酸脱水酵素阻害剤(たとえばDaranide(登録商標)、Diamox(登録商標)、及びNeptazane(登録商標)がある。これらの薬剤は目に房水が流入するのを低下させる]。
【0007】
緑内障患者は、視神経及び神経組織への血流量が低く、神経組織はダメージに対して耐性が低く、視神経を取り巻きこれを支える結合組織の伸展性(compliance)も低い。ひとつの薬剤、メマンティン(Memantine)は、薬剤として第3相臨床試験(Allergan)中であり、神経を保護することが証明されるであろう。
【0008】
緑内障の処置のために眼科用薬剤を局所適用するには、角膜を介して前房に薬剤が浸透しなければならないが、この前房は房水を含んでおり、通常の流出経路(小柱網及びシェルム管)及びブドウ膜-強膜経路(通常ではない流出経路)に流出する。眼圧は小柱網/シェレム管及びブドウ膜-強膜経路に作用する薬剤によって下げられる。角膜を介する薬剤の浸透には、疎水性と親水性の性質の均衡が必要である。薬剤は角膜内に拡散するのに非極性媒体中で十分に溶解性であり、且つ角膜から出て房水中に拡散するのに(水性)極性媒体中で十分に溶解性でなければならない。
【0009】
緑内障の処置で潜在的に有用な多くの薬剤は、カルボン酸(たとえばフェノキシ酢酸または桂皮酸)である。カルボン酸は、通常、緩衝水溶液中で供給され、およそ中性pHではカルボン酸は、脱プロトン化カルボキシレート塩として存在する。イオン化したカルボキシレート塩は水溶液に溶解性であるが、角膜に浸透しない。そのような薬剤は、プロドラッグエステルとして送達することができる。活性化合物を再生するために酵素的に(たとえば角膜内で)開裂するプロドラッグを使用すると、角膜を介して前房に薬剤の浸透を促進することができる。
【0010】
意外にも、多くのエステルは、角膜(角膜上皮)の比較的非極性外部層を出て房水内に拡散するには疎水性(非極性)すぎる。もっと複雑な送達では、そのような合成物は水溶液中に配合するには不溶性であり過ぎることが多い。
【0011】
本発明は、そのような薬剤に関連する溶解性と限られた角膜浸透力を克服するために、カルボキシル基を含む眼科用薬剤の誘導体の製造法を提供する。本発明のアプローチにより、哺乳類の目の角膜内に浸透できるが、角膜から房水に放出するのに十分に水溶性であるプロドラッグが製造できる。本発明のプロドラッグは、角膜内でのエステラーゼにより活性化され、その結果、活性薬剤が前房の房水に含まれる。
発明の概要
【0012】
本発明は、一般に眼科用薬剤に関する。より具体的には、本発明は、角膜を介して眼科用薬剤の浸透が高まるように、眼科用薬剤を変性(誘導体形成)する方法に関する。本発明は、本発明の方法に従って変性(誘導体形成)された薬剤及び、高眼圧に関連する症状、特に緑内障の処置におけるかかる薬剤の使用にも関する。
【0013】
一態様において、本発明は、薬剤部分のカルボキシレート官能基の糖アルコールとのエステル化から誘導体形成した化合物を含む組成物を提供し、前記薬剤部分は、フェノキシ酢酸、桂皮酸、及びその混合物の少なくともひとつを含む。
【0014】
別の態様において、本発明は、その薬剤のカルボキシレート官能基のエステル化から誘導体形成される化合物を含む組成物を提供する、但し、前記薬剤部分は、プロスタグランジンではない。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート;
5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール;
11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール;
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-D-リビトール;
4-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-L-トレイトール;
5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
1-O-D-ソルビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
1-O-D-アラビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
1-O-グリセロール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート;
1-O-エリトリトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート;
1-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート;
5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート;
2-O-D-ソルビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;及び
2-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテートからなる群から選択される化合物を提供する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、眼科疾患の処置法であって、薬剤部分のカルボキシレート官能基の糖アルコールとのエステル化により誘導体形成した化合物の安全且つ有効量をヒトまたは他の動物に投与することを含み、前記薬剤部分は、フェノキシ酢酸、桂皮酸、及びその混合物の少なくともひとつを含む、前記方法を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、眼科疾患を処置するための化合物の適合性を決定する方法であって、薬剤部分のカルボキシレート官能基の糖アルコールとのエステル化から誘導体形成された化合物を提供する、その予定半減期内で、目の状態を模倣した条件下でのアッセイで、前記化合物がそのカルボン酸を放出するかどうかを決定する、及び予定半減期内で前記化合物がそのカルボン酸を放出する場合に、当該化合物を眼科疾患を処置するために選択する、各段階を含む、前記方法を提供する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、薬剤部分のカルボキシレート官能基と糖アルコールとのエステル化により誘導体形成された化合物を提供し、前記薬剤部分は、トラバプロスト(travaprost)、ラタノプロスト(latanoprost)及びビマトプロスト(bimatoprost)ならびにその混合物の少なくともひとつである、前記化合物を提供する。
【0019】
本発明の目的及び好都合な点は、以下の記載から明らかになるだろう。本明細書中に参考文献または情報の他の供給源は、本明細書中、参照として含まれる。
【0020】
図1は、チクリナフェン-リボトールエステルの5%配合で観察された圧力降下を示す図である。
【0021】
図2は、チクリナフェン-リビトールエステルの10%配合で観察された圧力降下を示す図である。
【0022】
図3は、チクリナフェン-リビトールエステルの15%配合で観察された圧力降下を示す図である。
【0023】
図4は、チクリナフェン-リビトールエステル軟膏(10%w/w)で処置した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。矢印は、1日目、2日目及び3日目における軟膏の添加を示す。データは、平均±平均の標準誤差をあらわす。アスタリスク1個は、それぞれの目に関して時間0において測定した値と現在の値との有意差、p<0.05を示す。アスタリスク2個は、OS(未処理)目とOD(処理済み)目との有意差、p<0.05を示す。
【0024】
図5は、AR101(式Vの化合物)で毎日処理(1滴)した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。矢印は、0日目と10日目の負荷量の添加(3滴)を示す。動物は8日目と9日目は未処理のままにした。データは、平均±平均の標準誤差をあらわす。アスタリスク1個は、それぞれの目に関して時間0において測定した値と現在の値との有意差、p<0.05を示す。アスタリスク2個は、OS(未処理)目とOD(処理済み)目との有意差、p<0.05を示す。
【0025】
図6は、5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート(ラノリンベース中10%および15%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
【0026】
図7は、5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(溶液中、システインと等モル混合した0.3%と0.6%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
【0027】
図8は、5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール(溶液中0.004%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
【0028】
図9は、1-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデカン(溶液中、0.004%および0.02%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
【0029】
図10は、11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(溶液中、システインと等モル混合した0.3%及び0.6%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
発明の詳細な説明
用語及び定義
【0030】
本明細書で使用するように、「アルキル」なる用語は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する飽和または不飽和炭化水素鎖をさす。アルキル鎖は直鎖でも、分岐であってもよい。好ましい分岐アルキル部分は、1または2個の分岐、好ましくは1個の分岐をもつ。好ましいアルキル部分は飽和である。不飽和アルキル部分は、ひとつ以上の二重結合及び/またはひとつ以上の三重結合をもつ。好ましい不飽和アルキル部分は、一つ若しくは二つの二重結合またはひとつの三重結合、より好ましくはひとつの二重結合をもつ。アルキル鎖は、非置換でも1〜4個の置換基で置換されていてもよい。好ましい置換アルキル部分は、一-、二-、または三置換である。置換基は低級アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アリールオキシ、アシルオキシ(たとえば、アセトキシ)、カルボキシ、単環式芳香族環(たとえば、フェニル)、単環式複素環式芳香族環、単環式炭素環式脂肪族環、単環式複素環式脂肪族環、及びアミノ部分である。
【0031】
本明細書中で使用するように、「カルボキシレート」及び「カルボン酸」は、3つの置換基に結合した炭素原子、すなわち一重結合でもうひとつの炭素原子、二重結合によって酸素原子、一重結合で別の酸素原子を特徴とする化学基をさす。本明細書中で使用する省略形「XCOO-」と「X-COOH」は、それぞれカルボキシレートとカルボン酸部分の省略形を構成するものとする。この省略形において「X」は、カルボン酸を含む薬剤部分の残余を表すものとする。「X」は、カルボン酸部分に直接結合した炭素原子を含まなければならないと考えられる。
【0032】
本明細書中で使用するように、「眼科用薬剤」とは、目の疾患もしくは症状を処置するためまたは生物学的応答を産生する目的で目に適用するすべての化学化合物をさす。眼科用薬剤の非限定的な例としては、プロスタグランジン、たとえばトラバプロスト(travaprost)、ラタノプラスト(latanoprost)、ビマトプロスト(bimatoprost)及び同様の薬剤、フェノキシ酢酸、桂皮酸及びフェニルプロピオン酸、安息香酸、脂肪酸などが挙げられる。症状及び疾病としては、緑内障及び黄斑変性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書中で使用するように、「糖アルコール」とは、炭素鎖に沿って複数のヒドロキシル基を含むアルコールをさす。「糖アルコール」は天然のものであってもよく、天然の糖もしくは別の糖アルコールから誘導してもよく、または部分的もしくは完全に合成経路由来であってもよい。「糖アルコール」は、鎖の炭素原子当たり2個以上のヒドロキシルをもつことができるが、1:1比未満であってもよい。「糖アルコール」は、エステル結合を作りだすのに使用するヒドロキシルに加えて、少なくともひとつの遊離ヒドロキシルを持たねばならない。糖アルコールの炭素鎖は最大9個の炭素原子をもつことができ、完全に線形であるか、もしくは分岐であってもよいか、環を含んでもよい。他の原子または原子の群は、少なくともひとつの遊離ヒドロキシル基が残っている限り、独立して前記ヒドロキシル基のそれぞれを置換してもよい。好適な置換部分の非限定的な例としては、アルキル基、塩素原子、メトキシ基、フェノキシ基、アルコキシ基、フッ素原子、非置換または一-若しくは二-置換されていてもよいアミン基、アミドの炭素若しくは窒素を介して糖アルコールに結合したアミド基が挙げられる。遊離でない場合、前記糖アルコールのヒドロキシル基は、ケタール結合を介して一緒に結合してもよい。
化合物
【0034】
本発明は、緑内障及び高眼圧に関連する他の疾病/疾患の処置で使用するのに好適な薬剤を含む、カルボキシル基を含む眼科用薬剤の誘導体の製造法に関する。本発明のアプローチにより、哺乳類(たとえばヒト)の目の角膜に拡散し得る化合物が製造できる。この概念に従って、酵素の活性化が角膜内に存在するエステラーゼを介しておきて、前房/房水に遊離酸を生成して、ついでこれが小柱網/シェルム管またはブドウ膜-強膜経路に入ることができる。
【0035】
カルボン酸を含む化合物を利用して現行の眼球治療を行う欠点は、意外にも、非常に特異的に修飾することによって克服し得ることが知見された。エステル結合によって糖アルコールをカルボキシレート基に結合させると、単純エステルよりも優れた水溶性、遊離カルボキシレート基よりも角膜浸透に優れる分子を作り出し、さらに同時に潜在的な症状、特に緑内障を効果的に処置できる速度でin vivoで加水分解をうける。この溶液は、通常、一種類のカルボキシレートに限定されておらず、この種の修飾に対するカルボキシレートの適合性は、高価なin vivo試験の必要なく、糖アルコールエステルを市販のエステラーゼでin vitroで試験することによって容易に測定できる。
【0036】
本発明に従って、薬剤のカルボキシレート基を糖アルコールでエステル形成することによって遮蔽する(保護する)。そのようなエステル化によって、薬剤が角膜内に拡散するのに十分に疎水性とする。極性アルコール部分は、活性薬剤が角膜から房水内に放出される十分な水溶性を付与する。
【0037】
本発明を説明する非限定的な実施例及び式を以下に示す。空間的配置が示されていない場合には、それぞれの立体中心におけるRとSの両方の異性体がすべて独立しており、且つ具体的に意図されているものと理解すべきである。
【0038】
本発明は、式IA〜Cの化合物を含む。
【化1】

{式中、(X-COO)は薬剤部分であり;及び
SAは、一級、二級または三級ヒドロキシルに結合した糖アルコールであり、前記糖アルコールは、3個以上9個未満の炭素を含み、且つヒドロキシル基対炭素の1:1未満の比を有し、しかし少なくともひとつの遊離ヒドロキシルを含み、ここで任意の欠落しているヒドロキシル基は独立して以下の塩素原子、アミン基、アミド基(amido group)、アミド基、フッ素原子、水素原子、ニトリル基、アリールオキシ基により置き換えられ、任意の欠落している水素基はアルキル基により置き換えられる}。
【化2】

{式中、(X-COO)は薬剤部分であり;
Yは独立してH、OH、及びORから選択され;
Rは(CH2)nCH3であり;
mは1〜6であり(好ましくはmは1、2、3または4である);
nは0〜6である(好ましくはnは0〜4である)}。
【化3】

{式中、(X-COO)は薬剤部分であり;
Yはそれぞれ独立してH、OH、またはORであり;
Rはアルキル基であり;
m及びnはそれぞれ独立して0〜6であり;
m+nの合計は9未満である}。
【0039】
それぞれの場合に応じて、式IA〜Cの化合物は、医薬的に許容可能な塩としても存在することができる。好適な塩は、医薬的に許容可能なアニオン(たとえばハライド、アセテート、ベンゾエートなど)及びカチオン(たとえば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルキルアンモニウムなど)と形成することができる。
【0040】
本発明の化合物は、標準的な方法(たとえば実施例1〜4)を使用して製造することができる。
【0041】
本発明に従って誘導体形成できる薬剤部分の非限定的な例としては、フェノキシ酢酸、たとえばエタクリン酸及びチクリナフェン、桂皮酸、たとえばSA9000及びSA8248(Santen)(Shimazakiら、Biol. Pharm. Bull. 27:1091〜1024(2004)、Shimazakiら、Biol. Pharm. Bull. 27:846〜850(2004))並びに以下の式IIに示されている誘導体などのプロスタグランジン誘導体が挙げられる。さらなる例として、特定の現在利用可能な薬剤、イソプロピルエステルであるたとえばルミガン(Lumigan)、トラバタン(Travatan)及びキサラタン(Xalatan)は、本明細書中に記載のように糖アルコールのエステルであるように変更することができる。
【化4】

【0042】
薬剤部分の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:非-ステロイド抗炎症薬、たとえばアセチルサリチル酸(アスピリン)、サリチル酸、スリンダク(Sulindac)、インドメタシン(Indomethacin)、ナプロキセン(Naproxen)、フェノプロフェン(Fenoprofen)、イブプロフェン(Ibuprofen)、ケトプロフェン(Ketoprofen)、インドプロフェン(Indoprofen)、フロブフェン(Furobufen)、ジフルニサル(Diflunisal)、トルメチン(Tolmetin)、フルビプロフェン(Flurbiprofen)、ジクロフェナク(Diclofenac)、メフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、フェンクロズ酸、アルクロフェナク(Alclofenac)、ブクロクス酸、スプロフェン(Suprofen)、フルプロフェン(Fluprofen)、シンコフェン(Cinchophen)、ピルプロフェン(Pirprofen)、オキソプロジン(Oxoprozin)、シンメクタチン(Cinmetacin)、アセメタクチン(Acemetacin)、ケトロラク(Ketorolac)、クロメタクチン(Clometacin)、イブフェナク(Ibufenac)、トルフェナム酸、フェンクロフェナク(Fenclofenac)、プロドール酸、クロニキシン(Clonixin)、フルチアジン(Flutiazin)、フルフェニサル(Flufenisal)、サリチルサリチル酸(Salicylsalicylic acid)、O-(カルバモイルフェノキシ)酢酸、ゾメピラク(Zomepirac)、ニフルミン酸、ロナゾラク(Lonazolac)、フェンブフェン(Fenbufen)、カルプロフェン(Carprofen)、チアプロフェン酸、ロキソプロフェン(Loxoprofen)、エトドラク(Etodolac)、アルミノプロフェン(Alminoprofen)、2-(8-メチル-10,11-ジヒドロ-11-オキソジベンゾ[b,f]オキセピン-2-イル)-プロピオン酸、及び4-ビフェニル酢酸;セファロスプロリン抗生物質、たとえばセファロチン(Cephalothin)、セファセトリル(Cephacetrile)、セファピリン(Cephapirin)、セファロリジン(Cephaloridine)、セファゾリン(Cefazolin)、セファズフルール(Cefazuflur)、セフォラニド(Ceforanide)、セファゼドン(Cefazedone)、セフトゾール(Ceftezole)、セファノン(Cephanone)、セフォチアン(Cefotiam)、セファマンドール(Cefamandole)、セフェニシド(Cefonicid)、セフロキシム(Cefuroxime)、セフォペラゾン(Cefoperazone)、セフピラミド(Cefpiramide)、セフピミゾール(Cefpimizole)、セフスロジン(Cefsulodin)、セフォキシチン(Cefoxitin)、セフメタゾール(Cefmetazole)、セフォテタン(Cefotetan)、セフブペラゾン(Cefbuperazone)、セフォタキシム(Cefotaxime)、セフェメノキシム(Cefmenoxime)、セフチゾキシム(Ceftizoxime)、セフピロム(Cefpirome)、セフタジジム(Ceftazidime)、セフォジジム(Cefodizime)、セフェトリアキソン(Ceftriaxone)、ラタモキセフ(Latamoxef)、セファレキシン(Cephalexin)、セファラジン(Cephradine)、セファクロール(Cefaclor)、セファドロキシル(Cefadroxil)、セファトリジン(Cefatrizine)、セフロキサジン(Cefroxadine)、及びセファログリシン(Cephaloglycin);ペニシリン抗生物質、たとえばベンジルペニシリン(Benzylpenicillin)、フェノキシメチルペニシリン、フェネチシリン(Phenethicillin)、メシチリン(Methicillin)、ナフチリン(Nafcillin)、オキサシリン(Oxacillin)、クロキサシリン(Cloxacillin)、ジクロキサシリン(Dicloxacillin)、フルクロキサシリン(Flucloxacillin)、アジドシリン(Azidocillin);アンピシリン(Ampicillin)、アモキシシリン(Amoxycillin)、エピシリン(Epicillin)、シクラシリン(Cyclacillin)、カルベニシリン(Carbenicillin)、チカルシリン(Ticarcillin)、スルベンシリン(Sulbenicillin)、アズロシリン(Azlocillin)、メズロシリン(Mezlocillin)、ピペラジリン(Piperazillin)、アパルシリン(Apalcillin)、テモシリン(Temocillin)、カルフェシリン(Carfecillin)、カリンダシリン(Carindacillin)、及びヘタシリン(Hetacillin);4-キノロン抗生物質、たとえばシプロフロキサシン(Ciprofloxacin)、ノルフロキサシン(Norfloxacin)、アクロソキサシン(Acrosoxacin)、ピペミド酸、ナリジクス酸、エノキサシン(Enoxacin)、オフロキサシン(Ofloxacin)、オキソリン酸、フルメキン(Flumequine)、シノキサシン(Cinoxacin)、ピロミド酸及びペフロキサシン(Pefloxacin);以下の構造式をもつステロイドモノカルボン酸:
【化5】

H{式中、R20は水素、フルオロ、クロロ、またはメチルであり;R21は水素、フルオロまたはクロロであり;R22は水素、メチル、ヒドロキシまたは-OCOR24であり、ここでR24はC1〜C7直鎖若しくは分岐鎖アルキルまたはフェニルである;R23は水素、ヒドロキシ、若しくは-OCOR24であり、ここでR24は上記定義のとおりであり、但しR22がヒドロキシまたは-OCOR24であり、且つR23が水素以外である場合、R22及びR23は同一であるか、R22とR23は一緒になって以下のタイプの二価の基を形成する:
【化6】

ここで、R25とR26は、同一または異なっていてもよく、それぞれC1-7直鎖若しくは分岐鎖アルキル若しくはフェニルであり;Zはカルボニルまたはβ-ヒドロキシメチレンであり;16-の位置の波線は、αまたはβ-配置を示し;環Aの点線は、1,2-結合が飽和または不飽和であることを示す};アンギオテンシン-転換酵素阻害剤、たとえば(2R,4R)-2-(2-ヒドロキシフェニル)3-(3-メルカプトプロピオニル)-4-チアゾリジンカルボン酸、エンアラプリル酸(Enalaprilic acid((N-[1-(S)-カルボキシ-3-フェニル-プロピル]-L-アラニル-L-プロリン)、カプトプリル(Captopril)、N-シクロペンチル-N-[3-[(2,2-ジメチル-1-オキソプロピル)チオ]-2-メチル-1-オキソプロピル]グリシン、1[4-カルボキシ-2-メチル-2R,4R-ペンタノイル]-2,3-ジヒドロ-2S-インドール-2-カルボン酸、アレカプリル(Alecapril)(1-[(S)-3-アセチルチオ-2-メチル-プロパノイル]-L-プロピル-L-フェニルアラニン)、[3S-[2[R*(R*)]],3R*]-2-[2-[[1-カルボキシ-3-フェニルプロピル]-アミノ]-1-オキソプロピル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-3-イソキノリンカルボン酸、[2S-[1[R*(R*)]],2α,3αβ,7αβ]-1[2-[[1-カルボキシ-3-フェニルプロピル]-アミノ]-1-オキソプロピル]オクタヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸;(S)-ベンズアミド-4-オキソ-6-フェニルヘキサノイル-2-カルボキシ-ピロリジン、リシノプロル(Lisinopril)、チオプロニン(Tiopronin)、ピボプルリル(Pivopril);及び他の生命に影響を与えるカルボン酸薬剤(bio-affecting carboxylic acid)、たとえばエタクリン酸、L-チロシン、α-メチル-L-チロシン、ペニシルアミン(Penicillamine)、プロベニシド(Probenicid)、5-アミノサリチル酸、4-アミノ安息香酸、メチルドーパ、L-ドーパ、カルビドーパ(Carbidopa)、バルプロ酸、4-アミノ酪酸、モキラサクタム(Moxalactam)、クラブラン酸、トラネキサム酸、フロセミド(Furosemide)、7-テオフィリン酢酸、クロブフィリン酸、チエナマイシン(Thienamycin)、N-ホルミドイルチエナマイシン(Formimidoylthienamycin)、アンフォテリシン(Amphotericin)B、ニコチン酸、メトトレキセート(Methotrexate)、L-チロキシン(Thyroxine)、クロモグリク酸、ブメタニド(Bumetanide)、葉酸、クロラムブシル(Chlorambucil)、メルファラン(Melphalan)、フシジン酸、4-アミノサリチル酸、リオチロニン(Liothyronine)、トレチノイン(Tretinoin)、o-チモチン酸(Thymotinic acid)、6-アミノカプロン酸、L-システイン、トラニラスト(Tranilast)(N-(3’,4’-ジメトキシシンナモイル)アントラニル酸)、バクロフェン(Baclofen)、4-アミノ-5-エチル-3-チオフェンカルボン酸、N-シクロペンチル-N-[3-[(2,2-ジメチル-1-オキソプロピル)チオ]2-メチル-1-オキソプロピル]グリシン、イソグバシン(Isoguvacine)、ニペコチン酸(Nipecotic acid)、D-エリタデニン(Eritadenine)[(2R,3R)-4-アデニン-9-イル-2,3-ジヒドロキシブタン酸]、(RS)-3-アデニン-9-イル-2-ヒドロキシプロパン酸、1-[4-カルボキシ-2-メチル-2R,4R-ペンタノイル]-2,3-ジヒドロ-2S-インドール-2-カルボン酸、フェニルアラニルアラニン、グラフェン酸(Glafenic acid)、フロクタフェン酸(Floctafenic acid)、N-(ホスホノアセチル)-L-アスパラギン酸(PALA)、プロキシクロミル(Proxicromil)、システアミン(Cysteamine)、N-アセチルシステイン、プログルミド(Proglumide)、アズトレナム(Aztreonam)、メシリナム(Mecillinam)、全トランス-レチノイン酸、13-シス-レチノイン酸、イソニペコチン酸、アントラセン-9-カルボン酸、α-(フルオロメチルヒスチジン(Fluoromethylhistidine)、6-アミノ-2-メルカプト-5-メチルピリミジン-4-カルボン酸、グルタチオン(Glutathione)、アシビシン(Acivicin)、L-α-グルタミルドーパミン、6-アミノニコチン酸、ロフラゼペート(Loflazepate)、6-[[1(S)-[3(S),4-ジヒドロ-8-ヒドロキシ-1-オキソ-1H-2-ベンゾピラン-3-イル]-3-メチルブチル]アミノ]-4-(S),5(S)-ジヒドロキシ-6-オキソ-3(S)-アンモニオヘキサノエート、Z-2-イソバレアミドブト-2-エノン酸、D,L-2,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、L-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸、イオパノ酸、4-アミノメチル安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ酪酸、チクリナフェン、4-アミノ-3-フェニル酪酸、4-(ジメチルアミノ)安息香酸、カポベン酸、パントテン酸、フォリン酸、オロチン酸、ビオチン(Biotin)、ミコフェノール酸、チオクト酸、ピログルタミン酸、オレイン酸、リノール酸、コール酸、天然アミノ酸(たとえばグリシン、ヒスチジン、フェニルアラニン及びグルタミン酸)、N,N-ジメチルグリシン、サルアゾスルファピリジン(Salazosulfapyridine)、アゾジサル(Azodisal)、イソトレチノイン(Isotretinoin)及びエトレチン酸(Etretinic acid)。
【0043】
プロスタグランジンの非限定的な例としては、以下のものがある:プロスタグランジンE2、プロスタグランジンE;プロスタグランジンF;15-デオキシ-16-ヒドロキシ-16-ビニルプロスタグランジンE2;11-デオキシ-11α,12α-メタンプロスタグランジンE2;11デオキシ-11α,12α-ジフルオロメタノプロスタグランジンE2;プロスタサイクリン;エポプロテノール(Epoprostenol);dl-16-デオキシ-16-ヒドロキシ-16(α/β)-ビニルプロスタグランジンE2;プロスタグランジンE1;トロンボキサンA2;16,16-ジメチルプロスタグランジンE2;(15R)15-メチルプロスタグランジンE2(アルバプロスチル:Arbaprostil);メテンプロスト(Meteneprost);ニレプロスト(Nileprost);及びシプロステン(Ciprostene)。プロスタグランジンの追加の例としては、米国特許第5,977,173号(1999年11月2日発行)、同第6,107,338号(2000年8月22日発行)、同第6,048,895号(2000年4月11日発行)、同第6,410,780号(2002年6月25日発行)、同第6,444,840号(2002年9月3日発行)、同第6,451,859号(2002年9月17日発行)、再発行特許出願(Re-issue Patent Application)第11/174420号(2005年7月1日出願)、米国特許出願第09/774,555号(2001年1月31日出願)、同第09/774,556号(2001年1月31日出願)及び同第11/138097号(2005年5月26日出願)が挙げられ、これらは本明細書中、その全体が参照として含まれる。
【0044】
本発明の化合物の製造で使用するのに好適な好ましい糖アルコールとしては、C4糖類トレイトール及びエリトリトール、C5糖類アラビニトール、キシリトール、リビトール及びリキシトール、ならびにC6糖類グルシトール、ガラクチトール、マンニトール、グリトール、アルチトール、アリトール、イジトール及びタリトール、より好ましくは、キシリトール、リビトール、グルシトール及びマンニトールが挙げられる。本発明としては、D異性体とL異性体の両方の使用が挙げられる。
組成物
【0045】
本発明の化合物は、式IA〜Cの一種以上の化合物、式IA〜Cの一種以上の医薬的に許容可能な塩、またはその混合物の安全且つ有効量を含む。本明細書中で使用するように、「安全且つ有効量」とは、処置すべき症状で正の変性(positive modification)を有意に誘発させるのに十分であるが、信頼できる医学評価の範囲内で、(相応な利益/不利益比で)深刻な副作用を防ぐのに十分に低い化合物量を意味する。化合物の安全且つ有効量は、処置される特定の症状、処置される患者の年齢及び健康状態、症状の重篤度、処置期間、同時治療の種類、使用される特定の医薬的に許容可能なキャリヤ、ならびに主治医の知識及び技能などの因子に依存して変動するだろう。
【0046】
本発明の化合物に加えて、本発明の組成物は医薬的に許容可能なキャリヤを含む。本明細書中で使用する「医薬的に許容可能なキャリヤ」とは、患者に投与するのに好適な一種以上の適合性の(compatible)液体、ゲル、クリームまたは軟膏希釈剤を意味する。本明細書中で使用する「適合性:compatible」とは、本組成物の成分が、通常の使用条件下で組成物の医薬的効能を実質的に減退させるような相互作用がないように、本化合物と、互いに混合し得ることを意味する。無論、医薬的に許容可能なキャリヤは、十分に高純度であり、且つ処置する患者に投与するのに十分に毒性が低い。医薬的に許容可能なキャリヤまたはその成分として役立つ物質の例としては、ゼラチン、賦形剤、発熱物質を含まない水、等張塩水、及びリン酸塩緩衝溶液がある。
【0047】
化合物と組み合わせて使用すべき医薬的に許容可能なキャリヤの選択は、化合物を投与する方法によって基本的に決定される。本発明の化合物は、全身的に投与することができる。投与経路としては、経皮;経口;非経口、皮下または静脈注射を含む;局所;及び/または鼻腔内が挙げられる。
【0048】
使用すべき本化合物の好適な量は、動物モデルで日常的な実験によって決めることができる。そのようなモデルとしては、無傷及び卵巣切除ラットモデル、フェレット、ウサギ、イヌ及び非ヒト霊長類モデルならびに不用モデル(disuse model)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
局所適用用の好適な医薬的に許容可能なキャリヤとしては、ローション、クリーム、ゲル、溶液などで使用するのに好適なものが挙げられる。好都合には、組成物は無菌で、局所で眼球に使用するのに好適な単位剤形とすることができる。本組成物は、スポイトのついた容器などの計量用途に適した形態に包装することができる。
【0050】
好ましい態様において、本組成物は、キャリヤとして生理食塩水を使用して製造した溶液である。溶液のpHは、好ましくは好適な緩衝系を使用して4.5〜8.0の間に保持する。中性pHがより好ましい。本発明の組成物は、医薬的に許容可能な防腐剤、安定剤及び/または界面活性剤を含むこともできる。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、緑内障、または高眼圧に関連する目の疾患または疾病の処置法に関する。本方法は、処置に有効な十分量で、式IA〜Cの化合物またはその医薬的に許容可能な塩のある量を、かかる処置の必要な動物(たとえばヒト)に投与することを含む。投与計画は、使用する化合物、患者及び/または求められる効果によって変動しえる。最適な投与計画の選択は、関連する分野の当業者によって容易に決定される。
【0052】
本発明は、浸透を高め、且つさらに疾病を処置するのに十分な速度で加水分解も維持するが、それぞれの薬剤につける最適の糖アルコールを決定するためのアッセイを提供するための手段を提供できる。
【0053】
糖アルコールと薬剤を含有するカルボン酸のすべての組み合わせが、最適に送達できる最適の特徴を持つとは限らないことは理解されよう。当業者にとって、特定の糖アルコールによって付与される溶解性が疾病の処置に望ましい濃度と合うのに十分であるかどうかを決定するのは、簡単なことである。角膜浸透及び加水分解は、まして容易なことではない。
【0054】
本発明のひとつの側面において、本発明の非常に好都合な点は、糖アルコールエステルがそれぞれの薬剤のin vivo投薬のもっとも好適な候補であるかを決定するのが容易だということである。糖アルコール部分は化合物に水溶性を付与するので、アッセイは放出速度に次のようにそれぞれの薬剤にとって最適の糖アルコールを決定するために容易に設定することができる:ブタ肝臓エステラーゼ(Sigma Corp.,St.Louis)などのエステラーゼの市販調製品を、標準濃度で調製する。メタノールまたはメタノール-水またはメタノール-アセトニトリルの組み合わせに溶解させた薬剤-糖アルコールの組み合わせを、化合物がアルコールから放出される速度が測定される速度でエステラーゼに滴下添加する。遊離酸の量を決定するのに使用する分析手法は、使用する酸によって変動するが、一般的な手法はTLC、逆相TLC、HPLCまたは質量分析による。当業者は、測定したそれぞれの糖-酸のペアに関する最適の分析法を容易に決定することができる。このアッセイは、96-ウェルプレートフォーマット、または活性を測定するための他のハイ-スループット法で実施するのに容易に適合させることができる。
【0055】
ついで最適候補をin vivo試験にかけることができる。緑内障のin vivo薬理活性は、当該化合物の眼圧を低下させる能力を試験するために設計されたアッセイを使用して決定することができる。そのようなアッセイの例は、本明細書中に含まれる以下の文献に記載されている:C.liljebris、G.Selen、B.Resul、J.Sternschantz、及びU.Hacksell、"Derivatives of 17-Phenyl-18,19,20-trinorprostaglandin Isopropyl Ester:Potential Anti glaucoma Agents"、Journal of Medicinal Chemistry,第38巻、第2号(1995年)、289〜304ページ。
【0056】
それぞれの薬剤及びそれぞれの症状は、それぞれ特有の最適送達をもち、且つ当業者は、本明細書に記載の指針を変形することができると考えられる。すぐに加水分解しすぎる組み合わせは、遊離酸に対して利点がないが、アッセイで検出可能な加水分解をしない化合物も同様に有用ではない。本発明の目的は、記載の条件下で、1分を超えるが7日未満の半減期でカルボン酸を放出する化合物を提供することである。本発明のさらに好ましい態様では、5分を超え4日未満で放出される化合物を提供することであり、5分を超え24時間未満で放出される化合物がさらに好ましい。
【0057】
本発明の特定の態様を以下の非限定的な実施例に記載する。
実施例1
【0058】
5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート(式III)の製造、スキームIを参照。
【化7】

【0059】
無水ベンゼン(1.5mL)中のチクリナフェン(0.40g,1.2mmol)の攪拌懸濁液に、塩化チオニル(0.18mL,2当量)を室温で添加した。反応物を還流下加熱し、この時点ですべてのチクリナフェンが溶解した。還流を2.5時間続け、反応物を冷却し、減圧下で濃縮した。残存する油状物を無水THF(2mL)に再び懸濁させ、THF(1mL)中の1,2:3,4-ジ-O-イソプロピリデンリビトール(0.28g)、トリエチルアミン(0.57mL)の撹拌溶液に室温で滴下添加した。反応物を室温で16時間撹拌し、減圧下で濃縮し、EtOAc(100mL)中に再び懸濁させた。この溶液を水(2×50mL)と塩水(50mL)で抽出し、乾燥した(無水MgSO4)。溶媒を真空下で蒸発させ、粗な生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、25〜50%EtOAcで溶離)で精製すると、所望のエステルが得られた(0.266g)。
【0060】
上記で得られたエステル(0.266g)を90%トリフルオロ酢酸水溶液(10mL)に0℃で溶解した。0℃で1時間撹拌した後、反応溶液を減圧下で濃縮した。過剰量のトリフルオロ酢酸を減圧下、ジオキサンとともに共沸させて除去した。油状残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM+0.1%トリエチルアミン中、MeOHで溶離)で精製すると、5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート(0.11g)が得られた。1H-NMR(DMSO-d6,300MHz)δ3.47(m,2H),3.76(dd,1H),3.84(m,1H),3.96(dd,1H),4.25(m,1H),4.39(t,1H),4.58(t,1H),4.64(d,1H),4.77(d,2H),4.94(d,2H),5.06(s,2H),6.69(d,1H),7.20(d,1H),7.23(d,1H),7.48(d,1H),7.51(d,1H),8.15(d,1H);13CNMR(DMSO-d6,75MHz)δ61.8,63.1,71.6,72.0,72.5,72.6,83.2,112.0,121.4,127.8,129.2,129.7,132.0,136.8,137.3,142.8,155.7,168.0,185.2;MS(FAB+):m/z465(M+H+)。
実施例2
【0061】
チクリナフェン(式IV)は、緑内障に対する公知活性をもつ薬剤である。カルボキシレート塩としての遊離酸は、殆どまたは活性がないが、おそらく角膜を通って前房への浸透がごく僅かなためであろう。チクリナフェンの単純エステルは溶解性が非常に悪いので、これも殆どまたは活性を示さない。対照的に、チクリナフェンのリビトールエステル(式III)は、流動パラフィン/ラノリン混合物に完全に溶解性である。この化合物は、Dutch-Belted種シロウサギ(実施例3及び図1〜4を参照されたい)で用量依存的に眼圧(intraocular pressure:IOP)を低下させる。
【化8】

実施例3
【0062】
チクリナフェン-リビトールエステルは、5、10及び15%濃度で軟膏として配合した。Dutch-Belted種ウサギモデルを使用して、血圧低下と副作用の両方に関して配合物を試験した。
【0063】
ベースラインの内圧は、それぞれの目にプロパラカイン1滴を入れ、続いてPneumotonometer(登録商標)を使用して圧力測定して得た。次いで、それぞれのウサギの一方の目にチクリナフェン-リビトールエステル軟膏0.1mgを、下結膜液嚢に局所適用した。もう片方の目は、薬剤を使用せずラノリン軟膏を適用して対照として使用した。全部で3用量、24時間間隔で繰り返し適用した(0、24及び48時間)。眼圧は、1週間、12時間ごとに記録した。全部で12匹のウサギに5%軟膏を、8匹のウサギに10%軟膏を、8匹のウサギに15%軟膏を適用した。
【0064】
それぞれの濃度における圧力降下を図1、2及び3に示す。図4は、2つのアスタリスクによって表す統計的に有意な時点(statistically significant timepoint)の10%データを示す。
【0065】
それぞれの濃度に関する血圧の最大降下は、以下のとおりである。
5%チクリナフェン-リビトールエステル:11%、54時間。
10%チクリナフェン-リビトールエステル:18%、36時間。
15%チクリナフェン-リビトールエステル:13%、60時間。
実施例4
【0066】
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトールの製造、スキームIIIを参照。
【化9】

【0067】
塩化亜鉛(13.6g,100mmol)を無水アセトン(110mL)とともに室温で15分間撹拌し、キシリトール(7.6g,50mmol)を添加した。室温で24時間撹拌したあと、反応溶液を5N NaOH溶液(180mL)で処理すると、上部相に幾らか白色沈殿のある二相溶液となった。この混合物を濾別し、濾液をクロロホルム(4×100mL)で抽出した。混合した抽出物を塩水で洗浄し(2×60mL)、無水Na2SO4上で乾燥した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させると、粗な生成物が得られた(12g)。粗な生成物の一部(〜3g)をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、20〜25%EtOAcで溶離)で精製すると、粘ちょうな油状の1,2:3,4-ジ-O-イソプロイリデンキシリトール(1.6g)が得られ、これを貯蔵しておくと結晶化した。
【0068】
無水DMF(20mL)中の1,2:3,4-ジ-O-イソプロイリデンキシリトール(2.4g,10mmol)の氷冷撹拌溶液に、60%NaH(0.8g,20mmol)を一度で添加した。混合物を室温で1時間撹拌したあと、臭化ベンジル(3.56mL,30mmol)を0℃で1度に添加した。混合物全体を0℃で1時間撹拌し、ついで室温でさらに2時間撹拌した。反応混合物を氷冷H2O(80mL)を0℃で添加してクエンチし、得られた混合物をエーテル(3×100mL)で抽出した。エーテル性抽出物をH2O(2×80mL)及び塩水(80mL)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥した。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させると、粗な生成物が得られ、これをシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、10%EtOAcで溶離)で精製すると、粘ちょうな油状の5-ベンジルオキシ-1,2:3,4-ジ-イソプロイリデン-キシリトール(2.7g,83%収率)が得られた。
【0069】
トリフルオロ酢酸/水溶液(9:1v/v,5mL)を、室温で5-ベンジルオキシ-1,2:3,4-ジ-O-イソプロイリデン-キシリトール(640mg,2mmol)に添加し、室温で90分間撹拌した。ついで暗茶色溶液を真空下で濃縮して溶媒を殆ど除去し、続いてトルエン(2×20mL)と一緒に同時蒸留した。残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc中0~10%MeOHで溶離)で精製すると、粘ちょうな油状の5-ベンジルオキシキシリトール(250mg,51%収率)が得られた。
【0070】
2,6-ルチジン(0.93mL,8mmol,8当量)を無水DCM(10mL)中の5-ベンジルオキシキシリトール(240mg)の氷冷撹拌溶液に滴下添加し、tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBDMSOTf)(1.38mL,6mmol,6当量)を滴下添加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、ついで室温に放置してあたため、さらに14時間撹拌し続けた。この反応混合物をEtOAc(150mL)で希釈し、1N HCl水溶液(2×40mL)と塩水(2×50mL)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥した。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させると、粗な生成物が得られ、これをシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、5%EtOAcで溶離)で精製すると、粘ちょうな油状の5-ベンジルオキシ-1,2,3,4-テトラ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)キシリトール(650mg,93%収率)が得られた。
【0071】
EtOAc(10mL)中に溶解した5-ベンジルオキシ-1,2,3,4-テトラ(tert-ブチリルジメチルシリルオキシ)キシリトール(600mg,0.86mmol)を、TLCプレートで出発物質が検出できなくなるまで(約10時間)、10%Pd/C(100mg)の存在下で水素化(H2容器として風船使用)した。触媒はセライトパッドを通してろ過して除去し、固体をEtOAcですすいだ。濾液を蒸発乾涸させ、残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、8%EtOAcで溶離)で精製すると、白色固体状の1,2,3,4-テトラ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)キシリトール(330mg,63%収率)が得られた。
【0072】
無水DCM(15mL)中の(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロスタン酸(310mg,0.4mmol)、1,2,3,4-テトラ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)キシリトール(330mg,0.54mmol)及びDMAP(15mg)の撹拌溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(206mg,1mmol)を添加し、混合物を室温で10時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾液を真空下で濃縮し、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中5%エーテルで溶離)で精製すると、白色固体状のエステル(300mg,55%収率)が得られた。
【0073】
フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF,THF中1.0M溶液)(3.1mL,3.1mmol,14当量)を、無水THF(10mL)中の上記で得られたエステル(300mg,0.22mmol)の撹拌溶液に添加し、この溶液を室温で2時間撹拌した。この溶液を真空中で濃縮し、残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc中10%MeOHで溶離)で精製すると、5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール(100mg,82%収率)が非常に粘ちょうな油状で得られた。1H-NMR(300MHz,CD3OD):δ1.27-2.10(m,18H),2.30(t,2H,J=7.5Hz),3.60-4.19(m,9H),4.96(t,1H,J=6.3Hz),7.20(s,1H),7.25-7.35(m,2H),7.68-7.80(m,2H);13C-NMR(75MHz,CD3OD):δ24.81,27.81,28.22,28.76,28.99,29.53,33.84,36.94,42.80,49.94,51.08,63.05,65.60,70.23,70.24,70.87,72.55,72.56,77.36,119.90,122.17,123.22,123.84,124.05,139.50,139.98,150.47,174.43;MS(FAB):m/z 553(M-1)。
実施例5
【0074】
式IIに示されているプロスタグランジン誘導体は、緑内障に対して強い活性を示す。式IIの化合物のイソプロピルエステルは、水溶液中で非常に溶解性が低い(通常の塩水中、<0.001%)。対照的に式Vに示されているキシリトールエステルは、少なくとも0.03%(製造に関しては実施例6を参照されたい)まで溶解性である。さらに、式Vに示されている化合物は、ブタ肝臓エステラーゼにより容易に加水分解するので、本化合物は内因性エステラーゼによって分解し、活性薬剤を放出することが強く示唆される。
実施例6
【0075】
式Vのキシリトールプロスタグランジンエステル(AR101とも呼ばれる)は、局所用途用に0.004%溶液として配合した。Dutch-Beltedウサギモデルを使用して、圧力低下と副作用の両方に関して配合物を試験した。
【0076】
ベースライン眼圧は、それぞれの目にプロパラカイン1滴を入れ、続いてPneumotonometer(登録商標)を使用して圧力測定して得た。次いで、それぞれのウサギの片方の目に0.004%AR101を3滴の負荷量で、0日目と10日目に与えた。1〜7日と10〜14日に毎日、AR101を1滴与えた。8日目と9日目には薬を与えなかった。反対側の対照の目には、AR101を含まない平衡塩類溶液の液滴を与えた。眼圧測定は2週間、12時間ごとに実施した。
【0077】
図5は、それぞれの目に関する圧力の記録を示す。これらの目の間での統計的に有意な圧力低下が3、7及び11日目で観察された。
実施例7
【0078】
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-D-リビトール(式VI)の製造。スキームIIIを参照。
【化10】

【0079】
無水2,2-ジメトキシプロパン(40mL)中のD-(+)-リボノラクトン(ribonolactone)(9.93g,67mmol)の撹拌溶液に、ピリジニウムp-トルエン-4-スルホネート(PPTS)(0.37g)を添加し、この反応混合物を撹拌しながら50℃で1時間加熱した。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させた後、油状残渣をEtOAc(300mL)に溶解し、ついで飽和NaHCO3(2×80mL)と塩水(2×80mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、残渣(14g)をTHF(40mL)に溶解し、1M HCl溶液(10mL)を室温で添加した。室温で1時間撹拌したあと、反応混合物をEtOAc(300mL)で希釈し、ついで飽和NaHCO3(2×80mL)と塩水(2×80mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。溶媒を真空下で蒸発乾涸させ、粗な生成物をヘキサン/EtOAcから再結晶化させると、白色結晶状態の2,3-O-イソプロイリデン-D-リボノラクトン(8.2g,65%収率)が得られた。
【0080】
無水DMF(30mL)中の2,3-O-イソプロイリデン-D-リボノラクトン(7.52g,40mmol)の氷冷撹拌溶液に、60%NaH(1.92g,48mmol)を一度に添加した。この混合物を同じ温度で1時間撹拌したあと、臭化ベンジル(5.74mL,48mmol)を0℃で一度に添加した。混合物全体を0℃で1時間、ついで室温でさらに17時間撹拌した。氷冷H2O(80mL)を0℃で添加して反応をクエンチし、得られた混合物をEtOAc(3×100mL)で抽出した。EtOAc抽出物をH2O(100mL)と塩水(100mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させると、粗な生成物が得られ、これをシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中20%EtOAcで溶離)で精製すると、薄黄色油状の5-ベンジルオキシ-2,3-O-イソプロイリデン-D-リボノラクトン(9.4g,84%収率)が得られた。
【0081】
THF溶液中の2M LiBH4(54mL,108mmol)を、無水THF(60mL)中の5-ベンジルオキシ-2,3-O-イソプロイリデン-D-リボノラクトン(7.5g,27mmol)の撹拌溶液に滴下添加し、反応混合物を室温で一晩(16時間)撹拌した。0℃で塩水(100mL)を添加して反応物をクエンチし、得られた混合物をEtOAc(3×100mL)で抽出した。混合した抽出物を塩水(2×80mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。真空下で溶媒を蒸発させると、粗な生成物が得られ、これをシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中50%EtOAcで溶離)で精製すると、油状の5-ベンジルオキシ-2,3-O-イソプロイリデン-D-リビトール(5.1g,67%収率)が得られた。
【0082】
無水アセトニトリル(30mL)中の5-ベンジルオキシ-2,3-O-イソプロイリデン-D-リビトール(2.82g,10mmol)の撹拌溶液に、CuCl2.2H2O(1.71g,10mmol)を室温で添加した。室温で3時間撹拌したあと、反応溶液を真空下で蒸発乾涸させ、粗な生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc中0〜9%MeOHで溶離)で精製すると、緑油状の5-ベンジルオキシ-D-リビトール(2.4g)が得られた(多少、銅塩で汚染されていた)が得られた。
【0083】
2,6-ルチジン(7.0mL,60mmol)を、無水DCM(90mL)中の不純な5-べジルオキシ-D-リビトール(2.4g)の氷冷撹拌溶液に滴下添加し、tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBDMSOTf)(11.5mL,50mmol)を同じ温度で滴下添加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、ついで放置して室温にあたため、さらに14時間撹拌し続けた。反応混合物をEtOAc(220mL)で希釈し、1N HCl溶液(2×80mL)と塩水(3×80mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させると、粗な生成物が得られ、これをシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中5%EtOAcで溶離)すると、粘ちょう油状の5-ベンジルオキシ-1,2,3,4-テトラ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-D-リビトール(4.7g,67%収率、5-ベンジルオキシ-2,3-O-イソプロイリデン-D-リビトールをベースとして)。
【0084】
EtOAc(80mL)に溶解した5-ベンジルオキシ-1,2,3,4-テトラ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-D-リビトール(4.5g,6.4mmol)を、TLCプレートで出発物質が検出されなくなるまで(約3時間)、10%Pd/C(0.55g)の存在下で水素化(H2容器として風船)した。触媒はセライトパッドを通して濾過することにより除去し、固体はEtOAcですすいだ。濾液を蒸発乾涸させ、残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中5%EtOAcで溶離)で精製すると、白色固体状の1,2,3,4-O-テトラ(tert-ブチルジメチルシリル)-D-リビトール(3.8g,97%収率)が得られた。
【0085】
無水DCM(15mL)中の(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロスタン酸(305mg,0.4mmol)、1,2,3,4-テトラ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-D-リビトール(244mg,0.4mmol)及びDMAP(〜10mg)の撹拌溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(124mg,0.6mmol)を添加し、この混合物を室温で16時間撹拌した。得られた懸濁液を濾別し、濾液を真空下で濃縮し、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中5%エーテルで溶離)で精製すると、油状のエステル(300mg,55%収率)が得られた。
【0086】
フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF,THF中1.0M溶液)(2.27mL,2.27mmol)を無水THF(10mL)中の上記で得られたエステル(220mg,0.16mmol)の撹拌溶液に添加し、溶液を室温で3時間撹拌した。溶液を真空中で濃縮し、残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc中10%MeOHで溶離)で精製すると、非常に粘ちょうな油状の5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-D-リビトール(40mg,45%収率)が得られた。1H-NMR(300MHz,CD3OD):δ1.29-2.10(m,18H),2.32(t,2H,J=7.5Hz),3.60-4.38(m,9H),4.96(t,1H,J=6.3Hz),7.21(s,1H),7.22-7.32(m,2H),7.69-7.80(m,2H);13C-NMR(75MHz,CD3OD):δ24.79,27.79,28.20,28.74,28.98,29.51,33.85,36.92,42.79,49.92,51.06,63.32,65.82,70.29,70.92,72.46,72.97,77.33,119.87,122.13,123.18,123.81,124.02,139.49,139.97,150.45,174.66。
実施例8
【0087】
4-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-L-トレイトール(式VII)の製造、スキームVIを参照。
【化11】

【0088】
無水DMF(20mL)中の2,3-O-イソプロピリデン-L-トレイトール(4.4g,27.2mmol)の溶液を、無水DMF(30mL)中の60%NaHの撹拌溶液(−15℃)(1.09g,27.2mmol)に滴下添加し、この混合物を同じ温度で30分間撹拌した。臭化ベンジル(3.25mL,27.2mmol)を滴下添加し、混合物全体を−10〜−5℃で2時間撹拌した。反応物は、氷冷H2O(100mL)を添加してクエンチし、得られた混合物をエーテル抽出(3×100mL)した。このエーテル性抽出物をH2O(2×60mL)と塩水(60mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させると粗な生成物が得られ、これをシリカゲルのクロマトグラフィー(ヘキサン中25〜33%EtOAcで溶離)で精製すると、油状の4-ベンジルオキシ-2,3-O-イソプロイリデン-L-トレイトール(3.9g,57%収率)が得られた。
【0089】
無水アセトニトリル(40mL)中の4ベンジルオキシ-2,3-O-イソプロイリデン-L-トレイトール(3.52g,14mmol)の撹拌溶液に、CuCl2.2H2O(4.8g,28mmol)を室温で添加した。室温で3時間撹拌したあと、この反応混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、懸濁液をセライトパッドを通して濾過した。濾液を真空中で蒸発乾涸させ、粗な生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAcで溶離)で精製すると、緑色の油状の4-ベンジルオキシ-L-トレイトール(3.5g)が得られた(多少、銅塩を含んでいた)。
【0090】
2,6-ルチジン(7.0mL,60mmol)を無水DCM(100mL)中の純粋でない4-ベンジルオキシ-L-トレイトール(3.5g)の氷冷撹拌溶液に滴下添加し、tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBDMSOTf)(11.5mL,50mmol)を同じ温度で滴下添加した。この混合物を0℃で1時間撹拌し、ついで放置して室温にあたため、さらに14時間撹拌し続けた。反応混合物をEtOAc(200mL)で希釈し、1N HCl溶液(3×60mL)、H2O(100mL)及び塩水(100mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させると、粗な生成物が得られ、これをシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中5%エーテルで溶離)で精製すると、無色油状の4-ベンジルオキシ-1,2,3-トリ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-L-トレイトールが得られた(6.0g,77%収率、4-ベンジルオキシ-2,3-O-イソプロイリデン-L-トレイトールをベースとして)。
【0091】
EtOAc(70mL)に溶解した4-ベンジルオキシ-1,2,3-トリ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-L-トレイトール(5.9g,10.6mmol)を、TPCプレートで出発物質が検出されなくなるまで(約5時間)、10%Pd/C(1g)の存在下、水素化(H2容器として風船)した。触媒をセライトパッドを通して濾別除去し、固体をEtOAcですすいだ。濾液を蒸発乾涸させ、残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中10%エーテルで溶離)で精製すると、l,2,3-トリ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-L-トレイトール(2.1g,41%収率)が得られた。
【0092】
無水DCM(15mL)中の(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロスタン酸(305mg,0.4mmol)、1,2,3-トリ(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-L-トレイトール(232mg,0.5mmol)とDMAP(〜10mg)の撹拌溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(165mg,0.8mmol)を添加し、混合物を室温で12時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾液を真空中で濃縮し、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中5%エーテルで溶離)で精製すると、油状のエステル(236mg,49%収率)が得られた。
【0093】
フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF,THF中1.0M溶液)(2.28mL,2.28mmol)を、無水THF(10mL)中の上記で得られたエステル(230mg,0.19mmol)の撹拌溶液に添加し、この溶液を室温で3時間撹拌した。溶液を真空中で濃縮し、残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc中10%MeOHで溶離)で精製すると、非常に粘ちょうな油状の4-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-L-トレイトール(60mg,60%収率)が得られた。1H-NMR(300MHz,CD3OD):δ1.22-2.10(m,18H),2.31(t,2H,J=7.2Hz),3.50-4.16(m,8H),4.96(t,1H,J=6.6Hz),7.21(s,1H),7.22-7.32(m,2H),7.69-7.80(m,2H);13C-NMR(75MHz,CD3OD):δ24.81,27.80,28.20,28.75,28.98,29.51,33.84,36.93,42.79,49.92,51.07,62.92,65.52,69.24,70.31,71.81,72.45,77.35,119.89,122.15,123.20,123.83,124.04,139.50,139.98,150.46,174.41。
実施例9
【0094】
5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(式VIII)の製造、スキームVを参照。
【化12】

【0095】
塩化亜鉛(13.6g,100mmol)を無水アセトン(110mL)と室温で15分間撹拌し、キシリトール(7.6g,50mmol)を添加した。室温で24時間撹拌したあと、反応溶液を5N NaOH溶液(180mL)で処理すると、上相に白色沈殿を含む二相溶液が得られた。この混合物を濾過し、濾液をクロロホルムで抽出した(4×100mL)。混合した抽出物を塩水(2×60mL)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させると、粗な生成物が得られた(12g)。粗な生成物の一部(〜3g)をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中20〜25%EtOAcで溶離)で精製すると、粘ちょうな油状の1,2:3,4-ジ-O-イソプロイリデンキシリトール(1.6g)が得られ、これは貯蔵時に結晶化した。
【0096】
無水DCM(60mL)中の4-(2-フェニルアクリロイル)桂皮酸(1.11g,4mmol)、1,2:3,4-ジ-O-イソプロイリデンキシリトール(0.93g,4mmol)とDMAP(0.05,0.4mmol)の撹拌溶液に、N.N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.24g,6mmol)を添加し、この混合物を室温で4時間撹拌した。得られた黄色の懸濁液を濾過し、濾液を真空中で濃縮し、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中25%EtOAcで溶離)で精製すると、エステルが得られた(1.5g,76%収率)。
【0097】
無水アセトニトリル(20mL)中の上記で得られたエステル(0.84g,1.7mmol)の撹拌溶液に、CuCl2.2H2O(1.16g,6.8mmol)を室温で添加した。室温で7時間撹拌したあと、反応混合物をEtOAc(200mL)で希釈し、塩水(3×50mL)で洗浄し、乾燥した。この溶液を蒸発乾涸させ、粗な生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc中5%MeOHで溶離)で精製すると、薄黄色軟質固体状態の5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(0.4g,57%収率)が得られた。1H-NMR(300MHz,CD3OD):δ3.60−4.33(m,7H),5.63(s,1H),6.12(s,1H),6.65(d,1H,J=16.2Hz),7.31−7.40(m,5H),7.68(d,2H,J=8.4Hz),7.73(d,1H,J=16.2Hz),7.89(d,2H,J=8.4Hz);13C-NMR(75MHz,CD3OD):δ63.00,66.08,70.27,70.92,72.52,120.54,120.90,126.95,128.13,128.44,128.57,130.33,137.10,138.22,139.19,143.51,148.64,166.84,197.41;MS(FAB+):m/z413(M+1)。
実施例10
【0098】
1-O-D-ソルビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(式IX)の製造、スキームVIを参照。
【化13】

【0099】
D-グルコノ-1,5-ラクトン(17.8g,100mmol)、無水2,2-ジメトキシプロパン(30mL)、無水アセトン(10mL)、無水MeOH(3mL)とPTSA(0.2g)の混合物を室温で48時間撹拌した。この反応物を飽和NaHCO3(100mL)を添加してクエンチした。得られた混合物をEtOAc(3×100mL)で抽出し、塩水(2×50mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させると、粗な生成物(26g)が得られ、これをシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中20〜25%EtOAcで溶離)で精製すると、3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-グルコン酸メチルエステル(18g,62%収率)が得られた。
【0100】
無水THF(30mL)中の3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-グルコン酸メチルエステル(8.0g,27.5mmol)の撹拌溶液に、ゆっくりと室温で1M LiAlH4 THF溶液(36.3mL,36.3mmol)を室温で添加し、混合物を75℃で15時間加熱した。0℃に冷却した後、混合物を飽和酒石酸カリウムナトリウム溶液(5mL)で処理した。得られた懸濁液を塩水(100mL)とEtOAc(200mL)で希釈した。有機層を蒸発させ、水性相をEtOAc(2×100mL)で抽出した。混合した有機層を塩水(60mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。溶媒を真空中で蒸発させ、粗な生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、30〜70%EtOAc)で精製すると、3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-ソルビトール(6.2g,86%収率)が得られた。
【0101】
無水DCM(20mL)中4-(2-フェニルアクリロイル)桂皮酸(278mg,1mmol)、3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-ソルビトール(262mg,1mmol)とDMAP(〜10mg)の氷冷撹拌溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(185mg,0.9mmol)を添加し、混合物を同じ温度で3時間撹拌した。得られた黄色懸濁液を濾過し、濾液を真空中で濃縮し、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中、25%EtOAcで溶離)すると、エステル(320mg,61%収率)が得られた。
【0102】
無水アセトニトリル(10mL)中の上記で得られたエステル(310mg,0.6mmol)の撹拌溶液に、CuCl2.2H2O(511mg,3mmol)を室温で添加した。室温で7時間撹拌したあと、反応混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、塩水(2×50mL)で洗浄し、乾燥した。溶液を真空中で蒸発乾涸させ、粗な生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc中5%MeOH)で精製すると、白色固体の1-O-D-ソルビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(160mg,60%収率)が得られた。1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):δ3.45-4.50(m,8H),5.62(s,1H),6.20(s,1H),6.73(d,1H,J=15.9Hz),7.30-7.40(m,7H),7.70(d,1H,J=16.2Hz),7.84(m,2H);MS(FAB+):m/z 443(M+1)。
実施例11
【0103】
1-O-D-アラビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(式X)の製造,スキームVIIを参照。
【化14】

【0104】
D-グルコノ-1,5-ラクトン(17.8g,100mmol)、無水2,2-ジメトキシプロパン(30mL)、無水アセトン(10mL)、無水MeOH(3mL)とPTSA(0.2g)の混合物を室温で48時間撹拌した。反応物は、飽和NaHCO3(100mL)を添加してクエンチした。得られた混合物をEtOAc(3×100mL)で抽出し、塩水(2×50mL)で洗浄し、乾燥した(無水Na2SO4)。溶媒をロータリーエバポレーターで除去すると、粗な生成物(26g)が得られ、これをシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中20〜25%EtOAcで溶離)で精製すると、3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-グルコン酸メチルエステル(18g,62%収率)が得られた。
【0105】
無水THF(30mL)中の3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-グルコン酸メチルエステル(8.0g,27.5mmol)の撹拌溶液に、室温で1M LiAlH4 THF溶液(36.3mL,36.3mmol)をゆっくりと添加し、混合物を75℃で15時間加熱した。0℃に冷却した後、反応混合物を飽和酒石酸カリウムナトリウム溶液(5mL)で処理した。得られた懸濁液を塩水(100mL)とEtOAc(200mL)で希釈した。有機層を分離し、水性層をEtOAc(2×100mL)で抽出した。混合した有機層を塩水(60mL)で洗浄し、乾燥(無水Na2SO4)した。溶媒を真空中で蒸発させ、粗な生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中30〜70%EtOAcで溶離)で精製すると、3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-ソルビトールが得られた(6.2g,86%収率)。
【0106】
H2O(35mL)中の3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-ソルビトール(3.0g,11.4mmol)の撹拌溶液に、NaIO4(3.0g,14mmol)を室温で添加し、混合物を室温で4時間撹拌した。得られた無色溶液を固体NaCl(〜10g)を添加して飽和させ、ついでDCM(370mL)で抽出し、塩水(60mL)で洗浄し、乾燥した。真空中で溶媒を蒸発させると、粗なアルデヒドが得られた(2.2g)。
【0107】
粗なアルデヒド(2.2g)をMeOH(30mL)に溶解し、0℃に冷却した。NaBH4(0.3g,8.7mmol)を添加し、反応混合物を0℃で90分間撹拌した。塩水(80mL)を添加して反応物をクエンチし、DCM(2100mL)で抽出し、乾燥した。溶媒を真空中で蒸発させて、粗な生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中25%EtOAcで溶離)で精製すると、2,3:4,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-アラビトール(2.1g,79%収率、3,4:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-ソルビトールをベースとして)が得られた。
【0108】
無水DCM(30mL)中の4-(2-フェニルアクリロイル)桂皮酸(556mg,2mmol)、2,3:4,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-アラビトール(464mg,2mmol)とDMAP(〜25mg)の撹拌溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(618mg,3mmol)を添加し、混合物を室温で4時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾液を真空中で濃縮し、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中25%EtOAcで溶離)で精製するとエステルが得られた(780mg,79%収率)。
【0109】
無水アセトニトリル(20mL)中の上記で得られたエステル(720mg,1.46mmol)の撹拌溶液に、CuCl2.2H2O(1.0g,5.9mmol)を室温で添加した。室温で10時間撹拌したあと、反応混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、懸濁液を吸引濾過した。固体をH2O(50mL)と塩水(2×50mL)で洗浄し、風乾した。白色固体1-O-D-アラビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(500mg,83%収率)を集めた。1H-NMR(300MHz,DMSO-d6):δ3.40-4.40(m,7H),5.62(s,1H),6.19(s,1H),6.74(d,1H,J=15.9Hz),7.30-7.44(m,7H),7.69(d,1H,J=16.2Hz),7.83(m,2H);13C-NMR(75MHz,DMSO-d6):δ64.22,67.02,68.02,71.35,71.68,121.68,127.53,129.24,129.40,130.68,137.17,138.23,139.30,143.60,147.84,166.60,197.03;MS(FAB+):m/z 413(M+1)。
実施例12
【0110】
1-O-グリセロール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート(式XI)の製造、スキームVIIIを参照。
【化15】

【0111】
エタクリン酸(0.5g,1.65mmol)をベンゼン(3.0mL)と塩化チオニル(0.25mL,2当量)に懸濁させ、還流下1.5時間加熱した。反応物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をジエチルエーテル(5mL)に溶解し、ジエチルエーテル(3.0mL)中のグリセロール(2mL)の還流懸濁液に添加した。反応物を還流下で3時間撹拌した。室温に冷却したあと、反応溶液を真空中で濃縮した。残渣をDCM(50mL)に溶解し、水、飽和NaHCO3で洗浄した。有機相を無水MgSO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗な生成物をカラムクロマトグラフィー(15:1 EtOAc/MeOHで溶離)で精製すると、1-O-グリセロール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)-フェノキシアセテートが得られた。IR:3400,2967,2937,1758,1664,1585,1202cm-11H-NMR(CDCl3,300MHz):δ1.06(t,2H),2.39(q,2H),3.98-3.38(m,6H),4.20(d,2H),4.77(s,2H),5.56(s,1H),5.91(s,1H),6.78(d,1H),7.1(d,1H);MS(FAB+):m/z377.27(M+H+)。
実施例13
【0112】
1-O-エリトリトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート(式XII)の製造、スキームIXを参照。
【化16】

【0113】
エタクリン酸(0.46g,1.53mmol)をベンゼン(3.0mL)と塩化チオニル(0.23mL,2当量)に懸濁させ、還流下1.5時間加熱した。反応物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。得られた油状物をDMF(1.0mL)に溶解し、DMF(3.0mL)中のエリトリトール(0.44g,2当量)の懸濁液を滴下添加した。反応物を80℃に1.5時間加熱し、ついで減圧下で蒸発させた。粗な生成物をカラムクロマトグラフィー(15:1 EtOAc/MeOHで溶離)で精製すると、透明油状の1-O-エリトリトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート(0.23g)が得られ、これはゆっくりと半固体を形成した。IR:3400,2967,1759,1666,1585,1203cm-11H-NMR(CDCl3,300MHz):δ1.10(t,3H),2.40(q,2H),3.70(m,3H),4.2-3.8(m,2H),4.40(m,2H),4.84,(s,2H),5.60(s,1H),5.98(s,1H),6.95(d,1H),7.16(d,1H);13CNMR(CDCl3,75MHz):δ12.3,14.2,21.0,23.3,60.4,66.8,70.8,72.1,72.5,111.1,122.9,127.0,129.5,131.1,133.6,149.9,155.3,168.8,196.4;MS(FAB+):m/z407(M+H+)。
実施例14
【0114】
1-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート(式XIII)の製造、スキームXを参照。
【化17】

【0115】
エタクリン酸(0.46g,1.53mmol)をベンゼン(3.0mL)と塩化チオニル(0.23mL,2当量)に懸濁させ、1.5時間、還流下加熱した。反応物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。得られた油状物をDMF(3.0mL)に溶解し、リビトール(0.53g,2当量)を添加した。反応物を室温に放置して一晩撹拌し、ついで減圧下で濃縮した。粗な生成物をカラムクロマトグラフィー(15:1 EtOAc/MeOHで溶離)で精製すると、1-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテートが得られた。IR:3400,2933,2940,1755,1669,1585,1204cm-11H-NMR(CDCl3,300MHz):δ1.10(t,3H),2.40(q,2H),3.70(m,3H),4.2-3.8(m,3H),4.40(m,2H),4.84,(s,2H),5.60(s,1H),5.98(s,1H),6.95(d,1H),7.16(d,1H);MS(FAB+):m/z437(M+H+)。
実施例15
【0116】
緑内障の処置における化合物の有用性について研究するために、血圧の正常なウサギに投与後に眼圧(IOP)におけるその効果を調査した。
点眼薬配合物の製造:
【0117】
5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート:ラノリンベース中、10%と15%。
【0118】
5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート:溶液中、システインと等モル混合した0.3%と0.6%。
【0119】
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール:溶液中0.004%。
【0120】
1-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデカン:溶液中、0.004%と0.02%。
【0121】
11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート:溶液中、システインと当モル混合した0.3%と0.6%。
動物プロトコル:
【0122】
点眼薬はオスDutch-beltedウサギ(3〜5kg)に局所投与した。IOP測定は、ピューマトノメーター(pneumatonometer)(Medtronic Solan,Jacksonville,FL)でそれぞれの時間点においてひとつの目で三回測定した平均として実施した。IOP測定と薬剤投与の前に、塩酸プロパラカイン0.5%(Bausch and Lomb,Inc,Tampa,FL)で局所麻酔した。
化合物は以下のプロトコルに従って投与した:
【0123】
5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート:化合物を含む点眼薬を3日間、1日に1回投与した。反対の目にはラノリンベース(lanolin base)を投与した。7日間、朝と夜にIOPを評価した。
【0124】
5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート:化合物を含む点眼薬を7日間、1日に2回投与した。反対の目は、対照とするために未処理のままにしておいた。薬剤投与と同時にIOPを評価した。
【0125】
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール:化合物を含む点眼薬を7日間、1日1回投与した。8日目と9日目には薬剤を投与しなかった。ついで10日から14日には1日1回動物を処理した。薬剤投与と同時にIOPを評価した。
【0126】
1-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデカン:薬剤を含む点眼薬を5日間、1日1回投与した。反対の目は対照とするために未処理のままにしておいた。薬剤投与と同時にIOPを評価した。
【0127】
11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート:化合物を含む薬剤は7日間、1日2回投与した。反対の目は対照とするために未処理のままにしておいた。薬剤投与と同時にIOPを評価した。
結果:
【0128】
5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート(図6):
最大低下(10%):−4.3(18%)、36時間(対照に対して−1.5)。
最大低下(15%):−3.0(13%)、60時間(対照に対して−0.3)。
【0129】
5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(図7):
未処理対照からの最大低下(0.3%):−2.4(11%)mmHg。
未処理対照からの最大低下(0.6%):−2.4(13%)mmHg。
【0130】
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール(図8):
2、3、5、11及び12日目でベースラインから顕著に低下した。3、5及び11日でベースライン及び未処理対照から顕著に低下した。
【0131】
1-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデカン(図9):
未処理対照からの最大低下(0.004%):−2.8(12%)mmHg。
未処理対照からの最大低下(0.02%):−3.0(17%)mmHg。
【0132】
11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(図10):
未処理対照からの最大低下(0.3%):−1.7(8%)mmHg。
未処理対照からの最大低下(0.6%):−1.9(8%)mmHg。
実施例16
【0133】
チクリナフェンの2-トレイトールエステルの製造
【0134】
ジアセトンリビトールの代わりに1,4-ビス-TBDMS-トレイトールを置き換えて、酸クロリドとアルコールの比を1:1に限定した以外には、チクリナフェンの酸クロリド(スキームIに図示)と実質的に実施例1と同一条件を使用すると、酸と二級アルコールとのカップリングは効果がある。粗な物質は、実施例1と同様に単離、精製し、さらにTBAFで処理して、実施例IVの除去方法によって1級アルコールを保護しているシリル基を除去した。そのような操作は当業者には公知である。精製後、再び実施例1にしたがって2-O-チクリナフィルトレイトール(ticrynafyl threitol)を単離する。
実施例17
【0135】
チクリナフェンの1-(2-デオキシトレイトール)エステルの製造
【0136】
ジアセトンリビトールの代わりにたとえばエポキシ化開環(epoxidation ring opening)により1-ブテン-4-オールから容易に製造される2-デオキシ-3,4-ビスシリルトレイトール(1,3,4ブタントリオール)を置き換えた以外には、チクリナフェンの酸クロリド(スキームIに図示)と実施例1と実質的に同一条件を使用すると、酸とデオキシアルコールとのカップリングは効果がある。粗な物質を実施例1と同様に単離、精製し、さらにTBAFで処理して、実施例IVの除去方法によってほかの他のアルコールを保護しているシリル基を除去した。そのような操作は当業者には公知である。精製後、再び実施例1にしたがって1-O-チクリナフィル-1,3,4-トリヒドロキシブタンを単離別する。
実施例18
【0137】
チクリナフェンの1-(2-デオキシトレイトール)エステルの放出速度試験
【0138】
市販のカルボン酸-エステル加水分解酵素(CAS#9016-18-6)を、本明細書中、参照として含まれるC.Tamm Pure Appl.Chem.64巻,1187ページ(1992年)及びM.Ohno,M.Otsuka,Org.React.37巻,1ページ(1989年)に記載のように懸濁液中で製造する。活性は、pH8.0及び25℃で1分あたり1マイクロモルのエチルブチラートを加水分解する酵素の量に相当する1Uの参照活性に対して標準化する。上記実施例8からのチクリナフェンの1-(2-デオキシトレイトール)エステルをメタノールに溶解し、撹拌溶液に滴下添加する。反応の進行は、参照標準として純粋なチクリナフェンを使用してTLCで追跡する。5分後、間隔を2倍にして、TLCでさらに変化が起きなくなるまで反応の進行を追跡する。相対速度を測定し、当該疾病に関する角膜浸透と加水分解が確実になるのに必要な速度と比較する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、チクリナフェン-リボトールエステルの5%配合で観察された圧力降下を示す図である。
【図2】図2は、チクリナフェン-リビトールエステルの10%配合で観察された圧力降下を示す図である。
【図3】図3は、チクリナフェン-リビトールエステルの15%配合で観察された圧力降下を示す図である。
【図4】図4は、チクリナフェン-リビトールエステル軟膏(10%w/w)で処置した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。矢印は、1日目、2日目及び3日目における軟膏の添加を示す。データは、平均±平均の標準誤差をあらわす。アスタリスク1個は、それぞれの目に関して時間0において測定した値と現在の値との有意差、p<0.05を示す。アスタリスク2個は、OS(未処理)目とOD(処理済み)目との有意差、p<0.05を示す。
【図5】図5は、AR101(式Vの化合物)で毎日処理(1滴)した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。矢印は、0日目と10日目の負荷量の添加(3滴)を示す。動物は8日目と9日目は未処理のままにした。データは、平均±平均の標準誤差をあらわす。アスタリスク1個は、それぞれの目に関して時間0において測定した値と現在の値との有意差、p<0.05を示す。アスタリスク2個は、OS(未処理)目とOD(処理済み)目との有意差、p<0.05を示す。
【図6】図6は、5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート(ラノリンベース中10%および15%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
【図7】図7は、5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(溶液中、システインと等モル混合した0.3%と0.6%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
【図8】図8は、5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール(溶液中0.004%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
【図9】図9は、1-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデカン(溶液中、0.004%および0.02%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。
【図10】図10は、11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート(溶液中、システインで等モル混合した0.3%及び0.6%)で処理した後のウサギにおける眼圧の測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖アルコールを持つ薬剤部分のカルボキシレート官能基のエステル化により誘導される化合物を含む組成物であって、前記薬剤部分は、フェノキシ酢酸、桂皮酸及びその混合物の少なくとも一つを含む、前記組成物。
【請求項2】
前記フェノキシ酢酸がチクリナフェン、エタクリン酸及びその混合物の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記糖アルコールが、トレイトール、エリトリトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、リキシトール、グルシトール、ガラクチトール、マンニトール、グリトール、アルチトール、アリトール、イジトールタリトール、2-デオキシリビトール、2-デオキシグルシトール、2-デオキシキシリトール、及びその混合物の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記糖アルコールが、トレイトール、エリトリトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、リキシトール、グルシトール、ガラクチトール、マンニトール、グリトール、アルチトール、アリトール、イジトール、タリトール、及びその混合物の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能なキャリヤとを含む、医薬組成物。
【請求項6】
前記キャリヤが、液体、ゲル、クリーム及び軟膏の少なくとも一つを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記キャリヤが生理食塩水を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記生理食塩水がpH4.5〜8.0に保持される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬的に許容可能な保存料、安定剤及び界面活性剤の少なくとも一つをさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物と眼科的に許容可能な医薬賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、前記化合物が構造:
(X-COO)-CH2(CHY)mCH2Y
{式中、(X-COO)はカルボキシル化薬剤部分であり;
YはH、OH及びORからなる群から独立して選択され;
Rは(CH2)nCH3であり;
mは1〜6であり、;
nは0〜6であり;
Xは芳香族基であるか、(CH2)PCH3であり、ここでpは1〜5である}と上記構造の任意の医薬的に許容可能な塩を有する、前記組成物。
【請求項12】
mが1〜4である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
nが0〜4である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能なキャリヤとを含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項11に記載の化合物と眼科的に許容可能な医薬賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項16】
前記化合物が、構造:
【化1】

{式中、(X-COO)は薬剤部分であり;
Yはそれぞれ独立してH、OH、またはORであり;
Rはアルキル基であり;
m及びnはそれぞれ独立して0〜6であり;
m+nの合計は9未満である}を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能なキャリヤとを含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項16に記載の化合物と眼科的に許容可能な医薬賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物が構造:
(X-COO)-SA
{式中、(X-COO)は薬剤部分であり;及び
SAは、一級、二級または三級ヒドロキシルに結合した糖アルコールであり、前記糖アルコールは、3個以上9個未満の炭素を含み、且つヒドロキシル基対炭素の1:1未満の比を有し、しかし少なくともひとつの遊離ヒドロキシルを含み、ここで任意の欠落しているヒドロキシル基は独立して以下の塩素原子、アミン基、アミド基(amido group)、アミド基、フッ素原子、水素原子、ニトリル基、アリールオキシ基により置き換えられ、任意の欠落している水素基はアルキル基により置き換えられる}を有する、前記化合物。
【請求項20】
請求項19に記載の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能なキャリヤとを含む医薬組成物。
【請求項21】
請求項19に記載の化合物と眼科的に許容可能な医薬賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項22】
その薬剤部分のカルボキシレート官能基のエステルから誘導した化合物を含む組成物であって、但し、前記薬剤部分はプロスタグランジンではない、前記組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の化合物と、眼科的に許容可能な医薬腑形剤とを含む医薬組成物。
【請求項24】
5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート;
5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール;
11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}キシリトール;
5-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-D-リビトール;
4-O-{(9α,11α,15R)-15-[2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル]-16,17,18,19,20-ペンタノール-5,6,13,14-テトラヒドロ-9,11,15-トリヒドロキシプロスタノイル}-L-トレイトール;
5-O-キシリトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
1-O-D-ソルビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
1-O-D-アラビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;
1-O-グリセロール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート;
1-O-エリトリトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート;
1-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテート;
5-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(チオフェン-2-カルボニル)]フェノキシアセテート;
2-O-D-ソルビトール4-(2-フェニルアクリロイル)シンナメート;及び
2-O-リビトール[2,3-ジクロロ-4-(2-メチレンブチリル)]フェノキシアセテートからなる群から選択される化合物。
【請求項25】
眼科疾患の処置方法であって、前記方法は、薬剤のカルボキシレート官能基の糖アルコールとのエステル化により誘導体形成した化合物の安全且つ有効量をヒトまたは他の動物に投与することを含み、前記薬剤部分は、フェノキシ酢酸、桂皮酸、及びその混合物の少なくともひとつを含む、前記方法。
【請求項26】
前記フェノキシ酢酸が、チクリナフェン、エタクリン酸、及びその混合物の少なくともひとつを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記糖アルコールが、トレイトール、エリトリトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、リキシトール、グルシトール、ガラクチトール、マンニトール、グリトール、アルチトール、アリトール、イジトール、タリトール、2-デオキシリビトール、2-デオキシグルシトール、2-デオキシシリトール、及びその混合物の少なくともひとつを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記糖アルコールが、トレイトール、エリトリトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、リキシトール、グルシトール、ガラクチトール、マンニトール、グリトール、アルチトール、アリトール、イジトールタリトール、及びその混合物の少なくともひとつを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
前記化合物が構造:
(X-COO)-CH2(CHY)mCH2Y
{式中、(X-COO)はカルボキシル化薬剤部分であり;
Yは独立してH、OH、及びORからなる群から選択され;
Rは(CH2)nCH3であり;
mは1〜6であり;
nは0〜6であり;
Xは芳香族基または(CH2)PCH3(式中、pは1〜5である)である}及び上記構造の任意の医薬的に許容可能な塩を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
mが1〜4である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
nが0〜4である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が構造:
【化2】

{式中、(X-COO)は薬剤部分であり;
Yはそれぞれ独立してH、OH、またはORであり;
Rはアルキル基であり;
m及びnはそれぞれ独立して0〜6であり;
m+nの合計は9未満である}を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
請求項25に記載の方法であって、前記化合物が構造:
(X-COO)-SA
{式中、(X-COO)は薬剤部分であり;及び
SAは、一級、二級または三級ヒドロキシルに結合した糖アルコールであり、前記糖アルコールは、3個以上9個未満の炭素を含み、且つヒドロキシル基対炭素の1:1未満の比を有し、しかし少なくともひとつの遊離ヒドロキシルを含み、ここで任意の欠落しているヒドロキシル基は独立して以下の塩素原子、アミン基、アミド基(amido group)、アミド基、フッ素原子、水素原子、ニトリル基、アリールオキシ基により置き換えられ、任意の欠落している水素基はアルキル基により置き換えられる}を有する、前記方法。
【請求項34】
前記眼科疾患が高い眼圧に由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記眼科疾患が緑内障を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記眼科疾患が黄斑変性を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物を経口投与する、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物を局所投与する、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物は、角膜及び房水で満たされた隣接する前房を含む哺乳類の目に局所適用する;
前記化合物は角膜に浸透し、そこでエステラーゼがこの化合物を遊離酸を含む活性薬剤に転換させる;及び
前記活性薬剤は、角膜から房水に放出されるのに十分に水溶性である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
眼科疾患を処置するための化合物の持続性を測定する方法であって、前記方法は、
薬剤部分のカルボキシレート官能基の糖アルコールとのエステル形成から誘導体形成された化合物を提供する;
前記化合物が、目の中の状態を模倣した条件下でのアッセイで、そのカルボン酸を予定半減期で放出するかを測定する;および
この化合物が予定半減期でそのカルボン酸を放出する場合に、当該化合物を眼科疾患の処置のために選択する、各段階を含む、前記方法。
【請求項41】
前記エステラーゼが検出段階で使用される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記薬剤部分がフェノキシ酢酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記薬剤部分が桂皮酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記薬剤部分がプロスタグランジンを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記予定半減期が約1分を超え、約7日間未満である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記予定半減期が約5分を超え、約24時間未満である、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
請求項40の段階を含み、さらに前記化合物の安全且つ有効量をヒトまたは他の哺乳類に投与することを含む、眼科疾患の処置方法。
【請求項48】
薬剤部分のカルボキシレート官能基と糖アルコールとのエステル化により誘導体形成された化合物であって、前記薬剤部分はトラバプロスト(travaprost)、ラタノプロスト(latanoprost)及びビマトプロスト(bimatoprost)ならびにその混合物の少なくともひとつである、前記化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−517941(P2008−517941A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538152(P2007−538152)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/038287
【国際公開番号】WO2006/047466
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(500092491)デューク・ユニバーシティー (12)
【Fターム(参考)】