説明

研磨用パッドおよびメッキ用パッド

【課題】電解液やメッキ液が均一に分散されて均一な研磨面あるいはメッキ面が得られるようにする。
【解決手段】被研磨物や被メッキ物に圧接されて相対的に摺動されるパッドにおいて、被研磨物や被メッキ物に圧接される研磨層3を、超極細繊維で構成するとともに、下地層4に貫通孔4を形成し、貫通孔4を介して供給される電解液やメッキ液が、超極細繊維からなる研磨層3で均一に分散され、電流密度が均等になるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解研磨に用いられる研磨用パッドおよび電解メッキに用いられるメッキ用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程などにおけるウェハ等の被研磨物の平坦化処理では、研磨パッドを定盤に保持し、ウェハ等の被研磨物を研磨ヘッドに保持して、研磨スラリーを供給しながら、研磨パッドと被研磨物とを加圧した状態で相対的に摺動させることによって研磨を行なうCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)法が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかるCMP法では、一般にポリウレタン製の研磨パッドが用いられるが、硬度の低いCu膜の研磨加工では、スクラッチなどの表面欠陥が生じ、かかる表面欠陥を防ぐには、研磨加工時の加工圧力を下げる必要があるが、加工圧力を下げると、十分な研磨レートを確保できないという難点がある。
【特許文献1】特開2005−259980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、CMPと電解研磨とを組み合わせることによって、低い加工圧力で、通常の研磨レートを得ることができるようにした複合型の電解研磨(ECMP:Electro Chemical Mechanical Polishing )法も提案されている。
【0005】
かかる電解研磨用のパッドとして、既存のポリウレタン製の研磨パッドに、電解液の流路となる貫通孔や溝を形成したものを用いる場合には、貫通孔や溝の周辺部と残余の部分とで電解液の流動が不均一となって部分的な放電が生じ、均一な研磨が困難になるといった課題がある。
【0006】
また、電解研磨と同様に、電解メッキとCMPとを組み合わせた複合型の電解メッキ(ECMD:Electro Chemical Mechanical Deposition )に用いるパッドについても同様の課題がある。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであって、電解液やメッキ液の流動を円滑にして均一な研磨面あるいはメッキ面が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の研磨用パッドあるいはメッキ用パッドは、被研磨物あるいは被メッキ物に圧接されて相対的に摺動されるパッドであって、前記被研磨物あるいは被メッキ物に圧接される研磨面が、超極細繊維からなるものである。
【0009】
この超極細繊維は、繊維を数本から数百本撚り合わせた状態のものであってもよく、この超極細繊維の直径は、2μm〜100μmであるのが好ましい。
【0010】
研磨面は、この超極細繊維の織布あるいは不織布などのシートからなるのが好ましい。
【0011】
このシートの厚みは、0.1mm〜5mmであるのが好ましく、より好ましくは、0.8mm〜2mmである。0.1mm未満である場合には、耐磨耗性が低く寿命が短くなり、5mmを超える場合には、研磨後の被研磨物表面の平坦性が確保できなくなるため、好ましくない。
【0012】
本発明の研磨用パッドあるいはメッキ用パッドは、超極細繊維からなる研磨層の一層構造としてもよい。
【0013】
本発明によると、被研磨物や被メッキ物に圧接摺動される研磨面は、超極細繊維から構成されるので、電解液やメッキ液が、繊維の隙間から均一に染込んで分散され、あるいは、細い繊維の間の窪みがミクロポケットの役割をして電解液やメッキ液が円滑に流動運搬され、これによって、電流密度が均等となって均一な研磨あるいはメッキが可能となる。しかも、超極細の繊維で構成されているので、被研磨物や被メッキ物にスクラッチ等の表面欠陥が生じにくいものとなる。
【0014】
本発明の一つの実施形態では、前記研磨面を有する研磨層の下層に、下地層を有する構成としてもよい。
【0015】
この下地層は、多孔質の発泡層であるのが好ましく、電解液あるいはメッキ液の流路となる貫通孔が形成されるのが好ましい。
【0016】
この実施形態によると、下地層によって適度のクッション性を得ることができ、スクラッチ等の表面欠陥の発生を効果的に抑制することができ、また、下地層の貫通孔を介して電解液あるいはメッキ液が、超極細繊維からなる研磨層に供給され、研磨層で均一に分散されることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被研磨物や被メッキ物に圧接されて相対的に摺動される研磨面は、超極細繊維から構成されるので、電解液やメッキ液が均一に染込んで分散され、あるいは、細い繊維の間の窪みがミクロポケットの役割をして電解液やメッキ液が円滑に流動運搬され、これによって、電流密度が均等となって均一な研磨あるいはメッキが可能となる。しかも、超極細の繊維で構成されているので、被研磨物や被メッキ物にスクラッチ等の表面欠陥が生じにくいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るパッドの概略断面図である。
【0020】
この実施形態のパッド1は、下地層2と、この下地層2上に両面テープを介して貼り付けられた超極細繊維の布からなる研磨層3とを備えている。
【0021】
この実施形態のパッド1は、上述の複合型の電解研磨(ECMP)あるいは複合型の電解メッキ(ECMD)の電解研磨用パッドあるいは電解メッキ用パッドとして用いられるものであり、被研磨物あるいは被メッキ物に、研磨層3の表面の研磨面3aが圧接され、相対的に摺動されて被研磨物あるいは被メッキ物を研磨するものである。
【0022】
下地層2は、例えば、ウレタン樹脂の発泡層であり、この下地層2には、複合型の電解研磨の際の電解液あるいは複合型の電解メッキの際のメッキ液の供給流路となる多数の貫通孔4が形成されている。研磨層3を、下地層2の上に貼り付けるための上述の両面テープにも、前記貫通孔に連通する孔が形成されており、複合型の電解研磨の電解液(以下、単に「電解液」という)あるいは複合型の電解メッキのメッキ液(以下、単に「メッキ液」という)が、下地層2の貫通孔4を介して研磨層3に円滑に供給されるように構成されている。
【0023】
この下地層2は、発泡層に限らず、ウレタン樹脂を含浸させた不織布層などであってもよい。
【0024】
研磨層3を構成する超極細繊維の布は、直径2μm〜100μmの繊維からなるのが好ましい。直径が、2μm未満では、耐久性が十分得られず、直径が、100μmを越えると、被研磨物あるいは被メッキ物にスクラッチ等の表面欠陥が生じやすく好ましくない。
この超極細繊維の材質は、例えば、ポリエチレンやポリアクリルであるのが好ましく、この研磨層3として、例えば、東レ株式会社製のトレシー(登録商標)を用いることができる。
【0025】
図2は、超極細繊維の布の表面のSEM写真であり、同図(a)は、直径2μmの繊維の布を示し、同図(b)は、直径15μmの繊維の布を示している。
【0026】
このような超極細繊維で研磨面を構成することにより、繊維の間の隙間から電解液やメッキ液が染込んで均一に分散し、あるいは、細い繊維の間の窪みが、ミクロポケットの役割をし、電解液やメッキ液が前記窪みによって円滑に流動運搬されて均一に分散することになり、これによって、電流密度が均一となって均一な電解研磨あるいは電解メッキが可能となる。
【0027】
既存のポリウレタン系のパッドの表面のポア(開口)に比べて、ミクロポケットとなる繊維の間の窪みは、より細かく均一に設けられているので、電解液やメッキ液が、既存のパッドに比べて、より均一に流動分散されることになる。
【0028】
次に、この実施形態のパッド1を、複合型の電解メッキ用のパッドとして用いる場合について説明する。
【0029】
図3は、図1のパッド1を用いて複合型の電解メッキを行なうための複合型の電解メッキ装置の概略構成図であり、この例では、銅メッキの場合について説明する。
【0030】
回転駆動される上定盤5には、カソードリング6が周縁部に装着された被メッキ物としてのウェハ7が、バッキング材8によって保持されている。
【0031】
上定盤5の下方位置には、CuSO等を含むメッキ液12が貯留されたメッキ槽11が配置されており、このメッキ槽11内には、陽極14が配置されている。
【0032】
このメッキ槽11は、メッキ液12を回収する回収槽20内に配置されている。この回収槽20の底部には、排出口20aが設けられており、図示しない循環ポンプによって、排出口20aからのメッキ液12が前記リサイクリングシステム10に導入され、リサイクリングシステム10で再生されたメッキ液は、矢符で示されるように、新たなメッキ液と共にメッキ槽11に循環供給される。
【0033】
このメッキ槽11の上蓋に相当する部分が、下定盤11aとなっており、この下定盤11aには、メッキ槽11内のメッキ液12を上方に供給するための多数の供給孔13が形成されている。この下定盤11a上には、パッド1が、その貫通孔4が前記供給孔13に連通するように、孔を有する両面テープなどによって取り付けられている。これによって、パッド1の研磨層3に、下方のメッキ槽11からメッキ液12が供給されるように構成されている。
【0034】
ウェハ7に装着されたカソードリング6およびメッキ槽11内に配置された陽極14が電源15に接続され、メッキ液12を介して前記カソードリング6と陽極14とに電流が供給される。
【0035】
また、ウェハ7を、パッド1の研磨面3aに圧接した状態で上定盤5が回転駆動されるとともに、循環ポンプによってメッキ槽11のメッキ液12がパッド1の研磨層3に供給される。
【0036】
これによって、ウェハ7に、銅膜を電解メッキすると同時に、パッド1によってウェハ7表面を研磨する。
【0037】
この実施形態によれば、研磨層3は、超極細繊維で構成されているので、下方から供給されるメッキ液が、繊維の間の隙間から染込んで均一に分散し、あるいは、細い繊維の間の窪みによって円滑に流動運搬されて均一に分散することになり、これによって、電流密度が均一となって均一な電解メッキが行われることになる。
【0038】
この複合型の電解メッキ装置によって、次の条件で、実施例のパッドと、貫通孔を有する従来のウレタンパッドとを用いてそれぞれ複合型の電解メッキを行った。
【0039】
被メッキ物を銅ウェハとし、メッキ液をCuSO(40g/l),HSO(10g/l),HCl(50ppm)として流量を1L/minとした。
【0040】
また、メッキ液の温度を20℃、上定盤5の回転を20rpm、メッキ電流を20mA/cmとした。
【0041】
図4および図5は、その結果を示すものであり、図4は、実施例のパッドを用いた場合のウェハの位置に対する膜抵抗の変化を示すものであり、図5は、従来例のパッドを用いた場合のウェハの位置に対する膜抵抗の変化を示すものである。各図において、黒四角は複合型の電解メッキ前を、白丸は複合型の電解メッキ後をそれぞれ示しており、また、横軸の位置は、「0」がウェハの中心位置を示している。
【0042】
複合型の電解メッキ前は、図4および図5のいずれもウェハの位置によらず、一定の膜抵抗を示している。
【0043】
実施例のパッドを用いた複合型の電解メッキでは、図4に示すように、ウェハの中心位置および両側のエッジ部分においても膜抵抗がほぼ一定であり、均一にメッキが形成されていることが分かる。
【0044】
一方、従来例のパッドを用いた複合型の電解メッキでは、図5に示すように、ウェハの両側のエッジ部分は、メッキが進んで膜が厚くなっており、中心位置では、メッキが進んでおらず、不均一にメッキが形成されていることが分かる。
【0045】
このように、超極細繊維からなる研磨層を有する実施例では、メッキ液が均一に分散されて均一にメッキが形成されていることが分かる。
【0046】
次に、この実施形態のパッド1のコンディショニングについて説明する。
【0047】
この実施形態のパッド1は、その研磨層3が上述のように超極細繊維で構成されているので、従来のウレタンパッドのようにダイヤモンドドレッサーによるコンディショニングを行うことはできない。
【0048】
このため、図6に示すように、アーム16に支持された超音波ヘッド17を、パッド1に対向配置し、洗浄液を供給しながら前記超音波ヘッド17から20KHz〜1.6MHzの超音波を付与してパッド1の表面の超極細繊維からなる研磨層3のコンディショニングを行なうようにしている。
【0049】
パッドのコンディショニングは、超音波に限らず、例えば、図7に示すように、数十〜数百MPaの超高圧水を、ノズル18からパッド1に向けて噴射してコンディショニングを行なうようにしてもよい。
【0050】
上述の実施形態では、超極細繊維からなる研磨層3を、両面テープによって下地層2に貼り付け、このパッド1を、下定盤11aに両面テープによって取り付けたけれども、他の実施形態として、図8に示すように、下定盤11a上に、下地層2を配置し、その上に、下地層2よりも大径な超極細繊維からなるシート状の研磨層3を被せ、研磨層3の周縁部を挟むようにして下地層2の外周にリング状の固定具を嵌めた状態で、この固定具19を、下定盤11aにボルトなどによって固定するようにしてもよい。
【0051】
上述の実施形態では、超極細繊維からなる研磨層3には、下地層2を設けたけれども、他の実施形態として、超極細繊維からなる研磨層3のみでパッドを構成してもよい。
【0052】
また、この場合、研磨層の交換を容易にするために、例えば、図9に示すように、超極細繊維からなるシート状の研磨層3を、ロール状にして供給巻取り可能に構成し、必要な領域を、下定盤11aに圧接した状態で使用するようにしてもよい。
【0053】
上述の実施形態では、複合型の電解メッキに適用して説明したけれども、他の実施形態として、複合型の電解研磨にも同様に適用できるものであり、この場合は、電解メッキ液に代えて電解研磨液を使用するとともに、電極の極性を逆にすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、半導体ウェハの電解研磨や電解メッキなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る研磨パッドの概略断面図である。
【図2】超極細繊維の表面の電子顕微鏡写真である。
【図3】電解メッキ装置の概略構成図である。
【図4】実施例のパッドを用いた電解メッキの位置による膜抵抗の変化を示す図である。
【図5】従来例のパッドを用いた電解メッキの位置による膜抵抗の変化を示す図である。
【図6】超音波によるパッドのコンディショニングを示す図である。
【図7】超高圧水の噴射によるパッドのコンデイショニングを示す図である。
【図8】パッドの定盤への固定方法を示す図である。
【図9】他の実施形態のパッドの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 パッド 2 下地層
3 研磨層 4 貫通孔
6 カソードリング 11 メッキ槽
14 陽極 15 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物に圧接されて相対的に摺動されるパッドであって、
前記被研磨物に圧接される研磨面が、超極細繊維からなることを特徴とする研磨用パッド。
【請求項2】
被メッキ物に圧接されて相対的に摺動されるパッドであって、
前記被メッキ物に圧接される研磨面が、超極細繊維からなることを特徴とするメッキ用パッド。
【請求項3】
前記超極細繊維が、直径2μm〜100μmの繊維である請求項1に記載の研磨用パッド。
【請求項4】
前記超極細繊維が、直径2μm〜100μmの繊維である請求項2に記載のメッキ用パッド。
【請求項5】
前記研磨面を有する研磨層の下層に、下地層を有する請求項1または3に記載の研磨用パッド。
【請求項6】
前記研磨面を有する研磨層の下層に、下地層を有する請求項2または4に記載のメッキ用パッド。
【請求項7】
前記下地層が、多孔質の発泡層である請求項5に記載の研磨用パッド。
【請求項8】
前記下地層が、多孔質の発泡層である請求項6に記載のメッキ用パッド。
【請求項9】
前記下地層には、電解液の流路となる貫通孔が形成されている請求項5または7に記載の研磨用パッド。
【請求項10】
前記下地層には、メッキ液の流路となる貫通孔が形成されている請求項6または8に記載のメッキ用パッド。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−62324(P2008−62324A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241264(P2006−241264)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000116127)ニッタ・ハース株式会社 (150)
【Fターム(参考)】