説明

石炭の流動層乾燥分級方法

【課題】コークス炉排ガスを利用して石炭を流動層にて乾燥分級する際に、コークス炉排ガスの温度、流量の低下の問題を緩和して、乾燥性能の低下を防止し、事前処理石炭の生産量の低下を防止することができると共に、流動層中の石炭の発火を防止する。
【解決手段】熱風発生炉に、コークス炉の排ガス、及び、流動層の排ガスを投入し、前記熱風発生炉内での燃料の空気燃焼により、前記両排ガスを加熱して熱風とし、当該熱風を前記流動層に導入して、前記コークス炉へ投入する石炭を、前記流動層で乾燥及び分級するための石炭の流動層乾燥分級方法であって、前記コークス炉の排ガスとして、燃焼切り替えのタイミングが異なる複数の半炉団からの排ガスの混合ガスを使用し、前記各半炉団の燃焼切り替えの際に、前記熱風中の酸素濃度が所定の濃度以下となるように制御して、前記流動層内の石炭の発火を防止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コークス炉に装入する石炭の流動層を用いた乾燥及び分級方法並びに装置に関するものであり、特に、流動層に投入する熱風としてコークス炉の燃焼排気ガスを利用した石炭の流動層による乾燥分級方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉法を用いた鉄鋼製造プロセスにおいて、その原料の1つとなるコークスを生産性高く、かつ、品質良好に製造することは重要である。そのため、コークスの原料となる石炭を、コークス炉に装入する前に、事前に乾燥及び分級して、水分を2〜4%程度まで低減して、コークス炉での負荷を下げるとともに、微粉と粗粒に分級し、分級された微粉を塊成機により塊成化して、石炭の飛散防止、生産性の向上、及び、強度向上が図られてきた。
【0003】
この石炭の乾燥と分級については、1装置で両方の機能を備える流動層乾燥分級装置(以下、流動層とも言う)を用いて行う方法が知られている。流動層乾燥分級装置に供給される石炭は、流動室において、流動層乾燥分級装置下部の風箱から、その上方に設置されている多孔の分散板を通して送られてくる300℃前後の熱風によって、流動化されながら乾燥される。
【0004】
乾燥された石炭は、乾燥後の排ガスとともに、流動室上部に設置された、流動室よりも拡幅されたフリーボード部に移動するが、ガス流速が低減されることにより、粗粒は、流動室に戻って、流動層乾燥分級装置出口より排出され、一方、微粉は、フリーボード部から出て行く排ガスに同伴されて、後段の集塵機で捕集される。
【0005】
このため、分級率(微粉として捕集される石炭量の供給石炭量に対する比率)は、乾燥程度と流動層フリーボード部の排ガス流速(送風熱風量)に依存する。
【0006】
したがって、流動層乾燥分級装置では、排ガス流速を支配する熱風温度及び熱風量を制御することが、乾燥性能及び分級性能を維持するために重要である。なお、乾燥効率向上や分級性能向上のため、流動室は、粗粒炭の移動方向(装置長手方向)に多段配置することが一般的である。
【0007】
なお、原料炭を、水分率2〜4%に乾燥し、微粉炭を分級する理由は、乾燥の進行による水分の低下及び嵩密度の向上によって、コークス炉における乾留時間短縮と炉内石炭の高充填による乾留エネルギーの低減及び生産性の向上が見込める一方、粒径0.3mm程度以下の微粉炭は、搬送中又はコークス炉への装入中、大気中に飛散して、環境問題を引き起こすからである。
【0008】
原料炭中の微粉は、水分が高いときは、付着力が強く、凝集して粗大粒子を形成しているものの、水分率を4%以下、より好ましくは2%程度まで乾燥すれば、原料炭中の微粉は、凝集しなくなり、ほぼ全量が分級可能となる。付着力の低下効果は、水分率2%でほぼ飽和するので、水分率2%未満まで乾燥しても、乾燥エネルギーが多くかかるだけである。原料炭を、水分率2〜4%になるように乾燥することが好ましい。
【0009】
原料炭は、流動化のため、事前に、粉砕機により、通常6mm以下程度に粉砕されることが多いが、この場合、0.3mmを分級点とすると、分級率は約30%となる。なお、分級後の粗粒炭中に多少の微粉炭が含まれていても(例えば、0.3mm以下の粒径を5質量%含有)、ほとんど微粉炭の飛散は問題にはならない。
【0010】
分級後の微粉炭は、後工程で塊成化されて、飛散防止及び嵩密度向上の措置がなされた後、粗粒炭と同様にコークス炉へ投入される。
【0011】
流動層での石炭乾燥のための熱風(例えば、300℃)の発生には、エネルギーを多く必要とするため、エネルギー低減のための方法が色々と考えられている。例えば、微粉集塵後の流動層排ガスを、熱風の一部として循環使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。
【0012】
この方法は、流動層の排ガスが、約100℃の温度の熱量を持っていることを利用したもので、流動層の排ガスを循環ガスとして熱風発生炉に供給し、別途供給される空気とともに燃料燃焼により昇温して、乾燥分級用の熱風として、再度、流動層に送風するものである。
【0013】
また、更に、熱風エネルギーを低減するため、流動層乾燥分級装置の熱風として、乾燥分級後の石炭の供給先であるコークス炉の燃焼室の排気ガス(以下、コークス炉排ガスとも称する)を用いる方法も知られている(例えば、特許文献2、参照)。この方法は、コークス炉排ガスが約200℃と、循環ガスよりも高温であるので、熱風発生炉における更なる燃料節約になると考えられる。
【0014】
しかしながら、コークス炉排ガスを用いて、コークス炉向けの石炭(原料炭)を、全量、乾燥及び分級するにあたり、水分を通常10〜12%含む原料炭を2〜4%まで乾燥し、かつ、流動層の流動性を確保しながら、微粉炭の分級能(例えば、0.3mm以下、分級率30%程度)を確保するためには、熱風量としては、乾燥分級後の石炭の供給先であるコークス炉の排ガス分だけでは不足するので、循環ガスを、コークス炉排気ガスと併用しなければならない。
【0015】
また、コークス炉排ガスを利用する場合、コークス炉の燃焼切り替えによって、コークス炉排ガスの流量、温度、及び、性状が、短時間であるが、周期的に変化する。
【0016】
以下に、コークス炉の燃焼切り替えについて説明する。図1は、コークス炉の燃焼切り替えの概要を示す図である。
【0017】
室炉式コークス炉においては、炭化室と燃焼室列が、約100mmの厚みの煉瓦を介して相対し、交互に配列されており、燃焼室で発生した熱を、煉瓦を通して炭化室内の石炭に伝熱する。
【0018】
図1では、説明のため簡略化して、炭化室1列とその両側の燃焼室2列室を図示しているが、実際のコークス炉は、通常、炭化室と燃焼室が、交互に、50〜120列程度設置されており、これらを合わせて1炉団とも称する。また、燃焼室は、1列が、通常、30前後の小室に分かれており、燃焼室の各小室の下部には、蓄熱室が配置されている。
【0019】
各小室は、2つのグループに分けられ、第一のグループの燃焼室・蓄熱室においては、蓄熱が完了して高温状態にあり、燃料ガス(例えば、高炉ガス(BFG)とコークス炉ガス(COG)との混合ガス)と空気は、蓄熱室で予熱され、その上部の燃焼室で燃焼し、次いで、燃焼した排気ガスは、第2のグループの燃焼室・蓄熱室に導入されて、燃焼室を通過して、その下部の蓄熱室で熱回収された後、煙道を経て排出される。
【0020】
第一のグループの蓄熱室の温度は、燃料ガス・空気の予熱により低下し、第二のグループの蓄熱室の温度は、排気ガスの蓄熱により上昇する。一定時間経過後に、第一のグループを蓄熱側に、第二のグループを予熱・燃焼側に、それぞれの役割を切り替える。
【0021】
この切り替えを、一定時間毎に行なうことにより、予熱操作と蓄熱操作を交互に行ない、蓄熱効率を高める操作を行う。
【0022】
以上のように、燃焼室の状態を、燃焼側(上昇流)と蓄熱側(下降流)とに交互に切り替える操作を、燃焼切り替えと呼んでいる。
【0023】
コークス炉1炉団は、石炭塔(コールビン)を境にして、2つの半炉団(例えば、半炉団Aと半炉団B)に分けられ、燃焼方向の切替えは、第一のグループの燃焼ガス系統と、第二のグループの燃焼ガス系統とを、それぞれ統合して、半炉団につき一括して行い、かつ、他の半炉団とは、切替時期をずらして行うのが一般的である。各半炉団での燃焼切り替えは、通常、15〜30分に1回の頻度で行われる。
【0024】
この燃焼切り替え時には、一方の系統の燃焼を、徐々に減少させて行き、完全に止めてから、もう一方の系統の燃焼を、徐々に増加させて行き、定常状態に持って行くので、燃焼排ガスの温度が低下し、更に、流量が減少してしまうという問題があった。
【0025】
この問題に対応するため、コークス炉の燃焼切り替え時には、コークス炉排ガスに替えて、流動層の排ガスを循環使用するという方法が提案されている(例えば、特許文献3、参照)。
【0026】
【特許文献1】実公平7−7311号公報
【特許文献2】特開2002−180066号公報
【特許文献3】特開2001−55582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、燃焼切り替え時に、コークス炉排ガスに替えて、流動層の排ガスを循環使用する方法においては、流動層排ガスの温度が、コークス炉排ガスに比べて、100℃程度も低いということから、石炭の乾燥性能が落ちてしまうという問題があり、その解決のためには、石炭の供給流量を、燃焼切り替え時の前後において減少させる必要が生じ、コークス炉へ供給する事前処理石炭の生産量の低下を招いていた。
【0028】
そこで、本発明者らは、コークス炉排ガスの利用を、半炉団毎に行うのではなく、燃焼切り替えタイミングの異なる複数の半炉団のコークス炉排ガスを混合して使用し、当該複数の半炉団に投入する石炭量分の石炭を、1つの流動層で処理することで、各半炉団毎の燃焼切替えの影響を緩和して、該複数の半炉団、又は、複数の炉団に供給する石炭量分を乾燥分級することができるのではないかと考えた。
【0029】
これにより、ある半炉団にて燃焼切り替えとなった時でも、他の半炉団は、通常操業中であるため、混合後の排ガスは、半炉団のみのコークス炉排ガスを使用する場合に比べて、その変動は小さくなる。
【0030】
但し、この場合、ある半炉団が燃焼切り替えしている間、その半炉団では、燃焼せずに、燃焼用の空気のみを投入する期間があるため(空気供給ブロアは停止できず、下限流量で運転を継続する必要があるため)、混合ガス中の酸素濃度が上昇する。例えば、通常運転時の3%程度から、切り替え時には6%程度以上まで上昇する。
【0031】
ところが、本発明者らの試験及び検討の結果、ある半炉団の燃焼切り替え時の混合ガスを、熱風として流動層に投入したところ、その熱風中のO2濃度が高くなり、所定濃度以上(熱風温度にもよるが、例えば、5体積%以上)まで高くなると、石炭が、投入直後で水分量を多く含むことに起因して、流動層前段に存在していると考えられる石炭の滞留凝集粒を、赤熱させ、遂には、発火させる恐れがあることが判明した。
【0032】
したがって、本発明は、コークス炉排ガスを利用して石炭を流動層にて乾燥分級する際に、コークス炉排ガスの温度、流量の低下の問題を緩和して、乾燥性能の低下を防止し、事前処理石炭の生産量の低下を防止することができるとともに、流動層中の石炭の発火を防止することができる、石炭の流動層による乾燥分級方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、鋭意検討の結果、(ア)流動層へ投入する熱風へのコークス炉排ガスの利用を半炉団毎に行うのではなく、燃焼切り替えタイミングの異なる複数の半炉団のコークス炉排ガスを混合して使用し、(イ)複数の半炉団に投入する石炭量分の石炭を、複数の半炉団からのコークス炉排ガスを用いて流動層で処理し、熱風の流量として足りない分は、流動層の排ガスの一部を循環使用することで補い、各半炉団毎の燃焼切り替え時にも、この混合ガスを使用して、燃焼切り替えの影響を緩和し、(ウ)更に、燃焼切り替え時に、コークス炉排ガスの酸素濃度上昇を抑制する対策を取ることで、コークス炉排ガスの顕熱を有効的に利用し、効率的かつ安定的に、複数の半炉団に供給する石炭量分を、乾燥分級することができることを見出して、本発明をするに至った。その要旨は、以下の通りである。
【0034】
(1)熱風発生炉に、コークス炉の排ガス、及び、流動層の排ガスを投入し、前記熱風発生炉内での燃料の空気燃焼により、前記両排ガスを加熱して熱風とし、当該熱風を前記流動層に導入して、前記コークス炉へ投入する石炭を、前記流動層で乾燥及び分級するための石炭の流動層乾燥分級方法であって、前記コークス炉の排ガスとして、燃焼切り替えのタイミングが異なる複数の半炉団からの排ガスの混合ガスを使用し、前記各半炉団の燃焼切り替えの際に、前記熱風中の酸素濃度が所定の濃度以下となるように制御して、前記流動層内の石炭の発火を防止することを特徴とする石炭の流動層乾燥分級方法。
【0035】
(2)前記各半炉団の燃焼切り替えの際に熱風を、所定の酸素濃度以下に制御する手段が、
(a)前記コークス炉の燃焼室での燃焼空気比を低減して前記コークス炉排ガスの混合ガス中の酸素濃度を低下すること、(b)前記熱風発生炉での燃焼空気の一部又は全部を前記コークス炉排ガスの混合ガス中の酸素で代替し燃焼用空気量を低減すること、(c)前記コークス炉排ガスの混合ガスを前記熱風発生炉への投入前に一部放散すること、及び、(d)前記燃焼切り替え中の半炉団からのコークス炉排ガスの一部を放散することの1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする前記(1)に記載の石炭の流動層乾燥分級方法。
【0036】
(3)前記複数の半炉団は、1炉団を構成する2つの半炉団で、かつ、該1炉団の1又は2以上から前記混合ガスを構成することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の石炭の乾燥分級方法。
【0037】
なお、半炉団のことを、単に炉団と呼ぶこともあるが、本発明においては、半炉団は半炉団と呼称し、石炭塔を挟んで隣り合う2つの半炉団を合わせたものを炉団とする。
【発明の効果】
【0038】
流動層の熱風として、コークス炉排ガスと流動層排ガスの両方を利用し、コークス炉排ガスには、燃焼切り替えタイミングの異なる複数の半炉団のコークス炉排ガスを混合した混合ガスを使用し、かつ、複数の半炉団に投入する石炭量分の石炭を、複数の半炉団からのコークス炉排ガスを用いて、流動層で処理し、熱風の流量として足りない分を、流動層の排ガスの一部を循環使用することで補い、コークス炉へ投入する石炭の乾燥と分級を効率的に行い、更に、コークス炉での燃焼切り替えが生じた際に、熱風の温度と流量が低下しないように制御するとともに、その際に、酸素濃度を所定の濃度以下となるように制御することで、各燃焼切替え時のコークス排ガスの温度及び流量の低下、及び、酸素濃度上昇の影響を緩和することができ、その結果、コークス炉の燃焼切り替えの際にも、石炭の乾燥分級能力を低下させずに、かつ、流動層内の石炭の赤熱及び発火を防止して、効率的にかつ安定的に、コークス炉へ投入する石炭を流動層で乾燥分級処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図2には、本発明を実施する装置構成の一例を示す。以下に、本装置構成例に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【0040】
図2では、2つの半炉団A及び半炉団B(以下、Aコークス炉1A、Bコークス炉1B)からなる1炉団から排出されるコークス炉排ガスを混合した混合ガスを、流動層へ利用する例を示している。図では、説明のし易さのために、Aコークス炉1AとBコークス炉1Bを離して記載しているが、実際には、1炉団において、半炉団Aと半炉団Bは、石炭塔(コールビン)を境にして隣り合っている。
【0041】
通常操業時は、Aコークス炉1Aの排ガスは、全部又は大部分(Aコークス炉排ガス放散配管12Aから一部放散される排ガスを除く大部分)が、Aコークス炉出排ガス配管11AからAコークス炉排ガス流動層向け配管14Aを経由して、配管11B、14Bを経由してくるBコークス炉1Bの排ガスと混合されて、両コークス炉排ガスの混合ガスが、コークス炉排ガス流動層向け配管15を通して、熱風発生炉4に導入される。
【0042】
このコークス炉排ガスである混合ガスは200℃程度あるため、この顕熱を有効利用することで、効率的に熱風を発生することができるが、Aコークス炉1A及びBコークス炉1Bの1炉団分の石炭量分を流動層で乾燥分級するために必要な熱風量としては、未だ少ないので、熱風発生炉4には、流動層5から排出される排ガスの一部(流動層循環ガス)も、流動層循環ガス配管16を経由して導入される。
【0043】
熱風発生炉4に導入された、これらの、コークス炉排ガスである混合ガスと流動層排ガスである流動層循環ガスは、燃料配管8から導入される燃料と、燃焼空気配管9から導入される空気との燃焼により発生する高温ガスの顕熱により、所定温度まで昇温されて、熱風として、流動層供給熱風ガス配管17を通じて、流動層5へ導入される。
【0044】
この際には、混合ガスの温度、及び、循環ガスの温度を、それぞれ、温度計21−1、及び、温度計21−2で測定し、混合ガスの流量、及び、循環ガスの流量を、それぞれ、流量計10−1、及び、流量計10−2で測定して、熱風発生炉4から発生する熱風が、所定の温度及び流量になるように、図示していない制御・演算装置にて、燃焼量及び空気量を制御する。
【0045】
このとき、発生した熱風の温度及び流量を、流動層供給熱風ガス配管17に設置した温度計21−3、及び、流量計10−3にて測定し、その値を、フィードバックし、熱風の温度及び流量を制御することがより好ましい。
【0046】
熱風は、流動層5の下部に備えた風箱51に吹き込まれ、多孔の分散板52を通して、流動室53へ投入される。流動室53では、投入された水分を含む石炭(石炭投入部は、図示せず)を、熱風により流動化しながら乾燥する。
【0047】
乾燥された石炭は、乾燥後の排ガスとともに、流動室上部に設置されている、流動室よりも拡幅されたフリーボード部54に移動するが、ガス流速が低減されることにより、粗粒は、流動室53に戻って流動層乾燥分級装置出口(図示せず)より排出され、一方、微粉は、フリーボード部54から出て行く排ガスに同伴されて、流動層出排ガス配管18を経由して、後段の集塵装置6で捕集される。このようにして、流動層に投入された石炭は、粗粒と微粉に分級される。
【0048】
なお、投入される石炭は、事前に粉砕されて、例えば、6mmアンダーの篩い下粉が、投入される。また、流動層への石炭投入量の制御、流動層の排出量の制御、及び、流動層の厚み制御は、通常採用される制御方法で行って構わない。
【0049】
集塵装置6を出た流動層排ガスは、その一部が、流動層循環ガスとして、流動層循環ガス配管16を通して、上述したように、熱風発生炉4に導入される。この循環される流動層循環ガス量は、熱風発生炉から流動層に供給される熱風量が所定の流量になるように、コークス炉排ガスの混合ガスで足りない分を補うようにして決められる。残りの流動層排ガスは、流動層放散ガス配管20、ブロアー7−3を経由し、流動層放散ガス煙突放散管13A、13Bを経由して、コークス炉煙突2A、2Bから放散される。
【0050】
なお、流動層放散ガス煙突放散配管13A、13B、及び、流動層放散ガスを放散する煙突は、コークス炉と別に設けてもよい。
【0051】
次に、燃焼切り替え時のコークス炉排ガスの状態変化について説明する。仮に、Aコークス炉を燃焼切り替えとした場合について説明する。
【0052】
先ず、燃焼切り替え時における空気とガスの供給と停止の操作を、弁開度の経過時間変化として、図3に示し、図3に基づいて説明する。
【0053】
ここでは、Aコークス炉の偶数番号の燃焼室(以下、偶数燃焼室とも称する)が燃焼側であった時点から燃焼切り替えする場合について説明する。
【0054】
先ずは、燃焼室への燃料供給弁を、所定時間かけて閉じて行き、燃料供給を停止する。次に、燃料供給弁全閉による停止と略同時に、同じ偶数燃焼室の空気弁を、所定時間かけて閉じて行くとともに、奇数番号の燃焼室(以下、奇数燃焼室とも称する)の空気弁を、所定時間かけて開いて行き、奇数燃焼室と偶数燃焼室へのトータルの空気供給量を、空気供給ブロアーの最低流量まで減じる(図中、弁開度50の点、参照)。
【0055】
最終的に、奇数燃焼室の空気弁が全開になった時点(偶数燃焼室の空気弁が全閉になった時点)で、同じ奇数燃焼室の燃料供給弁を開き始め、所定時間かけて開いて行く。
【0056】
上記の弁操作時におけるコークス炉の1炉全体としての、燃料量、空気量、及び、排ガス量の経過時間変化を、図4に示し、排ガス中のO2の経過時間変化を、図5に示す。なお、図中の横軸における時間0秒は、偶数燃焼室の燃料弁を閉じ始めた時点から、40秒前とした。
【0057】
偶数燃焼室燃焼から奇数燃焼室燃焼への燃焼切り替え時、偶数燃焼室側の燃料供給弁が閉じられて行く間(40〜59秒)、偶数燃焼室側の空気弁は閉じられず、空気供給量は一定量を保つため、生じる排ガス量は、徐々に減少するが、排ガス中のO2濃度は、徐々に高くなって行く。
【0058】
偶数燃焼室側の燃料供給弁が全閉されて燃料供給が止まった時点(59秒)で、遂には、偶数燃焼室側への空気のみの供給となるため、燃焼反応は停止して、O2濃度は21%に達する。その後、偶数燃焼室側の空気弁を閉じていくとともに、奇数燃焼室側の空気弁を開いていき(59秒〜)、両燃焼室側の空気弁の開度が略50%となって、空気供給ブロアーの許容最低空気量まで、空気量が減少する(67秒)。
【0059】
その後、奇数燃焼室側の空気弁が更に開いて、偶数燃焼室側の空気弁が更に閉じて行き、奇数燃焼室側の燃料供給弁が開くのを開始するまでの間(67〜75秒)、空気は増加し、遂に、所定の流量で一定となるが、O2濃度は、21%を保つ。その後、奇数燃焼室側の燃料供給弁が開かれて、燃焼反応が開始され、燃料供給量が、所定値になるまで増加する間(75〜94秒)、燃焼排気ガス量は増加し、排気ガス中のO2は、21%から3%程度に変化する。
【0060】
このように、半炉団であるAコークス炉単独では、燃焼切り替えの際に、排ガスの量や酸素濃度に、大幅な変化が生じてしまい、特に、酸素濃度が最大で21%にも上昇してしまうため、Aコークス炉単独の排ガスを、熱風発生炉に導入した場合、流動層循環ガスを一緒に導入したとしても、熱風発生炉から発生する熱風中の排ガスには、高い濃度の酸素が含まれてしまい、流動層中の石炭の滞留凝集粒を、赤熱させ、遂には、発火させてしまうこととなる。
【0061】
この滞留凝集粒は、石炭投入時の付着、及び、部分的な流動化の不良により発生し、完全になくすことは困難である。この滞留凝集粒がスムーズに排出されず、流動層端部に滞留した場合、熱風中の酸素濃度が高いと、滞留凝集粒が酸化され、次第に赤熱し、遂には、発火に至り、周りの微粉まで赤熱させる。赤熱した微粉は、集塵機に飛び、集塵機のバッグフィルターを焼損させる恐れがある。
【0062】
本発明者らは、石炭の滞留凝集粉の赤熱を発生させない熱風の限界酸素濃度は、熱風温度と密接な関係があることを見出した。
【0063】
本発明においては、燃焼切り替え中のAコークス炉排ガスに加えて、通常操業中のBコークス炉排ガスを混合し、その混合ガスを、熱風発生炉に導入することで、酸素濃度上昇の影響や、排ガス流量低下の影響を緩和する。更に、Aコークス炉排ガスの流量低下分を補うように、流動層循環ガスの量を増加することで、流動化に必要な熱風流量を確保する。
【0064】
しかし、本発明者らの検討の結果、それだけでは、熱風中の酸素ガス濃度は、流動層中の石炭の滞留凝集粒の赤熱及び発火を防止することができる程度まで低下しないことが判ったので、本発明では、更に、酸素濃度を低下させる対策を講じている。
【0065】
その対策(酸素濃度低減手段)は、主として、以下の4つの方法である。
【0066】
(1)コークス炉の燃焼室での燃焼空気比を低減して、コークス炉排ガスの混合ガス中の酸素濃度を低下する方法。
(2)熱風発生炉での燃焼空気(実際に、燃焼で消費されるのは、燃焼空気中の酸素)の一部又は全部を、コークス炉排ガスの混合ガス中の酸素で代替し、燃焼用空気量を低減する方法。
【0067】
(3)コークス炉排ガスの混合ガスを、熱風発生炉への投入前に、一部放散する方法。
(4)燃焼切り替え中の半炉団からのコークス炉排ガスの一部を、放散する方法。
【0068】
ここで、(1)の方法は、Aコークス炉の燃焼切り替えの際に、通常運転中のBコークス炉の燃焼空気比を低減して、混合ガス中の酸素濃度を低下させる方法である。通常のコークス炉の操業では、安全面から、未燃のCOをできるだけ発生させないように、空気比(完全燃焼時の理論空気量を1としたときの実際の空気投入量比)1.2程度で操業しており、コークス炉排ガス中の酸素濃度が、3体積%程度存在する。
【0069】
この空気比を、例えば、1.0〜1.15に低減することで、コークス炉排ガス中の酸素濃度を、0〜2体積%程度に低下させることができ、その結果、熱風中の酸素濃度を低下させることができる。
【0070】
また、空気比を低減した際は、COの発生が増加するので、排ガスをそのまま煙突から放散する従来の対応では、異常燃焼が起きる等の安全性の問題があるが、本発明では、排ガスを熱風発生炉で燃焼するので、COはCO2となり、安全性も確保される。
【0071】
本方法の実施の際は、コークス炉側の制御系に、Aコークス炉の燃焼切り替えタイミングで、Bコークス炉での燃焼空気比を下げる制御を組み入れておけばよい。
【0072】
(2)の方法は、通常の熱風発生炉の運転においては、燃料に対し、燃焼用空気の空気比を一定として(例えば、1.2)、燃焼空気を投入して燃焼させているが、この燃焼空気の一部を、混合ガス中の酸素で代替することで、発生する熱風中の酸素濃度を低下させる方法である。
【0073】
本方法の実施の際は、図2に示す制御演算装置31に、両半炉団の燃焼切り替えタイミングを入力しておき、各半炉団での燃焼切り替えのタイミングで、熱風発生炉の燃焼空気量を所定値まで下げるように、燃焼空気量を下げる制御を組み入れておけばよい。
【0074】
その際は、混合ガスと循環ガスの流量、温度、及び、酸素濃度を、それぞれ、流量計10−1、10−2、温度計21−1、21−2、及び、酸素濃度計22−1、22−2で測定して、フィードフォワード制御をすればよい。
【0075】
また、燃焼用空気を、酸素濃度の低い(例えば3%)コークス炉排ガスで代替するので、燃焼を安定的に保つために、保炎板付バーナーを用いることが好ましい。
【0076】
(3)の方法は、Aコークス炉排ガス及びBコークス炉排ガスを混合した混合ガスの一部を、熱風発生炉に導入する前に放散して、発生する熱風中の酸素濃度を低下させる方法である。
【0077】
本方法の実施の際は、図2に示す制御演算装置31に、両半炉団の燃焼切り替えタイミングを入力しておき、各半炉団での燃焼切り替えのタイミングで、熱風発生炉出側の熱風中の酸素濃度を所定値まで下げるように、混合ガスを放散する制御を組み入れておけばよい。
【0078】
その際は、混合ガスと循環ガスの流量、温度、及び、酸素濃度を、それぞれ、流量計10−1、10−2、温度計21−1、21−2、及び、酸素濃度計22−1、22−2で測定して、フィードフォワード制御をすればよい。
【0079】
図2において、燃焼切り替えとなった際は、混合ガスの一部は、コークス炉排ガス流動層向け配管15の途中に設けた放散管(図示せず)から放散される。残りの混合ガスは、熱風発生炉4に送られる。
【0080】
(4)の方法は、燃焼切り替え中のAコークス炉排ガスの一部を、Bコークス炉排ガスと混合する前に、放散する方法である。
【0081】
本方法の実施の際は、図2に示す制御演算装置31に、両半炉団の燃焼切り替えタイミングを入力しておき、各半炉団での燃焼切り替えのタイミングで、熱風発生炉出側の熱風中の酸素濃度を所定値まで下げるように、燃焼切り替え中の半炉団の排ガスを放散する制御を組み入れておけばよい。
【0082】
その際は、混合ガスと循環ガスの流量、温度、及び、酸素濃度を、それぞれ、流量計10−1、10−2、温度計21−1、21−2、及び、酸素濃度計22−1、22−2で測定して、フィードフォワード制御をすればよい。
【0083】
図2において、Aコークス炉が燃焼切り替えとなった際は、Aコークス炉排ガスの一部は、Aコークス炉出排ガス配管11A、Aコークス炉排ガス放散管12A、Aコークス炉煙突2Aを通じ、放散される。残りのAコークス炉の排ガスは、燃焼切り替え時以外の時と同様に、コークス炉排ガス流動層向け配管14Aを通じ、Bコークス炉排ガスと集合され、熱風発生炉4に送られる。
【0084】
また、(1)〜(4)のいずれの方法においても、発生した熱風の流量、温度、及び、酸素濃度を、それぞれ、流量計10−3、温度計21−3、及び、酸素濃度計22−3で測定して、その値に応じて、制御量を変えるフィードバック制御を合わせて行うことが、精度向上の点から好ましい。
【0085】
次に、以下では、2つの半炉団(A及びB)からの混合ガスに限らないで、上記(1)〜(4)のそれぞれの方法の特徴について説明する。
【0086】
上記方法中、コークス炉排ガスの顕熱を最も有効に使えるのは、(1)及び(2)である。但し、(1)の方法では、コークス炉の燃焼空気比を下げることができる範囲は、1.0〜1.15程度であり、制御幅が小さいので、熱風中の酸素濃度を下げられる割合は、2〜3割程度(例えば、酸素濃度6.5%→5%:4つの半炉団から混合ガスを構成したときの一例)である。それ故、制御前の熱風中の酸素濃度が元々高い場合、(1)の方法単独だけでは、流動層中の石炭の滞留凝集粒の赤熱及び発火を防止するまでに至らない場合がある。
【0087】
なお、本方法では、混合ガスを構成する複数の半炉団の数が多くなるほど、燃焼切り替え時の混合ガス中の酸素濃度低下防止効果が高くなり、好ましい。
【0088】
また、(2)の方法も、燃焼空気の全てを、コークス排ガスの混合ガス中の酸素で代替したとしても(燃焼空気を0としても)、通常操業時における元々の燃焼空気量が、混合ガス量に比べて、それほど多くないため(幾つの半炉団から混合ガスを構成するかにもよるが、例えば、1炉団(2つの半炉団)分で混合ガスを構成する場合では、2割程度、2炉団(4つの半炉団)分で混合ガスを構成する場合では、1割程度である)、混合ガス中の酸素が燃焼する量も限られる。
【0089】
燃焼空気を全て混合ガス中の酸素で代替したとしても、熱風中の酸素濃度を下げられる割合は、2〜3割程度(例えば、酸素濃度6%→3%:2つの半炉団から混合ガスを構成したときの一例)であり、制御前の熱風中の酸素濃度が元々高い場合は、(2)の方法単独だけでは、流動層中の石炭の滞留凝集粒の赤熱及び発火を防止するまでには至らない場合がある。
【0090】
なお、本方法では、混合ガスを構成する複数の半炉団の数が少なくなるほど、燃焼切り替え時の混合ガス中の酸素濃度低下防止効果が高くなり、酸素濃度低下防止の面からは好ましい。
【0091】
(3)の方法は、コークス炉排ガスの混合ガスを、熱風発生炉への投入前に、一部放散するので、熱風流量が少なくなる分を、流動層の循環ガス量を増やして補う必要が生じ、コークス排ガスに比べて、排ガス顕熱の低いガスの量がより増えてしまい、コークス炉排ガスの比較的高温の顕熱を有効利用するという点では不利である。しかし、(3)の方法は、酸素濃度を低下させる範囲の自由度が高く、熱風中の酸素濃度を所定値まで低下させることが確実に可能である点で、有利である。
【0092】
(4)の方法は、(3)の方法で、コークス炉排ガス混合後の混合ガスの一部を放散していたことに替えて、混合前の切り替え中の半炉団からのコークス炉排ガスの一部を放散する方法であるので、放散ガス量に対する酸素放散の効率が、(3)の方法よりも高くなり、この点で好ましい方法である。但し、(1)や(2)の方法に比べると、コークス炉排ガスの比較的高温の顕熱を有効利用するという点では不利である。
【0093】
しかし、本方法では、混合ガスを構成する複数の半炉団の数が多くなるほど、混合ガス量に対する放散ガス量の割合が少なくて済むため、コークス炉排ガス顕熱の利用率が高まり、好ましい。
【0094】
上記(1)〜(4)の方法の実施に当たっては、混合ガスを構成する複数の半炉団の数や、通常操業時の混合ガス中の酸素濃度や、石炭の水分率等の原料条件や、石炭の赤熱及び発火を防止できる熱風中の酸素濃度値などにより、適切な方法を適宜選択すればよい。
【0095】
複数の半炉団数としては、コークス炉排ガスの有効利用の面からは、数が多いほど好ましいが、半炉団数が多くなると、排ガス配管等が煩雑になることや、炉団同士が離れていると配管が長くなり、配管コストが高くなることや、途中の放熱により顕熱が低下することなどの問題も生じるので、1炉団分(2つの半炉団)又は2炉団分(4つの半炉団)のコークス炉排ガスを混合して利用することが、通常は好ましい。
【0096】
また、(1)〜(4)の方法を単独で実施するだけでなく、複数の方法を組み合わせて行うことで、より効果的に、コークス炉排ガスの顕熱を利用することができる。
【0097】
例えば、(1)の方法と(2)の方法のそれぞれ単独だけでは、熱風中の酸素濃度を所定値以下にできなかった場合でも(例えば、酸素濃度の目標値5体積%に対して、対応前後で8→6体積%)、両者を組み合わせることで、目的とする所定値以下とすることが可能となる(例えば、8→4.5体積%)。
【0098】
また、(1)の方法と(2)の方法の組み合わせでは、コークス炉排ガスの全てを利用することが可能であるので、コークス炉排ガスの顕熱を、最も有効に活用することができる。この点で、複数の方法を組み合わせる方法は、より好ましい方法である。
【0099】
次に、熱風の温度及び酸素濃度を決定するための考え方を、図6に基づいて説明する。
【0100】
熱風温度の上限は、石炭の変性防止、及び、石炭からのタール等の流出による分散板の目詰まり防止の観点から決まり、350℃位であり、下限は、石炭を、所定の乾燥度まで乾燥するとの観点から、決まり、通常は250℃程度である。なお、できるだけ高温の方が、流動層設備容量の低減のために、好ましい。
【0101】
熱風中の酸素濃度の下限値は、熱風発生炉での燃焼性を確保するのに必要な空気量から決まる。燃焼空気比が低いと、その分、循環ガス量が増え、水分の相対割合が増えるため、熱風の露点が下がり、特に、低温熱風の時には、集塵機で結露を起こし、バッグフィルターの目詰まりが起きるので、熱風中の酸素濃度は、2体積%以上が好ましい。
【0102】
酸素濃度の上限は、流動層内における石炭の滞留凝集粒の赤熱と発火を防止して、安全性及び生産の安定性を確保する必要性から決まる。但し、上限値は、図に示すように、熱風温度が高温なほど低くなる(例えば、熱風温度が350℃の場合、上限酸素濃度は3%程度、250℃の場合、上限酸素濃度は7%程度である)。
【0103】
したがって、熱風温度は、250〜350℃の間で、且つ、石炭の滞留凝集粒の赤熱と発火を防止できる酸素濃度から決められる。その際、設備容量低減の面からは、350℃が好ましいが、石炭が発火し易い性状の場合や、コークス排ガスの燃焼切り替え時の酸素濃度が高い場合(例えば、8体積%以上)には、赤熱・発火防止において許容される熱風中の酸素濃度(所定の目標値)を上げるため、熱風温度を下げて操業する。
【0104】
次に、本発明の方法を実施するための手順の一例を、図7に基づいて説明する。
【0105】
(i)目標熱風温度と目標熱風量を、制御装置に入力する。これらは、石炭の乾燥仕様と分級仕様から決定される。
(ii)各炉の燃焼切り替え時刻、その時の想定排ガス量、及び、排ガス中の酸素濃度濃度を、制御装置に入力する。各炉の切り替えは、スケジュール化されている。
(iii)各炉の切り替え時のコークス炉排ガスの放散率(流動層向けに使用しないで放散する各炉の排ガス量の比率)を設定する。
【0106】
(iv)各炉の切り替え時の集合排ガス量、集合排ガス中の酸素濃度、及び、集合排ガスが熱風発生炉に到着する時刻を、制御演算装置で算出する。
(v)各炉切り替え時の循環ガス量を設定する。
(vi)切り替え時の熱風発生炉燃料量及び燃焼空気量を設定する。
(vii)熱風発生炉出側の熱風量、熱風温度、及び、熱風中の酸素濃度濃度を、制御演算装置で算出する。
【0107】
(viii)この算出結果が、(i)の目標値と一致しなければ、(v)の循環量の設定値を変更して、一致するまで繰り返す。
(ix)(vii)で算出した熱風発生炉出側の熱風中の酸素濃度濃度が5%以上なら、(iii)で設定した放散率を、大きな値に再設定して、(iv)以降を再度行う。5%以下になるまで繰り返す。
(x)上記で決定された放散率及び循環ガス量に基づいて、切り替えタイミングの時刻に、ダンパー制御を行い、目標の熱風量、温度、及び、酸素濃度を得る。
【実施例】
【0108】
(2つの半炉団のコークス炉排ガスを利用した実施例A)
図2に示すように、2つの半炉団(1炉団)からのコークス炉排ガス全量を用いた際の実施例を以下に示す。
【0109】
前提条件は、以下の通りである。
【0110】
コークス炉排ガス条件:混合ガス流量通常操業時132,000Nm3/h、
混合ガス流量燃焼切り替え時100,000Nm3/h
混合ガス酸素濃度通常操業時3.1体積%
混合ガス酸素濃度燃焼切り替え時12.8体積%(酸素濃度低 減手段実行前)、
混合ガス温度通常操業時220℃、
混合ガス温度燃焼切り替え時210℃
燃焼空気比1.23(1炉団のコークス生産量120t/h) 、
【0111】
循環ガス条件:循環ガス流量通常操業時185,000Nm3/h、
循環ガス流量燃焼切り替え時224,000Nm3/h、
循環ガス酸素濃度通常操業時3.3体積%、
循環ガス酸素濃度燃焼切り替え時7.9体積%(酸素濃度低減手段実行 前)、
【0112】
石炭条件:投入量270dry−t/h、水分率10.1質量%、乾燥後の目標水分2質量%、微粉分級率(微粉捕集率)30質量%、
【0113】
流動層条件:流動層寸法3m(W)×12m(L)、
熱風温度(通常操業時、燃焼切り替え時)290℃、
熱風流量(通常操業時、燃焼切り替え時)356,000Nm3/h、
熱風酸素濃度通常操業時3.6体積%、
熱風酸素濃度燃焼切り替え時8.6体積%、
滞留凝集粉の赤熱・発火防止の目標酸素濃度5.3%以下(at 熱風温 度290℃)
【0114】
熱風発生炉条件:燃料はMixガス(COGとBFGの混合ガス、低位発熱量1200 kcal/Nm3
燃焼空気比:通常操業中の半炉団;1.5、燃料切り替え中の半炉団 ;1.05
【0115】
上記前提条件において、実施例1では、燃焼切り替え時に、通常操業中(燃焼切り替えしていない)の半炉団におけるコークス炉燃焼室での燃焼空気比を、1.08に低減するとともに、熱風発生炉の燃焼空気の全量を、混合ガス中の酸素で代替した操業を行った。
【0116】
実施例2では、燃焼切り替え時に、混合ガスの60%を放散し、その放散量に見合った量を循環ガスで補った操業を行った。
【0117】
実施例3では、燃焼切り替え時に、混合ガスの75%を放散し、その放散量に見合った量を循環ガスで補った操業を行った。
【0118】
実施例4では、燃焼切り替え時に、燃焼切り替え側の半炉団のコークス炉排ガスを55%放散した後、通常操業中の半炉団のコークス炉排ガスと混合し、その放散量に見合った量を循環ガスで補った操業を行った。
【0119】
実施例5では、燃焼切り替え時に、燃焼切り替え側の半炉団のコークス炉排ガスを75%放散した後、通常操業中の半炉団のコークス炉排ガスと混合し、その放散量に見合った量を循環ガスで補った操業を行った。
【0120】
その結果を、表1に示す。データは全て燃焼切り替え中の値である。
【0121】
なお、比較のため、本実施例を行わないときのデータ(酸素濃度低減手段実施前)も併せて表1に記載する。
【0122】
【表1】

【0123】
実施例のいずれも、燃焼切り替え時において、熱風中の酸素濃度を目標の5.3体積%以下にすることができ、流動層中の滞留凝集粉の赤熱発火を防止することができた。
【0124】
また、実施例1においては、燃焼切り替え時でも熱風発生炉での燃料使用量を増加せずに済み、コークス炉排ガスをより有効に利用することができた。
【0125】
また、実施例1では、(ア)燃焼切り替え時に、通常操業中(燃焼切り替えしていない)の半炉団におけるコークス炉燃焼室での燃焼空気比を、1.08に低減する操作と、(イ)熱風発生炉の燃焼空気の全量を、混合ガス中の酸素で代替した操作を両方行ったが、これを、それぞれ、1つの操作だけ行って操業した場合には、(ア)単独では、熱風の酸素濃度は7.2%に留まり、(イ)単独では、熱風の酸素濃度は6.8%に留まり、単独での操作で、目標の酸素濃度に到達しないときは、複数の操作を組み合わせると有効であることを確認することができた。
【0126】
(4つの半炉団のコークス炉排ガスを利用した実施例B)
上記実施例で用いた2つの半炉団のコークス炉排ガスに加えて、更に2つの半炉団のコークス炉排ガスを使用した、4つの半炉団(2炉団)からのコークス炉排ガス全量を用いた際の実施例を以下に示す。
【0127】
前提条件は以下の通りである。4つの半炉団とすることで、酸素濃度低減手段をとる前でも、燃焼切り替え時の混合ガス酸素濃度を、2つの半炉団のときに比べて、より低減できている。
【0128】
コークス炉排ガス条件:混合ガス流量通常操業時253,000Nm3/h、
混合ガス流量燃焼切り替え時222,000Nm3/h
混合ガス酸素濃度通常操業時3.0体積%
混合ガス酸素濃度燃焼切り替え時7.5体積%(酸素濃度低減 手段実行前)、
混合ガス温度通常操業時220℃、
混合ガス温度燃焼切り替え時210℃
燃焼空気比1.23(2炉団のコークス生産量240t/h) 、
【0129】
循環ガス条件:循環ガス流量通常操業時74,000Nm3/h、
循環ガス流量燃焼切り替え時111,000Nm3/h、
循環ガス酸素濃度通常操業時3.0体積%、
循環ガス酸素濃度燃焼切り替え時6.0体積%(酸素濃度低減手段実行 前)、
【0130】
石炭条件:投入量270dry−t/h、水分率10.1質量%、乾燥後の目標水分2質量%、微粉分級率(微粉捕集率)30質量%、
【0131】
流動層条件:流動層寸法3m(W)×12m(L)、
熱風温度(通常操業時、燃焼切り替え時)290℃、
熱風流量(通常操業時、燃焼切り替え時)356,000Nm3/h、
熱風酸素濃度通常操業時3.3体積%、
熱風酸素濃度燃焼切り替え時6.5体積%、
滞留凝集粉の赤熱・発火防止の目標酸素濃度5.3%(at 熱風温度2 90℃)
【0132】
熱風発生炉条件:燃料はMixガス(COGとBFGの混合ガス、低位発熱量1200 kcal/Nm3
燃焼空気比:通常操業中の半炉団;1.5、燃焼切り替え中の半炉団 ;1.05
【0133】
上記前提条件において、実施例6では、燃焼切り替え時に、通常操業中(燃焼切り替えしていない)の半炉団におけるコークス炉燃焼室での燃焼空気比を、1.08に低減した操業を行った。
【0134】
実施例7では、燃焼切り替え時に、通常操業中(燃焼切り替えしていない)の半炉団におけるコークス炉燃焼室での燃焼空気比を、1.08に低減するとともに、熱風発生炉の燃焼空気の全量を、混合ガス中の酸素で代替した操業を行った。
【0135】
実施例8では、燃焼切り替え時に、混合ガスの50%を放散し、その放散量に見合った量を循環ガスで補った操業を行った。
【0136】
実施例9では、燃焼切り替え時に、混合ガスの75%を放散し、その放散量に見合った量を循環ガスで補った操業を行った。
【0137】
実施例10では、燃焼切り替え時に、燃焼切り替え側の半炉団のコークス炉排ガスを50%放散した後、通常操業中の半炉団のコークス炉排ガスと混合し、その放散量に見合った量を循環ガスで補った操業を行った。
【0138】
実施例11では、燃焼切り替え時に、燃焼切り替え側の半炉団のコークス炉排ガスを75%放散した後、通常操業中の半炉団のコークス炉排ガスと混合し、その放散量に見合った量を循環ガスで補った操業を行った。
【0139】
その結果を、表2に示す。データは全て燃焼切り替え中の値である。
【0140】
なお、比較のため、本実施例を行わないときのデータ(酸素濃度低減手段実施前)も併せて表2に記載する。
【0141】
【表2】

【0142】
実施例6〜11のいずれも、燃焼切り替え時において、熱風中の酸素濃度を目標の5.3体積%以下にすることができ、流動層中の滞留凝集粉の赤熱発火を防止することができた。
【0143】
また、4つの半炉団とすることで、2つの半炉団のときよりも、酸素濃度低減手段実施前の熱風中酸素濃度を低減でき(燃焼切り替え時の酸素濃度増加の影響を緩和でき)、更に、通常操業中(燃焼切り替えしていない)の半炉団におけるコークス炉燃焼室での燃焼空気比を、1.08に低減する操作の効果が、2つの半炉団のときよりも高くなり、有利であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】コークス炉の燃焼切り替えを説明するための図である。
【図2】本発明を実施する装置構成の一例を示す図である。
【図3】コークス炉燃焼切り替え時の各弁の弁開度の変化を示す図である。
【図4】コークス炉燃焼切り替え時の各ガスの流量変化を示す図である。
【図5】コークス炉燃焼切り替え時のコークス排ガス中の酸素濃度の変化を示す図である。
【図6】熱風温度を設定する考え方を示す図である。
【図7】本発明の実施手順の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0145】
1A Aコークス炉
1B Bコークス炉
2A Aコークス炉煙突
2B Bコークス炉煙突
3A−1 ダンパー
3A−2 ダンパー
3A−3 ダンパー
3B−1 ダンパー
3B−2 ダンパー
3B−3 ダンパー
3−4 ダンパー
3−5 ダンパー
4 熱風発生炉
5 流動層
6 集塵装置
7−1 ブロアー
7−2 ブロアー
7−3 ブロアー
8 燃料配管
9 燃焼空気配管
10−1 流量計
10−2 流量計
10−3 流量計
10−4 流量計
11A Aコークス炉出排ガス配管
11B Bコークス炉出排ガス配管
12A Aコークス炉排ガス放散配管
12B Bコークス炉排ガス放散配管
13A 流動層放散ガスA炉煙突放散配管
13B 流動層放散ガスB炉煙突放散配管
14A Aコークス炉排ガス流動層向け配管
14B Bコークス炉排ガス流動層向け配管
15 コークス炉排ガス流動層向け配管
16 流動層循環ガス配管
17 流動層供給熱風ガス配管
18 流動層出排ガス配管
19 集塵装置出排ガス配管
20 流動層放散ガス配管
21−1 温度計
21−2 温度計
21−3 温度計
22−1 酸素濃度計(O2計)
22−2 酸素濃度計(O2計)
22−3 酸素濃度計(O2計)
31 制御演算装置
5 流動層
51 風箱
52 分散板
53 流動室
54 フリーボード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風発生炉に、コークス炉の排ガス、及び、流動層の排ガスを投入し、前記熱風発生炉内での燃料の空気燃焼により、前記両排ガスを加熱して熱風とし、当該熱風を前記流動層に導入して、前記コークス炉へ投入する石炭を、前記流動層で乾燥及び分級するための石炭の流動層乾燥分級方法であって、
前記コークス炉の排ガスとして、燃焼切り替えのタイミングが異なる複数の半炉団からの排ガスの混合ガスを使用し、
前記各半炉団の燃焼切り替えの際に、前記熱風中の酸素濃度が所定の濃度以下となるように制御して、
前記流動層内における石炭の発火を防止することを特徴とする石炭の流動層乾燥分級方法。
【請求項2】
前記各半炉団の燃焼切り替えの際の熱風を、所定の酸素濃度以下に制御する手段が、
(a)前記コークス炉の燃焼室での燃焼空気比を低減して前記コークス炉排ガスの混合ガス中の酸素濃度を低下すること、
(b)前記熱風発生炉での燃焼空気の一部又は全部を前記コークス炉排ガスの混合ガス中の酸素で代替し燃焼用空気量を低減すること、
(c)前記コークス炉排ガスの混合ガスを前記熱風発生炉への投入前に一部放散すること、及び、
(d)前記燃焼切り替え中の半炉団からのコークス炉排ガスの一部を放散すること
の1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の石炭の流動層乾燥分級方法。
【請求項3】
前記複数の半炉団は、1炉団を構成する2つの半炉団で、かつ、該1炉団の1又は2以上から前記混合ガスを構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭の乾燥分級方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−120695(P2009−120695A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295371(P2007−295371)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】