説明

研磨パッドおよびその製造方法

【課題】研磨時においてスクラッチの発生が極めて少なく、研磨均一性に一層優れ、より高度の平坦化が可能であり、著しく長時間使用可能であり、金属含量も少ない研磨パッドを安価に提供すること。
【解決手段】ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位とを有する共重合体を含有する発泡構造の研磨層を有する研磨パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレートから誘導される構造単位とエチレン性不飽和モノマーから誘導される構造単位とを有する共重合体を含有する発泡構造の研磨層を有する研磨パッドおよびその製造方法に関する。本発明の研磨パッドは、例えば、シリコンウェハや半導体ウェハ等を高精度に、かつ高い研磨効率で研磨するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、研磨パッドは、集積回路を形成するための基板として使用されるシリコンウェハの鏡面加工を行ったり、半導体デバイス製造時に絶縁膜や導電体膜の凹凸を平坦化加工したりする際に行われる化学機械的研磨(CMP)などに用いられている。このような研磨パッドとしては、不織布にポリウレタン樹脂を含浸させた比較的軟質の研磨パッドや発泡ポリウレタンからなる硬質の研磨パッド、あるいは、軟質の研磨パッドと硬質の研磨パッドとを貼り合わせた2層構造パッドなどが使用されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
近年、半導体デバイスの高集積化、多層配線化に伴い、半導体ウェハにおいては、高度の平坦性を有することや金属不純物の混入が少ないことなど一層の品質向上や、低価格化の要求が増々高まっている。それに伴い、半導体ウェハを製造するために使用される研磨パッドに対しても、従来以上に高度の平坦化が可能であること、研磨パッド自体の金属の含有量が極めて少ないこと、研磨時におけるスクラッチの発生が極めて少ないこと、長時間使用可能であることおよび安価であることなどが要求されている。
【0004】
しかしながら、上述した従来の研磨パッドは主にポリウレタン樹脂から構成されているため、長時間使用した場合にはウレタン結合の加水分解などにより研磨パッドの研磨特性が変化する恐れがある。また、通常はポリウレタン樹脂を製造するために混練機や押出機等によりポリウレタン樹脂の原料を混合するが、多くは、その内部表面は金属であるため、金属がポリウレタン樹脂中に一部混入する恐れもある。この金属混入を防ぐためには混練機や押出機等の内部をフッ素系樹脂などによりコーティングするなどの対策が考えられる。しかしながら、この場合には多大な費用がかかる上、コーティングしたフッ素系樹脂などが摩耗や剥離によりポリウレタン樹脂中に混入し、かえって研磨特性に悪影響を与えることが懸念される。
【0005】
一方、(メタ)アクリル系樹脂からなる研磨パッドも提案されている。例えば、アクリル系樹脂中に微小中空粒子等の高分子微小エレメントを分散させた構造を有する研磨パッドが知られている(特許文献4参照)。また、ウレタン結合を有する特定のフォトポリマー組成物を光硬化させた研磨パッドが知られている(特許文献5参照)。また、特定の酸価と水酸基価を有するアクリル系樹脂からなる研磨パッドが知られている(特許文献6参照)。さらに、特定のプレポリマーとエチレン性不飽和モノマーと光重合開始剤を硬化させて得られるポリウレタンフォトポリマー樹脂を含む研磨パッドが知られている(特許文献7参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−8178号公報
【特許文献2】特開2000−178374号公報
【特許文献3】特開2001−89548号公報
【特許文献4】特開2001−291685号公報
【特許文献5】特開2003−45830号公報
【特許文献6】特開2005−166766号公報
【特許文献7】米国特許第5965460号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献4の研磨パッドは軟質成分を全く含有しないか、あるいは含有していても僅かであるため研磨パッドの硬度が非常に高く、研磨対象物にスクラッチの発生が起こりやすい。特に近年は半導体デバイスにおける配線の微細化が進んでおり、従来は許容されていた微小なスクラッチでさえも極力発生しないことが望まれているため、上記特許文献4の研磨パッドよりもさらにスクラッチの発生が少ない研磨パッドが望まれている。また、特許文献4の研磨パッドは、アクリル系樹脂中での高分子微小エレメントの分散が不均一になりやすいため、一つの研磨パッド中においても場所によって硬度が異なり、研磨性能にばらつきが出やすいといった問題もある。
【0008】
また、上記特許文献5や6の研磨パッドは軟質セグメントと硬質セグメントを有しない非セグメント構造であるため、研磨パッドを構成する樹脂のガラス転移温度が高い場合には研磨パッドの硬度が高くなりすぎて研磨対象物にスクラッチが発生しやすく、一方、ガラス転移温度が低い場合には研磨パッドの耐熱性が劣るため研磨時の温度上昇により研磨パッドが変形し、研磨対象物の面内で研磨速度が不均一になりやすいといった問題がある。さらに、上記特許文献7の研磨パッドは発泡構造を有しないため、研磨均一性や研磨速度の安定性に関して、満足のできるものではなかった。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、研磨時においてスクラッチの発生が極めて少なく、研磨均一性に一層優れ、より高度の平坦化が可能であり、著しく長時間使用可能であり、金属含量も少ない研磨パッドを安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討を重ねた。その結果、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位とを有する共重合体を含有する発泡構造の研磨層を有する研磨パッドが上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
[1] 本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位とを有する共重合体を含有する発泡構造の研磨層を有する研磨パッドである。
【0012】
[2] 本発明は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量が1000以上である[1]に記載の研磨パッドである。
【0013】
[3] 本発明は、前記エチレン性不飽和モノマー(B)の平均分子量が500以下である[1]または[2]に記載の研磨パッドである。
【0014】
[4] 本発明は、共重合体における、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量と前記エチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量との比率が、[ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量]/[エチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量]=20/80〜60/40である[1]から[3]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0015】
[5] 本発明は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリオール(a1)、有機ジイソシアネート(a2)および水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)の少なくとも3成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである[1]から[4]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0016】
[6] 本発明は、前記ポリオール(a1)の数平均分子量が500〜5000である[5]に記載の研磨パッドである。
【0017】
[7] 本発明は、前記エチレン性不飽和モノマー(B)が、エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体としたときの該重合体のガラス転移温度が60℃以上である[1]から[6]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0018】
[8] 本発明は、エチレン性不飽和モノマー(B)が(メタ)アクリル酸誘導体であるか、または(メタ)アクリル酸誘導体と(メタ)アクリル酸誘導体以外のエチレン性不飽和モノマーとの混合物である[1]から[7]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0019】
[9] 本発明は、前記研磨層の密度が0.6〜1.1g/cmである[1]から[8]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0020】
[10] 本発明は、前記研磨層の発泡構造を構成する気泡の平均直径が1〜100μmである[1]から[9]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0021】
[11] 本発明は、前記研磨層の発泡構造が、共重合体中に分散された揮発性液体を除去することにより形成されたものである[1]から[10]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0022】
[12] 本発明は、前記研磨層の50℃における動的弾性率が9×10Pa以下である[1]から[11]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0023】
[13] 本発明は、前記研磨層の50℃における動的弾性率が1×10Pa以上である[1]から[12]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0024】
[14] 本発明は、前記研磨層の主分散のピーク温度が80℃以上である[1]から[13]のいずれかに記載の研磨パッドである。
【0025】
[15] 本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)および揮発性液体を含有する混合物(S)を硬化させる工程(工程1)、並びに揮発性液体を除去する工程(工程2)を含む、発泡構造の研磨層を有する研磨パッドの製造方法である。
【0026】
[16] 本発明は、前記揮発性液体が水または水を含む混合物である[15]に記載の製造方法である。
【0027】
[17] 本発明は、前記混合物(S)中において、水または水を含む混合物がW/O型に分散している[16]に記載の製造方法である。
【0028】
[18] 本発明は、前記混合物(S)が、さらに分散剤を含有する[15]から[17]のいずれかに記載の製造方法である。
【0029】
[19] 分散剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の共重合体である[18]に記載の製造方法である。
【0030】
[20] 本発明は、[1]から[14]のいずれかに記載の研磨パッドを用いるシリコンウェハまたは半導体ウェハの研磨方法である。
【0031】
[21] 本発明は、[1]から[14]のいずれかに記載の研磨パッドを用いて製造される半導体デバイスである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、研磨時においてスクラッチの発生が極めて少なく、研磨均一性に一層優れ、より高度の平坦化が可能であり、著しく長時間使用可能である研磨パッドを提供することができる。また、本発明によれば、金属含量の少ない研磨パッドを安価に提供することができる。本発明の研磨パッドは、化学機械的研磨(CMP)などに特に有用である。また、本発明の研磨パッドを用いてシリコンウェハや半導体ウェハを研磨することにより、得られるシリコンウェハや半導体ウェハの収率が向上するため、シリコンウェハや半導体ウェハ、さらにはそれらより形成される半導体デバイスを品質良く安価に製造することが可能となる。さらに、本発明の製造方法によれば、本発明の研磨パッドを容易に製造することができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の研磨パッドについて詳細に説明する。
本発明の研磨パッドは発泡構造の研磨層を有する。そして、該研磨層は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位とを有する共重合体を含有する。
【0034】
なお、本発明の研磨パッドを何ら限定するものではないが、上記共重合体において、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位は軟質セグメントを形成し、一方、エチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位は硬質セグメントを形成しやすい。そのため共重合体は、これらの軟質セグメントと硬質セグメントとを有するセグメント構造を有しやすい。セグメント構造を有する共重合体を含有する研磨層を有する研磨パッドは、研磨時にスクラッチの発生が少なく、また、研磨時の温度上昇による研磨パッドの変形に由来する研磨対象物面内での研磨速度の不均一化が抑えられる傾向にある。
【0035】
<ウレタン(メタ)アクリレート(A)について>
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、一分子中にウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を各々1つ以上含有する化合物である。ウレタン(メタ)アクリレート(A)中におけるウレタン結合や(メタ)アクリロイル基の位置には特に制限はないが、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の両末端にそれぞれ(メタ)アクリロイル基を有することが好ましく、この場合には、得られる共重合体において軟質セグメントの自由末端が存在しないため、耐久性が向上した研磨パッドを得ることができる。
【0036】
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリオール(a1)、有機ジイソシアネート(a2)および水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)の少なくとも3成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートであることが、所望のウレタン(メタ)アクリレート(A)を容易に製造することができることから好ましい。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造に用いられるポリオール(a1)としては、公知のポリオールを用いることができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール(a1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。また、ポリオール(a1)1分子あたりの水酸基数は2であることが好ましい。
【0038】
上記のポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)、グリセリンベースポリアルキレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0039】
上記のポリエステルポリオールとしては、例えば、常法に従い、ジカルボン酸またはそのエステル、酸無水物などのエステル形成性誘導体と低分子ポリオールとを直接エステル化反応もしくはエステル交換反応に付すか、またはラクトンを開環重合することにより製造することができる。
【0040】
ポリエステルポリオールを構成する低分子ポリオールとしては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノールなどの脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族二価アルコールなどを挙げることができる。これらの低分子ポリオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記の低分子ポリオールは、3官能以上の低分子ポリオールを、本発明の効果を損わない範囲で少量含有することができる。3官能以上の低分子ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオールなどを挙げることができる。
【0041】
ポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。これらのジカルボン酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記のラクトンの例としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0043】
具体的なポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどが挙げられる。
【0044】
上記のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものを使用することができる。ポリカーボネートポリオールを構成する低分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示した低分子ポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを挙げることができる。さらに、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを挙げることができ、また、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0045】
具体的なポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオールなどが挙げられる。
【0046】
ポリエステルカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子ポリオール、ジカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られるものを使用することができる。あるいは、予め上記した方法によりポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールをそれぞれ合成し、次いでそれらをカーボネート化合物と反応させるか、または低分子ポリオールおよびジカルボン酸と反応させて得られるものを使用することができる。
【0047】
また、上述した種々のポリオール(a1)のうち好ましいポリオール(a1)としては、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)が挙げられる。特に、耐水性に優れることから、ポリオール(a1)としてポリテトラメチレングリコールを用いることが好ましい。
【0048】
また、ポリオール(a1)の数平均分子量は500〜5000の範囲にあることが好ましく、この場合には研磨パッドに適度な柔軟性を与えることができると共に該ポリオール(a1)の入手も容易となる。ポリオール(a1)の数平均分子量が500未満の場合には、ウレタン(メタ)アクリレート(A)中のウレタン基濃度が高くなりすぎ、得られる研磨パッドの柔軟性が不足して研磨時にスクラッチが多く発生する傾向がある。一方、ポリオール(a1)の数平均分子量が5000より大きい場合には、ポリオール(a1)の製造が困難となったり、粘度が高くなり取り扱いが難しくなったりする傾向がある。より好ましいポリオール(a1)の数平均分子量は700〜4500であり、さらに好ましい数平均分子量は900〜4000である。なお、本明細書におけるポリオール(a1)の数平均分子量は、JIS K−1557に準拠して測定した水酸基価に基いて算出した数平均分子量である。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造に用いられる有機ジイソシアネート(a2)としては、公知の有機ジイソシアネートを使用することができ、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン、ノルボルネンジイソシアネートなどの脂肪族または脂環式ジイソシアネート;2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、m−またはp−フェニレンジイソシアネート、m−またはp−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0050】
これらの中でも、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートなどの2つのイソシアネート基の間の反応性の差が大きい有機ジイソシアネートを用いることが好ましく、この場合には得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)の分子量分布を狭くすることができ、研磨パッド中でウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位に由来するセグメントとエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位に由来するセグメントとを適度に相分離させることができる。
【0051】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造に用いられる水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)としては、公知の水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどを挙げることができる。これらの水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルまたはメタクリル酸4−ヒドロキシブチルを用いることが好ましく、この場合には、熱による(メタ)アクリル酸誘導体の自発重合を抑制することができ、またイソシアネート基との反応性を高めることができるため、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を容易に製造することが可能となる。
【0052】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリオール(a1)と有機ジイソシアネート(a2)とを、好ましくは[ポリオール(a1)のモル数]:[有機ジイソシアネート(a2)のモル数]=1:1.05〜1:2のモル比で反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後、該プレポリマーと水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)とを反応させる方法が好ましい。この方法による場合には、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の分子量分布を狭くすることができ、研磨パッド中でウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、軟質セグメント)とエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、硬質セグメント)とを適度に相分離させることができる。より好ましいポリオール(a1)と有機ジイソシアネート(a2)とのモル比は[ポリオール(a1)のモル数]:[有機ジイソシアネート(a2)のモル数]=1:1.1〜1:1.8であり、さらに好ましいモル比は[ポリオール(a1)のモル数]:[有機ジイソシアネート(a2)のモル数]=1:1.15〜1.7である。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する際には、粘度を低減させるために、溶剤を使用してもよい。この際に使用することができる溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの一般的な有機溶剤が挙げられる。また、目的とする共重合体を得る際に使用するエチレン性不飽和モノマー(B)の一部、全部または過剰量を、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する際の溶剤として使用することもできる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する際には、ウレタン化反応を促進するための触媒(ウレタン化反応触媒)や、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)やエチレン性不飽和モノマー(B)などの熱重合を防止するための重合禁止剤などを添加してもよい。
【0054】
上記のウレタン化反応触媒としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチルエステル)塩等の有機スズ系化合物;チタン酸;テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンアセチルアセトネート等の有機チタン系化合物;トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン系化合物などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ウレタン化反応触媒の使用量は、ポリオール(a1)および有機ジイソシアネート(a2)の合計質量に基づいて0.1ppm〜2質量%、更には0.5ppm〜0.2質量%、特に1ppm〜0.1質量%の範囲にあることが好ましい。なお、ウレタン化反応触媒は、1度に加えても良いし、複数回に分けて加えても良い。
【0055】
また、上記の重合禁止剤としては、例えば、フェノール系重合禁止剤、リン系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤、硫黄系重合禁止剤、ヒドロキノン系重合禁止剤、キノリン系重合禁止剤などが挙げられる。
【0056】
フェノール系重合禁止剤としては、例えば、2,4−ジ(オクチルチオ)メチル−6−メチルフェノール[イルガノックス(Irganox)1520 チバガイギー(株)製]、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチル−6−t−ブチルフェニルアクリレート[スミライザーGM 住友化学工業(株)製]、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ(t−ペンチル)フェニルアクリレート[スミライザーGS 住友化学工業(株)製]、ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]−トリエチレングリコールエステル[イルガノックス(Irganox)245 チバガイギー(株)製]、ヒドラゾビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナモイル)[イルガノックス(Irganox)MD−1024 チバガイギー(株)製]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)[イルガノックス(Irganox)1098 チバガイギー(株)製]、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン[スミライザーGA80 住友化学工業(株)製]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[アデカスタブAO−330 旭電化工業(株)製]、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン[アデカスタブAO−20 旭電化工業(株)製]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン[イルガノックス(Irganox)1010 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]などが挙げられる。
【0057】
リン系重合禁止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト[アデカスタブ2112 旭電化工業(株)製]、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト[アデカスタブHP−10 旭電化工業(株)製]、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト[アデカスタブPEP−8 旭電化工業(株)製]、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト[アデカスタブPEP−24G 旭電化工業(株)製]、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト[アデカスタブPEP−36 旭電化工業(株)製]などが挙げられる。
【0058】
アミン系重合禁止剤としては、芳香族アミン類、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0059】
硫黄系重合禁止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジ(トリデシル)3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル2,2−チオジアセテート、ジミリスチル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、3,9−ジ(ラウリルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0060】
ヒドロキノン系重合禁止剤としては、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノンなどが挙げられる。また、キノリン系重合禁止剤としては、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが挙げられる。
重合禁止剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量は1000以上であることが好ましい。この場合には研磨パッドに適度な柔軟性を与えることができ、研磨時のスクラッチの発生を抑制することができる。ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量が1000未満であると、研磨パッド中でウレタン(メタ)アクリレートから誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、軟質セグメント)とエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、硬質セグメント)との相分離が不十分となる場合がある。その結果、研磨パッドの柔軟性または耐熱性のいずれかが不足し、研磨時に多くのスクラッチが発生したり、研磨均一性が低下したりする場合がある。研磨時のスクラッチの発生が少なく、また研磨均一性に優れた研磨パッドを得ることができ、また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)との混合性に優れ研磨パッドの製造が容易となることから、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量は1500〜10000の範囲にあることがより好ましく、2000〜8500の範囲にあることがさらに好ましく、2500〜7000の範囲にあることが特に好ましい。
【0062】
本明細書におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量は、該ウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する際に使用する原料およびその使用量から求められる計算値である。例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(A)がポリオール(a1)、有機ジイソシアネート(a2)および水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)の3成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである場合には、これらの3成分中に存在する水酸基およびイソシアネート基がすべて反応したとして、得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)1分子中に存在するポリオール(a1)の単位、有機ジイソシアネート(a2)の単位、および水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)の単位の個数を算出し、ポリオール(a1)の数平均分子量、有機ジイソシアネート(a2)の分子量、および水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)の分子量から、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量を求めることができる。
【0063】
より具体的な例により説明すると、1分子あたりの水酸基の数がnであるポリオール(a1)と有機ジイソシアネート(a2)とを[ポリオール(a1)のモル数]/[有機ジイソシアネート(a2)のモル数]=X/Y(但し、2Y>nX)で反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後、該プレポリマーと水酸基を1つ有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)とを、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)中の水酸基の全モル数が、該プレポリマーの全イソシアネート基の全モル数以上となるように反応させてウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する場合には、プレポリマー1分子中に存在するポリオール(a1)の単位はX/{Y−(n−1)X}個と計算され、また、プレポリマー1分子中に存在する有機ジイソシアネート(a2)の単位の個数はY/{Y−(n−1)X}個と計算される。また、プレポリマー1分子中に存在する末端イソシアネート基の数は(2Y−nX)/{Y−(n−1)X}個と計算される。したがって、得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量は、式:[ポリオール(a1)の数平均分子量]×[X/{Y−(n−1)X}]+[有機ジイソシアネート(a2)の分子量]×[Y/{Y−(n−1)X}]+[水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)の分子量]×[(2Y−nX)/{Y−(n−1)X}]により算出される。
【0064】
また、使用するウレタン(メタ)アクリレート(A)が、上述したように、ポリオール(a1)、有機ジイソシアネート(a2)および水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)の少なくとも3成分を反応させて得られるものである場合には、ウレタン(メタ)アクリレート(A)中に占めるポリオール(a1)由来のセグメントの比率が70〜90質量%の範囲にあることが好ましく、この場合には研磨パッドに適度な柔軟性を与え、研磨時のスクラッチの発生を抑制することができる。ポリオール(a1)由来のセグメントの比率が70質量%未満の場合には、研磨パッドの柔軟性が不足して研磨時のスクラッチが発生しやすくなる傾向にある。一方、ポリオール(a1)由来のセグメントの比率が90質量%を超える場合には、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量が大きくなりすぎるため、ウレタン(メタ)アクリレート(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)の均一な混合が困難となる傾向にある。ウレタン(メタ)アクリレート(A)中に占めるポリオール(a1)由来のセグメントの比率は72〜88質量%の範囲にあることがより好ましく、74〜86質量%の範囲にあることがさらに好ましい。なお、本明細書における、ウレタン(メタ)アクリレート(A)中に占めるポリオール(a1)由来のセグメントの比率は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の全質量に対する、使用したポリオール(a1)の総質量の割合に等しい。
【0065】
<エチレン性不飽和モノマー(B)について>
本発明で用いるエチレン性不飽和モノマー(B)とは、分子内にエチレン性不飽和結合を有する、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の化合物である。エチレン性不飽和モノマー(B)の平均分子量は500以下であることが好ましい。エチレン性不飽和モノマー(B)の平均分子量が500より大きいと、エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体のガラス転移温度が低くなりすぎて研磨パッドの耐熱性が低下し、研磨均一性が低下する傾向がある。より好ましいエチレン性不飽和モノマー(B)の平均分子量は400以下であり、さらに好ましい平均分子量は30〜350であり、特に好ましい平均分子量は50〜300である。なお、エチレン性不飽和モノマー(B)の平均分子量は、エチレン性不飽和モノマー(B)が1種類のモノマーから構成される場合にはこのモノマーの分子量を意味し、エチレン性不飽和モノマー(B)が複数の種類から構成される場合には、各モノマーの分子量とエチレン性不飽和モノマー(B)全体における各モノマーのモル分率との積の総和を意味する。
【0066】
本発明で用いるエチレン性不飽和モノマー(B)は、公知のエチレン性不飽和モノマーを用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸誘導体(b1)や、(メタ)アクリル酸誘導体(b1)以外のエチレン性不飽和モノマー(b2)(以下、単に「その他のエチレン性不飽和モノマー(b2)」と略称する場合がある)のうちの1種または2種以上を用いることができ、エチレン性不飽和モノマー(B)としては、(メタ)アクリル酸誘導体(b1)単独であるか、または(メタ)アクリル酸誘導体(b1)とその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)との混合物であることが好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル酸誘導体(b1)としては、公知の(メタ)アクリル酸誘導体を用いることができるが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの単官能性の(メタ)アクリル酸誘導体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートなどの二官能性の(メタ)アクリル酸誘導体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの三官能性の(メタ)アクリル酸誘導体;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの四官能性の(メタ)アクリル酸誘導体などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0068】
また、上述した種々の(メタ)アクリル酸誘導体(b1)のうち好ましい(メタ)アクリル酸誘導体(b1)は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸、アクリル酸エチルであり、より好ましい(メタ)アクリル酸誘導体(b1)は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルである。
【0069】
一方、その他のエチレン性不飽和モノマー(b2)としては、公知のエチレン性不飽和モノマーを用いることができるが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの単官能性の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの不飽和カルボン酸のアミド類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはこれらの誘導体;ビニルピロリドンなどの複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミドなどのビニル化合物;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの多官能性の芳香族ビニル化合物などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0070】
エチレン性不飽和モノマー(B)における(メタ)アクリル酸誘導体(b1)とその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)との比率としては、(メタ)アクリル酸誘導体(b1)50〜100質量%とその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)50〜0質量%とからなることが好ましく、この場合には研磨パッドの製造を容易にすることができ、また優れた研磨性能を付与することができる。該比率は、より好ましくは(メタ)アクリル酸誘導体(b1)60〜100質量%に対してその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)40〜0質量%であり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸誘導体(b1)70〜100質量%に対してその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)30〜0質量%である。
【0071】
本発明においては、特に、エチレン性不飽和モノマー(B)の50〜100質量%をメタクリル酸メチルで構成することが好ましく、この場合には研磨パッドの耐熱性や研磨スラリーへの濡れ性を優れたものとすることができ、研磨時の均一性を優れたものとしたり、スクラッチ発生を有意に抑制したりすることができる。より好ましくはエチレン性不飽和モノマー(B)の60〜100質量%がメタクリル酸メチルで構成されている場合であり、さらに好ましくはエチレン性不飽和モノマー(B)の70〜100質量%がメタクリル酸メチルで構成されている場合である。
【0072】
また、エチレン性不飽和モノマー(B)の1分子当たりのエチレン性二重結合の平均数(以下、単に「平均官能基数」と略称する場合がある)は1〜1.5であることが好ましい。平均官能基数が1.5より大きいと、ウレタン(メタ)アクリレート(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)とを含有する共重合体中の架橋密度が高くなりすぎ、研磨パッドの柔軟性が不足して研磨時のスクラッチが発生しやすくなる傾向がある。より好ましいエチレン性不飽和モノマー(B)の平均官能基数は1〜1.4であり、さらに好ましい平均官能基数は1〜1.3である。
【0073】
また、エチレン性不飽和モノマー(B)は、エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体としたときの該重合体のガラス転移温度が60℃以上であることが好ましく、この場合には研磨パッドの耐熱性を優れたものとすることができ、研磨均一性をより良好にすることができる。エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体としたときの該重合体のガラス転移温度は70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。
【0074】
なお、エチレン性不飽和モノマー(B)をエチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体としたときの該重合体のガラス転移温度は、培風館社発行「高分子データ・ハンドブック(基礎編)」やJohn Wiley&Sons,Inc.社発行「POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION」などの刊行物に記載されている値を用いることができる。なお、2種以上のエチレン性不飽和モノマー(B)を使用する場合には、エチレン性不飽和モノマー(B)全体に占める各モノマーの質量分率を、上記の各モノマー成分の単独重合体のガラス転移温度(単位:K)で割った値の総和の逆数、つまり、下式(1)により計算した値を用いることができる。
1/Tg=w/Tg+w/Tg+・・・+w/Tg (1)
(ただし、Tg:エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体のガラス転移温度(単位:K)、w,w,・・・,w:共重合体において使用されるエチレン性不飽和モノマー(B)における各モノマー成分の質量分率、Tg,Tg,・・・,Tg:エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体を構成する各モノマー成分の単独重合体のガラス転移温度(単位:K))
また、エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体を別途、合成し、DSC(示差走査熱量測定装置)やTMA(熱機械測定装置)などによる測定を行うことによっても求めることができる。
【0075】
本発明の研磨パッドの研磨層を構成する共重合体におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量とエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量との比率は、[ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量]/[エチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量]=20/80〜60/40の範囲にあることが好ましい。該質量比率が20/80よりも小さい場合(ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位がより少ない場合)には、研磨層中でウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、軟質セグメント)の含有量が少なくなりすぎ、研磨パッドの柔軟性が不足して研磨時にスクラッチが発生しやすくなる傾向がある。一方、該質量比率が60/40よりも大きい場合(ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位がより多い場合)には、研磨パッドの耐熱性が不足し、研磨均一性や研磨速度の安定性が低下する傾向がある。ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量とエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量とのより好ましい比率は、[ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量]/[エチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量]=25/75〜50/50の範囲であり、さらに好ましい比率は、[ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量]/[エチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量]=30/70〜45/55の範囲である。
【0076】
本発明の研磨パッドに用いられる上記共重合体は、上記したウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位やエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位以外に、本発明の効果を損わない範囲内において、その他の共重合可能なモノマー(C)から誘導される構造単位を含有していてもよい。モノマー(C)は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)との共重合反応を阻害しないようなモノマー種であることが好ましい。また、モノマー(C)は、共重合体を構成する構造単位となった後も、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位およびエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の有する物理的特性を阻害しないようなモノマー種であることが好ましい。そのようなモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和結合を有さずかつエチレン性不飽和モノマーと反応性を有する官能基(例えば、炭素−炭素三重結合、水酸基、アミノ基、カルボキシル基およびその誘導体、カルボニル基、ヒドロシリル基、ハロゲン原子など)を有する化合物などが挙げられる。モノマー(C)から誘導される構造単位の含有率としては、モノマー(C)の有する化学的特性などによって異なるが、共重合体の全質量に対して、例えば、0〜30質量%に抑えることが好ましく、0〜5質量%に抑えることがより好ましく、0〜1質量%に抑えることがさらに好ましい。つまり、共重合体中における、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量およびエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量の合計の割合は、100〜70質量%の範囲にあることが好ましく、100〜95質量%の範囲にあることがより好ましく、100〜99質量%の範囲にあることがさらに好ましい。特に好ましい態様としては、上記共重合体は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位とエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位のみからなる。
【0077】
本発明の研磨パッドは、上記の共重合体を含有する研磨層を有する。研磨層における共重合体の含有率は特に限定されないが、研磨層の全質量に対して、共重合体を80〜100質量%含有していることが好ましく、90〜100質量%含有していることがより好ましく、94〜100質量%含有していることがさらに好ましい。研磨層は、上記の共重合体のみからなっていてもよい。なお、ここでいう研磨層とは、研磨パッドの研磨面を構成する層を意味する。
【0078】
研磨層は、上記の共重合体以外の他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、上記の共重合体以外の樹脂、顔料、染料、防汚剤、防黴剤、架橋剤、充填剤、架橋促進剤、架橋助剤、軟化剤、粘着付与剤、老化防止剤、発泡剤、加工助剤、密着性付与剤、無機充填剤、有機フィラー、結晶核剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤(酸化アンチモンなど)、ブルーミング防止剤、離型剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、導電剤などの添加剤が挙げられる。
【0079】
研磨層は発泡構造を有する。研磨層が発泡構造を有することにより、研磨パッド表面に研磨スラリーを保持するためのくぼみが形成されやすくなり、発泡構造を有さない場合に比べて、研磨均一性や研磨速度が向上し、また、長期間の使用に耐えるようになる。なお、該発泡構造としては、独立気泡構造であることが好ましい。
【0080】
研磨層の密度は、0.6〜1.1g/cmの範囲にあることが好ましい。研磨層の密度が1.1g/cmを超える場合には、研磨層表面に研磨スラリーを保持するためのくぼみが十分に形成されず、研磨均一性や研磨速度等の改善効果が不十分となる傾向にある。一方、研磨層の密度が0.6g/cm未満の場合には、研磨パッドの製造が困難な上、研磨層自体の摩耗速度が速くなり、使用寿命が短くなる傾向にある。研磨層の密度は、0.7〜1.05g/cmの範囲にあることがより好ましく、0.8〜1.0g/cmの範囲にあることがさらに好ましい。なお、研磨層の密度は、JIS K−7112に準拠して測定される値である。
【0081】
また、研磨層の発泡構造を構成する気泡の平均直径は1〜100μmの範囲にあることが好ましい。平均直径が該範囲にあると、研磨層表面に形成される研磨スラリーを保持するためのくぼみの大きさを所望のものとすることができる。一方、平均直径が1μm未満である場合には、研磨スラリー液中の砥粒の大きさに比べて十分な大きさを確保できにくくなり、研磨スラリーの保持能力が低下し、研磨均一性や研磨速度が不十分となる傾向がある。平均直径が100μmを超える場合には、気泡間の間隔が広くなりすぎ、研磨パッドの単位面積当たりの研磨速度のばらつきが大きくなり、研磨均一性が不十分となる傾向がある。該平均直径は、5〜90μmの範囲にあることがより好ましく、10〜80μmの範囲にあることがさらに好ましい。なお、研磨層の気泡の平均直径とは、以下の実施例の項目において詳述するが、研磨層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により写真撮影するなどして、単位面積当たりの気泡数(気泡の数密度)を算出し、その値と、上記研磨層の密度と、別に作製した無発泡体の密度とから、気泡が真球状であると仮定したときの直径を意味する。
【0082】
研磨層の発泡構造は、どのように形成されたものであってもよく、例えば、超臨界ガスによる発泡、微小中空粒子の配合、揮発性液体の除去などにより形成する方法などが挙げられる。これらのうちで、均一に発泡構造を形成でき、また、研磨層の密度や気泡径の制御が容易となることから、該発泡構造は、共重合体中に分散された揮発性液体を除去することにより形成されたものであることが好ましい。具体的な揮発性液体の除去方法としては、揮発性液体を揮発させる方法が挙げられる。この場合には、本発明を何ら制限するものではないが、揮発性液体は、研磨層を構成する素材(上記共重合体やその他の成分など)中に拡散し、その後、揮発するものと推測される。
【0083】
研磨層の50℃における動的弾性率は、9×10Pa以下であることが好ましい。この場合には、研磨パッドに適度な柔軟性を付与することができ、研磨時のスクラッチ発生をより効果的に抑制することができる。より好ましい50℃における動的弾性率は8×10Pa以下であり、さらに好ましい50℃における動的弾性率は7×10Pa以下である。
一方、研磨パッドがあまりに柔軟すぎると、研磨時に研磨パッドの変形が過度に起こりやすくなり研磨均一性が低下する傾向がある。このため、研磨層の50℃における動的弾性率は、1×10Pa以上であることが好ましく、2×10Pa以上であることがより好ましく、3×10Pa以上であることがさらに好ましい。
このような50℃における動的弾性率を有する研磨層は、例えば、研磨層が含有する共重合体において、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、軟質セグメント)とエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、硬質セグメント)とを適度に相分離させることにより得ることができる。なお、本明細書における研磨層の50℃における動的弾性率は、実施例の項目において詳述するように、粘弾性測定装置によって測定される値である。
【0084】
研磨層の主分散のピークの温度は、80℃以上であることが好ましい。この場合には、研磨パッドの耐熱性を優れたものとすることができ、また研磨均一性をより良好なものとすることができる。より好ましい主分散のピークの温度は90℃以上であり、さらに好ましい主分散のピークの温度は100℃以上である。このような主分散のピーク温度を有する研磨層は、例えば、研磨層が含有する共重合体において、ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、軟質セグメント)とエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位に由来するセグメント(例えば、硬質セグメント)とを適度に相分離させることにより得ることができる。なお、本明細書における研磨層の主分散のピークの温度は、実施例の項目において詳述するように、粘弾性測定装置によって測定される値である。
【0085】
研磨層の水との接触角は、90度以下であることが好ましい。この場合には、研磨パッドの研磨スラリーへの濡れ性を優れたものとすることができ、研磨時のスクラッチの発生をより効果的に抑制することができる。より好ましい水との接触角は88度以下であり、さらに好ましい水との接触角は86度以下である。なお、本明細書における研磨層の水との接触角は、実施例の項目において詳述する方法によって測定される値である。
【0086】
研磨層の、50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は、10質量%未満であることが好ましい。この場合には、研磨時の吸水による研磨パッド硬度の経時変化を小さくして、研磨性能の安定性を優れたものとすることができる。より好ましい吸水率は8質量%以下であり、さらに好ましい吸水率は6質量%以下である。また、該吸水率の下限値については、本発明の効果を維持できる吸水率であればよく、好ましくは0.3質量%、より好ましくは0.5質量%である。なお、本明細書における研磨層の、50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は、実施例の項目において詳述する方法によって測定される値である。
【0087】
本発明の研磨パッドの製造方法に特に制限はないが、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)および揮発性液体の少なくとも3成分を含有する混合物(S)を硬化させる工程(工程1)、並びに揮発性液体を除去する工程(工程2)を含むことが好ましい。
【0088】
上記混合物(S)は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)および揮発性液体の少なくとも3成分を含有する。上記工程1における硬化によって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)とが共重合体を形成する。また、揮発性液体は共重合体中において好ましくは分散相を形成する。
【0089】
混合物(S)中におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)との使用割合は、所望とする共重合体に合わせて適宜調節されるが、[ウレタン(メタ)アクリレート(A)の質量]/[エチレン性不飽和モノマー(B)の質量]=20/80〜60/40の範囲にあることが好ましく、25/75〜50/50の範囲にあることがより好ましく、30/70〜45/55の範囲にあることがさらに好ましい。
【0090】
上記揮発性液体とは、揮発性を有する液体を意味する。該揮発性液体としては、常圧(1atm)における沸点が20〜200℃の範囲にあるものが好ましく、50〜150℃の範囲にあるものがより好ましい。揮発性液体としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;アセトン、2−ブタノン、メチルイソプロピルケトン、メチル−イソブチルケトン等のケトン;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ペンタン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化合物などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。これらのうち、工程1においてほとんど揮発することがなく、かつ工程2において揮発等の除去が容易であることや、混合物(S)中において分散相を形成しやすく、さらに環境や人体への影響も小さいことから、水または水を含む混合物が好ましく、水がより好ましい。揮発性液体として水または水を含む混合物を使用する場合には、混合物(S)中において、水または水を含む混合物がW/O型(油中水型)に分散していることが好ましい。
混合物(S)中における、揮発性液体の使用量としては、所望とする研磨層の密度に合わせて適宜調節することができるが、ウレタン(メタ)アクリレート(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)の合計100質量部に対して、5〜90質量部の範囲にあることが好ましく、10〜70質量部の範囲にあることがより好ましく、15〜50質量部の範囲にあることがさらに好ましい。
【0091】
混合物(S)は、分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、混合物(S)中において揮発性液体を容易に分散させることができ、気泡の大きさや分布のそろった研磨層を再現性良く得ることができる。
分散剤の使用量は、揮発性液体の種類や使用量等により適宜選択することができるが、ウレタン(メタ)アクリレート(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲にあることが好ましく、0.05〜8質量部の範囲にあることがより好ましく、0.1〜6質量部の範囲にあることがさらに好ましい。
【0092】
分散剤は、使用する揮発性液体の種類等によって適宜選択されるが、例えば、極性の異なるセグメントをそれぞれ1個以上ずつ有する高分子などが使用される。特に、揮発性液体として、水または水を含む混合物を用いる場合には、これらを混合物(S)中で安定にW/O型(油中水型)の分散をさせる能力を有する分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、同一分子内に親水性成分と疎水性成分を有する高分子や乳化剤などが挙げられる。これらの中でも、混合物(S)の硬化中に安定して水または水を含む混合物などの揮発性液体の分散を維持でき、且つ得られる研磨パッドの研磨特性への影響が少ないことから、分散剤は、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーの重合体であることが好ましい。分散剤中の親水性基としては、ポリオキシエチレン基等のポリオキシアルキレン基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられるが、水等の分散安定性に特に優れ、研磨特性への影響も極めて少なく、また分散剤の製造も容易であることから、ポリオキシアルキレン基が好ましい。特に分散剤が(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の共重合体である場合には、分散剤自体の製造が容易であり、また混合物(S)中での水または水を含む混合物などの揮発性液体の分散能にも一層優れることから、さらに好ましい。なお、分散剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
なお、上記のポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物とは、ポリオキシアルキレン化合物が有する末端の水酸基の1つのみが(メタ)アクリロイロキシ基に置きかわった化合物の総称であり、該(メタ)アクリロイロキシ基を有する末端に対して反対側にある末端の構造に関しては特に制限されない。
【0093】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物とを共重合させることにより得ることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の共重合体における、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導される構造単位の質量と、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物から誘導される構造単位の質量との割合は、混合物(S)中で水または水を含む混合物を安定してW/O型(油中水型)に分散させる能力に特に優れることから、好ましくは、[(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導される構造単位の質量]/[ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物から誘導される構造単位の質量]=20/80〜70/30であり、より好ましくは30/70〜60/40である。
【0094】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの単官能性の(メタ)アクリル酸誘導体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートなどの二官能性の(メタ)アクリル酸誘導体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの三官能性の(メタ)アクリル酸誘導体;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの四官能性の(メタ)アクリル酸誘導体などの1種または2種以上を用いることができる。これらのうちで、分散剤の製造が容易であり、また混合物(S)中で水または水を含む混合物を安定してW/O型(油中水型)に分散させる能力に優れることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの単官能性の(メタ)アクリル酸誘導体が好ましい。
【0095】
一方、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンメチルエーテル(メタ)アクリレート[HC=CR−CO(CHCHO)CHで示される化合物;但し、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは整数を表す]、ポリオキシエチレンエチルエーテル(メタ)アクリレート[HC=CR−CO(CHCHO)CHCHで示される化合物;但し、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは整数を表す]などのポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレンアリールエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレンアラルキルエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート[HC=CR−CO(CHCHO)Hで示される化合物;但し、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは整数を表す];ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシプロピレンアリールエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシプロピレンアラルキルエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート;ポリオキシブチレンアルキルエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシブチレンアリールエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシブチレンアラルキルエーテル(メタ)アクリレート;ポリオキシブチレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのうちで、入手が容易であり、分散剤の製造も容易であることから、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリレートが好ましく、ポリオキシエチレンメチルエーテル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物が有するポリオキシエチレン基における、オキシエチレン単位の数平均繰り返し数としては、好ましくは3〜150の範囲であり、より好ましくは4〜120の範囲である。
【0096】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の共重合体の数平均分子量は、混合物(S)中において、揮発性液体を分散させる能力に優れることから、5,000〜2,000,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜1,500,000の範囲内であることがより好ましく、15,000〜1,000,000の範囲内であることがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の共重合体の数平均分子量は、以下の実施例の項目において詳述するように、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される値である。
【0097】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の共重合体の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、溶媒の存在下または不存在下に、ラジカル重合やアニオン重合などの公知の方法によって製造することができる。
【0098】
混合物(S)は、上記のウレタン(メタ)アクリレート(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)、揮発性液体、分散剤以外の他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、所望により添加可能である、上記モノマー(C)、ウレタン(メタ)アクリレート(A)やエチレン性不飽和モノマー(B)から形成される重合体以外の樹脂、顔料、染料、防汚剤、防黴剤、架橋剤、充填剤、架橋促進剤、架橋助剤、軟化剤、粘着付与剤、老化防止剤、発泡剤、加工助剤、密着性付与剤、無機充填剤、有機フィラー、結晶核剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤(酸化アンチモンなど)、ブルーミング防止剤、離型剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、導電剤などの添加剤が挙げられる。混合物(S)中における、上記のウレタン(メタ)アクリレート(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)、揮発性液体、および分散剤の占める割合としては、90〜100質量%であることが好ましく、95〜100質量%であることがより好ましく、99〜100質量%であることがさらに好ましい。
【0099】
混合物(S)は、上記の成分を配合した後に十分に混合することが好ましい。混合方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、プロペラ型撹拌機、パドル型撹拌機、アンカー型撹拌機、ホモミキサー、ウルトラミキサー、磁気スターラーなどを用いた方法が挙げられる。
【0100】
工程1における硬化方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合や、アニオン重合開始剤を用いたアニオン重合などにより、ウレタン(メタ)アクリレート(A)およびエチレン性不飽和モノマー(B)、さらには必要に応じてモノマー(C)を共重合させることによって行うことができる。
【0101】
重合開始剤による硬化の開始は、熱や光などにより誘起することができる。これらの中でも、熱または光によりラジカル重合を開始する重合開始剤を用いることが、水分などの影響を受けにくく重合の制御が容易であることから好ましい。
【0102】
上記の重合開始剤のうち、特に、熱によりラジカル重合を開始する重合開始剤を用いることが好ましく、公知の熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。好適な熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシドなどの過酸化物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0103】
重合開始剤の使用量は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)やエチレン性不飽和モノマー(B)中のエチレン性不飽和基の濃度、重合開始剤の分子量などに応じて調節することができるが、一般的には、重合を円滑に進行する観点から、ウレタン(メタ)アクリレート(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)の合計の質量に基づいて、重合開始剤を0.01〜1質量%で用いることが好ましい。
【0104】
重合開始剤は、混合物(S)を調製する際にあらかじめ添加しておいてもよいが、調製された混合物(S)に重合開始剤を添加して、これを型枠等に注入した後、光や熱などにより重合を開始して硬化を行うことが好ましい。
重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤を使用した場合の硬化時の温度としては、使用する熱ラジカル重合開始剤の種類や使用量によって適宜選択することができるが、好ましくは15〜150℃の範囲であり、より好ましくは30〜120℃の範囲であり、さらに好ましくは50〜90℃の範囲である。
また、硬化時間についても、使用する重合開始剤の種類や使用量によって適宜選択することができるが、好ましくは1〜24時間の範囲であり、より好ましくは2〜18時間の範囲であり、さらに好ましくは3〜12時間の範囲である。
【0105】
混合物(S)を注入する型枠の材質としては、金属、樹脂、ガラス、セラミックスなどを用いることができるが、硬化反応後の取り出しが容易であり、また、金属の含有量が極めて少なく被研磨物の金属による汚染がほとんど起こらない研磨パッドを容易に提供することができることから内部表面がフッ素系樹脂でコーティングされていることが好ましい。
【0106】
工程2は、揮発性液体を除去する工程である。工程2は、工程1における硬化途中のものに対しておこなってもよいが、工程1において、硬化が十分に行われた後に行うことが好ましい。具体的な揮発性液体の除去方法としては、揮発性液体を揮発させる方法が挙げられる。工程2における揮発性液体の除去により、共重合体中に分散していた揮発性液体が空気等に置き換わるため、発泡構造が形成される。
工程2における温度としては、特に制限されないが、好ましくは30〜150℃の範囲であり、より好ましくは40〜120℃の範囲である。また、工程2における圧力についても特に制限はされず、減圧条件、大気圧条件等の条件を採用でき、具体的な圧力としては、絶対圧力として1〜500kPaの範囲が好ましく、3〜300kPaの範囲がより好ましい。
工程2における揮発性液体の除去時間としては、揮発性液体が十分に除去されうる時間が好ましく、通常は、1時間〜1週間の範囲である。
【0107】
工程2においては、揮発性液体は得られる研磨層に実質的に残存していないことが好ましいが、本発明の効果を損わない範囲で、研磨層中に揮発性液体の一部が残存していてもよい。揮発性液体の除去率としては、80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。なお、本明細書における揮発性液体の除去率とは、揮発性液体を除去する前の硬化物の質量と揮発性液体を除去した後の硬化物の質量との差を、使用した揮発性液体の質量で除した値である。
【0108】
上記の工程1および工程2によって、発泡構造を有する研磨層を得ることができる。得られた研磨層は、そのまま研磨パッドとして使用してもよいが、切削、スライスまたは打ち抜きなどにより所望の寸法、形状を有する研磨パッドに加工することができる。また、研磨パッドの表面には、研磨スラリーの保持性、流動性の向上、研磨パッド表面からの研磨屑除去効率の向上等を目的として、溝や穴などの成形加工を施すことが好ましい。研磨パッド表面への成形加工の方法は、特に限定されるものではないが、混合物(S)の硬化反応後に、研磨パッド表面を切削加工することにより溝などを形成する方法、研磨パッド表面に加熱された金型、熱線などを接触させ、接触部を溶解させることにより溝などを形成する方法、ドリル、トムソン刃などで孔などを形成する方法、その他レーザーなどで成形加工する方法が挙げられる。また、混合物(S)を注入する型枠として型枠内面に成形加工用の形状部(例えば所望の形状の凸部など)を有する型枠を用い、硬化と同時に成形加工を施す方法などを用いることもできる。また、成形加工で施される溝や孔などの形状および径も特に限定されるものではない。
【0109】
本発明の研磨パッドは、上記の研磨層のみから構成されていてもよいし、また、該研磨層と他の素材からなる層(例えば、クッション層)とを積層させた複層構造を有していてもよい。本発明の研磨パッドがクッション層を有すると、研磨パッドの、シリコンウェハや半導体ウェハ等へのうねりへの追随性を高めることができる場合がある。クッション層としては、現在汎用的に使用されているポリウレタンを含浸した不織布(例えば、“Suba400”(ニッタ・ハース(株)製))の他、ゴム、発泡弾性体、発泡プラスチックなどを採用することができ、特に限定されるものではない。クッション層の好ましい厚みは、0.1〜10mmである。0.1mmより小さいと、半導体ウェハ全面の平坦性の均一性(ユニフォーミティ)が損われる場合がある。一方、10mmより大きいと、半導体ウェハの局所的な平坦性が損われる場合がある。クッション層の厚みとしては、0.2〜5mm、さらには0.5〜2mmであることが好ましい。
【0110】
本発明の研磨パッドは、公知の研磨スラリーと共に、化学機械的研磨(CMP)に使用することができる。研磨スラリーは、例えば、水やオイル等の液状媒体;シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素等の研磨剤;塩基、酸、界面活性剤などの成分を含有している。また、化学機械的研磨(CMP)を行うに際し、必要に応じ、研磨スラリーと共に、潤滑油、冷却剤などを併用してもよい。
【0111】
化学機械的研磨(CMP)は、公知の化学機械的研磨用装置を使用し、研磨スラリーを介して被研磨面と研磨パッドを、加圧下、一定速度で、一定時間接触させることによって実施することができる。研磨の対象となる物品には特に制限はないが、例えば、水晶、シリコン、ガラス、光学基板、電子回路基板、多層配線基板、ハードディスクなどが挙げられる。特に、研磨の対象としては、シリコンウェハや半導体ウェハであることが好ましい。半導体ウェハの具体例としては、例えば、酸化シリコン、酸化フッ化シリコン、有機ポリマーなどの絶縁膜、銅、アルミニウム、タングステンなどの配線材金属膜、タンタル、チタン、窒化タンタル、窒化チタンなどのバリアメタル膜等を表面に有するものが挙げられる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例に記載した分散剤、樹脂および研磨パッドの物性評価は次の方法で実施した。
【0113】
[分散剤の数平均分子量]
以下の条件により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定することで、分散剤の数平均分子量を求めた。
カラム :昭和電工(株)製「Shodex GPC KF−806M」および「Shodex GPC KF−802.5」をこの順に直列に連結したもの。
溶媒 :テトラヒドロフラン
測定温度:35℃
検出器 :示差屈折率(RI)検出器
標準物質:ポリメタクリル酸メチル
【0114】
[エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体のガラス転移温度]
エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体のガラス転移温度は、John Wiley&Sons,Inc.社発行「POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION」に記載の単独重合体のガラス転移温度(単位:K)の値を用いた。
【0115】
[研磨層の密度]
下記の実施例および比較例において得られた発泡構造体または共重合体を用いて、JIS K−7112に準拠して密度を測定し、研磨層の密度とした。
【0116】
[研磨層の気泡の平均直径]
下記の実施例において得られた発泡構造体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により写真撮影し、一定面積内に存在する気泡数を数えて単位面積当たりの気泡数(気泡の数密度)を算出した。その値と、上記研磨層の密度と、別に作製した無発泡体の密度とから、気泡が真球状であると仮定したときの直径を求め、研磨層の気泡の平均直径とした。なお、上記の無発泡体とは、発泡剤(超臨界ガス、微小中空粒子、揮発性液体など)を使用しない以外は、発泡構造体の作製とすべて同じ条件によって作製されたものである。
【0117】
[研磨層の50℃における動的弾性率、および主分散のピークの温度]
研磨層の50℃における動的弾性率は、下記の実施例および比較例において得られた発泡構造体または共重合体を用いて、(株)レオロジ製粘弾性測定装置「FTレオスペクトラーDVE−V4」を用いて周波数11Hz、昇温速度3℃/分で測定を行った。また、主分散のピークの温度は、損失正接のピークの温度とした。
【0118】
[研磨層の水との接触角]
研磨層の水との接触角は、下記の実施例および比較例において得られた発泡構造体または共重合体を20℃、65%RHの条件下で3日間放置し、協和界面科学(株)製「Drop Master500」を用いて測定した。
【0119】
[研磨層の50℃の水に3日間浸漬後の吸水率]
研磨層の50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は、下記の実施例および比較例において得られた発泡構造体または共重合体から、長さ3cm、断面が正方形(3mm×3mm)の棒状サンプル切り出し、これを50℃の蒸留水中に3日間浸漬し、浸漬前の質量と、浸漬後の質量とから、下式(2)により求めた。
吸水率(質量%)=(浸漬後の質量−浸漬前の質量)/浸漬前の質量 ×100 (2)
【0120】
[研磨パッドの研磨性能]
下記の実施例および比較例において作製した研磨パッドを、エム・エー・ティー社製研磨装置「MAT−BC15」に設置し、(株)アプライドマテリアルズ製ダイヤモンドドレッサー(#100−被覆率80%、直径10cm、質量1kg)を用い、蒸留水を150mL/分の速度で流しながらドレッサー回転数40rpmにて1時間研磨パッド表面を研削した(以下「シーズニング」と称する)。次に、プラテン回転数60rpm、ヘッド回転数59rpm、研磨圧力35kPaの条件において、キャボット社製研磨スラリー「SS25」を蒸留水で2倍に希釈した液を200mL/分の速度で供給しつつ直径4インチの酸化膜表面を有するシリコンウェハを60秒間研磨し、次いで、再びシーズニングを前記条件で30秒間行った。その後、ウェハを交換して再度研磨およびシーズニングを繰り返し、各パッドにつき計300枚のウェハを研磨した。
50枚ごとに、研磨前および研磨後の酸化膜の膜厚をウェハ面内で各49点測定し、各点での研磨速度を求めた。49点の研磨速度の平均値を研磨速度とし、研磨均一性は下式(3)により求めた不均一性により評価した。不均一性の値が小さいほど、ウェハ面内で均一に研磨されており研磨均一性が優れていることを意味する。
不均一性(%)=(σ/R)×100 (3)
(ただし、σ:49点の研磨速度の標準偏差、R:49点の研磨速度の平均値)
【0121】
[製造例1] <ウレタン(メタ)アクリレート(A)の調製>
フラスコに、ポリオール(a1)として数平均分子量が2000のポリテトラメチレングリコール900g、有機ジイソシアネート(a2)としてイソホロンジイソシアネート150g、ウレタン化反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.011g、および重合禁止剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製「イルガノックス1010」0.277gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で15時間撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート基末端のプレポリマーを得た。
これにメタクリル酸メチル277gを加えて均一に撹拌した後、70℃にフラスコ内温度を下げ、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)としてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル58.6gを1時間かけて滴下した。
滴下終了後、ウレタン化反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.266gを添加し、さらに6時間撹拌して系中のイソシアネート基を定量的に反応させてウレタンメタクリレート(以下、PUA−1と略称する)1109gとメタクリル酸メチル277gを含む混合液を得た。PUA−1の数平均分子量は4900であり、PUA−1中に占めるポリテトラメチレングリコール由来のセグメントの比率は81質量%であった。
【0122】
[製造例2] <分散剤−1の調製>
冷却管付きフラスコに、トルエン229gを秤取し、75℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。メタクリル酸メチル25.2gおよびポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=9)37.8gを添加して20分撹拌後、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.76gおよびトルエン15gからなる溶液を添加して、75℃で30分保持した。次いで、メタクリル酸メチル16.8gおよびポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=9)25.2gからなる混合液を、滴下ロートからフラスコ内に150分間かけて滴下し、滴下終了後85℃に昇温して240分間保持し重合を完了させた。その後、ロータリーエバポレーターによりトルエンを除去し、分散剤を得た(以下、分散剤−1と略称する)。分散剤−1は、メタクリル酸メチルから誘導される構造単位40質量%と、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレートから誘導される構造単位60質量%から構成される、数平均分子量が145,000の重合体からなる。
【0123】
[製造例3] <分散液−2の調製>
製造例2においてポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=9)に代えてポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=23)を用いること以外は、製造例2と同様にして、分散剤を得た(以下、分散剤−2と略称する)。分散剤−2は、メタクリル酸メチルから誘導される構造単位40質量%と、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレートから誘導される構造単位60質量%から構成される、数平均分子量が109,000の重合体からなる。
【0124】
[製造例4] <分散剤−3の調製>
冷却管付きフラスコに、トルエン229gを秤取し、75℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。メタクリル酸メチル37.8gおよびポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=23)25.2gを添加して20分撹拌後、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.76gおよびトルエン15gからなる溶液を添加して、75℃で30分保持した。次いで、メタクリル酸メチル25.2gおよびポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=23)16.8gからなる混合液を、滴下ロートからフラスコ内に150分間かけて滴下し、滴下終了後85℃に昇温して240分間保持し重合を完了させた。その後、ロータリーエバポレーターによりトルエンを除去し、分散剤を得た(以下、分散剤−3と略称する)。分散剤−3は、メタクリル酸メチルから誘導される構造単位60質量%と、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレートから誘導される構造単位40質量%から構成される、数平均分子量が84,500の重合体からなる。
【0125】
[製造例5] <分散剤−4の調製>
冷却管付きフラスコに、トルエン229gを秤取し、75℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。メタクリル酸メチル25.2g、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=9)25.2gおよびポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=90)12.6gを添加して20分撹拌後、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.76gおよびトルエン15gからなる溶液を添加して、75℃で30分保持した。次いで、メタクリル酸メチル16.8g、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=9)16.8gおよびポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数=90)8.4gからなる混合液を、滴下ロートからフラスコ内に150分間かけて滴下し、滴下終了後85℃に昇温して240分間保持し重合を完了させた。その後、ロータリーエバポレーターによりトルエンを除去し、分散剤を得た(以下、分散剤−4と略称する)。分散剤−4は、メタクリル酸メチルから誘導される構造単位40質量%と、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン単位の数平均繰り返し数が9のものと90のものとの合計)から誘導される構造単位60質量%から構成される、数平均分子量が101,000の重合体からなる。
【0126】
[実施例1]
フラスコに、製造例1で得られたPUA−1を含む混合液および追加分のメタクリル酸メチルを、PUA−1が320gおよびメタクリル酸メチルが680gとなるように秤取し、さらに揮発性物質として蒸留水を200g、分散剤として製造例2で得られた分散剤−1を50g秤取し、300rpmで8時間撹拌を行い、水がW/O型に均一分散した混合物(S)を得た。この混合物(S)に、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2gを添加して均一に混合した後、内面がフッ素系樹脂でコーティング加工されたステンレス製の型枠(内寸:幅45cm×高さ50cm×厚み3mm)内に流し込み、型枠内部の空気を乾燥窒素で置換した後、65℃に昇温して5時間保持して重合硬化させた。得られた重合硬化物を50℃で3日間乾燥して内部の水を蒸発させて独立気泡構造を有する発泡構造体を得た。
得られた発泡構造体の密度は0.97g/cm、気泡の平均直径は20μm、50℃における動的弾性率は5.4×10Pa、主分散のピークの温度は107℃、水との接触角は77度、50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は3.3質量%であった。また、乾燥前後の水の除去率は、96質量%であった。なお、エチレン性不飽和モノマー(メタクリル酸メチルモノマー)のみからなる重合体とした場合のガラス転移温度は105℃である。
次いで、上記の発泡構造体を直径38cmの円形に打ち抜いた後、表面に幅1.5mm、深さ1mm、ピッチ10mmの格子状溝を研削加工により施して研磨パッドを製造した。研磨性能の評価を行った結果、表1に示すように、研磨速度、研磨均一性とも良好で経時変化も少なかった。
【0127】
[実施例2]
実施例1において、分散剤として製造例2で得られた分散剤−1を50gの代わりに、製造例2で得られた分散剤−1を5gおよび製造例3で得られた分散剤−2を2.5g併用すること以外は、実施例1と同様にして独立気泡構造を有する発泡構造体および研磨パッドを製造し、研磨性能の評価を行った。発泡構造体の密度は0.96g/cm、気泡の平均直径は40μm、50℃における動的弾性率は5.4×10Pa、主分散のピークの温度は108℃、水との接触角は79度、50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は2.9質量%であった。また、乾燥前後の水の除去率は、98質量%であった。なお、エチレン性不飽和モノマー(メタクリル酸メチルモノマー)のみからなる重合体とした場合のガラス転移温度は105℃である。研磨性能の評価の結果、表1に示すように、研磨速度、研磨均一性とも良好で経時変化も少なかった。
【0128】
[実施例3]
実施例1において、分散剤として製造例2で得られた分散剤−1を50gの代わりに、製造例3で得られた分散剤−2を5gおよび製造例4で得られた分散剤−3を5g併用すること以外は、実施例1と同様にして独立気泡構造を有する発泡構造体および研磨パッドを製造し、研磨性能の試験を行った。発泡構造体の密度は0.96g/cm、気泡の平均直径は30μm、50℃における動的弾性率は5.3×10Pa、主分散のピークの温度は108℃、水との接触角は81度、50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は3.1質量%であった。また、乾燥前後の水の除去率は、97質量%であった。なお、エチレン性不飽和モノマー(メタクリル酸メチルモノマー)のみからなる重合体とした場合のガラス転移温度は105℃である。研磨性能の評価の結果、表1に示すように、研磨速度、研磨均一性とも良好で経時変化も少なかった。
【0129】
[実施例4]
実施例1において、分散剤として製造例2で得られた分散剤−1を50gの代わりに、製造例5で得られた分散剤−4を10g用いること以外は、実施例1と同様にして独立気泡構造を有する発泡構造体および研磨パッドを製造し、研磨性能の試験を行った。発泡構造体の密度は0.96g/cm、気泡の平均直径は60μm、50℃における動的弾性率は5.3×10Pa、主分散のピークの温度は107℃、水との接触角は81度、50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は3.3質量%であった。また、乾燥前後の水の除去率は、96質量%であった。なお、エチレン性不飽和モノマー(メタクリル酸メチルモノマー)のみからなる重合体とした場合のガラス転移温度は105℃である。研磨性能の評価の結果、表1に示すように、研磨速度、研磨均一性とも良好で経時変化も少なかった。
【0130】
[実施例5]
実施例4において、蒸留水の量を200gから300gに変更すること以外は、実施例4と同様にして独立気泡構造を有する発泡構造体および研磨パッドを製造し、研磨性能の試験を行った。発泡構造体の密度は0.89g/cm、気泡の平均直径は70μm、50℃における動的弾性率は3.6×10Pa、主分散のピークの温度は101℃、水との接触角は82度、50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は3.4質量%であった。また、乾燥前後の水の除去率は、97質量%であった。なお、エチレン性不飽和モノマー(メタクリル酸メチルモノマー)のみからなる重合体とした場合のガラス転移温度は105℃である。研磨性能の評価の結果、表1に示すように、研磨速度、研磨均一性とも良好で経時変化も少なかった。
【0131】
[比較例1]
内面がフッ素系樹脂でコーティング加工されたステンレス製の型枠(内寸:幅45cm×高さ50cm×厚み3mm)内に、製造例1で得られたPUA−1を含む混合液、追加分のメタクリル酸メチル、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)を、PUA−1:メタクリル酸メチル:ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)=70:30:0.15の質量比となるように混合した混合物を流し込み、型枠内部の空気を乾燥窒素で置換した後、65℃に昇温して5時間保持、次いで120℃に昇温して30分保持して重合硬化させた。
得られた共重合体の密度は1.08g/cm、50℃における動的弾性率は9.8×10Pa、主分散のピークの温度は49℃、水との接触角は82度、50℃の水に3日間浸漬後の吸水率は1.7質量%であった。なお、エチレン性不飽和モノマー(メタクリル酸メチルモノマー)のみからなる重合体とした場合のガラス転移温度は105℃である。
次いで、上記の共重合体を直径38cmの円形に打ち抜いた後、表面に幅1.5mm、深さ1mm、ピッチ10mmの格子状溝を研削加工により施して研磨パッドを製造した。研磨性能の評価を行った結果、表1に示すように、研磨速度、研磨均一性とも劣っており、経時変化も大きかった。
【0132】
【表1】

【0133】
表1から明らかな様に、発泡構造を有する研磨層からなる研磨パッドを用いた実施例1〜5においては、ウェハ研磨時の研磨均一性や研磨速度の安定性に極めて優れていることがわかる。それに対して、発泡構造を有さない研磨層からなる研磨パッドを用いた比較例1では、ウェハ研磨時の研磨均一性や研磨速度が低く、またその経時安定性が、実施例1〜5に比べて劣っていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によれば、半導体ウェハなどをより高精度に、かつ高い効率で研磨するために有用な研磨パッドおよびその製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位とを有する共重合体を含有する発泡構造の研磨層を有する研磨パッド。
【請求項2】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量が1000以上である請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和モノマー(B)の平均分子量が500以下である請求項1または2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
共重合体における、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量と前記エチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量との比率が、[ウレタン(メタ)アクリレート(A)から誘導される構造単位の質量]/[エチレン性不飽和モノマー(B)から誘導される構造単位の質量]=20/80〜60/40である請求項1から3のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリオール(a1)、有機ジイソシアネート(a2)および水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a3)の少なくとも3成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである請求項1から4のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記ポリオール(a1)の数平均分子量が500〜5000である請求項5に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和モノマー(B)が、エチレン性不飽和モノマー(B)のみからなる重合体としたときの該重合体のガラス転移温度が60℃以上である請求項1から6のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項8】
エチレン性不飽和モノマー(B)が(メタ)アクリル酸誘導体であるか、または(メタ)アクリル酸誘導体と(メタ)アクリル酸誘導体以外のエチレン性不飽和モノマーとの混合物である請求項1から7のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記研磨層の密度が0.6〜1.1g/cmである請求項1から8のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項10】
前記研磨層の発泡構造を構成する気泡の平均直径が1〜100μmである請求項1から9のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項11】
前記研磨層の発泡構造が、共重合体中に分散された揮発性液体を除去することにより形成されたものである請求項1から10のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項12】
前記研磨層の50℃における動的弾性率が9×10Pa以下である請求項1から11のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項13】
前記研磨層の50℃における動的弾性率が1×10Pa以上である請求項1から12のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項14】
前記研磨層の主分散のピーク温度が80℃以上である請求項1から13のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項15】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のエチレン性不飽和モノマー(B)および揮発性液体を含有する混合物(S)を硬化させる工程(工程1)、並びに揮発性液体を除去する工程(工程2)を含む、発泡構造の研磨層を有する研磨パッドの製造方法。
【請求項16】
前記揮発性液体が水または水を含む混合物である請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記混合物(S)中において、水または水を含む混合物がW/O型に分散している請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記混合物(S)が、さらに分散剤を含有する請求項15から17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
分散剤が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート化合物の共重合体である請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1から14のいずれかに記載の研磨パッドを用いるシリコンウェハまたは半導体ウェハの研磨方法。
【請求項21】
請求項1から14のいずれかに記載の研磨パッドを用いて製造される半導体デバイス。

【公開番号】特開2007−246805(P2007−246805A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74319(P2006−74319)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】