説明

研磨パッドの製造方法

【課題】スラリへ添加剤を別に添加する必要がなく、安価で安定した研磨特性が得られる研磨パッドの製造方法を提供すること。
【解決手段】研磨パッドはウェーハWが押圧される研磨層3と研磨定盤に貼着される下地層2とから構成され、研磨層形成時には、スラリSへ添加する添加剤4を、研磨層を形成する原料へ含有させて形成することにより、スラリへの添加剤添加が不要な安価で安定した化学的機械研磨を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置や電子部品等のウェーハを化学的機械研磨する際に使用される研磨パッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や電子部品等のウェーハは、製造の過程において切削、研磨等の各種工程を経ていく。近年、半導体集積回路のデザインルールの縮小化に伴って、層間膜等の平坦化プロセスにおいては、化学的機械研磨加工(CMP:Chemical Mechanical Polishing )が多用されるようになってきた。
【0003】
CMPによるウェーハの研磨では、図1に示されるようなCMP研磨装置が使用される。CMP研磨装置20は、回転する研磨ヘッド11でタングステン等の金属膜を有するウェーハWを保持し、不図示のモータ等により回転する研磨定盤12上面に貼り付けられた研磨パッド1へケミカル研磨剤であるスラリSをスラリ供給装置13より供給し、回転する研磨パッド1にウェーハWを所定の圧力で押圧してCMP研磨を行う。通常、スラリには酸性の溶液にシリカ、アルミナ、二酸化マンガン、ジルコニア、セリア等の砥粒を分散させたものが使用される。
【0004】
このようなCMPによるウェーハの研磨では、スラリに対してウェーハの種類に応じた添加剤を混合して研磨が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−71720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
添加剤を混合する場合、混合後の時間経過に伴うスラリ特性の劣化や、スラリ内の研磨粒子の分散性低下による凝集等の理由により、特許文献1に記載されるような方法で、研磨を行う直前にスラリへ添加剤が投入されている。
【0006】
しかし、特許文献1のような方法では、スラリ用の経路と添加剤用の経路を別々に設ける必要があり、設備にかかる費用を増大させる。また、添加剤がスラリ全体に対して完全に混合される前に研磨パッド上に供給され、添加剤が研磨されているウェーハ面に対して有効に作用しない問題が発生する場合がある。
【0007】
本発明は、このような問題に対してなされたものであり、スラリへ添加剤を別に添加する必要がなく、安価で安定した研磨特性が得られる研磨パッドの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、ウェーハの化学的機械研磨を行う研磨装置の研磨定盤に貼着され、スラリが供給されるとともに前記ウェーハが押圧されて該ウェーハの研磨を行う研磨パッドにおいて、前記研磨パッドはウェーハが押圧される研磨層と研磨定盤に貼着される下地層とから構成され、前記研磨層形成時には、前記スラリへ添加する添加剤を、前記研磨層を形成する原料へ含有させて形成することを特徴としている。
【0009】
また、前記添加剤は鉄、硝酸鉄、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、及び酸化マンガンのいずれか1つであり、前記研磨層は発泡ポリウレタンにより形成されていることも特徴としている。
【0010】
本発明によれば、研磨パッドは、発泡ポリウレタン等の高分子樹脂素材により形成された研磨層とポリエステル等の樹脂により形成された下地層とから構成される。研磨層は、形成の際に鉄、硝酸鉄、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、及び酸化マンガンのいずれか1つからなる添加剤の微粒子が混合される。
【0011】
これにより、スラリへ直接添加剤を添加しなくとも、研磨中に研磨パッドから添加剤が溶出してスラリへ添加剤が添加される。添加された添加剤はウェーハの研磨面に対して効果的に作用し、安定した研磨特性が得ることが出来る。また、添加剤を添加するための別の設備が不要となり、研磨装置にかかるコストを低減させ、安価な化学的機械研磨を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の研磨パッドの製造方法によれば、スラリへ添加剤を別に添加する必要がなく、安価で安定した研磨特性が得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下添付図面に従って本発明に係る研磨パッドの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0014】
まず初めに、本発明に係わる研磨パッド製造方法により製造された研磨パッドが使用されるCMP研磨装置の構成について説明する。図1はCMP研磨装置の構成を示した斜視図である。
【0015】
図1に示すように、CMP研磨装置20は、回転する研磨ヘッド11でタングステン等の金属膜を有するウェーハWを保持し、不図示のモータ等により回転する研磨定盤12上面に貼り付けられた研磨パッド1へスラリ供給装置13からスラリSを供給し、回転する研磨パッド1にウェーハWを押圧して化学的機械研磨を行う。
【0016】
スラリ供給装置13は、図2、図3に示されるように、スラリ供給配管14、スラリ追加配管15が接続されたスラリタンク16内にスラリSが貯留されている。スラリタンク11内には、既知の攪拌手段による攪拌装置が備えられ。スラリタンク11内のスラリSの攪拌を行う。
【0017】
スラリ追加配管15は、研磨に使用される新しいスラリS、または一度研磨に使用された後、各種工程を経て再生されたスラリSをスラリタンク11へ供給する。
【0018】
スラリ供給配管14は、スラリタンク11内で常時攪拌されているスラリSを、研磨パッド1上に供給する。
【0019】
研磨パッド1は、図2に示すように、ウェーハWが押圧される研磨層3と、研磨定盤に貼着されるポリエステル等の樹脂により形成された下地層2から構成される。
【0020】
研磨層3は発泡ポリウレタンにより形成され、内部には製造工程時に混合した鉄、硝酸鉄、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、及び酸化マンガンのいずれか1つからなる添加剤4を含有している。
【0021】
これにより、研磨パッド1上に供給されたスラリSへ、ウェーハWが押圧される研磨層3から添加剤4が溶出し、スラリSへ添加剤4が添加される。スラリSへ添加剤4が添加されると、その濃度によりウェーハWの加工レートが上昇していく。例えば、添加剤4が硝酸鉄であった場合、図4に示すように、スラリS内の硝酸鉄濃度の上昇と共にウェーハWの加工レートが高まっていく。添加剤4の溶出は、研磨層3のウェーハWが押圧されている場所で最も多く、添加剤4がウェーハWの研磨面に対して効果的に作用し、安定した研磨特性が得られる。また、別の槽を設けて添加剤4を添加する必要が無く、効率的に添加剤4をスラリSへ添加することが可能となり、事前に添加剤4を添加するよりもスラリSが凝集にしにくく、安定したウェーハWの研磨が可能となる。
【0022】
次に、本発明に係わる研磨パッドの製造方法について説明する。図3は研磨パッドの製造装置を模式的に示した側面図である。
【0023】
研磨パッド製造装置10には、攪拌供給タンク5、スキージ6、ヒーター8、及びローラー9が備わっている。
【0024】
攪拌供給タンク5へは、研磨層3を形成する発泡ポリウレタンの材料となる研磨層材料3Aと鉄、硝酸鉄、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、及び酸化マンガンのいずれか1つの添加剤4が供給される。
【0025】
供給された研磨層材料3Aと添加剤4とは、攪拌供給タンク5内に設けられた不図示の攪拌子により均一に攪拌混合される。研磨層材料3Aと添加剤4との混合物は、攪拌供給タンク5に備えられた不図示のポンプにより、研磨パッド製造装置10へ供給されたシート状の下地層2の表面全体に供給される。
【0026】
下地層2表面へ供給された研磨層材料3Aと添加剤4との混合物は、下地層2が台7上を通過することにより、台7と所定の間隔を開けたスキージ6で、一定の厚さに下地層2表面全体へ均一に広げられる。
【0027】
下地層2へ均一に広げられた研磨層材料3Aは、次にヒーター8の間を通過することにより加熱されて硬化し、下地層2と接着する。
【0028】
接着して一体となった研磨層材料3Aと下地層2は、ローラー9の間を通過し、均一に圧延されるとともに、硬化時に生じる研磨層材料3A表面の凹凸やうねりが研磨等により除去される。
【0029】
このようにして形成された研磨パッド1は、更に所定のサイズに裁断され、表面に研磨時に使用する溝形状等が形成される。
【0030】
以上説明したように、本発明に係る研磨パッドの製造方法によれば、スラリへ添加剤を別に添加する必要がなく、研磨装置に添加剤を添加する設備を設ける必要がなくなる。また、ウェーハの研磨面に対して添加剤が効果的に作用し、事前に添加剤を添加するよりもスラリSが凝集にしにくい。これにより、安価で効率的な安定したウェーハの化学的機械研磨が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係わる研磨装置の概念図。
【図2】研磨パッドの横断面図。
【図3】本発明に係わる研磨パッド製造装置を模式的に表した側面図。
【図4】添加剤濃度と加工レートの関係を示した図表。
【符号の説明】
【0032】
1…研磨パッド,2…下地層,3…研磨層,3A…研磨層材料,4…添加剤,5…攪拌供給タンク,6…スキージ,7…台,8…ヒーター,9…ローラー,10…研磨パッド製造装置,11…研磨ヘッド,12…研磨定盤,13…スラリ供給装置,14…スラリ供給配管,15…スラリ追加配管,20…CMP研磨装置,W…ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの化学的機械研磨を行う研磨装置の研磨定盤に貼着され、スラリが供給されるとともに前記ウェーハが押圧されて該ウェーハの研磨を行う研磨パッドにおいて、
前記研磨パッドはウェーハが押圧される研磨層と研磨定盤に貼着される下地層とから構成され、前記研磨層形成時には、前記スラリへ添加する添加剤を、前記研磨層を形成する原料へ含有させて形成することを特徴とする研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記添加剤は鉄、硝酸鉄、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、及び酸化マンガンのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−831(P2008−831A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170174(P2006−170174)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】