説明

硬化性組成物

【課題】非有機錫触媒を用いて、良好な作業性、貯蔵安定性を有する透明な1成分型硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する有機重合体、
(B)シリカ、
(C)フッ化塩化合物(c−1)、および/またはフッ化塩化合物(c−1)とアミン化合物(d)の錯体、
を含有する透明な1成分型硬化性組成物であって、シリカ(B)に含有される疎水性シリカの量が、有機重合体(A)100重量部に対して30重量部未満であることを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基(以下、「反応性ケイ素基」ともいう。)を有する有機重合体を含有する透明な1成分型硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を含有する有機重合体は、室温においても湿分等による反応性ケイ素基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状硬化物が得られるという興味深い性質を有することが知られている。
【0003】
これらの反応性ケイ素基を有する重合体中で、ポリオキシアルキレン系重合体やポリイソブチレン系重合体は、(特許文献1)、(特許文献2)などに開示されており、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料などの用途に広く使用されている。
これらの用途の中には美観上透明性が要求される無色透明なシーリング材、接着剤などの用途があり、(特許文献3)、(特許文献4)に例が開示されている。無色透明なシーリング材、接着剤を作製するには通常、補強効果、作業性向上を目的としてシリカを重合体と共に配合する。
【0004】
本目的に好適とされるシリカは主に疎水性シリカと呼ばれるシリカ表面がアルコール、有機ハロゲンで処理されたシリカであり、処理されていない親水性シリカに比べ貯蔵安定性、チクソトロピー性に優れるとされている。
【0005】
ポリエーテル系重合体に疎水性シリカを配合した組成物の貯蔵安定性については(特許文献5)に開示されている。
【0006】
反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有する硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を用いて硬化させており、通常、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)などの、炭素−錫結合を有する有機錫系触媒が広く使用されている。しかしながら近年、有機錫系化合物はその毒性が指摘されており、これに代替する硬化触媒への関心が高まっている。
【0007】
その代替硬化触媒の一つとしてフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)などのフッ化塩化合物が挙げられる。二液型の組成物中においてフッ化塩化合物が反応性ケイ素基を有する有機重合体の硬化触媒として使用されている例が(特許文献6)に開示されている。
【0008】
反応性ケイ素基を有する有機重合体に炭酸カルシウム、またはシリカを配合した二液型の組成物に硬化触媒としてフッ化塩化合物を用いる例が(特許文献7)に開示され、また、フッ化塩化合物とアミン化合物の錯体を触媒として使用した硬化性組成物の例が(特許文献8)、(特許文献9)に開示されている。
【0009】
しかし、本発明者は反応性ケイ素基を有する有機重合体に充填剤として疎水性シリカを使用し、硬化触媒として上記に示すようなフッ化塩化合物および、またはフッ化塩化合物とアミン化合物の錯体を用いて作製した実用的な透明な1成分型硬化性組成物の貯蔵安定性が著しく悪く、またチクソトロピー性の低い(作業性の悪い)組成物になるという課題を見出した。
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特開昭63−6041号公報
【特許文献3】特開2002−37969号公報
【特許文献4】特開2003−313421号公報
【特許文献5】特開平9−310027号公報
【特許文献6】特開2002−88245号公報
【特許文献7】WO2008/062866号公報
【特許文献8】特開2006−199906号公報
【特許文献9】特開2008−7586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、反応性ケイ素基を有する有機重合体に充填剤として親水性シリカを用いた無色透明な硬化性組成物であって、実質的に有機錫触媒を用いずに良好な貯蔵安定性、作業性を発現する透明な1成分型硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明での貯蔵安定性は硬化性組成物の粘度の経時変化で示す。高温条件下で長期保存した硬化性組成物の粘度が高温貯蔵する前の初期粘度に比べ、上昇していない硬化性組成物は貯蔵安定性に優れるとみなし、逆に高粘度化するものは貯蔵安定性が不良であるとみなす。
【0012】
本発明での作業性(作業のしやすさ)は硬化性組成物のチクソトロピー性で判断する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記事情に鑑み、本発明者等が鋭意検討した結果、反応性ケイ素基を有する有機重合体の硬化触媒としてフッ化塩化合物および/または、そのフッ化塩化合物とアミン化合物の錯体を用い、充填剤に親水性シリカを使用することによって、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
1).
(A)シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する有機重合体、
(B)シリカ、
(C)フッ化塩化合物(c−1)、および/またはフッ化塩化合物(c−1)とアミン化合物(d)の錯体、
を含有する透明な1成分型硬化性組成物であって、シリカ(B)に含有される疎水性シリカの量が、有機重合体(A)100重量部に対して30重量部未満であることを特徴とする硬化性組成物、
2).
(A)成分の有機重合体が、数平均分子量が500〜100,000の範囲内にあり、主鎖の末端および/または側鎖に、一般式(1):
−SiR3−a (1)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1から20のアルキル基、炭素原子数6から20のアリール基、炭素原子数7から20のアラルキル基または(R’)SiO−(R’は、それぞれ独立に、炭素原子数1から20の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、Zは、それぞれ独立に、水酸基または加水分解性基である。さらに、aは1、2、3のいずれかである)で表されるケイ素含有基を、1分子あたり、平均して1個以上有する有機重合体である、1)に記載の透明な1成分型硬化性組成物、
3).
一般式(1)のZがアルコキシ基である、2)に記載の透明な1成分型硬化性組成物、
4).
(A)成分の有機重合体が、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、および(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種の主鎖骨格を有する有機重合体である、1)〜3)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
5).
(B)成分が親水性シリカである1)〜4)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
6).
(B)成分が合成非晶質シリカである1)〜5)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
7).
(B)成分が、(A)成分と可塑剤の合計量100重量部に対して10重量部以上50重量部以下の割合で含まれる1)〜6)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
8).
(B)成分が乾式法で合成された合成非晶質シリカである1)〜7)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
9).
(B)成分が湿式法で合成された合成非晶質シリカである1)〜7)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
10).
(C)成分がフッ化塩化合物(c−1)である1)〜9)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
11).
(C)成分がフッ化塩化合物(c−1)とアミン(d)の錯体である1)〜9)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
12).
(C)成分のフッ化塩化合物(c−1)が、フッ化水素(c−2)、および/またはフッ化アンモニウム(c−3)、および/または一般式(2):
MF・HF (2)
(Mはアルカリ金属)
で表される化合物である1)〜11)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
13).
(C)成分のアミン化合物(d)が、アミジン化合物である1)〜9),11)、12)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
14).
アミジン化合物が、グアニジン化合物および/またはビグアニド化合物である13)に記載の透明な1成分型硬化性組成物、
15).
グアニジン化合物および/またはビグアニド化合物が、アリール置換グアニジン類および/または、アリール置換ビグアニド類である14)に記載の透明な1成分型硬化性組成物、
16).
(C)成分のアミン化合物(d)が、3級アミンである請求項1)〜9),11),12)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
17).
(C)成分のアミン化合物(d)が、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1−フェニルグアニジンおよび、N,N−ジエチルアミノ−1,3−プロパンジアミンからなる群より選択される少なくとも1つである1)〜9),11),12)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
18).
(C)成分のフッ化塩化合物(c−1)が、ハロゲン化ホウ素および/またはその誘導体である11)に記載の透明な1成分型硬化性組成物、
19).
(C)成分のフッ化塩化合物(c−1)が、三フッ化ホウ素及びその誘導体から選ばれる一種以上の化合物である11)に記載の透明な1成分型硬化性組成物、
20).
(C)成分のアミン化合物(d)が1−フェニルグアニジン、および/またはN,N−ジエチルアミノ−1,3−プロパンジアミンである18),19)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物、
21).
1)〜20)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物を用いてなるシーリング材、
22).
1)〜20)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物を用いてなる接着剤、
23).
1)〜20)のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物を硬化してなる透明硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の透明な1成分型硬化性組成物は、有機錫系触媒を使用することなく、良好な貯蔵安定性、チクソトロピー性を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明に用いる反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができる。
【0017】
具体的には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル及びスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、または、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;前記有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表すこととする。
【0018】
ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体や、ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることからより好ましい。
【0019】
(A)成分である有機重合体のガラス転移温度は、特に限定は無いが、20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度が20℃を上回ると、冬季または寒冷地での粘度が高くなり作業性が悪くなる場合があり、また、硬化物の柔軟性が低下し、伸びが低下する場合がある。前記ガラス転移温度はDSC測定による値を示す。
【0020】
また、ポリオキシアルキレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、透湿性が高く1液型組成物にした場合に深部硬化性に優れ、更に接着性にも優れることから特に好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体は最も好ましい。
【0021】
また、アクリル樹脂やポリエステル樹脂などのエステル結合を含む重合体は、本発明の(C)成分のようなシラノール縮合触媒等によって、エステル結合が開裂する場合があり、硬化性組成物や硬化物の各種物性が変わってしまう恐れがある。ポリオキシアルキレン系重合体および炭化水素系重合体は、硬化触媒の存在下でもエステル交換反応などの副反応によって主鎖骨格が変性されることがなく、好ましい。
【0022】
反応性ケイ素基を有する有機重合体中に含有される反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シラノール縮合触媒によって加速される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋し得る基である。反応性ケイ素基としては、一般式(1):
−SiR3−a (1)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1から20のアルキル基、炭素原子数6から20のアリール基、炭素原子数7から20のアラルキル基または(R’)SiO−(R’は、それぞれ独立に、炭素原子数1から20の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、Zは、それぞれ独立に、水酸基または加水分解性基である。さらに、aは1、2、3のいずれかである)で表される基があげられる。
【0023】
加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。
【0024】
加水分解性基や水酸基は、ケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0025】
また、Rの具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、R’がメチル基、フェニル基等である(R’)SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が特に好ましい。
【0026】
反応性ケイ素基のより具体的な例示としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基などが挙げられる。活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。また、貯蔵安定性の点からはジメトキシメチルシリル基が特に好ましい。トリエトキシシリル基は、反応性ケイ素基の加水分解反応に伴って生成するアルコールが、エタノールであり、より高い安全性を有することから特に好ましい。
【0027】
また、ケイ素原子上に3つの加水分解性基を有する反応性ケイ素基を有する有機重合体は、高い硬化性が得られると共に、良好な復元性、耐久性および耐クリープ性を有する硬化性組成物を与える傾向があり好ましい。
【0028】
反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行えばよい。すなわち、例えば以下の方法が挙げられる。
【0029】
(イ)分子中に水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有する有機重合体を得る。もしくは、不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により不飽和基含有有機重合体を得る。ついで得られた反応生成物に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
【0030】
(ロ)(イ)法と同様にして得られた不飽和基を含有する有機重合体にメルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0031】
(ハ)分子中に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0032】
以上の方法のなかで、(イ)の方法、または(ハ)のうち末端に水酸基を有する有機重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られる為に好ましい。更に、(イ)の方法で得られた反応性ケイ素基を有する有機重合体は、(ハ)の方法で得られる有機重合体よりも低粘度で作業性の良い硬化性組成物となること、また、(ロ)の方法で得られる有機重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことから、(イ)の方法が特に好ましい。
【0033】
(イ)の方法において用いるヒドロシラン化合物の具体例としては、たとえば、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシランのようなハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシランのようなアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシランのようなアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランのようなケトキシメートシラン類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちではとくにハロゲン化シラン類、アルコキシシラン類が好ましく、特にアルコキシシラン類は、得られる硬化性組成物の加水分解性が穏やかで取り扱いやすいために最も好ましい。アルコキシシラン類の中で、メチルジメトキシシランは、入手し易く、得られる有機重合体を含有する硬化性組成物の硬化性、貯蔵安定性、伸び特性、引張強度が高い為に特に好ましい。
【0034】
上記ヒドロシラン化合物の中で、一般式(3):
H−SiZ (3)
(式中、Zは前記と同じ。)で表されるヒドロシラン化合物は、該ヒドロシラン化合物の付加反応により得られる有機重合体からなる硬化性組成物の硬化性が優れることから好ましい。一般式(3)で表されるヒドロシラン化合物の中で、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、および、トリイソプロポキシシラン等のトリアルコキシシラン類がより好ましい。
【0035】
前記トリアルコキシシラン類の中でも、トリメトキシシランなどの炭素原子数が1のアルコキシ基(メトキシ基)を有するトリアルコキシシランは、不均化反応が速く進行する場合があり、不均化反応が進むと、ジメトキシシランのようなかなり危険な化合物が生じる。取り扱い上の安全性の観点から、一般式(4):
H−Si(OR (4)
(式中、3個のRは、それぞれ独立に炭素原子数2から20の有機基である)で表される炭素原子数が2以上のアルコキシ基を有するトリアルコキシシランを用いることが好ましい。入手性、取り扱い上の安全性の観点から、トリエトキシシランが最も好ましい。
【0036】
(ロ)の合成法としては、たとえば、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を、ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下でのラジカル付加反応によって、有機重合体の不飽和結合部位に導入する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、たとえば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
(ハ)の合成法のうち末端に水酸基を有する有機重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、たとえば、特開平3−47825号公報に示される方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、たとえば、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルジエトキシメチルシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルジエトキシメチルシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前述したように、トリメトキシシラン等の一つのケイ素原子に3個の加水分解性基が結合しているシラン化合物は不均化反応が進行する場合がある。不均化反応が進むと、ジメトキシシランのようなかなり危険な化合物が生じる。しかし、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランでは、このような不均化反応は進行しない。このため、ケイ素含有基としてトリメトキシシリル基など3個の加水分解性基が一つのケイ素原子に結合している基を用いる場合には、(ロ)または(ハ)の合成法を用いることが好ましい。
【0039】
反応性ケイ素基を有する有機重合体は直鎖状、または分岐を有してもよく、その数平均分子量はGPCにおけるポリスチレン換算において500〜100,000が好ましく、より好ましくは1,000〜50,000であり、特に好ましくは3,000〜30,000である。数平均分子量が500未満では、硬化物の伸び特性の点で不都合な傾向があり、100,000を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0040】
高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物を得るためには、有機重合体に含有される反応性ケイ素基は重合体1分子中に平均して少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在するのがよい。分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が平均して1個未満になると、硬化性が不充分になり、良好なゴム弾性挙動を発現しにくくなる。反応性ケイ素基は、有機重合体分子鎖の主鎖の末端あるいは側鎖の末端にあってもよいし、また、両方にあってもよい。特に、反応性ケイ素基が分子鎖の主鎖の末端にあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれる有機重合体成分の有効網目長が長くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
【0041】
前記ポリオキシアルキレン系重合体は、本質的に一般式(5):
−R−O− (5)
(式中、Rは炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基である。)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、一般式(5)におけるRは、炭素原子数1から14の、さらには2から4の、直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好ましい。一般式(5)で示される繰り返し単位の具体例としては、
【0042】
【化1】

等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特にシーラント等に使用される場合には、プロピレンオキシド重合体を主成分とする重合体から成るものが非晶質であることや比較的低粘度である点から好ましい。
【0043】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11−060722号に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等、があげられるが、特に限定されるものではない。
【0044】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法は、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同55−13468号、同57−164123号、特公平3−2450号、米国特許3632557、米国特許4345053、米国特許4366307、米国特許4960844等の各公報に提案されているもの、また特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−218632号、特開平3−72527号、特開平3−47825号、特開平8−231707号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体が例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0045】
上記の反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0046】
前記飽和炭化水素系重合体は芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体であり、その骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素原子数2から6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させ、あるいは、上記オレフィン系化合物とを共重合させた後、水素添加するなどの方法により得ることができるが、イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体は、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましく、イソブチレン系重合体が特に好ましい。
【0047】
主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体であるものは、耐熱性、耐候性、耐久性、及び、湿気遮断性に優れる特徴を有する。
【0048】
イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、他単量体との共重合体でもよいが、ゴム特性の面からイソブチレンに由来する繰り返し単位を50重量%以上含有するものが好ましく、80重量%以上含有するものがより好ましく、90〜99重量%含有するものが特に好ましい。
【0049】
飽和炭化水素系重合体の合成法としては、従来、各種重合方法が報告されているが、特に近年多くのいわゆるリビング重合が開発されている。飽和炭化水素系重合体、特にイソブチレン系重合体の場合、Kennedyらによって見出されたイニファー重合(J.P.Kennedyら、J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed. 1997年、15巻、2843頁)を用いることにより容易に製造することが可能であり、分子量500〜100,000程度を、分子量分布1.5以下で重合でき、分子末端に各種官能基を導入できることが知られている。
【0050】
反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体の製法としては、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開平1−197509号、特許公報第2539445号、特許公報第2873395号、特開平7−53882号の各明細書などに記載されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0051】
上記の反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0052】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシメチルジエトキシメチルシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ビス(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。
【0053】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体では、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとともに、以下のビニル系モノマーを共重合することもできる。該ビニル系モノマーを例示すると、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0054】
これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーからなる重合体が好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーからなる(メタ)アクリル系重合体であり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーからなるアクリル系重合体である。一般建築用等の用途においては配合物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチル系モノマーが更に好ましい。一方、自動車用途等の耐油性等が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が更に好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途にはその比率は40モル%以下にするのが好ましく、更には30モル%以下にするのがより好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は40モル%以下にするのが好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/30〜20)の共重合体が挙げられる。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の合成法としては、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。但し、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いる通常のフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るためには、リビングラジカル重合法を用いることが好ましい。
【0056】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁などが挙げられる。
【0057】
反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製法としては、たとえば、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に、連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法を用いた製法が開示されている。また、特開平9−272714号公報等に、原子移動ラジカル重合法を用いた製法が開示されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0058】
上記の反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0059】
これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。具体的には、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体、からなる群から選択される2種以上をブレンドしてなる有機重合体も使用できる。
【0060】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなる有機重合体の製造方法は、特開昭59−122541号、特開昭63−112642号、特開平6−172631号、特開平11−116763号公報等に提案されているが、特にこれらに限定されるものではない。好ましい具体例は、反応性ケイ素基を有し分子鎖が実質的に、下記一般式(6):
−CH−C(R)(COOR)− (6)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素原子数1から8のアルキル基を示す)で表される炭素原子数1から8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記一般式(7):
−CH−C(R)(COOR)− (7)
(式中、Rは前記に同じ、Rは炭素原子数10以上のアルキル基を示す)で表される炭素原子数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体に、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体をブレンドして製造する方法である。
【0061】
前記一般式(6)のRとしては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素原子数1から8、好ましくは1から4、さらに好ましくは1または2のアルキル基があげられる。なお、Rのアルキル基は単独でもよく、2種以上混合していてもよい。
【0062】
前記一般式(7)のRとしては、たとえばラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素原子数10以上、通常は10から30、好ましくは10から20の長鎖のアルキル基があげられる。なお、Rのアルキル基は単独でもよく、2種以上混合したものであってもよい。
【0063】
該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の分子鎖は実質的に式(6)及び式(7)の単量体単位からなるが、ここでいう「実質的に」とは該共重合体中に存在する式(6)及び式(7)の単量体単位の合計が50重量%をこえることを意味する。一般式(6)及び一般式(7)の単量体単位の合計は好ましくは70重量%以上である。
【0064】
また一般式(6)の単量体単位と一般式(7)の単量体単位の存在比は、重量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40がさらに好ましい。
【0065】
該共重合体に含有されていてもよい一般式(6)及び一般式(7)以外の単量体単位としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテル等の窒素含有基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位があげられる。
【0066】
反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をブレンドしてなる有機重合体は、特開平1−168764号、特開2000−186176号公報等に提案されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0067】
さらに、反応性ケイ素官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をブレンドしてなる有機重合体の製造方法としては、他にも、反応性ケイ素基を有する有機重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行う方法が利用できる。この製造方法は、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報に具体的に開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0068】
一方、有機重合体の主鎖骨格中には本発明の効果を大きく損なわない範囲でウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。
【0069】
前記ウレタン結合成分としては特に限定されないが、イソシアネート基と活性水素基との反応により生成する基(以下、アミドセグメントともいう)を挙げることができる。
【0070】
前記アミドセグメントは一般式(8):
−NR−C(=O)− (8)
(Rは水素原子または置換あるいは非置換の有機基を表す)で表される基である。
【0071】
前記アミドセグメントとしては、具体的には、イソシアネート基と水酸基との反応により生成するウレタン基;イソシアネート基とアミノ基との反応により生成する尿素基;イソシアネート基とメルカプト基との反応により生成するチオウレタン基などを挙げることができる。また、本発明では、上記ウレタン基、尿素基、及び、チオウレタン基中の活性水素が、更にイソシアネート基と反応して生成する基も、一般式(8)の基に含まれる。
【0072】
アミドセグメントと反応性ケイ素基を有する有機重合体の工業的に容易な製造方法を例示すると、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に、過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて、ポリウレタン系主鎖の末端にイソシアネート基を有する重合体とした後、あるいは同時に、該イソシアネート基の全部または一部に一般式(9)
W−R−SiR3−a (9)
(ただし、式中、R、Z、aは前記と同じ。Rは、2価の有機基であり、より好ましくは炭素原子数1から20の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基である。Wは水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、非置換または一置換のアミノ基から選ばれた活性水素含有基である。)で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法により製造されるものを挙げることができる。この製造方法に関連した、有機重合体の公知の製造法を例示すると、特公昭46−12154号(米国特許3632557号)、特開昭58−109529号(米国特許4374237号)、特開昭62−13430号(米国特許4645816号)、特開平8−53528号(EP0676403)、特開平10−204144号(EP0831108)、特表2003−508561(米国特許6197912号)、特開平6−211879号(米国特許5364955号)、特開平10−53637号(米国特許5756751号)、特開平11−100427号、特開2000−169544号、特開2000−169545号、特開2002−212415号、特許第3313360号、米国特許4067844号、米国特許3711445号、特開2001−323040号、などが挙げられる。
【0073】
また、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に一般式(10)
O=C=N−R−SiR3−a (10)
(ただし、式中R、R、Z、aは前記に同じ。)で示される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物とを反応させることにより製造されるものを挙げることができる。この製造方法に関連した、有機重合体の公知の製造法を例示すると、特開平11−279249号(米国特許5990257号)、特開2000−119365号(米国特許6046270号)、特開昭58−29818号(米国特許4345053号)、特開平3−47825号(米国特許5068304号)、特開平11−60724号、特開2002−155145号、特開2002−249538号、WO03/018658、WO03/059981などが挙げられる。
【0074】
末端に活性水素含有基を有する有機重合体としては、末端に水酸基を有するオキシアルキレン重合体(ポリエーテルポリオール)、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する飽和炭化水素系重合体(ポリオレフィンポリオール)、ポリチオール化合物、ポリアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、および、ポリオレフィンポリオールは、得られる有機重合体のガラス転移温度が比較的低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。特に、ポリエーテルポリオールは、得られる有機重合体の粘度が低く作業性が良好であり、深部硬化性が良好である為に特に好ましい。また、ポリアクリルポリオールおよび飽和炭化水素系重合体は、得られる有機重合体の硬化物の耐候性・耐熱性が良好である為により好ましい。
【0075】
ポリエーテルポリオールとしては、いかなる製造方法において製造されたものでも使用することが出来るが、全分子平均で分子末端当り少なくとも0.7個の水酸基を末端に有するものが好ましい。具体的には、従来のアルカリ金属触媒を使用して製造したオキシアルキレン重合体や、複合金属シアン化物錯体やセシウムの存在下、少なくとも2つの水酸基を有するポリヒドロキシ化合物などの開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて製造されるオキシアルキレン重合体などが挙げられる。
【0076】
上記の各重合法の中でも、複合金属シアン化物錯体を使用する重合法は、より低不飽和度で、Mw/Mnが狭く、より低粘度でかつ、高耐酸性、高耐候性のオキシアルキレン重合体を得ることが可能であるため好ましい。
【0077】
前記ポリアクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体を骨格とし、かつ、分子内にヒドロキシル基を有するポリオールを挙げることができる。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001−207157号公報に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温、高圧で連続塊状重合によって得た、いわゆるSGOプロセスによる重合体を用いるのが好ましい。具体的には、東亞合成(株)製のUH−2000等が挙げられる。
【0078】
前記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0079】
一般式(9)のケイ素化合物としては特に限定はないが、具体的に例示すると、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、等のアミノ基含有シラン類;γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等のヒドロキシ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;等が挙げられる。また、特開平6−211879号(米国特許5364955号)、特開平10−53637号(米国特許5756751号)、特開平10−204144号(EP0831108)、特開2000−169544号、特開2000−169545号に記載されている様に、各種のα,β−不飽和カルボニル化合物とアミノ基含有シランとのMichael付加反応物、または、各種の(メタ)アクリロイル基含有シランと一級アミノ基含有化合物とのMichael付加反応物もまた、一般式(9)のケイ素化合物として用いることができる。
【0080】
一般式(10)の反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物としては特に限定はないが、具体的に例示すると、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メチルジメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メチルジエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルメチルイソシアネート等が挙げられる。また、特開2000−119365号(米国特許6046270号)に記載されている様に、一般式(9)のケイ素化合物と、過剰の前記ポリイソシアネート化合物を反応させて得られる化合物もまた、一般式(10)の反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物として用いることができる。
【0081】
本発明の(A)成分である有機重合体の主鎖骨格中にアミドセグメントが多いと、有機重合体の粘度が高くなる傾向がある。また、貯蔵後に粘度が上昇する場合もあり、得られる組成物の作業性が低下する場合がある。従って、貯蔵安定性や作業性の優れた組成物を得るためには、実質的にアミドセグメントを含まないことが好ましい。一方、(A)成分の主鎖骨格中のアミドセグメントによって、本発明の組成物の硬化性が向上する傾向がある。従って、(A)成分の主鎖骨格中にアミドセグメントを含む場合、アミドセグメントは1分子あたり平均で、1〜10個が好ましく、1.5〜7個がより好ましく、2〜5個が特に好ましい。1個よりも少ない場合には、硬化性が十分ではない場合があり、10個よりも大きい場合には、有機重合体が高粘度となり作業性の悪い組成物となる場合がある。
【0082】
また、上記方法により、一般式(9)または一般式(10)の化合物を用いて製造される有機重合体の中で、Rが−CH−である化合物からなる有機重合体は、特に優れた硬化性が得られる傾向にある。
【0083】
本発明では充填剤としてシリカ(B)を用いる。
【0084】
充填剤の役割として一般的に以下のことが挙げられる。硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の強度を高めたり、硬化性組成物の粘度やチクソトロピー性を調整して取扱い性を改善したり、増量により重量あるいは体積あたりのコストを低減させたり、着色や表面性の改質で意匠性を付与する等の役割である。
硬化性組成物に高い透明性、取り扱いに適した粘度とチクソトロピー性を持たせ、高い強度を発現させる目的で充填剤としてシリカを用いることがある。
【0085】
本発明は高い透明性を有する硬化性組成物を作製することを目的としている。そのため硬化性組成物の透明性を損なわせる充填剤を有機重合体(A)に用いることは出来ない。
【0086】
本発明における透明な硬化性組成物とは、硬化性組成物より得られた厚み3mmの硬化物の全光線透過率が75%以上である硬化性組成物のことを指す。また、適切な配合を選択することによって、全光線透過率が90%以上の硬化物を得ることができる。
【0087】
本発明では(B)成分としてシリカを使用する。
【0088】
シリカはシリカ表面のシラノール基を様々な化学物質と反応させて得られる表面処理シリカとシラノール基への化学修飾を全く行わない親水性シリカとよばれる無処理シリカに大別できる。無処理シリカでは、水との親和性の強いシラノール基がシリカの全面に存在しているため水などの極性分子と相溶性に優れている。このため、親水性シリカと呼ばれる。
【0089】
一方、表面処理シリカは親水性シリカの表面シラノールに有機ハロゲン、アルコール、シランカップリング剤などを反応させて合成される。合成された表面処理シリカは処理を行うことで、シラノール基密度が低くなり、水分吸着量も減少する。また、表面処理剤によって表面極性が大きく変化し、充填されるポリマーとの相溶性が大きく変化する。親水性シリカに比べ疎水性を示す表面処理シリカは疎水性シリカと呼ばれる。
【0090】
親水性シリカ、疎水性シリカは充填される液体、ポリマー、エラストマーの増粘、チクソトロピー性付与剤、補強剤などに利用される。コスト面においては親水性シリカより疎水性シリカは高価になるが、表面が不活性化されており貯蔵中に他の充填剤と反応が起こらず安定化しやすかったり、水分を吸収しにくい点において多くのエラストマー製品に利用されている。また、硬化性組成物においても疎水性シリカは充填剤として一般的に推奨されている。しかしながら、本発明では疎水性シリカを用いた際に硬化性組成物が増粘するという現象を見出しており、本発明では疎水性シリカの使用量を限定することによって増粘を抑制している。
【0091】
シリカは表面処理の有無以外に、種々の基準でカテゴリー分けをすることが出来る。天産品か合成品、製造方法の種類、結晶性か非結晶性かなど、基準は多岐にわたる。
【0092】
合成品で非晶質性のシリカは合成非晶質シリカと呼ばれ、機能性充填剤として様々な用途に利用されている。
【0093】
合成非晶質シリカは乾式法シリカと湿式法シリカに大別される。
【0094】
乾燥式シリカは一般的には、四塩化ケイ素を原料に合成され、トチルトリクロロシランやトリクロロシランなどのシラン類も、単独、または四塩化ケイ素と混合した状態のいずれかで原料として使用される。これら原料は気化され、続いて酸/水素ガス火炎中で中間体として生じる水と定量的に反応し、目的のシリカを形成する。
【0095】
乾燥式シリカは一次粒子同士のシロキサン結合がなく、凝集構造は水素結合やファンデルワールス力に起因するもので、二次粒子を形成しない。また、高温(1000℃〜1200℃で)で生成することから、シラノール基が少ない。ゆえに乾式法シリカはせん断により一次粒子近くまで分散し、かつシラノール基が少なく、それにともない付着水分も少ないことから、低発泡性・高透明性・補強性を重視する機能性ゴム材料分野に利用されている。
一方、湿式法シリカは通常、ケイ酸ナトリウムと鉱酸(代表的には硫酸)を反応させることにより合成される。
【0096】
湿式法シリカは一次粒子同士のシロキサン結合があり、その強さは細孔容積や製造時の凝集後の反応に左右されるが、乾燥式シリカと比較して凝集構造は比較的強く、二次粒子構造を有する。硬い二次粒子構造を利用した、フィルムのアンチブロッキング剤、柔らかい二次粒子を利用したゴム用途などに湿式法シリカは利用されている。
硬化触媒としてフッ化塩化合物および/またはフッ化塩化合物とアミン化合物(d)を用いる本発明では、良好な作業性、貯蔵安定性を保つために有機重合体(A)と共に親水性シリカを用いることが好ましい。
シリカ(B)の使用量は特に限定されないが、(A)成分と可塑剤の合計量100重量部に対して10重量部以上50重量部以下の割合で含まれることが好ましく、20重量部以上40重量部以下がより好ましい。10重量部未満であると補強効果が小さく、チクソ性も悪いため、好ましくない。50重量部を越えると粘度が高く、押し出し性が悪いため好ましくない。
【0097】
本発明では良好な作業性、貯蔵安定性が保たれる範囲であれば疎水性シリカを用いることができる。用いても支障のない疎水性シリカの使用量としては、有機重合体(A)100重量部に対して30重量部未満である。15重量部以下であることが好ましく、5重量部以下がより好ましく、用いないことが最も好ましい。30重量部以上用いると、貯蔵中に硬化性組成物が著しく増粘するため好ましくない。
上記で説明した乾式法で合成された親水性シリカ、疎水性シリカはエボニック(株)、日本アエロジル(株)、トクヤマ(株)で各種購入可能である。また、湿式法で合成された親水性シリカ、疎水性シリカについては富士シリシア(株)、日本シリカ工業(株)、トクヤマ(株)で各種購入可能である。
【0098】
乾式法で合成されたエボニック(株)、日本アエロジル(株)の親水性シリカはたとえば、AEROSIL 90、AEROSIL 130、AEROSIL 150、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 380、AEROSIL OX50、AEROSIL EG50、AEROSIL TT600などが挙げられ、疎水性シリカではたとえばAEROSIL R972、AEROSIL R974、AEROSIL R976、AEROSIL R104、AEROSIL R106、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL R812、AEROSIL R812S、AEROSIL R816、AEROSIL R7200、AEROSIL R8200、AEROSIL R9200などが挙げられる。
【0099】
湿式法で合成された富士シリシア(株)の親水性シリカはたとえば、サイリシア250、サイリシア350、サイリシア450、サイリシア550、サイリシア740などが挙げられ、疎水性シリカではサイロホービック200、サイロホービック704、サイロホービック505、サイロホービック603などが挙げられる。
【0100】
透明性、貯蔵安定性、チクソトロピー性を損なわない範囲で、結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸などを使用することが出来る。
【0101】
本発明では、反応性ケイ素基を有する有機重合体の硬化触媒としてフッ化塩化合物および/または、フッ化塩化合物と(d)アミン化合物の錯体を使用する。ここで言うフッ化塩化合物には、フッ化アンモニウム(c−3)と、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラオクチルアンモニウム、フッ化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのフッ化アンモニウム塩化合物(c−4)、LiF、NaF、NaAlF、KF、RbF、CsF、BeF、MgF、CaF、Ca10(PO、SrF、BaF、AlF、GaF、InF、TiF、CuF、AgF、AgF、ZnF2、SnF2、SnF、PdF、SbF、CrF、YF、LaF、CeF、PrF、NdF、SmF、EuF、GdF、TbF、DyF、HoF、ErFなどのフッ化金属塩(c−5)、およびフッ化カリウム・二水和物、フッ化銅・水和物などのフッ化金属塩の水和物(c−6)、フッ化ヘキサキス(ジメチルアミノ)フォスファゼニウム、NaSiF、KSiF、(NHSiFなどが挙げられる。
【0102】
さらにフッ化塩化合物(c−1)としてフッ化水素(c−2)、フッ化水素を分子内に含有するフッ化水素アンモニウム(c−7)も挙げられる。フッ化水素アンモニウムの例としては、NHF・HFを挙げることができる。フッ化水素(c−2)は分子量が小さいため、低重量の使用でも効率的なフッ素源、フッ素化剤となる。また工業的にも生産されており安価で使用に適する。しかし、フッ化水素(c−2)は常温常圧では気体であり、工業用途などを除けば扱いにくい。
【0103】
そこで“固体のフッ化水素”として分子内にフッ化水素(c−2)を含有するフッ化塩化合物(c−1)としてフッ化水素アンモニウム(c−7)、フッ化アンモニウム(c−3)も広く利用されている。
【0104】
また下記一般式(2):
MF・HF (2)
(Mはアルカリ金属)
で表される化合物についても“固体のフッ化水素”として利用できる。これらはフッ化水素に比べ、多少の分子量増加でフッ素源としての効率性はやや劣るが、効率的なフッ素源となる。
【0105】
ここで、Mはアルカリ金属であればいずれのものも用いることができるが、工業的入手性が容易であり、より実用性が高いという点においては、ナトリウム、カリウムが好ましく、カリウムがより好ましい。また、溶解性が高く触媒活性が高くなりやすいという点においては、セシウムが好ましい。
【0106】
本発明で用いられるフッ化水素アンモニウム(c−7)、フッ化アンモニウム(c−3)の形状としては粉状、フレーク状など種々の形状のものを用いることができるが、得られる硬化触媒の反応性がより高くなりやすいという点においては、粉状のものが好ましく、粒子径が150μm以下であるものがより好ましい。
【0107】
具体例としては、NaF、KF、CsF、NaF・HF、KF・HF等が挙げられる。
【0108】
フッ化塩化合物(c−1)の形状としては粒状、粉状、フレーク状など種々の形状のものを用いることができるが、得られる硬化触媒の反応性がより高くなりやすいという点においては、粉状のものが好ましく、粒子径が150μm以下であるものがより好ましい。
フッ化塩化合物(c−1)には分散剤を使用することができる。分散剤はフッ化塩化合物(c−1)を重合体(A)に分散しやすくし、優れた硬化性を得るために用いられ、より優れた硬化性を得るためには、分散剤を使用することが好ましい。
【0109】
分散剤は硬化触媒として、(c−1)フッ化塩化合物と(d)アミン化合物の錯体を用いる場合においても使用することが出来る。
【0110】
分散剤としては、特に限定されず種々のものを用いることができるが活性水素基を有する化合物であることが好ましい。ここで、活性水素基とはHとして遊離し得る水素原子を示す一般的表現であり、具体的には、たとえば酸素原子、イオウ原子あるいはハロゲン原子に結合した水素原子の他、カルボニル基、スルホニル基に隣接する炭素原子に結合した水素原子などが挙げられる。
【0111】
分散剤の具体例としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどの他、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールやそれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテル、あるいは両末端あるいは片末端が水酸基のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、さらにはフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t-ブチルフェノール、ノニルフェノールなどフェノール類といった水酸基含有化合物;ジプロピレングリコ−ルメチルエ−テル、トリプロピレングリコ−ルメチルエ−テル、プロピレングリコールn−プロピルエ−テル、ジプロピレングリコールn−プロピルエ−テル、 プロピレングリコールn−ブチルエ−テル、ジプロピレングリコールn−ブチルエ−テル、トリプロピレングリコールn−ブチルエ−テルなどのアルコールエーテル類;ベンゼンスルホンアミド、N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド、N−プロピルベンゼンスルホンアミド、N−n−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−t−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−ペンチルベンゼンスルホンアミド、N−ヘキシルベンゼンスルホンアミド、N−ヘプチルベンゼンスルホンアミド、N−オクチルベンゼンスルホンアミド、N−デシルベンゼンスルホンアミド、N−ドデシルベンゼンスルホンアミド、N−フェニルベンゼンスルホンアミド、アミノベンゼンスルホンアミド、p−エチルベンゼンスルホンアミド、p−プロピルベンゼンスルホンアミド、p−ブチルベンゼンスルホンアミド、2−アミノフェノールスルホンアミド、p−クロルベンゼンスルホンアミド、p−アセトアミノベンゼンスルホンアミド、p−アセトアミノメチルベンゼンスルホンアミド、1−クロロベンゼン−2,4−ジスルホンアミド、フェニルヒドラジンスルホンアミド、N,N’−ビス(フェニルスルホニル)ジフェニルエーテルビススルホンアミド、N,N’−ビス(フェニルスルホニル)ジフェニルビススルホンアミド、5−アミノ−2−メチル−N−(ヒドロキシエチル)−1−ベンゼンスルホンアミド、2−アミノ安息香酸−5−スルホンアミド、2−アミノ安息香酸−5−N−メチルスルホンアミド、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホンアミド、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンスルホンアミド、2−トルエンスルホンアミド、4−トルエンスルホンアミド、4−アミノ−スルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、N−メチルトルエンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−プロピルトルエンスルホンアミド、N−n−ブチルトルエンスルホンアミド、N−t−ブチルトルエンスルホンアミド、N−ペンチルトルエンスルホンアミド、N−ヘキシルトルエンスルホンアミド、N−ヘプチルトルエンスルホンアミド、N−オクチルトルエンスルホンアミド、N−デシルトルエンスルホンアミド、N−ドデシルトルエンスルホンアミド、N−フェニルトルエンスルホンアミド、2−トルエンスルホンアミド、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、2−アミノ−4−メチルスルホニルフェノール、アミノフェニル−β−ヒドロキシエチルスルホン、ジフェニルスルホン、ビス(4−メチルフェニル)スルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、2−アミノジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス{4−(3’−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン、メチル−p−トリルスルホン、(ビニルスルホニル)ベンゼン、テトラメチレンスルホン、クロロギ酸−2−(メチルスルホニル)エチル、チアンフェニコール、2−(メチルスルホニル)エチルアルコール、2−アミノフェノール−4−エチルスルホン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、2−アミノ−1−(4−メチルスルホニルフェニル)−1,3−プロパンジオール、ベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイドなどといったスルホニル基を有する化合物;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシルなどの非芳香族2塩基酸エステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル;トリメリット酸エステル;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤などが挙げられる。これらの分散剤は、1種のみで使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0112】
分散剤は、得られる硬化触媒を重合体(A)により分散しやすくするために、融点が50℃以下のものが好ましく、融点が30℃以下のものがより好ましく、室温で液体のものがさらに好ましい。また、揮発しにくいように760mmHgでの沸点が200℃以上のものが好ましい。沸点が200℃未満であれば、室内などで本硬化性組成物を使用した場合に揮発し、作業環境が悪化すると共に、人体に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0113】
分散剤の使用量は特に限定されず、フッ化塩化合物(c−1)、およびフッ化塩化合物(c−1)とアミン化合物(d)の錯体の合計量に対して、10〜500重量部が好ましく、20〜100重量部がより好ましい。分散剤の使用量が10重量部未満の場合、十分な分散性が得られないことがあり、使用量が500重量部を上回ると、硬化触媒を配合した硬化性組成物の垂れ性が低下して作業性が悪くなる場合がある。
【0114】
本発明の組成物中には、フッ化塩化合物(c−1)、および/またはフッ化塩化合物(c−1)とアミン化合物(d)の錯体、必要であれば分散剤を含有するが、これらの成分は、必ずしも単体として存在する必要は無く、これらの成分の混合によって発生する反応物として存在してもよい。
【0115】
本発明のC成分は、フッ化アンモニウム(c−3)および/またはフッ化水素アンモニウム(c−7)、アミン化合物(d)、さらに好ましくは分散剤およびその他の成分を単に混合するのみで得ることもできるし、さらに混合状態を高めるために各種ミキサー、3本ロール等で混練してもよい。混合の温度も各種温度を設定することができ、たとえば高温で低粘度化させながら混合することもできる。また混合後に水等の揮発分を除去することも任意であり、そのため減圧脱揮することもできる。また、吸着、抽出、蒸留、再結晶、晶析などの処理を施してもよい。
【0116】
フッ化塩化合物(c−1)には、必要に応じてその他の成分を配合することもできる。
【0117】
フッ化塩化合物(c−1)は固体状、液状、ペースト状などいずれの状態も取り得るが、重合体(A)により分散しやすいという点では液状、ペースト状であることが好ましい。
【0118】
フッ化塩化合物(c−1)とアミン化合物(d)の錯体も本発明の硬化触媒として用いることが出来る。
【0119】
アミン化合物(d)の具体例としては、たとえば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミンなどの脂肪族第二級アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンなどの脂肪族第三級アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族不飽和アミン類;アニリン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミンなどの芳香族アミン類;ピリジン、2−アミノピリジン、2−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、2−ヒドロキシピリジン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、2−ピペリジンメタノール、2−(2−ピペリジノ)エタノール、ピペリドン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、アジリジンなどの複素環式化合物;および、その他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、ベンジルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノ−1,3−プロパンジアミン、3−ジブチルアミノプロピルアミン、2−ジメチルアミノエチルアミン、2−ジエチルアミノエチルアミン、2−ジブチルアミノエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、2−(1−ピペラジニル)エチルアミン、キシリレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ポリオキシプロピレンジアミンなどのアミン類の他、アミジン化合物があげられる。
【0120】
ここでアミジン化合物とは、下記一般式(11)
N=CR10−NR11 (11)
(R、R10、および2個のR11は、それぞれ独立に、水素原子または有機基である。)で示される化合物であり、さらに具体的にはたとえば、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1−ブチルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類化合物;ブチルビグアニド、1−o−トリルビグアニドや1−フェニルビグアニドなどのビグアニド類化合物;イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類化合物;2−メチルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、4,4−ジメチル−2−イミダゾリンなどのイミダゾリン類化合物の他、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、6−(ジブチルアミノ)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBA−DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒロドロ−2H−ピリミドピリジン、1,4,5,6−テトラヒドロピジミジン、1,2−ジメチルテトラヒドロピリミジンなどが例示される。
【0121】
アミン化合物(d)としては、得られる硬化触媒の活性が高くなりやすいという点において、アミジン化合物が好ましい。
【0122】
また、アミジン化合物の中でも、1−フェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニドや1−フェニルビグアニドなどのアリール置換グアニジン類あるいはアリール置換ビグアニド類は、重合体(A)の硬化触媒として用いた場合、表面の硬化性が良好となる傾向を示すこと、得られる硬化物の接着性が良好となる傾向を示すこと、などから好ましい。
【0123】
また、アミン化合物(d)として、アミノ基を有する3級アミン化合物も得られる硬化触媒の活性が高くなりやすいという点で好ましい化合物である。アミノ基を有する3級アミン化合物の具体例としては、2−アミノピリジン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノ−1,3−プロパンジアミン、3−ジブチルアミノプロピルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、2−(1−ピペラジニル)エチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、2−(1−ピペラジニル)エチルアミン、2−ジメチルアミノエチルアミン、2−ジエチルアミノエチルアミン、2−ジブチルアミノエチルアミンなどがあげられる。
【0124】
さらに、アミン化合物(d)は塩基性を示すが、共役酸のpKa値が11以上であるアミン化合物(d)は重合体(A)に対する触媒活性が高いことから好ましく、このなかでもDBUやDBNは共役酸のpKa値が12以上であり、高い触媒活性を示すことからより好ましい。
【0125】
本発明ではアミン化合物(d)として、アミノ基を有するシランカップリング剤(以下、アミノシランと言う)の使用も可能である。アミノシランとは、加水分解性ケイ素基及び、置換あるいは非置換のアミノ基を有する化合物である。
【0126】
置換アミノ基中の置換基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基などがあげられる。また、加水分解性ケイ素基としては、一般式(1)記載の基のうち、Zが加水分解性基であるものがあげられる。加水分解性基としては、既に例示した基があげられ、このなかでも、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいことから、メトキシ基、エトキシ基などが好ましい。
【0127】
なお、アミノシラン中のケイ素原子と結合する加水分解性基の個数は、2個以上、特に3個以上が好ましい。
【0128】
アミノシランとしては、特に限定されず、たとえば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどがあげられる。
【0129】
これらのアミノシランのなかでは、硬化性が良好なことからアミノ基(−NH)を有するアミノシランが好ましく、入手が容易なことからγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0130】
また、加水分解によって前記のアミン化合物(d)を生成するようなケチミン類もアミン化合物(d)として使用できる。
【0131】
アミン化合物(d)は1種類のみを使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0132】
本発明ではフッ化塩化合物(c−1)とアミン化合物(d)の錯体を硬化触媒として用いる場合に限り、フッ化塩化合物(c−1)にハロゲン化ホウ素およびその誘導体から選ばれる一種以上の化合物を用いてもよい。
【0133】
ハロゲン化ホウ素および/または、その誘導体とアミン化合物(d)の錯体は硬化性組成物への着色を軽減し、また高い硬化性、接着性を発現する良好な硬化触媒となる。
【0134】
特に高い硬化性を示す点において三フッ化ホウ素および/または、その誘導体とアミン化合物(d)の錯体が好ましい。
【0135】
ハロゲン化ホウ素および、その誘導体とアミン化合物(d)の錯体を具体的に挙げると、上記例示してきた各アミン化合物(d)全てとハロゲン化ホウ素の錯体である。
【0136】
ハロゲン化ホウ素と組み合わせるのに特に適したアミンは1−フェニルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)、N,N−ジエチルアミノ−1,3−プロパンジアミン、1−o−トリルビグアニド、モノエチルアミン、ピペリジン、ポリオキシプロピレンジアミン(サンテクノジャパン社製;ジェファーミンD2000)、3 − アミノプロピルメチルジメトキシシランである。
【0137】
アミン化合物(d)の使用量としては特に限定されないが、フッ化塩化合物(c−1)100重量部に対して、500重量部以下が好ましい。500重量部を越えると貯蔵安定性、チクソ性が低下するため好ましくない。
【0138】
ただし、アミン化合物(d)として分子量1000以上の高分子アミン化合物、例えば上記のポリオキシプロピレンジアミンを用いる場合には、使用量を多くする必要があり、フッ化塩化合物(c−1)100重量部に対して、3000重量部以下用いるのが好ましい。
本発明の硬化性組成物には接着性付与剤として、シランカップリング剤を使用することができる。ここで言うシランカップリング剤とは、分子中に加水分解性ケイ素基とそれ以外の官能基を有する化合物で、各種被着体、すなわち、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタルなどの無機基材や、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの有機基材に用いた場合、ノンプライマー条件またはプライマー処理条件下で、著しい接着性改善効果を示す。ノンプライマー条件下で使用した場合には、各種被着体に対する接着性を改善する効果が特に顕著である。他にも物性調整剤、無機充填材の分散性改良剤等として機能し得る化合物である。
【0139】
シランカップリング剤の加水分解性ケイ素基の例としては、一般式(1)で表される基の内、Zが加水分解性基であるものを挙げることができる。具体的には、加水分解性基として既に例示した基を挙げることができるが、メトキシ基、エトキシ基等が加水分解速度の点から好ましい。加水分解性基の個数は、2個以上、特に3個以上が好ましい。
【0140】
加水分解性ケイ素基以外の官能基としては、置換または非置換のアミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲン等を例示できる。これらの内、置換または非置換のアミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート等は接着性改善効果が高い為に好ましく、アミノ基が特に好ましい。
シランカップリング剤の具体例としては、前文中の硬化触媒の説明においてフッ化塩化合物との錯体を形成するために使用する(d)アミン化合物として例示した全てのアミノシラン類とN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン型シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン等のイソシアネートシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等を挙げることができる。また、上記アミノシランとエポキシシランの反応物、アミノシランとイソシアネートシランの反応物、アミノシランと(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランの反応物なども使用できる。上記シラン類を部分的に縮合した縮合体も使用できる。さらに、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。
【0141】
上記シランカップリング剤は、1種類のみで使用しても良いし、2種類以上を混合使用してもよい。
【0142】
本発明で使用するシランカップリング剤の使用量としては、(A)成分100重量部に対し、0.01〜20重量部程度が好ましく、0.1〜10重量部程度がより好ましく、1〜7重量部程度が特に好ましい。配合量がこの範囲を下回ると、接着性が十分に得られない場合がある。配合量がこの範囲を上回ると実用的な硬化速度が得られなくなる場合があり、また硬化反応が充分に進行し難くなる場合がある。
【0143】
上記したシランカップリング剤以外にも、接着性付与剤として、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が使用できる。上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0144】
また、本発明の組成物には、シリケートを用いることができる。このシリケートは、架橋剤として作用し、本発明の(A)成分である有機重合体の復元性、耐久性、および、耐クリープ性を改善する機能を有する。また更に、接着性および耐水接着性、高温高湿条件での接着耐久性を改善する効果も有する。シリケートとしてはテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物が使用できる。シリケートを使用する場合、その使用量は(A)成分の有機重合体100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0145】
シリケートの具体例としては、たとえばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)、および、それらの部分加水分解縮合物があげられる。
【0146】
テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、本発明の復元性、耐久性、および、耐クリープ性の改善効果がテトラアルコキシシランよりも大きい為により好ましい。
【0147】
前記テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物としては、たとえば通常の方法でテトラアルコキシシランに水を添加し、部分加水分解させて縮合させたものがあげられる。また、オルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物は、市販のものを用いることができる。このような縮合物としては、例えば、メチルシリケート51、エチルシリケート40(いずれもコルコート(株)製)等が挙げられる。
【0148】
本発明の組成物には可塑剤を添加することができる。可塑剤の添加により、硬化性組成物の粘度やスランプ性および組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸びなどの機械特性が調整できる。可塑剤の例としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸ジイソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、等の炭化水素系油;プロセスオイル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類をあげることができる。
【0149】
また、高分子可塑剤を使用することができる。高分子可塑剤を使用すると重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持できる。更に、該硬化物にアルキド塗料を塗布した場合の乾燥性(塗装性ともいう)を改良できる。高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;分子量500以上、さらには1000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールあるいはこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
これらの高分子可塑剤のうちで、(A)成分の有機重合体と相溶するものが好ましい。この点から、ポリエーテル類やビニル系重合体が好ましい。また、ポリエーテル類を可塑剤として使用すると、表面硬化性および深部硬化性が改善され、貯蔵後の硬化遅延も起こらないことから好ましく、中でもポリプロピレングリコールがより好ましい。また、相溶性および耐候性、耐熱性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でもアクリル系重合体および/又はメタクリル系重合体が好ましく、ポリアクリル酸アルキルエステルなどアクリル系重合体がさらに好ましい。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001−207157号公報に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温、高圧で連続塊状重合によって得た、いわゆるSGOプロセスによる重合体を用いるのが好ましい。
【0151】
高分子可塑剤の数平均分子量は、好ましくは500〜15000であるが、より好ましくは800〜10000であり、さらに好ましくは1000〜8000、特に好ましくは1000〜5000である。最も好ましくは1000〜3000である。分子量が低すぎると熱や降雨により可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できず、アルキド塗装性が改善できない。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が悪くなる。高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.80未満が好ましい。1.70以下がより好ましく、1.60以下がなお好ましく、1.50以下がさらに好ましく、1.40以下が特に好ましく、1.30以下が最も好ましい。
【0152】
数平均分子量はポリエーテル系重合体の場合は末端基分析法で、その他の重合体の場合はGPC法で測定される。また、分子量分布(Mw/Mn)はGPC法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0153】
また、高分子可塑剤は、反応性ケイ素基を有しないものでよいが、反応性ケイ素基を有してもよい。反応性ケイ素基を有する場合、反応性可塑剤として作用し、硬化物からの可塑剤の移行を防止できる。反応性ケイ素基を有する場合、1分子あたり平均して1個以下が好ましく、さらには0.8個以下がより好ましい。反応性ケイ素基を有する可塑剤、特に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を使用する場合、その数平均分子量は(A)成分の有機重合体より低いことが必要である。
【0154】
可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また低分子可塑剤と高分子可塑剤を併用してもよい。なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
【0155】
可塑剤の使用量は、(A)成分の有機重合体100重量部に対して5〜150重量部が好ましく、10〜120重量部がより好ましく、20〜100重量部がさらに好ましい。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなり、150重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する。
本発明の組成物には溶剤または希釈剤を添加することができる。溶剤及び希釈剤としては、特に限定されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、エーテルなどを使用することができる。溶剤または希釈剤を使用する場合、組成物を屋内で使用した時の空気への汚染の問題から、溶剤の沸点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。上記溶剤または希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0156】
本発明の硬化性組成物には透明性が損なわれない範囲で生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。前記物性調整剤を用いることにより、本発明の組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、逆に硬度を下げ、破断伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0157】
特に、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特開平5−117521号公報に記載されている化合物をあげることができる。また、ヘキサノール、オクタノール、デカノールなどのアルキルアルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物、特開平11−241029号公報に記載されているトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールあるいはソルビトールなどの水酸基数が3以上の多価アルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物をあげることができる。
【0158】
また、特開平7−258534号公報に記載されているようなオキシプロピレン重合体の誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物もあげることができる。さらに特開平6−279693号公報に記載されている架橋可能な加水分解性ケイ素含有基と加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基を有する重合体を使用することもできる。
【0159】
物性調整剤は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部使用できる。
【0160】
本発明の硬化性組成物において透明性が損なわれない範囲で1分子中にエポキシ基を含有する化合物を使用できる。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としてはエポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環式エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物及びそれらの混合物等が例示できる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビス(2−エチルヘキシル)−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカーボキシレート(E−PS)、エポキシオクチルステアレ−ト、エポキシブチルステアレ−ト等があげられる。これらのなかではE−PSが特に好ましい。エポキシ化合物は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.5〜50重量部の範囲で使用するのがよい。
【0161】
本発明の硬化組成物には透明性が損なわれない範囲で光硬化性物質を使用できる。光硬化性物質を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや耐候性を改善できる。光硬化性物質とは、光の作用によってかなり短時間に分子構造が化学変化をおこし、硬化などの物性的変化を生ずるものである。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂或いはそれらを含む組成物等多くのものが知られており、市販の任意のものを採用し得る。代表的なものとしては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が使用できる。不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系又はメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー或いはそれ等の混合物であって、プロピレン(又はブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の単量体又は分子量10,000以下のオリゴエステルが例示される。具体的には、例えば特殊アクリレート(2官能)のアロニックスM−210,アロニックスM−215,アロニックスM−220,アロニックスM−233,アロニックスM−240,アロニックスM−245;(3官能)のアロニックスM−305,アロニックスM−309,アロニックスM−310,アロニックスM−315,アロニックスM−320,アロニックスM−325,及び(多官能)のアロニックスM−400などが例示できるが、特にアクリル官能基を含有する化合物が好ましく、また1分子中に平均して3個以上の同官能基を含有する化合物が好ましい。(以上アロニックスはいずれも東亜合成株式会社の製品である。)
【0162】
ポリケイ皮酸ビニル類としては、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂でありポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル誘導体が例示される。アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はジアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液の他、「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、第93頁〜、第106頁〜、第117頁〜)に詳細な例示があり、これらを単独又は混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類などの促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。光硬化性物質は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましく使用できる。光硬化性物質の使用量が0.1重量部以下では耐候性を高める効果はない場合があり、20重量部以上では硬化物が硬くなりすぎて、ヒビ割れを生じる傾向がある。
【0163】
本発明の硬化性組成物には透明性が失われない範囲、着色しない範囲で酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐熱性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が例示できるが、特にヒンダードフェノール系が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL,EB50−866(以上いずれもチバ・ジャパン株式会社製);MARK LA−57,MARK LA−62,MARK LA−67,MARK LA−63,MARK LA−68(以上いずれもADEKA株式会社製);サノールLS−770,サノールLS−765,サノールLS−292,サノールLS−2626,サノールLS−1114,サノールLS−744(以上いずれも三共株式会社製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は特開平4−283259号公報や特開平9−194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。
【0164】
本発明の組成物には光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。光安定剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。光安定剤の具体例は特開平9−194731号公報にも記載されている。
【0165】
本発明の組成物に光硬化性物質を併用する場合、特に不飽和アクリル系化合物を用いる場合、特開平5−70531号公報に記載されているようにヒンダードアミン系光安定剤として3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが組成物の保存安定性改良のために好ましい。3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としてはチヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB119FL(以上いずれもチバ・ジャパン株式会社製);MARK LA−57,LA−62,LA−67,LA−63(以上いずれもADEKA株式会社製);サノールLS−765,LS−292,LS−2626,LS−1114,LS−744(以上いずれも三共株式会社製)などの光安定剤が例示できる。
【0166】
本発明の組成物には紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系が好ましい。紫外線吸収剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。フェノール系やヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用して使用するのが好ましい。
【0167】
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物または硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて透明性を損なわない範囲で各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、例えば、難燃剤、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、防かび剤などが挙げられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本明細書にあげた添加物の具体例以外の具体例は、例えば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開2001−72854号の各公報などに記載されている。
【0168】
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することができる。
【0169】
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。脱水、乾燥方法としては粉状などの固状物の場合は加熱乾燥法、液状物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、生石灰、酸化マグネシウムなどを使用した脱水法が好適である。また、イソシアネート化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。また、3−エチル−2−メチル−2−(3−メチルブチル)−1,3−オキサゾリジンなどのオキサゾリジン化合物を配合して水と反応させて脱水してもよい。かかる脱水乾燥法に加えてメタノール、エタノールなどの低級アルコール;n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。
【0170】
脱水剤、特にビニルトリメトキシシランなどの水と反応し得るケイ素化合物の使用量は反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0171】
本発明の硬化性組成物の調製法には特に限定はなく、例えば上記した成分を配合し、ミキサーやロールやニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が採用されうる。
【0172】
本発明の硬化性組成物は、大気中に暴露されると水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、ゴム状弾性を有する固体へと硬化する。
【0173】
本発明の硬化性組成物は、粘着剤、建造物・船舶・自動車・道路などのシーリング材、接着剤、型取剤、防振材、制振材、防音材、発泡材料、塗料、吹付材などに使用できる。本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、柔軟性および接着性に優れることから、これらの中でも、シーリング材または接着剤として用いることがより好ましい。
【0174】
また、太陽電池裏面封止材などの電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、弾性接着剤、コンタクト型接着剤、スプレー型シール材、クラック補修材、タイル張り用接着剤、粉体塗料、注型材料、医療用ゴム材料、医療用粘着剤、医療機器シール材、食品包装材、サイジングボード等の外装材の目地用シーリング材、コーティング材、プライマー、電磁波遮蔽用導電性材料、熱伝導性材料、ホットメルト材料、電気電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、各種成形材料、および、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車部品、電機部品、各種機械部品などにおいて使用される液状シール剤等の様々な用途に利用可能である。更に、単独あるいはプライマーの助けをかりてガラス、磁器、木材、金属、樹脂成形物などの如き広範囲の基質に密着しうるので、種々のタイプの密封組成物および接着組成物としても使用可能である。また、本発明の硬化性組成物は、内装パネル用接着剤、外装パネル用接着剤、タイル張り用接着剤、石材張り用接着剤、天井仕上げ用接着剤、床仕上げ用接着剤、壁仕上げ用接着剤、車両パネル用接着剤、電気・電子・精密機器組立用接着剤、ダイレクトグレージング用シーリング材、複層ガラス用シーリング材、SSG工法用シーリング材、または、建築物のワーキングジョイント用シーリング材、としても使用可能である。
【実施例】
【0175】
つぎに実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0176】
(合成例1)
分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールと分子量約3,000のポリオキシプロピレントリオールの1/1(重量比)混合物を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約19,000のポリプロピレンオキシドを得た。続いて、この水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。以上により、末端がアリル基である数平均分子量約19,000のポリプロピレンオキシドを得た。得られた未精製のアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去し、精製されたアリル基末端ポリプロピレンオキシド(P−1)を得た。
【0177】
得られたアリル末端ポリプロピレンオキシド(P−1)100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%の2−プロパノール溶液150ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.35重量部と90℃で5時間反応させ、メチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキシド(Q−1)を得た。H−NMRによる測定により、末端のメチルジメトキシシリル基は1分子あたり平均して約1.7個であった。
【0178】
(合成例2)
105℃に加熱したイソブタノール55g中にアクリル酸ブチル30g、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン4.5g、メタクリル酸メチル45g、メタクリル酸ステアリル20g、およびイソブタノール25gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2.3gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行い、固形分濃度55%で、GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量(Mn)が9,000の共重合体(Q−2)を得た。
【0179】
(合成例3)
合成例1で得られた重合体(Q−1)と合成例2で得られた共重合体(Q−2)とを固形分比80/20でブレンドし、エバポレーターを用い、減圧下、110℃加熱条件で脱揮を行い、固形分濃度99%以上の有機重合体(A−1)を得た。
【0180】
(実施例1〜5、比較例1〜6)
合成例3で得られた有機重合体(A)100重量部に対して、表1に示す重量部数で各種シリカ、配合物を混合して充分混練した後、セラミック製3本ペイントロールに1回通して分散させた。この後、120℃で2時間減圧乾燥を行い、50℃以下に冷却後、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(Momentive(株)製、商品名:A−171)2重量部、接着性付与剤としてγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Momentive(株)製、商品名:A−1110)2重量部を加え、更に充分攪拌を行った。最後に、表1に示す重量部数で硬化触媒を加えて混練した。このように硬化性組成物を実質的に水分の存在しない状態とし、防湿性の容器であるカートリッジに封入、密閉し、1成分型硬化性組成物を得た。
【0181】
得られた1成分型硬化性組成物は異なる2種類の条件下で保存し、その後、硬化性組成物の粘度を計測することによって評価を行うことにした。
【0182】
1つは温度:23℃、湿度50%に保たれた恒温室に1週間保存してから評価を行い、もう一方は温度:50℃の乾燥機に4週間保存後、カートリッジを乾燥機から取り出し、気温:23℃、湿度50%に保たれた恒温室に1日間保存してから評価を行う。
上記の2種類の条件下で保存した後、それぞれカートリッジを開封し、硬化性組成物を100mlディスポカップに適量入れ、7号ローターを取り付けたBS粘度計(TOKIMEC INC製)にて1rpm,2rpm,10rpm(Xrpm:1分間にローターがX回転する)の攪拌速度で粘度測定を行った。結果を表1に示す。
【0183】
(全光線透過率)
上記硬化性組成物を厚みが3mmになるよう伸ばして表面が平滑な試験片を作成し、23℃、50%湿度条件下にて7日間養生して硬化させた。この硬化物について、色度・濁度測定器(日本電色工業社製)を用いて全光線透過率を測定した。全光線透過率は、試験片を通った全光量を入射光量で割った値で、透明度が高いほど大きい値となる。
【0184】
(チクソトロピーインデックス)
2rpmと10rpmでの粘度値をもとにチクソトロピーインデックス(以下TI値と表現する)を算出した。TI値とはチクソトロピー性を指数化したものであり、TI値が高ければ高いほどチクソトロピー性が高い硬化性組成物であることを意味する。(ペーストのような分散系では回転速度に応じ粘度値が下がる(水のようなニュートン流体では一定である)。このとき、回転速度aとbにおける粘度値の比を取ったものがTI値である。 aとbの値には特に決まりがないが、 TI値が1以上になるように比を取る。)
【0185】
【表1】

実施例1,2,3と比較例1を比べると実施例の粘度上昇率は比較例より小さく、TIは実施例の方が大きい。これより、実施例1,2,3の貯蔵安定性と作業性が良好と言える。
【0186】
実施例4と比較例2、実施例5と比較例3をそれぞれ比較すると、粘度上昇率は実施例4、実施例5が低く、またTI値は実施例4、実施例5が高い。これより、実施例4,実施例5の貯蔵安定性と作業性が良好と言える。
【0187】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する有機重合体、
(B)シリカ、
(C)フッ化塩化合物(c−1)、および/またはフッ化塩化合物(c−1)とアミン化合物(d)の錯体、
を含有する透明な1成分型硬化性組成物であって、シリカ(B)に含有される疎水性シリカの量が、有機重合体(A)100重量部に対して30重量部未満であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
(A)成分の有機重合体が、数平均分子量が500〜100,000の範囲内にあり、主鎖の末端および/または側鎖に、一般式(1):
−SiR3−a (1)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1から20のアルキル基、炭素原子数6から20のアリール基、炭素原子数7から20のアラルキル基または(R’)SiO−(R’は、それぞれ独立に、炭素原子数1から20の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、Zは、それぞれ独立に、水酸基または加水分解性基である。さらに、aは1、2、3のいずれかである)で表されるケイ素含有基を、1分子あたり、平均して1個以上有する有機重合体である、請求項1に記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項3】
一般式(1)のZがアルコキシ基である、請求項2に記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項4】
(A)成分の有機重合体が、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、および(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種の主鎖骨格を有する有機重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項5】
(B)成分が親水性シリカである請求項1〜4のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項6】
(B)成分が合成非晶質シリカである請求項1〜5のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項7】
(B)成分が、(A)成分と可塑剤の合計量100重量部に対して10重量部以上50重量部以下の割合で含まれる請求項1〜6のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項8】
(B)成分が乾式法で合成された合成非晶質シリカである請求項1〜7のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項9】
(B)成分が湿式法で合成された合成非晶質シリカである請求項1〜7のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項10】
(C)成分がフッ化塩化合物(c−1)である請求項1〜9のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項11】
(C)成分がフッ化塩化合物(c−1)とアミン(d)の錯体である請求項1〜9のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項12】
(C)成分のフッ化塩化合物(c−1)が、フッ化水素(c−2)、および/またはフッ化アンモニウム(c−3)、および/または一般式(2):
MF・HF (2)
(Mはアルカリ金属)
で表される化合物である請求項1〜11のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項13】
(C)成分のアミン化合物(d)が、アミジン化合物である請求項1〜9,11、12のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項14】
アミジン化合物が、グアニジン化合物および/またはビグアニド化合物である請求項13に記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項15】
グアニジン化合物および/またはビグアニド化合物が、アリール置換グアニジン類および/または、アリール置換ビグアニド類である請求項14に記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項16】
(C)成分のアミン化合物(d)が、3級アミンである請求項1〜9,11,12のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項17】
(C)成分のアミン化合物(d)が、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1−フェニルグアニジンおよび、N,N−ジエチルアミノ−1,3−プロパンジアミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1〜9,11,12のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項18】
(C)成分のフッ化塩化合物(c−1)が、ハロゲン化ホウ素および/またはその誘導体である請求項11に記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項19】
(C)成分のフッ化塩化合物(c−1)が、三フッ化ホウ素及びその誘導体から選ばれる一種以上の化合物である請求項11に記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項20】
(C)成分のアミン化合物(d)が1−フェニルグアニジン、および/またはN,N−ジエチルアミノ−1,3−プロパンジアミンである請求項18,19のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物を用いてなるシーリング材。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物を用いてなる接着剤。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれかに記載の透明な1成分型硬化性組成物を硬化してなる透明硬化物。


【公開番号】特開2010−65073(P2010−65073A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229798(P2008−229798)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】