説明

研磨装置および研磨方法

【課題】研磨対象物である基板が外れてしまうことを防止し、安定した研磨を実現することができるようにする。
【解決手段】研磨面を有する研磨パッド101と、基板Wを保持して研磨面に基板を押圧して該基板を研磨するトップリング本体2と、基板Wの外周部を保持して研磨面を押圧するリテーナリング3とを有する研磨装置であって、リテーナリング3の少なくとも2つの位置での高さを検出するセンサ506と、センサ506により検出された高さからリテーナリング3の傾きを算出する演算部508とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨対象物である基板を保持し研磨面に押圧して研磨する研磨装置および研磨方法、特に、半導体ウェハ等の基板を研磨して平坦化する研磨装置および研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスがますます微細化され素子構造が複雑になり、またロジック系の多層配線の層数が増えるに伴い、半導体デバイスの表面の凹凸はますます増え、段差が大きくなる傾向にある。半導体デバイスの製造では薄膜を形成し、パターンニングや開孔を行う微細加工の後、次の薄膜を形成するという工程を何回も繰り返すためである。
【0003】
半導体デバイスの表面の凹凸が増えると、薄膜形成時に段差部での膜厚が薄くなったり、配線の断線によるオープンや配線層間の絶縁不良によるショートが起こったりするため、良品が取れなかったり、歩留まりが低下したりする傾向がある。また、初期的に正常動作をするものであっても、長時間の使用に対しては信頼性の問題が生じる。更に、リソグラフィ工程における露光時に、照射表面に凹凸があると露光系のレンズ焦点が部分的に合わなくなるため、半導体デバイスの表面の凹凸が増えると微細パターンの形成そのものが難しくなるという問題が生ずる。
【0004】
したがって、半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械的研磨(CMP(Chemical Mechanical Polishing))である。この化学的機械的研磨は、ポリッシング装置を用いて、シリカ(SiO)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッド等の研磨面上に供給しつつ半導体ウェハなどの基板を研磨面に摺接させて研磨を行うものである。
【0005】
この種のポリッシング装置は、研磨パッドからなる研磨面を有する研磨テーブルと、半導体ウェハを保持するためのトップリングまたはキャリアヘッド等と称される基板保持装置とを備えている。このようなポリッシング装置を用いて半導体ウェハの研磨を行う場合には、基板保持装置により半導体ウェハを保持しつつ、この半導体ウェハを研磨テーブルに対して所定の圧力で押圧する。このとき、研磨テーブルと基板保持装置とを相対運動させることにより半導体ウェハが研磨面に摺接し、半導体ウェハの表面が平坦かつ鏡面に研磨される。
【0006】
このようなポリッシング装置において、研磨中の半導体ウェハと研磨パッドの研磨面との間の相対的な押圧力が半導体ウェハの全面に亘って均一でない場合には、半導体ウェハの各部分に印加される押圧力に応じて研磨不足や過研磨が生じてしまう。そのため、基板保持装置の半導体ウェハの保持面をゴム等の弾性材からなる弾性膜で形成し、弾性膜の裏面に空気圧等の流体圧を加え、半導体ウェハに印加する押圧力を全面に亘って均一化することも行われている。
【0007】
また、上記研磨パッドは弾性を有するため、研磨中の半導体ウェハの外周縁部に加わる押圧力が不均一になり、半導体ウェハの外周縁部のみが多く研磨される、いわゆる「縁だれ」を起こしてしまう場合がある。このような縁だれを防止するため、半導体ウェハの外周縁をガイドリングまたはリテーナリングによって保持すると共に、ガイドリングまたはリテーナリングによって半導体ウェハの外周縁側に位置する研磨面を押圧する構造を備えた基板保持装置も用いられている。
【0008】
しかしながら、このようなリテーナリングを用いた場合には、研磨中に半導体ウェハが基板保持装置から外れてしまうことがあり、安定した研磨が実現できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、研磨対象物である基板が外れてしまうことを防止し、安定した研磨を実現することができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、研磨対象物である基板が外れてしまうことを防止し、安定した研磨を実現することができる研磨装置が提供される。この研磨装置は、研磨面を有する研磨パッドと、基板を保持して上記研磨面に基板を押圧して該基板を研磨するトップリング本体と、基板の外周部を保持して上記研磨面を押圧するリテーナリングとを備えている。また、この研磨装置は、上記リテーナリングの少なくとも2つの位置での高さを検出するセンサと、上記センサにより検出された高さから上記リテーナリングの傾きを算出する演算部とを備えている。この場合において、上記センサは、上記研磨面の回転方向の上流側と下流側に少なくとも1つずつ設けることが好ましい。
【0011】
上述した構成によれば、少なくとも2つのセンサにより少なくとも2点におけるリテーナリングの高さを検出し、これらの高さから演算部によってリテーナリングの傾きを算出することができる。したがって、リテーナリングが過度に傾くことによりトップリングに保持された基板がトップリングから外れてしまう(スリップアウトする)可能性を予測することができ、スリップアウトを防止することができる。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、研磨対象物である基板が外れてしまうことを防止し、安定した研磨を実現することができる研磨方法が提供される。この研磨方法においては、トップリング本体の外周部に設けられたリテーナリングにより基板の外周部を保持するとともに研磨面を押圧しつつ、上記トップリング本体により上記基板を上記研磨面に押圧して該基板を研磨する。上記リテーナリングの傾きを測定し、上記リテーナリングの傾きが所定の閾値を超えた場合に、外部に警報を発する、あるいは研磨を中止する、あるいは予め設定した研磨条件に変更する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨対象物である基板が外れてしまうことを防止し、安定した研磨を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】研磨装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1の研磨装置におけるトップリングを示す縦断面図である。
【図3】図2のトップリングにおけるリテーナリング近傍を示す縦断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図であり、トップリングにおけるリテーナリング近傍を示す縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態における研磨装置のトップリングを示す縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態における研磨装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る研磨装置の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、研磨装置の全体構成を示す断面図である。ここで、基板保持装置は、研磨対象物である半導体ウェハ等の基板を保持して研磨テーブル上の研磨面に押圧する装置である。図1に示すように、基板保持装置を構成するトップリング1の下方には、上面に研磨パッド101を貼付した研磨テーブル100が設置されている。また、研磨テーブル100の上方には研磨液供給ノズル102が設置されており、この研磨液供給ノズル102によって研磨テーブル100上の研磨パッド101上に研磨液Qが供給されるようになっている。
【0016】
なお、市場で入手できる研磨パッドとしては種々のものがあり、例えば、ロデール社製のSUBA800、IC−1000、IC−1000/SUBA400(二層クロス)、フジミインコーポレイテッド社製のSurfin xxx−5、Surfin 000等がある。SUBA800、Surfin xxx−5、Surfin 000は繊維をウレタン樹脂で固めた不織布であり、IC−1000は硬質の発泡ポリウレタン(単層)である。発泡ポリウレタンは、ポーラス(多孔質状)になっており、その表面に多数の微細なへこみまたは孔を有している。
【0017】
トップリング1は、トップリングシャフト11に接続されており、このトップリングシャフト11は、上下動機構24によりトップリングヘッド110に対して上下動するようになっている。このトップリングシャフト11の上下動により、トップリングヘッド110に対してトップリング1の全体を昇降させ位置決めするようになっている。なお、トップリングシャフト11の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。
【0018】
トップリングシャフト11およびトップリング1を上下動させる上下動機構24は、軸受26を介してトップリングシャフト11を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ32と、支柱30により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたACサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱30を介してトップリングヘッド110に固定されている。
【0019】
ボールねじ32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。トップリングシャフト11は、ブリッジ28と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ32を介してブリッジ28が上下動し、これによりトップリングシャフト11およびトップリング1が上下動する。
【0020】
また、トップリングシャフト11はキー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。この回転筒112はその外周部にタイミングプーリ113を備えている。トップリングヘッド110にはトップリング用モータ114が固定されており、上記タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してトップリング用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。したがって、トップリング用モータ114を回転駆動することによってタイミングプーリ116、タイミングベルト115、およびタイミングプーリ113を介して回転筒112およびトップリングシャフト11が一体に回転し、トップリング1が回転する。なお、トップリングヘッド110は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたトップリングヘッドシャフト117によって支持されている。
【0021】
図2は、トップリング1を示す縦断面図である。図2に示すように、トップリング1は、下面に保持された半導体ウェハを研磨面である研磨パッド101に対して押圧するトップリング本体2と、研磨パッド101を直接押圧するリテーナリング3とから基本的に構成されている。トップリング本体2は、円盤状の上部材300と、上部材300の下面に取り付けられた中間部材304と、中間部材304の下面に取り付けられた下部材306とを備えている。リテーナリング3は、下部材306の外周部に取り付けられており、トップリング本体2とともに回転する。
【0022】
上部材300は、ボルト308によりトップリングシャフト11に連結されている。また、中間部材304は、ボルト(図示せず)を介して上部材300に固定されており、下部材306はボルト(図示せず)を介して中間部材304に固定されている。上部材300、中間部材304、および下部材306から構成される本体部は、エンジニアリングプラスチック(例えばPEEK)などの樹脂により形成されている。
【0023】
下部材306の下面には、半導体ウェハの裏面に当接する弾性膜314が取り付けられている。この弾性膜314は、外周側に配置された環状のエッジホルダ316と、エッジホルダ316の内方に配置された環状のサブリング318およびホルダ319とによって下部材306の下面に取り付けられている。弾性膜314は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0024】
エッジホルダ316はサブリング318により保持され、サブリング318は複数のストッパ320により下部材306の下面に取り付けられている。ホルダ319は複数のストッパ(図示せず)により下部材306の下面に取り付けられている。これらのストッパはトップリング1の円周方向に均等に設けられている。
【0025】
図2に示すように、弾性膜314の中央部にはセンター室360が形成されている。ホルダ319には、このセンター室360に連通する流路324が形成されており、下部材306には、この流路324に連通する流路325が形成されている。ホルダ319の流路324および下部材306の流路325は、図1に示す流路41およびレギュレータR1を介して圧力調整部120に接続されており、加圧された流体が流路325および流路324を通ってセンター室360に供給されるようになっている。この圧力調整部120は、圧縮空気源から加圧空気等の加圧流体を供給することによって、あるいはポンプ等により真空引きすることによって圧力の調整を行うものである。
【0026】
ホルダ319は、弾性膜314のリプル隔壁314aを下部材306の下面に押さえつけるようになっており、サブリング318は、弾性膜314のアウター隔壁314bおよびエッジ隔壁314cを下部材306の下面に押さえつけるようになっている。
【0027】
図2に示すように、弾性膜314のリプル隔壁314aとアウター隔壁314bとの間には環状のリプル室361が形成されている。弾性膜314のサブリング318とホルダ319との間には隙間314dが形成されており、下部材306にはこの隙間314dに連通する流路342が形成されている。また、中間部材304には、下部材306の流路342に連通する流路344が形成されている。下部材306の流路342と中間部材304の流路344との接続部分には、環状溝347が形成されている。この下部材306の流路342は、環状溝347、中間部材304の流路344、図1に示す流路42、およびレギュレータR2を介して圧力調整部120に接続されており、加圧された流体がこれらの流路を通ってリプル室361に供給されるようになっている。また、この流路342は、図示しない真空ポンプにも切替可能に接続されており、真空ポンプの作動により弾性膜314の下面に半導体ウェハを吸着できるようになっている。
【0028】
図2に示すように、サブリング318には、弾性膜314のアウター隔壁314bおよびエッジ隔壁314cによって形成される環状のアウター室362に連通する流路(図示せず)が形成されている。また、下部材306には、サブリング318の流路にコネクタ(図示せず)を介して連通する流路(図示せず)が、中間部材304には、下部材306の流路に連通する流路(図示せず)がそれぞれ形成されている。このサブリング318の流路は、下部材306の流路、中間部材304の流路、図1に示す流路43およびレギュレータR3を介して圧力調整部120に接続されており、加圧された流体がこれらの流路を通ってアウター室362に供給されるようになっている。
【0029】
図2に示すように、エッジホルダ316は、弾性膜314の側壁314eを押さえて下部材306の下面に保持するようになっている。このエッジホルダ316には、弾性膜314のエッジ隔壁314cおよび側壁314eによって形成される環状のエッジ室363に連通する流路334が形成されている。また、下部材306には、エッジホルダ316の流路334に連通する流路(図示せず)が、中間部材304には、下部材306の流路に連通する流路(図示せず)がそれぞれ形成されている。このエッジホルダ316の流路334は、下部材306の流路、中間部材304の流路、図1に示す流路44およびレギュレータR4を介して圧力調整部120に接続されており、加圧された流体がこれらの流路を通ってエッジ室363に供給されるようになっている。
【0030】
このように、この例におけるトップリング1においては、弾性膜314と下部材306との間に形成される圧力室、すなわち、センター室360、リプル室361、アウター室362、およびエッジ室363に供給する流体の圧力、およびリテーナ圧力室410へ供給する流体の圧力をそれぞれ独立に調整する。このような構造により、半導体ウェハを研磨パッド101に押圧する押圧力を半導体ウェハの部分ごとに調整でき、かつリテーナリング3が研磨パッド101を押圧する押圧力を自在に調整できるようになっている。
【0031】
図2に示すように、リテーナリング3は半導体ウェハの外周縁を保持するものであり、上部が閉塞された円筒状のシリンダ400と、シリンダ400の上部に取り付けられた保持部材402と、保持部材402によりシリンダ400内に保持される弾性膜404と、弾性膜404の下端部に接続されたピストン406と、ピストン406により下方に押圧されるリング部材408とを備えている。なお、弾性膜404は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0032】
保持部材402には、弾性膜404によって形成されるリテーナ圧力室410に連通する流路(図示せず)が形成されている。また、シリンダ400の上部には、保持部材402の流路に連通する流路(図示せず)が形成され、上部材300には、シリンダ400の流路に連通する流路(図示せず)が形成されている。この保持部材402の流路は、シリンダ400の流路および上部材300の流路を介して図1に示す流路45およびレギュレータR5を介して圧力調整部120に接続されており、加圧された流体がこれらの流路を通ってリテーナ圧力室410に供給されるようになっている。したがって、リテーナ圧力室410に供給する流体の圧力を調整することにより、弾性膜404を伸縮させてピストン406を上下動させ、リテーナリング3のリング部材408を所望の圧力で研磨パッド101に押圧することができる。
【0033】
図示した例では、弾性膜404としてローリングダイヤフラムを用いている。ローリングダイヤフラムは、屈曲した部分をもつ弾性膜からなるもので、ローリングダイヤフラムで仕切る室の内部圧力の変化等により、その屈曲部が転動することにより室の空間を広げることができるものである。室が広がる際に比較的弾性膜の伸縮が少ないため、ダイヤフラムを長寿命化することができる。また、伸縮が小さいことにより荷重の損失が少なく、ストロークによる荷重の変動が小さくなり、リテーナリング3が研磨パッド101に与える押圧力を精度よく調整することができるという利点がある。
【0034】
このような構成により、リテーナリング3のリング部材408だけを下降させることができる。したがって、リテーナリング3のリング部材408が摩耗しても、下部材306と研磨パッド101との距離を一定に維持したまま、リテーナリングを研磨パッドに押圧することが可能となる。また、研磨パッド101に接触するリング部材408とシリンダ400とは変形自在な弾性膜404で接続されているため、荷重点のオフセットによる曲げモーメントが発生しない。このため、リテーナリング3による面圧を均一にすることができ、研磨パッド101に対する追従性も向上する。なお、弾性膜404の材料としては、EPDM、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材で硬度30〜80°(JIS−A)のものや、薄い樹脂膜などを使用することができる。硬度が低く、薄い膜の方が損失の少ない荷重制御が可能であるが、耐久性を考慮し、硬度および厚さを決定することが好ましい。
【0035】
ここで、ピストン406とリング部材408とは磁力により互いに固定されている。すなわち、ピストン406は磁性体で形成されており、防錆のため、表面をコーティング/めっき処理している。また、リング部材408のピストン406と当接する面には磁石420が埋設されている。このように、リング部材408に埋設された磁石420の磁力により磁性体からなるリング部材408が吸引固定されている。
【0036】
このようにピストン406とリング部材408とを磁力を用いて固定することにより、リテーナリング3が研磨中に振動を受けた場合においてもピストン406とリング部材408とが離れることなく、振動による突発的なリテーナリング3の上昇を防止することができる。したがって、リテーナリング3の面圧を安定させることができ、ウェハがトップリング1から外れてしまう(スリップアウトする)可能性を低減することができる。
【0037】
リング部材408が取り付けられたキャリアアセンブリはメンテナンスのために頻繁に取り外されるが、ピストン406は比較的メンテナンスの機会が少ない。上述のように、磁力を用いてピストン406とリング部材408とを固定すれば、取り外される機会の多いリング部材408と取り外される機会の少ないピストン406とを簡単に分離することができる。
【0038】
トップリング1は、ピストン406とリング部材408とを引き離す機構を備えている。図3は、リテーナリング3の近傍の部分拡大図である。図3に示すように、リング部材408には、軸430を中心として回転可能な複数のカムリフタ432が設けられている。図4は、図3の側面図である。図4に示すように、カムリフタ432は軸430の軸心からの半径が変化するように形成されており、カムリフタ432を回転させることで、最も半径の大きくなっている部分432aでピストン406を押し上げるようになっている。なお、カムリフタ432の軸430の軸心部分にはレンチを挿入するレンチ穴434が形成されている。
【0039】
カムリフタ432の裏面には凹部436が形成されており、リング部材408の側面には、この凹部436に押圧されるボール438が配置されている。このボール438の移動が凹部436内に制限されるために、カムリフタ432の回転が所定の範囲に制限されるようになっている。
【0040】
キャリアアセンブリのメンテナンス時などには、レンチ穴434にレンチを挿入してカムリフタ432を回転させることにより、ピストン406とリング部材408との間に強制的に隙間を形成することができる。これにより、上述したピストン406と磁石420との間の磁力による締結力を弱めることができ、ピストン406とリング部材408との分離を容易にすることができる。
【0041】
なお、図2に示す例では、ピストン406を磁性体とし、リング部材408に磁石420を埋設しているが、リング部材408を磁性体とし、ピストン406に磁石を埋設してもよい。また、図2に示す例では、リング部材408にカムリフタ432を設けているが、ピストン406にカムリフタ432を設けてもよい。
【0042】
図5は、本発明の実施形態における研磨装置のトップリング501を示す縦断面図、図6はこの研磨装置の平面図である。図5および図6に示すように、本実施形態のトップリング501のリテーナリング3の外周部には、リング状の測定板502が取り付けられている。固定部であるトップリングヘッドには、トップリング501の円周方向に沿った少なくとも2ヶ所に、下端にローラ504を有する変位センサ506が設けられている。これらの変位センサ506は、変位センサ506からの出力に基づいてリテーナリング3の傾きを算出する演算部508が接続されている。
【0043】
トップリング501と研磨テーブル100はともに同一方向に回転され、研磨を行う。研磨中に、変位センサ506は、ローラ504までの距離、換言すればリテーナリング3の高さを検出できるようになっている。トップリング501の回転に伴ってローラ504が測定板502の上面を転がるため、変位センサ506はリテーナリング3の高さを検出することができる。したがって、少なくとも2つの変位センサ506により少なくとも2点におけるリテーナリング3の高さを検出することができ、これらの高さからリテーナリング3の傾きを算出することができる。上述した演算部508は、少なくとも2つの変位センサ506の出力からリテーナリング3の傾きを算出する。
【0044】
それぞれの変位センサ506からの出力には、研磨パッド101の厚さのバラツキや研磨テーブル100の振れ、リテーナリング3の厚さのバラツキなどが含まれるため、演算部508は、各変位センサ506からの出力に対して移動平均などの処理を行うことが好ましい。
【0045】
上述のようにして演算部508はリテーナリング3の傾きを算出し、これによりリテーナリング3が過度に傾くことによりトップリング501に保持されたウェハがトップリング501から外れてしまう(スリップアウトする)可能性を予測することができ、スリップアウトを防止することができる。より具体的には、算出されたリテーナリング3の傾きが所定の閾値を超えた場合には、外部に警報を発したり、トップリング501と研磨テーブル100の回転を止めて研磨を中止したり、ウェハ押し付け荷重を下げたりリテーナリング3の荷重を上げる、ウェハや研磨パッドの回転数を上げるなど、予め設定した研磨条件に移行する。なお、本実施形態においては、リテーナリング3の1点の高さ位置を検知するのではなく、2点以上の高さ情報から求められたリテーナリング3の傾きを用いてスリップアウトの予測・検知を行っているため、研磨パッド101が減耗したとしても影響を受けることなくスリップアウトの予測・検知を正確に行うことができる。
【0046】
図6では、多数の変位センサ506がトップリング501の円周方向に沿って点線で示されているが、変位センサ506の個数は少なくとも2つであればいくつであってもよい。この場合において、変位センサ506を研磨テーブル100の回転方向の上流側と下流側に少なくとも1つずつ設け、また対角線上に設けることが好ましい。また、変位センサ506は、トップリング501の円周方向に沿った線上(同一半径上)に配置するのが好ましいが、変位センサ506の取付位置を把握し、かつ演算部で処理をすれば、必ずしも円周方向に沿った線上に配置しなくてもよい。図6では研磨装置の固定部分を基準としてリテーナリング3の傾きを測定したが、上述した変位センサ506を研磨テーブル100側に設け、研磨テーブル100を基準としてリテーナリング3の傾きを測定してもよい。また、トップリング本体2とリテーナリング3が一体に構成されているトップリング501の場合には、トップリング501の上面の2点以上の高さを測定し、トップリング501全体の傾きを測定し、ウェハのスリップアウトの予測・検知を行ってもよい。
【0047】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 トップリング
2 トップリング本体
3 リテーナリング
11 トップリングシャフト
100 研磨テーブル
101 研磨パッド
314 弾性膜
360 センター室
361 リプル室
362 アウター室
363 エッジ室
400 シリンダ
402 保持部材
404 弾性膜
406 ピストン
408 リング部材
410 リテーナ圧力室
420 磁石
432 カムリフタ
430 軸
434 レンチ穴
436 凹部
438 ボール
501 トップリング
502 測定板
504 ローラ
506 変位センサ
508 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨パッドと、基板を保持して前記研磨面に基板を押圧して該基板を研磨するトップリング本体と、前記基板の外周部を保持して前記研磨面を押圧するリテーナリングとを有する研磨装置であって、
前記リテーナリングの少なくとも2つの位置での高さを検出するセンサと、
前記センサにより検出された高さから前記リテーナリングの傾きを算出する演算部と、
を備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの位置は、前記研磨面の回転方向の上流側と下流側であることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
トップリング本体の外周部に設けられたリテーナリングにより基板の外周部を保持するとともに研磨面を押圧しつつ、前記トップリング本体により前記基板を前記研磨面に押圧して該基板を研磨する研磨方法であって、
前記リテーナリングの傾きを測定し、前記リテーナリングの傾きが所定の閾値を超えた場合に、外部に警報を発する、あるいは研磨を中止する、あるいは予め設定した研磨条件に変更することを特徴とする研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−62812(P2011−62812A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254656(P2010−254656)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2006−97296(P2006−97296)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】