説明

硫化モリブデンのナノサイズ粒子及びその誘導体及び用途

【課題】潤滑剤組成物に摩擦係数の低下を付与する摩擦改質添加剤を提供することである。
【解決手段】(a)潤滑剤と、(b)一般式(Z)n(X-R)mの表面キャップされたナノサイズ粒子の形態の少なくとも一つの含モリブデン化合物(式中、Zは約1〜約100nmの範囲の寸法を有する粒子の形態の、モリブデンとイオウを含む無機成分である;(X-R)は表面キャップ剤であり、そこではRはC4〜C20直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキル化シクロアルキル基(単数または複数)であり、そしてXはモリブデン/イオウ成分による特異収着および/またはそれとの化学的相互作用が可能な官能基である;nは粒子内のZの分子数である;mは単一粒子に対する表面キャップ剤の相対量を表わす整数である;そしてm対nの比は約1:1から約10:1までの範囲にある)を含む潤滑剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は有機モリブデン誘導体およびその多機能性の摩擦改質、摩耗防止、極圧、酸化防止の潤滑剤用添加剤としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は硫化モリブデンのナノサイズ粒子およびその誘導体および用途と題する2000年6月2日出願の米国仮出願第60/208,573号に対する米国特許法第120条の利益を請求する。
発明の背景
2.関連技術の説明
取締機関(regulatory agencies)は法律(CAFE要件)によって自動車の燃料節約を改善することを狙ってこの責任を自動車製造業者に課しており、自動車製造業者は転じてこの責任の一部をエンジン油仕様によって潤滑油製造業者に転嫁している。これら燃料節約要求はより厳しくなってきているので、摩擦改質添加剤は潤滑剤組成物中に組み入れるのに更に重要になっているということが理解できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は潤滑剤組成物に摩擦係数の低下を付与する摩擦改質添加剤を提供することである。
また、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)は50年以上もの間、摩耗防止および酸化防止添加剤として配合油の中に使用されてきた。しかしながら、ジアルキルジチオリン酸亜鉛は灰分のもとであり、灰分は自動車排気物の中の粒子状物質に寄与する。取締機関は環境への亜鉛の放出を低減させることを狙っている。加えて、リンは環境汚染を低減するのに自動車に使用されている触媒コンバーターの実用寿命を制限する疑いもある。エンジン使用中に生成される粒子状物質と環境汚染物を制限することは毒物学上および環境上の理由から重要であるが、潤滑油の摩耗防止および酸化防止の性質を低下させないように維持することも重要である。亜鉛とリンを含有する既知添加剤の上記欠点にかんがみて、本発明の更なる目的は亜鉛とリンを含有しない摩耗防止および酸化防止添加剤を提供することである。
【0004】
潤滑油の開発においては、潤滑油に減摩性または油性の性質を付与する添加剤を提供する多数の試みがなされており、モリブデン化合物は潤滑油組成物中の摩擦改質剤、摩耗防止剤、極圧剤、および酸化防止剤として有効であることが知られている。
【0005】
潤滑油用のチオカルバメート添加剤、特に、モリブデン含有チオカルバメートは特許文献に開示されている。例えば、米国特許第4,395,343号、第4,402,840号、第4,285,822号、第4,265,773号、第4,272,387号、第4,369,119号、第4,259,195号、第4,259,194号、および第4,283,295号明細書、それらの全てがドフリース(De Vries)とキング(King)への特許である、は潤滑剤用酸化防止剤として有効である、モリブデン、硫黄および窒素を含有する様々な化合物を、ジチオカルバメートも含めて、開示している。
【0006】
米国特許第3,509,051号明細書は潤滑油のための酸化防止および摩耗防止化合物として有効であると云われる、第二アミンから誘導された様々なジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンを開示している。
【0007】
潤滑剤用添加剤としての有用性を有すると云われる、酸化モリブデンと含窒素成分(それにはジアルキルジチオカルバメートも包含される)との錯体はラーソン(Larson)他の米国特許第3,419,589号明細書およびカプランド(Coupland)他の米国特許第4,164,473号明細書に開示されている。
【0008】
ルシュア(LeSuer)米国特許第3,541,014号明細書は潤滑剤組成物における極圧性および摩耗防止性を改良すると云われる、第II族金属含有化合物たとえばオーバーベースド(overbased)第II族金属スルホネートのモリブデン錯体を開示している。
【0009】
サクライ(Sakurai)他の米国特許第4,098,705号明細書には、潤滑剤用添加剤として有効であると云われるジヒドロカルビルジチオカルバミン酸モリブデン化合物が開示されている。
【0010】
米国特許第4,266,945号明細書はモリブデンの酸またはその塩と、そのフェノールまたはアルデヒド縮合生成物と、第一または第二アミンとの反応によるモリブデン含有組成物の製造を開示している。好ましいアミンはタロウ(tallow)置換トリメチレンジアミンおよびそれらのホルムアルデヒド縮合生成物のようなジアミンである。反応混合物中の任意の、しかし好ましい、成分は少なくとも一つの油溶性分散剤である。モリブデン含有組成物は潤滑剤および燃料の中の添加剤として、特に、活性イオウを含有する化合物と組み合わされたときの潤滑剤中の添加剤として、有効であると述べられている。
【0011】
内燃機関のための燃料節約を改善するのに有効であると云われるイオウとリンを含有するモリブデン組成物はシュロウク(Schroeck)米国特許第4,289,635号明細書に開示されている。
【0012】
米国特許第4,315,826号明細書は塩基性窒素機能を有するポリアルケニルスクシンイミドのチオモリブデン誘導体と二硫化炭素の反応によって製造される多目的の潤滑剤添加物を開示している。当該添加剤は分散剤として機能し、しかも、優れた減摩性を有すると及び潤滑剤に摩耗防止および酸化防止特性を付与すると述べられている。
【0013】
米国特許第4,474,673号明細書は活性水素または部分活性水素を有する硫化有機化合物をハロゲン化モリブデンと反応させることによる潤滑油用減摩添加剤の製造を開示している。
【0014】
米国特許第4,479,883号明細書は比較的低レベルのリンを含有していてそして特に改良された摩擦低減性を有すると云われる潤滑油組成物を開示しており、その組成物はポリカルボン酸とグリコールまたはグリセロールとのエステルおよび選ばれた金属ジチオカルバメートを含む。
【0015】
米国特許第4,501,678号明細書はギアの疲労寿命を改良するのに有効であると述べられているジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンを含有する潤滑剤を開示している。
【0016】
米国特許第4,765,918号明細書はトリグリセリドを塩基性窒素化合物と反応させて反応生成物を生成し、前記反応生成物を酸性モリブデン化合物と反応させて中間反応生成物を生成し、そして前記中間反応生成物を硫黄化合物と反応させて潤滑油添加剤を生成することによる潤滑油添加剤の製造を開示している。
【0017】
米国特許第4,889,647号明細書は(a)脂肪油と、(b)ジエタノールアミンと、(c)モリブデン源とを反応させることによって製造されたモリブデン錯体を開示している。モリブデン錯体は潤滑組成物に減摩性および摩耗防止性を付与すると及びそれらを用いる内燃機関での燃料消費量を減少させると述べられている。
【0018】
米国特許第4,995,996号明細書は主要量の潤滑粘性の油と少量の式Mo2L4の添加剤(式中、Lはキサンテート類およびそれらの混合物から選ばれた配位子、特に、添加剤を油溶性にするのに十分な炭素原子数のキサンテート類から選ばれた配位子、である)を含む潤滑組成物を開示している。一般に、キサンテート配位子Lは約2〜30個の炭素原子を有するであろう。
【0019】
米国特許第5,498,809号明細書は約1,500〜7,500の数平均分子量を有し、全ポリマー鎖の少なくとも約30%がエチルビニリデン基で末端停止され、そしてエチレン由来含量が約50重量%以下である、エチレンと1−ブテンから誘導された油溶性コポリマーを開示しており、そしてこのコポリマーは光散乱測定によって測定されたときにポリマー凝集体を含有していない鉱油中溶液を形成する。これらコポリマーの官能化および誘導体化によって製造された潤滑油添加剤特に分散剤は潤滑油組成物中で向上した性能(たとえば、改良された分散性および流動点)を有すると述べられ、それはコポリマーを特徴付けている性質の組合せに一部起因する。
【0020】
下記資料には、逆マイクロエマルション(reverse microemulsion)中間体生成を経てのナノサイズの表面キャップされた無機スルフィドの製造が記載されている:
【0021】
Boakye et al., J. Coll. Interface Sci. 163(1): 120-129 (1994)には、表面キャップ剤なしでの10〜80nmの範囲の硫化モリブデンナノサイズ粒子の合成が記載されている。
【0022】
Deng et al., Chem. Lett. (6): 483-484 (1997)には、(ビス−2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)逆ミセル(reverse micelle)中での2,2−ビピリジンの電気的に中性の表面キャップ剤によってキャップされたCdSナノ粒子に対する新規合成アプローチが記載されている。
【0023】
Huang et al., Langmuir 13(2): 172-175 (1997)には、ポリ−(N−ビニルピロリドン)でキャップされており、そして水と2−エトキシエタノールの中での還流下でのヒドラジンを使用しての酢酸銅IIの還元によって製造された、銅ナノ粒子が記載されている。
【0024】
Meldrum et al., J. Chem. Soc. Faraday Trans. 91 (4): 673-680 (1995)には、2,2,4−トリメチルペンタン中の(ビス−2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムの逆ミセルの内部での硝酸銀水溶液のホウ水素化ナトリウム還元によって生成されそしてオクタデカンチオールでキャップされた銀ナノ粒子からの粒子状薄膜の形成が記載されている。
【0025】
Motte et al., J. Phys III 7(3): 517-527 (1997)には、5.6nmの硫化銀粒子を合成するのに使用されてきた逆ミセルが記載されている。これらナノ粒子はドデカンチオールで被覆され、逆ミセルから抽出され、それからヘプタンの中に溶解される。
【0026】
Motte et al., J. Phys. Chem., 99 (44): 16425-16429 (1995)には、様々な硫化金属ナノサイズ粒子の表面キャッピング用へのドデカンチオールの利用が記載されている。
【0027】
Pileni et al., Surf. Rev. Letters 3 (1): 1215-1218 (1996)には、ドデカンチオールでエンキャップされた硫化銀半導体クラスターの合成が記載されている。
【0028】
Steigerwald et al., J. Amer. Chem. Soc. 110 (10): 3046-3050 (1988)には、逆ミセル溶液中での有機金属試薬を使用してのCdSeのナノメートルサイズのクラスターの合成と、これらクラスター化合物の表面の化学的改質によるCdSe表面へのPhSe層の形成が記載されている。
【0029】
Yanagida et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 68 (3): 752-758 (1995)には、逆ミセル中のスルフィドイオン源としてのビス(トリメチルシリル)スルフィドに対するCd++の比をコントロールすることによって、キャップ剤としてチオフェノールまたはヘキサンチオールを使用することにより製造されたCdSナノクリスタライト(nanocrystallites)をサイズコントロールすることが記載されている。
【0030】
不都合なことに、多くのモリブデン化合物は潤滑油の中での溶解度が劣るという問題を残している。本発明者らは、炭化水素中または類似溶剤中でのナノ粒子の凝集を防止しそれらの溶解性および安定性を与える適切な配位子によってその表面が改質されており、そして更には潤滑油組成物中での摩耗防止特性、酸化防止特性、極圧特性、および摩擦改質特性を改良する、モリブデン/イオウ成分を含むナノサイズ粒子を教示または示唆する開示物を知らない。
【課題を解決するための手段】
【0031】
発明の概要
本発明の添加剤は一連の反応で製造される錯体反応生成物である。該添加剤は硫化モリブデンのナノサイズ粒子[MoSx]であり、その表面は炭化水素または類似溶剤中でのナノ粒子の凝集を防止しその溶解性および安定性を提供するための一つまたはそれより多くの適切な配位子によって改質されている。
【0032】
より詳しくは、本発明は、
A)潤滑剤、および
B)一般式
(Z)n(X-R)m
の表面キャップされたナノサイズ粒子の形態の少なくとも一つの含モリブデン化合物(式中、
Zは約1〜約100nmの範囲の寸法を有する粒子の形態の、モリブデンとイオウを含む無機成分である;
(X-R)は表面キャップ剤であり、そこではRはC4〜C20直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキル化シクロアルキル基(単数または複数)であり、そしてXはモリブデン/イオウ成分による特異収着(specific sorption)および/またはそれとの化学的相互作用(chemical interaction)が可能な官能基である;
nは粒子内のZの分子数である;
mは単一粒子に対する表面キャップ剤の相対量を表わす整数である;そして
m対nの比は約1:1から約10:1までの範囲にある)
を含む潤滑剤組成物に関する。
【0033】
別の態様においては、本発明は、一般式
(Z)n(X-R)m
の表面キャップされたナノサイズ粒子の形態の含モリブデン化合物(式中、
Zは約1〜約100nmの範囲の寸法を有する粒子の形態の、モリブデンとイオウを含む無機成分である;
(X-R)は表面キャップ剤であり、そこではRはC4〜C20直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキル化シクロアルキル基(単数または複数)であり、そしてXはモリブデン/イオウ成分による特異吸収および/またはそれとの化学的相互作用が可能な官能基である;
nは粒子内のZの分子数である;
mは単一粒子に対する表面キャップ剤の相対量を表わす整数である;そして
m対nの比は約1:1から約10:1までの範囲にある)
を製造する方法であって、
A)有機溶剤または溶剤混合物中の炭化水素可溶性界面活性剤の溶液と水溶性無機モリブデン(VI)化合物の水溶液とを含む逆マイクロエマルションを生成するステップ;
B)モリブデン/イオウ成分を生成するのに必要ならば、水溶性無機モリブデン(VI)化合物を硫化水素との反応によってチオ誘導体に転化するステップ;
C)モリブデン/イオウ成分と化学的に相互作用する及び/又はその上に吸着する界面活性剤を添加するステップ;
D)マイクロエマルションから水と有機溶剤(単数または複数)を除去し、そしてその、表面キャップされたナノサイズ粒子の形態のモリブデン/イオウ成分含有生成物を、適切な有機溶剤によって抽出するステップ;及び
E)前記適切な有機溶剤を除去するステップ
を含む前記方法に関する。
【0034】
本発明はまた、表面キャップされたナノサイズの硫化モリブデン誘導体粒子の、潤滑油向けの摩擦改質、摩耗防止、極圧および酸化防止添加剤としての用途に関する。
【0035】
本発明はまた、潤滑油と機能特性改良量の上記の表面キャップされたナノサイズのモリブデン/イオウ成分含有粒子とを含む潤滑油組成物に関する。
【0036】
好ましくは、本発明は、
A)潤滑剤;
B)表面キャップされたナノサイズのモリブデン/イオウ成分含有粒子;および場合によって、
C)分散剤(dispersants)、清浄剤(detergents)、錆止め剤(rust inhibitors)、酸化防止剤(antioxidants)、金属不活性化剤(metal deactivators)、摩耗防止剤(anti-wear agents)、泡止め剤(antifoamants)、摩擦改質剤(friction modifiers)、封止膨潤剤(seal swell agents)、乳化破壊剤(demulsifiers)、粘度指数向上剤(VI improvers)、および流動点降下剤(pour point depressants)からなる群から選ばれた一つまたはそれより多くの補助添加剤
を含む組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】部分置換チオモリブデート誘導体の生成を例証するUVスペクトルである。
【図2】部分置換チオモリブデート誘導体の生成を例証するUVスペクトルである。
【図3】部分置換チオモリブデート誘導体の生成を例証するUVスペクトルである。
【図4】逆ミセルの内部に形成されたナノサイズ無機粒子のスペクトルを象徴する、吸収バンドなしのUVスペクトルである。
【図5】イソプロピルオクタデシルアミンの存在下で製造された硫化モリブデンナノ粒子のUVスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
好ましい態様の記載
本発明は摩擦改質、摩耗防止、極圧、酸化防止の諸性質を潤滑剤に付与する有機モリブデン添加剤を含む潤滑剤組成物たとえば潤滑油組成物を提供する。添加剤は下記の化学反応に従って硫化モリブデン誘導体を生成するための適切なpH値における、逆マイクロエマルションの水性内部(aqueous interior)に溶解されたいずれかの水溶性無機モリブデン化合物と硫化水素との反応生成物である:
【化1】


本発明のアプローチは都合のよい溶剤または溶剤混合物の中での一つまたはそれより多くの選ばれた界面活性剤(たとえば、テトラアルキルアンモニウム塩)で安定化された逆マイクロエマルションの形成を包含し、そこでは混合物は逆マイクロエマルションの内部にモリブデン塩溶液を含む。次いでH2Sとの相互作用は結果としてマイクロエマルションの内部にMoS3またはMoS4-2ナノ粒子の形成(水溶液のpHに依存して)を生じる。ジアルキルアミン、ジアルキルジチオカルバメート誘導体など、のような長い炭化水素鎖を含有する配位子との更なる反応はナノ粒子表面の改質を提供し、それによって、それらのサイズおよび形状が固定され、そして炭化水素型潤滑油中での妥当な溶解性と安定性が提供される。このアプローチにおいては、改質された[MoSx]ナノ粒子のサイズおよび形状はマイクロエマルションの構造によって及びマイクロエマルションの水性コア(aqueous core)内のそれぞれのモリブデン塩の濃度によって支配される。
【0039】
下記化合物は硫化モリブデン誘導体の合成に使用できる水溶性無機モリブデン化合物の例である:
テトラチオモリブデン酸ナトリウムNa2MoS4
テトラチオモリブデン酸アンモニウム(NH4)2MoS4
モリブデン酸ナトリウムNa2MoO4
パラモリブデン酸アンモニウム(NH4)6Mo7O24
三酸化モリブデンMoO3
およびそれらの水和物。
【0040】
逆マイクロエマルションの内部で上記反応スキームに従って生成された硫化モリブデン誘導体は一つまたはそれより多くの適切な有機溶剤中の一つまたはそれより多くの界面活性剤によって安定化された分散物を表わす。本発明の実施に利用できる界面活性剤はパラフィン、イソパラフィン、芳香族またはアルキル芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、またはそれらの混合物のような無極性溶剤中で逆マイクロエマルションを形成できる油溶性のカチオン性、アニオン性、および非イオン性の界面活性剤である。
【0041】
下記化合物は逆マイクロエマルションの製造に使用できる油溶性界面活性剤の例である:
カチオン性界面活性剤
臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB、フルカ(Fluka));
塩化トリカプリルメチルアンモニウム(アリクェート(Aliquate)(登録商標)336、アルドリッチ(Aldrich));
塩化メチルトリアルキル(C8〜C10)アンモニウム(アドジーン(Adogene)(登録商標)464、アルドリッチ);
アニオン性界面活性剤
ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)(フルカ);
非イオン性界面活性剤
トリトン(Triton)(登録商標)X−100(アルドリッチ);
トリトン(登録商標)X−114(アルドリッチ)。
【0042】
更に凝集安定性(flocculation stability)を付与するためには、硫化モリブデン粒子は下記スキームに従って適切な表面キャップ剤でキャップされる:
【化2】

【0043】
一般式R-Xによって表わされる表面キャップ剤はC2〜C400直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキル化シクロアルキル基(単数または複数)Rと、硫化モリブデン成分による特異収着および/またはそれとの化学的相互作用が可能な官能基Xとを含む化合物から選ばれる。
【0044】
モリブデン/イオウ成分による特異収着および/またはそれとの化学的相互作用が可能な官能基の例は、アミン、アミド、イミド、ジチオカルバメート、チウラムジスルフィド、カルボキシル基など、を包含する。
【0045】
好ましくは、(X-R)は、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸アミド、ジカルボン酸ジアミド、脂環式イミド、ジアルキルジチオカルバミン酸アンモニウムまたはアルカリ金属塩、ビス−ジアルキルジチオカルバミン酸2価金属塩、トリス−ジアルキルジチオカルバミン酸3価金属塩、テトラアルキルチウラムジスルフィド、およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる。
【0046】
好ましくは、アルキルアミン、ジアルキルアミン、およびトリアルキルアミンは、式
R1R2R3N
(式中、R1、R2、およびR3は独立に、水素、直鎖または分枝鎖C1〜C28アルキル、C6〜C34アルキルアリール、およびアリールからなる群から選ばれる)
を有するものである。
【0047】
好ましくは、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸アミド、およびジカルボン酸ジアミドは、式
【化3】


(式中、XはOH、NH2、NHR4、またはNR4R4であり、そしてR4は炭素原子数1〜40の直鎖または分枝鎖の飽和または部分不飽和アルキル成分、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オレイル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、トリアコンチル、ペンタトリアコンチル、テトラコンチルなど、およびそれらの異性体および混合物、である)
を有するものである。
【0048】
好ましくは、脂環式イミドは、式
【化4】


(式中、R5は水素、(C=O)NHR7、または窒素の対(複数)(pairs of nitrogens)がアルキレン基によって結合されているアルキレンアミン、であり、R6は水素、直鎖または分枝鎖(C2〜C400)アルキルであり、そしてR7はHまたは(C1〜C20)アルキルである)
を有するものである。
【0049】
好ましくは、ジアルキルジチオカルバミン酸アンモニウムまたはアルカリ金属塩は、式
【化5】


(式中、R8およびR9は独立に、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+はNa+、K+、またはNH4+である)
を有するものである。
【0050】
好ましくは、ビス−ジアルキルジチオカルバミン酸2価金属塩は、式
【化6】


(式中、R8およびR9は、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+2はFe+2、Zn+2、Pb+2、またはCu+2である)
を有するものである。
【0051】
好ましくは、トリス−ジアルキルジチオカルバミン酸3価金属塩は、式
【化7】


(式中、R8およびR9は、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+3はSb+3またはBi+3である)
を有するものである。
【0052】
好ましくは、テトラアルキルチウラムジスルフィドは、式
(式中、R8およびR9は独立に、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれる)
を有するものである。
【0053】
下記化合物は本発明の硫化モリブデン誘導体ナノサイズ粒子の表面に吸着するのに及び/又はそれと反応するのに使用できるものの例である:
sec−ブチルアミン;
イソプロピル(オクタデシル)アミン;
ドコサン(ベヘン)酸(C22カルボン酸)(シューカルト(Schuchardt)、ミュンヘン);
アルケニルスクシンイミド(ポリイソブテニルスクシンイミド)(ユニロイヤル・ケミカル社(Uniroyal Chemical Co.));
ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム;
ジ(ヘキサデシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム(ユニロイヤル・ケミカル社);
【化8】


テトラ(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド;
テトラ(ヘキサデシル)チウラムジスルフィド(ユニロイヤル・ケミカル社)。
【0054】
本発明の実施に有効な、アルケニルスクシンイミド、および、その他の無灰分散剤、は下記に記載されている。
【0055】
様々なタイプの無灰分散剤(アルケニルスクシンイミド)は潤滑剤組成物の中で使用するのに適する炭化水素ポリマーを官能化および/または誘導体化することによって製造できる。用語「ポリマー」はここでは、40〜1500個の炭素原子を含有する枝分かれ又は線状どちらかの炭化水素基を称するのに使用されている。ポリマーの最も普通のタイプの一つは約500〜約3000の数平均分子量(Mn)の炭化水素鎖に基づいたポリイソブチレン(PIB)である。別のタイプは約500〜約25,000の数平均分子量(Mn)の、エチレン,α−オレフィンコポリマー鎖に基づいている。
【0056】
ポリマーは官能化されることができ、その意味するところはそれらの構造内に存在する少なくとも一つの官能基を有するようにそれらが化学的に改質されることができるということであり、それら官能基は次のことが可能である:(a)他の物質との更なる化学反応(たとえば、誘導体化)を受けること及び/又は(b)そうでなければポリマーだけでは、かかる化学的改質なしでは、持てない所望の性質を与えること。
【0057】
さらに詳しくは、官能基(単数または複数)はポリマーの主鎖(backbone)の中に又はポリマー主鎖からの側鎖として組み入れることができる。官能基(単数または複数)は代表的には極性であろう、そしてP、O、S、N、ハロゲンおよび/またはホウ素のようなヘテロ原子を含有しているであろう。それらは置換反応によってポリマーの飽和炭化水素部分に又は付加もしくは付加環化(cycloaddition)によってオレフィン性部分に結合できる。代わりに、官能基(単数または複数)はポリマー末端の小部分の酸化または開裂によって(たとえば、オゾン分解におけるように)ポリマーの中に組み入れることができる。
【0058】
官能性置換基によるポリマー主鎖の官能化は代表的には、官能基を含有または構成する化合物との反応のためのポリマー中に存在するエチレン性不飽和、好ましくは末端エチレン性不飽和、に頼る。従って、これら官能性化合物とポリマーとの反応はさまざまなメカニズムを通して起こることができる。有効なそして好ましい官能基はハロゲン、酸やエステルや塩や酸無水物として存在するカルボキシル物質、アルコール、アミン、ケトン、アルデヒドなど、を包含する。
【0059】
有効な官能化の反応は限定されるものではないが次のものを包含する:マレエート化(maleation)、すなわち、マレイン酸または無水マレイン酸と不飽和点におけるポリマーとの反応;オレフィン結合におけるポリマーのハロゲン化と、その後の、ハロゲン化ポリマーとエチレン性不飽和官能性化合物との反応;ポリマーと不飽和官能性化合物との、ハロゲン化不在での「エン(ene)」反応による反応;マンニッヒ塩基型縮合での誘導体化を可能にする、少なくとも一つのフェノール基とポリマーとの反応;イソ酸(iso acid)またはネオ酸(neo acid)のような酸基(acid group)が生成されるコッホ(Koch)型反応を使用しての、一酸化炭素とポリマーとのその不飽和点での反応;ポリマーと官能性化合物との、遊離基触媒を使用しての遊離基付加による反応;および、空気酸化法、エポキシ化、クロロアミン化、またはオゾン分解による、ポリマーの反応。
【0060】
次のものは例証である:
1.求核試薬(アミン化合物たとえば含窒素化合物;有機ヒドロキシ基含有化合物たとえばフェノールやアルコール;および/または塩基性無機物質のような)をもって誘導体化された、官能化されたポリマーの反応生成物。
【0061】
より詳しくは、窒素またはエステルを含有する無灰分散剤は、モノ−およびジ−カルボン酸もしくは酸無水物またはそれらのエステル誘導体で官能化された、本発明の実施に用いられるポリマーの油溶性の塩、アミド、イミド、オキサゾリン、およびエステル、またはそれらの混合物を含み、前記ポリマーは上記に規定された通りの分散剤範囲の分子量を有する。
【0062】
分散剤添加剤を形成するには、少なくとも一つの官能化されたポリマーが少なくとも一つのアミン、ポリオールも含めてのアルコール、アミノアルコールなど、と混合される。特に好ましい分散剤の一つのクラスは、ポリマーと官能化されたモノ−またはジ−カルボン酸物質たとえば無水コハク酸とから誘導され、そして(i)ヒドロキシ化合物たとえばペンタエリトリトール、(ii)ポリオキシアルキレンポリアミンたとえばポリオキシプロピレンジアミン、および/または(iii)ポリアルキレンポリアミンたとえばポリエチレンジアミンまたはテトラエチレンペンタミン(ここではTEPAと称する)と反応させられた、ものを包含する。別の好ましい分散剤クラスは、(i)ポリアルキレンポリアミンたとえばテトラエチレンペンタミン、および/または(ii)多価アルコールまたはポリヒドロキシ置換脂肪族第一アミン、たとえば、ペンタエリトリトールまたはトリスメチロールアミノメタン、と反応させられた、官能化されたポリマーから誘導されたものを包含する。
【0063】
2.「マンニッヒ分散剤」として特徴付けられてもよい、芳香族ヒドロキシ基をもって官能化されそしてアルデヒド(特にホルムアルデヒド)とアミン(特にポリアルキレンポリアミン)をもってマンニッヒ反応を通して誘導体化された炭化水素ポリマーの反応生成物。
【0064】
3.ハロゲンとの反応によって官能化されており次いでアミンとの反応(たとえば、直接アミン化)、好ましくは、ポリアルキレンポリアミンとの反応、によって誘導体化された炭化水素ポリマーの反応生成物。これらは「アミン分散剤」として特徴付けられてもよく、その例はたとえば米国特許第3,275,554号、第3,438,757号、第3,454,555号、第3,565,804号、第3,755,433号、第3,822,209号および第5,084,197号明細書に記載されており、それらの開示は全体が本願明細書の中に組み入れられる。
【0065】
アミン化合物からの誘導体化ポリマー
官能化された炭化水素ポリマーを誘導体化するための有効なアミン化合物は少なくとも一つのアミンを含み、そして場合によって他の反応性基または極性基を含むことができる。官能基がカルボン酸、エステル、またはそれらの誘導体である場合には、それはアミンと反応してアミドを形成する。官能基がエポキシである場合には、それはアミンと反応してアミノアルコールを形成する。官能基がハライドである場合には、アミンはハライドを置換するように反応する。官能基がカルボニル基である場合には、それはアミンと反応してイミンを形成する。
【0066】
官能化された炭化水素ポリマーとの反応用の求核性反応体として有効なアミン化合物は米国特許第3,445,441号、第5,017,299号、および第5,102,566号明細書に開示されているものを包含し、それら特許は全体が本願明細書の中に組み入れられる。好ましいアミン化合物は、分子中の全炭素原子数が約2〜約60、好ましくは約2〜約40、より好ましくは約3〜約20でありそして窒素原子数が約1〜約12、好ましくは約3〜約12、より好ましくは約3〜約9である、モノアミンおよび好ましくはポリアミンを包含する。これらアミンはヒドロカルビルアミンであることができるし、又は他の基たとえばヒドロキシ基、アルコキシ基、アミド基、ニトリル、イミダゾリン基などを含むヒドロカルビルアミンであることができる。1〜約6個のヒドロキシ基、好ましくは1〜約3個のヒドロキシ基を有するヒドロキシアミンが特に有効である。好ましいアミンは脂肪族飽和アミンであり、下記一般式を有するものを包含する:
【化9】


式中、R10、R11、R12、およびR13は独立に、水素、C1〜C25直鎖または分枝鎖アルキル基、C1〜C12アルコキシ、C2〜C6アルキレン基、C2〜C12ヒドロキシアミノアルキレン基、およびC1〜C12アルキルアミノC2〜C6アルキレン基からなる群から選ばれ、そしてR13は追加的に、式
【化10】


(式中、R10は上記定義通りである)
の成分を含むことができ、そしてr、r′、およびr"は、2〜6の、好ましくは2〜4の、同一または異なる整数であることができ;そしてtおよびt′は、0〜10の、好ましくは2〜7の、そしてより好ましくは約3〜7の、同一または異なる整数であることができる。好ましくは、tとt′の和は15以下である。容易な反応を確保するためには、R10、R11、R12、R13、r、r′、r"、t、およびt′は、式(I)および(II)の化合物に代表的には少なくとも1個の第一または第二アミン基、好ましくは少なくとも2個の第一または第二アミン基、を提供するのに十分なように選ばれる。上記式の最も好ましいアミンは式(II)によって表わされ、そして少なくとも2個の第一アミン基と、少なくとも1個、好ましくは少なくとも3個の第二アミン基を含有する。
【0067】
適するアミン化合物の非限定的例は下記のものを包含する:1,2−ジアミノエタン;1,3−ジアミノプロパン;1,4−ジアミノブタン;1,6−ジアミノヘキサン;ポリエチレンアミン、たとえば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン;ポリプロピレンアミン、たとえば、1,2−プロピレンジアミン、ジ−(1,2−プロピレン)トリアミン、ジ−(1,3−プロピレン)トリアミン;N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン;N,N−ジ−(2−アミノエチル)エチレンジアミン;N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−プロピレンジアミン;3−ドデシルオキシプロピルアミン;N−ドデシル−1,3−プロパンジアミン;トリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM);ジイソプロパノールアミン;ジエタノールアミン;トリエタノールアミン;モノ−、ジ−、およびトリ−タロウアミン;アミノモルホリン、たとえば、N−(3−アミノプロピル)モルホリン;およびそれらの混合物。モノアミンはメチルエチルアミン、メチルオクタデシルアミン、アニリン、ジエチロールアミン、ジプロピルアミンなど、を包含する。
【0068】
その他の有効なアミン化合物は次のものを包含する:脂環式ジアミン、たとえば、1,4−ジ(アミノメチル)シクロヘキサン、および、複素環式窒素化合物、たとえば、イミダゾリン、および下記一般式(III)のN−アミノアルキルピペラジン:
【化11】


式中、pおよびqは同一または異なり、そして1〜4の各整数であり、そしてx、y、およびzは同一または異なり、そして1〜3の各整数である。かかるアミンの非限定的例は2−ペンタデシルイミダゾリン;N−(2−アミノエチル)ピペラジン;など;を包含する。
【0069】
アミン化合物の市販の混合物は有利に使用できる。たとえば、アルキレンアミンを製造するための一つの方法はジハロゲン化アルキレン(たとえば、二塩化エチレンまたは二塩化プロピレン)とアンモニアの反応を伴い、それは窒素の対(複数)がアルキレン基によって結合されているアルキレンアミンの複雑な混合物を生じ、かかる化合物をジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、および異性体ピペラジンとして生成する。分子当たり平均約5〜7個の窒素原子を有する廉価ポリ(エチレンアミン)化合物は「ポリアミンH」、「ポリアミン400」、「ダウポリアミンE−100」、等々、のような名称で商業的に入手可能である。
【0070】
有効なアミンはまた、ポリオキシアルキレンポリアミン、たとえば、式
NH2−アルキレン−(−O−アルキレン−)m−NH2 (IV)
(式中、mは約3〜70の値、好ましくは10〜35、を有する);および、式
R14−(−アルキレン−(−O−アルキレン−)n−NH2)a (V)
(式中、nは、n値全部の和が約3〜約70、好ましくは約6〜約35であることを条件に、約1〜40の値を有する、そしてR14は10個までの炭素原子を有する多価飽和炭化水素基であり、そこではR14基上の置換基の数は「a」の値によって表わされ、それは3〜6の整数である)
を有するもの、を包含する。式(IV)または(V)どちらかの中のアルキレン基は約2〜約7個の、そして好ましくは約2〜約4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖であることができる。
【0071】
上記式(IV)または(V)のポリオキシアルキレンポリアミン、好ましくは、ポリオキシアルキレンジアミンおよびポリオキシアルキレントリアミン、は約200〜約4,000の、好ましくは約400〜約2,000の、範囲の数平均分子量を有することができる。好ましいポリオキシアルキレンポリアミンは約200〜2,000の範囲の平均分子量を有する、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンジアミン、およびポリオキシプロピレントリアミンを包含する。ポリオキシアルキレンポリアミンは商業的に入手可能であり、そして、たとえば、ハンツマン・ケミカル社(Huntsman Chemical Company, Inc.)から、商品名「ジェファミン(Jeffamines)D−230、D−400、D−1000、D−2000、T−403、等々、で得ることができる。他の適するアミンはビス(パラアミノシクロヘキシル)メタンオリゴマーを包含する。
【0072】
チウラムジスルフィドおよびチオカルバメート塩
本発明の実施に有効なチオカルバメート塩はジアルキルジチオカルバミン酸アルカリ金属塩が下記式の化合物を表わすことを特徴としている:
【化12】


式中、R8およびR9は独立に、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+はNa+、K+、またはNH4+である。
【0073】
また、下記式のビス−ジアルキルジチオカルバミン酸2価金属塩も有効である:
【化13】


式中、R8およびR9は、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+2はFe+2、Zn+2、Pb+2、またはCu+2である。
【0074】
また、下記式のトリス−ジアルキルジチオカルバミン酸3価金属塩も有効である:
【化14】


式中、R8およびR9は、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+3はSb+3またはBi+3である。
【0075】
本発明に有効なチウラムジスルフィドは下記式を有するものである:
【化15】


式中、R8およびR9は上記の通りである。
【0076】
本発明に有効なチウラムジスルフィドの例およびそれらの合成は米国特許第4,501,678号明細書に開示されており、その特許の開示はその全体が本願明細書の中に組み入れられる。本発明に有効なチオカルバメート塩の例およびそれらの合成は米国特許第3,674,824号および第3,678,135号明細書に開示されており、それらの開示は全体が本願明細書の中に組み入れられる。
【0077】
添加剤の一般的合成
本発明のモリブデン系摩擦改質剤を製造する方法はその簡易さと明瞭さにおいて独特である。この方法は下記のステップを包含する:
i)有機溶剤または溶剤混合物の中で可溶性界面活性剤のミセル溶液を生成するステップ、
ii)ミセル溶液に、適切な水溶性無機モリブデン化合物の水溶液を添加することによって逆マイクロエマルションを生成するステップ、
iii)硫化モリブデンの上に吸着すること又はそれと反応することが可能な適切な表面キャップ剤を添加するステップ、
iv)水性マイクロエマルションコア内のモリブデン化合物を硫化水素と反応させてチオモリブデン誘導体を生成するステップ、
v)反応混合物から水と有機溶剤を除去するステップ、
vi)こうして生成されたモリブデン/イオウ成分含有ナノサイズ粒子を適切な溶剤によって抽出するステップ、及び
vii)この適切な有機溶剤を蒸発させて表面キャップされたナノサイズ粒子の形態の添加剤を生じるステップ。
【0078】
逆ミセル溶液および逆マイクロエマルションの生成
一般に、任意の界面活性剤タイプ(カチオン性、アニオン性、または非イオン性)によって形成された逆ミセル溶液は任意の無機塩の水溶液の添加で逆マイクロエマルションを形成することができる。本発明の範囲内での、様々なタイプの界面活性剤によって安定化された逆ミセル溶液ならびに前記ミセル溶液からつくられた逆マイクロエマルションが表1に呈示されている。本発明に有効な界面活性剤は次のものを包含する:
i)カチオンタイプ:ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、たとえば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB);塩化トリカプリルメチルアンモニウム(アリクェート(登録商標)336、AL−336);塩化メチルトリアルキル(C8〜C10)アンモニウム(アドゲン(Adogen)(登録商標)464、AD−464);
ii)アニオンタイプ:ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT);
iii)非イオンタイプ:トリトン(登録商標)X−100(TX−100);トリトン(登録商標)X−100レデュースト(reduced)(TX−100R)。
【0079】
【表1】

【0080】
好ましくは、CTABはクロロホルム:n−アルカンの中に約0.01〜約0.1モル/Lの濃度に溶解されて使用される。使用できるn−アルカンは限定されるものではないが、次のものを包含する:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびそれらの異性体および混合物。
【0081】
マイクロエマルション水性コアの中のモリブデン化合物と
硫化水素の反応
硫黄原子を含有しないモリブデン塩溶液を含有する逆マイクロエマルションはマイクロエマルションの中に直接に気体硫化水素を吹き込むことによって硫化水素(H2S)と反応させられる。反応は水溶液中でのそれと同じように、即ち、モリブデートアニオン中の酸素原子の段階的置換によって、進行する。pH値に依存して、pH7以上では水に可溶性であるチオモリブデートアニオンが形成される(段階的置換)、又はpH7未満ではMoS3沈降物が形成される。モリブデート含有マイクロエマルションの相互作用はその結果に対する反応条件の影響を明瞭にするためにUVスペクトルによって監視された。代表的には、それぞれ、水中で、[MoS4]2-アニオンは241nm、316nm、および467nmに;[MoOS3]2-は308nm、396nm、および457nmに;[MoO2S2]2-は320nmおよび393nmに、吸収バンドを有する。
【0082】
図1〜3に示されたUVスペクトルは部分置換チオモリブデート誘導体の生成を例証する。図4における最終スペクトルは吸収バンドを含まず、それは逆ミセルの内部に形成されたナノサイズ無機粒子のUVスペクトルを象徴している。
【0083】
水溶液のpH値に依存して、モリブデン(VI)化合物と硫化水素の反応は図
【化16】


に呈示されたスペクトルによって支持される通りチオモリブデート塩誘導体を生成するか又はpH<5においてマイクロエマルション水性コア内に直接にMoOS2またはMoS3沈降物を形成するかどちらかであるように進行するかもしれない。溶液のPh値の調整はモリブデン誘導体溶液を含有するマイクロエマルションに直接に、かつ硫化水素との反応前に、所期量の塩酸を添加することによって達成される。
【0084】
適切な表面キャップ剤を
硫化モリブデンナノ粒子に添加
無機物質のナノサイズ粒子はしばしば、有機媒体中での限られた凝集および/または沈降安定性を有する。凝集安定性を改良するための表面キャップ剤の利用はこの分野で知られている;しかしながら、その表面キャップされたナノサイズ無機粒子はどれもが無極性有機媒体の中には溶解されないであろう。
【0085】
硫化モリブデンは、有機アミン、カルボン酸、ジアルキルジチオリン酸誘導体およびジアルキルジチオカルバミン酸誘導体のような多数の化合物と複雑な化合物を容易に形成する。本発明はこれら群の化合物を、硫化モリブデンナノ粒子の凝集安定性を向上させ且つそれらを炭化水素や石油系潤滑油のような無極性有機溶剤の中に可溶化させるために、硫化モリブデンナノ粒子の表面キャッピング用に利用することに関する。
【0086】
本発明によるモリブデン/イオウ成分含有ナノ粒子の表面キャッピングは所期量の表面キャップ剤を逆マイクロエマルションの形成前又は逆マイクロエマルションの形成後又はマイクロエマルションの水性コア内のモリブデン誘導体と硫化水素との反応後でさえのいずれかの時点で添加することによって遂行することができる。表面キャップ剤の添加は逆マイクロエマルションの内部での化学反応の経路に影響せず、そしてナノサイズの硫化モリブデン粒子の得られるスペクトルは表面キャップ剤の不在下で得られたものと実際的に同じである、たとえば、図5に呈示されたイソプロピルオクタデシルアミンの存在下で製造された硫化モリブデンナノ粒子のUVスペクトルを参照。
【0087】
反応混合物から水と有機溶剤を除去し、そして
硫化モリブデンナノサイズ粒子を抽出
前工程で得られた褐色の澄んだ溶液は表面キャップされた硫化モリブデンナノ粒子、界面活性剤、水、および有機溶剤および/または溶剤混合物を含有している。水と有機溶剤および/または溶剤混合物は蒸発と残留物の真空乾燥とによって容易に除去され、一方、表面キャップされた硫化モリブデンナノ粒子の単離は適切な溶剤による選択抽出によって達成される。たとえば、カチオン性界面活性剤の場合には、適切な溶剤はテトラヒドロフラン(THF)であり、それはハロゲン化テトラアルキルアンモニウム界面活性剤の有意量を溶解しないが、最終の表面キャップされた硫化モリブデンナノサイズ粒子を抽出する。THFの蒸発は本発明の所期化合物を生じさせる。
【0088】
本発明の最終添加剤は、合成炭化水素、ジエステル、ポリオールエステル、アルキル芳香族化合物、シリコーン系オイル、ポリフェニルエーテル、フッ素化炭化水素などを含む石油系または合成の任意タイプの潤滑油とブレンドするのに適する添加剤濃厚物を形成するように、その合成された表面キャップされた硫化モリブデンナノサイズ粒子を本発明の対応する表面キャップ剤の中に溶解することによって通常製造される。
【0089】
他の添加剤との併用
本発明の添加剤は潤滑組成物の中に典型的に見出される他の添加剤と組み合わせて、並びに他の摩擦改質添加剤と組み合わせて、使用することができる。潤滑油の中に見出される代表的な添加剤は分散剤、清浄剤、錆止め剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、泡止め剤、摩擦改質剤、封止膨潤剤、乳化破壊剤、VI向上剤、および流動点降下剤である。有効な潤滑油組成物添加剤の記載については、たとえば米国特許第5,498,809号明細書を参照。分散剤の例はポリイソブチレンスクシンイミド、ポリイソブチレンスクシネートエステル、マンニッヒ塩基無灰分散剤など、を包含する。清浄剤の例は金属性フェネート、金属性スルホネート、金属性サリチレートなど、を包含する。本発明の添加剤と組み合わせて使用できる酸化防止添加剤の例はアルキル化ジフェニルアミン、N−アルキル化フェニレンジアミン、ヒンダード(hindered)フェノール類、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、油溶性銅化合物など、を包含する。本発明の添加剤と組み合わせて使用できる摩耗防止添加剤の例は有機ボレート、有機ホスフィット(phosphite)、有機含硫黄化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、リン硫化炭化水素(phosphosulfurized hydrocarbon)、など、を包含する。本発明の摩擦改質剤と組み合わせて使用できる摩擦改質剤の例は脂肪酸エステルおよびアミド、有機モリブデン化合物、ジアルキルチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデンなど、を包含する。泡止め剤の例はポリシロキサンなどを包含する。錆止め剤の例はポリオキシアルキレンポリオールなどを包含する。VI向上剤の例はオレフィンコポリマーおよび分散剤オレフィンコポリマーなどを包含する。流動点降下剤の例はポリメタクリレートなどを包含する。
【0090】
潤滑剤組成物
組成物は、これら添加剤を含有するときは、代表的には、それらの通常の付随機能を提供するのに有効である量で基油の中にブレンドされる。
【表2】

【0091】
本発明の添加剤は、摩擦改質剤、および/または酸化抑制剤、および/または摩耗防止剤の一部の代わりに代用されるであろう。
【0092】
他の添加剤が使用されるときは、一つまたはそれより多くの前記他の添加剤と共に本発明の当該添加剤の濃厚な溶液または分散物を(上記の濃厚量で)含む添加剤濃厚物を製造することは、必ずしも必要ではないけれども、望ましいであろう(前記濃厚物は添加剤混合物を構成するときはここでは添加剤パッケージと称される)、それによって、潤滑油組成物を形成するのに基油に数種の添加剤を同時に添加できる。潤滑油の中への添加剤濃厚物の溶解は溶剤によって及び穏やかな加熱を伴う混合によって促進されてもよいが、これは本質的なことではない。濃厚物または添加剤パッケージは代表的には、添加剤パッケージを予め定められた量の基本潤滑剤と合わせたときに最終配合物中で所期濃度を提供するのに適する量の添加剤を含有するように処方されるであろう。従って、本発明の当該添加剤は他の所望の添加剤と共に少量の基油または他の混和性溶剤に添加されて活性成分を代表的には約2.5〜約90重量%、好ましくは約15〜約75重量%、より好ましくは約25〜約60重量%のまとまった量の添加剤を適切な割合で含有し残りは基油である添加剤パッケージを形成する。最終処方物は代表的には約1〜20重量%の添加剤パッケージを使用してもよく、残りが基油である。
【0093】
ここに表わされる重量百分率の全ては(別に表示されない限り)、添加剤の活性成分(AI)含量に基づいており、そして/または各添加剤の(AI)重量と全体の油または希釈剤の重量との和であろう添加剤パッケージまたは配合物の全重量に対するものである。
【0094】
一般に、本発明の潤滑剤組成物は添加剤を約0.05〜約30重量%の範囲の濃度で含有している。油組成物の全重量に基づいて約0.1〜約10重量%範囲の添加剤の濃度範囲が好ましい。より好ましい濃度範囲は約0.2〜約5重量%である。添加剤の油濃厚物は約1〜約75重量%の添加剤反応生成物を潤滑油粘度のキャリヤーまたは希釈油の中に含有することができる。
【0095】
一般に、本発明の添加剤は様々な潤滑油ベースストック(basestock)の中で有効である。潤滑油ベースストックは100℃において約2〜約200cSt、より好ましくは約3〜約150cSt、最も好ましくは約3〜約100cSt、の動粘度を有するいずれかの天然または合成潤滑基油ストック画分である。潤滑油ベースストックは天然潤滑油、合成潤滑油、またはその混合物から誘導できる。適する潤滑油ベースストックは合成ワックスおよびワックスの異性化によって得られたベースストック、ならびに原油の芳香族および極性成分をハイドロクラッキング(溶剤抽出ではない)することによって生成されたハイドロクラッケート(hydrocrackate)ベースストックを包含する。天然潤滑油は動物油、植物油(たとえば、ナタネ油、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、および石炭または頁岩から誘導された油、を包含する。
【0096】
合成油は炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、たとえば、重合および共重合されたオレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、それらの類似体および同族体、など、を包含する。合成潤滑油はまた、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、およびそれらの誘導体を包含し、そこでは、末端ヒドロキシル基はエステル化、エーテル化などによって改質されている。合成潤滑油の別の適するクラスはジカルボン酸と様々なアルコールとのエステルを含む。合成油として有効なエステルはまた、C5〜C12モノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエーテルとから製造されたものを包含する。
【0097】
シリコン系オイル(たとえば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、またはポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油)はもう一つの有効なクラスの合成潤滑油を構成する。その他の合成潤滑油はリンを含有する酸の液体エステル、ポリマー性のテトラヒドロフラン、ポリアルファオレフィンなど、を包含する。
【0098】
潤滑油は未精製油、精製油、再精製油、またはそれらの混合物であってもよい。未精製油は天然源または合成源(たとえば、石炭、頁岩、またはタールおよびビチューメン)から直接に、更なる純化または処理なしで得られる。未精製油の例はレトルト操作(retorting operation)から直接に得られた頁岩油、蒸留から直接に得られた石油、またはエステル化プロセスから直接に得られたエステル油を包含し、それらの各々はそれから更に処理することなく使用される。精製油は精製油が一つまたはそれより多くの性質を改良するために一つまたはそれより多くの純化工程で処理されたこと以外は未精製油に似ている。適する純化技術は、蒸留、水素化精製、脱蝋、溶剤抽出、酸または塩基抽出、濾過、およびパーコレーションを包含し、それらはどれも当業者に知られている。再精製油は精製油を得るのに使用されたものに似たプロセスで精製油を処理することによって得られる。これら再精製油は再生油(reclaimed oils)または再加工油(reprocessed oils)としても知られており、そしてしばしば使用済み添加剤および油分解生成物を除去する技法によって更に処理される。
【0099】
ワックスのハイドロ異性化(hydroisomerization)から誘導された潤滑油ベースストックも単独で又は上記天然および/または合成ベースストックとの組合せで使用することができる。かかるワックスアイソメレート(wax isomerate)油はハイドロ異性化用触媒上での天然または合成ワックスまたはそれらの混合物のハイドロ異性化によって生成される。天然ワックスは代表的には鉱油の溶剤脱蝋によって回収されたスラックワックス(slack waxes)であり;合成ワックスは代表的にはフィッシャー・トロプシュ法によって生成されたワックスである。得られたアイソメレート生成物は代表的には特定粘度範囲の様々な画分を回収するように溶剤脱蝋および分別を受ける。ワックスアイソメレートはまた、一般的に少なくとも130のVI、好ましくは少なくとも135およびそれより大きいVI、を有する非常に高い粘度指数と、脱蝋後に約20℃及びそれより低い流動点を有することを特徴とする。
【0100】
本発明の添加剤は多数の様々な潤滑油組成物の中の成分として特に有効である。添加剤は天然および合成潤滑油およびそれらの混合物を含めて潤滑粘度を有する様々な油の中に含有されることができる。添加剤は火花点火および圧縮点火される内燃機関のクランクケース潤滑油の中に含有されることができる。それら組成物はガスエンジン潤滑剤、タービン潤滑剤、自動車トランスミッション液、ギア潤滑剤、コンプレッサー潤滑剤、金属加工用潤滑剤、作動液(hydraulic fluids)、及びその他の潤滑油およびグリース組成物の中にも使用できる。それら添加剤はモーター燃料(ガソリンおよびジーゼルどちらでも)組成物の中にも使用できる。
【0101】
本発明の利点および重要な特徴は下記実施例から更に明らかになろう。
実施例
様々な表面キャップ剤を使用しての
表面キャップされた硫化モリブデンナノ粒子の製造
【0102】
有機アミン改質
実施例1
イソプロピルオクタデシルアミン(IPODA)
45mLのクロロホルムの中に臭化セチルトリメチルアンモニウム(0.652g)を溶解し、そして攪拌しながら(NH4)6Mo7O24・2H2O飽和水溶液100μLを添加した。この不透明溶液を加熱し、それから20mLのイソオクタンと20mLのクロロホルムを加え、そして飽和HCl水溶液を10滴添加し、その結果、透明溶液を生じた。過剰H2Sの吹き込みを弱黄色が得られるまで行い、それから、クロロホルム50mLの中に0.577gのイソプロピルオクタデシルアミンを溶解することによって得た溶液の11mLを添加した(Mo:N〜1:5)。3日後、得られた、少量の沈降物を含有する薄黒い溶液から全溶剤を蒸発させ、残留物を30mLのテトラヒドロフラン(THF)と共に攪拌し、若干のMoS3を含有する未溶解の臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を濾過して除き、そして得られた薄黒い澄んだ溶液を蒸発させた。
【0103】
実施例2
sec−ブチルアミン
CTAB(0.757g)を100mLのクロロホルムの中に溶解し、そして100mLのヘキサンで希釈した。攪拌しながら100mLの(NH4)6Mo7O24・2H2O飽和水溶液を添加し、次いで12μLの濃HCl水溶液を添加し、その結果、透明溶液を生じた。色が灰−褐色になるまでH2Sを1時間吹き込み、それから30μLのsec−ブチルアミンを添加し、その結果として、溶液は深褐色になった。24時間後、薄黒い溶液から全溶剤を蒸発させ、残留物を15mLのテトラヒドロフラン(THF)と共に攪拌し、若干のMoS3を含有する未溶解CTABを濾過して除き、そして得られた薄黒い澄んだ溶液を蒸発させて0.1279gの薄黒い物質を生じた。
【0104】
実施例3
アルケニルスクシンイミド
アルケニルスクシンイミド(ASI、1.7mL)(インダポール(Indapol)H-1500(ポリイソブチレン)と無水マレイン酸の反応生成物が次いでトリエチレンテトラミン(TETA)と反応させられたもの(ユニロイヤル・ケミカル社))溶液(クロロホルム5mL中に0.2185gのASI)を、クロロホルム−ヘキサン溶液(1:1 v/v)中のCTAB 0.01M溶液の100mLの中に攪拌しながら溶解した。10分後に、(NH4)6Mo7O24の飽和水溶液0.05mLを添加して不透明なマイクロエマルション(モル比でASI:Mo=1.6:1.1)を生じた。約8.5μLの濃HCl水溶液を添加して澄んだ溶液を生じ、それに過剰H2Sを吹き込んだ。溶液の色が緑色から褐色に変わり、そして24時間後、褐色沈殿物が形成された。有機溶剤を真空下で蒸発させ、残留物を15mLの新鮮留出THFと共に攪拌し、未溶解物を濾過して除き、そしてTHFを蒸発させた。得られた褐色の残留物質(0.0523g)は約1:1の改質剤対Mo比でASIによって改質されたナノサイズの硫化モリブデン粒子であった。
【0105】
実施例4
アルケニルスクシンイミド
アルケニルスクシンイミド溶液(クロロホルム5mL中の0.2185g ASIの0.85mL)を、クロロホルム−ヘキサン溶液(1:1 v/v)中のCTAB 0.01M溶液の100mLの中に攪拌しながら溶解した。10分後、(NH4)6Mo7O24の飽和水溶液0.05mLを添加して不透明なマイクロエマルション(モル比でASI:Mo=0.56:1.1)を生じた。約7μLの濃HCl水溶液を添加して澄んだ溶液を生じ、それに過剰H2Sを吹き込んだ。溶液は不透明に転じ、その色は緑がかった色から褐色に変わった。24時間後、溶液はなお不透明で褐色であり、そして沈殿物は形成されなかった。有機溶剤を真空下で蒸発させ、残留物を15mLの新鮮留出THFと共に攪拌し、未溶解物を濾過して除き、そしてTHFを蒸発させた。得られた褐色の残留物質(0.04g)は約1:2の改質剤対Mo比でASIによって改質されたナノサイズの硫化モリブデン粒子であった。
【0106】
実施例5
アルケニルスクシンイミド
(NH4)6Mo7O24の飽和水溶液(0.05mL)を、クロロホルム−ヘキサン混合液(1:1 v/v)中の0.01M CTAB溶液の100mLに添加した。5分後、1.7mLのアルケニルスクシンイミド溶液(クロロホルム5mL中の0.2185gのASI)を添加して無色の不透明なマイクロエマルション(モル比でASI:Mo=1.6:1.1)を生じた。約6μLの濃HCl水溶液を添加して澄んだ溶液を生じ、それに過剰H2Sを吹き込んだ。溶液はゆっくり褐色に転じた。24時間後、有機溶剤を真空下で蒸発させ、残留物を15mLの新鮮留出THFと共に攪拌し、未溶解物を濾過して除き、そしてTHFを蒸発させた。褐色の残留物質(0.094g)は約1:1の改質剤対Mo比でASIによって改質されたナノサイズの硫化モリブデン粒子であった。
【0107】
実施例6
アルケニルスクシンイミド
ASI溶液を最初にCTAB溶液に添加してから(NH4)6Mo7O24の飽和水溶液を添加したこと以外は実施例5を繰り返した。硫化水素は約2.5時間吹き込んだ。生成物の単離は約1:1の改質剤対Mo比でASIによって改質されたナノサイズの硫化モリブデン粒子0.1052gを生じた。
【0108】
カルボン酸改質
実施例7
ドコサン(ベヘン)酸;C22カルボン酸
モリブデン酸アンモニウム飽和水溶液7μLを、1:1 v/vのイソオクタン:クロロホルム混合液中の0.01モル/LのCTAB溶液の7mLに攪拌しながら添加し、それから、混合物を濃HCl水溶液の添加(1滴)によって安定化させた。30分後、やや青い溶液にH2Sを吹き込み、それを黄色に転じ、そしてクロロホルム5mL中に0.0282gベヘン酸を含有する溶液の0.19mLを添加した。過剰H2Sを更に吹き込んだ。24時間後、淡褐色沈降物が形成された。残留物は全溶剤の除去後にクロロホルムおよびベンゼンの中に溶解した(後者の場合には、CTABのほかは)。
【0109】
実施例8
ドコサン(ベヘン)酸
2mLのベヘン酸溶液(クロロホルム10mL中の0.2165gのベヘン酸)を、クロロホルム−ヘキサン溶液(1:1 v/v)中のCTAB 0.01M溶液の100mLの中に攪拌しながら溶解した。10分後、(NH4)6Mo7O24の飽和水溶液0.05mLを添加して不透明マイクロエマルション(モル比でC22酸:Mo=1:1.3)を生じた。約5.5μLの濃HCl水溶液を添加して澄んだ溶液を生じ、それに過剰H2Sを2.5時間吹き込んだ。溶液の色は緑色から褐色に変わった。24時間後、有機溶剤を真空下で蒸発させ、残留物を15mLの新鮮留出THFと一緒に攪拌し、未溶解物を濾過して除き、そしてTHFを蒸発させた。褐色の残留物質(0.037g)が得られ、それは約1:1.3の改質剤対Mo比でベヘン酸によって改質されたナノサイズの硫化モリブデン粒子を表わした。
【0110】
ジアルキルジチオリン酸誘導体改質
実施例9
ジ−2−エチルヘキシル−ジチオリン酸
モリブデン酸アンモニウム飽和水溶液50mLを、1:1 v/vのイソオクタン−クロロホルム混合液中の0.01モル/LのCTAB溶液の10mLに還流下で添加し、次いで、75μLの濃HCl水溶液を添加した。それから、2mLクロロホルム中に0.1gのジ−2−エチルヘキシル−ジチオリン酸を含有する溶液の0.07μLを添加し(Moに対して10モル%)、そして過剰H2Sを吹き込んだ。24時間後、沈降物が形成され、それを濾過によって単離した。こうして得られた暗褐色固体はクロロホルム、THFの中に溶解し、そしてベンゼン、CCl4およびsec−C4H9NH2の中に僅かに溶解する。
【0111】
ジアルキルジチオカルバミン酸誘導体改質
実施例10
テトラ(ヘキサデシル)チウラムジスルフィド
テトラ(ヘキサデシル)チウラムジスルフィド(THDTS)溶液(クロロホルム5mL中の0.204g THDTSの1.5mL)を、クロロホルム−ヘキサン溶液(1:1 v/v)中のCTAB 0.01M溶液の100mLの中に攪拌しながら溶解した。10分後、(NH4)6Mo7O24の飽和水溶液0.05mLを添加して不透明なマイクロエマルション(モル比でTHDTS:Mo=1:1)を生じた。約5μLの濃HCl水溶液を添加して澄んだ溶液を生じ、そして過剰H2S(約300mL)を吹き込んだ。溶液の色が淡褐色から暗緑−褐色に変わった。24時間後、溶液中には目で見える沈殿物は形成されなかった。有機溶剤を真空下で蒸発させ、残留物を15mLの新鮮留出THFと共に攪拌し、未溶解物を濾過して除き、そしてTHFを蒸発させた。褐色の残留物質(0.0673g)は約1:1の改質剤対Mo比でTHDTSによって改質されたナノサイズの硫化モリブデン粒子であった。
【0112】
実施例11
ジ(ヘキサデシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム
ジ(ヘキサデシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム(NaHDTC)溶液(クロロホルム5mL中の0.204g NaHDTCの1.5mL)を、クロロホルム−ヘキサン溶液(1:1 v/v)中のCTABの0.01M溶液の100mLに攪拌しながら溶解した。10分後、(NH4)6Mo7O24の飽和水溶液0.05mLを添加して淡黄色溶液(モル比でNaHDTC:Mo=1:1)を生じた。約2.5μLの濃HCl水溶液を添加して澄んだ溶液を生じ、そして過剰H2S(約300mL)を吹き込んだ。溶液の色は黄−褐色に変わった。24時間後、溶液の中には目で見える沈殿物は形成されなかった。有機溶剤を真空下で蒸発させ、残留物を15mLの新鮮留出THFと共に攪拌し、未溶解物を濾過して除き、そしてTHFを蒸発させた。褐色の残留物質(0.043g)は約1:1の改質剤対Mo比でNaHDTCによって改質されたナノサイズの硫化モリブデン粒子であった。試料全体は5mLのベンゼンの中に完全に溶解する。
【0113】
添加剤の及び潤滑剤組成物の製造
実施例12
潤滑剤組成物A
実施例1で得た試料を0.2gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0114】
実施例13
潤滑剤組成物B
実施例2で得た試料を0.2gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0115】
実施例14
潤滑剤組成物C
実施例3で得た試料を0.2gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0116】
実施例15
潤滑剤組成物D
実施例4で得た試料を0.2gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0117】
実施例16
潤滑剤組成物E
実施例5で得た試料を0.07gのASIの中に約60℃加熱で溶解した。さらに0.06gのASIを加えて溶解性を改善したが、若干の固体粒子状物質が残った、それは後で濾過して除いた。それから、1.6mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約10重量%未満の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0118】
実施例17
潤滑剤組成物F
実施例6で得た試料を0.132gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして4.486 mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0119】
実施例18
潤滑剤組成物G
実施例7で得た試料を0.16gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0120】
実施例19
潤滑剤組成物H
実施例7で得た試料を0.149gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして4.7 mLのT46オイルを約60℃加熱で加えた。若干の固体粒子状物質は後で濾過して除いた。温溶液は澄んでいたが、周囲温度に冷却すると沈降物形成を生じた。この試料は試験しなかった。
【0121】
実施例20
潤滑剤組成物I
実施例8で得た試料を0.2gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0122】
実施例21
潤滑剤組成物J
実施例9で得た試料を0.2gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0123】
実施例22
潤滑剤組成物K
実施例10で得た試料を0.2gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0124】
実施例23
潤滑剤組成物L
実施例11で得た試料を0.2gのASIの中に約60℃加熱で溶解し、そして5mLのT46オイルを加えた。この溶液を濾過して約5重量%の添加剤パッケージを含有する暗褐色組成物を生じた。
【0125】
摩擦係数と擦り傷防止特性(antiscuffing properties)のSRVトリボメーター測定
摩擦係数測定はSRV振動トリボメーター(オプチモル・インスツルメンツ社(Optimol Instruments GmbH)、独国)を使用して、50MHzにおいてボール・エリア対(ball-area pair)(摩擦点)について、20から1000Nまで段階的に負荷して、行った。摩擦係数−対−荷重値が測定されたばかりでなく、潤滑剤の耐力(load-carrying ability)が試験された。よりよい結果はより低い値の摩擦係数とより高い値の擦り傷付与荷重(scuffing load)を証明するものであることが想定される。
【0126】
表面キャップされたナノサイズの硫化モリブデン粒子を含有する組成物はタービン油T46を基材として製造され、そして様々な量のモリブデン含有添加剤を含有する。本発明の潤滑剤組成物の摩損学的性質は1重量%のモリブデンオキソスルホ−(ジイソオクチルジチオカルバメート)錯体を含有する組成物(組成物M)(Zaimovskaya T.A. et al., Izv. AN SSSR. Ser. Khim., No. 5: 2151 (1991)参照)のそれと比較される。
【0127】
試験結果は表2に表わされている。
【表3】

【0128】
実施例24
アルケニルスクシンイミド
臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)(0.757g、0.02モル)を100mLのCHCl3の中に溶解し、15分間攪拌し、それから、この混合物を100mLのヘキサンで希釈した(溶液A)。アルケニルスクシンイミド(0.2188g)を2mLのCHCl3の中に溶解した(溶液B)。新鮮再晶出塩(NH4)6Mo7O24を蒸留水の中に溶解して飽和溶液(室温、約40重量%)を生じた(溶液C)。約1.327mLの量の溶液B(約2.2×10-4モル)を溶液Aに攪拌しながら加えた。10分後、マイクロシリンジを使用して100μLの溶液C(約2.8×10-5モルの塩、1.93×10-4モルのMo)を加えた。最後に、0.2mLの塩酸(36重量%、2×10-3モル)を加えた。こうして得られた溶液は無色透明であった。得られた溶液に過剰のH2Sを2.5時間吹き込んだ。16時間後(次の日)、全ての揮発性物質を減圧下で除去し、そして固体残留物を減圧(0.1mm Hg)で乾燥した。残留物に10mLの新鮮留出テトラヒドロフラン(THF)を加え、そしてその混合物を多孔性ガラスフィルターに通して濾過した(フィルター上に残った沈殿物(CTAB)は白色であった)。得られた暗−褐色溶液を減圧下(60℃未満の温度)で蒸発乾固させ、そして乾燥して0.1505gの暗−褐色物質を生じた。残留物にアルケニルスクシンイミド(0.301g)を添加し、そして混合物全体を60℃に加熱し、そしてガラス棒を使用して手動で十分に混合した。この生成物はエンジン油の中に配合された後にカメロン−プリント(Cameron-Plint)マシンで試験された。
【0129】
実施例25
アルケニルスクシンイミド
臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)(1.1355g、0.03モル)を150mLのCHCl3の中に溶解し、15分間攪拌し、それから、この混合物を150mLのヘキサンで希釈した(溶液AA)。アルケニルスクシンイミド(0.4370g)を4mLのCHCl3の中に溶解した(溶液BB)。新鮮再晶出塩(NH4)6Mo7O24を蒸留水の中に溶解して飽和溶液(室温、約40重量%)を生じた(溶液C)。約1.99mLの量の溶液BB(約3×10-4モル)を溶液AAに攪拌しながら加え、そしてマイクロシリンジを使用して150μLの溶液C(約4.2×10-5モルの塩、2.94×10-4モルのMo)を加えた。最後に、0.3mLの塩酸(36重量%、3×10-3モル)を加えた。こうして得られた溶液は無色透明であった。得られた溶液に過剰のH2Sを5時間吹き込んだら、その最後には、溶液は不透明になった。16時間後(次の日)、全ての揮発性物質を減圧下で除去し、そして固体残留物を減圧(0.1mm Hg)で乾燥した。残留物に15mLの新鮮留出テトラヒドロフラン(THF)を加え、そしてその混合物を多孔性ガラスフィルターに通して濾過した(フィルター上に残った沈殿物(CTAB)は褐色であった)。得られた暗−褐色溶液を減圧下で蒸発乾固させ(60℃未満の温度)、そして乾燥して0.2526gの暗−褐色物質を生じた。残留物にアルケニルスクシンイミド(0.505g)を添加し、そして混合物全体を60℃に加熱し、そしてガラス棒を使用して手動で十分に混合した。この生成物はエンジン油の中に配合された後にカメロン−プリントマシンで試験された。
【0130】
カメロン−プリントTE77高周波数摩擦マシン
摩擦係数試験
完全配合潤滑油中の油溶化モリブデンナノ粒子の減摩性をカメロン−プリントTE77摩擦試験で測定した。試験された完全配合潤滑油は1.5重量%の添加剤を含有していた。添加剤は上昇する温度におけるモーター油の中での有効性について試験され、そして摩擦改質剤なしの同じ配合物と比較された。表3では、試験結果の数値(摩擦係数(Coefficient of Friction))は有効性の増加とともに減少している。すなわち、摩擦係数の値が低いほど、添加剤は摩擦を低下させるのに良好である。
【0131】
カメロン−プリントTE77高周波数摩擦マシン(Cameron-Plint TE77 High Frequency Friction Machine)によって摩擦係数を測定するための試験手順は次の通りである。添加剤を含有する油試料10mLを試験チャンバーの中に、フラット・ステーショナリー硬化グラウンド(flat stationary hardened ground)NSOH B01ゲージプレート(RC60/0.4ミクロン)を覆うように置く。往復運動試験体(reciprocating specimen)、16mm長さの窒化鋼の合せピン(dowel pin)(6mm直径、60Rc)、を、鋼板の上面に50ニュートン荷重の下に置き、室温から10分間で35℃まで加熱し、そして35℃に5分間維持する。それから、当を得た50ニュートン荷重をもって、5ヘルツの往復周波数を15ミリメートルの振幅行程長さで開始させる。それから、温度を10分間で50℃まで上げ、そして50℃に5分間維持する。それから、荷重を100ニュートンに増大させ、そして温度を1時間で165℃まで上げる。摩擦係数データは60〜160℃で収集する。フラット試験体は実験と実験の間にヘキサンと#500エメリークロス(emery cloth)で清浄にされる。毎回、新しい合せピンまたは合せピン表面が使用される。参照油が実験油と実験油の間に交替して試験される。参照油が再現性のある結果をもはや提供しなくなるまでは、同じフラット試験体が使用される。
【0132】
試験されたモーター油配合物は分散剤、清浄剤、酸化防止剤、錆止め剤、流動点降下剤、OCP粘度指数向上剤、および摩耗防止添加剤を含有しているSAE 10W-30グレートである。この配合に摩擦改質剤がトップトリート(top treat)として添加された。
【0133】
【表4】


1)参照油は摩擦改質剤(friction modifier)を含有しない完全配合10W-30ガソリン・クランクケース・モーター油である。
2)CFMは脂肪酸アミドとグリセロールエステルとグリセロールの混合物に基づいた無灰の市販の摩擦改質剤(commercially available friction modifier)である。
3)MoDTCは市販のジチオカルバミン酸モリブデンである。
【0134】
実施例24からの添加剤は2.07重量%のMoを含有していたので、実施例24からの添加剤を含有する油は311ppmのMoを含有した。
【0135】
実施例25からの添加剤は1.73重量%のMoを含有していたので、実施例25からの添加剤を含有する油は260ppmのMoを含有した。
【0136】
添加剤MoDTCは5.83重量%のMoを含有していたので、添加剤MoDTCを含有する油は309ppmのMoを含有した。
【0137】
本発明の基礎となる原理を逸脱することなく為すことができる多数の変形および変更を考慮すると、本発明に与えられるべき保護の範囲を理解するには添付の特許請求の範囲を基準にすべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)潤滑剤、および
B)一般式
(Z)n(X-R)m
の表面キャップされたナノサイズ粒子の形態の少なくとも一つの含モリブデン化合物(式中、
Zは約1〜約100nmの範囲の寸法を有する粒子の形態の、モリブデンとイオウを含む無機成分である;
(X-R)は表面キャップ剤であり、そこではRはC4〜C20直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキル化シクロアルキル基(単数または複数)であり、そしてXはモリブデン/イオウ成分による特異収着および/またはそれとの化学的相互作用が可能な官能基である;
nは粒子内のZの分子数である;
mは単一粒子に対する表面キャップ剤の相対量を表わす整数である;そして
m対nの比は約1:1から約10:1までの範囲にある)
を含む潤滑剤組成物。
【請求項2】
Zが、MoS3、MoS2O、Na2MoS4、Na2MoS3O、(NH4)2MoS4、(NH4)2MoS3O、およびそれらの水和物からなる群から選ばれる、請求項1の潤滑剤組成物。
【請求項3】
(X-R)が、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸アミド、ジカルボン酸ジアミド、脂環式イミド、ジアルキルジチオカルバミン酸アンモニウムまたはアルカリ金属塩、ビス−ジアルキルジチオカルバミン酸2価金属塩、トリス−ジアルキルジチオカルバミン酸3価金属塩、テトラアルキルチウラムジスルフィド、およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる、請求項1の潤滑剤組成物。
【請求項4】
アルキルアミン、ジアルキルアミン、およびトリアルキルアミンが、式
R1R2R3N
(式中、R1、R2、およびR3は独立に、水素、直鎖または分枝鎖C1〜C20アルキル、C6〜C16アルキルアリール、およびアリールからなる群から選ばれる)
を有するものである、請求項3の潤滑剤組成物。
【請求項5】
カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸アミド、およびジカルボン酸ジアミドが、式
【化1】


(式中、XはOH、NH2、NHR4、またはNR4R4であり、そしてR4は炭素原子数1〜40の直鎖または分枝鎖の飽和または部分不飽和アルキル成分である)
を有するものである、請求項3の潤滑剤組成物。
【請求項6】
脂環式イミドが、式
【化2】


(式中、R5は水素、(C=O)NHR7、または窒素の対(複数)がアルキレン基によって結合されているアルキレンアミン、であり、R6は水素、直鎖または分枝鎖(C2〜C400)アルキルであり、そしてR7はHまたは(C1〜C20)アルキルである)
を有するものである、請求項3の潤滑剤組成物。
【請求項7】
ジアルキルジチオカルバミン酸アンモニウムまたはアルカリ金属塩が、式
【化3】


(式中、R8およびR9は独立に、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+はNa+、K+、またはNH4+である)
を有するものである、請求項3の潤滑剤組成物。
【請求項8】
ビス−ジアルキルジチオカルバミン酸2価金属塩が、式
【化4】


(式中、R8およびR9は、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+2はFe+2、Zn+2、Pb+2、またはCu+2である)
の化合物である、請求項3の潤滑剤組成物。
【請求項9】
トリス−ジアルキルジチオカルバミン酸3価金属塩が、式
【化5】


(式中、R8およびR9は、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+3はSb+3またはBi+3である)
を有するものである、請求項3の潤滑剤組成物。
【請求項10】
テトラアルキルチウラムジスルフィドが、式
【化6】


(式中、R8およびR9は独立に、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれる)
を有するものである、請求項3の潤滑剤組成物。
【請求項11】
表面キャップされたナノサイズ粒子の形態の含モリブデン化合物が約0.2〜約5重量%の量で使用されている、請求項1の潤滑剤組成物。
【請求項12】
さらに、分散剤、清浄剤、錆止め剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、泡止め剤、摩擦改質剤、封止膨潤剤、乳化破壊剤、粘度指数向上剤、および流動点降下剤からなる群から選ばれた少なくとも一つの追加添加剤を含む、請求項11の潤滑剤組成物。
【請求項13】
一般式
(Z)n(X-R)m
の表面キャップされたナノサイズ粒子の形態の含モリブデン化合物(式中、
Zは約1〜約100nmの範囲の寸法を有する粒子の形態の、モリブデンとイオウを含む無機成分である;
(X-R)は表面キャップ剤であり、そこではRはC4〜C20直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキル化シクロアルキル基(単数または複数)であり、そしてXはモリブデン/イオウ成分による特異収着および/またはそれとの化学的相互作用が可能な官能基である;
nは粒子内のZの分子数である;
mは単一粒子に対する表面キャップ剤の相対量を表わす整数である;そして
m対nの比は約1:1から約10:1までの範囲にある)
を製造する方法であって、
A)有機溶剤または溶剤混合物中の炭化水素可溶性界面活性剤の溶液と水溶性無機モリブデン(VI)化合物の水溶液とを含む逆マイクロエマルションを生成するステップ;
B)モリブデン/イオウ成分を生成するのに必要ならば、水溶性無機モリブデン(VI)化合物を硫化水素との反応によってチオ誘導体に転化するステップ;
C)モリブデン/イオウ成分と化学的に相互作用する及び/又はその上に吸着する界面活性剤を添加するステップ;
D)マイクロエマルションから水と有機溶剤(単数または複数)を除去し、そしてその、表面キャップされたナノサイズ粒子の形態のモリブデン/イオウ成分含有生成物を、適切な有機溶剤によって抽出するステップ;及び
E)前記適切な有機溶剤を除去するステップ、
を含む前記方法。
【請求項14】
Zおよび水溶性無機モリブデン(VI)化合物が、MoS3、MoS2O、Na2MoS4、Na2MoS3O、(NH4)2MoS4、(NH4)2MoS3O、およびそれらの水和物からなる群から選ばれる、請求項13の方法。
【請求項15】
炭化水素可溶性界面活性剤がカチオン性、アニオン性または非イオン性界面活性剤である、請求項13の方法。
【請求項16】
炭化水素可溶性界面活性剤がカチオン性である請求項15の方法。
【請求項17】
界面活性剤がハロゲン化テトラアルキルアンモニウムである、請求項16の方法。
【請求項18】
界面活性剤がハロゲン化セチルトリメチルアンモニウムである、請求項17の方法。
【請求項19】
ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウムが0.01〜0.1モル/Lの濃度でクロロホルム:n−アルカン(1:1 v/v)の中に溶解される、請求項18の方法。
【請求項20】
n−アルカンが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびそれらの異性体および混合物からなる群から選ばれる、請求項19の方法。
【請求項21】
水溶性無機モリブデン(VI)化合物の水溶液が8以下のpHを有する、請求項13の方法。
【請求項22】
モリブデン/イオウ成分と化学的に相互作用する及び/またはその上に吸着する界面活性剤が、ステップA)またはステップB)におけるマイクロエマルションに添加される、請求項13の方法。
【請求項23】
モリブデン/イオウ成分と化学的に相互作用する及び/またはその上に吸着する界面活性剤が、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸アミド、ジカルボン酸ジアミド、脂環式イミド、ジアルキルジチオカルバミン酸アンモニウムまたはアルカリ金属塩、ビス−ジアルキルジチオカルバミン酸2価金属塩、トリス−ジアルキルジチオカルバミン酸3価金属塩、テトラアルキルチウラムジスルフィド、およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる、請求項13の方法。
【請求項24】
アルキルアミン、ジアルキルアミン、およびトリアルキルアミンが、式
R1R2R3N
(式中、R1、R2、およびR3は独立に、水素、直鎖または分枝鎖C1〜C28アルキル、C6〜C34アルキルアリール、およびアリールからなる群から選ばれる)
を有するものである、請求項23の方法。
【請求項25】
カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸アミド、およびジカルボン酸ジアミドが、式
【化7】


(式中、XはOH、NH2、NHR4、またはNR4R4であり、そしてR4は炭素原子数1〜40の直鎖または分枝鎖の飽和または部分不飽和アルキル成分である)
を有するものである、請求項23の方法。
【請求項26】
脂環式イミドが、式
【化8】


(式中、R5は、水素、(C=O)NHR7、および窒素の対(複数)がアルキレン基によって結合されているアルキレンアミンからなる群から選ばれ;R6は、水素、および直鎖または分枝鎖(C2〜C400)アルキルからなる群から選ばれ;そしてR7はHまたは(C1〜C20)アルキルである)
を有するものである、請求項23の方法。
【請求項27】
ジアルキルジチオカルバミン酸アルカリ金属塩が、式
【化9】


(式中、R8およびR9は独立に、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+はNa+、K+、またはNH4+である)
を有するものである、請求項23の方法。
【請求項28】
ビス−ジアルキルジチオカルバミン酸2価金属塩が、式
【化10】


(式中、R8およびR9は独立に、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+2はFe+2、Zn+2、Pb+2、またはCu+2である)
を有するものである、請求項23の方法。
【請求項29】
トリス−ジアルキルジチオカルバミン酸3価金属塩が、式
【化11】


(式中、R8およびR9は、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれ、そしてM+3はSb+3またはBi+3である)
を有するものである、請求項23の方法。
【請求項30】
チウラムジスルフィドが、式
【化12】


(式中、R8およびR9は独立に、(C1〜C24)アルキルからなる群から選ばれる)
を有するものである、請求項23の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−256684(P2009−256684A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181191(P2009−181191)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【分割の表示】特願2002−502049(P2002−502049)の分割
【原出願日】平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願人】(505365356)ケムチュア コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】