説明

磁気センサ装置

【課題】 磁性パターンを有する被検知物を磁気抵抗効果素子から微小距離離間させた非接触状態において、感度良く被検知物の磁性パターンを検出する磁気センサ装置を得る。
【解決手段】 被検知物が搬送される搬送路に平行に第1の磁石と第2の磁石とは磁極の異極同士が対向配置され、前記搬送路における搬送方向の磁界強度と第1の磁石と第2の磁石の対向方向における強度変化が零点を含んだ勾配磁界を形成し、前記搬送路と前記第1の磁石との間に設けられた磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子を包囲し樹脂で覆った多層基板を備え、前記磁気抵抗効果素子は前記勾配磁界の搬送方向の磁界強度の零点付近の弱磁界強度領域に設けられ、前記被検知物は前記勾配磁界の強磁界強度領域を通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙幣等の紙葉状媒体上に形成された微小磁性パターンを検出する磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサ装置は、磁界強度に対応して抵抗値が変化する特性を有している磁気抵抗効果素子を使用したセンサ装置である。紙幣等の紙葉状媒体に含まれる磁性パターンを検出する磁気センサ装置においては、この磁性パターンの磁化量が微小であるため、感度良く磁性パターンを検出するためには、磁気抵抗効果素子を強磁界強度環境下に設け、加えて磁気抵抗効果素子に極力近接させて紙葉状媒体を搬送させる必要がある。
【0003】
しかしながら、非接触型の磁気センサ装置においては、紙葉状媒体などの被検知物と磁気抵抗効果素子とは所定の距離離れているため、磁気抵抗効果素子の抵抗値変化出力が小さくなり被検知物に含まれる磁性パターンの検出感度が低下する問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、特開2001−21631号公報(特許文献1参照)には、半導体磁気抵抗素子を対向させた2つの磁気センサ装置を備え、被検知物を2つの磁気センサ装置の間を搬送させる構造とし、対向した2つの磁気センサ装置の信号が反転したように出力されるように半導体磁気抵抗素子を配置している。これらの半導体磁気抵抗素子からの出力信号を差動増幅することにより、磁気信号は加算増幅されノイズ成分は減算増幅されることによりS/N比が改善された、非接触で磁気信号を検出する磁気センサ装置が開示されている。
【0005】
また、磁気抵抗効果素子を保護しつつ被検知物と近接させるため、特開平8−86848号公報(特許文献2参照)では、磁気抵抗素子チップのリード取り出しのために、取り出しリードを形成した絶縁フィルムを用い、リード面を磁気抵抗素子チップ面上の絶縁層を除去したデバイスホールを有する構造で接続することで、磁気抵抗素子と保護ケースとの間のエアーギャップの寸法を小さくする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−21631号公報(図7)
【特許文献2】特開平8−86848号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気センサ装置では、被検知物を挟んで対向配置された2つの半導体磁気抵抗効果素子が必要であり、磁気抵抗効果素子からの出力信号のS/N比を改善し、検出感度を向上させるためには、2つの前記半導体磁気抵抗効果素子からの出力信号を差動増幅する差動増幅回路が必須である。さらに、被検知物の検出感度を向上させるには、バイアス磁石の磁力を高め、被検知物が搬送される搬送路の磁界強度を高める必要があるが、被検知物は半導体磁気抵抗効果素子よりもバイアス磁石の遠方を通過するため、被検知物による磁界強度の変化は小さく個々の半導体磁気抵抗効果素子の出力信号が小さくなるという課題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の磁気検出器では、回路全体にポリイミド等の絶縁層を形成後、磁気抵抗素子チップの電極と電極取り出しリードとの接続を行うために、磁気抵抗素子チップ上のポリイミド等の絶縁層を除去する過程が必要であり、製造工程が複雑である。また、絶縁層領域をエアーギャップにて構成しているため、磁気抵抗素子チップ及び電極取り出し部分を保護するために別途保護ケースが必要となり、その分磁気センサ装置表面から磁気抵抗素子チップまでの距離が大きくなり検出感度が低下するという課題がある。
【0009】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、磁性パターンを有する被検知物を磁気抵抗効果素子から微小距離離間させた非接触状態において、感度良く被検知物の磁性パターンを検出する磁気センサ装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る磁気センサ装置は、筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1スリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2スリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極を対向して配置することにより前記第1の磁石との間で搬送方向に連続的な勾配磁界を形成する第2の磁石と、前記被検知物と前記第1の磁石との間に設けられ、出力端子を有し、前記勾配磁界内を通過する前記被検知物の磁気成分を検出することにより抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力すると共に前記磁気抵抗効果素子を包囲する多層基板と、この多層基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段と、前記磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とを覆う樹脂とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記勾配磁界の磁界強度の零点付近の弱磁界強度領域に設けられ、前記被検知物が前記勾配磁界の前記弱磁界強度領域よりも磁界強度が強い磁界強度領域を通過するものである。
【0011】
また、この発明に係る磁気センサ装置は、筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1のスリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極を対向して配置され、前記第1の磁石との間で形成される磁界の前記第1の磁石との対向方向の磁界成分と搬送方向の磁界成分のそれぞれに零点を含む勾配磁界を形成する第2の磁石と、前記被検知物と前記第1の磁石との間に設けられ、出力端子を有し、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間の磁界内を通過する前記被検知物の磁気成分を検出することにより抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力すると共に前記磁気抵抗効果素子を包囲する多層基板と、この多層基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段と、前記磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とを覆う樹脂とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記勾配磁界における前記搬送方向の磁界強度の零点付近の弱磁界強度領域に設けられ、前記被検知物が前記勾配磁界の強磁界強度領域を通過するものである。
【0012】
また、この発明に係る磁気センサ装置は、筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1のスリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物搬送経路の他方の面に、搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極を対向して配置され、前記第1の磁石との間で形成される磁界の前記第1の磁石との対向方向の磁界成分と搬送方向の磁界成分のそれぞれに零点を含む勾配磁界を形成する第2の磁石と、前記被検知物と前記第1の磁石との間に設けられ、出力端子を有し、前記勾配磁界内を通過する前記被検知物の磁気成分を検出することにより抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力すると共に前記磁気抵抗効果素子を包囲する多層基板と、この多層基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段と、前記磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とを覆う樹脂とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記搬送方向の勾配磁界の磁界強度が零点付近の弱磁界強度領域であると共に前記対向方向の勾配磁界の磁界強度が強磁界強度領域である領域に設けられ、前記被検知物が前記対向方向の勾配磁界の磁界強度の強磁界強度領域を通過するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、搬送路に平行に対向配置された第1の磁石と第2の磁石とは磁極の異極同士が対向配置されているため、搬送路における搬送方向の磁界強度と第1の磁石と第2の磁石の対向方向における磁界強度が零点を含んだ勾配磁界となり、この勾配磁界の磁界強度の強磁界強度領域を被検知物が磁気抵抗効果素子から離間して通過することにより、感度良く被検知物の磁性パターンが検出される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における磁気センサ装置の被検出体の挿排出方向から見た断面図である。
【図3】図1における多層基板へのAMR素子の実装状態を示す拡大図である。
【図4】図1における中空部から多層基板側を見たAMR素子の実装状態を示す上面図である。
【図5】この発明の実施の形態1における磁気センサ装置のAMR素子と外部回路との接続状態を示す接続図である。
【図6】図1に示す磁気センサ装置における第1の磁石と第2の磁石から生成される搬送方向(X軸方向)の磁界分布を示す図である。
【図7】図6におけるX軸方向の磁界強度の第1の磁石と第2の磁石との対向方向(Z軸方向)における強度変化を示す図である。
【図8】AMR素子の印加磁界と抵抗変化率を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1におけるミアンダ形状の抵抗パターンを有するAMR素子の上面図である。
【図10】AMR素子を第1の磁石の表面に接着した実装状態を示す拡大図である。
【図11】この発明の実施の形態2における磁気センサ装置の中空部から多層基板側を見たAMR素子の実装状態を示す上面図である。
【図12】この発明の実施の形態2における磁気センサ装置のAMR素子と外部回路との接続状態を示す接続図である。
【図13】この発明の実施の形態2におけるミアンダ形状の抵抗パターンを有するAMR素子の上面図である。
【図14】この発明の実施の形態3におけるライン型の磁気センサ装置の中空部から多層基板側を見たAMR素子の実装状態を示す上面図である。
【図15】この発明の実施の形態4におけるライン型磁気センサ装置の構造図である。
【図16】この発明の実施の形態5におけるライン型磁気センサ装置の構造図である。
【図17】この発明の実施の形態6におけるライン型磁気センサ装置の構造図である。
【図18】この発明の実施の形態7におけるライン型磁気センサ装置の構造図である。
【図19】この発明の実施の形態8における搬送手段を含む磁気センサ装置の構造図である。
【図20】この発明の実施の形態9における磁気センサ装置の被検出体の搬送方向から見た断面図である。
【図21】図20に示す磁気センサ装置における第1の磁石と第2の磁石から生成される搬送方向(X軸方向)及び対向方向(Z方向)の磁界分布を示す図である。
【図22】図21におけるX軸方向及びZ軸方向の磁界強度の強度変化を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態9における磁気センサの検出原理を説明する磁力線ベクトル図である。
【図24】この発明の実施の形態10における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。
【図25】図24に示す磁気センサ装置における第1の磁石用ヨーク81と第2の磁石用ヨーク82から生成される搬送方向(X軸方向)および対向方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。
【図26】この発明の実施の形態11における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図2は、この発明の実施の形態1における磁気センサ装置の被検出体の挿排出方向から見た断面図である。図1及び図2において、筐体1は内部に中空部2を有し、筐体1の一方の側面(側壁)に読取り幅(被検出体の搬送方向と直交する方向)に亘って第1のスリット部3を備え、他方の側面(側壁)に第1のスリット部3に平行に第2のスリット部4を備え、中空部2を介して第1のスリット部3と第2のスリット部4とが接続されており、例えば、被検出体である磁性パターンを含んだ紙幣5は第1のスリット部3から挿入され、中空部2を搬送経路として搬送され、第2のスリット部4から排出される。
【0016】
中空部2における搬送方向の一方の面に搬送方向に沿ってN極S極を有する第1の磁石6が筐体1に紙幣5から離間して設置され、他方の面に搬送方向に沿ってN極S極が第1の磁石6と異極となるように第2の磁石7が筐体1に紙幣5から離間して設置されている。
【0017】
第1の磁石6の搬送路側に、紙幣5から離間して、ガラスエポキシ等の樹脂で形成された多層基板9が設けられ、この多層基板9に異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)10が実装されている。このAMR素子10は基板表面に抵抗体を備え、この抵抗体に流れる電流の方向に直交する磁界の変化に対応して抵抗値が変化する特性を有している。
【0018】
図3は、図1における多層基板9へのAMR素子10の実装状態を示す拡大図である。図4は、図1における中空部2から多層基板9側を見たAMR素子10の実装状態を示す上面図である。図3及び図4において、多層基板9は、1層目基板91、2層目基板92、3層目基板93で構成され、穴部9aを有し、この穴部9aの1層目基板91と2層目基板92にはそれぞれ1層目基板の穴部91a、2層目基板の穴部92aを備え、1層目基板の穴部91aの開口は2層目基板の穴部92aの開口よりも大きい凹構造となっている。
【0019】
AMR素子10は、多層基板9に包囲されるように2層目基板の穴部92aに露出している3層目基板の表面に接着材で固定されている。AMR素子10の電極101a〜101cは、多層基板9の穴部9a内に露出している2層目基板92の表面に設けられた電極111a〜111cとそれぞれ金属ワイヤ12で接続され、電極111a〜111cは伝送線路11を通して多層基板9の外部の裏面に設けられた外部パッド112a〜112cと接続されている。外部パッド112a〜112cには、信号処理回路、バイアス電圧等の外部回路が接続される。また、1層目の穴部91aと2層目の穴部92aは、樹脂13にて1層目基板91の表面を越えないように封止されている。
【0020】
図4において、AMR素子10の抵抗体パターン102aと102bは矩形形状の長辺が読取り幅方向(Y軸方向)に延在するように平行に配置され、隣接する抵抗体パターン102aと102bとは直列接続され、この直列接続部がAMR素子10の電極101bに、抵抗体パターン102aの他方が電極101aに、抵抗体パターン102bの他方が電極101cに接続されている。
【0021】
図5は、この発明の実施の形態1における磁気センサ装置のAMR素子10と外部回路との接続状態を示す接続図である。図4、図5において、電極101aは金属ワイヤ12(電気接続手段)にて電極111aに接続され、外部パッド112aを経由して直流電源電圧Vccに接続されている。電極101bは金属ワイヤ12にて電極111bに接続され、外部パッド112bを経由して信号を処理する処理回路15に接続されている。電極101cは金属ワイヤ12にて電極111cに接続され、外部パッド112cを経由して直流接地(GND)されている。
【0022】
図6は、図1に示す磁気センサ装置における第1の磁石6と第2の磁石7から生成される搬送方向(X軸方向)の磁界分布を示す図であり、図7は、図6におけるX軸方向の磁界強度の第1の磁石6と第2の磁石7との対向方向(Z軸方向)における強度変化を示す図である。なお、図6では図1の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。
【0023】
図6において、磁力線17は第1の磁石6のN極からS極へ、第2の磁石7のN極からS極へと向い、磁力線17の強度は第1の磁石6と第2の磁石7との対向方向において、それぞれの磁石端で最大となり、間隙の中間地点で零となる。
【0024】
図7は、第1の磁石6及び第2の磁石7において搬送方向の長さA=10mm、第1の磁石6及び第2の磁石7の厚さB=5mm、第1の磁石6と第2の磁石7との間隙G=5mmとし、第1の磁石6及び第2の磁石7の材質をネオジム焼結磁石として、磁界強度のX軸方向成分BxのZ軸方向における強度変化を計算した結果である。
【0025】
前記磁界強度は、第1の磁石6と第2の磁石7との間隙Gの中間地点(Z=2.5mm=G/2)で磁界強度Bxが0になる勾配磁界となっている。AMR素子10として図8の実線に示す飽和磁界が5mTのAMR素子を用いる場合、Z=2.55mm付近でBxが5mTとなる。すなわち、AMR素子10の位置としては0<α<0.05mmに設定すると、AMR素子10の出力が飽和することなく適切なバイアス磁界を印加される。最も望ましいのは磁気抵抗素子の感度傾きが最も大きい磁界強度Bx=2.5mT程度のバイアス磁界が印加される状態であり、α=0.02mm付近にAMR素子10配置すると最も高い出力が得られる。なお、αは微小距離を示す。
【0026】
このバイアス磁界Bxが常にAMR素子10(すなわち抵抗体パターン102a、102b)に印加された状態で紙幣5がX軸方向に搬送され、まず抵抗体パターン102a上に紙幣5の磁性パターンが掛かると、抵抗体パターン102a付近の磁界Bxが変化し、抵抗体パターン102b付近の磁界Bxは変化しないため、抵抗体パターン102aの抵抗値のみが変化し、電極101bの電位が変化する。
【0027】
その後、紙幣5がさらにX軸方向に搬送されて紙幣5の磁性パターンが抵抗体パターン102a、102bの両方に掛かると、抵抗体パターン102a、102bの抵抗値が共に変化するため、電極101bの電位としては紙幣5が無いときと同じ電位となる。
【0028】
さらに紙幣5が搬送されて紙幣5の磁性パターンが抵抗体パターン102bのみに掛かると、抵抗体パターン102bの抵抗値のみが変化して、今度は電極101bの電位が前述と逆の方向に変化する。すなわち、動作としては紙幣5の磁性パターンのエッジを検出していることとなる。
【0029】
紙幣5が抵抗体パターン102a、102bに掛かったときの磁界変化は、紙幣5の周辺の磁界(紙幣5に印加される磁界)に比例し、その磁界変化をAMR素子10で検出するため、高出力化のためには紙幣5にはより大きな磁界を掛ける必要があり、この発明の実施の形態1では、紙幣5とAMR素子10の距離が近い場合例えばZ=3mm付近にある場合、図7より紙幣5に印加される磁界はBx=約77mTであるが、紙幣5とAMR素子10の距離が離れてZ=4mm付近にある場合にはBx=約240mTとなり、Z=3mmの約3倍の磁界が紙幣5に印加され、AMR素子10と紙幣5が離間しても感度良く紙幣5の磁性パターンが検出される。
【0030】
AMR素子10と紙幣5との間隔は、紙幣5がZ=4mmの地点を通過するよう構成した場合、AMR素子10と紙幣5との間隔は上述の記載から1.5mm程度と近接しており、非接触状態を保ちつつAMR素子10を保護するAMR素子10の実装方法について図3及び図4を用いて説明する。
【0031】
AMR素子10の厚みは0.5mm程度であり、抵抗体パターン102a、102bはAMR素子10の表面に形成されているため、抵抗体パターン102a、102bがZ=G/2+α=2.52mmの地点に来るように、厚さが2.02mmの3層目基板93の表面にAMR素子10が接着されている。
【0032】
2層目基板92は厚み0.5mmとし、2層目基板92のパッド111a〜111cとAMR素子10の電極101a〜101cとは金属ワイヤ12で接続されている。2層目基板92の厚みをAMR素子10の厚みと同一にすることで、金属ワイヤ12のループ高さを最小に抑えることができる。
【0033】
1層目基板91の厚みは金属ワイヤ12のループ高さと同程度の0.3mmとし、1層目基板91の穴部91a及び2層目基板92の穴部92aに粘性の低いエポキシ系の樹脂13を1層目基板91の表面から突出しないように塗布し、AMR素子10と金属ワイヤ12を保護する。2層目基板92のパッド111a〜111cは伝送線路11を経由して3層目基板93の裏面に設けたパッド112a〜112cに接続されており、このパッド112a〜112cを介して電源電圧Vcc、処理回路15等に接続されている。この実装により、AMR素子10を保護し、紙幣5の搬送を妨げる突起物は無く、安定して多層基板9の表面と紙幣5とは1.2mmの間隔が確保される。
【0034】
このように、勾配磁界の強磁界強度領域に紙幣を通過させるので、AMR素子と紙幣が離間していても、感度良く紙幣の磁性パターンが検出される。また、凹形状の穴部を有する多層基板の穴部にAMR素子を実装し、この穴部に樹脂を塗布したので、突出部のない安定した搬送経路が得られる。
【0035】
AMR素子10の抵抗体パターン102a、102bは矩形形状としたが、図9に示すように長辺が読取り幅方向(Y軸方向)に延在するように配置したミアンダ形状としても良い。この場合、抵抗体パターン102a、102bの抵抗値が矩形形状のものより増加し高抵抗値となるので、AMR素子10の磁界変化の検出感度が向上し、磁気センサ装置の検出感度が増加する。
【0036】
AMR素子10は多層基板9の3層目基板93の表面に接着したが、AMR素子10の抵抗変化率や飽和磁界強度が本実施の形態1と異なり、AMR素子10を第1の磁石6に近接させる場合においては、図10に示すように、多層基板9の穴部9aは貫通構造とし、第1の磁石6の搬送路側の表面にAMR素子10を接着する構造としても良い。
【0037】
なお、本実施の形態1では、磁気抵抗効果素子10は、AMR素子を用いたが、巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル磁気抵抗効果(TMR)素子を用いても良い。
【0038】
実施の形態2.
図11は、この発明の実施の形態2における磁気センサ装置の中空部2から多層基板9側を見たAMR素子10の実装状態を示す上面図である。図11において、図4と同一の構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。図11において、AMR素子10の抵抗体パターン102aは矩形形状の長辺が読取り幅方向(Y軸方向)に延在するように配置され、抵抗体パターン102cは矩形形状の長辺が搬送方向(X軸方向)に延在するように配置され、抵抗体パターン102aと102cとは直列接続され、この直列接続部がAMR素子10の電極101bに、抵抗体パターン102aの他方が電極101aに、抵抗体パターン102bの他方が電極101cに接続されている。
【0039】
図12は、この発明の実施の形態2における磁気センサ装置のAMR素子10と外部回路との接続状態を示す接続図である。図11、図12において、電極101aは金属ワイヤ12にて電極111aに接続され、外部パッド112aを経由して直流電源電圧Vccに接続されている。電極101bは金属ワイヤ12にて電極111bに接続され、外部パッド112bを経由して信号を処理する処理回路15に接続されている。電極101cは金属ワイヤ12にて電極111cに接続され、外部パッド112cを経由して直流接地(GND)されている。
【0040】
この発明の実施の形態2では実施の形態1と同様にバイアス磁界がX軸方向に掛けられており、抵抗体パターン102aはバイアス磁界Bxが掛かるが抵抗体パターン102cはBxが感磁方向ではないため、バイアス磁界が印加されない。この状態で紙幣5がX軸方向に搬送されると、抵抗体パターン102a上に紙幣5の磁性パターンが掛かると、抵抗体パターン102a付近の磁界Bxが変化して抵抗体パターン102aの抵抗値が変化するが、抵抗体パターン102c付近の磁界Bxが変化してもその変化を抵抗体パターン102cは感じないため、抵抗体パターン102cの抵抗値は常に一定である。この時の電極101bの電位の変化は紙幣5の磁性パターンがAMR素子10上にある場合には変化し、無い場合には変化しない。すなわち、動作としては紙幣5の磁性パターンのエッジ検出ではなく、紙幣5の磁性パターンの存在そのものを検出していることとなる。
【0041】
この発明の実施の形態2では、紙幣5の磁性パターンのエッジを検出するのではなく紙幣5の磁性パターンの存在そのものを検出する事により、紙幣5の磁性パターンのエッジ形状に依存することなく、電磁ノイズ等の影響にも左右されず、安定して紙幣5の磁性パターンを検出することが出来るとともに、外来ノイズに強い安定した紙幣5の磁性パターンの検出信号を得ることが出来る。
【0042】
AMR素子10の抵抗体パターン102a、102cは矩形形状としたが、図13に示すように抵抗体パターン102aは長辺が読取り幅方向(Y軸方向)に延在するように配置したミアンダ形状とし、抵抗体パターン102cは長辺が搬送方向(X軸方向)に延在するように配置したミアンダ形状としても良い。この場合、抵抗体パターン102a、102cの抵抗値が矩形形状のものより増加し高抵抗値となるので、AMR素子10の磁界変化の検出感度が向上し、磁気センサ装置の検出感度が増加する。
【0043】
実施の形態3.
図14は、この発明の実施の形態3におけるライン型磁気センサ装置の中空部2から多層基板9側を見たAMR素子10の実装状態を示す上面図である。図14において図11と同一の構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。図14において、多層基板9の穴部9aに、読取り幅方向(Y軸方向)に亘ってAMR素子10がアレイ状に実装されている。動作については、この発明の実施の形態2の磁気センサ装置と同じである。なお、AMR素子10の抵抗体パターンは図11に示す実施の形態2の抵抗体パターンを用いたが図13に示す抵抗体パターンを用いても良く、また図4及び図9に示す実施の形態1の抵抗体パターンを用いてもよい。
【0044】
図14においては、全てのAMR素子10を1つの穴部9aで包囲しているが、1つのAMR素子10を1つの穴部9aで包囲した磁気センサ装置を読取り幅方向に亘ってアレイ状に実装してもよく、また、複数のAMR素子10を1つの穴部9aで包囲した磁気センサ装置を読取り幅方向に亘ってアレイ状に実装してもよい。
【0045】
このように、AMR素子10を読取り幅方向に複数個アレイ状に配置したライン型磁気センサ装置とすることにより、検知幅が広がる。
【0046】
実施の形態4.
図15は、この発明の実施の形態4におけるライン型磁気センサ装置の構造図である。図15(a)は、正面図であり、図15(b)は、A部拡大図である。図15において、図1と同一の構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。アルミニウム等の非磁性体の金属で形成された金属キャリア191の中空部2側の表面に複数のAMR素子10が隣接してアレイ状に接着剤で実装され、AMR素子10のアレイの周囲には、ガラスエポキシ等の樹脂で形成された基板192が金属キャリア191の中空部2側の表面に接着されている。AMR素子10の表面は、エポキシ等の非導電性の樹脂13にて基板192の表面を越えないように封止されている。金属キャリア191の他方の面には第1の磁石6が設けられている。
【0047】
筐体1は、第1の磁石6が設置される第1の筐体1aと第2の磁石7が設置される第2の筐体1bで構成され、中空部2を境にして離合可能な構造としている。AMR素子10、基板192が接着された金属キャリア191は、第1の筐体1aに固定されている。第1の筐体1aと第2の筐体1bとは、嵌合ピン18を基準にして、嵌合される。
【0048】
このように、AMR素子10を熱抵抗が小さい金属キャリア191の表面に実装したので、AMR素子10の発熱による熱は、金属キャリア191に効率良く排熱されるため、AMR素子10の温度上昇が抑制される。
【0049】
実施の形態5.
図16は、この発明の実施の形態5におけるライン型磁気センサ装置の構造図である。なお、図16は図15(b)に相当する箇所の拡大図である。図16において、図15と同一の構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。基板192の中空部2側の表面全体とAMR素子10を封止している樹脂13の中空部2側の表面全体とを覆うように、アルミニウム等の非磁性体の金属で形成された電気シールド板31が設けられている。
【0050】
このように、AMR素子10と紙幣5の搬送経路である中空部2との間に電気シールド板31を設けたので、紙幣5が帯電することにより持つ静電気ノイズや磁気センサ装置の周囲に配置された周辺装置からの電気的ノイズからAMR素子10が保護される。
【0051】
実施の形態6.
図17は、この発明の実施の形態6におけるライン型磁気センサ装置の構造図である。なお、図17は図15(b)に相当する箇所の拡大図である。図17において、図15と同一の構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。基板192の中空部2側の表面全体とAMR素子10を封止している樹脂13の中空部2側の表面全体とを覆うように、樹脂や非磁性体の金属で形成されたメンテナンスプレート32が設けられている。メンテナンスプレート32は、AMR素子10のアレイ方向におけるメンテナンスプレート32の両端部を、ねじ等を用いて着脱可能な状態で金属キャリア191や第1の筐体1aに固定されている。
【0052】
中空部2に侵入した磁性体の異物は第1の磁石6側へ吸引され、メンテナンスプレート32の表面に付着する。第1の筐体1aと第2の筐体1bを分離し、メンテナンスプレート32の表面を操作できる状態にした後、メンテナンスプレート32を固定しているねじをはずしてメンテナンスプレート32を清掃、交換し、磁気センサ装置から異物を除去する。
【0053】
このように、メンテナンスプレート32を用いることで、中空部に付着した異物を一度に除去できるので、磁気センサ装置の中空部2の清掃が簡単となる。
【0054】
なお、メンテナンスプレート32は第2の筐体1bにおける中空部2側の表面に設けるとさらに効果的である。また、メンテナンスプレート32はアルミニウム等の非磁性体の金属で形成したときは、この発明の実施の形態5に示す作用効果も有する。
【0055】
実施の形態7.
図18は、この発明の実施の形態7におけるライン型磁気センサ装置の構造図である。図18(a)は、正面図であり、図18(b)は、B部拡大図である。図18において、図15と同一の構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。図18において、図15における第1の筐体1aは、第1の磁石6を保持する保持ブロック1dと、保持ブロック1dを保持し、第2の筐体1bと嵌合する嵌合ブロック1cに分割されている。保持ブロック1dは、アジャスター41を介して上下に可動可能な状態で嵌合ブロック1cに固定されている。
【0056】
第1の筐体1aを嵌合ブロック1cと保持ブロック1dに分割することにより、第1の磁石6と第2の磁石7との間隔が調整できるので、組立公差による磁界分布のばらつきを調整し、AMR素子10から最適な出力が得られるように第1の磁石6と第2の磁石7との間隔が調整される。
【0057】
実施の形態8.
図19は、この発明の実施の形態8における搬送手段を含む磁気センサ装置の構造図である。図19において、図1及び図15と同一の構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。図19において、第1のスリット部3は上下にテーパ部3aを備えた形状を成している。上下のローラからなる搬送ローラ61は紙幣5を高速で搬送し、第1のスリット部へと搬送する。
【0058】
搬送ローラ61は、紙幣5が中空部の上下方向間隙の中央部付近を通過するように紙幣5を送り出す。第1のスリット部3にはテーパ部3aを設けているので、紙幣5は第1のスリット部3から滑らかに中空部2へ搬送される。
【0059】
搬送ローラ61に着磁機能を設けた場合は、紙幣5が着磁された状態で磁気センサ装置に搬送されるので、AMR素子10の検出感度が向上する。
【0060】
実施の形態9.
図20は、この発明の実施の形態9における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図20において、図1と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この発明の実施の形態9においては、図1に示すこの発明の実施の形態1から、AMR素子10を搬送方向(X軸方向)にずらして配置している。
【0061】
図21は、図20に示す磁気センサ装置における第1の磁石6と第2の磁石7から生成される紙幣5の搬送方向(X軸方向)および対向する第1の磁石6と第2の磁石との対向方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。図22は、図21におけるX軸方向及びZ軸方向の磁界強度の強度変化を示す図であり、図22(a)は搬送方向(X軸方向)の磁界の対向方向(Z軸方向)の強度変化を示し、図22(b)は対向方向(Z軸方向)の磁界の搬送方向(X軸方向)の強度変化を示す。図23は、図21におけるC部を拡大し、この発明の実施の形態9における磁気センサの検出原理を説明する磁力線ベクトル図である。なお、図21及び図23では図20の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。
【0062】
図22に示すように、AMR素子10は搬送方向の磁界が弱磁界強度であると共に対向方向の磁界が強磁界強度である位置に設けられ、紙幣5は対向方向の磁界が強磁界強度である位置を通過する。
【0063】
図21において、AMR素子10が配置されている箇所において磁力線17は、第1の磁石6のN極から第2の磁石7のS極へと向い、図23(a)に示すように、対向方向から少しだけ搬送方向に傾いているため、この磁界のX成分がAMR素子10のバイアス磁界として作用している。
【0064】
被検知物(紙幣)5が近づいてくると、図23(b)に示すように、磁力線17が紙幣5側に傾くため搬送方向の磁界が小さくなり、紙幣5が離れていくと、図23(c)に示すように、磁力線17が紙幣5側に傾くため搬送方向の磁界が大きくなるため、X方向成分を感磁するAMR素子10の抵抗値が変化し、紙幣5を検知することが出来る。
【0065】
本構成によれば、AMR素子10に印加される磁界は対向方向が主成分となり、AMR素子10に印加する搬送方向のバイアス磁界強度は、対向方向の位置により大きく変化しないため、組付け精度が向上する。
【0066】
また、AMR素子10が感磁しない対向方向の磁界が主成分となることにより、AMR素子10の飽和を気にすることなく対向方向に大きな磁界を印加することができるため、紙幣5に大きな磁界が印加され、安定した出力を得ることができる。
【0067】
実施の形態10.
図24は、この発明の実施の形態10における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図24において、図1と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この発明の実施の形態10においては、図1に示すこの発明の実施の形態1から、第1の磁石6の横に第1の磁石用ヨーク81と第2の磁石7の横に第2の磁石用ヨーク82を配置している。
【0068】
図25は、図24に示す磁気センサ装置における第1の磁石用ヨーク81と第2の磁石用ヨーク82から生成される搬送方向(X軸方向)および対向方向(Z軸方向)の磁界分布を示す図である。なお、図25では、図24の構成要素から磁界分布を説明するために必要な構成要素を記載し他は省略している。
【0069】
第1の磁石用ヨーク81は、所定の厚さP(磁石厚さB>P)を持った板状の軟磁性体により形成され、対向方向は第1の磁石6の上側を揃えるか、一定の飛び出し量を持って第1の磁石6の両側に接着、一体成型、磁力による吸引などの方法で取り付けられる。第2の磁石用ヨーク82は、所定の厚さを持った板状の軟磁性体により形成され、対向方向は第2の磁石7の下側を揃えるか、一定の飛び出し量を持って第1の磁石6の両側に接着、一体成型、磁力による吸引などの方法で取り付けられる。
【0070】
本構成によれば、第1の磁石6や第2の磁石7の側面から発せられた磁力線がヨーク厚さPの中に集磁され、磁力線17は図25に示すように磁石のN極側ヨーク端から発せられ、S極のヨーク端に向かうループを描く。この効果により磁石のみを対向させて場合に比べてさらに大きな磁界を紙幣5に印加することができる。その結果、安定した出力を得ることができる。
【0071】
また、第1の磁石用ヨーク81、第2の磁石用ヨーク82をそれぞれ第1の磁石6、第2の磁石7の両側面に取り付けることにより、磁石の読み取り幅方向(Y軸方向)の磁力ばらつきを均一化することができ、特にライン型磁気センサの場合、各チャンネル間のバイアス磁界ばらつきを抑え、結果的にライン間の出力ばらつきを抑えることができ、歩留り向上、コスト削減につながる。
【0072】
実施の形態11.
図26は、この発明の実施の形態11における磁気センサ装置の被検出体(被検知物)の搬送方向から見た断面図である。図26において、図20と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この発明の実施の形態11においては、図20に示すこの発明の実施の形態9から、第1の磁石6横に第1の磁石用ヨーク81と第2の磁石7の横に第2の磁石用ヨーク82を配置している。
【0073】
本構成によれば、この発明の実施の形態10と同じ効果が得られ、安定した出力及びライン間の出力ばらつきを抑える効果が得られる。
【符号の説明】
【0074】
1 筐体
1a 第1の筐体
1b 第2の筐体
1c 嵌合ブロック
1d 保持ブロック
2 中空部
3 第1のスリット部
4 第2のスリット部
5 被検知物(紙幣)
6 第1の磁石
7 第2の磁石
9 多層基板
9a 多層基板の穴部
91 1層目基板
92 2層目基板
93 3層目基板
91a 1層目基板の穴部
92a 2層目基板の穴部
10 異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)
101a〜101c AMR素子の電極
102a〜102c 抵抗体パターン
11 伝送線路
111a〜111c 伝送線路の電極
112a〜112c 伝送線路の外部パッド
12 金属ワイヤ(電気接続手段)
13 樹脂
15 処理回路
17 磁力線
18 嵌合ピン
31 電気シールド板
32 メンテナンスプレート
41 アジャスター
61 搬送ローラ
191 金属キャリア
192 基板
71 ケーブル
81 第1の磁石用ヨーク
82 第2の磁石用ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1スリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2スリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極を対向して配置することにより前記第1の磁石との間で搬送方向に連続的な勾配磁界を形成する第2の磁石と、前記被検知物と前記第1の磁石との間に設けられ、出力端子を有し、前記勾配磁界内を通過する前記被検知物の磁気成分を検出することにより抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力すると共に前記磁気抵抗効果素子を包囲する多層基板と、この多層基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段と、前記磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とを覆う樹脂とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記勾配磁界の磁界強度の零点付近の弱磁界強度領域に設けられ、前記被検知物が前記勾配磁界の前記弱磁界強度領域よりも磁界強度が強い磁界強度領域を通過する磁気センサ装置。
【請求項2】
筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1のスリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極を対向して配置され、前記第1の磁石との間で形成される磁界の前記第1の磁石との対向方向の磁界成分と搬送方向の磁界成分のそれぞれに零点を含む勾配磁界を形成する第2の磁石と、前記被検知物と前記第1の磁石との間に設けられ、出力端子を有し、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間の磁界内を通過する前記被検知物の磁気成分を検出することにより抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力すると共に前記磁気抵抗効果素子を包囲する多層基板と、この多層基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段と、前記磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とを覆う樹脂とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記勾配磁界における前記搬送方向の磁界強度の零点付近の弱磁界強度領域に設けられ、前記被検知物が前記勾配磁界の強磁界強度領域を通過する磁気センサ装置。
【請求項3】
筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1のスリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物搬送経路の他方の面に、搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極を対向して配置され、前記第1の磁石との間で形成される磁界の前記第1の磁石との対向方向の磁界成分と搬送方向の磁界成分のそれぞれに零点を含む勾配磁界を形成する第2の磁石と、前記被検知物と前記第1の磁石との間に設けられ、出力端子を有し、前記勾配磁界内を通過する前記被検知物の磁気成分を検出することにより抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を接続パッドから外部に出力すると共に前記磁気抵抗効果素子を包囲する多層基板と、この多層基板の接続パッドと前記磁気抵抗効果素子の出力端子とを電気接続する電気接続手段と、前記磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とを覆う樹脂とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記搬送方向の勾配磁界の磁界強度が零点付近の弱磁界強度領域であると共に前記対向方向の勾配磁界の磁界強度が強磁界強度領域である領域に設けられ、前記被検知物が前記対向方向の勾配磁界の磁界強度の強磁界強度領域を通過する磁気センサ装置。
【請求項4】
前記磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とが前記磁気抵抗効果素子を包囲する多層基板の表面から突出しないように樹脂で覆われた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記磁気抵抗効果素子は、前記搬送方向と直交する方向に矩形状の第1の抵抗体パターンと矩形状の第2の抵抗体パターンとを直列接続して配置し、直列接続された前記第1の抵抗体パターンと前記第2の抵抗体パターンとの接続点を前記出力端子と接続する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記磁気抵抗効果素子は、前記第1の抵抗体パターンは前記搬送方向と直交する方向に、前記第2の抵抗体パターンは前記搬送方向に、それぞれパターンを延在させた請求項5に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記磁気抵抗効果素子は、前記第1の抵抗体パターン及び前記第2の抵抗体パターンは、それぞれミアンダ形状である請求項5又は請求項6に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記磁気抵抗効果素子と前記多層基板は、前記搬送方向と直交する方向に複数個アレイ状に配置され、前記磁気抵抗効果素子の前記出力端子からの抵抗値変化を前記接続パッドから外部にそれぞれ出力する請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記第1の磁石の搬送方向の両側面に一対の磁性体から成る第1のヨークを設け、前記第2の磁石の搬送方向の両側面に一対の磁性体から成る第2のヨークを設けた請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項10】
筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1スリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極を対向して配置することにより前記第1の磁石との間で搬送方向に連続的な勾配磁界を形成する第2の磁石と、前記検知物と前記第1の磁石との間に前記読取り幅方向にアレイ状に設けられ、出力端子を有し、前記勾配磁界内を通過する前記被検知物の磁気成分を検出することにより抵抗値が変化する複数の磁気抵抗効果素子と、この複数の磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を複数の接続パッドから外部に出力すると共に前記複数の磁気抵抗効果素子を一纏めに包囲する多層基板と、この多層基板のそれぞれの接続パッドと前記磁気抵抗効果素子のそれぞれの出力端子とを電気接続する電気接続手段と、前記複数の磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とを覆う樹脂とを備え、前記複数の磁気抵抗効果素子は前記勾配磁界の磁界強度の零点付近の弱磁界強度領域に設けられ、前記被検知物が前記勾配磁界の前記弱磁界強度領域よりも磁界強度が強い磁界強度領域を通過する磁気センサ装置。
【請求項11】
筐体と、この筐体の一方の側壁に読取り幅に亘って被検知物を挿入する細長の第1のスリット部と、この第1のスリット部に対向する前記筐体の他方の側壁に前記第1のスリット部に平行して配置した前記被検知物を排出する第2のスリット部と、前記第1のスリット部と前記第2のスリット部と接続され前記被検知物が前記第1のスリット部から前記第2のスリット部へ搬送される中空部と、前記中空部に設けられ、前記被検知物の一方の面に、搬送方向に沿って互いに磁極を交互に配置した第1の磁石と、前記被検知物の他方の面に、搬送方向に沿って前記第1の磁石の磁極と異なる磁極を対向して配置され、前記第1の磁石との間で形成される磁界の搬送方向の磁界成分と対向方向の磁界成分のそれぞれに勾配磁界を形成する第2の磁石と、前記被検知物と前記第1の磁石との間に前記読取り幅方向にアレイ状に設けられ、出力端子を有し、前記勾配磁界内を通過する前記被検知物の磁気成分を検出することにより抵抗値が変化する複数の磁気抵抗効果素子と、この複数の磁気抵抗効果素子の出力端子からの抵抗値変化を複数の接続パッドから外部に出力すると共に前記複数の磁気抵抗効果素子を一纏めに包囲する多層基板と、この多層基板のそれぞれの接続パッドと前記磁気抵抗効果素子のそれぞれの出力端子とを電気接続する電気接続手段と、前記複数の磁気抵抗効果素子と前記電気接続手段とを覆う樹脂とを備え、前記磁気抵抗効果素子は前記搬送方向の勾配磁界の磁界強度が零点付近の弱磁界強度領域であると共に前記対向方向の勾配磁界の磁界強度が強磁界強度領域である領域に設けられ、前記被検知物が前記対向方向の勾配磁界の磁界強度の強磁界強度領域を通過する磁気センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−122983(P2012−122983A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109627(P2011−109627)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】