説明

硬化性シリコーン組成物およびその製造方法

【課題】高分子量であっても迅速に輻射線硬化されるシリコーン組成物を提供する。
【解決手段】フルオロシラン停止剤を、非ヒドロキシル性溶剤中におけるリビングポリマーシロキサノレート溶液と反応させて、式、


で表わされるシロキサンマクロモノマーを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、シリコーンエラストマーおよびシリコーン感圧接着剤(PSA)並びにこれを製造するための組成物に関する。本出願はまた、シリコーンPSA被覆シート物質、アニオンシロキサン重合における停止剤として有用なフルオロシラン化合物およびそれらの製造並びにシロキサン巨大分子モノマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエラストマーおよび感圧接着剤は、それらの化学的不活性および耐候性に関して公知である。他の特徴には、低温度でのエラストマー性の保留、熱分解に対する耐性、高められた温度での良好な機械的性質の保留、低誘電率、および低エネルギー表面に対するすぐれた感圧接着性が含まれる。従って、これらの物質は要求される工業的用途に十分に適しており、かつ、電気および宇宙産業に広い用途が見出されている。
【0003】
シリコーンエラストマーは、伝統的に、高分子量ポリオルガノシロキサンのガム、充填剤、加工助剤および過酸化物硬化剤を配合することによって製造されてきた。得られた組成物を次いで、使用する過酸化物によって約150〜約250℃のような高められた温度で硬化させる。かような高温度加硫性エラストマーの欠点には、高分子量ガムおよびシリカの加工または混練の困難さ、高温度要求および時々さらに高圧力の必要性が含まれる。シリコーンPSAも同様に製造されるが充填剤の代りにMQ粘着付与樹脂が使用される。しかし、シリコーンPSAのこの製造方法に関しては幾つかの主要欠点がある。第一に、加工適性改良のために混合物を溶剤を使用して適用しなければならない。このために乾燥炉および汚染防止装置を必要とし、かつ、厚いフィルムでは気泡または欠陥なしで溶剤を迅速に除去することが困難なことにより被覆厚さが限定される。第二に、高められた温度での硬化は、十分に熱安定性のない多数の基材を使用することができない。最後に、硬化は熱処理後に数日または数週間可変的に継続し、そのため架橋密度を増加させる。このことは熟成によって剥離接着力および粘着性の減少を示すシリコーンPSAの特にやっかいな問題である。室温加硫性(RTV)エラストマーが開発されたが、一般に完全硬化を得るためには長い硬化時間を要し、または劣った性質を有する。従って、適度の温度で迅速に硬化して良好、かつ、安定な性質を有するエラストマーまたはPSAになる良好な加工適性を有する無溶剤シリコーン組成物に対して当業界における認識された要望が存在する(例えばU.S.4,675,346を参照)。
【0004】
当業界における作業者は、輻射線硬化を上記の不利な点を克服する手段であると考えており、適度の温度で化学線で硬化できるように種々な方法でシリコーンガムを官能化してきた。このことは、U.S.P.Nos.4,369,300(Carter等)、4,563,539(Gornowicz等)および4,605,712(Mueller等)並びにYu等J.Appl.Polym.Sci30、2115(1985)に開示されているように低分子量ガム(硬化して架橋結合間に低分子量を生成するガム)に成功裡に応用されている。しかし、これらの低分子量ガムの硬化によって得られた物質は、高い架橋密度を有し、従って、良好なエラストマー性を有しない。MQシリコーン樹脂およびカチオン光開始剤と混合したエポキシ官能性シリコーンポリマー(ある範囲の分子量から選定した)から誘導された紫外線硬化性シリコーンPSAを記載しているU.S.4,370,358(Hayes等)においても同様な問題が観察されている。低分子量PSAの硬化直後に受け入れられる接着力値を示すが、室温で熟成後に剥離値の大きな低下が起こる。これはカチオン系の典型的問題である硬化が継続している証拠である。最終的に得られる低剥離値は高い架橋密度(架橋結合間の低分子量)および最適でないエラストマー性を反映している。U.S.P.No.4,777,276(Rasmussen等)も、低分子量物質に関するもので、アミノ−、ヒドロキシル−およびチオール−置換ポリオキシアルキレン、ポリアルキレンイミン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリアミド、重合脂肪酸、および少なくとも1個のヒドロキシル、チオールまたは第一もしくは第二アミノ基および約200〜約20,000の分子量を有するポリシロキサンのアクリルアミド−アシルおよびメタクリルアミド−アシル誘導体であるアクリルアミド−およびメタクリルアミド−アシルオリゴマーが開示されている。
【0005】
伝統的な過酸物硬化シリコーンゴムにおいて良好なエラストマー性を得るためには、約200〜約600モノマー単位、すなわち、架橋結合間に約15,000〜約45,000の分子量を有しなくてはならないことは以前から公知であった(Lewis,Rubb.Chem.Tech35、1222〔1962〕)。従って、輻射線硬化性シリコーン系において架橋結合を生ずる官能部位間の分子量を増加させる努力が払われてきた。反応性官能部位間の分子量の増加に伴い、反応性官能基の濃度が稀薄になり、迅速、かつ、完全な硬化の達成が不可能でないまでも困難になることが問題であった。このことは、(メト)アクリレート末端基ポリジメチルシロキサンの分子量が1,700〜5,000から12,000〜28,000に増加するに伴い、必要とする硬化時間が著しく増加し、硬化度(Durometer Shore A硬度によって測定された)が低下することを示す実施例を記載しているU.S.P.No.4,640,940(Jacobine等)にも例証されている。U.S.P.No.4,675,346(Lin等)には、末端アクリル基、少なくとも約10%の強化用ヒュームドシリカ充填剤および光開始剤を有する線状シリコーン樹脂(少なくとも150個のシロキサン単位を有する)を含有するUV硬化性シリコーン組成物が開示されている。この引例では、分子量が増加すると増加するアクリル性機能密度がUV硬化の困難性を増加させ、約50,000分子量以上のシリコーンでは非硬化性組成物になることに言及している。これらの系に関しては、樹脂の低アクリル官能基密度によって周囲温度で化学的遊離基生成剤では全く不可能でないにしても一般に硬化が困難であることがU.S.P.Nos.4,575,545(Nakao等)、および4,575,546(Klemarczyk等)にさらに記述されている。「少なくとも2個の末端アクリレート不飽和およびオルガノシリコーン含有主鎖を有する特徴を中心特徴として有する」物質も、1986年2月5日公告のEP公告No.170219にも記載されている(Dentsply)。
【0006】
硬化適性を改良する試みの一つは、一定のシロキサン単位上に多数の反応基を配置することによって反応性官能価密度を増加させることである。この試みを反映するシリコーン組成物が、U.S.P.Nos.4,503,208(Lin等)、および4,640,940(Jacobine等)、並びにU.S.P.Nos.4,293,397(Sato等)、4,364,809(Sato等)、4,591,608(Okinoshima)および4,603,086(Fujii等)に開示されている。多数基の使用は「モノ官能性」物質を使用するよりある程度硬化速度を向上させるが、報告されている硬化速度は工業的に使用し得る方法として所望される速度よりまだ長い。
【0007】
U.S.P.Nos.4,575,545(Nakao等)および4,575,546(Klemarczyk等)は、アクリレートに富む領域とアクリレートの少ない領域から成るブロックコポリマーを製造することによってUV硬化性シリコーンポリマーの分子量範囲を拡大することを試みている。しかし、これらの物質は製造が困難であり、かつ、比較的高度に架橋されたアクリレートに富むセグメントが硬化シリコーンゴムのエラストマー性に有害となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高分子量であっても迅速、完全、かつ、確実に輻射線硬化されるシリコーン組成物を望む要求が存在する。
【0009】
先行技術の輻射線硬化シリコーンエラストマーに等しいかこれより良好な性質を有する輻射線硬化シリコーンエラストマーに対する要望が存在する。
【0010】
安定な性質を有する輻射線硬化シリコーンPSAに対する要望が存在する。
【0011】
改良された粘着性を有するシリコーンPSAおよび制御された機械的性質を有するシリコーンエラストマーに対する要望が存在する。
【0012】
発明者等は、反応性であるのに加えて、分子間水素結合も可能な末端基を有するポリシロキサンを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって、輻射線を照射することにより迅速、完全、かつ、確実に硬化して良好そしてある場合には安定および制御可能な改良された性質を有するシリコーンエラストマーおよびPSAが得られるシリコーン組成物が提供される。オルガノポリシロキサンは高分子量でも迅速かつ完全に硬化し、それによって先行技術の輻射線硬化系の分子量限界を克服できる末端官能性を含有するように化学的に希望通りに製造できた。すなわち、本発明の重要な特徴は、エチレン状不飽和を含有(遊離基重合できるように)するのみならず、これに加えて水素結合供与体および受容体能力の両者を有する末端基の利用である。かような基の使用によって性質の安定性に関する先行技術の問題を克服し、厚いフィルムの均一硬化が得られるように迅速かつ完全硬化が可能になる。かような基は、さらに架橋密度の慎重な調整が可能であり、従来は達成できなかったエラストマーおよびPSAの性質を制御することができる。本発明のシリコーン組成物の他の利点には、製造の容易さ、加工の容易さ(これは溶剤の必要性を減少または無くする)および輻射線硬化系として、熱に敏感な基材に対して損傷を与えずに硬化させる能力が含まれる。
【0014】
さらに特別には、本発明によって、次の一般式:
【化1】

(式中、Xはエチレン状不飽和を有する基であり;
Yは二価結合基であり;
mは0〜1の整数であり;
Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれ;
Rは二価炭化水素基であり;R1はアルキル、置換アルキル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
2はアルキル、置換アルキル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
3はアルキル、置換アルキル、ビニル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
4はアルキル、置換アルキル、ビニル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;そして
nは約270〜約1000の整数である)
を有するオルガノポリシロキサンポリマーまたはオルガノポリシロキサンポリマー混合物から成る輻射線によって硬化してエラストマーになるシリコーン組成物が提供される。
【0015】
本発明によって、上記の組成物および使用温度で接着粘着性を有する硬化組成物を付与するのに十分な粘着付与剤から成る硬化して感圧接着剤(PSA)になる組成物も提供される。
【0016】
硬化して本発明のエラストマーになるシリコーン組成物および硬化して本発明のPSAになるシリコーン組成物は、式
【化2】

(式中、pは約35〜約270の整数であり;そしてX,Y,m,D,R,R1,R2およびR4は上記の定義と同じである)を有する低分子量オルガノポリシロキサンポリマーまたは低分子量オルガノポリシロキサンポリマーの混合物、下記の式IXによって表わされるモノ官能性シロキサン巨大分子モノマー、すなわち、マクロモノマーまたは両者の組合せを追加として含むことができる。組成物は、該組成物の重合を開始させるのに十分な量の遊離開始剤をさらに含むことができ、かつ、これらは充填剤も含有できる。
【0017】
下記に記載のように、組成物の硬化物質およびPSA被覆シートが新規のモノアミノアルキル−末端オルガノシロキサンおよびその製造方法、アニオンシロキサン重合における停止剤として有用な新規のフルオロシラン化合物およびマクロモノマーおよびフルオロシラン化合物製造方法として提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のシリコーン組成物は、式Iによって表わされる。好ましいオルガノポリシロキサンの例は、Xが
【化3】

から成り;Yが
【化4】

から成り;m=1;D=H;Rが−CH2CH2CH2−から成り;そしてR1,R2,R3およびR4の各々が−CH3から成る式Iのオルガノポリシロキサンから成る。
【0019】
他の好ましいオルガノポリシロキサンは、XがCH2=CH−から成り;Yが
【化5】

から成り;m=1,D=H;Rが−CH2CH2CH2−から成り;そしてR1,R2,R3およびR4の各々が−CH3から成る式Iのオルガノポリシロキサンから成る。
【0020】
他の好ましいオルガノポリシロキサンは、XがCH2=CH−から成り;m=0,D=H,Rが−CH2CH2CH2−から成り;そしてR1,R2,R3およびR4の各々が−CH3から成る式Iのオルガノポリシロキサンから成る。
【0021】
本発明のシリコーン組成物は、一般式
【化6】

(式中、n,R,R1,R2,R3,R4およびDは上記の定義と同じである)によって表わされるオルガノポリシロキサンジアミンとエチレン状不飽和、Xを有する求電子性物質およびオルガノポリシロキサンジアミンと反応すると末端X基のみならずアミド、尿素、またはウレタン部分を生成する他の官能性とを反応させることによって製造できる上記式Iによって表わされる末端二官能性、すなわち、テレヘリック(telechelic)シリコーンを含む。かような求電子性化合物に要求される官能性の種類の例には、ジアミンと反応するとアミド部分を生成する酸ハライド、酸無水物および環状無水物(アズラクトンのような)、および尿素部分を生成するイソシアネートが含まれる。
【0022】
好ましくは、Xは
【化7】

(式中、R5は水素および−COOHから成る群から選ばれ、R6は水素、メチルおよび−CH2COOHから成る群から選ばれる)から成る。最も好ましくは、R5が水素から成り、R6が水素およびメチルから成る群から選ばれる。反応は約−10℃〜約50℃の温度および大気圧下で、適切に混合しながらジアミンと求電子性物質とを一緒にすることによって行うことができる。必ずしも必要ないが非反応性有機溶剤を稀釈剤として使用できる、そして2種の反応体は任意の順序で反応容器に装入できる。あるいはまた、上記の式IIによるオルガノポリシロキサンをジイソシアネートのような2個の求電性基を含有する化合物(またはホスゲンのような化合物)と最初に反応させ、得られた生成物を第2工程においてアミンまたはアルコールのような求核性試薬と反応させて式Iによる末端二官能性シリコーンを得ることもできる。ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレートのようなアルコールを使用するときは、生成物のオルガノポリシロキサンはウレタン部分を含有する。
【0023】
本発明のテレヘリックシリコーンの製造において有用なオルガノポリシロキサンジアミンは、種々の方法で製造できる。第1方法においては、一般式、
【化8】

(式中、R3,R4およびnは上記の定義と同じである)によって表わされるような両鎖端がヒドロキシ基を末端とするオルガノポリシロキサンを一般式、
【化9】

(式中D,R,R1およびR2は上記の定義と同じであり、Qはヒドロキシ基または加水分解性基である)によって表わされる化合物とを縮合させることができる。第2の方法には、一般式、
【化10】

(式中、R3およびR4は上記の定義と同じであり、kは3〜8の正の整数である)によって表わされる環状オルガノシロキサンと、一般式、
【化11】

(式中、D,R,R1およびR2は上記の定義と同じである)によって表わされるアミン官能性末端封鎖剤とを、水酸化テトラメチルアンモニウムまたはトリオルガノシラノレートのような塩基性触媒の存在下での反応が含まれる。第2の方法の変法である第3の方法は好ましく、かつ、一般式、
【化12】

(式中、D,R,R1およびR2は上記の定義と同じであり、M+はK+,Na+およびテトラオルガノアンモニウムイオンから成る群から選ばれるカチオンであり、N(CH34+が好ましい)によって表わされる本質的に無水のアミノアルキル官能性シラノレート触媒の最小量を使用する2段階で反応を行う方法である。反応の第1段階において、一般式、
【化13】

(式中、D,R,R1,R2,R3およびR4は、上記の定義と同じであり、xは約4〜約40の整数である)によって表わされる低分子量オルガノシロキサンジアミンを、上記の式VIによって表わされるアミン官能性ジシロキサン末端封鎖剤と式Vによって表わされる環状オルガノシロキサンとを式VIIによって表わされる本質的に無水のアミノアルキル官能性シラノレートの触媒量の存在下、窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気中において反応させることによって製造する。この反応に使用するのに好ましい触媒は、1モル当量の1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンと2モル当量の水酸化テトラブチルアンモニウム5水化物とを還流下でテトラヒドロフラン中において反応させ、次いで真空下(0.1mm)、60℃で5時間乾燥させることによって結晶性固体として得られる3−アミノプロピルジメチルテトラメチルアンモニウムシラノレートである。使用する触媒の量は、得られるオルガノシロキサンジアミンの約0.05重量%未満、好ましくは約0.005〜約0.03重量%である。反応は80〜90℃の温度で正味で行うことができ、かつ、これらの条件下で気相クロマトグラフィーによって反応混合物の末端封鎖剤の実質的に完全消失によって判断されるように約0.5〜2時間で通常完了する。反応の第2段階には、所望の分子量を得るために必要とされる残余の環状オルガノシロキサンの徐々の添加が含まれる。この添加は、環状オルガノシロキサンが添加されるとできるだけ速かに順次ポリマーに配合されるような速度、通常80〜90℃の反応温度で約5〜7時間内に滴下で行うのが好ましい。本質的に無水の触媒の最小量を使用するこの2段階法を利用することによって、上記の式IIによって表わされるオルガノポリシロキサンジアミンは、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン汚染物からの汚染物を殆ど含まないすぐれた二官能性を有する物質が一貫して製造できる。
【0024】
本発明のテレヘリックシリコーンの製造に使用するのに好ましいオルガノポリシロキサンジアミンは、nが約300〜約700の整数であり、Rが1〜約12炭素原子のアルキレン、アルキルアリーレンおよびアリーレンから成る群から独立に選ばれ、R2およびR3が、1〜約12炭素原子のアルキル、アリールおよび置換アリールから成る群から独立に選ばれ、R3およびR4が少なくとも50%がメチルであり、残余が2〜約12炭素原子のアルキル、2〜約12炭素原子の置換アルキル、ビニル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれ、そしてDが水素であるオルガノポリシロキサンジアミンである。かような分子量範囲で、PSA組成物における最良のバランスが得られる。ポリジメチルシロキサンが最も入手し易く、最も不活性であり、かつ、低エネルギー表面に対して最大の接着力が得られるので、Rが1〜約12炭素原子のアルキレンであり、そして、R1,R2,R3およびR4がメチルであるのが最も好ましい。
【0025】
オルガノポリシロキサンジアミンと反応して本発明のテレヘリックシリコーンを生成するのに適している求電子性物質の例には、これらに限定されないが、イソシアナトエチルメタクリレート、ビニルジメチルアズラクトンおよびイソプロペニルジメチルアズラクトンのようなアルケニルアズラクトン、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートおよびアクリロイルエチル炭酸無水物が含まれる。イソシアナトエチルメタクリレートのような数種の求電子性物質は商用として入手でき、そして他のものは文献の方法によって製造できる。アルケニルアズラクトンおよびそれらの製法は、U.S.P.No.4,777,276(Rasmussen等)に記載されている。Rasmussenによれば、アズラクトンの合成は、(a)Y.Iwakura,F.Toda.およびY.Torii,Tetrahedron,23,3363(1967);(b)K.Hubner,F.Kollinsky,G.MardertおよびH.Pennewise,Angew,Makromol.Chem.11,109(1970);(c)L.D.TaylonおよびT.E.Platt,J.Polym.Sci.Polym.Letters Edit.,7,597,(1969);特に5員環に関して、2−アルケニル−1,3−オキサゾリン−5−オンが文献に完全に論議されている。典型的には、2−アミノ酪酸のようなアミノ酸を塩基(水性水酸化ナトリウムのような)の存在下でアシル化剤〔(メト)アクリロイルクロライドまたは(メト)アクリル酸無水物のような〕とを反応させてアシル化アミノ酸を生成させる。次に、アズラクトンへの環化は、脱水剤(例えば、無水酢酸、エチルクロロホルメートまたはジシクロヘキシルカーボジイミド)の存在下で行なわれる。アクリロイルエチル炭酸無水物は、BullChemSocJapan41(10),2521(1968)に記載のR.HatadaおよびH.Kondoの方法によってエチルクロロホルメートとアクリル酸とから製造できる。Hatadaによるアクリロイルエチル炭酸無水物の製造を実施例に示す。好ましい求電子性物質には、イソシアナトエチルメタクリレート、ビニルジメチルアズラクトンおよびアクリロイルエチル炭酸無水物が含まれる。
【0026】
本発明のシリコーン組成物は、それらの粘度によって、被覆、押出または注入でき、そして電子ビーム、可視光線または紫外線によって迅速、完全、かつ、確実に硬化させ(高分子量であっても)てエラストマーにすることができる。硬化はできる限り窒素ガスのような不活性雰囲気中のような無酸素環境で行うか、低酸素透過率を有する輻射線透明物質の障壁を利用して行うべきである。硬化は水のような不活性流体下で行うこともできる。硬化に可視光線または紫外線を使用する場合には、シリコーン組成物は光開始剤も含有させる。好適な光開始剤には、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、およびその誘導体、アセトフェノン誘導体、カンファーキノンなどが含まれる。光開始剤は、一般に、全重合性組成物の約0.1〜約5重量%の濃度で使用され、硬化が不活性液体下で行なわれる場合には、シリコーン組成物からの開始剤の浸出を避けるために使用する光開始剤で液体を飽和させるのが好ましい。これらの物質で観察される迅速な硬化によって、先行技術に比較して非常に低い濃度の光開始剤の使用が可能になり、輻射線の比較的深い透過により厚い部分の均一な硬化が得られる。所望ならば、本発明のシリコーン組成物は熱によっても硬化できる、この場合には一般に、全重合性組成物の約1〜約5重量%の濃度で過酸化物、アゾ化合物または過硫酸塩のような熱開始剤の使用が必要である。使用される任意の開始剤(熱または光開始剤)は溶剤を使用することなくシリコーン組成物自体に可溶性であることが好ましい。液体開始剤が特に好ましい。
【0027】
本発明の輻射線硬化性シリコーン感圧接着剤は、上記の式Iによって表わされる1種以上のテレヘリックシリコーンを、使用温度で硬化組成物にある程度の接着粘着性を付与するのに十分な量、例えば室温で100重量部のシリコーン当り約80〜約150重量部の好ましくはシリコーンMQ粘着付与樹脂である粘着付与剤を混合することによって製造できる。かような樹脂はU.S.P.No.4,370,358に参照されているように当業界において公知であり、かつ、トルエンまたはキシレンのような溶剤中の約50〜60重量%溶液として商用で入手できる。テレヘリックシリコーンをMQ樹脂溶液に添加し、60〜80重量%のような高固形分組成物にし、これを基材上に被覆し、輻射線(上記のような)に暴露することによって硬化させ、次いで乾燥させて溶剤を除去する。あるいは、乾燥工程を硬化工程に先行させる、すなわち、MQ樹脂溶液とテレヘリックシリコーンとを混合した後に溶剤を除去してもよい、この場合には、被覆または押出し、次いで硬化させることができる100%固形分組成物が得られる。シリコーンPSA組成物の硬化は、開始剤の可溶化を助けるMQ樹脂溶液と共に上記したような輻射線または熱を利用するいずれの適切な開始剤の応用によって行うことができる。乾燥前、すなわち、膨潤状態でのPSAの硬化は、この方法によって比較的良好な粘着性および剥離接着性が得られるため好ましい。本発明のシリコーンエラストマー組成物、すなわち、MQ樹脂を含有しないシリコーン組成物も、特定の用途のために乾燥後に「柔軟な」すなわち、コンプライアント(Compliant)なエラストマーを所望の場合には溶剤の添加によって膨潤状態で硬化させることもできる。膨潤度を変化させることによってPSA特性およびエラストマー特性の制御された変化を得ることができる。
【0028】
膨潤状態における硬化用の希釈剤として、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)およびデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)のような環状シロキサンまたはこれらの混合物のような非極性溶剤が特に有用である。シリコーン組成物はこれらに易溶性であり、これらは遊離基反応条件下では非反応性であり、硬化に使用される輻射エネルギーに対して透明であり、かつ、発明者等は如何なる理論にも拘束されたくないが、本発明の組成物の迅速、確実かつ、完全な硬化の理由と発明者等が考えているシリコーン組成物の極性末端基の凝結体を前記の非極性溶剤が溶媒和によって有意に分離させないからこれらの溶剤は硬化反応を妨害しない。
【0029】
膨潤状態における硬化の方法に加えて、性質の制御された変化は、シリコーンエラストマーまたはPSA組成物中に上記したような低分子量二官能性オルガノシロキサンまたはシリコーンマクロモノマーのようなモノ官能性シロキサン巨大分子モノマーまたは両者を含ませることによって達成できる。
【0030】
添加する物質の性質、分子量および量を変化させることによって所望の性質を得ることができる。低分子量二官能性シリコーンは、上記の方法によって製造できる、比較的高分子量の二官能性シリコーン(必要ならば両者を相溶性にするためにテトラヒドロフランのような極性溶剤を使用して)と混合し、次いで重合させた場合には、改良された引張強さを有するエラストマーおよび減少した剥離接着力および減少した粘着性を有するPSAが得られるように重合組成物の性質を変えるのに役立つ。
【0031】
エラストマーの場合には低分子量二官能性シリコーンの量が組成物の90重量%を超えないことが好ましく、そして、PSAの場合には組成物の80重量%を超えないことが好ましい。低分子量二官能性オルガノポリシロキサンの濃度が高過ぎる場合には、これらの組成物の硬化によって得られる物質は高い架橋密度(架橋結合間の低分子量)を有し、エラストマーの場合には良好なエラストマー性を有せず、PSAの場合には、良好な粘着性および剥離接着性を与える十分なコンプライアンスに欠ける。下記の式IXで表わされ、式中のqが0〜1の整数であり、sが1〜3の整数であり、rが約35〜約700の整数であり、R7がアルキル、置換アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じか異ってもよい一価部分であり、X,Y,m,D,R,R2,R3およびR4が上記の定義と同じであるシリコーンマクロモノマーの共重合によって、増加された粘着性、すなわち、改良された「フィンガー アピール」(finger appeal)を有するPSAまたは増加されたコンプライアンスを有するエラストマーが生成される。
【0032】
エラストマーの場合には、シリコーンマクロモノマーの量は組成物の約90重量%を超えないことが好ましく、PSAの場合には組成物の約80重量%を超えないことが好ましい。シリコーンマクロモノマーの濃度が高すぎる場合には、これらの組成物の硬化によって得られる物質は低い架橋結合密度(不完全な網状構造形成)を有し、比較的低い引張強さを有するエラストマーおよび低い剪断強さを有するPSAが得られる。これらの組成物の硬化によって得られる物質の性質を制御可能なように変化させるために、シリコーンマクロモノマーと組合せて低分子量二官能性オルガノポリシロキサンが使用できる。この場合には、本発明の高分子量二官能性ポリオルガノシロキサンは、組成物の少なくとも約10重量%を構成し、低分子量二官能性ポリシロキサンおよびシリコーンマクロモノマーが組成物の約90重量%まで独立に含まれる。この範囲内に含まれる組成物の硬化によって得られる物質は、エラストマーとしては最良のエラストマー性能(引張および伸び)およびPSAとしては最良のPSA性能(粘着性、剪断強さ、および剥離接着力)を有する。
【化14】

メタクリルオキシプロピル−末端ポリジメチルシロキサンのような上記に示したアミド基を含有しない、q=0であるシリコーンマクロモノマーは、使用できるが低い共重合適性のため好ましくない。シリコーンマクロモノマーは、U.S.P.No.4,728,571(Clemens等)に記載のようにアニオン重合によって製造できる。Clemensによれば、マクロモノマーの製法にはヘキサメチルシクロトリシロキサンモノマー(D3)をアニオン重合させ、制御可能な分子量のリビングポリマーを形成し、重合性ビニル基を含有するクロロシラン化合物による停止が含まれる。モノ官能性シロキサンマクロモノマーと、メチルメタクリレートまたはスチレンのようなビニルモノマーとの遊離基共重合によって、十分に確立した構造:すなわち、グラフトシロキサン分枝の制御された長さおよび数を有するシロキサングラフトコポリマーが得られる。
【0033】
上記のアニオン重合における使用に適している好適なモノマーは、一般に式、
【化15】

(式中、R3およびR4は前記の定義と同じであり、tは3〜7の整数である)のジオルガノシクロシロキサンである。好ましいのは、tが3または4であり、R3およびR4の両者がメチルである環状シロキサンであり、これらの環状シロキサンを以後それぞれD3およびD4と呼ぶ。歪んだ環構造を有するD3が特に好ましい。
【0034】
アニオン重合の開始剤は、モノ官能性リビングポリマーが得られるように選択する。好適な開始剤には、アルキルまたはアリール基中に20炭素原子までまたはそれ以上、好ましくは8炭素原子までを含有するアルキルまたはアリールリチウム、ナトリウムまたはカリウム化合物のようなアルカリ金属炭化水素である。かような化合物の例は、エチルナトリウム、プロピルナトリウム、フェニルナトリウム、ブチルカリウム、オクチルカリウム、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、および2−エチルヘキシルリチウムである。開始剤としてリチウム化合物が好ましい。アルカリ金属アルコキシド、水酸化物およびアミド並びに式
【化16】

(式中、Mはアルカリ金属、テトラアルキルアンモニウムまたはテトラアルキルホスホニウムカチオンであり、R3,R4およびR7は前記の定義と同じである)のトリオルガノシラノレートも同様に好ましい。好ましいトリオルガノシラノレート開始剤は、リチウムトリメチルシラノレート(LTMS)である。一般に、歪んだ環状モノマーおよびリチウムの開始剤の両者の好ましい利用は、起こり得る再分布反応を減少させそれによって望ましくない環状オリゴマーを合理的に含まない狭い分子量分布のシロキサンマクロモノマーが得られる。
【0035】
分子量は開始剤/環状モノマー比によって決定される、従って、開始剤の量はモノマー1モル当り約0.004〜約0.2モルの有機金属開始剤と変化できる。好ましくはこの量は、モノマー1モル当り約0.008〜約0.04モルの開始剤であろう。
【0036】
アニオン重合の開始のためには不活性な、好ましくは極性有機溶剤が使用できる。リチウム対イオンによるアニオン重合生長反応には、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホオキサイド、もしくはヘキサメチル−燐トリアミドのような強極性溶剤またはかような極性溶剤とヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンもしくはトルエンのような非極性脂肪族、脂環式もしくは芳香族炭化水素溶剤との混合物のいずれかが必要である、極性溶剤は、生長反応を可能にするシラノレートイオンを「活性化」する役目をする。
【0037】
一般に、重合は約−20℃〜約100℃、好ましくは約−10℃〜約30℃の温度範囲で行うことができる。無水条件および窒素、ヘリウムまたはアルゴンのような不活性雰囲気を必要とする。
【0038】
アニオン重合の停止は、一般に、リビングポリマーアニオンと官能化クロロシランのようなハロゲン含有停止剤との直接反応によりビニル末端重合体モノマーを生成させることによって行なわれる。かような停止剤は、一般式、
【化17】

(式中、sは1,2または3であり、q,X,Y,m,DおよびRは前記の定義と同じである)によって表わすことができる。好ましい停止剤は、メタクリロキシプロピルジメチルクロロシランである。停止反応は重合温度でわずかにモル過剰の停止剤(開始剤の量に関して)をリビングポリマーに添加することによって行なわれる。Y.Yamashita等による前記の論文によれば、マクロモノマーの官能性を増加させるために停止剤添加後に反応混合物を超音波によって照射することができる。マクロモノマーの精製は、メタノール中での沈澱によって行うことができる。
【0039】
製造のこの「伝統的」方法には、アニオン重合の停止のための官能化されたクロロシランの使用が含まれる。かようなクロロシラン停止剤は湿分に対して極めて敏感であり、従って、貯蔵および輸送の間に加水分解して二官能性ジシロキサンになり得る。シリコーンマクロモノマー中におけるこの型の不純物の存在は、その後の遊離基重合において過度の架橋を起こし、コンプライアンスが失なわれる。しかし、官能化フルオロシランを製造することができ、かようなフルオロシランがシリコーンマクロモノマーの製造用の停止剤として有効に利用できることが見出された。フルオロシランは中性または酸性条件下で加水分解に対して全く安定であるから、このマクロモノマーの製法は好ましい。一般式、
【化18】

(式中、Xはエチレン状不飽和を有する一価部分であり;
Yは二価結合基であり;
mは0〜1の整数であり;
Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;
qは0〜1の整数であり;
Rは二価炭化水素基であり;
2はアルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;
sは1〜3の整数である)によるフルオロシラン停止剤が上記の停止剤と同様に有用である。上記の式の新規の化合物に次の事項:
q=0およびm=1のときは、RはC3〜C12アルキレンから成り、R2はメチルから成る;
q=0およびm=0のときは、Rはアルキレンから成る
があてはまる化合物が含まれる。
【0040】
式、
【化19】

(式中、Xはエチレン状不飽和を有する一価部分であり;
Yは二価結合基であり;
mは0〜1の整数であり;
Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;
qは0〜1の整数であり;
Rは二価炭化水素基であり;R2はアルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;そして
sは1〜3の整数である)の化合物は、ハロゲン−置換シラン、窒素−置換シランおよび酸素−置換シランから成る群から選ばれるシランと、イソプロピルアルコール、2−ブタノンまたはテトラヒドロフランのような好適な非反応性溶剤とを一緒にして溶液を形成することによって製造できる。所望により、炭化水素溶剤のような他の非反応性溶剤と組合せた水混和性溶剤の使用は、酸性弗化物薬剤とシラン出発物質とを均一化して迅速、かつ、完全な生成物への転化に役立つ。かように形成した溶液を、弗化水素酸、二弗化カリウム、弗化アンモニウムなどのような酸性弗化物薬剤の少なくとも約1モル当量、好ましくは約5%モル過剰と一緒にすることによって処理して式Xの化合物の溶液を形成する。次いで、好ましくはこの溶液を少なくとも約2倍の水で希釈し、該溶液を水不溶性有機溶剤で抽出する。好適な水不溶性有機溶剤には、エチルアセテート、メチレンクロライド、ジエチルエーテルなどが含まれる。抽出物を次いで蒸発させて式Xの化合物を得る。この方法では、フルオロシランの本質的に定量的収率が得られ、これを蒸留または再結晶のような慣用方法によって精製できる。上記の置換シランのあるもの、例えばメタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびビス(メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサンは商用として入手できる。他のものも、例えばビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンとイソシアナトエチルメタクリレートまたはビニルジメチルアズラクトンのような求電子性物質との反応によって容易に製造できる。Clemens等に記載されているように、フルオロシラン停止剤の好ましくは少なくとも約1当量をテトラヒドロフランのような非水酸化物溶剤中において好ましくは約25°〜約100℃の温度でリビングポリマーシロキサノレートの溶液に添加することによって上記の式IXのシリコーンマクロモノマーの製造に使用できる。次に、マクロモノマーの精製は、メタノール中での沈澱によって行うことができる。
【0041】
好ましいフルオロシラン停止剤は、
Xが
【化20】

から成り;
Yが
【化21】

から成り;q=0;m=1;s=1;Rが−CH2CH2CH2−から成り、そしてR2が−CH3から成る式Xのフルオロシラン停止剤から成る。
【0042】
他の好ましいフルオロシラン停止剤は、
XがCH2=CH−から成り;
m=1;
Yが
【化22】

から成り;
q=1;D=H;Rが−CH2CH2CH2−から成り;s=1そしてR2が−CH3から成る式Xのフルオロシラン停止剤から成る。
【0043】
他の好ましいフルオロシラン停止剤は、
Xが
【化23】

から成り;
m=1;
Yが
【化24】

から成り
q=1;D=H;Rが−CH2CH2CH2−から成り、R2が−CH3から成り;そしてs=1である式Xのフルオロシラン停止剤である。
【0044】
式XI
【化25】

(式中、D,Rおよびsは上記の定義と同じである)によって表わされるアミン−置換フルオロシラン停止剤も使用できる。
【0045】
式、
【化26】

(式中、D,R,R2およびsは上記の定義と同じである)は、最初に酸素−置換シランとシクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、クロロホルムなどのような好適な溶剤とを一緒にして溶液を形成する幾分異なった方法で製造される。かような水に不混和性溶剤の使用によって、反応において形成される水の連続的な共沸蒸留除去および分離が可能である。かように形成した溶液を少なくとも1モル当量、好ましくは少なくとも約5%モル過剰の、弗化水素酸、弗化水素カリウム、弗化アンモニウムなど、好ましくは弗化アンモニウムのような酸性弗化物反応体と一緒にすることによって形成される。この方法によってアミンハイドロフルオライド置換フルオロシランが得られ、次いでこれは好適な溶剤中においてモノ置換またはジ置換低級アルキルアミノシランおよびヘキサメチルジシラザン、好ましくはヘキサメチルジシラザンから成る群から選ばれる化合物の約1%モル過剰〜5%モル過剰と共に加熱することによって遊離アミンに転化できる。モノ置換またはジ置換低級アルキルアミノシランは1または2個の低級アルキル基を含有できる。好ましくは各低級アルキル基は1〜約4個の炭素原子を独立に含む。アミン−置換フルオロシランは、減圧下での溶剤の蒸発および生成物の蒸留によって単離できる。
【0046】
好ましいフルオロシラン停止剤の例は、D=H;Rが−CH2CH2CH2−から成り、そしてs=1である式XIのフルオロシラン停止剤から成る。
【0047】
この好ましい停止剤は、1,3−ビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンと、約75°〜約85℃の沸点範囲を有する炭化水素溶剤とを一緒にし、溶液を形成することによって製造できる。好適な炭化水素溶剤には、シクロヘキサン、ベンゼン、ヘプタンなどが含まれる。かように形成した溶液を、弗化水素酸、弗化水素カリウム、弗化アンモニウム、好ましくは弗化アンモニウムのような酸性弗化物反応体の少なくとも約1モル当量、好ましくは少なくとも約5%モル過剰と一緒にすることにより反応させ、水の共沸蒸留除去する。これによってアミンハイドロフルオライド置換フルオロシランが結晶性弗化水素酸塩沈澱として単離され、次いでこれをメチレンクロライドのような約35〜50℃の沸点範囲を有する水と不混和性溶剤中において塩のスラリーを、モノ置換またはジ置換低級アルキルアミノシランおよびヘキサメチルジシラザンから成る群から選ばれる化合物の約1%モル過剰〜約5%モル過剰と共に加熱することによって遊離アミンに転化できる。アミン置換フルオロシランは、減圧下での溶剤の蒸留および生成物の蒸留によって溶剤から分離できる。
【0048】
得られたアミン置換フルオロシラン生成物は、密閉容器中に貯蔵して大気湿度から保護すべきであり、そしてClemens等に記載のように、テトラヒドロフランのような好適な非ヒドロキシル溶剤中において好ましくは約25°〜約100℃の温度範囲で好ましくは約1モル当量のフルオロシラン停止剤をリビングポリマーシロキサノレートの溶液に添加することによって、下記の式XII、
【化27】

(式中、D,R,R2,s,R3,R4およびR7は前記の定義と同じであり、rは約5〜約1000の整数である)による新規のモノアミノアルキル末端オルガノポリシランの製造に使用できる。本発明のシリコーンエラストマーおよびPSA組成物において有用な上記の式IXによるシリコーンマクロモノマーは、式XIIのモノアミノアルキル末端オルガノポリシロキサンとイソシアナトエチルメタクリレートまたはビニルジメチルアズラクトンのような上記した求電子性物質との反応によって製造できる。
【0049】
硬化してエラストマーになる本発明のシリコーン組成物は、窒素のような不活性気体を使用して発泡させて発泡体を製造することができ、そして、全組成物の約50重量%までのような特定の用途に必要な程度に強化するのに十分な量のシリカ充填剤を含ませることができる。本発明のシリコーンPSA組成物も、全組成物の約10〜15重量%までの量でPSA特性の改良用にシリカ充填剤を含有させることができる。疎水性または親水性シリカのいずれかを使用できるが、疎水性シリカがポリシロキサンと水素結合を「構成する」傾向が少なく、硬化前に粘弾性塊を形成するため好ましい。かような構造化は成形および押出の通常の加工作業を妨害する、(「Silicone Elastomers」、Encycropedia of Polymer Science and Engineering、1989、Vol 15,271〜308における充填剤に関する論議を参照されたい)。顔料・染料、石英粉末、ガラス繊維、炭酸カルシウム、難燃剤、熱安定剤、重合防止剤、可塑剤、接着促進剤などのような他の一般的な非共重合性添加剤も含ませることができる。
【0050】
本発明のシリコーン組成物は、それらの粘度によってロールコーティング、ナイフコーティングまたはカーテンコーティングのような任意の各種の慣用被覆法によって被覆でき、または押出すことができる。シリコーンPSA組成物は、好適な可撓性または非可撓性バッキング物質の少なくとも主要表面一つの少なくとも一部に適用し、硬化させてPSA被覆シート物質にすることができる。有用な可撓性バッキング物質には、紙、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレン)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリエステル〔ポリ(エチレンテレフタレート)のような〕、DuPontのKaptonTMのようなポリイミドフィルムのようなプラスチックフィルム、セルロースアセテートおよびエチルセルロースが含まれる。バッキングは綿、ナイロン、レーヨン、ガラスまたはセラミック物質のような合成または天然物質の糸から形成した織布または天然または合成繊維もしくはこれらの混合物の空気形成ウエブのような不織布でもよい。これに加えて、好適なバッキングは金属、金属化ポリマーフィルムまたはセラミックシート物質からも形成できる。PSA被覆シート物質は、ラベル、テープ、転写テープ(少なくとも一つの剥離ライナー上に支持されたPSAフィルムから成る)、標識、カバー、標示見出し、などのようなPSA組成物と共に使用されることが慣用的に公知の任意の物品の形態にすることができる。プライマーも使用できるが、これらは必ずしも必要でない。
【実施例】
【0051】
実施例におけるすべての部およびパーセントは別記しない限り重量で示す。
【0052】
試験方法
実施例のエラストマー及びPSA被覆可撓性シート物質の評価に使用した試験方法は工業標準規格試験である。標準試験は、米国材料試験協会(ASTM)、Philadelphia,Pennsilvania.および感圧接着テープ委員会(PSTC)、Glenview,Ill.の各種の出版物に記載されており、かつ、下記に詳述する。標準規格試験法の引例源も示してある。
【0053】
粘度測定
官能性ポリシロキサンの正味(bulk)粘度は、プログラム温度制御可能なコントローラーを備えたBrookfield Viscometer Model RVTDV−IIを使用して測定した。15gの液体ポリマーをチャンバー中に注ぎ、これをサーモスタット中に置いた。熱平衡に達した後で測定を行った。試料の粘度によってスピンドル#21または27を使用した。データを第1表に示す。
【0054】
機械的性質
機械的試験は、Instron Model 1122引張試験機で行った。試験はASTM D412−83の変法によって行った。試料は方法B(カットリング試料)によって調製した。Type 1リング(円周=5.1cm)を特別設計の精密リングカッターによって製作した。Instronのアナログ出力信号を0.5%以上の精度でデジタルボルトメーターに送り、デジタル読みをコンピューターによって記録した。ASTM法の変法は次の通りであった:
(i) クロスヘッド速度は50.8cm/分ではなく12.7cm/分であった。
(ii)リング全体に均一な歪を維持するために、試験固定シャフト(上部および下部ジョー)の両者は同一方向に30RPMで回転した。
(iii)リングの厚さは0.5mmであった。
【0055】
剪断強さ
引例:ASTM:D3654−78;PSTC−7
剪断強さは、接着剤の凝集性または内部強度の尺度である。これは接着剤ストリップが一定の圧力で固定されている表面に対して平行な方向に標準の平らな表面から引き離すのに要する力の量に基づく。これは一定、標準荷重の応力下でステンレス鋼試験パネルから標準面積の接着剤被覆シート物質を引き離すのに要する時間(分)で測定される。
【0056】
試験は各ストリップの12.7mm×12.7mm部分がテープの一端部分を自由にしてパネルにしっかり接触するようにステンレス鋼パネルに適用した接着剤被覆ストリップで行った。被覆ストリップを接着させたパネルが伸びたテープの自由端と178°の角度を形成するようにパネルをラック中に保持し、次いで被覆ストリップから吊り下げた重りとして適用された1kgの力を加えることによって伸長させた。剥離力をすべて除去するため180°より2°少ない角度を使用し、被検テープの保持力をより正確に測定することを試み剪断強さのみ測定するようにした。各テープ試料が試験パネルから分離するのに要した時間を剪断強さとして記録した。別記しない限り、本明細書に報告したすべての剪断破壊は接着剤の凝集破壊であった。
【0057】
剥離接着力
引例:ASTM D3330−78;PSTC−1(11/75)
剥離接着力は、被覆可撓性物質を特定な角度および除去速度で除去するのに要する力である。実施例においては、この力はデシメーター幅の被覆シート当りのNewton(N/dm)で表わされる。方法は次の通りである:
(i) 12.7cm幅の被覆シートを少なくとも12.7線cmできれいなガラス試験プレートにしっかり接触させて適用した。2kgの硬質ゴムローラをストリップの適用に使用した。
(ii)被覆シートの自由端を除去角度が180°になるように、それ自体が殆んど接触するまで折返した。自由端を接着力試験機スケールに接続させた。
(iii)ガラス試験プレートを、引張試験機のジョーで掴んだ、この試験機はプレートをスケールから2.3m/分の一定速度で移動できる。
(iv)Newtonによるスケールの読みを、テープがガラスプレートから剥離されるに伴って記録した。データは試験間に観測した数の範囲の平均値として報告する。
【0058】
粘着性
引例:ASTM D2979−71
感圧粘着性は、軽い圧力下での簡単な接触後に他の物質の表面に接着する能力の尺度である。実施例においては、この能力を接着剤を100g/cm2の圧力で1秒間接触させた後に1cm/秒の速度で接着剤被覆可撓性シートから標準の直径1/2cmのステンレス鋼プローブを引き離すのに要するgによる力としてPolyken Probe Tack Testerを使用して測定した。報告値は10個の読みの平均である。
略語:PDMS−ポリジメチルシロキサン
MAUS−メタクリロキシ尿素シロキサン
ACMAS−アクリルアミドアミドシロキサン
MACMAS−メタクリルアミドアミドシロキサン
MeStUS−α−メチルスチレン尿素シロキサン
ACMS−アクリルアミドシロキサン
IEM−イソシアナトエチルメタクリレート
VDM−ビニルメチルアズラクトン
IDM−イソプロペニルジメチルアズラクトン
m−TMI−m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート
GMA−グリシジルメタクリレート
【0059】
実施例 1a〜1c
両端がエチレン状不飽和基を末端とする二官能性ポリシロキサンを下記のように製造した。これらは前記のように符号を付し、表においては1a〜1c(MAUS),2a〜2c(ACMAS),3a〜3c(MACMAS),4a〜4c(ACMS),5a〜5c(MeStUS)のように示した。本出願に記載したすべての遊離基重合性シロキサン用の二官能性先駆物質の合成は次の方法によって行った:温度計、機械かく拌機、滴下漏斗および乾燥アルゴン入口を備えた500mlの3つ口丸底フラスコに、3.72gのビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンおよび予め10分間アルゴンパージした18gのオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)を装入した。油浴によってフラスコ内容物を80℃に加熱し、痕跡(約0.03〜0.05g)の触媒−無水3−アミノプロピルジメチルテトラメチルアンモニウムシラノレートをへらによって添加した。反応物を80℃でかく拌し、30分のかく拌後に全く粘稠になった。気相クロマトグラフィーにより、末端封鎖剤が全く消失したことが示された。得られた反応混合物(アミノプロピル末端基を有する分子量1,500のポリシロキサン、環状シロキサン、および活性触媒から成る)を、6時間かけて330gのアルゴンパージD4に滴下添加した後さらに粘度が増加した。反応フラスコ内容物を80℃で一晩加熱を続けた。150℃で1/2時間加熱することによって触媒を分解させ、生成物を140℃、0.1mm圧力で揮発物の留出がなくなるまで(約1 1/2時間)ストリップし、310gの透明、無色粘稠油(理論値の88%収率)を得た。酸滴定によって測定した生成物の分子量は21,200であった。この方法を使用し、但し、末端封鎖剤:D4の比を変化させることによって、35,000〜55,000の分子量を有するシリコーンジアミンを得た。比較例として分子量10,000のシリコーンジアミンもこの方法によって製造した。
【0060】
両末端がメタクリロキシ尿素基を末端とし、約21,000の平均分子量を有するポリジメチルシロキサンを、上記によって製造した200g(0.01モル)のアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンとShowa Rhodiaから商用として入手できる3.1g(0.02モル)のイソシアナトエチルメタクリレート(IEM)とを室温で完全に混合することによって製造した。反応の進行に伴い反応混合物の粘度は増加した。先駆物質の酸滴定によって二官能性ポリシロキサンの数平均分子量を測定し、そしてIEMで封鎖する前および後でのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって確認した。実施例1bおよび1cのポリシロキサンは、それぞれ、35,000および55,000の分子量を有するアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン先駆物質を使用することによって同様に製造した。
【0061】
実施例2a〜2c、3a〜3c、4a〜4c、5a〜5b
実施例1において製造したアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンと、U.S.P.No.4,777,276(Rasmussen等)に記載のように製造したビニルジメチルアズラクトン(VDM)およびイソプロペニルジメチルアズラクトン(IDM)、または商標名m−TMITMとしてCyanamidから入手できるm−イソプロペニル−α,α−ジメチルイソシアネートとを室温で反応させることによって、それぞれ、アクリルアミドアミド(ACMAS、実施例2a〜2c)、メタクリアミドアミド(MACMAS、実施例3a〜3c)およびα−メチルスチリル尿素(MeStUS、実施例4a〜4c)を両末端に有する一連のポリシロキサンを製造した。MW21,000のアクリルアミド官能性シロキサン(ACMS、実施例5a)を、5mlのCH2Cl2中の0.80g(5.5ミリモル)のアクロイルエチル炭酸無水物{R.HatadaおよびH.Kondo,Bull.Chem,Soc,Japan.41(10),2521(1968)の方法によってエチルクロロホルメートおよびアクリル酸から製造した}の溶液に、50.4g(2.5ミリモル)のMW21,000の脱気アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンとを100mlの丸底フラスコ中において窒素下、室温で30分間かく拌し、そしてロータリーエバポレーター上で溶剤を蒸留除去することによって製造した。MW35,000のACM(実施例5b)も同様に製造した。実施例1a〜5bのポリマーの末端基の化学的種類、数平均分子量(最も近い1000位に丸めた)および35℃でのBrook field粘度を第1表に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例 6
アミノアルキルフルオロシラン停止剤の製造
500mlの丸底フラスコに、49.6gの1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、29.6gの弗化アンモニウムおよび300mlのシクロヘキサンを装入した。還流下で加熱の間、Dean−Starkトラップで水を除去した。18時間後に、4.4mlの水が集められ、そして透明、無色溶液を暖かいうちに500mlの1つ口丸底フラスコに移した。ロータリーエバポレーター上で溶剤を除去し、165gの白色固体を得た。これを200mlのメチレンクロライドに溶解させ、30gのヘキサメチルジシラザンを添加し、混合物を還流下でかく拌および加熱した。フラスコを蒸留用に適合させ、溶剤をアスピレーター真空で除去した。生成物をアスピレーター真空で蒸留(b.p=70℃)し、透明、無色油として3−アミノプロピルジメチルフルオロシランを得た。収量は54g(100%)であり、これは気相クロマトグラフィーで純粋であることが測定された。構造はNMR分光分析によって確認した。
【0064】
実施例 7
トリフルオロシラン停止剤の製造
500mlのポリプロピレンビーカーの中の75mlの乾燥テトラヒドロフラン中における22.1gの3−アミノプロピルトリメトキシシランを0〜5℃に冷却し、かく拌しながら13.9gの2−ビニル−5,5−ジメチルアズラクトンを徐々に滴下添加した。反応混合物を15分間かく拌し、75mlのイソプロピルアルコールを添加し、次に、16gの48%水性弗化水素酸を徐々に添加した。混合物を0℃で15分間かく拌し、次いで200mlのH2Oで希釈した。生成物をメチレンクロライドで抽出し、抽出物をMgSO4を使用して乾燥させ、そして、ロータリーエバポレーターで溶剤を除去した。生成物、N−(3−トリフルオロシリルプロピル)−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセトアミドを濃厚な油として得た(23g)。構造はNMRで確認した。
【0065】
実施例 8
メタクリロキシ尿素プロピルジメチルフルオロシラン停止剤の製造
ポリプロピレンビーカー中における55mlの乾燥テトラヒドロフラン中の49.7gの1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンの溶液を0〜5℃に冷却し、そして、かく拌しながら55.6gのイソシアナトエチルメタクリレートを徐々に滴下添加した。反応混合物を1時間かく拌した後に、100mlのイソプロピルアルコールおよび0.12gの防止剤、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを添加し、次いで32gの48%の弗化水素酸を徐々に添加した。混合物を0℃で60分間かく拌し、一晩冷凍し、次いで200mlのH2Oで希釈した。生成物をメチレンクロライドで抽出し、抽出物をMgSO4を使用して乾燥させ、追加の防止剤を添加し、そしてロータリーエバポレーターで溶剤を除去した。生成物は白色結晶性物質として得られた。構造をNMRによって確認した。
【0066】
実施例 9
メタクリロキシプロピルジメチルフルオロシラン停止剤の製造
ドライアイスコンデンサー、添加漏斗、磁気かく拌バーおよび付属温度モニターを有する温度計を備えた250ml 3つ口丸底フラスコ中に、65.3mgのメチレンブルー、31.2g(0.33モル)の新しく蒸留したジメチルクロロシラン(Huls Americaから入手できる)、および50mlのシクロヘキサンを装入した。得られた混合物を加熱ランプで45℃に加熱し、同温度に保持し、その間ジビニルテトラメチルジシロキサン中の38.6mgの15%Pt°(U.S.3,775,425に記載の方法によって調製した)、37.8mg(0.30モル)のアリルメタクリレート(商標名SipomerTMAMとしてAlcolacから入手できる)および25mlのシクロヘキサンを30分間に装入した。添加完了の15分以内に反応物は発熱して70℃になった。水浴による外部冷却によってこの温度50℃に緩和し、1時間以内に45℃に戻した。この時点で、毛細管ガスクロマトグラフィーによる分析によりアリルメタクリレートのハイドロシラン化生成物(3−メタクリロキシプロピルジメチルシリルクロライドおよびその加水分解生成物)への98%の転化を示した。混合物を氷−水浴中において0〜5℃に冷却し、そして5分間かけて25mlのイソプロパノールを滴下添加した。得られた溶液をポリプロピレンビーカーに移し、氷−水浴中で冷却しながら25.7g(0.62モル)の48%水性HFを5分間かけて分割添加した。得られた混合物を50分間かく拌し、この時点で毛細管ガスクロマトグラフィーは反応の完結を示した。30mlの水および25mlのシクロヘキサンでの希釈後に、混合物を分液漏斗に移し、下部の水性層を捨て、そして有機層を30mlの水で2回洗浄した。得られた有機層にt−ブチルハイドロキノン(73.5mg)を添加し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過および30mlのシクロヘキサンでの洗浄後に、68.0mgのフェノチアジンを添加し、そしてアスピレーター真空および32℃でロータリーエバポレーターによって溶剤を除去した。生成物を減圧で1回蒸留し(0.5mmHgでのbp65〜70℃)、1.2gのアリルメタクリレート含有初留の後に45.0g(0.22モル、73%収率)の生成物が得られた。
【0067】
実施例10
アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンの製造
アルゴン下で7.4gのオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)に、n−ブチルリチウム(10ml、2.5M)を添加して、リチウムシラノレート開始剤を形成した。30分間かく拌後に250gの乾燥テトラヒドロフラン中の250gのヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)を添加し、反応物を室温で18時間かく拌した。得られた粘稠なシロップに、3.4gの3−アミノプロピルジメチルフルオロシラン停止剤を添加した。粘度が迅速に減少した。2時間かく拌後に、ロータリーエバポレーター上で溶剤を除去した。生成物を濾過して沸化リチウムを除去し、透明、無色油として250gのシリコーンモノアミンを得た。0.1NHClによる滴定によって、9400の数平均分子量、
【数1】

が示された(理論値
【数2】

=10,000)。
【0068】
実施例11
アクリルアミドアミド−官能性トリ−分枝ポリジメチルシロキサンマクロモノマーの製造
開始剤としてn−ブチルリチウムを使用してD3を重合させることによりMW10,000を有するポリジメチルシロキサンを製造し、そして実施例7に記載のように製造したトリフルオロシラン停止剤と反応させて3−アーム分枝シロキサンマクロモノマーを得た。実施例10に記載のように精製後に無色粘稠油を得た。
【0069】
実施例12a〜12c
光開始剤の存在下で、MAUS液体ゴムのUV照射によって未充填シリコーンエラストマーフィルムを製造した。実施例、1a(21K MAUS)と同様な10gの液体ゴムおよび0.02g(0.2重量%)の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商標名DarocurTM1173としてEM Industries,Inc.から入手できる)を混合した。混合物を脱気し、2枚のポリエステルフィルムの間にナイフ塗布し、0.5mmの被覆厚さを得た。試料を2.6mw/cm2のUV照射(Sylvania Blacklight)に両側を5分間暴露し、そして、シリコーンゴムフィルムをライナーの間から取出した。同様に、実施例1b(実施例12b)および実施例1c(実施例12c)のMAUS液体ゴムから同じ重量のDarocurTM1173を使用してシリコーンゴムを製造した。Instron試験によって測定した機械的性質を第2表に示す。
【0070】
実施例13a〜13c
実施例12a〜12cに述べた方法を使用し、実施例2a〜2cと同様に製造した異なる分子量を有するACMAS液体ゴムのUV硬化によって未充填シリコーンエラストマーを製造した。機械的性質の試験結果を第2表に示す。
【0071】
実施例14a〜14c
実施例12a〜12cに述べた方法を使用し、実施例3a〜3cと同様に製造した異なる分子量を有するMACMAS液体ゴムのUV硬化によって未充填シリコーンエラストマーを製造した。機械的性質の試験結果を第2表に示す。
【0072】
実施例15a〜15b
実施例12a〜12cに述べた方法を使用し、実施例5a〜5bと同様に製造した異なる分子量のACMSゴムのUV硬化によって未充填シリコーンエラストマーを製造した。機械的性質の試験結果を第2表に示す。
【0073】
実施例C16(比較例)
同じ分子量および同じジアミンから誘導されたグリシジルメタクリレート(GMA)封鎖シリコーンジアミンと本発明に開示した遊離基重合性シロキサンとを比較するために、U.S.P.4,293,397の教示に従って遊離基重合性シロキサンを製造した。U.S.P.4,293,397の実施例4に記載の方法を使用して、上記の実施例1に記載のように合成した40.34g(2ミリモル)の脱気したMW20,171のアミン末端PDMSを1.47g(10.3ミリモル)のグリシジルメタクリレートおよび9.4mgのメトキシハイドロキノンを含有する250ml 2つ口フラスコに入れた。オーバヘッドかく拌機および窒素入口を備えており、上部空間を窒素でフラッシし、そして、反応混合物を60℃で65時間かく拌した。得られた透明、粘稠なGMA封鎖液体ゴムの一部を、0.2重量%のDarocurTM1173と混合し、実施例12a〜12cと同様にUV光に露光することによって硬化させた。フィルムの機械的性質を試験し、そして比較用として第2表に含めた。本発明のシリコーンゴム、実施例12,13,14および15の機械的性質は、破断点応力およびモジュラスに関して比較実施例C16より良好であることは、GMA−官能化液体ゴムの硬化適性が不良であることの証拠である。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例C17(比較例)
同じ分子量および同じジアミンから誘導された1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)封鎖シリコーンジアミンと本発明に開示の遊離基重合性シロキサンとの硬化適性を比較するために、U.S.P.4,603,086の教示に従って遊離基重合性シロキサンを製造した。U.S.P.4,603,086の実施例1に記載の方法を使用して、4mlのトルエン中の1.99g(8.8ミリモル)のHDDAを添加漏斗、窒素入口およびオーバヘッドかく拌機を備えた250ml 3つ口丸底フラスコに入れた。上部空間を窒素でフラッシした後に、内容物を70℃に加熱し、そして上記の実施例1によって合成した40.34g(2ミリモル)の脱気したMW20,171のアミン末端PDMSを1時間かけてかく拌溶液に滴下添加した。添加が完了後、温度を30分間80℃に上昇させ次いでロータリーエバポレーターでトルエンを蒸留除去した。得られた透明粘稠油の一部を0.2重量%のDarocurTM1173と混合し、ポリエステルフィルム間に被覆し、実施例12aと同様に低強度UV光に10分間暴露した。試料はゲル化したが、凝集性フィルムを生成しなかったことは、本発明の液体シリコーンゴムと比較したとき不良な硬化適性であることを証明している。
【0076】
実施例18aおよび18b
これらの実施例では、溶剤によって「膨潤させた」液体ゴムのUV硬化によって改良された性質(モジュラス、破断点伸び、破断点張力)を有するシリコーンエラストマーが製造できることを例証する。10gのMW21,000のMAUS液体ゴムを10gのシクロヘキサン中に溶解させた(50%膨潤)。0.04gのDarocurTM1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)を添加し、実施例12aのように試料をUV光に暴露することによって硬化させた。得られたエラストマーフィルムを真空中で乾燥させ、そしてその性質をInstron引張試験機によって測定した。同様に、30重量%のMW21,000のMAUSおよび70重量%のシクロヘキサンを含有する試料を調製した。被覆および硬化フィルムを真空中で乾燥させ、その機械的性質をInstron引張試験機によって測定した。データを第3表に示す。
【0077】
これらの結果は、低モジュラスを有するエラストマー、すなわち、実施例13aの試料よりコンプライアントなエラストマーが膨潤状態における硬化によって得られることを例証している。
【0078】
【表3】

【0079】
実施例19aおよび19b
これらの実施例では、二官能性遊離基硬化性ポリシロキサンと、シリコーンマクロモノマー(モノ官能性)との同時硬化によって懸垂(dangling)末端を含有する網状構造を付与することによるシリコーンエラストマーの機械特性改良の他の手段を説明する。MW13,000のアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンを実施例10の方法によって製造し、次いで二官能性ポリシロキサンのための実施例1に記載の方法によって室温でビニルジメチルアズラクトンと反応させてMW13,000のACMASマクロモノマー(ACMAS mac)を得ることによって遊離基重合性基を導入してさらに官能化した。MW21,000のACMAS(8g)およびMW13,000のACMAS mac(2g)(80/20W/W)を、0.02gのDarocurTM1173と混合し、実施例12aに記載のように2層のポリエステルフィルム間に塗布、かつ、硬化させた。同様に、50重量%のMW21,000のACMASと50重量%のMW13,000のACMAS macとを含有するフィルムを製造した。これらのフィルムの機械的性質(Instron)を第4表に示した引例(MW21,000 ACMASフィルム)と比較した。本発明のシリコーン組成物中にシリコーンマクロモノマーを含ませることによって希望通りのモジュラスを有する比較的柔軟なエラストマーを得ることができる。
【0080】
実施例20aおよび20b
同様に、MW21,000のMCMASと実施例11に記載のように製造したシリコーンマクロモノマーとを混合することによって、試料を調製した。MW21,000のACMASをMW30,000(3×10,000)の分枝状ACMAS macと異なる重量比、80/20および50/50で混合した。各々に0.2重量%のDarocurTM1173を添加し、実施例12aのように試料を2枚のポリエステルフィルム間に塗布し、かつ、硬化させた。硬化試料の機械的性質(Instron)を引例(MW21,000 ACMASフィルム)の性質と比較した。実施例19aおよび19bと同様に、網状構造中へのシリコーンマクロモノマーの導入によってモジュラスは減少した。このことはかような方法がシリコーンエラストマーの機械的特性の改良に適用できることを証明している。
【0081】
【表4】

【0082】
実施例21
この実施例では、徐々に硬化する系の機械的特性に及ぼす硬化時間の影響を例証する。MW21,000のMAUS(10g)、MW21,000のMeStUS(10g)および0.04gのDarocurTM1173の混合物を、実施例12aのように塗布し、そしてUV光で10分間照射することによって硬化させた。同じ配合の他の試料を、各側を15分合計30分間UV照射した。Instron引張試験機を使用して機械的性質を測定し、これを下記に示す。30分間硬化させた試料は迅速硬化性MW21,000のMAUSの機械的性質と同じ性質を有した。この場合に観察された比較的遅い硬化速度は、α−メチルスチリル基がホモ重合することができないことによることは明らかである。この実施例では、同じ分子量の官能性シロキサンから誘導されたものであるが異なる官能性を有するエラストマーの不良な機械的性質は不完全架橋の判断基準と考えることができることを例証している。
【0083】
【表5】

【0084】
実施例22a〜22c
これらの実施例では、本発明の低分子量液体ゴムと高分子量ゴムの混合によって、これらから製造されるエラストマーの機械的性質を希望通りにできることを例証する。実施例1に記載の方法によって高分子量液体ゴムと同様にMW10,000のACMAS液体シリコーンゴムを製造した。MW35,000(すなわち、35K)のACMAS(9.5g)を10KのACMAS(0.5g)(95/5 W/W、実施例22a)および0.02gのDarocurTM1173と混合し、塗布し、硬化させてエラストマーフィルムにした。同様に、b:90/10,c:80/20,d:65/35,e:50/50重量比の35K ACMAS/10K ACMASの配合物を調製し、かつ、硬化させた。各試料の機械的性質をInstron引張試験機を使用して試験し、データを第5表に示す。35K ACMAS(実施例13b)から製造したエラストマーの試験結果を参照として含める。純粋の10K ACMASから製造したエラストマーも比較例として試験し、このデータも同表に含める。データは輻射線硬化性シリコーンエラストマーの機械的性質は、本発明の高分子量液体ゴムと低分子量成分とを同時硬化させることによって広範囲にわたって希望通りに付与することができることを証明している。
【0085】
【表6】

【0086】
実施例22f〜22h
これらの実施例では、希望通りの性質を有するエラストマーが、高分子量および低分子量液体シリコーンゴムおよびシリコーンマクロモノマーから成る配合物の本発明の方法によって製造できることを例証する。実施例22e〔35K ACMAS/10K ACMAS(50/50)〕と同じ配合物を、実施例19a〜19b(13K ACMAS mac)と同様に製造したシリコーンマクロモノマーと重量比:f:80/20,g:65/35,h:50/50、で混合し、0.2重量%のDarocurTM1173を添加後に硬化させた。各試料の機械的性質をInstron引張試験機を使用して試験し、データを第5a表に示す。35K ACMAS/10K ACMAS(50/50重量比)(実施例22e)から製造したエラストマーの試験結果を参照として含めた。
【0087】
【表7】

【0088】
実施例23
この実施例では、液体ゴムの遊離基重合が、高められた温度で熱開始剤の使用によって行うことができることを証明する。55K MAUS(10g)を、LupersolTM554 M75の商標名でPennwaltから入手できる0.1g(1重量%)のt−アミルパーオキシピバレートと混合し、ポリエステルフィルム間に塗布し、かつ、65℃で1時間硬化させた。エラストマーの機械的性質を試験し、UV硬化による55K MAUS液体ゴムから製造したエラストマー(実施例12c)と比較した。
【0089】
【表8】

【0090】
実施例24a〜24e
これらの実施例では、強化用充填剤を含有する液体ゴムを配合し、かつ、硬化させることによって良好な機械性能(RTVシリコーンエラストマーより良好であり、かつ、標準の過酸化物硬化シリコーンエラストマーに匹敵またはこれより良好)を有するエラストマーが製造できることを証明する。2〜3の試料について、性能を最適化することを考えずに、強化用充填剤含量が機械的性質に及ぼす影響を検討した。18gの20K MAUS液体ゴムを、HDKTM H−2000としてWacker Chemieから入手できる2g(10重量%)の疎水性ヒュームドシリカおよびDarocurTM1173(0.2Wt%)と完全に混合し、そして2枚のポリエステルフィルム間に0.5mmの厚さに塗布した。挟んだ物質を実施例12aのように各側をUV光に5分間露光した。同様に、20Wt%,30Wt%、および40Wt%シリカを含有する増加する粘度を有する混合物を調製した。混合物はすべて硬化させて第6表に示す機械的性質を有するシリコーンエラストマーにした。同様に55K MAUSおよび40Wt%シリカからシリコーンエラストマー調製し、この試料について試験した機械的性質の結果も第6表に示す。
【0091】
【表9】

【0092】
シリコーンPSAS
実施例25
5gの20K ACMASをトルエン中のMQ樹脂の60%固形分溶液(Catalog #SR545としてGE Siliconesから入手できる)、8.3gに添加し、75%固形物溶液を生成させた。0.1gのDarocurTM1173光開始剤を添加し、振りまぜた後均質溶液を下塗しないポリエステルフィルムオーバーリーフを有する厚さ37μmの下塗したポリエステルフィルム上に厚さ50μmにナイフ被覆した。このラミネートを、エラストマー用に上記したように合計5分間低強度UV光下で硬化させ、下塗しないポリエステルを剥ぎ取り、得られたテープを65℃で10分間乾燥させた。一定温度(22℃)および湿度(50%RH)で一晩コンディショニングした後、上記のようなテープ試験を行った。時間の経過に伴うテープ特性の安定性を研究するために1か月の自然熟成後に試験を繰返した。結果を第7表に示す。
【0093】
実施例26〜32
実施例25の方法に従い、液体ゴム:MQ樹脂の1/1比を有するPSAを、異なる分子量のジアミンから誘導され、かつ、異なる封鎖剤によって官能化された液体ゴムから製造した。結果を第7表に示し、そして、一定の分子量ではMAUS,ACMASおよびACMS液体ゴムは硬化させると匹敵できるPSA性能が得られ、かつ、一定の官能性では、分子量の増加は比較的高い剥離接着力および粘着性になり、すべての場合、自然熟成において性質の変化は殆んど観察されないことが例証される。
【0094】
実施例33〜36
5gの35K ACMASを5.5,12.5または19.4gのトルエン中の60%固形分MQ樹脂および0.1gのDarocurTM1173と配合し、上記の実施例35に記載の方法に従って塗布、硬化、乾燥および試験した。結果を第7表に示し、そしてこれらの配合物では最高の剥離接着力はガム:樹脂比が1/1.5のときに得られるが最高の粘着性はガム:樹脂が1/1のときに得られることが例証されている。
【0095】
実施例37〜40
実施例25に記載の方法に従って、ガム:樹脂が1/1の配合物において50K ACMASの代りに10K ACMASに漸増的に使用して調製し、硬化、乾燥および試験した。第8表に示した結果は、低分子量物質が高荷重で剥離および粘着性を減少させることを示している。
【0096】
実施例41〜42
上記の実施例25のように35K ACMASと35MeStUSの混合物をMQ樹脂と1/1で配合し、塗布、硬化、乾燥および試験をした。第8表に示された結果は、比較的高いMeStUS充填量で比較的高い粘着性および剥離接着力が得られることが例証されている。
【0097】
実施例43〜45
上記の実施例25に記載のように、0.05gのDarocurTM1173を含有する75%固形分35K ACMAS/MQ樹脂の1/1混合物、6.6gを、1.7,3.4、または10gのシクロヘキサンで60,50または30%固形分に希釈し、塗布、硬化、乾燥および試験した。第9表に示された結果は、膨潤状態における硬化は、剪断接着力を損うことなく剥離接着力および粘着性能を増進させることを証明している。
【0098】
実施例46〜48
上記の実施例25に記載のように、ガム:樹脂1/1.2の配合物中における20K ACMASの代りに13K VDM封鎖マクロモノマー(ACMASmac)を使用し、塗布、硬化、乾燥および試験した。第10表における結果は、モノ官能性シリコーンの置換は剥離接着力に影響を及ぼすことなく粘着性を改良することを示している。
【0099】
実施例49
トルエン中の75%固形分1/1 35K ACMAS/MQ樹脂、6.6gに商標名HDKTMH2000としてWacker Chemieから入手できる疎水性ヒュームドシリカ充填剤、0.24g(全固形分に基づいて5wt%)および0.05g(ガムに基づいて2wt%)のDarocurTM1173を添加した。上記の実施例25に記載のように得られた混合物を、塗布、硬化、乾燥および試験した。第11表に示した結果は、充填剤を含まない同じ配合物(実施例26)に比較して剥離接着力および粘着性の減少が示された。
【0100】
実施例50〜52
トルエン中の1/1 35K ACMAS/MQ樹脂の75%固形分溶液を下塗しないポリエステルフィルムオーバーリーフを有する厚さ37μmの下塗したポリエステルフィルム上に厚さ50μmでナイフ被覆した。得られたラミネートをESJ Electro−curtainTMCB−150電子ビームプロセッサーを、175 Ker加速電圧で2.5(実施例50)、4.5(実施例51)および7.5(実施例52)Mradの一定の線量で通過させた。乾燥および試験は実施例25に記載のように行い第11表に示した結果は、剪断接着性における凝集破壊がないことによって証明されるように約2.5 Mrad以上で良好な硬化が得られることが例証されている。
【0101】
実施例53
この実施例では、PSA配合物の硬化に熱開始剤の使用を説明する。トルエン中の75%固形分1/1 35K ACMAS/MQ樹脂、5gに、商標名LupersolTM 554 M75としてPennwaltから入手できるt−アミルパーオキシピバレート、0.56gを添加した。この溶液を下塗しないポリエステルフィルムオーバーリーフを有する厚さ37μmの下塗したポリエステルフィルムに厚さ50μmでナイフ被覆し、得られたラミネートを65℃の炉中に30分間置いた。下塗しないポリエステルを剥ぎ取り、そして上記の実施例25のようにコンディショニングし、かつ、試験し、結果を第11表に示す。
【0102】
実施例54〜56
これらの実施例では、PSA配合物の中圧水銀灯からのUV照射による硬化を説明する。5gの35K ACMAS、トルエン中の60%固形分MQ樹脂、8.3gおよび0.1gのDarocurTM1173の混合物を調製した。この一部を下塗した厚さ37μmのポリエステルフィルム上に厚さ50μmでナイフ被覆し、65℃の炉中で1分間乾燥させ、次いで80watt/cm(200watt/in)にセットした2個のランプを使用し、23m/分の2回通しで200mJ/cm2の合計線量で窒素雰囲気下で開口面をPPG Industries UV Processorを通過させることによって硬化させた。これ(実施例54)を次いで実施例25に記載のようにコンディショニングし、かつ、試験し、溶剤の不存在下で硬化させたときでも良好な性能が得られることを示した。同じ配合物を膨潤状態で中圧水銀灯で硬化させた、すなわち、実施例25に記載のように下塗しないポリエステルオーバーリーフを使用して被覆し、200および400mJ/cm2線量に等しいプロセッサーの2回通し(実施例55)および4回通し(実施例56)の間オーバーリーフをその場所に残して硬化させた。オーバーリーフを剥ぎ取った後に、試料を実施例25に記載のように乾燥、コンディショニングおよび試験した。第11表に示した結果は、中圧UVによる硬化は低強度UV(実施例26)による硬化と比較できる性能を付与することを示す。
【0103】
実施例57〜61
これらの実施例では、1/1.2ガム/MQ樹脂配合物における高分子量二官能性シリコーンを低分子量二官能性シリコーンまたはシリコーンマクロモノマーまたは両者への置換によって硬化PSA配合物の粘着および剥離接着性能を変化させる能力を例証する。2.6gの35K ACMAS,1.4gの10K ACMAS、トルエン中の60%固形分MQ樹脂、8gおよび0.1gのDarocurTM1173の混合物を製造した。この一部を上記の実施例25に記載のように塗布、硬化、乾燥および試験した。この(実施例57)の結果を、同様に製造したがPSAのガム部分に次の物質を使用した実施例58〜61の結果と共に第11表に示す。実施例58:2.6gの35K ACMASおよび1.4gの13K ACMASmac。実施例59:2.4gの35K ACMAS,0.8gの10K ACMASおよび0.8gの13K ACMASmac。実施例60:1.6gの35K ACMAS,1.2gの10K ACMAS、および1.2gの13K ACMASmac。実施例61:1.2gの35K ACMAS,1.4gの10K ACMAS、および1.4gの13K ACMASmac。
【0104】
実施例62
機械かく拌機、窒素入口が付属している自己ガス抜き添加漏斗を備えた500mlの2つ口丸底フラスコに、100gのジクロロメタン、30g(0.28モル)のエチルクロロホルメートおよび60%鉱油分散液としての10.7g(0.27モル)のNaHを入れた。上部空間を窒素でパージし、そして、得られたサスペンションを氷浴中で冷却した。1gのピリジンを添加し、次いで十分に冷却されたかく拌溶液に19.2g(0.27モル)のアクリル酸を30分間にわたり滴下添加した。冷却浴を取除き、溶液をさらに2時間かく拌し、次いで、49mlの5%水性HCl(すなわち、42mlの脱イオン水で稀釈した7mlの濃HCl)の添加によって急冷した。混合物を分散漏斗に移し、有機層を分離させ、20mlの脱イオン水で1回洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。濾過後、少量のフェノチアジン(約0.05g)を防止剤として添加し、溶剤をロータリーエバポレーターを使用し、アスピレーター真空および室温で溶剤を追出した。得られた2相物質(生成物および鉱油)を蒸留装置に移し、減圧下(0.05mmHgでbp60℃)で1回蒸留して生成物を得た。
【0105】
【表10】

【0106】
【表11】

【0107】
【表12】

【0108】
【表13】

【0109】
【表14】

【0110】
本発明を特定の態様に関連して説明してきたが、さらに改良法が可能であることを理解すべきである。本発明の特許請求の範囲には、当業界の熟練者が本明細書に記載されている事項と同等と考えるこれらの変更態様も包含させる積りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式、
【化1】

(式中、qは0〜1の整数であり;
sは1〜3の整数であり;
rは約35〜約700の整数であり;
7はアルキル、置換アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アリール、および置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
Xはエチレン状不飽和を有する一価部分であり;
Yは二価結合基であり;mは0または1の整数であり;
Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;Rは二価炭化水素基であり;
2はアルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
3はアルキル、置換アルキル、ビニル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;そして
4はアルキル、置換アルキル、ビニル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分である)を有し;
【化2】

(式中、X,Y,m,D,q,R,R2およびsは上記の定義と同じである)によって表わされるフルオロシラン停止剤と、好適な非ヒドロキシル性溶剤中におけるリビングポリマーシロキサノレート溶液とを反応させてシロキサンマクロモノマーを形成する
工程を含む方法によって製造されたものであることを特徴とするシリコーンマクロモノマー。
【請求項2】
式、
【化3】

(式中、Xはエチレン状不飽和を有する一価部分であり;
Yは二価結合基であり;mは0〜1の整数であり;
Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;
qは0〜1の整数であり:
Rは二価炭化水素基であり;R2はアルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
sは1〜3の整数であり;かつ、次のことがあてはまる:
q=0およびm=1のときは、RはC3〜C12アルキレン基を含み、そしてR2はメチルを含み;
q=0およびm=0のときは、Rはアルキレン基を含む)の化合物。
【請求項3】
(a)ハロゲン−置換シラン、窒素−置換シランおよび酸素−置換シランから成る群から選ばれるシランと好適な溶剤とを一緒にして溶液を形成し;
(b)該溶液と少なくとも約1モル当量の酸性弗化物とを反応させて式、
【化4】

(式中、Xはエチレン状不飽和を有する一価部分であり;
Yは二価結合基であり;
mは0〜1の整数であり;
Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;
qは0〜1の整数であり:Rは二価炭化水素基であり;
2はアルキル、置換アルキル、アリール、および置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
sは1〜3の整数である)の化合物の溶液を形成する
工程を含むことを特徴とする前記の化合物の製造方法。
【請求項4】
式、
【化5】

(式中、Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;
Rは二価炭化水素基であり;そして
sは1〜3の整数である)の化合物。
【請求項5】
(a)酸素−置換シランと好適な溶剤とを一緒にし溶液を形成し;
(b)該溶液と少なくとも約1モル当量の酸性弗化物化合物とを一緒にし、そして、共沸的に水を除去してアミンハイドロフルオライド置換フルオロシランを形成し;そして
(c)該アミンハイドロフルオライド置換フルオロシランを好適な溶剤中において、低級アルキルアミノシランおよびヘキサメチルジシラザンから成る群から選ばれる化合物の約1〜約5%モル過剰と共に加熱することによって遊離アミンに転化させて式、
【化6】

(式中、Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;
Rは二価炭化水素基であり;
2はアルキル、置換アルキル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり、そして
sは1〜3の整数である)のアミン置換フルオロシラン化合物を形成する
工程を含むことを特徴とする前記の化合物の製造方法。
【請求項6】
式、
【化7】

(式中、Dは水素、1〜約10炭素原子のアルキル基、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる一価部分であり;Rは二価炭化水素基であり;
2はアルキル、置換アルキル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
3はアルキル、置換アルキル、ビニル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
4はアルキル、置換アルキル、ビニル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
7はアルキル、置換アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヒドロキシル、アリールおよび置換アリールから成る群から選ばれる同じまたは異ってもよい一価部分であり;
sは1〜3の整数であり;そして
rは約5〜約1000の整数である)の化合物。

【公開番号】特開2006−328419(P2006−328419A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203976(P2006−203976)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【分割の表示】特願平11−326621の分割
【原出願日】平成2年9月21日(1990.9.21)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】