説明

磁気シールド及びその製造方法、薄膜磁気ヘッド

【課題】磁気ディスク装置のデ−タ転送速度の高速化と高記録密度化に伴い、記録周波数の高周波数化が進み、ライト後ノイズが増加する。
【解決手段】上部磁気シールド26に、浴温30±1゜C、pH 2.0+0.5/−1.0、浴組成が、金属イオン濃度Ni2+5〜25(g/l),Fe2+5〜15(g/l)、サッカリンナトリウム1.5±1.0(g/l)、塩化ナトリウム25±5(g/l)、ほう酸25±5(g/l)のめっき浴を用いて、結晶構造が面心立方相(fcc)と体心立方相(bcc)の磁性めっき薄膜を交互に積層した多層磁性膜を用いる。上下の磁性薄膜の結晶構造が異なるので、膜ごとにエピタキシャル成長が断ち切られ、結晶粒径を小さく制御することができる。結晶粒径が小さくなることによりライト後リードノイズを低減することができ、高記録周波数帯域でも使用可能な再生ヘッド20を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド、磁気シールドを用いた薄膜磁気ヘッドに係り、特に磁気シールドの構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置に代表される磁気記録再生装置は、デ−タ転送速度の高速化と高記録密度化が要求されている。データ転送速度の高速化に伴い、記録周波数の高周波数化が進み、高周波数化により、ライト後ノイズが増加する傾向がある。ここで、ライト後ノイズとは、磁気ディスクにデータを記録した後、再生を行う時にその再生出力にノイズが生じる現象である。従来、薄膜磁気ヘッドにおけるライト後ノイズ対策として、再生ヘッドの磁気センサ膜の上下に配置する磁気シールドに対し、上部磁気シールドの膜厚と磁気特性である磁歪定数λを制御する方法が知られている。特許文献1には、上部磁気シールドの膜厚方向の組成及び磁歪定数λを制御することにより、ライト後ノイズを低減する薄膜磁気ヘッドが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−291211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ディスク装置の更なるデータ転送速度の高速化と高記録密度化を進めるには、データ転送速度の高速化及び高記録密度化により生じる、再生ヘッドのライト後ノイズを低減することが必須である。しかし、磁気シールドとして使用されているパーマロイ(Ni80Fe20)の結晶粒径は50nm以上と大きく、この結晶粒に存在する磁区の構造の乱れが再生ヘッドのノイズを引き起こしている。特に再生トラック幅が100nm近傍と小さくなるに従い、結晶粒径起因のノイズの影響は大きくなると考えられ、磁気シールド膜の結晶粒径の制御が必要である。
【0005】
本発明の目的は、かかる課題に鑑みて、結晶粒径が小さく制御された磁気シールドを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、ライト後ノイズが少ない薄膜磁気ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の磁気シールドは、結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜と、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜とが交互に積層された多層磁性膜を含むものである。
前記結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚が、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚よりも大きいことが望ましい。
前記結晶構造が面心立方相及び体心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚は、0.5〜20nmであることが望ましい。
前記多層磁性膜全体の組成は、70≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦30wt%であることが望ましい。
前記結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜の組成は75≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦25wt%であり、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜の組成は15≦Ni≦25wt%、75≦Fe≦85wt%であることが望ましい。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の磁気シールドの製造方法は、
組成が75≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦25wt%である磁性薄膜をめっきにより形成する第1のステップと、
組成が15≦Ni≦25wt%、75≦Fe≦85wt%である磁性薄膜をめっきにより形成する第2のステップと、を含み、
前記第1のステップと第2のステップを交互に実行することにより、多層磁性膜を含む磁気シールドを形成するものである。
前記第1のステップ及び第2のステップを実行するめっき浴は、浴温が30±1゜C、pHが2.0+0.5/-1.0であり、浴組成は金属イオン濃度がNi2+5〜25(g/l)、Fe2+5〜15(g/l)、サッカリンナトリウムが1.5±1.0(g/l)、塩化ナトリウムが25±5(g/l)、ほう酸が25±5(g/l)であることが望ましい。
【0009】
上記他の目的を達成するための本発明の薄膜磁気ヘッドは、下部磁気シールドと、再生素子と、上部磁気シールドとを有し、前記上部磁気シールド及び下部磁気シールドのいずれか一方または両方は、結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜と、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜とが交互に積層された多層磁性膜を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、結晶粒径が小さい磁気シールドを得ることができる。また、ライト後ノイズが少ない薄膜磁気ヘッドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本発明の実施例による磁気シールドの構成及び製造方法、薄膜磁気ヘッドである薄膜磁気再生ヘッド、面内記録型磁気ヘッド及び垂直記録型磁気ヘッドの構成について説明する。まず、図7を参照して薄膜磁気再生ヘッド20と薄膜磁気記録ヘッド30とを有する面内記録型磁気ヘッド10の構成を説明する。図7は、ヘッド素子部をヘッド奥行き方向に沿って切断した断面図である。薄膜磁気再生ヘッド(以下、再生ヘッドと略す)20は図示しない基板の上に形成された下部磁気シールド22と、上部磁気シールド26と、下部磁気シールド22と上部磁気シールド26の間に下部ギャップ膜23及び上部ギャップ膜25を介して形成された再生素子24とを有する。再生素子24にはMR(Magnetoresistive)センサ、GMR(Giant Magnetoresistive)センサ、TMR(Tunneling Magnetoresistive)センサ等を用いることができる。薄膜磁気記録ヘッド(以下、記録ヘッドと略す)30は再生ヘッド20の上部に絶縁体の分離膜28を介して形成された誘導型磁気ヘッドであり、下部磁気コア31と、下部磁極32と、下部コイル33と、磁気ギャップ膜34と、上部磁極35と、上部コイル36と、上部磁気コア37とを有する。
【0012】
上記面内記録型磁気ヘッド10の再生ヘッド20に用いられている磁気シールド、特に上部磁気シールド26は、結晶粒径に起因するノイズを低減するために、結晶粒径を小さく制御する必要がある。以下に示す実施例では、上部磁気シールド26を、結晶構造が異なる磁性めっき薄膜を交互に積層して構成するものであり、各層において下の膜からのエピタキシャル成長を断ち切り、結晶粒径を小さく制御するものである。
【0013】
磁気シールドを製膜するための条件及び方法について説明する。5インチ径のセラミック基板、ガラス基板またはSi基板を用意し、基板表面にめっき導通下地膜としてスパッタリングにより積層膜(Au/Cr=20/5nm)を形成し、続いて図2に示す組成のめっき浴を用いて、めっきを行う。図2に示すめっき浴は、浴温30±1゜C、pH 2.0+0.5/-1.0、浴組成は金属イオン濃度がNi2+5〜25(g/l)、Fe2+5〜15(g/l)、サッカリンナトリウム1.5±1.0(g/l)、塩化ナトリウム25±5(g/l)、ほう酸25±5(g/l)であり、貯槽でのめっき浴容量250(l)(N2攪拌パ−ジ有り)を使用した。ここで、めっき浴中におけるFeイオン濃度とNiイオン濃度は、その比がNiイオン/Feイオン≧1.5であることが望ましい。結晶粒成長を抑制するためにはpH 2.5以下とする必要があり、また、pH 1以下では水素発生が主反応となり、めっき析出効率が著しく低下してしまう。
【0014】
めっき電源は定電流電源を使用し、パソコンを用いて時間と電流値を14段階まで設定可能にした。時間設定はDC電流の場合は1sec単位で、パルス電流の場合は1msec単位で設定可能であり、電流設定は1mA単位で設定可能である。めっき中の印加磁場は1kOe(80kA/m)である。膜厚・膜組成測定は蛍光X線分析装置を使用し、磁気特性Hc,Hk,Bs測定は薄膜用B-Hトレ−サを使用した。
【0015】
図2に示しためっき浴を用い、めっき電流値を変化させたときの、膜中のFe濃度の変化を図4に示す。めっき電流値が小さいとき、膜中にはNiが多く含まれるのに対し、電流値を大きくしていくとほぼ直線的に膜中に含まれるFeの量が増加していくことがわかる。図2に示しためっき浴からは、電流値を変化させることにより、5≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦95wt%となる磁性めっき膜の作製が可能である。一方、図2に示しためっき浴の濃度範囲外のめっき浴では、めっき電流値を変化させても図4に示すような広い範囲で磁性めっき膜の組成を変化させることはできない。
【0016】
上記の条件で作成した磁性膜のX線回折パターンを図5に示す。これからわかるように、膜中のNi濃度が高い場合(Ni>70wt%)、膜の結晶構造は面心立方相(fcc)からなり、Fe濃度が高い場合(Fe>70wt%)には体心立方相(bcc)からなることがわかる。また、これらの中間の濃度では、fccとbccが混在した膜となっている。
【0017】
第1の実施例による磁気シールドは、図2に示すめっき浴を使用し、図3に示す電流レシピにて、めっき開始から終了まで同一のめっき槽でめっきを行って形成した多層磁性膜である。なお、図3において、time 1’30”は、1分30秒を表している。ここで、step1,3,5,7では、膜組成がNi88Fe12wt%になる磁性めっき薄膜を15nm、また、step2,4,6,8では膜組成がNi22Fe78wt%になる磁性めっき薄膜を1.8nm作製し、step1〜step8を30回繰り返すことにより、膜厚504nm、膜全体の組成はNi80.93Fe19.07wt%である多層磁性膜を作製した。この多層磁性膜は、磁気シールドとしての磁歪を適性にするために、Niが比較的多く含まれる結晶構造がfccの磁性めっき薄膜を主体とし、結晶成長を断ち切るために結晶構造がbccの磁性めっき薄膜を挿入したものである。結晶成長を断ち切るためには結晶構造がbccの磁性めっき薄膜の膜厚は0.5nm以上であることが望ましい。
この磁性膜のB-Hカーブを図6に示す。この膜の磁気特性は、困難軸方向の保磁力Hchが0.4Oe(32kA/m)、容易軸方向の保磁力Hceが2.4Oe (192kA/m)、異方性磁界Hkが4.5Oe(360kA/m)、磁歪定数λが−9.0-7であり、Ni81 Fe19wt%のパーマロイ単層膜の磁気特性とほぼ同等である。
【0018】
図3に示す電流値及びめっき時間を制御することにより、磁性膜全体の組成が70≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦30wt%である多層磁性膜の作製が可能である。このようにして作製しためっき膜の断面TEM写真を図1に示す。これは、膜の断面TEMにて、Niマッピングを行ったものである。図中、白く見える層はNi rich層、黒く見える層はFe rich層である。この結果から、各磁性めっき薄膜の膜厚はほぼ目標どおりに制御できていることが確認できた。
【0019】
上記磁性膜は、結晶構造が面心立方相(fcc)の磁性めっき薄膜と体心立方相(bcc)の磁性めっき薄膜が交互に積層された多層磁性膜であり、各薄膜間で結晶構造が異なることによりエピタキシャル成長は断ち切られており、各薄膜の結晶粒径は最大で膜厚程度に小さく制御されている。
【0020】
上記多層磁性膜を、再生素子の磁化状態に大きな影響を与える上部磁気シールドに適用することで、結晶粒径に起因するノイズを低減することができる。上部磁気シールドだけではなく、下部磁気シールドにも適用することにより、さらに効果を増すことができる。また、下部磁気シールドにのみ適用した場合にも、上部磁気シールドほどではないにせよ、ノイズ低減の効果は得られる。
【0021】
なお、上記実施例では、磁性めっき薄膜の膜厚を15nmと1.8nmに設定したが、膜厚の範囲は、0.5〜20nmの範囲で、面心立方相(fcc)の磁性めっき薄膜の膜厚を体心立方相(bcc)の磁性めっき薄膜の膜厚より厚くすることで上記実施例と同様の磁気特性が得られる。また、面心立方相の磁性めっき薄膜の組成は75≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦25wt%、体心立方相の磁性めっき薄膜の組成は15≦Ni≦25wt%、75≦Fe≦85wt%であれば、上記実施例と同様の磁気特性が得られる。また、面心立方相の磁性めっき薄膜形成時におけるめっき電流は200mA〜600mA、体心立方相の磁性めっき薄膜形成時におけるめっき電流は800mA〜1200mAであれば、上記実施例と同様の磁気特性が得られる。また、磁気シールド全体が多層膜である必要はなく、上部あるいは下部などの一部に、結晶構造が面心立方相(fcc)の薄膜と体心立方相(bcc)の薄膜が交互に積層された多層膜部分を含む構成でも良い。
【0022】
次に、再び図7を参照して、第2の実施例による再生ヘッドの構成と、この再生ヘッドを備える面内記録型磁気ヘッドの構成を製造工程に従って説明する。非磁性基板(図示せず)上に下部磁気シールド22、下部ギャップ膜23を形成し、この上に再生素子24としてMR、GMRまたはTMRセンサを形成する。再生素子24の両脇に図示しない磁区制御層及び電極膜を形成し、再生素子24及び電極膜上に上部ギャップ膜25を形成後、上部磁気シールド26を形成して、再生ヘッド20が完成する。ここで上部磁気シールド26は以下のように作製する。上部ギャップ膜25の形成後、めっき下地膜として、40〜50nmのNi80Fe20wt%膜をスパッタリングにより形成する。めっき下地膜形成の前に、密着層として、数nm程度のNiCrまたはTa等を形成しても良い。下地膜の上に上部磁気シールド26を作製するためのレジストパターンを形成し、電流値を図3に示した電流レシピと等しくなるように設定し、さらに、所望の膜厚となるように繰り返し回数を設定し、同一めっき浴でレジストパターンの開口部に多層膜をめっきして作製する。
【0023】
続いて再生ヘッド20の上部に絶縁体の分離膜28を形成し、その上に下部磁気コア31を形成する。下部磁気コア31としてNi46Fe54wt%膜をめっきにて形成し、アルミナ膜をスパッタリングにて形成した後、CMPにより下部磁気コア31を平坦化する。さらに下部磁極32として、CoNiFe膜をスパッタリングで約100nm形成後、めっき法でCoNiFe膜を所定の厚さまで形成する。続いて絶縁膜、下部コイル33及び有機絶縁膜を形成後、アルミナ膜をスパッタリングにより形成し、CMPにより下部磁極32を平坦化する。この上に磁気ギャップ膜34、続いて約100nmの下地膜をスパッタリングにて形成後、上部磁極35を形成するためのレジストフレームを形成し、CoNiFe膜、46NiFe膜を順次めっきにて形成する。レジストと余分な下地膜を除去し、さらに上部磁極35及び下部磁極32を所定のトラック幅にするため、イオンミリング等によるトリミング加工を行う。この後、アルミナ膜をスパッタリングにより形成し、CMPにより上部磁極35を平坦化した後、さらに上部コイル36及び有機絶縁膜を形成し、上部磁気コア37としてNi46Fe54wt%膜をめっきにて形成し、記録ヘッド30が完成する。
【0024】
端子形成工程を経て作製した上記面内記録型磁気ヘッド10のライト後リードノイズを測定した。結果を図8に示す。横軸にノイズの最大発生頻度(WRNMax)、縦軸にノイズの発生しなかった割合(OK比率)をとったものである。従来法で上部磁気シールドを作製したヘッドでは、ライト後リードノイズが見られるのに対し、本実施例による再生ヘッドでは、ライト後リードノイズは見られず、多層磁性膜がノイズ低減に有効であることが確認できた。したがって、高記録周波数帯域でも使用可能な再生ヘッド及び面内記録型磁気ヘッドを得ることができる。
また従来、上部磁気シールドには磁歪定数が負であるパーマロイ膜が用いられてきたが、本実施例による多層磁性膜を用いることにより、結晶粒径を小さくできるため、膜全体の組成がNi73.61Fe26.39wt%、磁歪定数λが+14.7-7なる磁性めっき膜を上部磁気シールドに用いても、ノイズ低減に効果が見られることを確認した。このことは、磁歪定数λの許容範囲が広がることを意味し、他の磁気特性の向上を目的とした磁性膜の製造が可能となる。
【0025】
次に、第3の実施例として、上記多層磁性膜を垂直記録型磁気ヘッド50に適用した例を図9に示す。再生ヘッド20は上記第2の実施例と同じ構成である。垂直記録ヘッド40は再生ヘッド20の上部に分離膜28を介して形成した、副磁極41と、下部コイル42と、副磁極41と後部で磁気的に接続されたヨーク43と、ヨーク43の先端に設けられた主磁極44と、上部コイル45と、ラップアラウンドシールド46と、ラップアラウンドシールド接続部47とを有する。再生ヘッド20の上部磁気シールド26に上記の多層磁性膜(膜全体の組成:Ni80.93Fe19.07wt%)を用いた。副磁極41にはNi46Fe54めっき膜を用い、ヨーク43にはNi80Fe20なるパーマロイを用い、主磁極44には積層膜((70FeCo/Cr=150nm/3nm)×20層)を用いた。その結果、従来の垂直記録型磁気ヘッドと比較して、オーバーライト特性(O/W)の低下はなく、ライト後リードノイズは低減できることを確認した。また、ヨーク43に上記の多層磁性膜(膜全体の組成:Ni80.93Fe19.07wt%)を用い、主磁極44に単層めっき膜(FeCoNi、飽和磁束密度>2.4T)を用いても、得られる効果は変わらないことを確認できた。
【0026】
上記再生ヘッド、面内記録型磁気ヘッドあるいは垂直記録型磁気ヘッドを搭載する磁気ディスク装置の概略構成を図10に示す。磁気ディスク装置100は、情報を記録する磁気ディスク105と、磁気ディスク105を回転させるモ−タ106と、磁気ディスク105に情報を記録又は再生する薄膜磁気ヘッド107と、薄膜磁気ヘッド107を支持するサスペンション110と、サスペンション110を介して薄膜磁気ヘッド107を磁気ディスク105の目標位置に位置決めするアクチュエ−タ108と、ボイスコイルモ−タ109とを備える。さらに図示は省略しているが磁気ディスク回転制御回路、ヘッド位置決め制御回路、記録/再生信号処理回路とを備えている。薄膜磁気ヘッド107として、上記実施例による再生ヘッド、面内記録型磁気ヘッドあるいは垂直記録型磁気ヘッドが用いられる。
この磁気ディスク装置は、ライト後リードノイズを著しく減少させることができるので、記録周波数を高くすることができ、データ転送速度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施例による磁気シールドとなる多層磁性膜のTEM写真による断面図である。
【図2】多層磁性膜を形成するためのめっき浴組成を示す図である。
【図3】多層磁性膜を形成するための電流レシピを示す図である。
【図4】図2に示すめっき浴で形成したFeNiめっき薄膜のFe濃度とめっき電流値の関係を示す図である。
【図5】図2に示すめっき浴で形成したFeNiめっき薄膜のX線回折パターンを示す図である。
【図6】図2に示すめっき浴で形成したFeNiめっき多層磁性膜のB-Hカーブを示す図である。
【図7】第2の実施例による再生ヘッドを備えた記録再生分離型磁気ヘッドの断面図である。
【図8】第2の実施例による再生ヘッドを備えた記録再生分離型磁気ヘッドのライト後リードノイズを示す図である。
【図9】第3の実施例による垂直記録磁気ヘッドの断面図である。
【図10】磁気ディスク装置の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10…記録再生分離型磁気ヘッド、20…再生ヘッド、22…下部磁気シールド、23…下部ギャップ膜、24…再生素子、25…上部ギャップ膜、26…上部磁気シールド、28…分離膜、30…記録ヘッド、31…下部磁気コア、32…下部磁極、33…下部コイル、34…磁気ギャップ、35…上部磁極、36…上部コイル、37…上部磁気コア、40…垂直記録ヘッド、41…副磁極、42…下部コイル、43…ヨーク、44…主磁極、45…上部コイル、46…ラップアラウンドシールド、47…ラップアラウンドシールド接続部、50…垂直記録磁気ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜と、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜とが交互に積層された多層磁性膜を含むことを特徴とする磁気シールド。
【請求項2】
前記結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚が、前記結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の磁気シールド。
【請求項3】
前記結晶構造が面心立方相及び体心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚が、0.5〜20nmであることを特徴とする請求項2記載の磁気シールド。
【請求項4】
前記多層磁性膜は、結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜と、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜とが少なくとも4層以上交互に積層されたものであることを特徴とする請求項1記載の磁気シールド。
【請求項5】
前記多層磁性膜全体の組成は70≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦30wt%であることを特徴とする請求項1記載の磁気シールド。
【請求項6】
前記結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜の組成は75≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦25wt%であり、前記結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜の組成は15≦Ni≦25wt%、75≦Fe≦85wt%であることを特徴とする請求項1記載の磁気シールド。
【請求項7】
組成が75≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦25wt%である磁性薄膜をめっきにより形成する第1のステップと、
組成が15≦Ni≦25wt%、75≦Fe≦85wt%である磁性薄膜をめっきにより形成する第2のステップと、を含み、
前記第1のステップと第2のステップを交互に実行することにより、多層磁性膜を含む磁気シールドを形成することを特徴とする磁気シールドの製造方法。
【請求項8】
前記第1のステップで形成する磁性めっき薄膜の膜厚が、前記第2のステップで形成する磁性めっき薄膜の膜厚よりも大きいことを特徴とする請求項7記載の磁気シールドの製造方法。
【請求項9】
前記第1のステップ及び第2のステップで形成する磁性めっき薄膜の膜厚が、0.5〜20nmであることを特徴とする請求項8記載の磁気シールドの製造方法。
【請求項10】
前記第1のステップ及び第2のステップを実行するめっき浴は、浴温が30±1゜C、pHが2.0+0.5/-1.0であり、浴組成は金属イオン濃度がNi2+5〜25(g/l),Fe2+5〜15(g/l)、サッカリンナトリウムが1.5±1.0(g/l)、塩化ナトリウムが25±5(g/l)、ほう酸が25±5(g/l)であることを特徴とする請求項7記載の磁気シールドの製造方法。
【請求項11】
前記第1のステップにおけるめっき電流は200mA〜600mAであり、前記第2のステップにおけるめっき電流は800mA〜1200mAであり、前記第1のステップにおけるめっき時間は前記第2のステップにおけるめっき時間よりも長く設定されることを特徴とする請求項10記載の磁気シールドの製造方法。
【請求項12】
下部磁気シールドと、上部磁気シールドと、該下部磁気シールドと上部磁気シールドの間に下部ギャップ膜及び上部ギャップ膜を介して形成された再生素子とを有し、前記上部磁気シールド及び下部磁気シールドのいずれか一方または両方が、結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜と、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜とが交互に積層された多層磁性膜を含むことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
【請求項13】
前記結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚が、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚よりも大きいことを特徴とする請求項12記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項14】
前記結晶構造が面心立方相及び体心立方相の磁性めっき薄膜の膜厚が、0.5〜20nmであることを特徴とする請求項13記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項15】
前記多層磁性膜は、結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜と、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜とが少なくとも4層以上交互に積層されたものであることを特徴とする請求項12記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項16】
前記多層磁性膜全体の組成は70≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦30wt%であることを特徴とする請求項12記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項17】
前記結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜の組成は75≦Ni≦90wt%、10≦Fe≦25wt%であり、前記結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜の組成は15≦Ni≦25wt%、75≦Fe≦85wt%であることを特徴とする請求項12記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項18】
さらに前記上部磁気シールドに隣接して設けられた記録ヘッドを有することを特徴とする請求項12記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項19】
さらに前記上部磁気シールドに隣接して設けられた、主磁極と、該主磁極のヨークと、副磁極とを有する垂直記録ヘッドを有することを特徴とする請求項12記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項20】
前記垂直記録ヘッドのヨークは、結晶構造が面心立方相の磁性めっき薄膜と、結晶構造が体心立方相の磁性めっき薄膜とが交互に積層された多層磁性膜を含むことを特徴とする請求項19記載の薄膜磁気ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−335788(P2007−335788A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168550(P2006−168550)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】