説明

研磨用パッド及び研磨方法

【課題】機能性材料の研磨を高能率で行うことが可能であり、表面粗さ、平坦度、形状安定性などの点で良好な研磨特性を確保できる研磨用パッド及び研磨方法を提供すること。
【解決手段】分子中に下記式(A)で示す部分構造を持つオルガノシラザン化合物に接触して処理した微小粉体である疎水化砥粒を含有する研磨用砥粒と、前記研磨用砥粒を内在させる多孔質体を形成する基材とを有することにある。


(式(A)中、*で表される部分にて他の部分と結合される。他の部分は複数の*の間を連結する構造であっても良い。Xは水素、炭化水素基から選択される。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハなどに用いられるSiウェハ、SiCウェハ、プラスチック製レンズなどの機能性材料の研磨に好適な研磨用パッド及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどに用いられるSiウェハ、SiCウェハ、プラスチック製レンズなどの機能性材料は、その性能を発揮するために、高品位、高平滑な面を得る必要がある。高品位、高平滑な面の形成は困難であるが、できるだけ短時間での加工が望まれる。機能性材料として例を挙げればシリコン半導体とその応用デバイスのCMP、高速動作、受発光性能が求められる化合物半導体、パワーデバイス用のSiCやGaN、大容量化が進むハードディスク基板、高屈折率で難加工材になってきたプラスチック製レンズがある。
【0003】
機能性材料の加工工程の中でも研磨工程は、形状、面精度などを作り込む工程を担っているため重要な工程である。今日ではシリコンの研磨と同様に化学的機械研磨が適用されている。また、すべてにおいて高品位・低コストな研磨加工が求められている。そこで、この化学的機械研磨における研磨特性を左右する重要な因子である研磨材、研磨工具に関する研究開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1では、可溶性シラン化合物を用いて主にタンタルを研磨する方法が提案されている。そして、特許文献2では、研削砥石ヘッドの回転ブレ及び被加工物を担持するターンテーブルの回転ブレを0.1μm以下とした超精密研削を行い、続いて研削砥石を外して研磨工具(パッド、フィルム)に交換して超精密研削と同一方式で鏡面研磨を行う超精密加工方法が開示されている。また、特許文献2には、更に、同一の超精密研削装置に同一の砥石ヘッドを2組並列させ、一方に研削砥石を、他方に研磨工具(パッド、フィルム)を装着し、研削終了後に被加工物を移動させて研磨を行う超精密加工方法が開示されている。これら特許文献2に記載の加工方法は研削と研磨とを同一の装置にて行うことが可能であり、高能率化且つ低コスト化を目的とするものである。また、特許文献3では、シリコン基板に対して研磨促進剤としてのヒドラジン化合物を用いることにより研磨能率の向上を図る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−502824号公報
【特許文献2】特開平5−285807号公報
【特許文献3】特開平7−228863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1の技術では吸着力が弱く、研磨材が被加工物や研磨工具に保持されがたいとの問題点があった。そして、特許文献2の技術では新規装置の導入が必要な上、鏡面加工が適用できる程度にまで研削を行う必要があり、研削用の砥石の管理が難しいといった問題点がある。また、特許文献3の技術ではヒドラジン化合物による研磨促進効果は認められるものの、ヒドラジン化合物は環境負荷が高いことが問題になる。更に、特許文献3の技術では、研磨材自身の改良を組み合わせることによる研磨性能の向上が見込まれる。
【0007】
また、近年の機能性材料の応用製品における高精度化、高機能化に伴い、研磨工程においても更なる精度向上に加え、環境負荷低減などが要求されている。
【0008】
本発明では上記課題に鑑み完成したものであり、機能性材料全般の研磨を高能率で行うことが可能であり、表面粗さ、平坦度、形状安定性などの点で良好な研磨特性を確保できる研磨用パッド及び研磨方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に係る本発明の研磨用パッドの特徴は、分子中に下記式(A)で示す部分構造を持つオルガノシラザン化合物に接触して処理した微小粉体である疎水化砥粒を含有する研磨用砥粒と、
前記研磨用砥粒を内在させる多孔質体を形成する基材と、を有することにある。
【0010】
【化1】

【0011】
(式(A)中、*で表される部分にて他の部分と結合される。他の部分は複数の*の間を連結する構造であっても良い。Xは水素、炭化水素基から選択される。)
上記課題を解決する請求項2に係る本発明の研磨用パッドの特徴は、請求項1において、前記微小粉体はシリカ、及び/又は表面シランカップリング剤処理されたシリカから形成されることにある。
【0012】
上記課題を解決する請求項3に係る本発明の研磨用パッドの特徴は、請求項1又は2において、前記研磨用砥粒は体積平均粒径が0.01μm以上、5μm以下であることにある。
【0013】
上記課題を解決する請求項4に係る本発明の研磨用パッドの特徴は、請求項1〜3の何れか1項において、前記研磨用砥粒の含有量は全体の質量を基準として5〜90質量%であることにある。
【0014】
上記課題を解決する請求項5に係る本発明の研磨用パッドの特徴は、請求項1〜4の何れか1項において、前記基材の表面は溝部をもつことにある。
【0015】
上記課題を解決する請求項6に係る本発明の研磨用パッドの特徴は、請求項1〜5の何れか1項において、前記基材は樹脂組成物から形成されており、
溶融した前記樹脂組成物、又は、溶媒に溶解させた前記樹脂組成物と、前記研磨用砥粒とを混合後、前記樹脂組成物を固形化して形成されていることにある。
【0016】
上記課題を解決する請求項7に係る研磨方法の特徴は、請求項1〜6の何れか1項に記載の研磨用パッドを用い、
固形物を含有しない研磨液を用いて研磨を行うことにある。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明においては、分子中に上記式(A)で示される部分構造を持つオルガノシラザン化合物に接触して処理した微小粉体である疎水化砥粒を含有する研磨用砥粒を有することにより、研磨用砥粒の基材への吸着力が向上し、研磨用砥粒の有効利用を図ることが可能になる。ここで、基材は多孔質であるため、その孔中に研磨用砥粒を保持することができる。その孔は連続であっても、不連続であっても良い。不連続である場合には基材の摩耗と共に孔の内部に保持された研磨用砥粒が外部に露出して研磨作用を発揮する。特に請求項2のようなシリカからなる微小粉体を採用したり、請求項3のような粒径分布の研磨用砥粒を採用したりすることで、更に高い研磨能を発揮することができる。
【0018】
請求項4に係る発明においては、研磨用砥粒の含有量を規定することにより高い研磨能率を発揮することが可能になった。
【0019】
請求項5に係る発明においては、基材の表面に溝部を備えることで研磨により生成する被研磨物を効果的に研磨面から除去することが可能になり、常に高い研磨能力を保つことができる。
【0020】
請求項6に係る発明においては、基材を樹脂組成物から形成し、溶融乃至溶液化した樹脂組成物中に研磨用砥粒を混合・分散させることにより、基材中に均一に研磨用砥粒を分散させることができる。また、分散させる研磨用砥粒は前述したように樹脂組成物への親和性が高く耐久性に優れる。
【0021】
請求項7に係る発明においては、本発明の研磨用パッドを用い、固形物を用いずに研磨を行うため、固形物に由来する環境への負荷を少なくできる。通常の研磨では研磨用パッドと被研磨物との間にも固形物としての研磨用砥粒を含む研磨液を介在させている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における研磨用砥粒と基材の孔との関係を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の研磨用パッド及び研磨方法について、実施形態に基づき以下、詳細に説明する。
【0024】
(研磨用パッド)
本実施形態の研磨用パッドは研磨用砥粒と基材とを有する。本実施形態の研磨用パッドは膜状乃至板状の形態にすることができる。その場合には、何らかの固定部材に貼付して用いることが望ましい。固定部材上に貼付して被研磨物の表面に当接して相対移動させることにより、外部に露出する研磨用パッドに含まれる研磨用砥粒が被研磨物を研磨する。研磨用パッドは接着層、クッション層などを介して固定部材上に固定することができる。接着層は研磨用パッドを固定部材上に接着する作用を発揮し、クッション層は自身が撓むことにより研磨用パッドが被研磨物に密着できるようにする作用を発揮する。
【0025】
研磨用砥粒は疎水化砥粒を含有する。疎水化砥粒の含有量は限定しないが研磨用砥粒全体の質量を基準として0.01質量%以上含有することが望ましく、0.1以上含有することがより望ましい。研磨用砥粒は体積平均粒径が0.01μm以上、5μm以下であることが望ましく、0.02、0.1下であることがより望ましい。研磨後の研磨面に必要とされる平滑度が大きい場合には研磨用砥粒の平均粒径は小さくすることが望ましいが、研磨速度向上の観点からは平均粒径は大きいことが望ましい。また、必要な平滑度に応じ、一定粒径(例えば、3μm、5μm)以上の研磨用砥粒を含有しない(又は含有量が制限される)ことが望ましい。
【0026】
疎水化砥粒は素になる微小粉体に対して上記式(A)にて示される部分構造をもつシラザン化合物(以下、「シラザン化合物」と断り無く称する場合には上記式(A)の部分構造をもつシラザン化合物を示す。)を接触させて処理することにより製造されるものである。ここで、式(A)中、*で表される部分に連結される他の部分の構造は限定されないが、(a)炭化水素基のほか、(b)炭化水素基のうちの、炭素原子、及び/又は、炭素原子及び水素原子、の一部について、酸素又は窒素にて置換したもの、(c)水素原子の一部又は全部をハロゲンにて置換したものなどを採用できる。炭化水素基は複数の*の間を連結する構造であっても良く、その場合には本化合物は環状化合物になる。
【0027】
シラザン化合物としては下記一般式(1)にて表されるシラザン化合物、下記一般式(2)にて表されるシクロポリシラザン化合物、下記一般式(3)にて表される環状有機ケイ素化合物が望ましい。
(1):RSi-NH-SiR
【0028】
【化2】

【0029】
シラザン化合物を微小粉体に接触させた後、加熱したり、そのまま放置したりできる。シラザン化合物を微小粉体に接触させる方法としては、シラザン化合物をそのまま微小粉体に混合する方法、シラザン化合物を適正な溶媒に溶解乃至分散させて微小粉体に混合する方法などがある。混合は撹拌などにより促進できる。
【0030】
一般式(1)におけるRは炭素数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基で、1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基等、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基からそれぞれ独立して選択可能である。また、上記1価炭化水素基はハロゲン基、水酸基、エステル基、エーテル基、アミド基、ウレイド基、ウレア基、シアノ基、ニトロ基、スルホン基等にて水素原子の1又は2以上を置換する置換アルキル基を含んでもよい。6つのRは、全て同一であっても、全て異なる基であっても、一部が同一であっても良い。好ましいシラザン化合物としてはヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザンを挙げることができ、より好ましくはヘキサメチルジシラザンが挙げられる。
【0031】
一般式(2)におけるRは式(1)と同様であり、nは3〜10までの整数にて表される。好ましいシクロポリシラザン化合物としては1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサエチルシクロトリシラザンが挙げられる。Xは水素又は炭化水素基である。Xの炭化水素基は炭素数が1又は2程度であることが望ましい。
【0032】
一般式(3)におけるR、X、nは式(1)と同等である。mは1〜nまでの整数にて表される。好ましい環状有機ケイ素化合物としては下記の構造の化合物(nが3、mが1)が挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
シラザン化合物の量としては特に限定しないが、微小粉体の単位表面積あたりのトリ1価炭化水素シリル基モル数が0.1〜15μmol/m、好ましくは0.5〜8μmol/m、となるように処理することが望ましい
微小粉体としては特に限定しないが、無機物であることが望ましく、シリカ、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ホウ素など(これらの混合物を含む)が望ましい。微小粉体にシラザン化合物を接触させることにより、微小粉体の表面を疎水化する。微小粉体としては球状物、破砕物、球状物及び破砕物の混合物などが挙げられる。
【0035】
微小粉体はシラザン化合物による処理に加えて他の処理を行うことが出来る。他の処理はシラザン化合物による処理の前後に行うことも、シラザン化合物による処理と同時に行うことも出来る。他の処理としては疎水化できる処理が好ましい。例えば、シランカップリング剤、チタネート、ジルコニウム系カップリング剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーンなどを微小粉体の表面に接触させて、化学反応を生じさせて表面を改質したり、物理的に吸着させて表面を改質することが出来る。
【0036】
疎水化砥粒以外に含有する研磨用砥粒としては特に限定されず一般的な砥粒(シリカ、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ホウ素など)を採用できる。
【0037】
基材は多孔質体である。例えば、不織布や発泡ウレタンなどの発泡樹脂である。多孔質を形成する孔は連続する物であっても不連続のものであっても良い。その孔中に研磨用組成物を保持する。なお、孔が連続するとは外部から連続する(すなわち、外部と連通する)ことを意味する。不連続とは外部に連続しない(連通しない)ことを意味する。連続する孔と、不連続の孔とが混在することもある。また、形成されている孔の大きさが研磨用砥粒の大きさとほぼ等しく、基材と密着する場合もある。また、研磨用砥粒が基材との間に間隙を介して保持される場合もある。図1に孔の形態と研磨用砥粒の分散の様子とについて類型を示す。
【0038】
図1(a)には基材2中に不連続な孔が形成され、その形成された孔の大きさと分散されている研磨用砥粒1の大きさとが一致する形態を示す。つまり、研磨用砥粒1と基材2とは隙間無く密着する。図1(b)には基材2a中に不連続な孔が形成され、その形成された孔の大きさが分散されている研磨用砥粒1の大きさよりも大きい形態を示す。つまり、孔は外部に連通せず、孔と研磨用砥粒との間には隙間がある。図1(c)には基材2b中に外部と連続する孔が形成され、その孔内に研磨用砥粒1が分散されている。孔は管状である。図1(d)には基材2c中に外部と連続する孔が形成され、その孔内に研磨用砥粒1が分散されている。基材2cは繊維が集合する不織布である。また、この不織布に分散されている砥粒はバインダーで不織布に固定されていてもよい。
【0039】
基材が有する孔の孔径は1μm〜100μm程度であることが望ましい。研磨用組成物の添加量は特に限定しないが、基材中に均一に含有させる場合には全体の質量を基準として5〜90質量%程度含有させることができる。また、基材の表面積を基準として1mあたり20g程度の研磨用砥粒を保持する程度にすることもできる。
【0040】
(研磨方法)
本実施形態の研磨方法は、本実施形態の研磨用パッドを用い、研磨液の存在下、被研磨物を研磨する方法である。研磨液は研磨用砥粒などの固形物を有さない。なお、本実施形態の研磨方法には含まれないが、本実施形態の研磨用パッドは研磨用砥粒などの固形物を含む研磨液を介在させた研磨方法に適用可能である。
【0041】
研磨液は水系、非水系を問わない。研磨液にはアルカリ性物質、酸化剤、酸化物溶解剤、砥粒分散剤、キレート剤、及び糖類から選択される1つ以上の添加剤を含有することもできる。この研磨液を滴下しながら被加工物を研磨する。砥粒分散剤は研磨パッド中から脱落した研磨用砥粒を研磨液中に均等に分散させるために添加する。キレート剤は被加工物の種類(銅など)によっては被加工物の表面の硬度を低下させることができ研磨を促進できる。糖類は研磨用砥粒の濡れ性を適正に制御することができる。
【実施例】
【0042】
(試験1)
・研磨用パッドの調製
50nmのコロイダルシリカ(比較例1の研磨用砥粒)と比較例1のコロイダルシリカ(微小粉体)にシラザン化合物(Rがすべてメチル基の化合物)を接触・反応させたもの(疎水化砥粒:実施例1の研磨用砥粒)を用意した。疎水化処理されたかどうかの確認はIRスペクトルにより行った。その結果、2900〜3000cm−1程度に吸収が認められコロイダルシリカの表面にトリメチルシリル基の存在(導入)が確認された。
【0043】
不織布(ニッタハースSUBA400)に実施例1及び比較例1の研磨用砥粒を含浸させて研磨用部材(研磨工具)を作成し、Siウェハを研磨したときの研磨レートを測定した。研磨用砥粒の含浸は以下のように行った。まず、各研磨用砥粒を40質量%の濃度で分散媒(実施例1:イソプロパノール、比較例1:水)中に分散させたものをφ380mmの大きさの不織布に上記溶液が5gとなるように不織布中に含浸させた(実施例1の研磨用パッド及び比較例1の研磨用パッド)。
【0044】
また、実施例1の研磨用砥粒に水系ウレタン樹脂(タケラックWS5100:武田薬品工業製、固形分濃度30質量%)を研磨用砥粒とウレタン樹脂との質量比が4:1になるように混合したものを実施例1と同様の不織布の表面に5g塗布後、110℃で乾燥させた。(実施例2の研磨用パッド)
Siウェハの研磨はMATBC15を用い、圧力約27kPa(4psi)、回転数60rpmの研磨条件で添加剤としてのピペラジンを0.6質量%になるように溶解した水溶液をそれぞれの研磨用部材上に滴下しながら行った。対照試験として、研磨用砥粒を含浸させていない不織布について同様の試験を行った。その結果、実施例1の研磨用パッドでは研磨レートが1.4μm/分、実施例2の研磨用パッドでは研磨レートが1.3μm/分であるのに対し、比較例1の研磨用パッド及び対照試験では研磨レートが約0μm/分であった。比較例1の研磨用部材においてほぼ研磨が進行しないのは含浸させた研磨用砥粒が滴下した添加剤水溶液により流出したためと推測された。従って、実施例1、実施例2の研磨用パッドは研磨用砥粒の脱落が少なく耐久性が高いことが明らかになった。
【0045】
(試験2)
80℃に加熱したコロネートC−6912(日本ポリウレタン工業製)100質量部に実施例1の研磨用砥粒を100質量部添加、混合後、110℃に加熱し、更に、3,3’−ジクロル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を20質量部添加した。得られた分散液を型に流し込み、厚み1.2mm、φ380mmの円板状の研磨用パッドを作成した。パッド中における研磨用砥粒の含有量は45質量%であった。パッドの裏面に両面テープを貼付し、固定部材上に固定した。研磨条件は実施例1と同様の条件として研磨レートを測定した結果、1.3μm/分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に下記式(A)で示す部分構造を持つオルガノシラザン化合物に接触して処理した微小粉体である疎水化砥粒を含有する研磨用砥粒と、
前記研磨用砥粒を内在させる多孔質体を形成する基材と、を有することを特徴とする研磨用パッド。
【化1】

(式(A)中、*で表される部分にて他の部分と結合される。他の部分は複数の*の間を連結する構造であっても良い。Xは水素、炭化水素基から選択される。)
【請求項2】
前記微小粉体はシリカ、及び/又は表面シランカップリング剤処理されたシリカから形成される請求項1に記載の研磨用パッド。
【請求項3】
前記研磨用砥粒は体積平均粒径が0.01μm以上、5μm以下である請求項1又は2に記載の研磨用パッド。
【請求項4】
前記研磨用砥粒の含有量は全体の質量を基準として5〜90質量%である請求項1〜3の何れか1項に記載の研磨用パッド。
【請求項5】
前記基材の表面は溝部をもつ請求項1〜4の何れか1項に記載の研磨用パッド。
【請求項6】
前記基材は樹脂組成物から形成されており、
溶融した前記樹脂組成物、又は、溶媒に溶解させた前記樹脂組成物と、前記研磨用砥粒とを混合後、前記樹脂組成物を固形化して形成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の研磨用パッド。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の研磨用パッドを用い、
固形物を含有しない研磨液を用いて研磨を行うことを特徴とする研磨方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−228009(P2010−228009A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74808(P2009−74808)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(501402730)株式会社アドマテックス (82)
【Fターム(参考)】