説明

研削装置

【課題】被加工物を外周部に環状の凸部を残して凹部に研削することができるとともに、被加工物の全面を研削することができる研削装置を提供する。
【解決手段】研削手段をチャックテーブル6の保持面に対して相対的に平行に移動しチャックテーブル6に保持された被加工物10の全面を研削する第1の研削位置と、被加工物10を外周部に環状の凸部を残して凹部に研削する第2の研削位置に位置付ける位置きめ手段を具備し、研削砥石332の環状の研削帯域の外径は被加工物10の半径より大きく、研削すべき凹部の直径より小さく設定され、研削砥石332の環状の研削帯域の内径は研削すべき凹部の半径より小さく設定されており、環状の研削帯域の幅は研削砥石332が第1の研削位置および第2の研削位置のいずれに位置付けられた状態においても環状の研削帯域がチャックテーブルに保持された被加工物10の回転中心を通過する寸法に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を研削するための研削装置、更に詳しくは被加工物を外周部に環状の凸部を残して凹部に研削することができるとともに、被加工物の全面を研削することができる研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述したように分割されるウエーハは、ストリートに沿って切断する前に裏面を研削して所定の厚さに形成される。近年、電気機器の軽量化、小型化を達成するためにウエーハの厚さを50μm以下に形成することが要求されている。しかるに、ウエーハの厚さを50μm以下に形成すると破損し易くなり、ウエーハの搬送等の取り扱いが困難になるという問題がある。
【0004】
上述した問題を解消するために、ウエーハの裏面におけるデバイス領域に対応する領域を凹状に研削してデバイス領域の厚さを所定厚さに形成するとともに、ウエーハの裏面における外周余剰領域を残存させて環状の凸部からなる環状の補強部を形成することにより、薄くなったウエーハの搬送等の取り扱いを容易にしたウエーハの加工方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−246491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、ウエーハの裏面におけるデバイス領域に対応する領域を研削してデバイス領域の厚さを所定厚さに形成するとともに、ウエーハの裏面における外周余剰領域を残存させて環状の補強部を形成する研削装置は、ウエーハの全面を研削する研削装置の研削砥石の外径より小さい外径の研削砥石を用いるために、それぞれの研削加工を実施する研削装置を設置しなければならず、不経済であるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物を外周部に環状の凸部を残して凹部に研削することができるとともに、被加工物の全面を研削することができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有し回転可能に構成されたチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を研削するための研削砥石が環状に配設され環状の研削帯域を有し回転可能に構成された研削ホイールを備えた研削手段と、
該研削手段を該チャックテーブルの該保持面に垂直な方向に研削送りする研削送り手段と、を具備する研削装置において、
該研削手段を該チャックテーブルの保持面に対して相対的に平行に移動し該チャックテーブルに保持された被加工物の全面を研削する第1の研削位置と、被加工物を外周部に環状の凸部を残して凹部に研削する第2の研削位置に位置付ける位置きめ手段を具備し、
該研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の外径は、研削すべき被加工物の半径より大きく被加工物に研削すべき凹部の直径より小さく設定され、
該研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の内径は、被加工物に研削すべき凹部の半径より小さく設定されており、
該研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の幅は、該研削砥石が該第1の研削位置および第2の研削位置のいずれに位置付けられた状態においても環状の研削帯域が該チャックテーブルに保持された被加工物の回転中心を通過する寸法に設定されている、
ことを特徴とする研削装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明による研削装置は、研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の外径は研削すべき被加工物の半径より大きく被加工物に研削すべき凹部の直径より小さく設定され、研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の内径は被加工物の研削すべき凹部の半径より小さく設定されており、研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の幅は研削砥石が被加工物の全面を研削する第1の研削位置および被加工物を外周部に環状の凸部を残して凹部に研削する第2の研削位置のいずれに位置付けられた状態においても環状の研削帯域がチャックテーブルに保持された被加工物の回転中心を通過する寸法に設定されているので、一つの研削ホイールによって全面研削加工と凹部研削加工を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成された研削装置の斜視図。
【図2】図1に示す研削装置に装備される粗研削用の研削砥石を備えた研削ホイールの底面図。
【図3】図1に示す研削装置に装備される仕上げ研削用の研削砥石を備えた研削ホイールの底面図。
【図4】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
【図5】図4に示す半導体ウエーハの表面に保護部材を貼着した状態を示す斜視図。
【図6】図2または図3に示す研削ホイールを用いて図4に示す半導体ウエーハに全面研削加工するための条件を示す説明図。
【図7】図2または図3に示す研削ホイールを用いて図4に示す半導体ウエーハに外周部に環状の凸部を残して研削加工するための条件を示す説明図。
【図8】図1に示す研削装置によって実施する全面粗研削加工の説明図。
【図9】図1に示す研削装置によって実施する凹部粗研削加工の説明図。
【図10】図1に示す研削装置によって実施する全面仕上げ研削加工の説明図。
【図11】図1に示す研削装置によって実施する凹部仕上げ研削加工の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された研削装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明に従って構成された研削装置の斜視図が示されている。
図示の実施形態における研削装置は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。装置ハウジング2の図1において右上端には、静止支持板21が立設されている。この静止支持板21の内側面には、上下方向に延びる2対の案内レール22、22および23、23が設けられている。一方の案内レール22、22には粗研削手段としての粗研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されており、他方の案内レール23、23には仕上げ研削手段としての仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動可能に装着されている。
【0013】
粗研削ユニット3は、ユニットハウジング31と、該ユニットハウジング31の下端に回転自在に装着されたホイールマウント32に装着された研削ホイール33と、該ユニットハウジング31の上端に装着されホイールマウント32を矢印32aで示す方向に回転せしめるサーボモータ34と、ユニットハウジング31を水平方向に移動可能に支持する移動基台35とを具備している。研削ホイール33は、環状の砥石基台331と、該砥石基台331の下面に装着された粗研削用の研削砥石332とによって構成されている。環状の砥石基台331の下面に装着された粗研削用の研削砥石332は、図2に示すように複数の砥石片332aが径方向に対して傾斜して環状に配設されており、環状の研削帯域330を備えている。なお、複数の砥石片332aからなる環状の研削帯域330の外径、内径および幅等については、後で詳細に説明する。
【0014】
図1に戻って説明を続けると、上記移動基台35の前面には、水平方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して平行)に延びる一対の案内レール351、351が設けられている。この一対の案内レール351、351にユニットハウジング31に形成された一対の被案内レール311、311を嵌合することにより、ユニットハウジング31は移動基台35の水平方向に移動可能に支持される。また、移動基台35の後面には被案内レール352、352が設けられており、この被案内レール352、352を上記静止支持板21に設けられた案内レール22、22に移動可能に嵌合することにより、粗研削ユニット3は静止支持板21に上下方向に移動可能に支持される。
【0015】
図示の形態における粗研削ユニット3は、上記ユニットハウジング31を案内レール351、351に沿って移動せしめる位置きめ手段36を具備している。位置きめ手段36は、上記移動基台35に案内レール351、351と平行に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド361と、該雄ねじロッド361を回転駆動するためのパルスモータ362を備えており、雄ねじロッド361がユニットハウジング31に形成された雌ねじ312に螺合している。このように構成された位置きめ手段36は、パルスモータ362によって雄ねじロッド361を正転および逆転駆動することにより、ユニットハウジング31を案内レール351、351に沿って水平方向に移動せしめる。また、図示の形態における粗研削ユニット3は、上記移動基台35を案内レール22、22に沿って移動させ研削ホイール33を研削送りする研削送り手段37を具備している。研削送り手段37は、上記静止支持板21に案内レール22、22と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド371と、該雄ねじロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372と、上記移動基台35に装着され雄ねじロッド371と螺合する図示しない雌ねじブロックを具備しており、パルスモータ372によって雄ねじロッド371を正転および逆転駆動することにより、粗研削ユニット3を上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる。
【0016】
上記仕上げ研削ユニット4も粗研削ユニット3と同様に構成されており、ユニットハウジング41と、該ユニットハウジング41の下端に回転自在に装着されたホイールマウント42に装着された研削ホイール43と、該ユニットハウジング41の上端に装着されホイールマウント42を矢印42aで示す方向に回転せしめる電動モータ44と、ユニットハウジング41を水平方向に移動可能に支持する移動基台45とを具備している。研削ホイール43は、環状の砥石基台431と、該砥石基台431の下面に装着された仕上げ研削用の研削砥石432とによって構成されている。環状の砥石基台431の下面に装着された仕上げ研削用の研削砥石432は、図3に示すように複数の砥石片432aが径方向に対して傾斜して環状に配設されており、環状の研削帯域430を備えている。なお、複数の砥石片432aからなる環状の研削帯域430の外径、内径および幅等は、上述した粗研削ユニット3の研削ホイール33と同様に構成されており、後で詳細に説明する。
【0017】
図1に戻って説明を続けると、上記の移動基台45の前面には、水平方向に延びる一対の案内レール451、451は設けられている。この一対の案内レール451、451にユニットハウジング41に形成された一対の被案内レール411、411を嵌合することにより、ユニットハウジング41は移動基台45の水平方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して平行)に移動可能に支持される。また、移動基台45の後面には被案内レール452、452が設けられており、この被案内レール452、452を上記静止支持板21に設けられた案内レール23、23に移動可能に嵌合することにより、仕上げ研削ユニット4は静止支持板21に上下方向に移動可能に支持される。図示の実施形態における仕上げ研削ユニット4は、上記ユニットハウジング41を案内レール451、451に沿って移動せしめる位置きめ手段46を具備している。位置きめ手段46は、上記移動基台45に案内レール451、451と平行に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド461と、該雄ねじロッド461を回転駆動するためのパルスモータ462を備えており、雄ねじロッド461がユニットハウジング41に形成された雌ねじ412に螺合している。このように構成された位置きめ手段46は、パルスモータ462によって雄ねじロッド461を正転および逆転駆動することにより、ユニットハウジング41を案内レール451、451に沿って水平方向に移動せしめる。
【0018】
上記移動基台45の後面には被案内レール452、452が設けられており、この被案内レール452、452を上記静止支持板21に設けられた案内レール23、23に移動可能に嵌合することにより、仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動可能に支持される。図示の形態における仕上げ研削ユニット4は、上記移動基台45を案内レール23、23に沿って移動させ研削ホイール43を研削送りする研削送り送り手段47を具備している。研削送り送り手段47は、上記静止支持板21に案内レール23、23と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド471と、該雄ねじロッド471を回転駆動するためのパルスモータ472と、上記移動基台45に装着され雄ねじロッド471と螺合する図示しない雌ねじブロックを具備しており、パルスモータ472によって雄ねじロッド471を正転および逆転駆動することにより、仕上げ研削ユニット4を上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる。
【0019】
図示の実施形態における研削装置は、上記静止支持板21の前側において装置ハウジング2の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル5を具備している。このターンテーブル5は、比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印5aで示す方向に適宜回転せしめられる。ターンテーブル5には、図示の実施形態の場合それぞれ120度の位相角をもって3個のチャックテーブル6が水平面内で回転可能に配置されている。このチャックテーブル6は、円盤状の基台61とポーラスセラミック材によって円盤状に形成され吸着保持チャック62とからなっており、吸着保持チャック62上(保持面)に載置されたウエーハを図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持する。このように構成されたチャックテーブル6は、図1に示すように図示しない回転駆動機構によって矢印6aで示す方向に回転せしめられる。ターンテーブル5に配設された3個のチャックテーブル6は、ターンテーブル5が適宜回転することによりウエーハ搬入・搬出域A、粗研削加工域B、および仕上げ研削加工域Cおよびウエーハ搬入・搬出域Aに順次移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態における研削装置は、被加工物搬入・搬出域Aに対して一方側に配設され研削加工前の被加工物である半導体ウエーハをストックする第1のカセット7と、被加工物搬入・搬出域Aに対して他方側に配設され研削加工後の被加工物である半導体ウエーハをストックする第2のカセット8と、第1のカセット7と被加工物搬入・搬出域Aとの間に配設され被加工物の中心合わせを行う中心合わせ手段9と、被加工物搬入・搬出域Aと第2のカセット8との間に配設されたスピンナー洗浄手段11と、第1のカセット7内に収納された被加工物である半導体ウエーハを中心合わせ手段9に搬出するとともにスピンナー洗浄手段11で洗浄された半導体ウエーハを第2のカセット8に搬送する被加工物搬送手段12と、中心合わせ手段9上に載置され中心合わせされた半導体ウエーハを被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に搬送する被加工物搬入手段13と、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に載置されている研削加工後の半導体ウエーハをスピンナー洗浄手段11に搬送する被加工物搬出手段14を具備している。
【0021】
上記第1のカセット7には、図4に示す半導体ウエーハが収容される。図4に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面10aに複数のストリート101が格子状に形成されているとともに、該複数のストリート101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように構成された半導体ウエーハ10は、デバイス102が形成されているデバイス領域104と、該デバイス領域104を囲繞する外周余剰領域105を備えている。なお、外周余剰領域105の幅は、2〜3mmに設定されている。このように構成された半導体ウエーハ10は、図5に示すように表面10aに保護部材100が貼着された状態で第1のカセット7に複数枚収容される。このとき、半導体ウエーハ10は、裏面10bを上側にして収容される。
【0022】
ここで、被加工物である半導体ウエーハ10の大きさおよび半導体ウエーハ10に研削すべき凹部の大きさと、上記研削ホイール33(43)を構成する研削砥石332(432)の複数の砥石片332a(432a)からなる環状の研削帯域330(430)の外径d1、内径d2および幅B等との関係について、図6および図7を参照して説明する。図6は研削砥石332(432)によって被加工物である半導体ウエーハ10の全面を研削する状態(第1の研削位置)を示している。半導体ウエーハ10の全面を研削するには、環状の研削帯域330(430)の外径d1が被加工物である半導体ウエーハ10の半径r1より大きくなければならないとともに、環状の研削帯域330(430)が被加工物である半導体ウエーハ10の回転中心P1を通過しなければならない。また、図7は研削砥石332(432)によって被加工物である半導体ウエーハ10に外周部に環状の凸部を残して凹部に研削する状態(第2の研削位置)を示している。この場合、環状の研削帯域330(430)の外径d1が被加工物である半導体ウエーハ10のデバイス領域104と外周余剰領域105との境界線106の直径D2(研削すべき凹部の直径D2)より小さく境界線106の半径r2(研削すべき凹部の半径r2)より大きく、環状の研削帯域330(430)の内径d2が境界線106の半径r2(研削すべき凹部の半径r2)より小さくなければならないとともに、環状の研削帯域330(430)が半導体ウエーハ10の回転中心P1を通過しなければならない。従って、環状の研削域330(430)の幅Bは、上記第1の研削位置および第2の研削位置のいずれに位置付けられた状態においても環状の研削域330(430)がチャックテーブルに保持された被加工物である半導体ウエーハ10の回転中心P1を通過する寸法に設定されている。
【0023】
従って、研削砥石332(432)によって被加工物の全面を研削するとともに、被加工物を外周部に環状の凸部を残して凹部に研削するためには、研削砥石332(432)の環状の研削帯域330(430)の外径d1を研削すべき被加工物の半径r1より大きく被加工物に研削すべき凹部の直径D2より小さく設定し、研削砥石332(432)の環状の研削帯域330(430)の内径d2を被加工物に研削すべき凹部の半径r2より小さく設定し、研削砥石332(432)の環状の研削帯域330(430)の幅Bを研削砥石332(432)が第1の研削位置および第2の研削位置のいずれに位置付けられた状態においても環状の研削帯域330(430)がチャックテーブルに保持された被加工物の回転中心P1を通過する寸法に設定する必要がある。
【0024】
図示の実施形態における研削装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
第1のカセット7に収容された研削加工前の被加工物である半導体ウエーハ10は被加工物搬送手段12の上下動作および進退動作により搬送され、中心合わせ手段9に載置される。中心合わせ手段9に載置され中心合わせされた半導体ウエーハ10は、被加工物搬入手段13の旋回動作によって被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6の吸着保持チャック62上に載置される。そして、図示しない吸引手段を作動して、半導体ウエーハ10を吸着保持チャック62上に吸引保持する。次に、ターンテーブル5を図示しない回転駆動機構によって矢印5aで示す方向に120度回動せしめて、半導体ウエーハ10を載置したチャックテーブル6を粗研削加工域Bに位置付ける。
【0025】
粗研削加工域Bに位置付けられたチャックテーブル6に保持された半導体ウエーハ10の全面を研削する場合には、上記位置きめ手段36を作動して研削ホイール33を構成する粗研削用の研削砥石332を図6に示す第1の研削位置に位置付ける。一方、半導体ウエーハ10の裏面に外周余剰領域105を環状の凸部として残して凹部を研削する場合には、上記位置きめ手段36を作動して研削ホイール33を構成する粗研削用の研削砥石332を図7に示す第2の研削位置に位置付ける。
【0026】
次に、半導体ウエーハ10の全面を研削する場合には、図8に示すようにチャックテーブル6を矢印6aで示す方向に300rpmで回転しつつ、研削砥石332を備えた研削ホイール33を矢印32aで示す方向に6000rpmで回転せしめるとともに、研削送り手段37を作動して研削ホイール33の研削砥石332を半導体ウエーハ10の上面(裏面10b)に接触させる。そして、研削ホイール33を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。この結果、半導体ウエーハ10は上面(裏面10b)が粗研削され所定の厚さより僅かに厚く形成される(全面粗研削加工)。
【0027】
また、半導体ウエーハ10の裏面10bに余剰領域105を環状の凸部として残して凹部を研削する場合も、図9に示すようにチャックテーブル6を矢印6aで示す方向に300rpmで回転しつつ、研削砥石332を備えた研削ホイール33を矢印32aで示す方向に6000rpmで回転せしめるとともに、研削送り手段37を作動して研削ホイール33の研削砥石332を半導体ウエーハ10の上面(裏面10b)に接触させる。そして、研削ホイール33を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。この結果、半導体ウエーハ10の裏面10bには、デバイス領域104に対応する領域が粗研削除去されて所定厚さ(例えば30μm)より僅かに厚い円形状の凹部104bが形成されるとともに、外周余剰領域105に対応する領域が残存されて環状の凸部からなる環状の補強部105bに形成される(凹部粗研削加工)。
【0028】
なお、この間にウエーハ搬入・搬出域Aに位置付けられた次のチャックテーブル6上には、研削加工前の半導体ウエーハ10が上述したように中心位置合わせされて載置される。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、半導体ウエーハ10をチャックテーブル6上に吸引保持する。次に、ターンテーブル5を矢印5aで示す方向に120度回動せしめて、全面粗研削加工または凹部粗研削加工された半導体ウエーハ10を保持しているチャックテーブル6を仕上げ研削加工域Cに位置付け、研削加工前の半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル6を粗研削加工域Bに位置付ける。
【0029】
このようにして、粗研削加工域Bに位置付けられたチャックテーブル6上に保持された研削加工前の半導体ウエーハ10の裏面10bには粗研削ユニット3によって上記図8に示す全面粗研削加工または上記図9に示す凹部粗研削加工が実施される。
【0030】
また、仕上げ研削加工域Cに位置付けられたチャックテーブル6上に載置され上記全面粗研削加工された半導体ウエーハ10の裏面10bに仕上げ研削ユニット4によって全面仕上げ研削加工を施す場合には、上記位置きめ手段46を作動して研削ホイール43を構成する仕上げ研削用の研削砥石432を図6に示す第1の研削位置に位置付ける。一方、仕上げ研削加工域Cに位置付けられたチャックテーブル6上に載置され上記凹部粗研削加工された半導体ウエーハ10の裏面10bに仕上げ研削ユニット4によって凹部仕上げ研削加工を施す場合には、上記位置きめ手段46を作動して研削ホイール43を構成する仕上げ研削用の研削砥石432を図7に示す第2の研削位置に位置付ける。
【0031】
次に、上記全面粗研削加工された半導体ウエーハ10の裏面10bに全面仕上げ研削加工を施す場合には、図10に示すようにチャックテーブル6を矢印6aで示す方向に300rpmで回転しつつ、研削砥石432を備えた研削ホイール43を矢印42aで示す方向に6000rpmで回転せしめるとともに、研削送り手段47を作動して研削ホイール43の研削砥石432を半導体ウエーハ10の上面(裏面10b)に接触させる。そして、研削ホイール33を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。この結果、半導体ウエーハ10は上面(裏面10b)が仕上げ研削され所定の厚さ形成される(全面仕上げ研削加工)。
【0032】
また、上記凹部粗研削加工された半導体ウエーハ10の裏面10bに凹部仕上げ研削加工を施す場合には、図11に示すようにチャックテーブル6を矢印6aで示す方向に300rpmで回転しつつ、研削砥石432を備えた研削ホイール43を矢印42aで示す方向に6000rpmで回転せしめるとともに、研削送り手段47を作動して研削ホイール43の研削砥石432を半導体ウエーハ10の裏面に形成された円形状の凹部104bの底面に接触させる。そして、研削ホイール43を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。この結果、半導体ウエーハ10の裏面に形成された円形状の凹部104bの底面が仕上げ研削され、デバイス領域104に対応する領域は所定厚さ(例えば30μm)に形成される(凹部仕上げ研削加工)。
【0033】
上述したように、粗研削加工域Bにおいて全面粗研削加工または凹部粗研削加工された半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル6は仕上げ研削加工域Cに、被加工物搬入・搬出域Aにおいて研削加工前の半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル6は粗研削加工域Bにそれぞれ移動せしめられる。なお、粗研削加工域Bおよび仕上げ研削加工域Cを経由して被加工物搬入・搬出域Aに戻ったチャックテーブル6は、ここで全面仕上げ研削加工または凹部仕上げ研削加工された半導体ウエーハ10の吸着保持を解除する。そして、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上の全面仕上げ研削加工または凹部仕上げ研削加工された半導体ウエーハ10は、被加工物搬出手段14によってスピンナー洗浄手段11に搬出される。
【0034】
スピンナー洗浄手段11に搬送された半導体ウエーハ10は、ここで裏面10a(研削面)および側面に付着している研削屑が洗浄除去されるとともに、スピン乾燥される。このようにして洗浄およびスピン乾燥された半導体ウエーハ10は、被加工物搬送手段12によって第2のカセット8に搬送され収納される。
【0035】
以上本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、上述した実施形態においては研削手段をチャックテーブルの保持面に対して相対的に平行に移動し第1の研削位置と第2の研削位置に位置付ける位置きめ手段として、粗研削ユニット3のユニットハウジング31を案内レール351、351に沿って移動せしめる位置きめ手段36および仕上げ研削ユニット4のユニットハウジング41を案内レール451、451に沿って移動せしめる位置きめ手段46を示したが、位置きめ手段としてはチャックテーブル6が配設されたターンテーブル5を回動する回転駆動機構を用いることができる。即ち、ターンテーブル5に配設されたチャックテーブル6を研削加工域に位置付けた後に、ターンテーブル5を僅かに回動調整して、チャックテーブル6に保持された被加工物と研削ホイールの研削砥石との関係を上記第1の研削位置状態または第2の研削位置状態に位置付ける。
また、上述した実施形態においては粗研削手段としての粗研削ユニット3と仕上げ研削手段としての仕上げ研削ユニット4を装備した研削装置を示したが、本発明は一つの研削ユニットを備えた研削装置に適用されることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
2:装置ハウジング
3:粗研削ユニット
33:研削ホイール
332:研削砥石
36:位置きめ手段
37:研削送り手段
4:仕上げ研削ユニット
43:研削ホイール
432:研削砥石
46:位置きめ手段
47:研削送り手段
5:ターンテーブル
6:チャックテーブル
7:第1のカセット
8:第2のカセット
9:中心合わせ手段
10:半導体ウエーハ
11:スピンナー洗浄手段
12:被加工物搬送手段
13:被加工物搬入手段
14:被加工物搬出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有し回転可能に構成されたチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を研削するための研削砥石が環状に配設され環状の研削帯域を有し回転可能に構成された研削ホイールを備えた研削手段と、
該研削手段を該チャックテーブルの該保持面に垂直な方向に研削送りする研削送り手段と、を具備する研削装置において、
該研削手段を該チャックテーブルの保持面に対して相対的に平行に移動し該チャックテーブルに保持された被加工物の全面を研削する第1の研削位置と、被加工物を外周部に環状の凸部を残して凹部に研削する第2の研削位置に位置付ける位置きめ手段を具備し、
該研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の外径は、研削すべき被加工物の半径より大きく被加工物に研削すべき凹部の直径より小さく設定され、
該研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の内径は、被加工物に研削すべき凹部の半径より小さく設定されており、
該研削ホイールを構成する研削砥石の環状の研削帯域の幅は、該研削砥石が該第1の研削位置および第2の研削位置のいずれに位置付けられた状態においても環状の研削帯域が該チャックテーブルに保持された被加工物の回転中心を通過する寸法に設定されている、
ことを特徴とする研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−169487(P2012−169487A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29942(P2011−29942)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】