説明

石鹸及びその製造方法

【課題】アスタキサンチン入の石鹸に土由来の物質を含有させても、良好な物理的安定性と防腐効果を得ることができる石鹸及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アスタキサンチン入りの石鹸基部10の略中央に、穴ないし窪み12が形成されており、この凹部12内に大麦若葉粉固形物14が充填されている。石鹸基部10中のアスタキサンチンなどの成分と、大麦若葉粉固形物14中のミネラル等の豊富な栄養成分が溶け出し、ボリューム感や重量感に溢れるきめの細かい良質で滑らかな泡が得られる。これが皮膚に作用することで、海由来成分と土由来成分が相乗して、皮脂の保護,保湿,白髪・シミ・シワの改善などの優れた肌効果を期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチンを含有する石鹸及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石鹸は、基本的には皮膚の汚れを落とすことを目的としていることから、合成界面活性剤などの化学的成分が本来必要な皮脂まで洗い落としてしまうことが多い。このため、皮脂を損傷することなく、肌に対するストレスを排除して老化を抑制するとともに、新陳代謝を促進するものが要望されている。
【0003】
このような肌の保護と再生の作用を兼ね備えたものとして、アスタキサンチン入りの石鹸がある。アスタキサンチンは、紫外線対応能力に優れた良好な抗酸化物質として知られており、スキンケア,ヘアケアなどに効果的であるとされている。しかし、アスタキサンチン自体は酸化されやすいため、石鹸に配合するときは、品質を確保するため、ある程度の配合濃度を要する。例えば、石鹸素材に対して重量比で0.03%以上アスタキサンチンを添加すれば、360日程度は良好な品質を得ることができる。
【0004】
アスタキサンチンは、例えば、海で培養されているヘマトコッカス藻よりオイルとして抽出されるもので、いわば海由来の物質である。そこで、これに土壌ないし陸上由来の物質を加えることにより、海と土の両方の由来成分の相乗効果を得ようとする試みがなされている。例えば、下記特許文献1には、アスタキサンチンと大麦若葉とを組み合わせた生体コラーゲン合成促進剤用組成物が開示されている。また、下記特許文献2には、アスタキサンチンと他の抗酸化剤を含有する外用に適する組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2005−255527公報
【特許文献2】特開2006−348035公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、土由来の物質,すなわち土壌で栽培されるものとしては、ミネラル,ビタミン,タンパク質などの栄養成分を豊富に含む大麦若葉が代表的なものである。この大麦若葉を石鹸に添加する場合、粉末にする方法が考えられる。しかしながら、大麦若葉の粉末を石鹸基部に添加すると、基材が物理的に不安定となり、防腐の面でも好ましくない。
【0006】
本発明は、以上の点に着目したもので、アスタキサンチン入りの石鹸に土由来の物質を含有させても、良好な物理的安定性と防腐効果を得ることができる石鹸及びその製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の石鹸は、アスタキサンチンを含有する石鹸基部に形成した凹部に、濃緑植物の固形物を充填したことを特徴とする。本発明の石鹸の製造方法は、前記石鹸の製造方法であって、アスタキサンチンを含有する石鹸基部に凹部を形成する工程,前記凹部に濃緑植物の固形物を充填する工程,前記充填した粉末を石鹸基部とともに乾燥する工程,を含むことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記濃緑植物の固形物を、前記石鹸基部と同じ材料に混ぜて前記凹部に充填したことを特徴とする。他の形態の一つは、前記濃緑植物の固形物として、大麦若葉の粉末もしくは大麦若葉の抽出エキスの粉末を使用したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アスタキサンチンを含有する石鹸基部に大麦若葉等の濃緑植物の固形物を充填して二重構造としたので、海由来成分と土由来成分が相乗効果を奏するようになるとともに、良好な物理的安定性と防腐効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1には、本発明の実施例1の石鹸の外観が示されている。同図中(A)は断面図,(B)及び(C)は(A)の横断面図である。これらの図に示すように、アスタキサンチン入りの石鹸基部10の略中央には、穴ないし窪み(以下「凹部」と総称する)12が形成されており、この凹部12内に大麦若葉粉固形物14が充填されている。図1(B)は穴の場合の例であり、(C)は窪みの場合の例である。なお、図1(C)では、石鹸基部10の表裏に凹部12A,12Bを設けているが、いずれか一方のみでもよい。図1(D)は、凹部12を多数石鹸基部10に形成した例で、図1(E)及び(F)はその横断面を示す。(E)は穴の場合の例であり、(F)は凹部の場合の例である。
【0011】
次に、図2を参照しながら、上述した石鹸の製造方法の一例を説明する。まず、同図(A)に示すように、石鹸基部10の棒状体を得る。石鹸基部10には、例えば、以下の表1に記載されているような成分が含まれている。
【表1】

【0012】
次に、図2(B)に示すように石鹸基部10の中央に穴12を形成し、更に同図(C)に示すように穴12に大麦若葉粉末20を詰め込む。そして、この状態で全体の乾燥を行なう。乾燥は、どのような方法でもよいが、好ましくは、例えば50日間程度自然乾燥(乾燥剤を使用しないため)により行なう。この乾燥工程では、図2(C)に矢印で示すように、石鹸基部10内のアルカリ性水分を大麦若葉粉末20が吸収し、これによって粉末が固形化ないし固体化し、同図(D)に示すように大麦若葉粉固形物14となり、大麦若葉粉固形物14はアルカリ性を示すようになる。大麦若葉は、空気中に放置すると酸化してしまうが、アルカリ性となることで、酸化が防止される。また、カビ類やグラム陰性菌(大腸菌)などは一般にアルカリ性に弱いので、大麦若葉粉固形物14をアルカリ性とすることで防腐効果が向上して安定性が増し、石鹸全体として良好な品質を得ることができる。図2(D)に示すものを適宜の厚さに切断することで、図1(A)に示した石鹸が得られる。
【0013】
以上のようにして得た本実施例の石鹸を使用するときは、化学的な発泡剤等が含まれていないので、発泡用のネットなどを使用して泡立てを行なう。このとき、石鹸基部10中のアスタキサンチンなどの成分と、大麦若葉粉固形物14中のミネラル等の豊富な栄養成分が溶け出し、ボリューム感や重量感に溢れるきめの細かい良質で滑らかな泡が得られる。これが皮膚に作用することで、海由来成分と土由来成分が相乗して、皮脂の保護,保湿,白髪・シミ・シワの改善などの優れた肌効果を期待できる。加えて、自然界に存在する素材を使用しており、河川等で分解してしまうため、環境に対する負荷も低い。
【0014】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)石鹸基部に対する大麦若葉固形物の割合は、必要に応じて適宜設定してよい。
(2)石鹸基部が含有する成分も、上記実施例に限定されるものではなく、少なくともアスタキサンチンを含有していれば、他の公知の各主成分を含有してよい。
(3)前記実施例に示した製造方法も一例であり、同様の作用が得られれば、他の方法で製造することを妨げるものではない。
(4)石鹸基部10の中央の穴12に大麦若葉粉末20を詰め込む具体的な手法としては、例えば、石鹸基部10と同じ材料に大麦若葉粉末20を混入したものを詰め込むようにする。また、大麦若葉の抽出エキスを乾燥化した粉末を石鹸基部10と同じ材料に混入したものを詰め込むようにしてもよい。
(5)前記実施例では、土由来成分として大麦若葉を使用したが、それに限定されず、例えば青汁系の濃緑植物(野菜や海藻)を用いてもよい。
(6)本発明の石鹸は、人のみならず、動物にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によれば、海由来成分であるアスタキサンチンと土由来成分である大麦若葉の相乗効果により、品質の良好な石鹸を得ることができ、スキンケアなどに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例の石鹸を示す図である。
【図2】前記実施例の石鹸の主要製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
10:石鹸基部
12,12A,12B:凹部(穴ないし窪み)
14:大麦若葉粉固形物
20:大麦若葉粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンを含有する石鹸基部に形成した凹部に、濃緑植物の固形物を充填したことを特徴とする石鹸。
【請求項2】
前記濃緑植物の固形物を、前記石鹸基部と同じ材料に混ぜて前記凹部に充填したことを特徴とする請求項1記載の石鹸。
【請求項3】
前記濃緑植物の固形物として、大麦若葉の粉末もしくは大麦若葉の抽出エキスの粉末を使用したことを特徴とする請求項1又は2記載の石鹸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の石鹸の製造方法であって、
アスタキサンチンを含有する石鹸基部に凹部を形成する工程,
前記凹部に濃緑植物の固形物を充填する工程,
前記充填した粉末を石鹸基部とともに乾燥する工程,
を含むことを特徴とする石鹸の製造方法。
【請求項5】
前記濃緑植物の固形物を、前記石鹸基部と同じ材料に混ぜて前記凹部に充填することを特徴とする請求項4記載の石鹸の製造方法。
【請求項6】
前記濃緑植物の固形物として、大麦若葉の粉末もしくは大麦若葉の抽出エキスの粉末を使用したことを特徴とする請求項4又は5記載の石鹸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−79211(P2009−79211A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209405(P2008−209405)
【出願日】平成20年8月17日(2008.8.17)
【出願人】(507295576)
【Fターム(参考)】