説明

硬化性組成物、並びに、これを用いたインク組成物、インクジェット記録方法、及び印刷物

【課題】硬化感度が良好で、強固であり、かつ、柔軟な膜を形成しうる、硬化性組成物を提供する。また、本発明の硬化性組成物を用いてなり、硬化性、耐擦過性、耐ブロッキング性、及び延伸性に優れる画像が形成されるインク組成物、並びに、これを用いたインクジェット記録方法及び印刷物を提供する
【解決手段】(A)ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、及びポリエチレンイミンからなる群より選択される高分子化合物の側鎖に、ラジカル重合性基を有することを特徴とする重合性高分子化合物と、(B)前記(A)重合性高分子化合物とは構造の異なるラジカル重合性化合物と、(C)重合開始剤と、を含む、硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インクに好適に用いられる硬化性組成物、並びに、これを用いたインク組成物、インクジェット記録方法、及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型および溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。中でも、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを射出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
インクジェット方式によれば、普通紙のみならずプラスチックシート、金属板など非吸水性の被記録媒体にも印字可能であるが、印字する際の高速化および高画質化が重要な課題となっており、印字後の液滴の乾燥、硬化に要する時間が、印刷物の生産性や印字画像の鮮鋭度に大きく影響する性質を有している。
【0003】
インクジェット方式の一つとして、放射線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、インク射出後直ちにまたは一定の時間後に放射線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インクの高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、インクジェット記録の生産性向上、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不充分硬化に基づく低分子物質の揮発発生の防止など、多くの利益が生じる。また、高感度化は、特にインクジェット記録用インクにより形成された画像の強度を向上させ、特に、平版印刷版の形成に応用した場合、画像部の硬化強度が高まることになり、高耐刷性が得られることになる。
【0004】
このような放射線、例えば、紫外線による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、被記録媒体への密着性に優れ、紫外線硬化時の収縮率が小さいカチオン重合型インク組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。但し、これらカチオン重合型インクは、経時で発生した酸に基づく反応により、保存時の安定性が充分ではなく、実用化には大きな障害となっていた。このため、保存安定性を改良する試みとして、塩基性化合物や熱塩基発生剤を添加する技術が提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)が、塩基性化合物が露光により発生した酸の機能を阻害するためにインクの硬化感度が低下するという新たな問題が発生することがわかった。
【特許文献1】特開平9−183928号公報
【特許文献2】特開2003−312121公報
【特許文献3】特開2003−341217公報
【特許文献4】特開2004−91558公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、硬化感度が良好で、強固であり、かつ、柔軟な膜を形成しうる硬化性組成物を提供することにある。
また本発明は、前記本発明の硬化性組成物を用いてなり、硬化性、耐擦過性、耐ブロッキング性、及び延伸性に優れる画像が形成されるインク組成物、並びに、これを用いたインクジェット記録方法及び印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> (A)ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、及びポリエチレンイミンからなる群より選択される高分子化合物の側鎖に、ラジカル重合性基を有することを特徴とする重合性高分子化合物と、(B)前記(A)重合性高分子化合物とは構造の異なるラジカル重合性化合物と、(C)重合開始剤と、を含む、硬化性組成物。
<2> 前記(A)重合性高分子化合物は、さらに、フッ素置換炭化水素基及びシロキサン骨格からなる群より選択される少なくとも1種を側鎖に有する化合物である、<1>に記載の硬化性組成物。
【0007】
<3> <1>又は<2>に記載の硬化性組成物を含有するインク組成物。
<4> インクジェット記録用である、前記<3>に記載のインク組成物。
【0008】
<5> 被記録媒体上に、前記<3>又は<4>に記載のインク組成物を、インクジェット記録装置により吐出する工程と、吐出された前記インク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程と、を含む、インクジェット記録方法。
<6> 前記<5>に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。
【0009】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物中に含まれる(A)重合性高分子化合物の側鎖にラジカル重合性基を有するため、インク組成物に含有させると、硬化性が向上し、より強固な膜が形成される。
また本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物中に含まれる(A)重合性高分子化合物がポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、又はポリエチレンイミン骨格を有しているため反応性が高く、市販されているポリマーを用いて(A)重合性高分子化合物を容易に合成することができる。さらに、(A)重合性高分子化合物の3級アミンにより、酸素による重合阻害を軽減する効果が得られるため、感度を向上することができると推測される。
【0010】
一方、本発明の硬化性組成物の好ましい態様において、(A)重合性高分子化合物の側鎖にフッ素置換炭化水素基及びシロキサン骨格からなる群より選択される少なくとも1種をさらに有する場合は、硬化性組成物をインク組成物に含有させると、(A)重合性高分子化合物のフッ素置換炭化水素基又はシロキサン骨格が表面配向性基として作用する。そのため、(A)重合性高分子化合物が組成物の表面に偏析し、インク組成物表面のラジカル重合性基の密度を高くすることにより、膜表面の硬化性と表面硬化後の膜内部の柔軟性を両立させることができると推測される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化感度が良好で、強固であり、かつ、柔軟な膜を形成しうる、硬化性組成物を提供することができる。
また本発明によれば、前記本発明の硬化性組成物を用いてなり、硬化性、耐擦過性、耐ブロッキング性、及び延伸性に優れる画像が形成されるインク組成物、並びに、これを用いたインクジェット記録方法及び印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、(A)重合性高分子化合物、(B)ラジカル重合性化合物、及び(C)重合開始剤を含有し、必要に応じてその他の成分を含む。
【0013】
本発明の硬化性組成物は、放射線の照射により硬化が可能である。ここで、本発明で言う「放射線」とは、その照射により組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度および装置の入手容易性の観点からは、紫外線および電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。従って、本発明の硬化性組成物としては、紫外線を照射することにより硬化可能な硬化性組成物であることが好ましい。なお、本発明の硬化性組成物は、下記(A)重合性高分子化合物を含有することから、高感度であり、露光光源として、発光ダイオードのような低露光量の光源によっても十分硬化するため、このような用途に適用すると本発明の効果が著しいといえる。
以下、本発明の硬化性組成物に含有される各成分について、詳細に説明する。
【0014】
<(A)重合性高分子化合物>
(A)重合性高分子化合物は、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、及びポリエチレンイミンからなる群より選択される高分子化合物の側鎖に、ラジカル重合性基を有することを特徴とする。
すなわち(A)重合性高分子化合物は、主鎖に、ポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、及びポリエチレンイミン骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有し、側鎖として「ラジカル重合性基を有する側鎖」を少なくとも含む。
ここで、「主鎖」とは、(A)重合性高分子化合物の分子構造中において、一番長い幹になる鎖のことを示し、「側鎖」とは、(A)重合性高分子化合物中に含まれる主鎖以外の鎖を示す。
以下、主鎖にポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物について説明する
【0015】
−ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物−
ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物は、少なくとも下記一般式(1)で示される構造単位を含む。
【0016】
【化1】



【0017】
ここで、上記一般式(1)中のRは、上記「ラジカル重合性基を有する側鎖」であり、Rは、水素原子、ラジカル重合性基を有する側鎖、又はその他の側鎖である。
ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(1)で示される構造単位を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0018】
また、ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(1)で示される構造単位の他に、下記一般式(2)で示される構造単位を含んでもよい。
【0019】
【化2】



【0020】
ここで、上記一般式(2)中のR及びRは、水素原子又はその他の側鎖である。
ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(2)で示される構造単位を含まなくてもよく、1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
以下、それぞれの側鎖について説明する。
【0021】
−−ラジカル重合性基を有する側鎖−−
ラジカル重合性基を有する側鎖は、少なくとも1以上のラジカル重合性基を有する1価の有機基であり、ラジカル重合性基に加えて、他の置換基等(後述するフッ素置換炭化水素基及びシロキサン骨格を含む)を有してもよい。
【0022】
ラジカル重合性基としては、具体的には、例えば、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合(ラジカル重合性不飽和二重結合)を有する重合性基が挙げられ、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ以上有する置換基であればどのようなものでもよい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性基の例としては、具体的には、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基等の不飽和カルボン酸エステル基、およびスチレン基等が挙げられる。中でも、メタクリル酸エステル基、アクリル酸エステル基が好ましい。
【0023】
ラジカル重合性基を有する側鎖としては、上記ラジカル重合性基を少なくとも1以上有する1価の有機基の中でも、下記式で表されるものが好ましい。
式: *−L−Z
上記式中、Lは、直鎖、分岐、又は環状構造を含む炭素原子数1〜12の2価の連結基を表わし、Zは、末端に上記記載のラジカル重合性基を持つ官能基を表わし、*は、(A)重合性高分子化合物の主鎖に含まれるポリアリルアミン骨格の窒素原子に直接結合する箇所を表わす。なお、上記炭素原子数1〜12の2価の連結基は、酸素原子、窒素原子、又はハロゲン原子を含んでもよい。ラジカル重合性基は、反応性の観点から側鎖の末端に位置する事が好ましい。
【0024】
上記の好ましいラジカル重合性基を有する側鎖の中でも、さらに好適な具体例を下記に示すが、これらに限定されるわけではない。なお、下記式中、(A)重合性高分子化合物の主鎖に含まれるポリアリルアミン骨格の窒素原子に直接結合する箇所を「*」で示す。
【0025】
【化3】



【0026】
ラジカル重合性基を有する側鎖の含有量は、硬化感度及び膜強度の向上と膜の柔軟性とを両立させる観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0.1〜2当量が好ましく、0.3〜1.5当量がより好ましく、0.5〜1.2当量が最も好ましい。
【0027】
−−その他の側鎖−−
その他の側鎖は、ラジカル重合性基を有さない1価の有機基であり、公知の有機基が挙げられるが、フッ素置換炭化水素基及びシロキサン骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有する有機基が好ましい。
【0028】
(フッ素置換炭化水素基)
フッ素置換炭化水素基とは、少なくとも1つのフッ素を含有する炭化水素基であればよく、例えば、アルキル基やアルキレン基における少なくとも一つの水素原子をフッ素原子に置換したフルオロアルキル基、フルオロアルキレン基が挙げられ、アルキル基、アルキレン基のすべての水素をフッ素に置換したパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基がより好ましく、パーフルオロアルキル基が更に好ましい。
【0029】
アルキル基としては、炭素数3〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、6〜8が更に好ましい。
アルキレン基としては、炭素数2〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、6〜8が更に好ましい。
【0030】
フッ素置換炭化水素基を有する有機基としては、例えば、下記一般式(3)で表される有機基が挙げられる。
【0031】
【化4】



【0032】
上記一般式(3)中、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜4個のアルキル基を、Xは共有結合または2価の連結基(有機基)を、mは0以上の整数を、nは1以上の整数を表す。尚、mが2以上の場合、互いに隣接する炭素上の官能基(即ち、隣り合う炭素にそれぞれ結合しているR同士やR同士)は結合して脂肪族環を形成してもよい。
また、上記一般式(3)で表される置換基は、「*」の部分で(A)重合性高分子化合物の主鎖に含まれるポリアリルアミン骨格の窒素原子に直接結合する。
【0033】
上記一般式(3)で表される置換基の中でも、一般式(3)における「n」が1〜10であるものが好ましく、1〜4であることがより好ましく、2又は3であることが特に好ましい。
【0034】
一般式(3)において、RおよびRで表される炭素数1〜4個のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、RおよびRとして好ましくは水素原子、メチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0035】
一般式(3)において、Xで表される共有結合とは、即ちポリマー主鎖と直接結合する場合を表す。また、2価の連結基(有機基)としては、−O−、−S−、−N(R)−、−CO−等が挙げられる。これらの中でも−O−がより好ましい。
【0036】
また、上記Rは水素原子または炭素数1〜4個のアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、Rとして好ましくは水素原子、メチル基である。
【0037】
mは0以上の整数を表し、2〜8の整数が好ましく、m=2が特に好ましい。また、mが2以上の場合、互いに隣接する炭素上の官能基は結合して脂肪族環を形成してもよい。
【0038】
nは1以上の整数を表し、1〜10の整数が好ましい。ここでnは、特に1〜4が好ましく、さらにフッ素系ポリマー中、nが2、3であることが好ましい。
【0039】
上記の好ましいフッ素置換炭化水素基を有する有機基の中でも、「フッ素置換炭化水素基を有するその他の側鎖」としてさらに好適な具体例を下記に示すが、これらに限定されるわけではない。なお、下記式中、(A)重合性高分子化合物の主鎖に含まれるポリアリルアミン骨格の窒素原子に直接結合する箇所を「*」で示す。
【0040】
【化5】



【0041】
フッ素置換炭化水素基を有する側鎖の含有量は、吐出性と感度の観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0〜0.6当量が好ましく、0.02〜0.5当量がより好ましく、0.05〜0.5当量が最も好ましい。
【0042】
(シロキサン骨格)
シロキサン骨格を有する有機基としては、分子内にシロキサン骨格を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。
シロキサン骨格としては、(A)重合性高分子化合物をインク組成物に用いた場合、インク組成物の吐出安定性を上げ、インク組成物を塗膜としたときの表面偏析性を高くする観点から、下記構造式(A)で表される化合物(以下、「特定シロキサン化合物」ともいう)が重合したポリシロキサンであることが好ましい。構造式(A)中、Rはシロキサン結合のSi原子との連結基として導入される。
【0043】
【化6】



【0044】
前記構造式(A)中、Rは、炭素数が2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、または下記構造式(B)で表される2価の連結基を示す。
【0045】
【化7】



【0046】
前記構造式(B)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、nは、1〜50の整数を表わす。
【0047】
前記構造式(A)中、x、xおよびxは、それぞれ、x、xおよびxの合計が1〜100となる整数である。yは、1〜10の整数である。
前記構造式(A)中、Xはなくてもよく、ある場合は、下記構造式(C)で表わされる二価の基である。
【0048】
【化8】



【0049】
前記構造式(C)中、Zは、酸素原子、硫黄原子またはNRを表わし、Rは、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記構造式(C)中、Zは、前記構造式(A)におけるRに結合する。
前記構造式(C)中、Rは、脂肪族または脂環族ジイソシアナート構造を含む炭素数6〜10の2価の基を表す。
【0050】
前記構造式(A)中、Yは、下記構造式(D)〜下記構造式(F)で表される1価の基を表す。
【0051】
【化9】



【0052】
【化10】



【0053】
【化11】



【0054】
前記構造式(D)〜(F)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わし、Rは、直鎖状または分枝鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基を表わす。
【0055】
前記構造式(A)中、Zは下記の構造で表される1価の基を表す。
【0056】
【化12】



【0057】
上記構造中、zは3〜100の整数を表し、好ましくは5〜50、より好ましくは7〜20の整数である。
【0058】
上記の好ましいシロキサン骨格を有する有機基の中でも、「シロキサン骨格を有するその他の側鎖」としてさらに好適な具体例を下記に示すが、これらに限定されるわけではない。なお、下記式中、(A)重合性高分子化合物の主鎖に含まれるポリアリルアミン骨格の窒素原子に直接結合する箇所を「*」で示す。また下記式中Rは、炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0059】
【化13】



【0060】
シロキサン骨格を有する側鎖の含有量は、偏析性と表面張力の観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0〜0.6当量が好ましく、0.02〜0.5当量がより好ましく、0.05〜0.5当量が最も好ましい。
【0061】
−−ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法−−
ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法としては、例えば、ポリアリルアミンに、アミン反応性官能基を有する化合物(以下、「アミン反応性官能基含有化合物」と称する場合がある)を反応させる方法が挙げられる。アミン反応性官能基含有化合物は、主鎖に直接結合する側にアミン反応性官能基を有しており、主鎖に結合した結果、上記のような側鎖(ラジカル重合性基を有する側鎖、フッ素置換炭化水素基を有する側鎖、シロキサン骨格を有する側鎖等)となるものである。
【0062】
ここで、アミン反応性官能基含有化合物としては、具体的には、例えば、エポキシ基を有する化合物、イソシアナート基を有する化合物、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、が挙げられる。アミン反応性化合物としては、特に反応性と入手容易性の観点から、エポキシ基を有する化合物、イソシアナート基を有する化合物、カルボン酸無水物が好ましい。
【0063】
(ポリアリルアミン)
上記合成方法に用いるポリアリルアミンは、市販の水溶液として入手することができる。ポリアリルアミンの市販品としては、例えば、日東紡製「PAA−01」、「PAA−03」、「PAA−05」、「PAA−10」、「PAA−10C」、「PAA−15C」、「PAA−25」などが挙げられる。
またポリアリルアミンは、特開昭60−106801号公報に記載の方法など、公知の方法によって合成することもできる。
【0064】
ポリアリルアミンの重量平均分子量は、粘度と官能基数の観点から、1000〜50000であることが好ましく、より好ましくは3000〜50000、最も好ましくは5000〜30000である。
なお、重量平均分子量はガエルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等の公知の測定方法により測定され、測定装置の例としては、東ソー製HLC−8220シリーズ等が挙げられる。
【0065】
(ラジカル重合性基を有する側鎖の導入)
ラジカル重合性基を有する側鎖をポリアリルアミン骨格に導入する方法としては、例えば、ラジカル重合性基を有するアミン反応性官能基含有化合物を、ポリアリルアミンに反応させる方法が挙げられる。
【0066】
ラジカル重合性基を有するアミン反応性官能基含有化合物としては、具体的には、例えば、エポキシ基、オキセタン基、もしくはイソシアナート基等のアミン反応性官能基を有するラジカル重合性化合物、ラジカル重合性基を有する無水カルボン酸化合物、又はラジカル重合性基を有するカルボン酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0067】
(フッ素置換炭化水素基を有する側鎖の導入)
フッ素置換炭化水素基を有する側鎖をポリアリルアミン骨格に導入する方法としては、例えば、フッ素置換炭化水素基を有するアミン反応性官能基含有化合物を、ポリアリルアミンに反応させる方法が挙げられる。
【0068】
フッ素置換炭化水素基を有するアミン反応性官能基含有化合物としては、具体的には、例えば、下記構造のものが挙げられる。
【0069】
【化14】



【0070】
フッ素置換炭化水素基を有するアミン反応性官能基含有化合物の合成方法としては、例えば、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)またはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物にアミン反応性官能基を導入する方法が挙げられる。
上記フルオロ脂肪族化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath,American Chemical Society 1995)の747〜752ページに記載されている。
【0071】
ここで、テロメリゼーション法とは、ヨウ化物等の連鎖移動常数の大きいアルキルハライドをテローゲンとして、テトラフルオロエチレン等のフッ素含有ビニル化合物のラジカル重合を行い、テロマーを合成する方法である。具体例として、下記合成例1を示す。
【0072】
【化15】



【0073】
上記方法により得られた、末端ヨウ素化テロマーは、通常、例えば下記合成例2のように、アミン反応性官能基が導入される。
ここで、上記合成例1及び下記合成例2中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは整数を表す。また、下記合成例2中、「BnNEtCl」は、フェニルトリエチルアンモニウムクロリドを表す。
【0074】
【化16】




【0075】
一方、オリゴメリゼーション法とはテトラフルオロエチレンをフッ化カリウムやフッ化セシウムなどを触媒として、ジグライム等の極性溶媒中でカチオン重合してオリゴマーを製造する方法である。具体例として、下記合成例3を示す。オリゴマー法によって得られるフルオロ脂肪族化合物は、先述のテロマー法による化合物と同様、重合により得られるオリゴマー中の反応性基(不飽和結合)等を利用し、適切な化学修飾を経て、フルオロ脂肪族化合物から誘導される基を側鎖に有するポリマー(即ち本発明におけるフッ素系ポリマー)に導くことができる。
【0076】
【化17】



【0077】
(シロキサン骨格を有する側鎖の導入)
シロキサン骨格を有する側鎖をポリアリルアミン骨格に導入する方法としては、例えば、シロキサン骨格を有するアミン反応性官能基含有化合物を、ポリアリルアミンに反応させる方法が挙げられる。
【0078】
シロキサン骨格を有するアミン反応性官能基含有化合物としては、具体的には、例えば、下記構造のものが挙げられる。
【0079】
【化18】



【0080】
シロキサン骨格を有するアミン反応性官能基含有化合物の合成方法としては、例えば、US2730532、特開平7−133351、又は特開平6−240001に記載の方法が挙げられる。
【0081】
以上のようにして得られた「ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物」の重量平均分子量は、例えばインク組成物に用いる場合、増粘抑制と、吐出性向上の観点から、3000〜400000が好ましく、5000〜200000がより好ましく、10000〜100000がさらに好ましい。
また、「ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物」中における、前記一般式(1)で示される構成単位のモル分率と、前記一般式(2)で示される構成単位のモル分率と、の比は、100:0〜60:40が好ましく、100:0〜80:20がより好ましく、100:0〜90:10が最も好ましい。
(A)重合性高分子化合物の構造については、例えば、1H−NMR測定を行うことにより解析可能である。
以下、ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物に好適な例を以下に示すが、本発明においてはこれらに制限されるものではない。なお以下の記載において、括弧の右下の数字はモル分率を表し、「Mw」は、重量平均分子量を意味する。また下記式中Rは、メチル基、又はn−ブチル基を表す。
【0082】
【化19】

【0083】
【化20】




【0084】
【化21】




【0085】
【化22】



【0086】
−ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物−
ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物は、少なくとも下記一般式(4)で示される構造単位を含む。
【0087】
【化23】



【0088】
ここで、上記一般式(4)中のR及びRは、それぞれ、前記一般式(1)中のR及びRと同様である。
ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(4)で示される構造単位を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0089】
また、ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(4)で示される構造単位の他に、下記一般式(5)で示される構造単位を含んでもよい。
【0090】
【化24】



【0091】
ここで、上記一般式(5)中のR及びRは、前記一般式(2)中のR及びRと同様である。
ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(5)で示される構造単位を含まなくてもよく、1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0092】
ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物に含まれる、「ラジカル重合性基を有する側鎖」の含有量は、硬化感度及び膜強度の向上と膜の柔軟性とを両立させる観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0.1〜2当量が好ましく、0.3〜1.5当量がより好ましく、0.5〜1.2当量が最も好ましい。
また、ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物に含まれる、「フッ素置換炭化水素基を有する側鎖」の含有量は、吐出性と感度向上の観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0〜0.6当量が好ましく、0.02〜0.5当量がより好ましく、0.05〜0.5当量が最も好ましい。
さらに、ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物に含まれる、「シロキサン骨格を有する側鎖」の含有量は、吐出性と感度向上、溶解性の観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0〜0.6当量が好ましく、0.02〜0.5当量がより好ましく、0.05〜0.5当量が最も好ましい。
【0093】
−−ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法−−
ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法としては、例えば、ポリビニルアミンに、アミン反応性官能基を有する化合物を反応させる方法が挙げられる。アミン反応性官能基を有する化合物については、前記ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法において用いるものと同様である。
【0094】
上記合成方法に用いるポリビニルアミンは、市販品を用いることができる。ポリビニルアミンの市販品としては、例えば、三菱化学社製のPVAMシリーズ等が挙げられる。またポリビニルアミンの製造方法としては、特開2003−147007、特開2006−257287に記載の方法で製造できる。
【0095】
ポリビニルアミンの重量平均分子量は、増粘抑制の観点から、1000〜50000であることが好ましく、より好ましくは3000〜50000、最も好ましくは5000〜30000である。
また、ラジカル重合性基を有する側鎖、フッ素置換炭化水素基を有する側鎖、及びシロキサン骨格を有する側鎖をポリビニルアミン骨格に導入する方法についても、前記ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法と同様の方法が用いられる。
【0096】
以上のようにして得られた「ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物」の重量平均分子量は、例えばインク組成物に用いる場合、増粘抑制と、吐出性向上の観点から、3000〜400000が好ましく、5000〜200000がより好ましく、10000〜100000がさらに好ましい。
また、「ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物」中における、前記一般式(4)で示される構成単位のモル分率と、前記一般式(5)で示される構成単位のモル分率と、の比は、100:0〜60:40が好ましく、100:0〜80:20がより好ましく、100:0〜90:10が最も好ましい。
以下、ポリビニルアミン骨格を有する重合性高分子化合物に好適な例を以下に示すが、本発明においてはこれらに制限されるものではない。なお以下の記載において、括弧の右下の数字はモル分率を表し、「Mw」は、重量平均分子量を意味する。また下記式中Rは、メチル基を表す。
【0097】
【化25】

【0098】
【化26】

【0099】
−ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物−
ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物は、少なくとも下記一般式(6)で示される構造単位を含む。
【0100】
【化27】



【0101】
ここで、上記一般式(6)中のRは、前記一般式(1)中のRと同様である。
ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(6)で示される構造単位を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0102】
また、ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(6)で示される構造単位の他に、下記一般式(7)で示される構造単位を含んでもよい。
【0103】
【化28】



【0104】
ここで、上記一般式(7)中のRは、前記一般式(2)中のRと同様である。
ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物は、上記一般式(7)で示される構造単位を含まなくてもよく、1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0105】
ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物に含まれる、「ラジカル重合性基を有する側鎖」の含有量は、硬化感度及び膜強度の向上と膜の柔軟性とを両立させる観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0.3〜0.9当量が好ましく、0.4〜0.9当量がより好ましく、0.5〜0.9当量が最も好ましい。
また、ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物に含まれる、「フッ素置換炭化水素基を有する側鎖」の含有量は、吐出性と感度向上の観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0〜0.6当量が好ましく、0.02〜0.5当量がより好ましく、0.05〜0.5当量が最も好ましい。
さらに、ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物に含まれる、「シロキサン骨格を有する側鎖」の含有量は、吐出性と感度向上、溶解性の観点から、主鎖のアミノ基1当量に対し、0〜0.6当量が好ましく、0.02〜0.5当量がより好ましく、0.05〜0.5当量が最も好ましい。
【0106】
−−ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法−−
ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法としては、例えば、ポリエチレンイミンに、アミン反応性官能基を有する化合物を反応させる方法が挙げられる。アミン反応性官能基を有する化合物については、前記ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法において用いるものと同様である。
【0107】
上記合成方法に用いるポリエチレンイミンは、市販品を用いることができる。ポリエチレンアミンの市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポミンSP200、P1000等が挙げられる。
【0108】
ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、増粘抑制の観点から、1000〜50000であることが好ましく、より好ましくは3000〜50000、最も好ましくは5000〜30000である。
また、ラジカル重合性基を有する側鎖、フッ素置換炭化水素基を有する側鎖、及びシロキサン骨格を有する側鎖をポリエチレンイミン骨格に導入する方法についても、前記ポリアリルアミン骨格を有する重合性高分子化合物の合成方法と同様の方法が用いられる。
【0109】
以上のようにして得られた「ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物」の重量平均分子量は、例えばインク組成物に用いる場合、増粘抑制と、吐出性向上の観点から、3000〜400000が好ましく、5000〜200000がより好ましく、10000〜100000がさらに好ましい。
また、「ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物」中における、前記一般式(6)で示される構成単位のモル分率と、前記一般式(7)で示される構成単位のモル分率と、の比は、100:0〜60:40が好ましく、100:0〜80:20がより好ましく、100:0〜90:10が最も好ましい。
以下、ポリエチレンイミン骨格を有する重合性高分子化合物に好適な例を以下に示すが、本発明においてはこれらに制限されるものではない。なお以下の記載において、括弧の右下の数字はモル分率を表し、「Mw」は、重量平均分子量を意味する。また下記式中Rは、メチル基、又はn−ブチル基を表す。
【0110】
【化29】




【0111】
【化30】



【0112】
本発明の硬化性組成物は、(A)重合性高分子化合物を一種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
硬化性組成物全固形分における(A)重合性高分子化合物の含有量は、硬化膜の柔軟性及び硬化感度の両立という観点から、0.5質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜8質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が最も好ましい。
【0113】
<(B)前記(A)重合性高分子化合物とは構造の異なるラジカル重合性化合物>
本発明の硬化性組成物は、上記の通り、(B)前記(A)重合性高分子化合物とは構造の異なるラジカル重合性化合物(以下、「ラジカル重合性化合物」と称する場合がある)を含有する。
本発明の硬化性組成物が、(A)重合性高分子化合物及び(B)ラジカル重合性化合物の両方を含むことにより、より高感度で硬化し、硬化膜の強固さと柔軟さを両立することができる。
(B)ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。(B)ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0114】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸およびそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0115】
具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー、およびポリマーを用いることができる。
【0116】
また、(B)ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明のインク組成物に適用することができる。
【0117】
更に、(B)ラジカル重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物、トリビニルエーテル化合物が好ましく、特に、ジビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0118】
本発明の硬化性組成物全固形分中、(B)ラジカル重合性化合物の含有量は、50質量%〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは55質量%〜90質量%であり、更に好ましくは、60質量%〜85質量%である。上記範囲とすることで硬化性と色再現性が良好な塗膜が得られる。さらに塗膜の柔軟性を向上させるために、(B)ラジカル重合性化合物中の単官能モノマー(重合性官能基を一つのみ有するモノマー)の含有量は、60質量%〜100質量%が好ましく、70質量%〜100質量%がより好ましく、80質量%〜100質量%が更に好ましい。
【0119】
<(C)重合開始剤>
本発明の硬化性組成物は、(C)重合開始剤を含む。また、(C)重合開始剤としてラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、公知の重合開始剤を、併用する重合性化合物の種類、硬化性組成物の使用目的に応じて、適宜選択して使用することができる。
本発明の硬化性組成物に使用するラジカル重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。放射線には、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
熱重合開始剤及び光重合開始剤としては公知の化合物が使用できる。
【0120】
本発明で使用し得る好ましいラジカル重合開始剤としては(i)芳香族ケトン類、(ii)アシルホスフィンオキシド化合物、(iii)芳香族オニウム塩化合物、(iv)有機過酸化物、(v)チオ化合物、(vi)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(vii)ケトオキシムエステル化合物、(viii)ボレート化合物、(ix)アジニウム化合物、(x)メタロセン化合物、(xi)活性エステル化合物、(xii)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(xiii)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
本発明においてラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、併用してもよい。効果の観点からは、2種以上のラジカル重合開始剤を併用することが好ましい。
【0121】
硬化性組成物中の(C)重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分換算で、0.1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜10質量%、更に好ましくは1質量%〜7質量%である。
【0122】
また、ラジカル重合開始剤は、後述の必要に応じて用いることのできる増感色素に対して、重合開始剤:増感色素の質量比で、200:1〜1:200、好ましくは、50:1〜1:50、より好ましくは、20:1〜1:5の範囲で含まれることが適当である。
【0123】
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、上記本発明の硬化性組成物を含有し、必要に応じてその他の成分を含む。すなわち、本発明のインク組成物は、(A)重合性高分子化合物、(B)ラジカル重合性化合物、及び(C)重合開始剤を含有し、必要に応じてその他の成分を含む。また、前記(A)重合性高分子化合物は、上述した重合性高分子化合物であり、(B)ラジカル重合性化合物及び(C)重合開始剤についても上述したものと同様である。
【0124】
<(D)着色剤>
本発明のインク組成物は、上記必須成分の他、前記放射線により硬化して画像を形成するため(D)着色剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることのできる(D)着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料および油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明のインク組成物に好適に使用し得る(D)着色剤は、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しないことが好ましい。これは、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないためである。
【0125】
−顔料−
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料および無機顔料、または顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0126】
本発明において使用できる有機顔料および無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0127】
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0128】
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0129】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0130】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCOPb(OH)、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0131】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0132】
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0133】
本発明のインク組成物においては、溶剤を添加せず、低分子量成分である(B)ラジカル重合性化合物が、顔料などの諸成分を分散させる分散媒として機能させてもよいし、前記分散媒として溶剤を添加してもよい。インク組成物に溶剤を添加しない形態の方が、インク組成物中における重合性基の密度が高くなるため、硬化性が向上すると考えられる。一方、インク組成物に溶剤を添加すると、上記重合性基の密度低下により硬化性が低下することに加え、硬化されたインク画像中に溶剤が残留することにより、インク画像における物性(例えば、耐溶剤性等)の経時的な劣化を引き起こす可能性がある。
このような観点から、硬化に寄与しない溶剤を添加せず、(B)ラジカル重合性化合物を分散媒として機能させる形態が好ましく、インク組成物の分散適性やハンドリング性向上の観点から、粘度の低い(B)ラジカル重合性化合物を選択することが好ましい。
【0134】
顔料の平均粒径は、0.02μm〜0.4μmにするのが好ましく、0.02μm〜0.1μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.02μm〜0.07μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0135】
−染料−
本発明に用いることのできる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
【0136】
本発明に用いることのできる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基、長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基およびこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
【0137】
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vs SCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vsSCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vs SCE)以上のものが特に好ましい。
【0138】
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0139】
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0140】
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(V)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0141】
これらの(D)着色剤は、インク組成物中、固形分換算で、1質量%〜20質量%添加されることが好ましく、2質量%〜10質量%がより好ましい。
【0142】
<その他の成分>
以下に、その他の成分として、必要に応じて本発明に用いることのできる種々の添加剤について述べる。
【0143】
−紫外線吸収剤−
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5質量%〜15質量%であることが好ましい。
【0144】
−増感剤−
本発明には、開始剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、開始剤に対し、電子移動機構またはエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。添加量は目的に応じて適宜選択されるが、開始剤に対し0.01モル%〜1モル%で用いることが好ましく、0.1モル%〜0.5モル%がより好ましい。
【0145】
−酸化防止剤−
組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1質量%〜8質量%であることが好ましい。
【0146】
−褪色防止剤−
本発明には、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式および化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1質量%〜8質量%であることが好ましい。
【0147】
−導電性塩類−
本発明には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0148】
−溶剤−
本発明には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1質量%〜3質量%の範囲である。
【0149】
−高分子化合物−
本発明には、膜物性を調整するため、前記(A)重合性高分子化合物の他に、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、または「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0150】
−界面活性剤−
本発明には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0151】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0152】
<インク組成物の好ましい態様>
本発明のインク組成物をインクジェット記録用として使用する場合には、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40℃〜80℃、好ましくは25℃〜30℃)において、粘度が、好ましくは7mPa・s〜30mPa・sであり、より好ましくは7mPa・s〜20mPa・sである。例えば、本発明のインク組成物の室温(25℃〜30℃)における粘度は、好ましくは35〜500mPa・s、より好ましくは35mPa・s〜200mPa・sである。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となる。更にインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0153】
本発明のインク組成物の表面張力は、好ましくは20mN/m〜30mN/m、より好ましくは23mN/m〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲みおよび浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
【0154】
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。インクジェット記録用インクとして用いる場合には、インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に射出し、その後、射出されたインク組成物に放射線を照射して硬化して記録を行う。
【0155】
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
【0156】
[インクジェット記録方法、および印刷物]
本発明のインク組成物が好適に適用されるインクジェット記録方法(本発明のインクジェット記録方法)について、以下説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、上記した本発明のインク組成物を、被記録媒体(支持体、記録材料等)上にインクジェット記録装置により吐出する工程、および、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。硬化したインク組成物は、被記録媒体上に画像を形成する。
【0157】
本発明のインクジェット記録方法に適用しる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
更に、本発明に適用しうる被記録材料としては、平版印刷版の支持体が挙げられる。
【0158】
本発明のインクジェット記録方法に適用される活性放射線としては、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線などが挙げられる。活性放射線のピーク波長は、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。また、活性放射線の出力は、2,000mJ/cm以下であることが好ましく、より好ましくは、10〜2,000mJ/cmであり、さらに好ましくは、20〜1,000mJ/cmであり、特に好ましくは、50〜800mJ/cmである。
特に、本発明のインクジェット記録方法では、放射線照射が、発光波長ピークが350〜420nmであり、かつ、前記被記録媒体表面での最高照度が10〜2,000mW/cmとなる紫外線を発生する発光ダイオードから照射されることが好ましい。本発明のインク組成物は、発光ダイオードの発する光のような、低露光量の光でも高感度で硬化する。
【0159】
本発明のインクジェット記録方法においては、前述の本発明のインク組成物を用いており且つ活性放射線を照射して該インク組成物を硬化しているため、耐擦過性に優れ、更に表面のべとつきが抑制された画像を形成することができる。尚、活性放射線の照射は、全色を吐出した後まとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0160】
また、本発明の印刷物は、上記のインクジェット記録方法(本発明のインクジェット記録方法)によって、本発明のインク組成物により画像が形成されたものである。
そのため、耐擦過性に優れ、表面のべとつきが抑制された画像を有する印刷物となる。
【0161】
また、本発明のインク組成物は、前記したように、一般的な印刷物の画像形成に好適に用いられる他、支持体等の被記録媒体に画像を形成した後に加工を施す態様においても好適に用いることができる。
今日において、成形加工が施された加飾シート等の印刷物は、様々な用途で使用されている。例えば、電化製品等に使用されるメンブレンスイッチ表面シートは、薄プラスチックシート(膜圧約100μmのPET、ポリカーボネート、ポリスチレン等)にイメージ(画像)が形成された後、スイッチ部分(クリック部分)にクリック感を出す目的で、エンボス加工が施される。またその他、印刷物をマット調に仕上げたり、デザイン上立体感を出すため、画像を形成した後の印刷物にエンボス加工を施す例が多く見られる。
【0162】
また、飲料水、茶やジュースなどの飲料商品の自動販売機が広く普及しており、これらの自動販売機には、販売される商品を示すダミー展示物が展示されている。これらのダミー展示物としては、まず透明性の熱可塑性樹脂シートに加飾印刷を施した(画像を形成した)平らな支持体を作製し、その後に実物大の飲料商品容器の半割の形にまで深絞り加工して立ち上がりの高い成形品(場合によっては25mm以上の深絞り)を作り、その背面より照明を与えることによって商品イメージを強くアピールするように作製されている。
【0163】
これらのような加飾された熱可塑性樹脂シートの深絞り成形品を作製するための加工方法としては、真空成形や圧空成形あるいは真空圧空成形が最も好適である。真空成形は原理的に、平坦な支持体を予め熱変形可能な温度まで予熱し、これを金型へ減圧によって吸引して延伸しながら金型に圧着冷却するものであり、圧空成形は金型の反対側から加圧して金型に圧着冷却するものである。また真空圧空成形は、前記減圧および加圧を同時に行うものである。
これらの加工が施される印刷物に用いられるインクの性能としては、得られた画像(印刷物)がひび割れや剥離等を起こしにくく、硬化膜の耐衝撃性、柔軟性、基材密着性に富むものが求められている。これに対し、本発明のインク組成物は、特定化合物を有していることから、表面を効率よく硬化することができるため衝撃に強く、更に、バルクを柔軟な膜(粘弾性が低い軟らかい膜)にしても表面の硬化性(粘弾性が高いべとつきが無い膜)を確保することができるため、画像形成後に上記加工が施される用途において、特に良好な効果を発揮することができる。
なお、本発明のインク組成物の用途としては、上記の中でも特に真空成型用が好ましい。
【実施例】
【0164】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0165】
<(A)重合性高分子化合物の合成>
−(A−1)の合成−
ポリアリルアミン10wt%水溶液(日東紡製PAA−25、重量平均分子量約Mw=25000)100質量部、キシレン50質量部、を160℃で撹拌し、分離装置を利用して水を留去し、キシレン溶液とした。
上記キシレン溶液に、p−メトキシフェノール少量を添加し、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製、4HBAGE、分子量:200.23)70.1質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−1)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=35000であった。
【0166】
−(A−2)の合成−
ポリアリルアミン10wt%水溶液(日東紡製PAA−25、重量平均分子量約Mw=25000)100質量部、キシレン50質量部を160℃で撹拌し、分離装置を利用して水を留去し、キシレン溶液とした。
上記キシレン溶液に、p−メトキシフェノール少量を添加し、グリシジルメタクリレート(日本油脂社製、分子量:142.15)、49.8質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−2)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=23000であった。
【0167】
−(A−3)の合成−
ポリアリルアミン10wt%水溶液(日東紡製PAA−25、重量平均分子量約Mw=25000)100質量部、キシレン50質量部を160℃で撹拌し、分離装置を利用して水を留去し、キシレン溶液とした。
上記キシレン溶液に、p−メトキシフェノール少量を添加し、3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(ダイキン社製、E−1630、分子量:376.1)6.6質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、サイクロマーA400(東亞合成社製、分子量:182.2)30.3質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−3)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=30000であった。
【0168】
−(A−4)の合成−
ポリアリルアミン10wt%水溶液(日東紡製PAA−H−10C、重量平均分子量約Mw=60000)100質量部、キシレン50質量部を160℃で撹拌し、分離装置を利用して水を留去し、キシレン溶液とした。
上記キシレン溶液に、p−メトキシフェノール少量を添加し、さらに3−パーフルオロヘキシル1,2−エポキシプロパン(ダイキン社製、E−1630、分子量:376.1)6.6質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工社製、カレンズMOI、分子量:155.15)25.8質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−4)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=69000であった。
【0169】
−(A−5)の合成−
ポリアリルアミン10wt%水溶液(日東紡製PAA−H−10C、重量平均分子量約Mw=60000)100質量部、キシレン50質量部を160℃で撹拌し、分離装置を利用して水を留去し、キシレン溶液とした。
上記キシレン溶液に、p−メトキシフェノール少量を添加し、さらに3−パーフルオロヘキシル1,2−エポキシプロパン(ダイキン社製、E−1630、分子量:376.1)6.6質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工社製、カレンズAOI、分子量:141.12)23.5質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−5)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=35000であった。
【0170】
−(A−6)の合成−
ポリアリルアミン10wt%水溶液(日東紡製PAA−H−10C、重量平均分子量約Mw=60000)100質量部、キシレン50質量部を160℃で撹拌し、分離装置を利用して水を留去し、キシレン溶液とした。
上記キシレン溶液に、p−メトキシフェノール少量を添加し、さらに末端エポキシ変性シリコーン(信越シリコーン社製、x−22−173DX、分子量:4780)8.4質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工社製、カレンズAOI、分子量:141.12)24.5質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−6)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=110000であった。
【0171】
−(A−7)の合成−
ポリアリルアミン10wt%水溶液(日東紡製PAA−H−10C、重量平均分子量約Mw=60000)100質量部、キシレン50質量部を160℃で撹拌し、分離装置を利用して水を留去し、キシレン溶液とした。
上記キシレン溶液に、p−メトキシフェノール少量を添加し、さらに末端エポキシ変性シリコーン(信越シリコーン社製、x−22−173DX、分子量:4780)8.4質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、無水メタクリル酸(アルドリッチ社製、分子量:154.16)26.7質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−7)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=130000であった。
【0172】
−(A−8)の合成−
ポリアリルアミン10wt%水溶液(日東紡製PAA−H−10C、重量平均分子量約Mw=60000)100質量部、キシレン50質量部を160℃で撹拌し、分離装置を利用して水を留去し、キシレン溶液とした。
上記キシレン溶液に、p−メトキシフェノール少量を添加し、さらにグリシジルメタクリレート(日本油脂社製、分子量:142.15)、2.5質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工社製、カレンズMOI、分子量:155.15)25.8質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−8)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=90000であった。
【0173】
−(A−9)の合成−
特公昭63−9523号公報に記載の方法を元に分子量20000のポリビニルアミンをポリビニルホルムアミドの加水分解によって得た。得られたポリビニルアミン10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製、4HBAG、分子量:200.23)93.0質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−9)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=71000であった。
【0174】
−(A−10)の合成−
上記重合性高分子化合物(A−9)の合成に用いたポリビニルアミンと同じポリビニルアミン10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、グリシジルメタクリレート(日本油脂社製、分子量:142.15)、33.0質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−10)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=68000であった。
【0175】
−(A−11)の合成−
上記重合性高分子化合物(A−9)の合成に用いたポリビニルアミンと同じポリビニルアミン10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(ダイキン社製、E−1630、分子量:376.1)8.7質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、サイクロマーA400(東亞合成社製、分子量:182.2)40.2質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−11)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=26000であった。
【0176】
−(A−12)の合成−
上記重合性高分子化合物(A−9)の合成に用いたポリビニルアミンと同じポリビニルアミン10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(ダイキン社製、E−1630、分子量:376.1)8.7質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工社製、カレンズMOI、分子量:155.15)34.2質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−12)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=26000であった。
【0177】
−(A−13)の合成−
上記重合性高分子化合物(A−9)の合成に用いたポリビニルアミンと同じポリビニルアミン10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、末端エポキシ変性シリコーン(信越シリコーン社製、x−22−173DX、分子量:4780)11.1質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、無水メタクリル酸(アルドリッチ社製、分子量:154.16)35.4質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−13)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=98000であった。
【0178】
−(A−14)の合成−
ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミンSP200、重量平均分子量約Mw=10000)10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、さらに4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製、4HBAG、分子量:200.23)46.5質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−14)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=36000であった。
【0179】
−(A−15)の合成−
ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミンSP200、重量平均分子量約Mw=10000)10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、グリシジルメタクリレート(日本油脂社製、分子量:142.15)、33.0質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−15)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=42000であった。
【0180】
−(A−16)の合成−
ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミンSP200、重量平均分子量約Mw=10000)10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン(ダイキン社製、E−1630、分子量:376.1)8.7質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、サイクロマーA400(東亞合成社製、分子量:182.2)38.1質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−16)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=88000であった。
【0181】
−(A−17)の合成−
ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミンSP200、重量平均分子量約Mw=10000)10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、3−パーフルオロヘキシル1,2−エポキシプロパン(ダイキン社製、E−1630、分子量:376.1)8.7質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工社製、カレンズMOI、分子量:155.15)32.4質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−17)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=66000であった。
【0182】
−(A−18)の合成−
ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミンSP200、重量平均分子量約Mw=10000)10質量部に、p−メトキシフェノール少量を添加し、末端エポキシ変性シリコーン(信越シリコーン社製、x−22−173DX、分子量:4780)11.1質量部をゆっくり滴下しながら、50℃で8時間反応した。その後、無水メタクリル酸(アルドリッチ社製、分子量:154.16)35.4質量部を添加し、50℃でさらに8時間反応した。電気透析に付し48時間かけて脱塩したのち、大量のヘキサン溶媒にて再沈、室温にて減圧乾燥し、重合性高分子化合物(A−18)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=22000であった。
【0183】
−比較化合物(C1)の合成−
特開2003−175668に記載の方法により、下記式の比較化合物(C1)を得た。GPC測定による重量平均分子量は、ポリスチレン換算でMw=70000であった。
【0184】
【化31】



【0185】
<実施例1:発光ダイオード(LED)による画像形成>
《インク組成物の調整》
・フェノキシエチルアクリレート 46質量部
・Actilane 421
(Akcros社製、アクリレートモノマー) 1.0質量部
・n−ビニルカプロラクタム 23質量部
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 0.4質量部
・Cinquasia Mazenta RT−355D 3.6質量部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Genorad 16(Rahn社製、安定剤) 0.05質量部
・Rapi−Cure DVE−3
(ISP Europe社製、ビニルエーテル) 8.0質量部
・Lucirin TPO(BASF社製、光重合開始剤分) 8.5質量部
・ベンゾフェノン(光重合開始剤) 4.0質量部
・Irgacure 184 4.0質量部
(Ciba Specialty Chemicals社製、光重合開始剤)
・Byk 307(BYK Chemie社製、消泡剤) 0.05質量部
・重合性高分子化合物(A−1)(前記記載の化合物) 0.9質量部
【0186】
調整したインク組成物を絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過した。
【0187】
《インクジェット画像記録》
次に、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱および加温を行った。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0188】
環境温度25℃にて、上記調整したインクを射出し、紫外発光ダイオード(UV−LED)を用い紫外線を照射した。触診で粘着性が無くなる様、完全に硬化するエネルギー量で露光した。被記録媒体としては、砂目立てしたアルミニウム支持体、印刷適性を持たせた表面処理済みの透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム、軟質塩化ビニルシート、キャストコート紙、市販の再生紙に各カラー画像を記録したところ、いずれもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。更に、上質紙においてもインクが裏周りすることなく、十分にインクが硬化し、未反応モノマーによる臭気が殆どしなかった。また、フィルムに記録したインクには十分な可とう性があり、折り曲げてもインクにクラックが入ることは無く、セロテープ(登録商標)剥離による密着性テストにおいても問題無かった。
【0189】
尚、上記UV−LEDとしては、日亜化学製のNCCU033を用いた。当該LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、500mAの電流を通電することにより、チップから100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体(以下、メディアとも言う)表面で0.3W/cmのパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、および露光時間はメディアの搬送速度およびヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、0.5秒後に露光される。
メディアとの距離および搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cmの間で調整することができる。
【0190】
<実施例2〜18>
実施例1における重合性高分子化合物(A−1)の代わりに、表1に記載の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜18のインク組成物を得た。
【0191】
<比較例1>
実施例1における重合性高分子化合物(A−1)を含有しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1のインク組成物を得た。
【0192】
<比較例2>
実施例1における重合性高分子化合物(A−1)の代わりに、表1に記載の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のインク組成物を得た。
【0193】
《インク組成物の評価》
実施例1〜18および比較例1〜2で得られたインク組成物(インク)について、本発明のインクジェット記録方法により、非記録媒体に画像を記録し、評価をおこなった。具体的な画像記録条件及びインク組成物の評価方法は以下の通りである。
【0194】
画像記録に用いたインクジェット記録装置は、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置である。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱および加温を行った。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8pl〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度100mW/cmに集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度および射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0195】
射出時の環境温度は25℃であり、UV−LEDとしては、日亜化学製NCCU033を用い、紫外線を各インク毎に照射した。前記LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体(以下、メディアとも言う。)表面で0.3W/cmのパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、及び露光時間はメディアの搬送速度及びヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。
メディアとの距離及び搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01J/cm〜15J/cmの間で調整することができる。なお、照射時間は、紫外線照射後の画像面において、粘着感の無くなるまでとした。また、被記録媒体としては、軟質塩化ビニルシートを用いた。
この条件で、インクの転写感度、吐出安定性、延伸率、及びインクを用いて形成した画像のブロッキング感度、耐擦過性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1中の各評価項目の測定・評価方法は以下の通りである。
【0196】
(感度の測定)
紫外線照射後の画像面において、インク画像が硬化して表面の粘着感が無くなる露光エネルギー量(mJ/cm)を感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
感度の許容範囲は、ラジカル系インクでは750mJ/cm以下であり、350mJ/cm以下であることが好ましい。
【0197】
(ブロッキング感度評価)
紫外線照射後の形成した画像上に、PETシート(サイズ:縦横共に画像形成した軟質塩化ビニルシートと同サイズ、重さ:2g/枚)を500枚重ね載せ、一日放置し、PETシートへの転写を目視評価した。PETシートへの転写は、画像が隣接するPETシートとのブロッキングを生じたことを意味する。PETシートへの転写が無くなる露光エネルギー量(mJ/cm)をブロッキング感度と定義した。
ブロッキング感度の許容範囲はラジカル系インクでは12,000mJ/cm以下であり、6,000mJ/cm以下であることが好ましい。
【0198】
(耐擦過性評価)
軟質塩化ビニルシート上に形成された紫外線照射後の画像を、消しゴム(ホシヤ製K−50 Plastic Eraser Keep)で擦り、消しゴムへの転写を目視評価した。消しゴムへの転写は、消しゴムの接触により画像の表面が擦り取られたことを意味する。評価基準は下記のとおりである。
−評価基準−
○ 消しゴムへの転写が無い
× 消しゴムへの転写がある
【0199】
(延伸率評価)
積算露光量12,000mJ/cm、照度:2140mW/cmとし、支持体をFassonPE(Fasson社製ポリエチレンフイルム:膜厚100um)を用いる以外は、上記と同様にして、硬化膜を作成した。得られた硬化膜を軸長5cm×幅2.5cmにカットし、引っ張り試験機(島津社製)を用いて、速度30cm/minで延伸させ、硬化膜が破断する伸び率を測定した。初期長から2倍の長さまで伸びた状態を伸び率100%と定義した。
ラジカル系インクでの延伸率の許容範囲は200%以上であり、300%以上であることが好ましい。
【0200】
(吐出安定性の評価)
インクジェットヘッドのノズルにおけるインクの吐出安定性を評価するために、下記の条件で、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置により60分連続吐出し、ノズルロス個数の評価を行った。
実験は、PET基板上にインク組成物を吐出して露光(露光量:1,000mW/cm)を行った場合のノズルロス数(ノズルが詰まってしまった数)を数えた。ノズルロスが0以上5個未満の場合○、ノズルロスが5個以上10個未満を△、10個以上を×とした。
−条件−
チャンネル数:318/ヘッド
駆動周波数:4.8kHz/dot
インク滴:7滴、42pl
温度:45℃
【0201】
【表1】

【0202】
表1から、本発明の硬化性組成物を含有する実施例のインク組成物はいずれも、比較例におけるインク組成物に比べ、高感度で硬化することが判る。また、本発明のインク組成物を用いて形成した画像は、比較例のインク組成物を用いて形成した画像に比べ、延伸性を維持しつつ、耐ブロッキング性及び耐擦過性に優れることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、及びポリエチレンイミンからなる群より選択される高分子化合物の側鎖に、ラジカル重合性基を有することを特徴とする重合性高分子化合物と、(B)前記(A)重合性高分子化合物とは構造の異なるラジカル重合性化合物と、(C)重合開始剤と、を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記(A)重合性高分子化合物は、さらに、フッ素置換炭化水素基及びシロキサン骨格からなる群より選択される少なくとも1種を側鎖に有する化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物を含有するインク組成物。
【請求項4】
インクジェット記録用である、請求項3に記載のインク組成物。
【請求項5】
被記録媒体上に、請求項3又は請求項4に記載のインク組成物を、インクジェット記録装置により吐出する工程と、
吐出された前記インク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程と、
を含む、インクジェット記録方法。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。

【公開番号】特開2010−84015(P2010−84015A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254622(P2008−254622)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】