説明

石炭ガス化複合発電設備

【課題】初期生成ガスを処理する際に大気中へ排出される硫黄分を適切に処理し、環境性能をより一層向上させた石炭ガス化複合発電設備を提供すること。
【解決手段】微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉3と、気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備5と、ガスタービン設備5の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラ30で生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備7と、ガスタービン設備5及び/又は蒸気タービン設備7と連結された発電機Gとを備え、排熱回収ボイラ30から排出される燃焼排ガスを脱硫して大気放出する排煙脱硫方式の石炭ガス化複合発電設備1において、石炭ガス化炉3の出口側から分岐してフレアシステム27に至る初期生成ガスの流路に初期生成ガス専用の初期脱硫装置24を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭を燃料として複合発電を行う石炭ガス化複合発電設備(IGCC;Integrated Coal
Gasification Combined Cycle)に係り、特に、排煙脱硫方式の石炭ガス化複合発電設備における起動時のガス処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、石炭ガス化複合発電設備(以下、「IGCC」と呼ぶ)が知られている。このIGCCにおいて、設備を起動した初期段階にガス化された生成ガス(以下、「初期生成ガス」と呼ぶ)は低カロリーであるなどガスタービンに受け入れ可能な条件(燃料として使用可能な条件)を満たしていないため、ガスタービンに供給することなくフレアシステム等のガス処理設備で処理する必要がある。このような初期生成ガスの処理を、起動時のガス処理と呼ぶ。
【0003】
ところで、排煙脱硫方式のIGCCでは、フレアシステム等で処理される初期生成ガスがガス精製設備を通過しないため、硫黄分を多く含んだものとなる。このため、初期生成ガスをそのままフレアシステムで処理すると、比較的短時間(通常は2〜3時間程度)ではあるものの、大気中に比較的高い濃度の硫黄分が排出されるため好ましくない。
なお、所定の条件を満たしてガスタービンに燃料ガスとして供給されるようになると、ガスタービンの燃焼排ガスが排煙脱硫装置(FGD)を通過して脱硫処理された後に大気へ排出されるため、環境上問題になることはない。
【0004】
上述した初期生成ガスを処理する従来技術としては、たとえば初期生成ガスをH S燃焼炉に受け入れ、オフガスの湿式脱硫塔で脱硫するように構成したものがある。なお、この場合の排熱は、リボイラ蒸気として回収される。(たとえば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平9−268904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、排煙脱硫方式のIGCCにおいては、設備起動の初期段階にガス化された初期生成ガスに含まれる硫黄分をそのまま処理するため、この硫黄分が大気中に排出されるという問題がある。このため、近年の環境問題を考慮すると、起動時のガス処理についても、たとえ短時間であっても適切な処理を行うことで硫黄分の大気放出問題を解決し、IGCCの環境性能を低コストでさらに向上させることが望まれる。
なお、上述した特許文献1に記載の構成では、本来小容量でよいはずのオフガス湿式脱硫塔の容量が大きくなるという問題を有している。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、起動時のガス処理において、初期生成ガスを処理する際に大気中へ排出される硫黄分を適切に処理し、環境性能をより一層向上させた石炭ガス化複合発電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の請求項1に係る石炭ガス化複合発電設備は、 微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉と、前記気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備と、前記ガスタービン設備の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備と、前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備と連結された発電機とを備え、前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを脱硫して大気放出する排煙脱硫方式の石炭ガス化複合発電設備において、
前記石炭ガス化炉の出口側から分岐してフレアシステムに至る初期生成ガスの流路に初期生成ガス専用の脱硫装置を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
このような石炭ガス化複合発電設備によれば、石炭ガス化炉の出口側から分岐してフレアシステムに至る初期生成ガスの流路に初期生成ガス専用の脱硫装置を設けたので、処理能力の小さい低コストの脱硫装置により硫黄分を除去することができる。この場合、初期生成ガス専用とした脱硫装置の処理能力は、排熱回収ボイラから排出される燃焼排ガスを脱硫するのに必要とされるものと比較して、50%以下に小さくすることができ、処理時間が短いという点を考慮すれば、好ましくは20〜10%以下まで小さくすることも可能である。
【0009】
本発明の請求項2に係る石炭ガス化複合発電設備は、微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉と、前記気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備と、前記ガスタービン設備の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備と、前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備と連結された発電機とを備え、前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを脱硫装置で脱硫して大気放出する排煙脱硫方式の石炭ガス化複合発電設備において、
前記石炭ガス化炉の出口側から分岐する初期生成ガスの流路にガス処理炉を設け、該ガス処理炉の燃焼排ガスを前記脱硫装置に導いて脱硫するように構成したことを特徴とするものである。
【0010】
このような石炭ガス化複合発電設備によれば、石炭ガス化炉の出口側から分岐する初期生成ガスの流路にガス処理炉を設け、該ガス処理炉の燃焼排ガスを脱硫装置に導いて脱硫するように構成したので、硫黄分を含んだ初期生成ガスが燃焼したガス処理炉の燃焼排ガスは、排熱回収ボイラから排出される燃焼排ガスを脱硫するために予め設けられている脱硫装置により脱硫される。このため、初期生成ガス用の脱硫装置を別に設置する必要がない。
【0011】
本発明の請求項3に係る石炭ガス化複合発電設備は、微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉と、前記気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備と、前記ガスタービン設備の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備と、前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備と連結された発電機とを備え、前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを脱硫装置で脱硫して大気放出する排煙脱硫方式の石炭ガス化複合発電設備において、
前記石炭ガス化炉の出口側から分岐する初期生成ガスの流路を前記排熱回収ボイラの入口に連結し、前記初期生成ガスを前記排熱回収ボイラの入口部分に設置したバーナで燃焼処理することを特徴とするものである。
【0012】
このような石炭ガス化複合発電設備によれば、石炭ガス化炉の出口側から分岐する初期生成ガスの流路を排熱回収ボイラの入口に連結し、初期生成ガスを前記排熱回収ボイラの入口部分に設置したバーナで燃焼処理するので、初期生成ガスを焼却処理して発生した燃焼排ガスは、予め設けられている脱硫装置で硫黄分を除去した後に大気へ放出される。このため、初期生成ガス用のガス冷却装置及び脱硫装置を別に設置する必要がない。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の石炭ガス化複合発電設備によれば、設備の起動時にガス化された初期生成ガスを、
(1)小容量の専用脱硫装置で脱硫してからフレアシステムで処理して大気放出する
(2)ガス処理炉で燃焼させて発生した燃焼排ガスをガスタービン設備の燃焼排ガス用脱硫装置に通して脱硫処理した後に大気放出する
(3)排熱回収ボイラの入口においてダクトバーナで燃焼させた燃焼排ガスをガスタービン設備の燃焼排ガス用脱硫装置に通して脱硫処理した後に大気放出する
ようにしたので、硫黄分を含む初期生成ガスを低コストで脱硫して大気に放出することができるようになり、環境性能が向上するという顕著な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る石炭ガス化複合発電設備の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す第1の実施形態のように、石炭を燃料とする石炭ガス化複合発電設備(IGCC;Integrated Coal Gasification Combined Cycle)1は、主として、石炭ガス化炉3と、ガスタービン設備5と、蒸気タービン設備7とを備えている。
石炭ガス化炉3の上流側には、石炭ガス化炉3へと微粉炭を供給する石炭供給設備10が設けられている。この石炭供給設備10は、原料炭を粉砕して数μm〜数百μmの微粉炭とする粉砕機(図示せず)を備えており、この粉砕機によって粉砕された微粉炭が複数のホッパ11,11…に貯留されるようになっている。
【0015】
各ホッパ11に貯留された微粉炭は、一定流量ずつ空気分離装置15から供給される窒素とともに石炭ガス化炉3へと搬送される。
石炭ガス化炉3は、下方から上方へとガスが流されるように形成された石炭ガス化部3aと、石炭ガス化部3aの下流側に接続されて、上方から下方へとガスが流されるように形成された熱交換部3bとを備えている。
石炭ガス化部3aには、下方から、コンバスタ13及びリダクタ14が設けられている。コンバスタ13は、微粉炭及びチャーの一部分を燃焼させ、残りは熱分解により揮発分(CO,H ,低級炭化水素)として放出させる部分である。コンバスタ13には噴流床が採用されている。しかし、流動床式や固定床式であっても構わない。
【0016】
コンバスタ13及びリダクタ14には、それぞれ、コンバスタバーナ13a及びリダクタバーナ14aが設けられており、これらバーナ13a,14aに対して石炭供給設備10から微粉炭が供給される。
コンバスタバーナ13aには、空気昇圧機17からの空気が、空気分離装置13において分離された酸素とともに供給されるようになっている。このようにコンバスタバーナ13aには酸素濃度が調整された空気が供給されるようになっている。
リダクタ14では、コンバスタ13からの高温燃焼ガスによって微粉炭がガス化される。これにより、石炭からCOやH 等の可燃性ガスが生成される。石炭ガス化反応は、微粉炭及びチャー中の炭素が高温ガス中のCO 及びHO と反応してCOやH を生成する吸熱反応である。
【0017】
石炭ガス化炉3の熱交換部3bには、複数の熱交換器が設置されており、リダクタ14から導かれるガスから顕熱を得て蒸気を発生させるようになっている。熱交換器において発生した蒸気は、主として、蒸気タービン7bの駆動用蒸気として用いられる。
熱交換部3bを通過したガスは、チャー回収装置20へと導かれる。このチャー回収装置20は、ポーラスフィルタを備えており、ポーラスフィルタを通過させることによってガスに混在するチャーを捕捉して回収する。このように回収されたチャーは、空気分離装置13において分離された窒素とともに石炭ガス化炉のコンバスタバーナ13aへと返送されてリサイクルされる。
【0018】
チャー回収装置20を通過したガスは、燃料ガスとしてガスタービン設備5の燃焼器5aへと送られる。
チャー回収装置20とガスタービン設備5の燃焼器5aとの間には、石炭ガス化炉3の出口側から生成ガスをフレアシステム24に導く分岐路22が設けられており、この分岐路22の下流には、IGCC1を起動した初期段階に石炭ガス化炉3でガス化されたガス、すなわち初期生成ガスの脱硫処理手段として、起動時の初期段階に開(通常運転時は閉)とされる開閉弁23を介して、初期脱硫装置24が設けられている。初期生成ガスは、低カロリーであるなどガスタービン設備5の燃料として受け入れ可能な条件を満たしておらず、従って、燃焼器5aに供給することなくフレアシステム27等のガス処理設備で処理する必要がある。
【0019】
初期脱硫装置24は小容量の固定床方式とされ、触媒再生用の空気誘引ファン25を備えている。この場合の小容量とは、ガスタービン設備5の燃料として使用可能になるまでの運転時間に対応できる能力であり、通常はガス発生開始から2〜3時間程度に対応できればよい。
また、通常の脱硫装置は、長時間の運転に対応するため、処理能力が100%のものを複数(通常は3セット程度)用意しておき、1セットの装置を順番に交代で使用するとともに、所定時間使用後の他の装置については触媒の再生を行う必要がある。しかし、上述した初期脱硫装置24については、用途が短時間使用に限定されるものであり、しかも、生成ガスをガスタービン装置5の燃料として使用できる通常運転に入った後には、触媒再生に必要な時間を容易に確保することができる。
【0020】
従って、処理能力が100%の脱硫装置を複数用意する必要はなく、これだけでも大幅な処理能力の低減(3セットを1セットに低減すれば1/3)が可能である。さらに、運転(処理)時間が短いことによる処理能力の低減も可能なことから、おおよその処理能力は、後述する排熱回収ボイラ30の下流に配設されている脱硫装置32の50%以下とすることができる。
そして、初期脱硫装置24の好ましい処理能力は、初期生成ガス量が通常運転時の生成ガス量の60%程度になるため、脱硫装置32の20%以下、より好ましい処理能力は10%(1/3 × 1/2 × 0.6 = 0.1)以下となり、処理能力を小さくすることでコストの低減や装置の小型化が可能になる。
【0021】
初期脱硫装置24の下流側には、開閉弁26を介してフレアシステム27が設けられている。フレアシステム27は、初期脱硫装置24で脱硫した後の初期生成ガスを燃焼させて処理する設備である。
なお、図中の符号28は再生ガスラインであり、排煙脱硫装置(FGD)32で硫黄分を回収するため、再生ガス(SO )を初期脱硫装置24から排煙脱硫装置32の入口へ導いて投入するための流路である。
【0022】
ガスタービン設備5は、ガス化されたガスが燃焼させられる燃焼器5aと、燃焼ガスによって駆動されるガスタービン5bと、燃焼器5aへと高圧空気を送り出すターボ圧縮機5cとを備えている。ガスタービン5bとターボ圧縮機5cとは同一の回転軸5dによって接続されている。ターボ圧縮機5cにおいて圧縮された空気は、燃焼器5aとは別に、空気昇圧器17へも導かれるようになっている。
ガスタービン5bを通過した燃焼排ガス(ガスタービン排気ガス)は、排熱回収ボイラ(HRSG)30へと導かれる。
【0023】
蒸気タービン設備7の蒸気タービン7bは、ガスタービン設備5と同じ回転軸5dに接続されており、いわゆる一軸式のコンバインドシステムとなっている。蒸気タービン7bには、石炭ガス化炉3及び排熱回収ボイラ30から高圧蒸気が供給される。なお、一軸式のコンバインドシステムに限らず、別軸式のコンバインドシステムであっても構わない。
ガスタービン5b及び蒸気タービン7bによって駆動される回転軸5dから電気を出力する発電機Gが、蒸気タービン設備7を挟んでガスタービン設備5の反対側に設けられている。なお、発電機Gの配置位置については、この位置に限られず、回転軸5dから電気出力が得られるようであればどの位置であっても構わない。
【0024】
排熱回収ボイラ30は、ガスタービン5bからの燃焼排ガスによって蒸気を発生するものであり、その燃焼排ガス流の下流には脱硫装置32が設けられている。この脱硫装置32によって、排ガス中の硫黄分が取り除かれるようになっている。
脱硫装置32を通過したガスは、湿式電気集塵機(wet−EP)34及び誘引ファン(BUF)36を通過して煙突38から大気へと放出される。
【0025】
次に、上記構成の石炭ガス化複合発電設備1の動作について説明する。
原料炭は粉砕機(図示せず)で粉砕された後、ホッパ11へと導かれて貯留される。ホッパ11に貯留された微粉炭は、空気分離装置15において分離された窒素とともに、リダクタバーナ14a及びコンバスタバーナ13aへと供給される。さらに、コンバスタバーナ13aには、微粉炭だけでなく、チャー回収装置20において回収されたチャーが供給される。
コンバスタバーナ13aの燃焼用空気としては、タービン圧縮機5cから抽気した圧縮空気をさらに空気昇圧機17によって昇圧した圧縮空気に、空気分離機13において分離された酸素が添加された空気が使用される。コンバスタ13では、微粉炭及びチャーが燃焼用空気によって部分燃焼させられ、残部は揮発分(CO,H ,低級炭化水素)へと熱分解させられる。
【0026】
リダクタ14では、リダクタバーナ14aから供給された微粉炭及びコンバスタ13内で揮発分を放出したチャーが、コンバスタ13から上昇してきた高温ガスによりガス化され、COやH 等の可燃性ガスが生成される。
リダクタ14を通過したガスは、石炭ガス化炉3の熱交換部3bを通過しつつ各熱交換器にその顕熱を与え、蒸気を発生させる。熱交換部3bで発生させた蒸気は、主として、蒸気タービン7bの駆動のために用いられる。
熱交換部3bを通過したガスは、チャー回収装置20へと導かれ、チャーが回収される。回収されたチャーは、石炭ガス化炉3へと返送される。
【0027】
チャー回収装置20を通過したガスは、ガスタービン設備5の燃焼器5aへと導かれ、ターボ圧縮機5cから供給される圧縮空気とともに燃焼させられる。この燃焼ガスによってガスタービン5bが回転させられ、回転軸5bが駆動させられる。
さて、石炭ガス化炉3の起動時には、ガスタービン設備5の燃焼器5aに燃料として供給しうる程度の発熱量を有するガスが得られないので、開閉弁23、26を開けて初期脱硫装置24及びフレアシステム27へと初期生成ガスを導き、脱硫処理により硫黄分を除去した初期生成ガスをフレアシステム27において焼却処理する。このため、IGCC1の起動時において、ガスタービン設備5の燃料として使用できない硫黄分を含む初期生成ガスが生成された場合であっても、初期脱硫装置24で脱硫してから焼却処理するため、大気中に硫黄分が放出されるようなことはなく、環境性能の向上に貢献する。
【0028】
また、石炭ガス化炉3がガスタービン設備5の燃料として使用可能な生成ガスを供給可能となった起動完了後には、開閉弁23、26を閉じて初期脱硫装置24の触媒をアイソレート(流路遮断)し、この状態で空気誘引ファン25を運転して触媒に空気を吹き込んで再生する。この触媒再生により生成された再生ガス(SO )は、再生ガスライン28を通って排煙脱硫装置32の入口に導かれ、排煙脱硫装置32により硫黄分の回収が行われる。
【0029】
ガスタービン5bを通過した燃焼排ガスは、排熱回収ボイラ30へと導かれ、この燃焼排ガスの顕熱を利用することによって蒸気が発生させられる。排熱回収ボイラ30において発生した蒸気は、主として、蒸気タービン7bの駆動のために用いられる。
蒸気タービン7bは、石炭ガス化炉3からの蒸気及び排熱回収ボイラ30からの蒸気によって回転させられ、ガスタービン設備5と同一の回転軸5bを駆動させる。回転軸5bの回転力は、発電機Gによって電気出力へと変換される。
【0030】
排熱回収ボイラ30を通過した燃焼排ガスは、脱硫装置32へと導かれ、ここで硫黄分が除去される。この後、誘引ファン36により吸引された燃焼排ガスは、湿式電気集塵機34を通過して燃焼排ガス中の煤塵及び硫酸ミストが除去された後、煙突38から大気へと放出される。
【0031】
続いて、本発明の第2の実施形態を図2に基づいて説明する。なお、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、初期生成ガスを処理するため、チャー回収装置20とガスタービン設備5の燃焼器5aとの間に、石炭ガス化炉3の出口側から初期生成ガスの排出配管として生成ガスの分岐路22′が設けられている。この分岐路22′には、初期生成ガスを燃焼させて処理する専用のガス処理炉40が設置されている。ガス処理炉40で発生した燃焼排ガスは、適当な冷却をした後、下流側の排ガス配管41を通って排熱回収ボイラ30の下流に配設されているガスタービン設備5の燃焼排ガス用として設けた脱硫装置32に導かれる。
【0032】
脱硫装置32では燃焼排ガスに含まれている硫黄分が脱硫処理されるので、硫黄分を除去された燃焼排ガスが煙突38から大気へ放出される。すなわち、IGCC1の起動時においても、硫黄分が除去された燃焼排ガスを大気に放出することができるため、環境性能を向上させることができる。
【0033】
最後に、本発明の第3の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、上述した第1及び第2の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、初期生成ガスを処理するため、チャー回収装置20とガスタービン設備5の燃焼器5aとの間に、石炭ガス化炉3の出口側から初期生成ガスを排熱回収ボイラ30の入口31に導く配管流路として、生成ガスの分岐路22″が設けられている。排熱回収ボイラ30の入口31には図示しないダクトバーナが設けられており、このダクトバーナにより初期生成ガスを焼却処分するようになっている。
【0034】
このような構成とすれば、初期生成ガスを焼却処理して発生した燃焼排ガスは、脱硫装置32で硫黄分を除去した後に煙突38から大気へ放出されるので、環境性能を向上させることができる。
また、誘引ファン36を起動して排熱回収ボイラ30の入口31でダクトバーナにより初期生成ガスを燃焼させるため、IGCC1の起動時には、この燃焼により生じる熱で蒸気を生成することができるので、この蒸気をガスタービン設備5の起動に利用することができる。すなわち、ガスタービン設備5の起動に必要な蒸気を生成するために必要な補助ボイラが不要になるので、IGCC1を安価に製造することができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る石炭ガス化複合発電設備について、第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る石炭ガス化複合発電設備について、第2の実施形態を示す構成図である。
【図3】本発明に係る石炭ガス化複合発電設備について、第3の実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 石炭ガス化複合発電設備(IGCC)
3 石炭ガス化炉
5 ガスタービン設備
5a 燃焼器
5b ガスタービン
5c ターボ圧縮機
5d 回転軸
7 蒸気タービン設備
7b 蒸気タービン
10 石炭供給設備
20 チャー回収装置
22、22′、22″ 分岐路
24 初期脱硫装置
27 フレアシステム
30 排熱回収ボイラ(HRSG)
32 脱硫装置(FGD)
38 煙突
40 ガス処理炉
G 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉と、
前記気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備と、
前記ガスタービン設備の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備と、
前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備と連結された発電機とを備え、
前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを脱硫して大気放出する排煙脱硫方式の石炭ガス化複合発電設備において、
前記石炭ガス化炉の出口側から分岐してフレアシステムに至る初期生成ガスの流路に初期生成ガス専用の脱硫装置を設けたことを特徴とする石炭ガス化複合発電設備。
【請求項2】
微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉と、
前記気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備と、
前記ガスタービン設備の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備と、
前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備と連結された発電機とを備え、
前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを脱硫装置で脱硫して大気放出する排煙脱硫方式の石炭ガス化複合発電設備において、
前記石炭ガス化炉の出口側から分岐する初期生成ガスの流路にガス処理炉を設け、該ガス処理炉の燃焼排ガスを前記脱硫装置に導いて脱硫するように構成したことを特徴とする石炭ガス化複合発電設備。
【請求項3】
微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉と、
前記気体燃料を燃料として運転されるガスタービン設備と、
前記ガスタービン設備の燃焼排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン設備と、
前記ガスタービン設備及び/又は前記蒸気タービン設備と連結された発電機とを備え、
前記排熱回収ボイラから排出される前記燃焼排ガスを脱硫装置で脱硫して大気放出する排煙脱硫方式の石炭ガス化複合発電設備において、
前記石炭ガス化炉の出口側から分岐する初期生成ガスの流路を前記排熱回収ボイラの入口に連結し、前記初期生成ガスを前記排熱回収ボイラの入口部分に設置したバーナで燃焼処理することを特徴とする石炭ガス化複合発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−10226(P2006−10226A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188887(P2004−188887)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】