磁場測定プローブ
磁場を測定するプローブは、所定の選択された測定軸に沿う磁場を感知する少なくとも一個の磁気抵抗センサ(102,104、106)を備える。そのプローブは、一つの場所においてお互いが固定して接続された少なくとも二個の磁気抵抗センサ(102,104、106)であって、それらの選択された測定軸の角度がずらされるような前記の磁気抵抗センサを備え、かつそのプローブは、それらの選択された測定軸に沿う各センサにより測定された磁場を表わす信号を提供するために、各磁気抵抗センサ(102,104、106)に固有な出力端子を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の選択された測定軸に沿う磁場を感知する少なくとも一個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備えるタイプの磁場を測定するプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗センサ、より正確には、GMR(巨大磁気抵抗)タイプのセンサを使用して、操作中に、電子回路により生成される磁場を測定することが知られている。
【0003】
このタイプの磁気抵抗センサは、それが設置された磁場に従って抵抗が変化する電子素子である。処理チェーンが磁気抵抗センサに接続されて、回路上の磁場の大きさを決定することが可能になる。
【0004】
このタイプのセンサは効率的ではあるが、電子回路により生成される電磁放射に関連して少量の情報しか得られない。特に、回路を流れる電流の特性、特にその大きさ、電流が流れる経路、および電流の流れる方向は、決定することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分析対象の回路に関連して、付加的情報が得られるような、磁場を測定するプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明は、上記のタイプの磁場を測定するプローブに関し、そのプローブは、一つの場所においてお互いが固定して接続された少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサであって、それらの選択された測定軸の角度がずらされるような前記の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、かつそのプローブは、それらの選択された測定軸に沿う各センサにより測定された磁場を表わす信号を提供するために、各磁気抵抗または磁気誘導センサに固有な出力端子を備えることを特徴とする。
【0007】
具体的な実施例によれば、測定プローブは、一つまたは複数の下記の特徴を備える。
同じ半導体基板に形成され、お互いが直交するように配設された、選択された検出軸を有する少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備える。
選択された測定軸が二つ1組の対で直交する少なくとも三個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備える。
少なくとも二対の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、それぞれの同じ対のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向にお互いにずらされた選択された軸を有し、二つの分離した対のセンサの選択された測定軸の角度がずらされている。
三個のセンサを一つの組(三個組)として、三つの組として分布された少なくとも九個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、同じ三個組の三個のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向にお互いにオフセットされた選択された軸を有し、分離した三個組のセンサの選択された測定軸の角度がずらされている。
プローブのすべての磁気抵抗または磁気誘導センサは、二つの層に従って分布されている。
異なる層のセンサの選択された測定軸の角度がずらされている。
同じ層のセンサは、平行な選択された測定軸を有する。
プローブのすべての磁気抵抗または磁気誘導センサは、同じ層上に分布されている。
【0008】
本発明は更に、上記のように規定された少なくとも一つのプローブと、各磁気抵抗センサに固有な処理チェーンと、種々の処理チェーンからの信号を処理する手段を備える磁場を測定する装置に関する。
【0009】
本発明は、単に例としてのための下記の記述を読み、図を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示される設備は、操作中に集積回路を分析するためのものである。
【0011】
この設備は、実質的に、集積回路Cを支持するプレート12と、FCで示される所定周波数で集積回路を励振する回路14と、操作中に回路Cにより生成される磁場を分析するための装置16と、磁場を分析する装置16の出力において得られる結果を処理するための手段18とを備える。更に、設備は、操作中に集積回路を観察する手段20を備える。これらの手段は、それ自体既知であり、詳細は記述しない。
【0012】
回路Cが設置される支持12はミューメタル(登録商標)のプレートにより形成されるか、または回路から離れた、その下方において、磁場に対してバリアを形成するミューメタルを備える。回路Cはミューメタルのケースに閉じ込めると有益である。
【0013】
励振回路14は、例えば、所定周波数FCにおいて電力を回路に供給できる周波数生成器により形成される。この励振周波数FCは、例えば、160kHzである。
【0014】
分析手段16は、操作アーム22を備え、操作アームの自由端には、測定プローブ24であって、そのプローブの位置における磁場の特性を示す値を決定できる測定プローブ24が設けられている。
【0015】
操作アーム22は、お互いに関して直交する三方向の変位を可能にし、回路に関してのプローブの位置を正確に知ることができる、それ自体公知のプローブを変位する機構26に接続されている。
【0016】
更に、分析手段16は、プローブ24のセンサが接続されて、プローブからの信号を処理するための処理チェーン28を備える。これらの処理チェーンは、処理手段18に接続されて、手段に、プローブ24により測定される磁場の、一つまたは複数の処理された値を提供する。
【0017】
処理手段18は、例えば、処理チェーン28の出力において接続される入力カードを備える、PCタイプのコンピュータにより形成される。更に、分析手段16が、より正確には、変位手段26、処理チェーン28、および励振回路14の制御を可能にする制御カードを備える。
【0018】
処理手段18は、磁場の分析のための分析手段16、具体的には、励振回路14、変位手段26、および処理チェーン28の制御を可能にするソフトウェアモジュールを備える。また、前記の磁場の分析手段からの信号を処理するためのソフトウェアモジュールも更に備える。
【0019】
特に、処理手段18は、図2に示されるアルゴリズムを実行でき、アルゴリズムの各ステップに対して、ソフトウェアモジュールが提供される。
【0020】
操作中に電子回路を分析するために、回路のモデル化を最初に、回路の略図に基づいて、ステップ50の期間に行うことができる。このモデル化は、例えば、ベクトル型であるが、適切であれば、どんなソフトウェア手段を使用しても実行できる。このモデル化は、回路Cを構成する種々のトラックおよび種々の電子構成要素の場所を決定するように意図されている。
【0021】
このモデル化が完了すると、回路動作のシミュレーションがステップ52の期間に実行される。回路上の磁場の特性は、回路の各ポイントにおいて、このシミュレーションにより、特にマクスウェル(Maxwell)の方程式を適用することにより決定される。このように、回路の各素子に対して、そこを流れる電流、およびBx、By,およびBzで示される磁場の三個の成分が、回路の直上に位置する測定点で、および測定プローブ24により占められる、異なる所定の場所に対して決定される。
【0022】
モデル化およびシミュレーションステップと平行して、処理手段18は、シミュレーションの期間に、それぞれの適切な測定点において、磁場の分析手段16を使用して、磁場の有効測定を制御する。
【0023】
ステップ60の期間に、磁場の分析手段16は、最初、初期化され較正される。その正しい操作もまた検証される。更に、基準測定が、それが生成する磁場の成分が既知である較正用のテスト片について実行される。
【0024】
種々の測定点の取得は、ステップ62の期間に実行される。このステップは、操作中に磁場C上のいくつかの所定測定点において、磁場の少なくとも一つの成分の測定を実行することを含む。この目的のため、プローブが、回路の表面を、例えば、牛耕型の経路に従って走査するために、変位手段26の制御のもとに変位される。測定値をそれぞれ取得する前に、測定の結果が、プローブの変位により影響されないように測定プローブを測定点において停止させる。
【0025】
各測定値の実際の取得は下記に示される。
【0026】
ステップ62もまた、回路Cが操作中でないときに、周囲の磁場の成分を各測定点において測定するために、測定点の取得を提供するが、これは有益ではあるが、必ずしも必要ではない。
【0027】
ステップ64の期間に、各測定点に対して取得された信号は、特に測定の結果である誤差と不一致を訂正するために処理され、これらの誤差と不一致は、ステップ60の期間に基準テスト片から取得されたデータの表との比較に関連する技術により訂正される。
【0028】
ステップ64の期間に、一つまたは二つ以上の方向において、Bx、By、Bzと示される磁場の測定値からの値が計算され、特にdBx/dy、dBx/dz、dBy/dz、dBy/dx、dBz/dx、およびdBz/dyで示される三方向における磁場の成分の空間的な変化量が計算される。
【0029】
更に、測定点の下の回路における電流の大きさおよび方向の特性は、Jを電流ベクトルとし、Bを磁場ベクトルとしたときのマクスウェルの法則J=Rot B、を適用とすることにより決定される。
【0030】
ステップ66の期間に、信号処理ステップ64からの値と、ステップ52の期間に実行されたシミュレーションに従って得られた値が、回路の実際の動作が正しいか否かを推測し、理論上の回路と、実際の回路間の不一致の領域を操作中に決定するために比較される。
【0031】
測定ヘッド24は、図3に示すように、それぞれが一つまたは二つ以上の磁気抵抗センサを備える二つの集積回路により構成される測定プローブ100を備える。本発明によれば、測定プローブは、角度に関してオフセットされた選択された測定軸を有する少なくとも二つの磁気抵抗センサを備える。このセンサは、お互いに固定して接続され、それぞれの所定位置にて固定される。
【0032】
図3に示す実施例において、三つの磁気抵抗センサ102、104、および106は測定プローブに集積されている。
【0033】
製造を容易にするために、二つの磁気抵抗センサ102と104は、同じ集積回路108に配設されるが、磁気抵抗センサ106は、分離した集積回路110に配設される。
【0034】
各磁気抵抗センサは、抵抗が、それが設置された磁場に従って変化する構成部品である。このタイプのセンサは、図において概略的に矢印で示されている選択された測定軸を有している。この構成部品の抵抗は、このようにこの選択された測定軸に沿う磁場の成分により影響され、他の方向における磁場の成分にはそれほど反応しない。
【0035】
図3に示すように、磁気抵抗センサの選択された測定軸は、直交空間基準を規定するように対同士で直交する。
【0036】
軸のそのような配置は特に有益であるが、種々のセンサの選択された測定軸は、それぞれに関して直交せずに、それぞれに関して角度的にずらすだけのこともありうる。
【0037】
磁気抵抗センサは、GMR型(巨大磁気抵抗効果、Giant Maneto Resistive)、GMI型(巨大磁気インピーダンス)、CMR型(巨大磁気抵抗効果、Cellossol Magneto Resistive)、またはTMR型(トンネル磁気抵抗効果)であってよい。好ましくは、磁気抵抗センサはこの最後の型である。また、例えば、MTJ型(磁気トンネル接合)またはSDT型(スピン依存トンネル)であってよい。
【0038】
図4では、センサ102と104を備える集積回路108のみが示されている。更に、センサ104に対しては、同一の処理回路が使用されているので、センサ102と関連する処理回路28のみが示されている。
【0039】
図4に示すように、磁気抵抗センサ102は、所定値を有する三個の他の固定抵抗302、303、および304を備えるウェストン(Weston)ブリッジ301に集積されている。これらの四個の抵抗は、ウェストンブリッジの構造でそれ自体が知られているように、ループを形成するために直列に接続されている。ウェストンブリッジの対向する二つの端子は、プローブ100の測定出力112Aおよび112Bを形成する。ウェストンブリッジの他の二つの端子114Aおよび114Bは、ウェストンブリッジへの電力供給入力を形成する。これらは、所定の周波数、例えば、160kHzに等しい周波数の正弦波信号を生成する生成器116の端子に接続されている。
【0040】
更に、それ自体が知られているように、測定プローブ100は、交流電圧の外部電源120に接続されている巻線118を備える。巻線118は、磁気抵抗センサの領域において、センサのヒステリシスを減らすために、磁気抵抗センサの領域において分極場を形成するのに適している。
【0041】
同様に、磁気抵抗センサ104もまた、三個の抵抗306、307、および308を備えるウェストンブリッジ305に集積され、第2巻線309は、ヒステリシスを減らすために、磁気抵抗センサ14の領域において分極場を形成するために設けられる。上記のように、ウェストンブリッジおよび巻線は、簡略化のために図示していないが、特定の電力供給手段に接続されている。
【0042】
センサ104に接続される回路は同一なため、磁気抵抗センサ102からの信号を処理する回路のみが下記で記述される。
【0043】
測定プローブの出力112Aおよび112Bは、処理チェーン28に接続される。
【0044】
これらは、出力端子112Aおよび112Bがそれぞれその入力に接続される、二つの高域通過フィルタ124Aおよび124Bにより減算器を形成する、差動増幅段122に、入力において接続される。
【0045】
差動増幅段122は、例えば、100に等しい利得を生成するように構成される。
【0046】
高域通過フィルタは、コンデンサ126を備えるRC型の受動フィルタであり、その一つの端子は、抵抗128により接地されている。
【0047】
差動増幅段は、適切であれば、どんな公知のタイプであってよく、例えば、そのフィードバックループに抵抗132が設けられている演算増幅器130を備えており、演算増幅器の反転および非反転入力は、二個の入力抵抗134によりフィルタ124Aおよび124Bの出力に接続されている。演算増幅器の非反転端子は、入力電圧を固定する抵抗136により接地されている。
【0048】
差動増幅器122の出力は、測定プローブからの磁場を表わす信号の所定の周波数成分を分離するための手段138の入力に接続される。決定される磁場の成分の周波数は、FIで示される。この周波数は、例えば、160kHzに等しい。
【0049】
図5に示す実施例において、これらの分離手段138は、分離される周波数成分の周波数FIを中心とする帯域通過型の能動選択フィルタを備える。この周波数は、回路Cの励振周波数と等しい。
【0050】
このフィルタは、非反転端子が接地されている演算増幅器140を備える。フィルタの反転端子は、入力抵抗142により、差動増幅段122の出力に接続されている。差動増幅器140のフィードバックループは、それ自身がコイル148に直列に接続されている抵抗146に並列に接続されたコンデンサ144を備える。
【0051】
出力において、選択フィルタ138は、二つの受動低域通過フィルタ152および154が続く、BAT型のダイオード150を有し、二つのフィルタはそれぞれ、出力端子がコンデンサ158により接地された抵抗により形成されている。
【0052】
処理チェーン28により、磁気抵抗センサにより検出された磁場の周波数成分が、非常に簡単な回路により得られるようになる。
【0053】
磁場を測定する装置の操作中、磁気抵抗センサ102の抵抗値は、センサの選択された測定軸に沿う磁場の大きさに従って変化する。出力端子112Aおよび112Bにおいて測定された信号の振幅は、このように磁場に従って変化する。
【0054】
この二つの高域通過フィルタ124Aおよび124Bが、外部環境の結果である妨害周波数のフィルタ処理をもたらす。
【0055】
差動増幅回路122は、大きさが、二つの端子112Aおよび112Bの間の電位差に比例する信号を、出力において生成する。回路Cの励振周波数に中心がある選択フィルタ138は、この周波数に対する磁場の周波数成分の分離をもたらす。
【0056】
二つの低域通過フィルタ152および154は、妨害成分の抑制を可能にする新しいフィルタ処理動作をもたらす。
【0057】
出力段160を、無負荷センサの端子において測定された、連続電圧値を出力するように有益に追加することができる。このため、差動増幅器が再び使用される。前述の出力信号は、差動増幅器の反転入力に加えられ、一方、連続基準電圧は、非反転入力に加えられる。
【0058】
基準電圧の制御は、この第2差動増幅器の出力においてゼロの値を測定するように調整可能な抵抗の値を調整することにより行われる。測定は、回路Cを分極化することなく、センサを磁気的に(ヒステリシスサイクルにおいてずらすために)分極化することにより行われる。
【0059】
処理チェーンからの信号は、処理手段18により受信される。
【0060】
このように、処理チェーンが、磁場の測定値および、より正確には、磁場の成分を非常に迅速に得ることを可能にしていることは理解されよう。
【0061】
図5および図6は、本発明に係る測定装置の構成変形例である。これらの実施例において、図4と同一の、または類似の構成要素は、同じ参照番号で示してある。
【0062】
これらの二つの構成変形例において、処理チェーンのみが、差動増幅段122の下流で使用される手段のため、異なっている。
【0063】
二つの場合において、所定周波数に対する磁場の周波数成分を分離する手段は、差動増幅段122からの信号と基準信号の合成を可能にし、その周波数FCが、励振回路14により加えられた回路作動周波数f以上である乗算回路180を備える。乗算器の使用により、周波数(160kHz)の選択に柔軟性が出てくる。
【0064】
図4の実施例において、分離手段はアナログ乗算回路180を備え、その一つの入力は、差動増幅段122の出力において接続され、他の入力は、基準周波数Fが、分離される周波数成分の所定周波数FIを超える、正弦波電圧生成器182に接続される。
【0065】
抵抗186およびコンデンサ188により構成される低域通過フィルタ184は、乗算回路の出力において設けられる。有益なことであるが、減算回路190が、出力回路において得られるフィルタ処理された信号と、Vrefで示される、加えられた基準信号との比較のために、低域通過フィルタ184の出力において設けられる。減算回路は、フィードバックループに適切な抵抗194を有し、電圧Vrefがその非反転端子に加えられる、演算増幅器192を備える。
【0066】
図4の実施例と同様に、出力段160は、減算回路の出力において配設される。
【0067】
特定の実施例によれば、電圧源182は、ウェストンブリッジ201に供給する電圧源116により形成される。
【0068】
本実施例においては、センサの電力供給周波数は、求める周波数成分の周波数と同一である。
【0069】
図6の実施例において、所定の周波数成分を分離する手段は、差動増幅段122の出力において得られる信号と、基準信号の乗算をもたらすデジタルプロセッサにより形成される。
【0070】
図6に示されるように、抵抗202とコンデンサ204から構成される低域通過フィルタ200が、差動増幅段の出力において設けられる。アナログ/デジタル変換器206は、信号をデジタル化することを確実にするために、フィルタ200の出力において接続される。
【0071】
更に、処理チェーンは上記のように、これもまた182と示される正弦波基準電圧源を含む。アナログ/デジタル変換器208は、この電圧源182の出力において接続される。アナログ/デジタル変換器は、受信した信号の周波数よりも遥かに高いサンプリング周波数を有する。これは、例えば、500kHzを超える。
【0072】
DSP型の回路のような高速プロセッサ210が、処理チェーンに設けられる。それは、二つのアナログ変換器206と208からの信号を、入力において受信し、二つの信号の乗算をもたらすようにプログラムされる。
【0073】
乗算された信号は、このように、212と示されるRS232タイプの接続のようなデジタル接続か、またはアナログ接続のどちらかを介して処理手段18に送られ、ここにおいて、デジタル/アナログ変換器214が、プロセッサ210の出力において接続されている。
【0074】
この場合、この二つの信号の乗算はプロセッサ210により実行される。図3および図4の出力段160により実行される減算動作もまた、プロセッサ210によりもたらされる。
【0075】
本発明に係る測定プローブを使用して、プローブの各測定位置に対して、Bx、By、およびBzで示され、磁場の直交する3方向に対応する、磁場の三成分が格納され、磁場のこれらの三成分はそれぞれ、特定の処理チェーンに関連する磁気抵抗センサ102、104、および106により決定される。
【0076】
磁場の三成分は、各測定点に対して決定され、測定点は、分析されるべき回路の全表面に沿って広がっている。これらの点は、例えば、回路の表面をカバーする正規マトリックス上に分布している。回路の表面に関して同一の場所に対しては、分析されるべき回路の表面に関して異なる距離において、二つの測定点で実行される。
【0077】
隣接する複数の点に対して決定された磁場の三成分に基づいて、計算手段18は、各成分に対して、一つの方向に対する磁場の導関数を、特に、これら二点間の磁場の成分値間の差を決定し、この差をこの二点を分離する距離で除算することにより決定する。
【0078】
これらの値に基づいて、処理手段18は、各測定点に対して計算が可能で、回路を流れる電流の特性である三成分を計算する。磁場のこれらの成分は、下記の式により決定される。
Jx=dBz/dy−dBy/dz
Jy=dBx/dz−dBz/dx
Jz=dBy/dx−dBx/dy
ここにおいて、Jx、Jy、Jzはセンサ102、104、および106の三つの選択された測定軸に沿う電流の三成分である。
【0079】
図7は、回路において、単一方向に流れている電流を測定するための携帯装置710である。
【0080】
装置710は、ペンに形状および寸法がおおよそ対応している軸Z−Zを有する細長い道具の形状をしている。従って、この装置は操作中に、その軸Z−Zを回路に関して垂直にして、回路上を手動で動かすのに適している。
【0081】
本装置は、その一端に、軸Z−Zに関して直交する二つの平行面に配設されている複数の磁気抵抗センサを備えるプローブ712を備えている。
【0082】
プローブ712は、図8においてより拡大して示されている。プローブ712は、センサの二つの対として分布された四個の磁気抵抗センサ802、804、806、808を備え、同一対のセンサは、お互い平行な選択された測定軸を有している。二個のセンサ対の選択された測定軸は、お互いに関して直交しており、このようにして、装置の軸Z−Zに関して両者とも直交する二つの主要空間的方向に延伸している。
【0083】
同一対のセンサは、その共通の選択された測定軸に関して横方向において、それぞれに関してオフセットされている。より正確には、同一対のセンサは、装置の軸Z−Zの沿ってオフセットされている。
【0084】
本実施例において、二個のセンサ802と806は、第1集積回路上に配設され、他の二個のセンサ804と808は、第1集積回路と平行に配設された他の集積回路上に配設されている。このように、センサ802、806、804、808は、二つの平行面に沿って分布されている。
【0085】
センサ802と804は、軸Z−Zに沿ってオフセットされており、一方、その選択された測定軸は、軸Y−Yに沿って延伸している。同様に、センサ806と808は軸Z−Zに沿ってオフセットされているが、その選択された測定軸は、軸Y−YおよびZ−Zに直交する軸X−Xに沿って延伸している。
【0086】
装置710は、四個のセンサを供給する手段718を備える。
【0087】
同様に、プローブ712は、各センサに特有で、本センサにより測定された磁場を表わす信号の受信を可能にする出力端子を備える。
【0088】
各センサは、特定の処理チェーン720と722に接続され、それによりセンサからの信号が処理される。これらの処理チェーンは、図4、5、6で記載された処理チェーンの一つと同一である。それらのチェーンは、処理チェーン720と722の出力において得られる磁場の成分を表わす信号の処理が可能な、データ処理部724に接続されている。装置は更に、データ処理部724により制御される表示画面726を備える。
【0089】
画面726は、装置710が回路の平面に関して直交してその上に設置されている回路において流れる電流の二つの成分JxとJyの値を表示することができる。
【0090】
JxとJyは、プローブに特有で、センサの選択された測定軸に対応する、方向X−XおよびY−Yにおける電流の成分の値である。
【0091】
このため、データ処理部724は、二つのセンサ806と808を介して延伸する縦方向Z−Zに関して、装置の軸X−Xに沿う磁場Bの成分の、dBx/dzで示される導関数の値を決定する。
【0092】
センサ806と808に接続された処理チェーンの出力において、方向X−Xにおける磁場Bの成分の二つの値が提供され、Bx1およびBx2と示される。これらの二つの測定値と、軸Z−Zに沿って測定された、センサ806と808を隔てる既知の距離に基づいて、データ処理部724は、Z2およびZ1を、軸Z−Zに沿うセンサ14と12の位置としたときの、dBx/dz=Bx2−Bx1/z1−z2の関係に基づいて、方向Z−Zに関する方向X−Xにおける磁場成分の導関数dBx/dzの評価を決定する。
【0093】
二つの方向X−XおよびZ−Zに関して直交する、方向Y−Yにおける回路を流れる電流の成分Jyの値はdBx/dzに等しい。
【0094】
同様に、電流の値Jxは、センサ802と804により提供される二つの磁場の値By1とBy2の差および、それらを隔てる既知の距離から、下記の関係に基づいて得られる。
Jx=−dBy/dz=By1−By2/z2−z1
【0095】
方向X−XとY−Yにおける二個のセンサの二つの平面を使用することで、装置の軸Z−Zに関して直交する平面において電流が求まる。dBx/dzとdBy/dzという対におけるセンサ間の差分場測定により、マクスウェルの方程式による電流のベクトル表現であるJxおよびJyを導出することが可能になる。これは電流が、装置の軸に関して直交する平面のみを流れるときは、dBz/dyとdBz/dxはゼロになるからである。
【0096】
図1の設備、または図7の装置の特別な実施例によれば、測定ヘッド24または712は、例えば、図9に示すようにプローブ1000により構成される。このプローブは、対として三つの直交する方向の磁場の差分測定を実行するのに適している。
【0097】
このタイプのプローブは、九個のセンサを備える。これら九個のセンサは、三個のセンサを一つの組(三個組)とする三つの組として分布され、同一の三個組のセンサは、お互いが平行に配設された選択された測定軸を有している。これらのセンサは、三個組を特徴付ける選択された測定軸に関して直交する二つの方向において、お互いが更にずらされている。
【0098】
より正確にいえば、図9に示す例において、三つのセンサ1002A、1002B、1002Cは、軸X−Xに平行に配設された、選択された測定軸を有している。これらのセンサ1002Aと1002Bは、軸X−Xに沿ってお互いに関してずらされており、一方、センサ1002Aと1002Bは、軸X−Xに沿ってずらされている。同様に、センサ1004A,1004B,1004Cは、軸Y−Yに平行な、選択された測定軸を有し、センサ1004Cは、軸X−Xに沿って、センサ1004Aからずらされ、一方、センサ1004Bは、軸Z−Zに沿ってセンサ1004Aからずらされている。最後に、三個のセンサ1006A、1006B、1006Cは、軸X−Xに平行に延伸する測定軸を有し、センサ1006Aと1006Bは、軸Z−Zと、軸Y−Yに沿ってそれぞれ、センサ1006Aに関してずらされている。
【0099】
図1を参照して記述した設備において、各センサは特定の処理チェーンに接続され、九個の磁場の値が、処理手段18に供給される。更に、処理手段18にとって、この三個組のセンサの選択された測定軸に関して直交する方向において、同一の三個組の種々のセンサを隔てる距離は既知である。このように、各測定点に対して、処理手段は、センサにより測定された成分より、各方向における磁場の各成分の変化量を決定する。これらの異なる変化量に基づいて、Jx、Jy、Jzと示される種々の成分が、テストされている回路Cを流れる電流の三つの直交する方向X−X、Y−Y、Z−Zにおいて、下記の関係を使用して計算される。
Jx=dBz/dy−dBy/dz
Jy=dBx/dz−dBz/dx
Jz=dBy/dx−dBx/dy
【0100】
このタイプの装置では、回路を流れる電流が、各測定点に対して、精度よく決定できると思われる。測定点を乗算することで、テストされている回路の構成を再構築でき、その動的動作を精度よく分析できる。携帯装置710においては、類似の手段が使用される。
【0101】
図10は、図1の変形例を示す。本実施例においては、測定ヘッド24は、行と列の形態で、規則的に配設されたセンサのセットを備えるマトリックス1100により置き換えられている。このセンサのマトリックスにより、シリコンウェーハー1102により収容される集積回路のセットのテストが可能になり、回路は、横に並べて配設される。センサのマトリックスは、行と列に分布されたセンサのセットを備え、それぞれは、ウェーハー1102に属する、テストされる回路に対応している。
【0102】
センサのセットは図11に部分的に示されている。そのようなセンサのセットは、例えば、それ自身が行と列に配設された5000の磁気抵抗センサを備えている。これらのセンサのそれぞれは、特定の処理回路により分析装置に接続されている。センサのセットは、選択された測定軸が、お互いに関して直交する二つの方向においてお互いに平行に配設されているセンサを備えている。これらの直交する方向は、テストされる回路の全体の平面に平行な面において延伸している。回路の主平面に関して直交する電流成分は、一般的にほとんど関心の対象とならない。
【0103】
このマトリックスが、集積回路のウェーハーの磁場画像を迅速に取得するために使用される。あるサイズのマトリックスに対して、センサは、一つが方向Xで、他方が方向Yである二つの平面上に分布される。
【0104】
上記と同一な第2マトリックスを、90度回転して使用すると有益である。下方の平面、これまでのXはこのようにして平面Yになり、上方の平面は平面Xになる。これら二つのマトリックスを使用して、ある二つの高さZにおける磁場Xおよび磁場Yを測定するアセンブリが提供される。二つの高さの間で、差分による方法でこれらの測定値を組み合わせることで、マクスウェルの方程式に従う電流の式が得られる。
【0105】
図11の実施例において、センサマトリックスは、二つの重ね合わされた層1202と1204を備える。各層は、磁気抵抗センサの規則的なネットワークを備えている。第1層のセンサ1206は、その選択された測定軸が平行に配設され、センサは、お互いに関して直交する行と列に分布されている。同様に、第2層は、選択された測定軸がお互いに平行で、第1層のセンサの測定軸に関して直交しているセンサ1208を備える。
【0106】
二つの層の上において、センサは、その選択された測定軸に関して直交し、既知の所定ピッチのセンサを収容する層の平面において延伸する方向において、お互いから間隔をあけて分離されている。このように、問題の例においては、各センサの領域において、処理手段が下記の関係に基づいて、回路の主平面を流れる電流成分JxおよびJyを決定する。
Jx=−dBy/dz
Jy=−dBx/dz
【0107】
これらの値を得るために、マトリックスが、テストされる回路に関する方向Z−Zにおいて間隔をあけて分離した2つの場所に連続的に持ち込まれる。測定は、間隔dzで分離されているこれらの二つの場所において行われ、測定された値を減算することにより、量dByとdBxが計算される。
【0108】
図12は、本発明に係るプローブの他の実施例を示しており、このプローブは、図10のセンサマトリックス1100のセンサのセットを構成している。
【0109】
本実施例において、超伝導材料の同じ層1302上で、種々の磁気抵抗センサが画定される。各センサは、長方形の形状を有し、磁気抵抗素子は、図において長方形で示されているセンサの中心部のみにより形成されている。
【0110】
このプローブは、第1方向X−Xにおいて配設されている選択された測定軸を有するセンサの複数の行と、選択された測定軸が、軸Y−Yに沿って延伸するセンサの行を交互に配設することにより構成されている。より正確には、軸X−Xに平行な選択された測定軸を有する磁気抵抗センサ1304の五つの行が、軸X−Xに沿って順に配設されている。センサは、お互いの行どうしが磁気抵抗センサの長さ、つまり選択された測定軸に関して直交するような長さの5分の1に等しい距離だけオフセットされている。選択された測定軸が他の測定方向に向けられている、1306で示されるセンサの行は、同じ軸に沿って、厳密に揃えられた磁気抵抗センサの配列により構成されている。
【0111】
この構成は、磁気抵抗センサの長方形の特質を考慮している。長方形の中心に位置する能動場測定素子に関する長方形のサイズに従って、比率1/5は修正される。
【0112】
第1マトリックスの上の平面において平行となるように第2マトリックスを配設すると有益である。この第2マトリックスは、同様な方法で構成されるが、軸Y−Yに沿うセンサのセットは、軸X−Xに沿うセンサのセットと、軸Y−Yに沿うセンサの上方の軸X−Xに沿うセンサの上方に置かれる。このようにして、二つの平面の間の、軸X−Xに沿うセンサ間の差分の測定値が走査後に得られる。差分の測定は、ある所定の位置における下方の平面の軸X−Xに沿うセンサと、同じ位置における上方の平面の軸X−Xに沿うセンサの二つの測定の間の対において行われる。走査後は、すべての点において、二つの平面(二つの高さz)上の場BxとByの測定値により、全表面が覆われる。
【0113】
変形例において、磁気抵抗センサは、磁気誘導センサと置き換えられる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】集積回路を分析するための設備の斜視図を示す図である。
【図2】図1の設備の動作を説明するフローチャートを示す図である。
【図3】測定プローブの一例の概略斜視図を示す図である。
【図4】本発明に係る磁場を測定する装置の第1実施例の略図を示す図である。
【図5】測定装置の構成変形例の、図4と同様の略図を示す図である。
【図6】測定装置の構成変形例の、図4と同様の略図を示す図である。
【図7】双方向差動測定プローブを組み込んだ、磁場を測定する手動装置の概略斜視図を示す図である。
【図8】図7の装置の測定プローブの略図を示す図である。
【図9】流れる電流に対するすべての特性を、この電流の流れにより生成される磁場から決定することができる三次元差動センサの概略斜視図を示す図である。
【図10】集積回路のセット用のテスト設備を示す図である。
【図11】マトリックス測定プローブの第1実施例の略図を示す図である。
【図12】マトリックス測定プローブの第2実施例の略図を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の選択された測定軸に沿う磁場を感知する少なくとも一個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備えるタイプの磁場を測定するプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗センサ、より正確には、GMR(巨大磁気抵抗)タイプのセンサを使用して、操作中に、電子回路により生成される磁場を測定することが知られている。
【0003】
このタイプの磁気抵抗センサは、それが設置された磁場に従って抵抗が変化する電子素子である。処理チェーンが磁気抵抗センサに接続されて、回路上の磁場の大きさを決定することが可能になる。
【0004】
このタイプのセンサは効率的ではあるが、電子回路により生成される電磁放射に関連して少量の情報しか得られない。特に、回路を流れる電流の特性、特にその大きさ、電流が流れる経路、および電流の流れる方向は、決定することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分析対象の回路に関連して、付加的情報が得られるような、磁場を測定するプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明は、上記のタイプの磁場を測定するプローブに関し、そのプローブは、一つの場所においてお互いが固定して接続された少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサであって、それらの選択された測定軸の角度がずらされるような前記の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、かつそのプローブは、それらの選択された測定軸に沿う各センサにより測定された磁場を表わす信号を提供するために、各磁気抵抗または磁気誘導センサに固有な出力端子を備えることを特徴とする。
【0007】
具体的な実施例によれば、測定プローブは、一つまたは複数の下記の特徴を備える。
同じ半導体基板に形成され、お互いが直交するように配設された、選択された検出軸を有する少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備える。
選択された測定軸が二つ1組の対で直交する少なくとも三個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備える。
少なくとも二対の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、それぞれの同じ対のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向にお互いにずらされた選択された軸を有し、二つの分離した対のセンサの選択された測定軸の角度がずらされている。
三個のセンサを一つの組(三個組)として、三つの組として分布された少なくとも九個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、同じ三個組の三個のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向にお互いにオフセットされた選択された軸を有し、分離した三個組のセンサの選択された測定軸の角度がずらされている。
プローブのすべての磁気抵抗または磁気誘導センサは、二つの層に従って分布されている。
異なる層のセンサの選択された測定軸の角度がずらされている。
同じ層のセンサは、平行な選択された測定軸を有する。
プローブのすべての磁気抵抗または磁気誘導センサは、同じ層上に分布されている。
【0008】
本発明は更に、上記のように規定された少なくとも一つのプローブと、各磁気抵抗センサに固有な処理チェーンと、種々の処理チェーンからの信号を処理する手段を備える磁場を測定する装置に関する。
【0009】
本発明は、単に例としてのための下記の記述を読み、図を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示される設備は、操作中に集積回路を分析するためのものである。
【0011】
この設備は、実質的に、集積回路Cを支持するプレート12と、FCで示される所定周波数で集積回路を励振する回路14と、操作中に回路Cにより生成される磁場を分析するための装置16と、磁場を分析する装置16の出力において得られる結果を処理するための手段18とを備える。更に、設備は、操作中に集積回路を観察する手段20を備える。これらの手段は、それ自体既知であり、詳細は記述しない。
【0012】
回路Cが設置される支持12はミューメタル(登録商標)のプレートにより形成されるか、または回路から離れた、その下方において、磁場に対してバリアを形成するミューメタルを備える。回路Cはミューメタルのケースに閉じ込めると有益である。
【0013】
励振回路14は、例えば、所定周波数FCにおいて電力を回路に供給できる周波数生成器により形成される。この励振周波数FCは、例えば、160kHzである。
【0014】
分析手段16は、操作アーム22を備え、操作アームの自由端には、測定プローブ24であって、そのプローブの位置における磁場の特性を示す値を決定できる測定プローブ24が設けられている。
【0015】
操作アーム22は、お互いに関して直交する三方向の変位を可能にし、回路に関してのプローブの位置を正確に知ることができる、それ自体公知のプローブを変位する機構26に接続されている。
【0016】
更に、分析手段16は、プローブ24のセンサが接続されて、プローブからの信号を処理するための処理チェーン28を備える。これらの処理チェーンは、処理手段18に接続されて、手段に、プローブ24により測定される磁場の、一つまたは複数の処理された値を提供する。
【0017】
処理手段18は、例えば、処理チェーン28の出力において接続される入力カードを備える、PCタイプのコンピュータにより形成される。更に、分析手段16が、より正確には、変位手段26、処理チェーン28、および励振回路14の制御を可能にする制御カードを備える。
【0018】
処理手段18は、磁場の分析のための分析手段16、具体的には、励振回路14、変位手段26、および処理チェーン28の制御を可能にするソフトウェアモジュールを備える。また、前記の磁場の分析手段からの信号を処理するためのソフトウェアモジュールも更に備える。
【0019】
特に、処理手段18は、図2に示されるアルゴリズムを実行でき、アルゴリズムの各ステップに対して、ソフトウェアモジュールが提供される。
【0020】
操作中に電子回路を分析するために、回路のモデル化を最初に、回路の略図に基づいて、ステップ50の期間に行うことができる。このモデル化は、例えば、ベクトル型であるが、適切であれば、どんなソフトウェア手段を使用しても実行できる。このモデル化は、回路Cを構成する種々のトラックおよび種々の電子構成要素の場所を決定するように意図されている。
【0021】
このモデル化が完了すると、回路動作のシミュレーションがステップ52の期間に実行される。回路上の磁場の特性は、回路の各ポイントにおいて、このシミュレーションにより、特にマクスウェル(Maxwell)の方程式を適用することにより決定される。このように、回路の各素子に対して、そこを流れる電流、およびBx、By,およびBzで示される磁場の三個の成分が、回路の直上に位置する測定点で、および測定プローブ24により占められる、異なる所定の場所に対して決定される。
【0022】
モデル化およびシミュレーションステップと平行して、処理手段18は、シミュレーションの期間に、それぞれの適切な測定点において、磁場の分析手段16を使用して、磁場の有効測定を制御する。
【0023】
ステップ60の期間に、磁場の分析手段16は、最初、初期化され較正される。その正しい操作もまた検証される。更に、基準測定が、それが生成する磁場の成分が既知である較正用のテスト片について実行される。
【0024】
種々の測定点の取得は、ステップ62の期間に実行される。このステップは、操作中に磁場C上のいくつかの所定測定点において、磁場の少なくとも一つの成分の測定を実行することを含む。この目的のため、プローブが、回路の表面を、例えば、牛耕型の経路に従って走査するために、変位手段26の制御のもとに変位される。測定値をそれぞれ取得する前に、測定の結果が、プローブの変位により影響されないように測定プローブを測定点において停止させる。
【0025】
各測定値の実際の取得は下記に示される。
【0026】
ステップ62もまた、回路Cが操作中でないときに、周囲の磁場の成分を各測定点において測定するために、測定点の取得を提供するが、これは有益ではあるが、必ずしも必要ではない。
【0027】
ステップ64の期間に、各測定点に対して取得された信号は、特に測定の結果である誤差と不一致を訂正するために処理され、これらの誤差と不一致は、ステップ60の期間に基準テスト片から取得されたデータの表との比較に関連する技術により訂正される。
【0028】
ステップ64の期間に、一つまたは二つ以上の方向において、Bx、By、Bzと示される磁場の測定値からの値が計算され、特にdBx/dy、dBx/dz、dBy/dz、dBy/dx、dBz/dx、およびdBz/dyで示される三方向における磁場の成分の空間的な変化量が計算される。
【0029】
更に、測定点の下の回路における電流の大きさおよび方向の特性は、Jを電流ベクトルとし、Bを磁場ベクトルとしたときのマクスウェルの法則J=Rot B、を適用とすることにより決定される。
【0030】
ステップ66の期間に、信号処理ステップ64からの値と、ステップ52の期間に実行されたシミュレーションに従って得られた値が、回路の実際の動作が正しいか否かを推測し、理論上の回路と、実際の回路間の不一致の領域を操作中に決定するために比較される。
【0031】
測定ヘッド24は、図3に示すように、それぞれが一つまたは二つ以上の磁気抵抗センサを備える二つの集積回路により構成される測定プローブ100を備える。本発明によれば、測定プローブは、角度に関してオフセットされた選択された測定軸を有する少なくとも二つの磁気抵抗センサを備える。このセンサは、お互いに固定して接続され、それぞれの所定位置にて固定される。
【0032】
図3に示す実施例において、三つの磁気抵抗センサ102、104、および106は測定プローブに集積されている。
【0033】
製造を容易にするために、二つの磁気抵抗センサ102と104は、同じ集積回路108に配設されるが、磁気抵抗センサ106は、分離した集積回路110に配設される。
【0034】
各磁気抵抗センサは、抵抗が、それが設置された磁場に従って変化する構成部品である。このタイプのセンサは、図において概略的に矢印で示されている選択された測定軸を有している。この構成部品の抵抗は、このようにこの選択された測定軸に沿う磁場の成分により影響され、他の方向における磁場の成分にはそれほど反応しない。
【0035】
図3に示すように、磁気抵抗センサの選択された測定軸は、直交空間基準を規定するように対同士で直交する。
【0036】
軸のそのような配置は特に有益であるが、種々のセンサの選択された測定軸は、それぞれに関して直交せずに、それぞれに関して角度的にずらすだけのこともありうる。
【0037】
磁気抵抗センサは、GMR型(巨大磁気抵抗効果、Giant Maneto Resistive)、GMI型(巨大磁気インピーダンス)、CMR型(巨大磁気抵抗効果、Cellossol Magneto Resistive)、またはTMR型(トンネル磁気抵抗効果)であってよい。好ましくは、磁気抵抗センサはこの最後の型である。また、例えば、MTJ型(磁気トンネル接合)またはSDT型(スピン依存トンネル)であってよい。
【0038】
図4では、センサ102と104を備える集積回路108のみが示されている。更に、センサ104に対しては、同一の処理回路が使用されているので、センサ102と関連する処理回路28のみが示されている。
【0039】
図4に示すように、磁気抵抗センサ102は、所定値を有する三個の他の固定抵抗302、303、および304を備えるウェストン(Weston)ブリッジ301に集積されている。これらの四個の抵抗は、ウェストンブリッジの構造でそれ自体が知られているように、ループを形成するために直列に接続されている。ウェストンブリッジの対向する二つの端子は、プローブ100の測定出力112Aおよび112Bを形成する。ウェストンブリッジの他の二つの端子114Aおよび114Bは、ウェストンブリッジへの電力供給入力を形成する。これらは、所定の周波数、例えば、160kHzに等しい周波数の正弦波信号を生成する生成器116の端子に接続されている。
【0040】
更に、それ自体が知られているように、測定プローブ100は、交流電圧の外部電源120に接続されている巻線118を備える。巻線118は、磁気抵抗センサの領域において、センサのヒステリシスを減らすために、磁気抵抗センサの領域において分極場を形成するのに適している。
【0041】
同様に、磁気抵抗センサ104もまた、三個の抵抗306、307、および308を備えるウェストンブリッジ305に集積され、第2巻線309は、ヒステリシスを減らすために、磁気抵抗センサ14の領域において分極場を形成するために設けられる。上記のように、ウェストンブリッジおよび巻線は、簡略化のために図示していないが、特定の電力供給手段に接続されている。
【0042】
センサ104に接続される回路は同一なため、磁気抵抗センサ102からの信号を処理する回路のみが下記で記述される。
【0043】
測定プローブの出力112Aおよび112Bは、処理チェーン28に接続される。
【0044】
これらは、出力端子112Aおよび112Bがそれぞれその入力に接続される、二つの高域通過フィルタ124Aおよび124Bにより減算器を形成する、差動増幅段122に、入力において接続される。
【0045】
差動増幅段122は、例えば、100に等しい利得を生成するように構成される。
【0046】
高域通過フィルタは、コンデンサ126を備えるRC型の受動フィルタであり、その一つの端子は、抵抗128により接地されている。
【0047】
差動増幅段は、適切であれば、どんな公知のタイプであってよく、例えば、そのフィードバックループに抵抗132が設けられている演算増幅器130を備えており、演算増幅器の反転および非反転入力は、二個の入力抵抗134によりフィルタ124Aおよび124Bの出力に接続されている。演算増幅器の非反転端子は、入力電圧を固定する抵抗136により接地されている。
【0048】
差動増幅器122の出力は、測定プローブからの磁場を表わす信号の所定の周波数成分を分離するための手段138の入力に接続される。決定される磁場の成分の周波数は、FIで示される。この周波数は、例えば、160kHzに等しい。
【0049】
図5に示す実施例において、これらの分離手段138は、分離される周波数成分の周波数FIを中心とする帯域通過型の能動選択フィルタを備える。この周波数は、回路Cの励振周波数と等しい。
【0050】
このフィルタは、非反転端子が接地されている演算増幅器140を備える。フィルタの反転端子は、入力抵抗142により、差動増幅段122の出力に接続されている。差動増幅器140のフィードバックループは、それ自身がコイル148に直列に接続されている抵抗146に並列に接続されたコンデンサ144を備える。
【0051】
出力において、選択フィルタ138は、二つの受動低域通過フィルタ152および154が続く、BAT型のダイオード150を有し、二つのフィルタはそれぞれ、出力端子がコンデンサ158により接地された抵抗により形成されている。
【0052】
処理チェーン28により、磁気抵抗センサにより検出された磁場の周波数成分が、非常に簡単な回路により得られるようになる。
【0053】
磁場を測定する装置の操作中、磁気抵抗センサ102の抵抗値は、センサの選択された測定軸に沿う磁場の大きさに従って変化する。出力端子112Aおよび112Bにおいて測定された信号の振幅は、このように磁場に従って変化する。
【0054】
この二つの高域通過フィルタ124Aおよび124Bが、外部環境の結果である妨害周波数のフィルタ処理をもたらす。
【0055】
差動増幅回路122は、大きさが、二つの端子112Aおよび112Bの間の電位差に比例する信号を、出力において生成する。回路Cの励振周波数に中心がある選択フィルタ138は、この周波数に対する磁場の周波数成分の分離をもたらす。
【0056】
二つの低域通過フィルタ152および154は、妨害成分の抑制を可能にする新しいフィルタ処理動作をもたらす。
【0057】
出力段160を、無負荷センサの端子において測定された、連続電圧値を出力するように有益に追加することができる。このため、差動増幅器が再び使用される。前述の出力信号は、差動増幅器の反転入力に加えられ、一方、連続基準電圧は、非反転入力に加えられる。
【0058】
基準電圧の制御は、この第2差動増幅器の出力においてゼロの値を測定するように調整可能な抵抗の値を調整することにより行われる。測定は、回路Cを分極化することなく、センサを磁気的に(ヒステリシスサイクルにおいてずらすために)分極化することにより行われる。
【0059】
処理チェーンからの信号は、処理手段18により受信される。
【0060】
このように、処理チェーンが、磁場の測定値および、より正確には、磁場の成分を非常に迅速に得ることを可能にしていることは理解されよう。
【0061】
図5および図6は、本発明に係る測定装置の構成変形例である。これらの実施例において、図4と同一の、または類似の構成要素は、同じ参照番号で示してある。
【0062】
これらの二つの構成変形例において、処理チェーンのみが、差動増幅段122の下流で使用される手段のため、異なっている。
【0063】
二つの場合において、所定周波数に対する磁場の周波数成分を分離する手段は、差動増幅段122からの信号と基準信号の合成を可能にし、その周波数FCが、励振回路14により加えられた回路作動周波数f以上である乗算回路180を備える。乗算器の使用により、周波数(160kHz)の選択に柔軟性が出てくる。
【0064】
図4の実施例において、分離手段はアナログ乗算回路180を備え、その一つの入力は、差動増幅段122の出力において接続され、他の入力は、基準周波数Fが、分離される周波数成分の所定周波数FIを超える、正弦波電圧生成器182に接続される。
【0065】
抵抗186およびコンデンサ188により構成される低域通過フィルタ184は、乗算回路の出力において設けられる。有益なことであるが、減算回路190が、出力回路において得られるフィルタ処理された信号と、Vrefで示される、加えられた基準信号との比較のために、低域通過フィルタ184の出力において設けられる。減算回路は、フィードバックループに適切な抵抗194を有し、電圧Vrefがその非反転端子に加えられる、演算増幅器192を備える。
【0066】
図4の実施例と同様に、出力段160は、減算回路の出力において配設される。
【0067】
特定の実施例によれば、電圧源182は、ウェストンブリッジ201に供給する電圧源116により形成される。
【0068】
本実施例においては、センサの電力供給周波数は、求める周波数成分の周波数と同一である。
【0069】
図6の実施例において、所定の周波数成分を分離する手段は、差動増幅段122の出力において得られる信号と、基準信号の乗算をもたらすデジタルプロセッサにより形成される。
【0070】
図6に示されるように、抵抗202とコンデンサ204から構成される低域通過フィルタ200が、差動増幅段の出力において設けられる。アナログ/デジタル変換器206は、信号をデジタル化することを確実にするために、フィルタ200の出力において接続される。
【0071】
更に、処理チェーンは上記のように、これもまた182と示される正弦波基準電圧源を含む。アナログ/デジタル変換器208は、この電圧源182の出力において接続される。アナログ/デジタル変換器は、受信した信号の周波数よりも遥かに高いサンプリング周波数を有する。これは、例えば、500kHzを超える。
【0072】
DSP型の回路のような高速プロセッサ210が、処理チェーンに設けられる。それは、二つのアナログ変換器206と208からの信号を、入力において受信し、二つの信号の乗算をもたらすようにプログラムされる。
【0073】
乗算された信号は、このように、212と示されるRS232タイプの接続のようなデジタル接続か、またはアナログ接続のどちらかを介して処理手段18に送られ、ここにおいて、デジタル/アナログ変換器214が、プロセッサ210の出力において接続されている。
【0074】
この場合、この二つの信号の乗算はプロセッサ210により実行される。図3および図4の出力段160により実行される減算動作もまた、プロセッサ210によりもたらされる。
【0075】
本発明に係る測定プローブを使用して、プローブの各測定位置に対して、Bx、By、およびBzで示され、磁場の直交する3方向に対応する、磁場の三成分が格納され、磁場のこれらの三成分はそれぞれ、特定の処理チェーンに関連する磁気抵抗センサ102、104、および106により決定される。
【0076】
磁場の三成分は、各測定点に対して決定され、測定点は、分析されるべき回路の全表面に沿って広がっている。これらの点は、例えば、回路の表面をカバーする正規マトリックス上に分布している。回路の表面に関して同一の場所に対しては、分析されるべき回路の表面に関して異なる距離において、二つの測定点で実行される。
【0077】
隣接する複数の点に対して決定された磁場の三成分に基づいて、計算手段18は、各成分に対して、一つの方向に対する磁場の導関数を、特に、これら二点間の磁場の成分値間の差を決定し、この差をこの二点を分離する距離で除算することにより決定する。
【0078】
これらの値に基づいて、処理手段18は、各測定点に対して計算が可能で、回路を流れる電流の特性である三成分を計算する。磁場のこれらの成分は、下記の式により決定される。
Jx=dBz/dy−dBy/dz
Jy=dBx/dz−dBz/dx
Jz=dBy/dx−dBx/dy
ここにおいて、Jx、Jy、Jzはセンサ102、104、および106の三つの選択された測定軸に沿う電流の三成分である。
【0079】
図7は、回路において、単一方向に流れている電流を測定するための携帯装置710である。
【0080】
装置710は、ペンに形状および寸法がおおよそ対応している軸Z−Zを有する細長い道具の形状をしている。従って、この装置は操作中に、その軸Z−Zを回路に関して垂直にして、回路上を手動で動かすのに適している。
【0081】
本装置は、その一端に、軸Z−Zに関して直交する二つの平行面に配設されている複数の磁気抵抗センサを備えるプローブ712を備えている。
【0082】
プローブ712は、図8においてより拡大して示されている。プローブ712は、センサの二つの対として分布された四個の磁気抵抗センサ802、804、806、808を備え、同一対のセンサは、お互い平行な選択された測定軸を有している。二個のセンサ対の選択された測定軸は、お互いに関して直交しており、このようにして、装置の軸Z−Zに関して両者とも直交する二つの主要空間的方向に延伸している。
【0083】
同一対のセンサは、その共通の選択された測定軸に関して横方向において、それぞれに関してオフセットされている。より正確には、同一対のセンサは、装置の軸Z−Zの沿ってオフセットされている。
【0084】
本実施例において、二個のセンサ802と806は、第1集積回路上に配設され、他の二個のセンサ804と808は、第1集積回路と平行に配設された他の集積回路上に配設されている。このように、センサ802、806、804、808は、二つの平行面に沿って分布されている。
【0085】
センサ802と804は、軸Z−Zに沿ってオフセットされており、一方、その選択された測定軸は、軸Y−Yに沿って延伸している。同様に、センサ806と808は軸Z−Zに沿ってオフセットされているが、その選択された測定軸は、軸Y−YおよびZ−Zに直交する軸X−Xに沿って延伸している。
【0086】
装置710は、四個のセンサを供給する手段718を備える。
【0087】
同様に、プローブ712は、各センサに特有で、本センサにより測定された磁場を表わす信号の受信を可能にする出力端子を備える。
【0088】
各センサは、特定の処理チェーン720と722に接続され、それによりセンサからの信号が処理される。これらの処理チェーンは、図4、5、6で記載された処理チェーンの一つと同一である。それらのチェーンは、処理チェーン720と722の出力において得られる磁場の成分を表わす信号の処理が可能な、データ処理部724に接続されている。装置は更に、データ処理部724により制御される表示画面726を備える。
【0089】
画面726は、装置710が回路の平面に関して直交してその上に設置されている回路において流れる電流の二つの成分JxとJyの値を表示することができる。
【0090】
JxとJyは、プローブに特有で、センサの選択された測定軸に対応する、方向X−XおよびY−Yにおける電流の成分の値である。
【0091】
このため、データ処理部724は、二つのセンサ806と808を介して延伸する縦方向Z−Zに関して、装置の軸X−Xに沿う磁場Bの成分の、dBx/dzで示される導関数の値を決定する。
【0092】
センサ806と808に接続された処理チェーンの出力において、方向X−Xにおける磁場Bの成分の二つの値が提供され、Bx1およびBx2と示される。これらの二つの測定値と、軸Z−Zに沿って測定された、センサ806と808を隔てる既知の距離に基づいて、データ処理部724は、Z2およびZ1を、軸Z−Zに沿うセンサ14と12の位置としたときの、dBx/dz=Bx2−Bx1/z1−z2の関係に基づいて、方向Z−Zに関する方向X−Xにおける磁場成分の導関数dBx/dzの評価を決定する。
【0093】
二つの方向X−XおよびZ−Zに関して直交する、方向Y−Yにおける回路を流れる電流の成分Jyの値はdBx/dzに等しい。
【0094】
同様に、電流の値Jxは、センサ802と804により提供される二つの磁場の値By1とBy2の差および、それらを隔てる既知の距離から、下記の関係に基づいて得られる。
Jx=−dBy/dz=By1−By2/z2−z1
【0095】
方向X−XとY−Yにおける二個のセンサの二つの平面を使用することで、装置の軸Z−Zに関して直交する平面において電流が求まる。dBx/dzとdBy/dzという対におけるセンサ間の差分場測定により、マクスウェルの方程式による電流のベクトル表現であるJxおよびJyを導出することが可能になる。これは電流が、装置の軸に関して直交する平面のみを流れるときは、dBz/dyとdBz/dxはゼロになるからである。
【0096】
図1の設備、または図7の装置の特別な実施例によれば、測定ヘッド24または712は、例えば、図9に示すようにプローブ1000により構成される。このプローブは、対として三つの直交する方向の磁場の差分測定を実行するのに適している。
【0097】
このタイプのプローブは、九個のセンサを備える。これら九個のセンサは、三個のセンサを一つの組(三個組)とする三つの組として分布され、同一の三個組のセンサは、お互いが平行に配設された選択された測定軸を有している。これらのセンサは、三個組を特徴付ける選択された測定軸に関して直交する二つの方向において、お互いが更にずらされている。
【0098】
より正確にいえば、図9に示す例において、三つのセンサ1002A、1002B、1002Cは、軸X−Xに平行に配設された、選択された測定軸を有している。これらのセンサ1002Aと1002Bは、軸X−Xに沿ってお互いに関してずらされており、一方、センサ1002Aと1002Bは、軸X−Xに沿ってずらされている。同様に、センサ1004A,1004B,1004Cは、軸Y−Yに平行な、選択された測定軸を有し、センサ1004Cは、軸X−Xに沿って、センサ1004Aからずらされ、一方、センサ1004Bは、軸Z−Zに沿ってセンサ1004Aからずらされている。最後に、三個のセンサ1006A、1006B、1006Cは、軸X−Xに平行に延伸する測定軸を有し、センサ1006Aと1006Bは、軸Z−Zと、軸Y−Yに沿ってそれぞれ、センサ1006Aに関してずらされている。
【0099】
図1を参照して記述した設備において、各センサは特定の処理チェーンに接続され、九個の磁場の値が、処理手段18に供給される。更に、処理手段18にとって、この三個組のセンサの選択された測定軸に関して直交する方向において、同一の三個組の種々のセンサを隔てる距離は既知である。このように、各測定点に対して、処理手段は、センサにより測定された成分より、各方向における磁場の各成分の変化量を決定する。これらの異なる変化量に基づいて、Jx、Jy、Jzと示される種々の成分が、テストされている回路Cを流れる電流の三つの直交する方向X−X、Y−Y、Z−Zにおいて、下記の関係を使用して計算される。
Jx=dBz/dy−dBy/dz
Jy=dBx/dz−dBz/dx
Jz=dBy/dx−dBx/dy
【0100】
このタイプの装置では、回路を流れる電流が、各測定点に対して、精度よく決定できると思われる。測定点を乗算することで、テストされている回路の構成を再構築でき、その動的動作を精度よく分析できる。携帯装置710においては、類似の手段が使用される。
【0101】
図10は、図1の変形例を示す。本実施例においては、測定ヘッド24は、行と列の形態で、規則的に配設されたセンサのセットを備えるマトリックス1100により置き換えられている。このセンサのマトリックスにより、シリコンウェーハー1102により収容される集積回路のセットのテストが可能になり、回路は、横に並べて配設される。センサのマトリックスは、行と列に分布されたセンサのセットを備え、それぞれは、ウェーハー1102に属する、テストされる回路に対応している。
【0102】
センサのセットは図11に部分的に示されている。そのようなセンサのセットは、例えば、それ自身が行と列に配設された5000の磁気抵抗センサを備えている。これらのセンサのそれぞれは、特定の処理回路により分析装置に接続されている。センサのセットは、選択された測定軸が、お互いに関して直交する二つの方向においてお互いに平行に配設されているセンサを備えている。これらの直交する方向は、テストされる回路の全体の平面に平行な面において延伸している。回路の主平面に関して直交する電流成分は、一般的にほとんど関心の対象とならない。
【0103】
このマトリックスが、集積回路のウェーハーの磁場画像を迅速に取得するために使用される。あるサイズのマトリックスに対して、センサは、一つが方向Xで、他方が方向Yである二つの平面上に分布される。
【0104】
上記と同一な第2マトリックスを、90度回転して使用すると有益である。下方の平面、これまでのXはこのようにして平面Yになり、上方の平面は平面Xになる。これら二つのマトリックスを使用して、ある二つの高さZにおける磁場Xおよび磁場Yを測定するアセンブリが提供される。二つの高さの間で、差分による方法でこれらの測定値を組み合わせることで、マクスウェルの方程式に従う電流の式が得られる。
【0105】
図11の実施例において、センサマトリックスは、二つの重ね合わされた層1202と1204を備える。各層は、磁気抵抗センサの規則的なネットワークを備えている。第1層のセンサ1206は、その選択された測定軸が平行に配設され、センサは、お互いに関して直交する行と列に分布されている。同様に、第2層は、選択された測定軸がお互いに平行で、第1層のセンサの測定軸に関して直交しているセンサ1208を備える。
【0106】
二つの層の上において、センサは、その選択された測定軸に関して直交し、既知の所定ピッチのセンサを収容する層の平面において延伸する方向において、お互いから間隔をあけて分離されている。このように、問題の例においては、各センサの領域において、処理手段が下記の関係に基づいて、回路の主平面を流れる電流成分JxおよびJyを決定する。
Jx=−dBy/dz
Jy=−dBx/dz
【0107】
これらの値を得るために、マトリックスが、テストされる回路に関する方向Z−Zにおいて間隔をあけて分離した2つの場所に連続的に持ち込まれる。測定は、間隔dzで分離されているこれらの二つの場所において行われ、測定された値を減算することにより、量dByとdBxが計算される。
【0108】
図12は、本発明に係るプローブの他の実施例を示しており、このプローブは、図10のセンサマトリックス1100のセンサのセットを構成している。
【0109】
本実施例において、超伝導材料の同じ層1302上で、種々の磁気抵抗センサが画定される。各センサは、長方形の形状を有し、磁気抵抗素子は、図において長方形で示されているセンサの中心部のみにより形成されている。
【0110】
このプローブは、第1方向X−Xにおいて配設されている選択された測定軸を有するセンサの複数の行と、選択された測定軸が、軸Y−Yに沿って延伸するセンサの行を交互に配設することにより構成されている。より正確には、軸X−Xに平行な選択された測定軸を有する磁気抵抗センサ1304の五つの行が、軸X−Xに沿って順に配設されている。センサは、お互いの行どうしが磁気抵抗センサの長さ、つまり選択された測定軸に関して直交するような長さの5分の1に等しい距離だけオフセットされている。選択された測定軸が他の測定方向に向けられている、1306で示されるセンサの行は、同じ軸に沿って、厳密に揃えられた磁気抵抗センサの配列により構成されている。
【0111】
この構成は、磁気抵抗センサの長方形の特質を考慮している。長方形の中心に位置する能動場測定素子に関する長方形のサイズに従って、比率1/5は修正される。
【0112】
第1マトリックスの上の平面において平行となるように第2マトリックスを配設すると有益である。この第2マトリックスは、同様な方法で構成されるが、軸Y−Yに沿うセンサのセットは、軸X−Xに沿うセンサのセットと、軸Y−Yに沿うセンサの上方の軸X−Xに沿うセンサの上方に置かれる。このようにして、二つの平面の間の、軸X−Xに沿うセンサ間の差分の測定値が走査後に得られる。差分の測定は、ある所定の位置における下方の平面の軸X−Xに沿うセンサと、同じ位置における上方の平面の軸X−Xに沿うセンサの二つの測定の間の対において行われる。走査後は、すべての点において、二つの平面(二つの高さz)上の場BxとByの測定値により、全表面が覆われる。
【0113】
変形例において、磁気抵抗センサは、磁気誘導センサと置き換えられる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】集積回路を分析するための設備の斜視図を示す図である。
【図2】図1の設備の動作を説明するフローチャートを示す図である。
【図3】測定プローブの一例の概略斜視図を示す図である。
【図4】本発明に係る磁場を測定する装置の第1実施例の略図を示す図である。
【図5】測定装置の構成変形例の、図4と同様の略図を示す図である。
【図6】測定装置の構成変形例の、図4と同様の略図を示す図である。
【図7】双方向差動測定プローブを組み込んだ、磁場を測定する手動装置の概略斜視図を示す図である。
【図8】図7の装置の測定プローブの略図を示す図である。
【図9】流れる電流に対するすべての特性を、この電流の流れにより生成される磁場から決定することができる三次元差動センサの概略斜視図を示す図である。
【図10】集積回路のセット用のテスト設備を示す図である。
【図11】マトリックス測定プローブの第1実施例の略図を示す図である。
【図12】マトリックス測定プローブの第2実施例の略図を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の選択された測定軸に沿う磁場を感知する少なくとも一個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104、106)を備える、磁場を測定するプローブにおいて、該プローブは、一つの場所においてお互いが固定して接続された少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104、106)であって、それらの選択された測定軸の角度がずらされるような前記の磁気抵抗または磁気誘導サンサを備え、かつ前記プローブは、前記の選択された測定軸に沿う各センサにより測定された磁場を表わす信号を提供するために、各磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104、106)に固有な出力端子を備えることを特徴とする測定プローブ。
【請求項2】
同じ半導体基板に形成され、お互いが直交するように配設された、選択された検出軸を有する少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104)を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項3】
選択された測定軸が対同士で直交する少なくとも三個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104、106)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の測定プローブ。
【請求項4】
少なくとも二対の磁気抵抗または磁気誘導センサ(802,804、806、808)を備え、それぞれの同じ対の前記センサは、平行かつ、それらの選択された測定軸に関して横方向にお互いにずらされた選択された軸を有し、二つの分離した対の前記センサの前記選択された測定軸の角度がずらされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項5】
三個のセンサを一つの組(三個組)として、三つの組として分布された少なくとも九個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(1002A、1002B、1002C、1004A、1004B、1004C、1006A、1006B、1006C)を備え、同じ三個組の三個のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向にお互いにずらされた選択された軸を有し、分離した三個組の前記センサの前記選択された測定軸の角度がずらされていることを特徴とする請求項4に記載の測定プローブ。
【請求項6】
前記プローブのすべての前記磁気抵抗または磁気誘導センサ(1206、1208)は、二つの層(1202、1204)に従って分布されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項7】
異なる層(1202、1204)の前記センサの前記選択された測定軸の角度がずらされていることを特徴とする請求項6に記載の測定プローブ。
【請求項8】
同じ層(1202、1204)の前記センサは、平行な選択された測定軸を有することを特徴とする請求項6または7に記載の測定プローブ。
【請求項9】
前記プローブのすべての前記磁気抵抗または磁気誘導センサ(1304、1308)は、同じ層(1302)上に分布されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも一つのプローブ(100)と、各磁気抵抗センサに固有な処理チェーン(28)と、前記種々の処理チェーンからの信号を処理する手段(18)と、を備える磁場を測定する装置。
【請求項1】
所定の選択された測定軸に沿う磁場を感知する少なくとも一個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104、106)を備える、磁場を測定するプローブにおいて、該プローブは、一つの場所においてお互いが固定して接続された少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104、106)であって、それらの選択された測定軸の角度がずらされるような前記の磁気抵抗または磁気誘導サンサを備え、かつ前記プローブは、前記の選択された測定軸に沿う各センサにより測定された磁場を表わす信号を提供するために、各磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104、106)に固有な出力端子を備えることを特徴とする測定プローブ。
【請求項2】
同じ半導体基板に形成され、お互いが直交するように配設された、選択された検出軸を有する少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104)を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項3】
選択された測定軸が対同士で直交する少なくとも三個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(102,104、106)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の測定プローブ。
【請求項4】
少なくとも二対の磁気抵抗または磁気誘導センサ(802,804、806、808)を備え、それぞれの同じ対の前記センサは、平行かつ、それらの選択された測定軸に関して横方向にお互いにずらされた選択された軸を有し、二つの分離した対の前記センサの前記選択された測定軸の角度がずらされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項5】
三個のセンサを一つの組(三個組)として、三つの組として分布された少なくとも九個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(1002A、1002B、1002C、1004A、1004B、1004C、1006A、1006B、1006C)を備え、同じ三個組の三個のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向にお互いにずらされた選択された軸を有し、分離した三個組の前記センサの前記選択された測定軸の角度がずらされていることを特徴とする請求項4に記載の測定プローブ。
【請求項6】
前記プローブのすべての前記磁気抵抗または磁気誘導センサ(1206、1208)は、二つの層(1202、1204)に従って分布されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項7】
異なる層(1202、1204)の前記センサの前記選択された測定軸の角度がずらされていることを特徴とする請求項6に記載の測定プローブ。
【請求項8】
同じ層(1202、1204)の前記センサは、平行な選択された測定軸を有することを特徴とする請求項6または7に記載の測定プローブ。
【請求項9】
前記プローブのすべての前記磁気抵抗または磁気誘導センサ(1304、1308)は、同じ層(1302)上に分布されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも一つのプローブ(100)と、各磁気抵抗センサに固有な処理チェーン(28)と、前記種々の処理チェーンからの信号を処理する手段(18)と、を備える磁場を測定する装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−508533(P2007−508533A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530428(P2006−530428)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002560
【国際公開番号】WO2005/036193
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(505152457)サントル ナシオナル デチュード スパシアル (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002560
【国際公開番号】WO2005/036193
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(505152457)サントル ナシオナル デチュード スパシアル (12)
【Fターム(参考)】
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