説明

硬化性組成物およびその成形体

【課題】カルバゾイル基を有する化合物を含む成形体であって、十分な靭性を有する透明性に優れた成形体、および、このような成形体を形成し得る硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表される構造と2個以上のラジカル重合性二重結合とを1分子中に有する化合物を含む、硬化性組成物。


(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。OAは、直鎖または分岐のオキシエチレン、オキシプロピレン、およびオキシブチレンからなる群より選択される少なくとも1種のオキシアルキレン鎖を表す。nは、1〜100の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物および該硬化性組成物を硬化させて得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター用保護膜、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT(Thin Film Transistor)用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク用コーティング剤および接着剤、光ファイバー用コア材およびクラッド材、光ファイバー接続用接着剤、光導波路用コア材およびクラッド材等の様々な光学用物品への検討が盛んに行われている。プラスチック材料は成形加工が容易なこと、軽いこと等の特徴から幅広い用途に用いられるようになっている。
【0003】
光学レンズ等の光学部材用途として用いられている透明プラスチックにおいて、要求される性能として重要なものには、高屈折率、低比重、成形性、耐熱性、耐光性、復元性、耐衝撃性、高い硬度、低吸水性、成型品の歪精度、染色性等が挙げられる。近年では、これら特性の更なる向上が要求されるようになり、各種モノマー、オリゴマー、あるいはポリマーを用いて各種光学用途に応用可能なプラスチック材料が検討されてきた。
【0004】
通常、プラスチック材料を構造的に高屈折率な材料にする場合、プラスチック材料の分子構造中に芳香族環や不飽和基等のπ電子共役系の構造を導入する、もしくはフッ素原子以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子等の孤立電子対を有する原子を導入する等の方法がある。プラスチック材料の分子構造中に芳香族環を導入する場合は、導入される芳香族環の数により効果的に屈折率を高くすることができる。しかし、プラスチック材料、特にモノマーの場合においては、1分子中に芳香族環が多く入りすぎると成形時の硬化性が悪くなったり、硬化した場合であっても硬化して得られた光学部材そのものが黄変したり、硬度が高くなったものの脆くなったり、光学部材そのものの比重が大きくなる等の問題を生じる。また不飽和基を多く導入する方法では、それほど効果的な屈折率の上昇は期待できず、むしろ熱や光に対する安定性が悪くなることが懸念される。プラスチック材料の分子構造中にフッ素原子以外のハロゲン原子を導入する方法は、プラスチック材料そのものの屈折率を高くする効果は大きいが、ハロゲン原子を導入すればするほど硬化して得られる光学部材の比重が極めて大きくなり、さらには透明感のある硬化物が得られなかったり、耐衝撃性が悪くなったり、一般の分散染料による染色性に問題が生じることがある。プラスチック材料の分子構造中に硫黄原子を導入する方法も屈折率を高くする効果は大きいが、一般に硬化する前の樹脂組成物そのもの、あるいは硬化物から臭気が生じやすい。プラスチック材料の分子構造中にリン原子を導入する方法も、リン原子の導入が少ないと屈折率を高くする効果が十分に得られず、リン原子の導入がある程度多くなると硬化物そのものが脆くなったり、白化によって透明性が悪くなったり、吸水性が向上して耐水性が悪くなる可能性が強くなる。
【0005】
一方、カルバソイル基を有する化合物は、高屈折率、フォトリフラクティブ性、光導電性、正孔移送性等の光学特性に優れることが知られており、上記光学部材のみならず、ホログラム材料、あるいは複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成用トナーや画像形成部材、有機ELデバイス等への応用が期待されている(例えば、特許文献1〜3)。特に最近では、プラスチック材料に対する高屈折率化への要望から、カルバゾイル基を有する化合物の高屈折率が着目され、新規な透明性の高いプラスチック材料を開発する試みが多数行われている。しかし、低分子量のカルバゾール化合物を樹脂組成物に添加して用いる場合、ポリマーとの溶解性が悪く、均一に混合できないことが多い。また、強制的に均一混合を行った場合でも、樹脂マトリックスからのブリードアウト等の問題が発生する。また、反応性カルバゾール化合物であるN−ビニルカルバゾール(NVCz)は、低溶解性に加え、低共重合性、および毒性等の問題を有している。NVCzの重合体であるポリN−ビニルカルバゾールは、溶剤や可塑剤との相溶性が極めて悪く、さらに得られた成形体においても脆弱性や低靭性の問題から実用性が不十分である。従って、容易に硬化物を得ることができ、硬化成形体が高屈折率であって、透明性および靭性が高く、かつ取り扱いが容易なプラスチック材料が切望されている。
【特許文献1】特許第3124343号
【特許文献2】特開平6−16720号
【特許文献3】特開平5−210344号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、カルバゾイル基を有する化合物を含む成形体であって、十分な靭性を有する透明性に優れた成形体、および、このような成形体を形成し得る硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の硬化性組成物は、一般式(1)で表される構造と2個以上のラジカル重合性二重結合とを1分子中に有する化合物を含む。
【化1】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。OAは、直鎖または分岐のオキシエチレン、オキシプロピレン、およびオキシブチレンからなる群より選択される少なくとも1種のオキシアルキレン鎖を表す。nは、1〜100の整数を表す。)
【0008】
好ましい実施形態においては、上記化合物が、エステル結合、ウレタン結合、アセタール結合、およびヘミアセタール結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を介してラジカル重合性二重結合を有する。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記硬化性組成物が、反応性希釈剤をさらに含む。
【0010】
本発明の別の局面によれば、成形体が提供される。該成形体は、上記硬化性組成物を硬化させて得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カルバゾイル基を有する化合物を含み、十分な靭性と透明性とを有する成形体、および、このような成形体を形成し得る硬化性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
《A.硬化性組成物》
本発明の硬化性組成物は、一般式(1)で表される構造と2個以上のラジカル重合性二重結合とを1分子中に有する化合物を含む。該化合物がカルバゾイル基および架橋点となるラジカル重合性二重結合を有するので、本発明の硬化性組成物は、高透明性かつ高強度の成形体を形成し得る。該硬化性組成物は、好ましくは反応性希釈剤をさらに含む。
【0013】
A−1.一般式(1)で表される構造と2個以上のラジカル重合性二重結合とを1分子中に有する化合物
一般式(1)で表される構造と2個以上のラジカル重合性二重結合とを1分子中に有する化合物(以下、「カルバゾイル基含有多官能化合物」と称する場合がある。)としては、任意の適切な化合物が採用され得る。好ましくは、一般式(1)で表される構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを1分子中に有する化合物である。より好ましくは、ラジカル重合性二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基)が、エステル結合、ウレタン結合、アセタール結合、および/またはヘミアセタール結合を介して導入されている化合物である。このような化合物を用いる場合、得られる成形体が、さらに高靭性化し得るからである。カルバゾイル基含有多官能化合物は、一般式(1)で表される構造を有することにより、他のポリマーやラジカル重合性材料との相溶性が高くなるので、これらの材料と混合した場合でも、相分離等の問題が実質的に生じない。その結果、本発明の硬化性組成物は、透明性の高い成形体を形成することができる。また、カルバゾイル基含有多官能化合物が、2個以上のラジカル重合性二重結合を有するので、本発明の硬化性組成物を硬化させた場合には、緻密な架橋構造を有する高強度の成形体を得ることができる。
【化2】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。OAは、直鎖または分岐のオキシエチレン、オキシプロピレン、およびオキシブチレンからなる群より選択される少なくとも1種のオキシアルキレン鎖を表す。nは、1〜100の整数を表す。)
【0014】
一般式(1)中、OAは、好ましくは直鎖のオキシエチレン鎖または分岐のオキシプロピレン鎖、より好ましくは直鎖のオキシエチレン鎖である。nは、好ましくは1〜80、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜10の整数である。nが100を超えると、カルバゾイル基の含有量が相対的に低下するので、カルバゾイル基の効果(例えば、高屈折率)が十分に得られないこと、得られる成形体が軟質化して耐熱性が低下すること等の問題が生じる場合がある。
【0015】
カルバゾイル基含有多官能化合物は、従来公知の方法によって調製され得る。より詳しくは後述するが、例えば、一般式(2)で表されるカルバゾール単量体と、反応可能な官能基を有するラジカル重合性単量体とを含む単量体組成物を共重合させて共重合体(以下、「官能基含有共重合体」と称する場合がある。)を合成した後、次いで、該官能基含有共重合体が含有する官能基と反応可能な官能基を有するラジカル重合性二重結合含有化合物と反応する方法が挙げられる。
【化3】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。OAは、直鎖または分岐のオキシエチレン、オキシプロピレン、およびオキシブチレンからなる群より選択される少なくとも1種のオキシアルキレン鎖を表す。nは、1〜100の整数を表す。)
【0016】
一般式(2)中、OAは、好ましくは直鎖のオキシエチレン鎖または分岐のオキシプロピレン鎖、より好ましくは直鎖のオキシエチレン鎖である。nは、好ましくは1〜80、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜10の整数である。
【0017】
一般式(2)で表されるカルバゾール単量体は、任意の適切な方法で調製され得る。例えば、N−(ヒドロキシアルキル)カルバゾールのエステル化反応を用いて調製され得る。
【0018】
単量体組成物中における一般式(2)で表されるカルバゾール単量体の含有量の下限は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上である。同様に、含有量の上限は、好ましくは99重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。このような含有量に設定することによって、取り扱いの容易な硬化性組成物が得られ得る。さらに、透明性に優れ、かつ、高屈折率な成形体が得られ得る。
【0019】
上記ラジカル重合性単量体としては、好ましくは(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ラジカル重合性単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ラジカル重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、1−メチル−1,2−エポキシエチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ラジカル重合性単量体;2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、1,1’−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有ラジカル重合性単量体;(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル基含有ラジカル重合性単量体;等が挙げられる。
【0020】
単量体組成物中における上記ラジカル重合性単量体の含有量の下限は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上である。同様に、含有量の上限は、好ましくは99重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。このような含有量に設定することによって、硬化性に優れ、かつ、取り扱いの容易な硬化性組成物が得られ得る。さらに、十分な靭性を有し、透明性に優れた成形体が得られ得る。
【0021】
単量体組成物は、必要に応じて、上記以外の他の重合性単量体を含有することができる。他の重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の単官能N−ビニル化合物類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル等の単官能ビニル化合物類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、メチレンマロン酸ジメチル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等の単官能α,β−不飽和化合物類が挙げられる。
【0022】
単量体組成物中における上記「他の重合性単量体」の含有量の下限は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上である。同様に、含有量の上限は、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下である。「他の重合性単量体」を上記範囲で共重合成分として加えることにより、各種用途の要求物性を満足し、かつ、十分な透明性および靭性を有する成形体を提供し得る共重合体が得られ得る。
【0023】
単量体組成物の重合方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、溶液重合、懸濁重合、およびエマルション重合が挙げられる。好ましくは溶液重合である。
【0024】
溶液重合に用いられる溶媒としては、任意の適切な溶媒を採用し得る。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、(ジ)エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸(ジ)メチル、コハク酸(ジ)メチル、アジピン酸(ジ)メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等;スルホラン、ジメチルスルホンホキシド、ジクロロメタン、クロロホルム等が用いられる。上記溶媒は、1種のみ用いても良いし、2種以上併用しても良い。
【0025】
溶液重合においては、代表的には、反応系内に予め溶媒を仕込んでおき、次いで、単量体溶液および開始剤溶液を滴下する。必要に応じて、メルカプタン化合物等の連鎖移動剤溶液を滴下してもよい。各溶液の濃度については、任意の適切な濃度を採用し得る。
【0026】
開始剤としては、任意の適切な開始剤を採用し得る。具体的には、後述のラジカル重合性開始剤が好ましく用いられる。開始剤は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0027】
開始剤の使用量は、単量体の種類、濃度等に応じて適切に設定され得る。開始剤の使用量の下限は、単量体組成物100重量部に対して、通常、0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上である。同様に、使用量の上限は、通常、20重量部以下、好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。開始剤の使用量を上記範囲に設定することによって、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得ることができる。
【0028】
滴下に要する時間(滴下時間)は、好ましくは60分以上、より好ましくは90分以上であり、好ましくは420分以下、より好ましくは300分以下、さらに好ましくは240分以下である。滴下時間は、滴下する単量体や開始剤の種類によって、それぞれ異なっていても良い。滴下時間が60分未満であると、重合発熱が大きくなりすぎる場合がある。この場合、温度制御が困難になるので、得られる共重合体の分子量分布が大きくなるおそれある。滴下時間が420分を超えると、生産性の点で問題が生じるおそれがある。
【0029】
上記重合反応における重合温度は、開始剤によって、任意の適切な温度を採用し得る。重合温度は、通常、50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、通常、180℃以下、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下である。重合温度は、重合反応中、一定であってもよく、段階的に変化させてもよい。重合温度が高すぎると、得られる共重合体の分子量分布が大きくなるおそれがある。重合温度が低すぎると、未反応の単量体の残存量が増加するおそれがある。なお、重合温度とは、重合反応中の反応溶液の温度をいう。重合温度の測定方法や制御手段については、任意の適切な方法や手段を採用し得る。例えば、一般に使用される装置を用いて測定すれば良い。
【0030】
代表的には、滴下終了後の反応液をさらに熟成させる。熟成時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上であり、好ましくは420分以下、より好ましくは360分以下である。熟成時間が10分間未満の場合には、熟成が不十分なために単量体成分が残ることがあり、残存単量体に起因する不純物が形成して性能低下等を招くおそれがある。熟成時間が420分間を超える場合には、生産性の点で問題が生じたり、着色が生じるおそれがある。
【0031】
上記重合反応によって得られる官能基含有共重合体と、該共重合体が含有する官能基との反応性を有する官能基を有するラジカル重合性二重結合含有化合物とを反応させる方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、官能基含有共重合体が有する官能基と、ラジカル重合性二重結合含有化合物が有する官能基との組み合わせに応じて、エステル化反応、ウレタン化反応、アセタール化(ヘミアセタール化)反応が採用され得る。
【0032】
ラジカル重合性二重結合含有化合物としては、上記ラジカル重合性単量体と同様の化合物を用いることができる。
【0033】
上記官能基の組み合わせが、カルボキシル基と水酸基、カルボキシル基とエポキシ基、酸無水物基と水酸基である場合、エステル化反応が好ましく用いられる。エステル化反応においては、代表的には、エステル化触媒の存在下、官能基含有共重合体とラジカル重合性二重結合含有化合物とを反応させる。反応温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。反応時間は、好ましくは60分以上、より好ましくは120分以上であり、好ましくは420分以下、より好ましくは360分以下である。エステル化触媒としては、任意の適切なものが採用され得る。具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジアザビシクロオクタン等の3級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩;2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルスチビン等が挙げられる。
【0034】
上記官能基の組み合わせが、水酸基とイソシアネート基である場合、ウレタン化反応が好ましく用いられる。ウレタン化反応においては、代表的には、ウレタン化触媒の存在下、官能基含有共重合体とラジカル重合性二重結合含有化合物とを反応させる。反応温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。反応時間は、好ましくは60分以上、より好ましくは120分以上であり、好ましくは420分以下、より好ましくは360分以下である。ウレタン化触媒としては、任意の適切なものが採用され得る。具体例としては、アルキルチタン酸塩、オクチル酸塩、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛等の各種のカルボン酸の金属塩類;モノブチル錫サルファイド、ジオクチル錫メルカプタイト等のスルフィド型またはメルカプチド型の各種の有機錫化合物が挙げられる。
【0035】
上記官能基の組み合わせが、水酸基とビニルエーテル基、カルボキシル基とビニルエーテル基である場合、アセタール化(ヘミアセタール化)反応が好ましく用いられる。アセタール化(ヘミアセタール化)反応においては、代表的には、アセタール化(ヘミアセタール化)触媒の存在下、官能基含有共重合体とラジカル重合性二重結合含有化合物とを反応させる。反応温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。反応時間は、好ましくは60分以上、より好ましくは120分以上であり、好ましくは420分以下、より好ましくは360分以下である。反応終了後に、触媒を不活性化することが好ましい。アセタール化(ヘミアセタール化)触媒としては、任意の適切なものが採用され得る。具体例としては、酸が好適である。酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ピルビン酸、グリコール酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、マロン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;安息香酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸キノリニウム塩等の芳香族スルホン酸またはその塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸ジルコニウム等の硫酸塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩;硫酸、塩酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸;リンバ等のモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸等のヘテロポリ酸;酸性ゼオライト;ベースレジンがフェノール系樹脂またはスチレン系樹脂であり、ゲル型、ポーラス型またはマクロポーラス型の何れかの形態を示し、かつ、スルホン酸基およびアルキルスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種のイオン交換基を有する酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0036】
上記各反応においては、重合禁止剤を用いることが好ましい。ラジカル重合性二重結合含有化合物同士の所望しない重合反応を防止し得るからである。重合禁止剤としては、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系重合禁止剤;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、キノン系やN−オキシル類の重合禁止剤が好ましく、ベンゾキノン、フェノチアジンや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等がより好ましく用いられる。
【0037】
反応終了後、得られたカルバゾイル基含有多官能化合物は、再沈殿法等の任意の適切な精製方法により、精製することができる。
【0038】
上記各反応における官能基含有共重合体およびラジカル重合性二重結合含有化合物の使用量は、得られるカルバゾイル基含有多官能化合物の用途等に応じて適切に設定され得る。ラジカル重合性二重結合含有化合物の使用量の下限は、官能基含有共重合体100重量部に対し、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは20重量部以上である。同様に、使用量の上限は、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下、さらに好ましくは150重量部以下である。
【0039】
上記のようにして得られるカルバゾイル基含有多官能化合物の数平均分子量の下限は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上である。同様に、数平均分子量の上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。このような分子量であれば、低粘度で成形性に優れた硬化性組成物を得ることができる。
【0040】
カルバゾイル基含有多官能化合物の二重結合当量(二重結合1個当たりの分子量)の下限は、好ましくは150以上、より好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上、特に好ましくは300以上である。同様に、二重結合当量の上限は、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、さらに好ましくは3,000以下、特に好ましくは2,000以下である。二重結合当量が150未満であると、硬化によって得られる成形体が硬くなりすぎ、脆くなる場合がある。二重結合当量が10,000を超えると、得られる成形体の耐熱性および耐溶剤性が不十分となる場合がある。
【0041】
カルバゾイル基含有多官能化合物は、必要に応じて、さらにカルボキシル基を含有してもよい。カルボキシル基を含有することにより、アルカリ現像性を得ることができ、フォトリソグラフィーによってファインパターンを形成することが可能となる。また、カルボキシル基を含有することによって、ガラス、金属、プラスチック等の基材への密着性が向上し得る。カルバゾイル基含有多官能化合物の酸価の下限は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上である。同様に、酸価の上限は、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、さらに好ましくは120mgKOH/g以下である。酸価がこのような範囲である場合、アルカリ現像液によって現像することが可能になる。また、ガラス、金属、プラスチック等の基材への密着性がさらに向上し得る。
【0042】
硬化性組成物中におけるカルバゾイル基含有多官能化合物の含有量の下限は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。同様に、含有量の上限は、好ましくは99重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。該含有量が1重量%未満であると、カルバゾイル基の含有量が低下するので、カルバゾイル基の効果(例えば、高屈折率)が十分に得られない場合がある。また、該含有量が99重量%を超えると、硬化性組成物の粘度が高くなり、作業性が低下する場合がある。
【0043】
A−2.反応性希釈剤
反応性希釈剤としては、任意の適切なものが採用され得る、好ましくは25℃での粘度が1Pa・s以下の液状物質である。このような反応性希釈剤を用いることにより、低粘度で成形性に優れた硬化性組成物を得ることができる。反応性希釈剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
反応性希釈剤としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル、α−ブロモメチルアクリル酸メチル、α−ブロモメチルアクリル酸エチル、α−ブロモメチルアクリル酸ブチル、α−アセトキシメチルアクリル酸メチル等の単官能(メタ)アクリレート類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、
N−ビニルアセトアミド等の単官能N−ビニル化合物類;スチレン、α−メチルスチレン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等の単官能ビニル化合物類;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノメチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸モノメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、クロトン酸、クロトン酸メチル等の単官能α,β−不飽和化合物類;メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキシルメチルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、ジシクロペンテニルグリシジルエーテル、メトキシエチルグリシジルエーテル、エトキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエチルグリシジルエーテル、メトキシエトキシエチルグリシジルエーテル、エトキシエトキシエチルグリシジルエーテル、メトキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリルグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチルグリシジルエーテル、2−ヒドロキシプロピルグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル等の単官能エポキシ化合物類;3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等の単官能脂環式エーテル化合物類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ化合物類;ジ[1−メチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ビス{4−[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンジルエーテル、ビス{4−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンジルエーテル等の多官能脂環式エーテル化合物類;(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;等が挙げられる。これらの中でも、単官能アクリレート類、単官能アクリルアミド類、単官能ビニルエーテル類、単官能エポキシ化合物類、単官能脂環式エーテル化合物類、多官能アクリレート類、多官能アクリルアミド類、多官能ビニルエーテル類、多官能エポキシ化合物類、多官能脂環式エーテル化合物類、フマル酸エステル類、マレイン酸エステル類、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が好適に用いられる。
【0045】
また、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート、ポリアミドポリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有硬化性樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂類、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ基含有硬化性樹脂;エポキシポリ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基−エポキシ基両含有硬化性樹脂;等の硬化性樹脂を反応性希釈剤として用いることができる。このような硬化性樹脂の数平均分子量の下限は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは2,000以上である。同様に、数平均分子量の上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。
【0046】
硬化性組成物中における反応性希釈剤の含有量の下限は、カルバゾイル基含有多官能化合物100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上である。同様に、含有量の上限は、好ましくは2000重量部以下、より好ましくは1000重量部以下、さらに好ましくは500重量部以下である。1重量部より少ないと硬化性組成物の粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。2000重量部を越えると硬化性組成物が硬化して得られる硬化物の物性に対する反応性希釈剤の影響が大きくなるので好ましくない。
【0047】
A−3.その他の成分
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、重合開始剤、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤、その他の添加剤等を含み得る。
【0048】
重合開始剤としては、熱により重合開始効果を発揮する熱重合開始剤および/または光により重合開始効果を発揮する光重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は、1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
熱重合開始剤としては、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤と、加熱により重合開始カチオンを発生する熱カチオン重合開始剤が挙げられる。好ましくは熱ラジカル重合開始剤である。反応性に優れるからである。
【0050】
熱ラジカル重合開始剤としては、任意の適切なものが用いられ得る。具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド等の金属石鹸および/またはアミン化合物等の触媒作用により効率的にラジカルを発生させることができる化合物や2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)が好適である。
【0051】
前記光重合開始剤としては、光線の照射により重合開始ラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤と、光線の照射により重合開始カチオンを発生する光カチオン重合開始剤が挙げられる。好ましくは光ラジカル重合開始剤である。反応性に優れるからである。
【0052】
光ラジカル重合開始剤としては、任意の適切なものが用いられ得る。具体的には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類が好適である。特に2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1オンが好適である。
【0053】
硬化性組成物中における重合開始剤の含有量の下限は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.2重量%以上である。また、含有量の上限は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。重合開始剤が0.05重量%より少ないと十分な硬化が得られないおそれがあり、20重量%より多くても硬化物の物性の更なる改善は認められず、むしろ悪影響を及ぼすおそれがある上、経済性を損なうことがある。
【0054】
その他の添加物としては、無機充填剤、非反応性樹脂(例えば、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等)、有機溶剤、着色顔料、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤等が挙げられる。これら添加物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
硬化性組成物中における上記その他の添加物の添加量は、添加物の種類、添加物の使用目的、硬化性組成物の用途、硬化性組成物の使用方法等により適切に設定され得る。
【0056】
例えば、上記無機充填剤としては、硬化性組成物全体に対して、添加量下限が、1重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、添加量上限が、800重量%以下が好ましく、600重量%以下がより好ましく、500重量%以下がさらに好ましい。
【0057】
上記非反応性樹脂、有機溶剤、着色顔料、可塑剤、揺変化剤としては、硬化性組成物全体に対して、添加量下限が、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、添加量上限が、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましい。
【0058】
上記重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変助剤としては、硬化性組成物全体に対して、添加量下限が、0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、0.01重量%以上がさらに好ましく、添加量上限が、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。
【0059】
A−4.製造方法
本発明の硬化性組成物は、代表的には、上記の各成分を混合することにより得られる。必要に応じて溶媒を混合してもよい。溶媒としては、上記各成分を溶解し得る溶媒が好ましく用いられる。例えば、上記溶液重合で用いられ得る溶媒が挙げられる。
【0060】
《B.成形体》
本発明の成形体は、上記硬化性組成物を硬化させて得られる。硬化方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、加熱、活性エネルギー線照射等により硬化させることができ、好ましくは電磁波、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、ガンマー線等の活性エネルギー線を用いて硬化させる。なかでも、紫外線および電子線照射が好ましい。成形体の靭性および加工密着性を向上させることができるからである。
【0061】
上記紫外線による硬化の場合、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いることが好ましい。この様な光源としては、具体的には、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等が好適である。これらの光源と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。照射量は、例えば、100〜5000mJ/cmであり得る。
【0062】
上記電子線による硬化は、加速電圧の下限が、好ましくは10kV以上、より好ましくは20kV以上、さらに好ましくは30kV以上、その上限が、好ましくは500kV以下、より好ましくは300kV以下、さらに好ましくは200kV以下である電子線を用いればよい。また、照射量は、その下限が、2kGy以上が好ましく、3kGy以上がより好ましく、5kGy以上がさらに好ましく、その下限が、500kGy以下が好ましく、300kGy以下がより好ましく、200kGy以下がさらに好ましい。電子線と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0063】
成形体の形状は、用途等に応じて適切に設定され得る。例えば、硬化性組成物を任意の適切な基材上に塗布し、硬化させることにより、シート状の成形体が得られる。また、硬化性組成物を任意の適切な成形型に注入し、硬化させることにより、所望の形状の成形体が得られる。
【0064】
本発明の成形体は、高い靭性と非常に優れた透明性を有し、さらに、カルバゾイル基を有するので、高い屈折率をも有する。したがって、本発明の成形体は、例えば、液晶表示素子用カラーフィルター着色レジスト、樹脂ブラックマトリックス、保護膜用オーバーコート剤、柱状スペーサー、液晶シール材、光学フィルム用ハードコート、AGバインダー、拡散フィルムバインダー、AR用高屈折材料、LR用高屈折材料、透明電極、位相差フィルム、拡散板用途、AG用途等に用いられる有機微粒子、プリント配線基板用ソルダーレジスト、エッチングレジスト、無電解メッキレジスト、光センサー素子、ICカード接着剤、フォトリフラクティブ・フォトポリマー等のホログラム材料、複写機・プリンター・ファクシミリ用画像形成トナー、画像形成部材、有機EL用正孔移送層、発光層、PS版、CTP印刷版等の刷版用感光性材料、光導波路、フレネルレンズ・レンチキュラーレンズ・プリズムシート・カメラ用レンズ・マイクロレンズアレイ等のレンズ材料に用いることが可能である。特に、光学フィルム用ハードコート、AGバインダー、拡散フィルムバインダー、AR用高屈折材料、LR用高屈折材料、光導波路、フレネルレンズ・レンチキュラーレンズ・プリズムシート・カメラ用レンズ・マイクロレンズアレイ等のレンズ材料用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0066】
実施例における各測定方法を以下に示す。
〔分子量〕
数平均分子量および重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の値である。
測定装置:東ソー社製「HLC−8220GPC」
カラム:東ソー社製「TSK Gel−SuperHM−N」2本、および「TSK Gel−SuperH2000」1本をこの順で接続したもの
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
〔酸価〕
電位差滴定によって測定した。
【0067】
[合成例1]
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた1リットルのフラスコに、シクロヘキサノン148.1gを入れ、充分窒素置換した後、90℃に昇温した。続いて、カルバゾイルエチルアクリレート106gと、アクリル酸43.2gと、n−ドデシルメルカプタン2.02gと、シクロヘキサノン180gとの混合液およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製、製品名「パーブチルO」)1.49gとシクロヘキサノン20gとの混合液を同時に2時間かけて系内に滴下した。滴下終了後90℃で2時間、次いで、110℃で2時間かけて重合を行った。
【0068】
得られた反応液に重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「4H−TEMPO」と略す。)0.015gを添加した。次いで、グリシジルメタクリレート42.6gおよびエステル化触媒としてテトラフェニルホスホニウムブロマイド0.96gを添加し、空気:窒素=1:2(体積比)の混合ガスを吹き込みながら115℃で4時間エステル化反応を行った。
【0069】
得られた重合体溶液を、大量のメタノール中に攪拌しながらゆっくり滴下してポリマーを再沈し、ろ過および乾燥を行って重合体(1)を得た。得られた重合体(1)の数平均分子量は9500、重量平均分子量は17200であった。また、得られた重合体(1)の酸価は、89mgKOH/gであった。
【0070】
[合成例2]
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた1リットルのフラスコに、シクロヘキサノン123.8gを入れ、充分窒素置換した後、90℃に昇温した。続いて、カルバゾイルエチルアクリレート185.5gと、ヒドロキシエチルメタクリレート39gと、n−ドデシルメルカプタン2.02gと、シクロヘキサノン380gとの混合液およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製、製品名「パーブチルO」)2.25gとシクロヘキサノン20gとの混合液を同時に2時間かけて系内に滴下した。滴下終了後90℃で2時間、次いで、110℃で2時間かけて重合を行った。
【0071】
得られた反応液に重合禁止剤として4H−TEMPO 0.023gを添加した後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、製品名「カレンズAOI」)42.3gおよびウレタン化触媒としてジブチル錫ジラウレート0.27gを添加し、空気:窒素=1:2(体積比)の混合ガスを吹き込みながら70℃で4時間ウレタン化反応を行った。
【0072】
得られた重合体溶液を、大量のメタノール中に攪拌しながらゆっくり滴下してポリマーを再沈し、ろ過および乾燥を行って重合体(2)を得た。得られた重合体(2)の数平均分子量は10100、重量平均分子量は23000であった。
【0073】
[合成例3]
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた1リットルのフラスコに、シクロヘキサノン148.1gを入れ、充分窒素置換した後、90℃に昇温した。続いて、カルバゾイルエチルアクリレート106gと、アクリル酸43.2gと、n−ドデシルメルカプタン2.02gと、シクロヘキサノン180gとの混合液およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製、製品名「パーブチルO」)1.49gとシクロヘキサノン20gとの混合液を同時に2時間かけて系内に滴下した。滴下終了後90℃で2時間、次いで、110℃で2時間かけて重合を行った。
【0074】
得られた反応液に重合禁止剤として4H−TEMPO 0.023gを添加した後、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート(日本触媒製、以下、「VEEA」と略す。)42.3gおよびアセタール化触媒として塩酸(35%塩化水素水溶液)0.103gを添加し、空気:窒素=1:2(体積比)の混合ガスを吹き込みながら60℃で4時間アセタール化反応を行った。反応終了後、グリシジルメタクリレート0.28gを添加して触媒である塩化水素を不活性化した。
【0075】
得られた重合体溶液を、大量のメタノール中に攪拌しながらゆっくり滴下してポリマーを再沈し、ろ過および乾燥を行って重合体(3)を得た。得られた重合体(3)の数平均分子量は8500、重量平均分子量は19700であった。また、得られた重合体(3)の酸価は、102mgKOH/gであった。
【0076】
[合成例4]
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた1リットルのフラスコに、シクロヘキサノン123.8gを入れ、充分窒素置換した後、90℃に昇温した。続いて、カルバゾイルエチルアクリレート185.5gと、ヒドロキシエチルメタクリレート39gと、n−ドデシルメルカプタン2.02gと、シクロヘキサノン380gとの混合液およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製、製品名「パーブチルO」)2.25gとシクロヘキサノン20gとの混合液を同時に2時間かけて系内に滴下した。滴下終了後90℃で2時間、次いで、110℃で2時間かけて重合を行った。
【0077】
得られた反応液に重合禁止剤として4H−TEMPO 0.023gを添加した後、VEEA55.9gと塩酸(35%塩化水素水溶液)0.14gを添加し、空気:窒素=1:2(体積比)の混合ガスを吹き込みながら60℃で4時間アセタール化反応を行った。反応終了後、グリシジルメタクリレート0.38gを添加して触媒である塩化水素を不活性化した。
【0078】
得られた重合体溶液を、大量のメタノール中に攪拌しながらゆっくり滴下してポリマーを再沈し、ろ過および乾燥を行って重合体(4)を得た。得られた重合体(4)の数平均分子量は9000、重量平均分子量は20600であった。
【0079】
[合成例5]
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた1リットルのフラスコに、シクロヘキサノン161.2gを入れ、充分窒素置換した後、90℃に昇温した。続いて、カルバゾイルエチルメタクリレート111.6gと、アクリル酸43.2gと、n−ドデシルメルカプタン2.02gと、シクロヘキサノン180gとの混合液およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製、製品名「パーブチルO」)1.55gとシクロヘキサノン20gとの混合液を同時に2時間かけて系内に滴下した。滴下終了後90℃で2時間、次いで、110℃で2時間かけて重合を行った。
【0080】
得られた反応液に重合禁止剤として4H−TEMPO 0.016gを添加した後、VEEA55.9gと塩酸(35%塩化水素水溶液)0.105gを添加し、空気:窒素=1:2(体積比)の混合ガスを吹き込みながら60℃で4時間アセタール化反応を行った。反応終了後、グリシジルメタクリレート0.29gを添加して触媒である塩化水素を不活性化した。
【0081】
得られた重合体溶液を、大量のメタノール中に攪拌しながらゆっくり滴下してポリマーを再沈し、ろ過および乾燥を行って重合体(5)を得た。得られた重合体(5)の数平均分子量は8800、重量平均分子量は20200であった。また、得られた重合体(5)の酸価は、91mgKOH/gであった。
【0082】
[合成例6]
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた1リットルのフラスコに、シクロヘキサノン190gを入れ、充分窒素置換した後、90℃に昇温した。続いて、カルバゾイルエチルアクリレート188.5gと、アクリル酸21.6gと、n−ドデシルメルカプタン2.02gと、シクロヘキサノン280gとの混合液およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製、製品名「パーブチルO」)1.49gとシクロヘキサノン20gとの混合液を同時に2時間かけて系内に滴下した。滴下終了後90℃で2時間、次いで、110℃で2時間かけて重合を行った。
【0083】
得られた重合体溶液を、大量のメタノール中に攪拌しながらゆっくり滴下してポリマーを再沈し、ろ過および乾燥を行って重合体(6)を得た。得られた重合体(6)の数平均分子量は6700、重量平均分子量は11000であった。また、得られた重合体(6)の酸価は、79mgKOH/gであった。
【0084】
[合成例7]
攪拌装置、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管、および滴下装置を備えた1リットルのフラスコに、トルエン218gを入れ、充分窒素置換した後、90℃に昇温した。続いて、カルバゾイルエチルアクリレート265gと、n−ドデシルメルカプタン2.02gと、トルエン380gとの混合液およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製、製品名「パーブチルO」)2.65gとシクロヘキサノン20gとの混合液を同時に2時間かけて系内に滴下した。滴下終了後90℃で2時間、次いで、110℃で2時間かけて重合を行った。
【0085】
得られた重合体溶液を、大量のメタノール中に攪拌しながらゆっくり滴下してポリマーを再沈し、ろ過および乾燥を行って重合体(7)を得た。得られた重合体(7)の数平均分子量は6500、重量平均分子量は9700であった。
【0086】
[実施例1〜8、比較例1〜3]
表1に示す配合で各成分を混合し、均一な溶液として硬化性組成物を得た。この硬化性組成物を厚み125μmのPETフィルム上に#42のバーコーターによって均一に塗布した。塗布後のPETフィルムをガラス板の上にセロハンテープで固定し、熱風乾燥機内に80℃30分間静置して溶媒を除去することにより塗膜を得た。次に、UV照射装置(ウシオ電機株式会社製、250W超高圧水銀灯、主波長365nm、365nmにおける照射強度32mJ/cm)内に上記塗膜が形成されたPETフィルムを設置し、500mJ/cmのエネルギーのUVを照射して、塗膜を硬化させた。得られた硬化塗膜(成形体)について、外観観察および折り曲げ試験を以下のとおり行った。
【0087】
〔外観観察〕
得られた硬化塗膜の外観を目視で観察し、以下の基準によって評価した。結果を表1に示す。
○:透明である
×:ニゴリが認められる
【0088】
〔折り曲げ試験〕
得られた硬化塗膜を直径10mmのガラス棒に巻きつけたときのクラックの発生を目視で観察し、以下の基準によって評価した。結果を表1に示す。
○:クラックの発生が認められない
×:クラックの発生が認められる
【0089】
【表1】

【0090】
[実施例9〜13、比較例4]
表2に示す配合で各成分を混合し、均一な溶液として硬化性組成物を得た。厚み125μmのPETフィルム上に厚さ0.5mmのシリコーンゴムで囲いを作り、その内側に上記の硬化性組成物を流し込み、上からPETフィルムとガラス板を被せてUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、250W超高圧水銀灯、主波長365nm、365nmにおける照射強度32mJ/cm)で、2000mJ/cmのエネルギーでUV硬化させた。得られた成形体について、実施例1と同様にして外観観察および折り曲げ試験を行った。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表1および2に示されるとおり、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる成形体は、高靭性と高透明性とを両立する。さらに、本発明の成形体は、カルバゾイル基を含有するので、高屈折率(例えば、1.55以上)であり得る。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、光学部材の製造分野等において好適に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構造と2個以上のラジカル重合性二重結合とを1分子中に有する化合物を含む、硬化性組成物。
【化1】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。OAは、直鎖または分岐のオキシエチレン、オキシプロピレン、およびオキシブチレンからなる群より選択される少なくとも1種のオキシアルキレン鎖を表す。nは、1〜100の整数を表す。)
【請求項2】
前記化合物が、エステル結合、ウレタン結合、アセタール結合、およびヘミアセタール結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を介してラジカル重合性二重結合を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
反応性希釈剤をさらに含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させて得られる成形体。

【公開番号】特開2009−96857(P2009−96857A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268652(P2007−268652)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】