説明

研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法及びワークの研磨方法

【課題】研磨ヘッドの高さ方向の位置を安定して高精度に調整可能な研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法を提供し、研磨するワークの平坦度を向上し、ワーク間の平坦度のばらつきを抑制することを目的とする。
【解決手段】ワークが保持されていない研磨ヘッドを研磨布と接触しない高さ方向の位置に位置決めした後、研磨ヘッドと定盤の少なくとも一方を回転させる工程と、高さ調整機構によって研磨ヘッドを研磨布に接触させるまで近づけながら、回転させた研磨ヘッドと定盤の少なくとも一方の負荷トルク電流をトルク測定機構によって測定し、該測定した負荷トルク電流の変化量が所定の閾値を超えた時点の研磨ヘッドの高さ方向の位置を基準位置として設定する工程と、設定した基準位置からの距離に基づいて、研磨ヘッドの高さ方向の位置を所定位置に調整する工程とを有する研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの表面を研磨する際に用いる研磨装置における、ワークを保持するための研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法及びワークの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴い、それに用いられている半導体シリコンウェーハの平坦度の要求は益々厳しいものとなっている。また、半導体チップの収率を上げる為にウェーハのエッジ近傍の領域までの平坦性が要求されている。
【0003】
シリコンウェーハの最終形状は最終工程である鏡面研磨加工によって決定されている。特に、例えば直径300mmなどの大直径のシリコンウェーハでは厳しい平坦度の仕様を満足するために両面研磨での一次研磨を行い、その後に表面のキズや面粗さの改善の為に片面での表面二次研磨及び仕上げ研磨を行っている。片面の表面二次研磨及び仕上げ研磨では両面一次研磨で作られた平坦度を維持することと表面側にキズ等の欠陥の無い完全鏡面に仕上げることを要求されている。
【0004】
一般的な片面研磨装置の概略図を図5に示す。この片面研磨装置101は、研磨布107が貼り付けられた定盤106と、研磨剤供給機構(不図示)と、研磨ヘッド120等から構成されている。この片面研磨装置101では、研磨ヘッド120でワークWを保持し、研磨剤供給機構から研磨布107上に研磨剤を供給するとともに、定盤106と研磨ヘッド120をそれぞれ回転させてワークWの表面を研磨布107に摺接させることにより研磨を行う。
【0005】
ワークを研磨ヘッドに保持する方法としては、平坦な円盤状プレートにワックス等の接着剤を介してワークを貼り付ける方法等がある。その他、研磨ヘッド本体およびワーク保持盤の凹凸形状の転写を抑える目的でワーク保持盤にバッキングフィルムと呼ばれる弾性膜を貼って保持する方法や、ワーク保持部をラバー膜とし、該ラバー膜の背面に空気等の加圧流体を流し込み、均一の圧力でラバー膜を膨らませて研磨布にワークを押圧する、いわゆるラバーチャック方式がある(例えば特許文献1参照)。また、外周部分ダレを抑制して平坦性を向上させる目的で、ワークの外側に研磨布を押圧するための手段としてのリテーナーリングを配置した研磨ヘッドも提案されている。
【0006】
一般的なラバーチャック方式の研磨ヘッドの構成の一例を模式的に図5に示す。図5に示す研磨ヘッド120は、円盤状の中板125の少なくとも下面部と側面部とを覆うようにラバー膜(ラバー材料)122を貼り、ラバー膜の背面に流体を供給してワークWを押圧できる構造、いわゆるラバーチャック構造となっている。
研磨ヘッド本体121には研磨加工中にワークWの側面を保持するための環状のガイドリング123が連結されている。また、研磨ヘッド本体121は高さ調整機構124に連結されており、ガイドリング123の高さ方向の位置を上下に変化させることができる構造となっている。このように、研磨ヘッド本体121に連結されたガイドリング123と研磨布との間の隙間を一定に保ち、安定にワークを保持して研磨を行う。
【0007】
上記したように、この研磨ヘッドのワークの加圧方式は研磨布に対しての研磨ヘッドの高さを両者の間隔が一定となるように固定し、研磨ヘッドのラバー膜を膨らませて加圧を行う方式である。この研磨ヘッドに代表されるような、研磨ヘッドと研磨布の間の間隔を固定させたままで研磨を行う方式の研磨ヘッドを用いる場合は、研磨布に対しての研磨ヘッドの高さ方向の位置が毎回同じになるように調整する必要がある。
【0008】
この高さ位置が適切に調整されていない場合、研磨するワークの平坦度が悪化したり、研磨毎の位置が不均一である場合には、研磨するワーク間で取代形状が不均一となって、平坦度のばらつきが発生する。ひどい場合には、間隔が狭すぎると研磨布とガイドリングの接触が発生し研磨布が損傷する。また、間隔が広すぎると研磨布とガイドリングの隙間からウェーハが飛び出す危険性がある。
【0009】
現状での研磨ヘッドの高さを調整する方法は、図5に示すように、研磨ヘッド120の取り付け面近傍に設置したレーザー変位計130を用いて研磨布107との距離を測定し、その測定した距離を基準にして、研磨ヘッドと研磨布の間が所望の距離となるように研磨ヘッドの高さを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009―107094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般的に、研磨布の表面は研磨剤等により濡れており、濡れていない場合でも水分を含んでいるため、従来のレーザー変位計を用いて距離を測定する方法ではその測定値が時間的に大きくばらついてしまう。そのため、研磨ヘッドの高さ方向の位置を研磨毎に安定して所望の位置に調整することは難しく、ワークの平坦度が悪化したり、ワーク間で平坦度のばらつきが発生するという問題が生じる。
【0012】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、研磨ヘッドの高さ方向の位置を安定して高精度に調整可能な研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法を提供することを目的とする。また、本発明は、研磨ヘッドの高さ方向の位置を高精度に調整することによって、研磨するワークの平坦度を向上でき、ワーク間の平坦度のばらつきを抑制できるワークの研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、定盤上に貼り付けられた研磨布と、該研磨布に研磨剤を供給するための研磨剤供給機構と、環状のガイドリングでワークの側面を保持しながら前記ワークの裏面を保持する研磨ヘッドと、該研磨ヘッドと前記定盤の少なくとも一方の負荷トルク電流を測定するトルク測定機構と、前記研磨ヘッドを高さ方向に上下動させて前記ガイドリングと前記研磨布との間の距離を調整する高さ調整機構とを具備し、前記高さ調整機構で所定位置に調整された前記研磨ヘッドに保持された前記ワークを前記研磨布に対して押圧して研磨する研磨装置における、前記研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法であって、前記ワークが保持されていない前記研磨ヘッドを前記研磨布と接触しない高さ方向の位置に位置決めした後、前記研磨ヘッドと前記定盤の少なくとも一方を回転させる工程と、前記高さ調整機構によって前記研磨ヘッドを前記研磨布に接触させるまで近づけながら、前記回転させた研磨ヘッドと前記定盤の少なくとも一方の負荷トルク電流を前記トルク測定機構によって測定し、該測定した負荷トルク電流の変化量が所定の閾値を超えた時点の前記研磨ヘッドの高さ方向の位置を基準位置として設定する工程と、前記設定した基準位置からの距離に基づいて、前記研磨ヘッドの高さ方向の位置を所定位置に調整する工程とを有することを特徴とする研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法が提供される。
【0014】
このような調整方法であれば、研磨ヘッドと研磨布が接触する位置を正確に測定して基準位置とすることができ、測定した正確な基準位置からの距離に基づいて、研磨ヘッドの高さ方向の位置を安定して高精度に調整することができる。
【0015】
このとき、前記基準位置を設定する工程における前記研磨ヘッドの前記研磨布への接触を、既知で均一な厚さを有するシート状部材を介して行うことができる。
このようにすれば、研磨布と研磨ヘッドが接触することによって発生する研磨布へのダメージを確実に抑制することができる。
【0016】
またこのとき、前記研磨ヘッドとして、研磨ヘッド本体の下部に円盤状の中板と、該中板に保持され少なくとも前記中板の下面部と側面部とを覆うラバー膜とを有し、該ラバー膜の下面部に前記ワークの裏面を保持するラバーチャック方式の研磨ヘッドを用いることができる。
本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法は、研磨布に対しての研磨ヘッドの高さを両者の間隔が一定となるように固定して高平坦にワークを研磨するラバーチャック方式の研磨ヘッドを有する研磨装置に好適に適用されることができる。
【0017】
また、本発明によれば、研磨ヘッドでワークを保持し、定盤上に貼り付けられた研磨布に研磨剤を供給しながら前記ワークを前記研磨布に対して押圧して研磨するワークの研磨方法であって、本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法によって前記研磨ヘッドの高さ方向の位置を調整した後、前記ワークの研磨を行うことを特徴とするワークの研磨方法が提供される。
【0018】
このような研磨方法であれば、本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法によって、研磨ヘッドの高さ方向の位置を高精度に調整した後にワークの研磨を行うことができ、ワークの平坦度を向上でき、また、ワーク間の平坦度のばらつきを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、研磨装置における研磨ヘッドの高さ方向の位置を調整する際、高さ調整機構によって研磨ヘッドを前記研磨布に接触させるまで近づけながら、研磨ヘッドと定盤の少なくとも一方の負荷トルク電流をトルク測定機構によって測定し、該測定した負荷トルク電流の変化量が所定の閾値を超えた時点の前記研磨ヘッドの高さ方向の位置を基準位置として設定し、その設定した基準位置からの距離に基づいて、研磨ヘッドの高さ方向の位置を所定位置に調整するので、研磨ヘッドと研磨布が接触する位置を正確に測定して基準位置とすることができ、測定した正確な基準位置からの距離に基づいて、研磨ヘッドの高さ方向の位置を安定して高精度に調整することができる。このように研磨ヘッドの高さ方向の位置を安定して高精度に調整した後にワークを研磨することで、ワークの平坦度を改善でき、ワーク間の平坦度のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法及びワークの研磨方法を説明する概略図である。
【図2】ラバーチャック方式の研磨ヘッドの一例を示す概略図である。
【図3】実施例における測定した負荷トルク電流の変化量を示す図である。
【図4】比較例における研磨ヘッドと研磨布間の距離を測定した結果を示す図である。
【図5】従来の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記したように、ワークの研磨に、研磨ヘッドと研磨布の間を固定させたままで行う方式の研磨ヘッドを用いる場合には、研磨布に対しての研磨ヘッドの高さ位置を正確に調整し、さらに研磨毎に同じになるように調整する必要がある。
しかし、従来の調整方法では、レーザー変位計を用いて測定した研磨ヘッドと研磨布との距離を基準にして、研磨ヘッドと研磨布の間が所望の距離となるように研磨ヘッドの高さを調整しており、研磨布上の水分や研磨布の膨潤等の影響がレーザー変位計を用いた距離の測定のノイズとなってばらつきが発生してしまうという問題がある。
【0022】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、研磨ヘッド又は定盤の負荷トルク電流を観察することによって、具体的には負荷トルク電流が急激に変化する研磨ヘッドの位置を特定することによって、研磨ヘッドと研磨布とが接触する位置を正確に測定でき、その正確に測定した接触位置を基準位置に設定して研磨ヘッドの高さ方向の位置を安定して高精度に調整できることに想到し、本発明を完成させた。
【0023】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法及びワークの研磨方法について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法及びワークの研磨方法を説明する概略図である。
【0024】
図1に示す研磨装置1には主に、研磨ヘッド2と、定盤6と、定盤6上に貼り付けられた研磨布7と、研磨布7に研磨剤を供給するための研磨剤供給機構5と、研磨ヘッド2、定盤6の負荷トルク電流をそれぞれ測定するトルク測定機構8a、8bとを有している。
研磨ヘッド2には外周部に沿って研磨布側に突出するように環状のガイドリング3が設けられており、ガイドリング3でワークWの側面を保持しながらワークWの裏面を保持することができるようになっている。
【0025】
また、研磨装置1には、研磨ヘッド2を高さ方向に上下動させてガイドリング3と研磨布7との間の距離を調整する高さ調整機構4を有している。
このとき、ワークWを保持する研磨ヘッド2として、例えば後述するラバーチャック方式のものを用いることができる。或いは、ワークWの裏面をバッキングパッドを介して保持し、ワークWの裏面側から研磨布側に向かって研磨ヘッドに設けられた開口を介して流体を噴出することでワークWを加圧するような研磨ヘッドを用いることもできる。
【0026】
図2はラバーチャック方式の研磨ヘッドの一例を示した概略図である。
この研磨ヘッド20は主に、研磨ヘッド本体21、ラバー膜22、環状のガイドリング23、高さ調整機構24、円盤状の中板25を有している。ラバー膜22は中板25によって、少なくとも中板25の下面部と側面部とを覆うように挟持される。このラバー膜22の下面部にワークWの裏面が保持される。
【0027】
中板25は、フランジ構造の研磨ヘッド本体21に固定されている。研磨加工中にワークWの側面を保持するためのガイドリング23がワークWの外周に沿って配置され、該ガイドリング23は研磨ヘッド本体21に連結されている。ラバー膜22で密閉された密閉空間部26に圧力調整機構27より流体が供給されることにより、該ラバー膜22が膨らみ、保持したワークWの背面に荷重が掛かる構造となっている。
【0028】
このような研磨装置1でワークWを研磨する際には、図1に示すように、まず、研磨ヘッド2でワークWを保持する。その後、高さ調整機構4で研磨ヘッド2を所定位置に調整し、すなわち、研磨布7とガイドリング3とを所定の距離だけ離すように研磨ヘッド2の高さ方向の位置を調整する。そして、研磨ヘッド2を調整した位置に固定した状態で、保持されたワークWを研磨布7に対して押圧して研磨する。
【0029】
本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法は、このような研磨装置における研磨ヘッドの高さ方向の位置を調整する方法である。
以下、図1を参照して本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法について詳細に説明する。
まず、ワークWが保持されていない状態で、研磨ヘッド2を研磨布7と接触しない高さ方向の位置に位置決めする。その後、研磨ヘッド2と定盤6の少なくとも一方を回転させる。ここで、回転させるのは後述する負荷トルク電流を測定する側に対応していれば、研磨ヘッド2と定盤6の両方でも良いし、どちらか一方でも良い。
【0030】
次に、研磨ヘッド2と定盤6の少なくとも一方を回転させた状態で、高さ調整機構4によって、研磨ヘッド2を研磨布7に接触させるまで近づける。すなわち、研磨ヘッド2を下方に送り、研磨ヘッド2の最下端の部位であるガイドリング3を研磨布7と接触させる。この際、研磨布7がガイドリング3と接触することによってダメージを受けないように送り速度を調整することが好ましい。
【0031】
或いは、研磨ヘッド2の研磨布7への接触を、既知で均一な厚さを有するシート状部材を介して行うこともできる。このようにすれば、研磨布と研磨ヘッドが接触することによって発生する研磨布へのダメージを確実に抑制することができるし、シート状部材が既知で均一な厚さを有するので、研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整に悪影響を与えることもない。
【0032】
また、研磨ヘッド2を研磨布7に近づける間、回転させた研磨ヘッド2と定盤6の少なくとも一方の負荷トルク電流をそれぞれトルク測定機構8a、8bによって測定する。そして、この測定した負荷トルク電流の変化量が所定の閾値を超えた時点、すなわち研磨ヘッド2と研磨布7が接触したと判断できる研磨ヘッド2の高さ方向の位置を基準位置として設定する。ここで、負荷トルク電流の変化量が所定の閾値を超えたかどうかを判定するのは研磨ヘッドと定盤のどちらか一方としても良いし、両方が閾値を超えた時点としても良い。
【0033】
上記のようにして研磨ヘッドと研磨布とが接触する位置である基準位置を設定することで、測定毎にばらつきが発生することなく正確に基準位置を設定することができる。
このように正確に設定した基準位置からの距離に基づいて、研磨ヘッド2の高さ方向の位置を所定位置に調整する。このような本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法であれば、ばらつきなく測定した正確な基準位置からの距離に基づいて、研磨ヘッドの高さ方向の位置を従来に比べより安定して高精度に調整できる。
【0034】
次に、本発明のワークの研磨方法について図1を参照しながら説明する。
まず、上記した本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法に従って、基準位置の設定までを行う。この基準位置の設定後、研磨ヘッド2で研磨するワークWを保持する。そして、設定した基準位置からの距離に基づいて、研磨ヘッド2の高さ方向の位置を所定位置に調整する。
【0035】
ここで、研磨ヘッド2の高さ方向の所定位置を、例えば、ガイドリングと研磨布との距離がワークの厚みの25〜45%になるような位置とすることができる。このようにすることで、ガイドリングと研磨布との距離が短かすぎる時に起こる研磨剤の供給不足によって発生する研磨速度の低下を防止することができ、また、距離が長すぎる場合に研磨加工中にワークを保持できなくなることを防止することができる。
その後、研磨ヘッド及び定盤を所定の研磨条件で回転させ、定盤上に貼り付けられた研磨布に研磨剤を供給しながらワークWを研磨布に対して押圧して研磨する。この研磨条件は特に限定されず、一般に採用されるいずれの条件であってもよい。
【0036】
このとき、研磨ヘッドとして、上記した図2に示すようなラバーチャック方式の研磨ヘッドを用いることができる。研磨ヘッドを所望の高さ方向の位置に固定してワークを安定して保持し、ワーク全体に均一な研磨荷重を掛けてワークを研磨することができるラバーチャック方式の研磨ヘッドに、研磨ヘッドの高さ方向の位置を安定して高精度に調整できる本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法を適用して、より平坦度が改善されたワークに安定して研磨できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(実施例)
本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法及びワークの研磨方法に従ってワークを研磨し、その平坦度を評価した。
研磨ヘッドとして図2に示すようなラバーチャック方式のものを有した図1に示すような研磨装置を用いて直径300mmのシリコンウェーハを100枚研磨し、平坦度の最大値、最小値、平均値、ばらつきをそれぞれ評価した。また、平坦度は、KLA社のWafersightを用いて外周部2mmを除外した領域でのGBIR(Global Backside Ideal Range)にて評価を行った。
【0039】
まず、本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法に従って、研磨ヘッドのガイドリングと研磨布の表面との距離が190μmとなるように、研磨ヘッドの高さ方向の位置を調整した。
この際、定盤のみを回転させて定盤の負荷トルク電流を測定した。図3はこの測定した負荷トルク電流の変化量と設定した基準位置を0としたときの研磨ヘッドの高さ方向の位置を示す図である。図3に示すように、負荷トルク電流の変化量が急激に変化し、閾値2(任意単位)を超えた時点の研磨ヘッドの高さ方向の位置を基準位置とした。
【0040】
次に、研磨ヘッドの高さ方向の位置を上記基準位置から190μm上になるように調整した後、シリコンウェーハの研磨を行った。ここで研磨条件は以下のようにした。研磨剤としてコロイダルシリカを含有するアルカリ溶液を使用し、研磨布は溝構造をもったウレタンを含浸させた不織布を用いた。研磨ヘッドと定盤はそれぞれ30rpmで回転させ、研磨荷重は25kPa、研磨時間は100秒とした。
上記した研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整とシリコンウェーハの研磨を100枚のシリコンウェーハに対して繰り返し、その平坦度を評価した。
【0041】
その結果、表1に示すように、GBIRは最大値120nm、最小値88nm、平均値103nmであり、後述する比較例の最大値164nm、最小値91nm、平均値120nmと比べ改善されていることが分かった。また、実施例では最大値と最小値の差は32nmであったのに対し後述する比較例では73nmと、ばらつきも改善されていた。これは、研磨ヘッドの高さ方向の位置を研磨毎に調整する際、安定して高精度に所定位置に調整できたためと考えられる。
【0042】
このように、本発明の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法及びワークの研磨方法によって、研磨ヘッドの高さ方向の位置を安定して高精度に調整することができ、研磨するワークの平坦度を改善でき、ワーク間の平坦度のばらつきを抑制できることが確認できた。
【0043】
(比較例)
従来の図5に示すような研磨装置で、レーザー変位計を用いて研磨ヘッドの高さ方向の位置を調整した後、実施例と同様の研磨条件でシリコンウェーハを研磨し、これを100枚のシリコンウェーハに対して繰り返し、実施例と同様に評価した。
図4にレーザー変位計を用いて研磨ヘッドと研磨布との距離を測定した結果を示す。図4は研磨毎に測定した研磨ヘッドと研磨布との距離の経時変化の様子を示したものである。図4に示すように、時間の経過によって距離が大きく変化していることが分かる。
【0044】
また、平坦度の測定結果を表1に示す。表1に示すように、GBIRは最大値164nm、最小値91nm、平均値120nmと実施例と比べ悪化していた。これは、レーザー変位計による研磨ヘッドと研磨布との距離の測定誤差のために研磨ヘッドを適切な位置に高精度に調整できなかったためと考えられる。また、最大値と最小値の差も73nmと実施例と比べ悪化していた。これは、研磨毎に研磨ヘッドの位置調整でばらつきが発生していたためと考えられる。
【0045】
【表1】

【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0047】
1…研磨装置、 2、20…研磨ヘッド、 3、23…ガイドリング、
4、24…高さ調整機構、 5…研磨剤供給機構、 6…定盤、 7…研磨布、
8a、8b…トルク測定機構、 21…研磨ヘッド本体、 22…ラバー膜、
25…中板、 26…密閉空間部、 27…圧力調整機構、 W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤上に貼り付けられた研磨布と、該研磨布に研磨剤を供給するための研磨剤供給機構と、環状のガイドリングでワークの側面を保持しながら前記ワークの裏面を保持する研磨ヘッドと、該研磨ヘッドと前記定盤のうち少なくとも一方の負荷トルク電流を測定するトルク測定機構と、前記研磨ヘッドを高さ方向に上下動させて前記ガイドリングと前記研磨布との間の距離を調整する高さ調整機構とを具備し、前記高さ調整機構で所定位置に調整された前記研磨ヘッドに保持された前記ワークを前記研磨布に対して押圧して研磨する研磨装置における、前記研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法であって、
前記ワークが保持されていない前記研磨ヘッドを前記研磨布と接触しない高さ方向の位置に位置決めした後、前記研磨ヘッドと前記定盤のうち少なくとも一方を回転させる工程と、
前記高さ調整機構によって前記研磨ヘッドを前記研磨布に接触させるまで近づけながら、前記回転させた研磨ヘッドと前記定盤のうち少なくとも一方の負荷トルク電流を前記トルク測定機構によって測定し、該測定した負荷トルク電流の変化量が所定の閾値を超えた時点の前記研磨ヘッドの高さ方向の位置を基準位置として設定する工程と、
前記設定した基準位置からの距離に基づいて、前記研磨ヘッドの高さ方向の位置を所定位置に調整する工程とを有することを特徴とする研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法。
【請求項2】
前記基準位置を設定する工程における前記研磨ヘッドの前記研磨布への接触を、既知で均一な厚さを有するシート状部材を介して行うことを特徴とする請求項1に記載の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法。
【請求項3】
前記研磨ヘッドとして、研磨ヘッド本体の下部に円盤状の中板と、該中板に保持され少なくとも前記中板の下面部と側面部とを覆うラバー膜とを有し、該ラバー膜の下面部に前記ワークの裏面を保持するラバーチャック方式の研磨ヘッドを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法。
【請求項4】
研磨ヘッドでワークを保持し、定盤上に貼り付けられた研磨布に研磨剤を供給しながら前記ワークを前記研磨布に対して押圧して研磨するワークの研磨方法であって、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の研磨ヘッドの高さ方向の位置の調整方法によって前記研磨ヘッドの高さ方向の位置を調整した後、前記ワークの研磨を行うことを特徴とするワークの研磨方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−245584(P2012−245584A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118744(P2011−118744)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】