説明

磁気ディスク基板用洗浄剤

【課題】 磁気ディスク基板表面の平坦性を損ねることなく適度なエッチング性を有すると共に基板表面から脱離したパーティクルの分散性も良好であり、優れたパーティクルの除去性を実現し、製造時における歩留まり率の向上や短時間での洗浄が可能となる極めて効率的な高度洗浄を可能にする磁気ディスク用基板洗浄剤を提供する。
【解決手段】 分子内に少なくとも4個のホスホン酸基を有するキレート剤(A)を含有してなる磁気ディスク基板用洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク基板用洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク用基板の洗浄技術において、近年の磁気ディスクの高記録密度化に伴い、製造時における基板上に残存する微量のパーティクルや不純物が磁気ディスクの性能や歩留まりに大きく影響するため、その管理が極めて重要になってきている。特に洗浄の対象となるパーティクルがより微粒子化してきており、従来以上に更に界面へ付着し、残存しやすくなることから、高度洗浄技術の確立が急務となっている。
このため、これらのパーティクルによる汚染を防止する方法として、界面活性剤を用いて、パーティクルの除去性を向上させる方法が提案されている(特許文献−1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献−1】特開平11−43791号公報
【特許文献−2】特開2002−212597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年、磁気ディスク用基板の内、特にアルミ基板においては、基板表面に非磁性層であるNi−Pメッキを施し、その後アルミナスラリー及び/又はコロイダルシリカで研磨して鏡面仕上げする工程並びにその後必要によりにダイヤモンドスラリー等を用いて基板表面をテクスチャリングする工程があるが、その際にこれらの研磨剤や研磨屑が基板表面に強固に付着し、洗浄工程で十分に除去できないといった問題がある。これらの研磨剤や研磨屑に代表されるパーティクルは、基板表面に強固に付着しているため、これらを十分に除去するためには、基板表面を僅かにエッチングし、パーティクルを液中に分散させ、更に液中に分散したパーティクルを基板表面に再付着しないようにする必要がある。しかし、上記特許文献−1では、研磨剤に対する吸着量が5mg/m2以上、数平均分子量が100,000以上の凝集剤及び界面活性剤を含有し、10vol%水溶液の表面張力が30dyne/cm以下である洗浄剤組成物を用い、洗浄対象となる研磨剤微粒子を凝集させ、粗大化させることで再付着を防止する方法が提案されているが、粗大化した粒子が僅かに基板表面に付着した場合でも深刻な問題を引き起こす恐れがあることや、具体的な成分配合については記載されていない。また、上記特許文献−2で提案されている方法は、アニオン性界面活性剤を用いることで、パーティクルの再付着防止効果はある程度改善できるもののエッチング性がほとんど無いため、パーティクル除去性が不十分であり、洗浄性が不十分であるという問題があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、磁気ディスク基板表面の平坦性を損ねることなく適度なエッチング性を有すると共に基板表面から脱離したパーティクルの分散性も良好であり、優れたパーティクルの除去性を実現し、製造時における歩留まり率の向上や短時間での洗浄が可能となる極めて効率的な高度洗浄を可能にする磁気ディスク用基板洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決する磁気ディスク基板用洗浄剤を得るべく鋭意検討した結果、洗浄剤中に特定のキレート剤を含有させることにより、パーティクル除去性が著しく向上することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、分子内に少なくとも4個のホスホン酸基を有するキレート剤(A)を含有してなる磁気ディスク基板用洗浄剤、該磁気ディスク基板用洗浄剤を含有し、有効成分濃度が0.01〜15重量%である磁気ディスク基板用洗浄液、該洗浄液を用いて磁気ディスク基板を洗浄する磁気ディスク基板の洗浄方法及び該洗浄方法で磁気ディスク基板を洗浄する工程を含む磁気ディスク基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗浄剤は、磁気ディスクの製造工程において問題となる微細なパーティクルの洗浄性に優れ、基板にダメージを与えることなく短時間かつ効率的な洗浄ができるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の洗浄剤に用いる分子内に少なくとも4個のホスホン酸基を有するキレート剤(A)としては、分子内に4個のホスホン酸基を有する低分子化合物(A−1){エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、シス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)及びグリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)等};分子内に5個のホスホン酸基を有する低分子化合物(A−2){ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)、3,3’−ジアミノジプロピルアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)等}; 分子内に6個のホスホン酸基を有する低分子化合物(A−3){トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリス(2−アミノエチル)アミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリス(2−アミノプロピル)アミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)等};分子内に7個以上のホスホン酸基を有する低分子化合物(A−4){テトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)(塩)、ペンタエチレンヘキサミンオクタ(メチレンホスホン酸)(塩)及びヘキサメチレンテトラミンオクタ(メチレンホスホン酸)(塩)等}等が挙げられる。
【0010】
これらの中で、Ni−Pメッキを施した基板やガラス基板の平坦性を損ねることなく適度なエッチング性を有することで微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮し、また、すすぎ時のリンス性に優れるといった観点から、好ましいのは(A−1)、(A−2)及び(A−3)、更に好ましいのはエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、シス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)及びトリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、特に好ましいのはエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)及びジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)である。
【0011】
キレート剤(A)が塩を形成する場合、その塩としては、特に限定は無いが、例えば、上記(A)として例示した酸の1級アミン(メチルアミン、エチルアミン及びブチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン並びにグアニジン等)塩、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等のジアルキルアミン並びにジエタノールアミン等)塩、3級アミン{トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等のトリアルキルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン並びに1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(以下、DABCOと略記)等}塩、アミジン{1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(以下、DBUと略記)及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(以下、DBNと略記)、1H−イミダゾール、2−メチル−1H−イミダゾール、2−エチル−1H−イミダゾール、4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、2−メチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、1,4,5,6−テトラヒドロ−ピリミジン、1,6(4)−ジヒドロピリミジン等}塩、アルカリ金属(ナトリウムカチオン及びカリウムカチオン等)塩、アンモニウム塩及び第4級アンモニウム(テトラアルキルアンモニウム等)塩が挙げられる。
【0012】
本発明のキレート剤(A)は単独で用いても、2種以上併用してもよい。また、(A)は、分子内に4個以上のホスホン酸基を有することで、洗浄した後のすすぎ時のリンス性が非常に優れるといった特長も有する。
【0013】
本発明の洗浄剤は、洗浄性の観点から、上記キレート剤(A)の他に、界面活性剤(B)を含有することが好ましい。(B)を含有するとパーティクルの再付着防止性等の洗浄性が更に向上する。
【0014】
(B)としては、非イオン性界面活性剤(B−1)、アニオン性界面活性剤(B−2)、カチオン性界面活性剤(B−3)及び両性界面活性剤(B−4)が挙げられる。
【0015】
非イオン性界面活性剤(B−1)としては、アルキレンオキサイド[エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド及び1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレンオキサイド等:以下AOと略記]付加型非イオン性界面活性剤(B−1a)及び多価アルコール型非イオン界面活性剤(B−1b)等が挙げられる。
【0016】
(B−1a)としては、高級アルコール(炭素数8〜18)AO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、アルキル(炭素数1〜12)フェノールAO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、脂肪酸(炭素数8〜18)AO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、脂肪族アミン(炭素数6〜24)のAO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、ポリプロピレングリコール(水酸基価に基づく平均分子量200〜6,000)AO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜500;例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)、ポリオキシエチレン(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)アルキル(炭素数1〜20)アリルエーテル並びにソルビタンモノラウレートAO付加物(付加モル数1〜30)及びソルビタンモノオレートAO付加物(付加モル数1〜30)等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステルAO付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等が挙げられる。
【0017】
(B−1b)としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレート等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル並びにラウリン酸モノエタノールアミド及びラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0018】
(B−1)の内、洗浄性の観点から、好ましいのは(B−1a)であり、更に好ましいのは高級アルコール(炭素数10〜16)AO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数2〜20)、アルキル(炭素数1〜12)フェノールAO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数2〜20)、脂肪族アミン(炭素数8〜18)のAO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数2〜20)及びポリプロピレングリコール(水酸基価に基づく平均分子量200〜6,000)エチレンオキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜500)である。
【0019】
アニオン性界面活性剤(B−2)としては、高分子型アニオン性界面活性剤(B−2a)及び低分子型アニオン性界面活性剤(B−2b)が挙げられる。
【0020】
高分子型アニオン性界面活性剤(B−2a)としては、スルホン酸(塩)基、硫酸エステル(塩)基、ホスホン酸(塩)基、リン酸エステル(塩)基及びカルボン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基と、メチレン基以外の1種又は2種以上の繰り返し単位を分子内に2個以上有し、重量平均分子量(以下、Mwと略記)が300〜800,000であるか又は縮合度が2以上であるアニオン性界面活性剤が挙げられる。
本発明におけるMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)によって、ポリエチレンオキサイドを基準物質として40℃で測定される。例えば、装置本体:HLC−8120(東ソー株式会社製)、カラム:東ソー株式会社製TSKgel α6000、G3000 PWXL、検出器:装置本体内蔵の示差屈折計検出器、溶離液:0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)、溶離液流量:1.0ml/分、カラム温度:40℃、試料:0.25%の溶離液溶液、注入量:200μl、標準物質:東ソー(株)製TSK TANDARD POLYETHYLENE OXIDE、データ処理ソフト:GPC−8020modelII(東ソー株式会社製)等の機器及び条件で測定される。
上記及び以下において、特に規定しない限り、%は重量%を表す。
(B−2a)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0021】
(B−2a−1)スルホン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/アクリルアミド共重合体及び2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体等の重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアニリンスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の縮合物並びにこれらの塩等;
【0022】
(B−2a−2)硫酸エステル(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル}、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}の硫酸エステル化物、ポリ{(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル}及び(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体等の重合体、セルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースの硫酸エステル化物等のセルロース誘導体並びにこれらの塩等;
【0023】
(B−2a−3)ホスホン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸}及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸共重合体等の重合体、ナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアントラセンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアニリンホスホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の縮合物並びにこれらの塩等;
【0024】
(B−2a−4)リン酸エステル(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル}、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}のリン酸エステル化物、ポリ{(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル}及び(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル/アクリル酸共重合体等の重合体、セルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースのリン酸エステル化物等のセルロース誘導体並びにこれらの塩等;
【0025】
(B−2a−5)カルボン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−フマル酸共重合体、(メタ)アクリル酸/酢酸ビニル共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体及びポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}のカルボキシメチル化物等の重合体、安息香酸ホルムアルデヒド縮合物及び安息香酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の縮合物、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース及びカルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにこれらの塩等;が挙げられる。
【0026】
(B−2a)が塩を形成する場合の塩としては、特に限定は無いが、例えば、上記キレート剤(A)の塩として例示したものと同様のカウンターカチオンを有する塩が挙げられる。これらの塩の中で、基板への金属汚染防止の観点から、好ましいのは1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩、アミジン塩、アンモニウム塩及び第4級アンモニウム塩であり、特に好ましいのは3級アミン塩、アミジン塩及び第4級アンモニウム塩である。
【0027】
(B−2a)が重合体又はセルロース誘導体の場合、そのMwは、パーティクルの再付着防止性及び低泡性の観点等から、通常300〜800,000、好ましくは600〜400,000、更に好ましくは1,000〜80,000、特に好ましくは2,000〜40,000である。
また、(B−2a)が縮合物の場合、その縮合度は、パーティクルの再付着防止性及び低泡性の観点等から、通常2〜200、更に好ましくは3〜100、特に好ましくは3〜50である。
【0028】
低分子型アニオン性界面活性剤(B−2b)としては、分子内にメチレン基以外の繰り返し単位を有しないスルホン酸系界面活性剤(B−2b−1)、硫酸エステル系界面活性剤(B−2b−2)、脂肪酸系界面活性剤(B−2b−3)及びリン酸エステル系界面活性剤(B−2b−4)等が挙げられる。
【0029】
スルホン酸系界面活性剤(B−2b−1)としては、炭素数6〜24のアルコールのスルホコハク酸モノ又はジエステル(塩)、炭素数8〜24のα−オレフィンのスルホン酸化物(塩)、炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び石油スルホネート(塩)等が挙げられる。
【0030】
硫酸エステル系界面活性剤(B−2b−2)としては、炭素数8〜18の脂肪族アルコールの硫酸エステル(塩)、炭素数8〜18の脂肪族アルコールのAO1〜10モル付加物の硫酸エステル(塩)、硫酸化油(塩)、硫酸化脂肪酸エステル(塩)及び硫酸化オレフィン(塩)等が挙げられる。
【0031】
脂肪酸系界面活性剤(B−2b−3)としては、炭素数8〜18の脂肪酸(塩)及び炭素数8〜18の脂肪族アルコールのエーテルカルボン酸(塩)等が挙げられる。
【0032】
リン酸エステル系界面活性剤(B−2b−4)としては、炭素数8〜24の高級アルコールの燐酸モノ又はジエステル(塩)及び炭素数8〜24の高級アルコールのAO付加物の燐酸モノ又はジエステル(塩)等が挙げられる。
【0033】
(B−2b−1)、(B−2b−2)、(B−2b−3)及び(B−2b−4)が塩を形成する場合の塩としては、特に限定は無いが、例えば、上記キレート剤(A)の塩として例示したものと同様のカウンターカチオンを有する塩が挙げられる。
【0034】
アニオン性界面活性剤(B−2)の内好ましいのは、再付着防止性の観点から高分子型アニオン性界面活性剤(B−2a)であり、高分子型アニオン性界面活性剤(B−2a)を使用する場合は、更に必要により低分子型スルホン酸系界面活性剤(B−2b−1)、硫酸エステル系界面活性剤(B−2b−2)及び脂肪酸系界面活性剤(B−2b−3)から選ばれる1種以上を併用してもよい。
【0035】
カチオン性界面活性剤(B−3)としては、4級アンモニウム塩型の界面活性剤(B−3a){例えば、アルキル(炭素数1〜30)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(炭素数1〜30)ジメチルアンモニウム塩、窒素環含有第4級アンモニウム塩、ポリ(付加モル数2〜15)オキシアルキレン(炭素数2〜4)鎖含有第4級アンモニウム塩及びアルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜10)ジアルキル(炭素数1〜4)メチルアンモニウム塩}及びアミン系界面活性剤(B−3b){例えば、炭素数3〜90の脂肪族3級アミン、炭素数3〜90の脂環式(含窒素ヘテロ環を含む)3級アミン及び炭素数3〜90のヒドロキシアルキル基含有3級アミンの無機酸塩又は有機酸塩}等が挙げられる。
【0036】
両性界面活性剤(B−4)としては、ベタイン型両性界面活性剤(B−4a){例えば、アルキル(炭素数1〜30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン及びスルフォベタイン型}、アミノ酸型両性界面活性剤(B−4b){例えば、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型及びアルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型]及びグリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]}及びアミノスルホン酸塩型両性界面活性剤(B−4c){例えば、アルキル(炭素数1〜30)タウリン型両性界面活性剤}等が挙げられる。
【0037】
界面活性剤(B)の内、パーティクルの再付着防止の観点から好ましいのは、非イオン性界面活性剤(B−1)、アニオン性界面活性剤(B−2)及び(B−1)と(B−2)の併用であり、更に好ましいのは(B−2)である。併用の場合の(B−1)と(B−2)の重量比率{(B−1)/(B−2)}は、洗浄性及び起泡性の観点から好ましくは、5以下、更に好ましくは0.001〜2、特に好ましくは0.01〜1.5である。
【0038】
本発明の洗浄剤は、更に、アルカリ成分(C)を含有してもよい。
アルカリ成分(C)を含有することにより、パーティクルに対する洗浄性が更に向上する。
(C)としては、一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩(C−1)、アンモニア(C−2)、炭素数1〜12の脂肪族アミン(C−3)、無機アルカリ(C−4)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
【化1】

【0040】
式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して炭素数1〜24のアルキル基又は−(R5O)r−Hで表される基であり、R5は炭素数2〜4のアルキレン基、rは1〜6の整数を表す。
炭素数1〜24のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘキコシル、ドコシル、トリコシル及びテトラコシル基等が挙げられる。
炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン、1,2−又は1,3−プロピレン及び1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレン等が挙げられる。rは、すすぎ時のリンス性の観点から、1〜3が好ましい。
【0041】
(C−1)の具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、エチルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラペンチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラヘキシルアンモニウムハイドロキサイド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムハイドロキサイド、ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムハイドロキサイド及びトリヒドロキシエチルメチルアンモニウムハイドロキサイド等が挙げられる。
【0042】
炭素数1〜12の脂肪族アミン(C−3)としては、炭素数1〜6のアルキルアミン、炭素数2〜6のアルカノールアミン、炭素数2〜5のアルキレンジアミン、環状アミン、アミジン化合物及びポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜7)ポリ(n=3〜6)アミン等が挙げられる。
【0043】
炭素数1〜6のアルキルアミンとしては、炭素数1〜6のモノアルキルアミン{メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン及びヘキシルアミン等}及び炭素数2〜6のジアルキルアミン{ジメチルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、ジエチルアミン、エチルプロピルアミン及びジイソプロピルアミン等}が挙げられる。
【0044】
炭素数2〜6のアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、 ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、N−メチル−ジエタノールアミン、モノ−n−プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリ−n−プロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール及び2−(2−アミノエトキシ)エタノール等が挙げられる。
【0045】
炭素数2〜5のアルキレンジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0046】
環状アミンとしては、ピペリジン、ピペラジン及びDABCO等が挙げられる。
アミジン化合物としては、DBU、及びDBN等が挙げられる。
ポリ(n=2〜6)アルキレンポリ(n=3〜7)アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンヘプタミン、イミノビスプロピルアミン及びビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げらる。
【0047】
無機アルカリ(C−4)としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。
【0048】
(C)の内、洗浄性の観点から、第4級アンモニウム塩(C−1)、炭素数1〜12の脂肪族アミン(C−3)及びこれらの併用が好ましく、更に好ましいのはテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、エチルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムハイドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−n−プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、DBU、DBN及びこれらの併用である。
【0049】
本発明の洗浄剤は、更に、親水性溶剤(D)を含有してもよい。親水性溶剤(D)としては、20℃における水に対する溶解度[(D)/100gH2O]が3以上、好ましくは10以上の有機溶剤が挙げられる。
(D)としては、例えば、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等);スルホン{ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン及び2,4−ジメチルスルホラン等};アミド{N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド等};ラクタム{N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン及びN−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン等};ラクトン{β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びδ−バレロラクトン等};アルコール{メタノ−ル、エタノ−ル及びイソプロパノ−ル等};グリコール及びグリコールエーテル{エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びトリエチレングリコールジエチルエーテル等};オキサゾリジノン(N−メチル−2−オキサゾリジノン及び3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン等);ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル及びメタクリルニトリル等);カーボネート(エチレンカーボネート及びプロピオンカーボネート等);ケトン(アセトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン及びジアセトンアルコール等);環状エーテル(テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン等)等が挙げられる。(D)は単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0050】
(D)の内で、洗浄性の観点等から、グリコール及びグリコールエーテルが好ましく、更に好ましいのは、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
親水性溶剤(D)と界面活性剤(B)を併用する場合、(D)と(B)の重量比率{(D)/(B)}は、すすぎ時のリンス性の観点から、好ましくは、0.1〜10、更に好ましくは、0.3〜5、特に好ましくは、0.5〜3である。
【0051】
本発明の洗浄剤は、更に水を含有しても良い。本発明の洗浄剤に用いる水としては、水道水、工業用水、地下水、蒸留水、イオン交換水及び超純水などが挙げられ、特にイオン交換水(電気伝導率0.2μS/cm以下)又は超純水(比抵抗値18MΩ・cm以上)が好ましい。
【0052】
本発明の洗浄剤は、本発明の洗浄剤の効果を損なわない範囲において、更に以下の(A)以外のキレート剤(E)、還元剤(F)、分散剤(G)、3価以上の多価アルコール(H)及びその他の添加剤(I)からなる群から選ばれる1種以上の成分を含有もしてもよい。これらの内、洗浄性の観点から好ましいのは(E)、(F)及び(H)からなる群から選ばれる1種以上である。
【0053】
(A)以外のキレート剤(E)としては、アミノポリカルボン酸(塩)(E−1){例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(TTHA)(塩)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)(塩)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(DHEDDA)(塩)、ニトリロ三酢酸(NTA)(塩)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)(塩)、β−アラニンジ酢酸(塩)、アスパラギン酸ジ酢酸(塩)、メチルグリシンジ酢酸(塩)、イミノジコハク酸(塩)、セリンジ酢酸(塩)、ヒドロキシイミノジコハク酸(塩)、ジヒドロキシエチルグリシン(塩)、アスパラギン酸(塩)及びグルタミン酸(塩)};
ヒドロキシカルボン酸(塩)(E−2){例えば、ヒドロキシ酢酸(塩)、酒石酸(塩)、クエン酸(塩)及びグルコン酸(塩)};
シクロカルボン酸(塩)(E−3){例えば、ピロメリット酸(塩)、ベンゾポリカルボン酸(塩)及びシクロペンタンテトラカルボン酸(塩)};
エーテルカルボン酸(塩)(E−4)(例えば、カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノサクシネート及び酒石酸ジサクシネート);
その他のカルボン酸(塩)(E−5){例えば、マレイン酸誘導体及びシュウ酸(塩)};
縮合リン酸(塩)(E−6){例えば、メタリン酸(塩)、トリポリリン酸(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)};等が挙げられる。
尚、これらの塩としては、上述のキレート剤(A)で例示したものが挙げられる。またこれらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの内で、洗浄性能の観点から好ましいのは、(E−1)、(E−2)及び(E−6)であり、更に好ましいのは(E−1)及び(E−6)、特に好ましいのはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(DHEDDA)(塩)、アスパラギン酸ジ酢酸(塩)、アスパラギン酸(塩)、グルタミン酸(塩)、メタリン酸(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)、最も好ましいのはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)である。
【0054】
還元剤(F)としては、有機還元剤(F−1)及び無機還元剤(F−2)が挙げられる。有機還元剤(F−1)としては、脂肪族有機還元剤(F−1a)、芳香族有機還元剤(F−1b)、その他の有機還元剤(F−1c)が挙げられる。
【0055】
脂肪族有機還元剤(F−1a)としては、炭素数6〜9のアスコルビン酸(塩)[L−アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、5,6−アルキリデン−L−アスコルビン酸{5,6−イソプロピリデン−L−アスコルビン酸、5,6−(ブタン−2−イリデン)−L−アスコルビン酸及び5,6−(ペンタン−3−イリデン)−L−アスコルビン酸等}、L−アスコルビン酸−6−カルボン酸エステル{L−アスコルビン酸−6−酢酸エステル及びL−アスコルビン酸−6−プロパン酸エステル等}、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸イソパルミネート及びこれらの塩等]が挙げられる。
【0056】
芳香族有機還元剤(F−1b)としては、炭素数6〜9の芳香族アミン(p−フェニレンジアミン及びp−アミノフェノール等)及び炭素数6〜30のフェノール化合物[3−ヒドロキシフラボン及びトコフェロール(α−、β−、γ−、δ−、ε−又はη−トコフェロール等)等の一価フェノール並びに3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ナフトレゾルシノール、ピロガロール及びフロログルシノール等のポリフェノール等]が挙げられる。
【0057】
その他の有機還元剤(F−1c)としては、リン系還元剤 (トリス‐2‐カルボキシエチルホスフィン等)、アルデヒド(ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド等)、ボラン系錯体(ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体及びボラン−トリメチルアミン錯体等)、チオール系還元剤(システイン及びアミノエタンチオール等)及びヒドロキシルアミン系還元剤(ヒドロキシルアミン及びジエチルヒドロキシルアミン等)等が挙げられる。
【0058】
無機還元剤(F−2)としては、亜硫酸(塩)、チオ硫酸(塩)、亜リン酸(塩)、次亜リン酸(塩)、硫酸第1鉄、塩化第2スズ、水酸化シアノホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウム等が含まれる。
還元剤(F)が塩を形成する場合の塩としては、上記キレート剤(A)の塩として例示したものと同様のカウンターカチオンを有する塩が挙げられる。
【0059】
これらの還元剤(F)の内、洗浄剤のエッチング性コントロールの観点から、有機還元剤(F−1)が好ましく、更に好ましいのは脂肪族有機還元剤(F−1a)及びその他の有機還元剤(F−1c)の内のチオール系還元剤、特に好ましいのはアスコルビン酸(塩)及びシステインである。
また、(F)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
分散剤(G)としては、従来から微粒子の分散剤として使用されているもの、例えば、多糖類及びその誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グァーガム、カチオン化グァーガム、キサンタンガム、アルギン酸塩及びカチオン化デンプン等)及びポバール及びリン酸エステル{フィチン酸、ジ(ポリオキシエチレン)アルキルエーテルリン酸及びトリ(ポリオキシエチレン)アルキルエーテルリン酸等}が挙げられ、上記の(B−2a)も分散作用があるが、本発明においては分散剤(G)には含めない。
また、(G)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
3価以上の多価アルコール(H)としては、
(H−1)脂肪族多価アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等);
(H−2)(H−1)の脱水縮合物(ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン及びペンタグリセリン等);
(H−3)糖類、例えば単糖類{ペントース(アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース及びリブロース等)、ヘキソース(グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース及びタガトース等)、ヘプトース(セドヘプツロース等)等}、二糖類(トレハロース、サッカロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース及びラクトース等)及び三糖類(ラフィノース及びマルトトリオース等);
(H−4)糖アルコール(アラビトール、アドニトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等);
(H−5)トリスフェノール(トリスフェノールPA等);
並びにこれらのAO付加物(付加モル数1〜7モル)等が挙げられる。
また、(H)は単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0062】
(H)の内、基板の腐食防止効果の観点から、(H−1)、(H−2)、(H−3)及び(H−4)が好ましく、更に好ましいのはグリセリン、サッカロース及びソルビトールである。
【0063】
その他の添加剤(I)としては、酸化防止剤、防錆剤、pH調整剤、緩衝剤、消泡剤、防腐剤及びハイドロトロープ剤等が挙げられる。
【0064】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤{2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール及び2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール等}、アミン系酸化防止剤{モノオクチルジフェニルアミン及びモノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン;4,4’−ジブチルジフェニルアミン及び4,4’−ジペンチルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン;テトラブチルジフェニルアミン及びテトラヘキシルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン;α−ナフチルアミン及びフェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン等}、硫黄系化合物{フェノチアジン、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリルチオプロピオネート)及びビス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド等}並びにリン系酸化防止剤{ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスフィト、ジフェニルジイソオクチルホスファイト及びトリフェニルホスファイト等}等が挙げられる。
【0065】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、炭素数2〜10の炭化水素基を有するベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、炭素数2〜20炭化水素基を有するイミダゾール、炭素数2〜20炭化水素基を有するチアゾール及び2−メルカプトベンゾチアゾール等の含窒素有機防錆剤;ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物及びドデセニルコハク酸アミド等のアルキル又はアルケニルコハク酸;ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート及びペンタエリスリトールモノオレエート等の多価アルコール部分エステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸及びスルファミン酸等)並びに上記例示した無機アルカリ(C−4)等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
緩衝剤としては、緩衝作用を有する有機酸、無機酸及びこれらの塩が挙げられる。有機酸としては、酢酸、ギ酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸、フマル酸、レブリン酸、吉草酸、マレイン酸及びマンデル酸等が挙げられ、無機酸としては、リン酸及びホウ酸等が挙げられる。また、これらの酸の塩としては、上述のキレート剤(A)で例示した塩と同様のものが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
消泡剤としては、シリコーン消泡剤{ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン及びポリエーテルシリコーン等を構成成分とする消泡剤等}等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
防腐剤としては、トリアジン誘導体{ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン等}、イソチアゾリン誘導体{1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等}、ピリジン誘導体{ピリジン2−ピリジンチオール−1−オキサイド(塩)等}、モルホリン誘導体{4−(2−ニトロブチル)モルホリン及び4,4−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)−ジモルホリン等}、ベンズイミダゾール誘導体{2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール等}並びにその他の防腐剤[ポリ{オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレン}ジクロライド、p−クロロ−m−キシレノール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、アセトキシジメチルジオキサン、イソプロピルメチルフェノール、テトラクロロイソフタロニトリル、ビスブロモアセトキシエタン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート及び2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール等]等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
ハイドロトロープ剤としては、トルエンスルホン酸(塩)、キシレンスルホン酸(塩)、クメンスルホン酸(塩)及び安息香酸(塩)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。ハイドロトロープ剤が塩を形成する場合の塩としては、上記キレート剤(A)の塩として例示したものと同様のカウンターカチオンを有する塩が挙げられる。
【0071】
本発明の洗浄剤のpH(25℃)は、後述する洗浄液として使用される場合の有効成分濃度において、洗浄性と洗浄後基板の平坦性の観点から、Ni−Pメッキを施した磁気ディスク用アルミ基板に対しては、好ましくは2〜13であり、特に好ましくは6〜11、最も好ましくは8〜10であり、磁気ディスク用ガラス基板に対しては、好ましくは2〜14であり、特に好ましくは7〜13、最も好ましくは10〜12である。pHがこの範囲にあると、Ni−Pメッキを施したアルミ基板やガラス基板の平坦性を損ねることなく、適度なエッチング性を有し、また微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮し易くなる。尚、本発明における有効成分とは水以外の成分をいう。
【0072】
本発明の洗浄剤におけるキレート剤(A)及び任意成分(B)〜(I)の、洗浄剤の重量に基づく含有量は以下の通りである。
【0073】
キレート剤(A)の含有量は、洗浄性および平坦性の観点から、通常0.1〜100%、好ましくは0.2〜50%、更に好ましくは0.5〜20%、特に好ましくは1〜10%である。
界面活性剤(B)を含有する場合、その含有量は、洗浄性の観点から、0.1〜50%が好ましく、更に好ましくは0.5〜10%特に好ましくは1〜5%である。
アルカリ成分(C)を含有する場合、その含有量は、洗浄性の観点等から、好ましくは0.1〜20%、更に好ましくは0.2〜15%、特に好ましくは0.5〜10%である。
親水性溶剤(D)を含有する場合、その含有量は、0.1〜80%、更に好ましくは0.5〜50%、特に好ましくは1〜30%である。
【0074】
(A)以外のキレート剤(E)を含有する場合、その含有量は、洗浄性能の観点から、好ましくは0.01〜10%、更に好ましくは0.05〜5%、特に好ましくは0.1〜3%である。
還元剤(F)を含有する場合、その含有量は、基板のエッチング性のコントロールの観点から、0.01〜10%が好ましく、更に好ましくは0.02〜8%、特に好ましくは0.1〜5%である。
分散剤(G)を含有する場合、その含有量は、洗浄性能の観点から、好ましくは0.1〜10%、更に好ましくは0.5〜8%、特に好ましくは1〜5%である。
3価以上の多価アルコール(H)を含有する場合、その含有量は、洗浄性能の観点から、好ましくは0.1〜30%、更に好ましくは0.5〜20%、特に好ましくは1〜10%である。
【0075】
その他の添加剤(I)を含有する場合、それぞれの添加剤の添加量は、酸化防止剤、キレート剤、防錆剤、pH調整剤、緩衝剤、還元剤及びハイドロトロープ剤が、好ましくは0.1〜10%、更に好ましくは0.5〜8%、特に好ましくは1〜5%である。また消泡剤の添加量は好ましくは0.01〜2%、更に好ましくは0.02〜1.5%、特に好ましくは0.1〜1%である。また、その他の添加剤(I)の合計の含有量は、0.01〜20%、更に好ましくは0.02〜10%、特に好ましくは0.1〜8%である。
【0076】
尚、前記の任意成分(E)〜(I)の間で、組成が同一で重複する場合は、それぞれの任意成分が該当する添加効果を奏する量を他の任意成分としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の任意成分としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0077】
本発明の洗浄剤の有効成分の濃度は、使用時の作業性や運搬効率の観点から、通常0.1〜100%、好ましくは1〜90%、更に好ましくは2〜80%、特に好ましくは5〜75%である。従って、本発明の洗浄剤中の水の含有量は、通常0〜99.9%、好ましくは10〜99%、更に好ましくは20〜98、特に好ましくは25〜95%である。
【0078】
本発明の洗浄剤中のNa、K、Ca、Fe,Cu、Al、Pb、Ni及びZn原子の各金属含有量は、磁気ディスク用基板の金属汚染防止性の観点から、洗浄剤の有効成分の重量に基づいて20ppm以下が好ましく、更に好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下である。
これらの金属原子の含有量の測定方法としては、公知の方法、例えば原子吸光法、ICP発光分析法、ICP質量分析法が利用できる。
【0079】
本発明の磁気ディスク基板用洗浄液は、上記の洗浄剤を必要により水、特にイオン交換水(電気伝導率0.2μS/cm以下)又は超純水(比抵抗値18MΩ・cm以上)で希釈して洗浄工程で使用する洗浄液であり、有効成分濃度が0.01〜15%、好ましくは0.05〜10%である磁気ディスク基板用洗浄液である。尚、前記洗浄剤の有効成分濃度が15%以下である場合は、そのままの濃度で洗浄液として使用してもよい。
【0080】
洗浄液の電気伝導率(mS/cm)は、パーティクルの再付着防止性及びエッチング性の観点から、好ましくは0.2〜10.0、より好ましくは0.5〜5.0、特に好ましくは0.7〜3.5である。
【0081】
洗浄液の磁気ディスク基板に対する接触角(25℃)は、通常30°以下であり、好ましくは1〜15°、更に好ましくは1〜8°である。接触角がこの範囲にあると、洗浄性の点から好ましい。尚、本発明における接触角は、例えば、全自動接触角計[協和界面科学(株)社製、PD−W]を用いて測定することができる。
【0082】
本発明の洗浄剤を必要により希釈して得られる上記洗浄液は、磁気ディスク用基板の洗浄に好適に使用でき、磁気ディスク用アルミ基板及びガラス基板に好適に使用できる。特にNi−Pメッキを施したアルミ基板に対して優れた洗浄性を発揮することができる。
【0083】
本発明の磁気ディスク基板の洗浄方法は、上記の洗浄液中で磁気ディスク基板を洗浄する洗浄方法である。
洗浄対象物(汚れ)は、油分(クーラント等)、人体からの汚れ(指紋、皮脂等)、可塑剤(ジオクチルフタレート等)、有機パーティクル等の有機物、無機パーティクル{研磨剤(例えば、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化セリウム、ダイヤモンド等)、研磨屑等}等の無機物が挙げられる。
また、本発明の洗浄方法は、磁気ディスク基板がNi−Pメッキを施したアルミ基板であると効果が特に発揮されやすい。
【0084】
本発明の洗浄方法は、パーティクルの除去性に極めて優れていることから、磁気ディスクの製造工程の内、研磨剤又は研磨屑等のパーティクルが発生する工程や高度な清浄度が要求される工程で行うことが好ましく、研削工程後の洗浄工程、研磨工程後の洗浄工程、テクスチャリング工程後の洗浄工程及び/又は成膜工程(例えば、下地層、磁性層及び保護層等をスパッタリング装置により成膜する工程)前の洗浄工程での洗浄方法として適用することが好ましい。
前記研磨工程が、研磨剤としてアルミナ及び/又はシリカを用いる研磨工程である場合や前記テクスチャリング工程でダイヤモンドを用いる場合に、本発明の洗浄方法の効果が特に発揮されやすい。
【0085】
本発明の洗浄方法における洗浄方式としては、超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、浸漬洗浄、浸漬揺動洗浄及び枚葉式洗浄からなる群から選ばれる少なくとも1種の洗浄方式が挙げられ、いずれの方式であっても本発明の洗浄方法の効果が発揮されやすい。
【0086】
本発明の洗浄液を使用する際の洗浄温度(℃)としては、洗浄性の観点から、10〜80℃が好ましく、更に好ましくは15〜70、特に好ましくは20〜60である。
【0087】
本発明の洗浄方法で洗浄された磁気ディスク基板に対する水の接触角(25℃)は、好ましくは20°以下であり、更に好ましくは1〜15°、特に好ましくは5〜10°である。接触角がこの範囲にあると、磁性膜等をスパッタにより形成する場合に均一な膜が形成でき、磁気特性の点から好ましい。
【0088】
本発明の洗浄方法で洗浄した後の磁気ディスク基板表面の表面粗さ(Ra)は、好ましくは0.5nm以下、更に好ましくは0.01〜0.3nm、特に好ましくは0.05〜0.25nmである。基板の表面粗さ(Ra)がこの範囲にあると、磁気ディスク基板の記録密度の向上の観点から好ましい。
尚、磁気ディスク基板表面の表面粗さ(Ra)は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、E−sweepを用いて下記の条件により測定できる。
測定モード :DFM(タッピングモード)
スキャンエリア:1μm×1μm
走査線数 :256本(Y方向スキャン)
補正 :X,Y方向のフラット補正あり
【0089】
本発明の磁気ディスク基板の製造方法は、前記洗浄方法で磁気ディスク基板を洗浄する工程を含む磁気ディスク基板の製造方法である。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に限定がない限り以下において部は重量部を示す。ポリマーのGPCによる分子量の測定条件は前述の方法により測定した。尚、以下において超純水は比抵抗値が18MΩ・cm以上のものを使用した。
【0091】
[製造例1]
撹拌装置及び温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコールを200部(1.1モル部)、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(以下、TMAHと略記)の25%水溶液を10部(0.027モル部)を仕込み、100℃、4kPa以下の減圧下で30分間脱水した。エチレンオキサイド(以下、EOと略記)430部(9.8モル部)を、反応温度を100℃に制御しながら、3時間かけて滴下した後、100℃で3時間熟成した。更に、2.6kPa以下の減圧下に、150℃で2時間撹拌して、残存するTMAHを分解して除去し、非イオン性界面活性剤であるラウリルアルコールEO9モル付加物(B−1−1)630部を得た。
【0092】
[製造例2]
撹拌装置及び温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアミンを185部(1.0モル部)、25%TMAH水溶液を3.6部(0.01モル部)を仕込み、100℃、4kPa以下の減圧下で30分間脱水した。EO264部(6.0モル部)を、反応温度を100℃に制御しながら、3時間かけて滴下した後、100℃で3時間熟成した。更に、2.6kPa以下の減圧下、150℃で2時間撹拌して、残存するTMAHを分解して除去し、非イオン性界面活性剤であるラウリルアミンEO6モル付加物(B−1−2)445部を得た。
【0093】
[製造例3]
撹拌装置及び温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、クミルフェノールを212部(1.0モル部)、25%TMAH水溶液を2.9部(0.008モル部)を仕込み、100℃、4kPa以下の減圧下で30分間脱水した。EO352部(8.0モル部)を、反応温度を100℃に制御しながら、3時間かけて滴下した後、100℃で3時間熟成した。更に、2.6kPa以下の減圧下、150℃で2時間撹拌して、残存するTMAHを分解して除去し、非イオン性界面活性剤であるクミルフェノールEO8モル付加物(B−1−3)560部を得た。
【0094】
[製造例4]
温度調節及び攪拌が可能な反応容器にイソプロピルアルコール300部、超純水100部を仕込み、窒素置換後、75℃に昇温した。撹拌下で、アクリル酸の75%水溶液407部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートの15%イソプロピルアルコール溶液95部を3.5時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、75℃で5時間撹拌した後、系内が固化しないように超純水を間欠的に投入し、イソプロピルアルコールが検出できなくなるまで水とイソプロピルアルコールの混合物を留去した。得られたポリアクリル酸水溶液をDBU(約450部)でpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるポリアクリル酸DBU塩(B−2−1)の40%水溶液を得た。尚、(B−2−1)のMwは10,000であった。
【0095】
[製造例5]
温度調節及び還流が可能な攪拌付き反応容器にエチレンジクロライド100部を仕込み、攪拌下、窒素置換した後に90℃まで昇温し、エチレンジクロライドを還流させた。スチレン120部と、予め2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.7部をエチレンジクロライド20部に溶かした開始剤溶液を、それぞれ別々に6時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後更に1時間重合を行った。重合後、窒素シール下で20℃に冷却した後、温度を20℃にコントロールしながら無水硫酸105部を10時間かけて滴下し、滴下終了後更に3時間スルホン化反応させた。反応後、溶媒を留去し固化させた後、超純水345部を投入して溶解し、ポリスチレンスルホン酸水溶液を得た。得られたポリスチレンスルホン酸水溶液を25%TMAH水溶液(約400部)でpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるポリスチレンスルホン酸トリメチルアンモニウム塩(B−2−2)の40%水溶液を得た。尚、(B−2−2)のMwは、40,000、スルホン化率は97%であった。
【0096】
[製造例6]
攪拌付き反応容器にナフタレンスルホン酸21部、超純水を10部仕込み、撹拌下、系内の温度を80℃に保ちながら、37%ホルムアルデヒド8部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃に昇温して25時間反応した後、室温(約25℃)まで冷却して水浴中、25℃に調整しながらDBUを徐々に加え、pH6.5に調製した(DBU約15部使用)。超純水を加えて固形分を40%に調整して、アニオン性界面活性剤であるナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のDBU塩(B−2−3)の40%水溶液を得た。尚、(B−2−3)のMwは、5,000であった。
【0097】
[製造例7]
アクリル酸の75%水溶液407部の代わりに、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸227部、アクリル酸78部及び超純水131部からなる70%モノマー水溶液436部を使用したこと以外は、製造例4と同様に重合して、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/アクリル酸共重合体水溶液を得た。得られたアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/アクリル酸共重合体水溶液に、温度をを25℃に制御しながらDBUを徐々に加えてpH6.5に調製して(DBU約280部使用)超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/アクリル酸共重合体DBU塩(B−2−4)の40%水溶液を得た。尚、(B−2−4)のMwは8,000であった。
【0098】
[製造例8]
アクリル酸の75%水溶液407部の代わりに、メタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム塩の50%水溶液[三洋化成(株)社製、エレミノールRS−30]320部及びアクリル酸145部からなる65%モノマー水溶液465部を使用したこと以外は、製造例4と同様に重合して、メタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム塩/アクリル酸共重合体水溶液を得た。得られた共重合体水溶液を固形分濃度が10%になるように超純水で希釈した後、陽イオン交換樹脂「アンバーライトIR−120B」(オルガノ株式会社製)を用いて、溶液中のナトリウムイオンが1ppm以下になるまで除去した。尚、ナトリウム含量はICP発光分析装置(VARIAN社製、Varian730−ES)を用いて測定した。得られたメタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体水溶液に、温度を25℃に制御しながら25%TMAH水溶液(約600部)を徐々に加えてpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるメタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体テトラメチルアンモニウム塩(B−2−5)の10%水溶液を得た。尚、(B−2−5)のMwは9,000であった。
【0099】
[製造例9]
オクチルベンゼンスルホン酸136部、超純水245部をビーカーに仕込み、均一になるまで溶解した。得られたオクチルベンゼンスルホン酸水溶液にDBN(約65部)を徐々に加えてpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるオクチルベンゼンスルホン酸DBN塩(B−2−6)の40%水溶液を得た。
【0100】
[製造例10]
オクタン酸144部、超純水300部をビーカーに仕込み、均一になるまで溶解した。得られたオクタン酸水溶液にジエタノールアミン(約105部)を徐々に加えてpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるオクタン酸ジエタノールアミン塩(B−2−7)の40%水溶液を得た。
【0101】
[実施例1〜16]、[比較例1〜7]
表1又は表2に記載の各配合成分を、表1又は表2に記載の配合部数(但し、表1及び表2では有効成分換算で表示)用いて、ビーカー中で室温(約25℃)下、均一撹拌・混合して実施例1〜16及び比較例1〜7の洗浄剤を作製した。
得られた洗浄剤を超純水で10倍希釈して洗浄液として、以下の方法でpH、洗浄性−1、洗浄性−2、表面平坦性−1、溶出したNi含量(エッチング性)、洗浄後基板の接触角−1、洗浄液の接触角−1及びリンス性評価−1を測定又は評価した結果を表1又は表2に示す。
【0102】
[実施例17〜25]、[比較例8〜11]
表3に記載の各配合成分を、表3に記載の配合部数(但し、表3では有効成分換算で表示)用いて、ビーカー中で室温(約25℃)下、均一撹拌・混合して実施例17〜25及び比較例8〜11の洗浄剤を作製した。
得られた洗浄剤を超純水で10倍希釈して洗浄液として、以下の方法でpH、洗浄性−3、洗浄性−4、表面平坦性−2、洗浄後基板の接触角−2、洗浄液の接触角−2及びリンス性評価−2を測定又は評価した結果を表3に示す。
【0103】
尚、表1〜表3中のキレート剤(A)、非イオン性界面活性剤(B−1)、アルカリ成分(C)、親水性溶剤(D)及び(A)以外のキレート剤(E)の略号は下記の通りである。
EDTMP:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
CDTMP:シス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
DTPMP:ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)
PE74:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール{ニューポールPE−74、三洋化成工業(株)製}
TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド
TEA:トリエタノールアミン
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
DEGM:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
TEGM:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸
NTA:ニトリロ三酢酸
HEDP:1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸
NTMP:ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)
また、表1〜表3に記載の超純水の量は、製造例1〜10で得た界面活性剤(B−1−1)〜(B−2−7)の水溶液中の超純水を含む量である。
【0104】
<pHの測定方法>
洗浄液のpHを25℃でpHメーター(堀場製作所社製、M−12)で測定した。
【0105】
<洗浄性−1の評価方法>
研磨剤として市販のコロイダルシリカスラリー(粒径約30nm)及び研磨布を用いて、3.5インチのNi−Pメッキされた磁気ディスク用基板を研磨した後、超純水で表面をリンス、窒素でブローすることにより、汚染基板を作製した。洗浄液1,000部をガラス製ビーカーにとり、作製した汚染基板を浸漬し、超音波洗浄機(200kHz)内で、30℃、5分間の洗浄を行った。洗浄後、基板を取り出し、超純水で十分にリンスを行った後、窒素ガスでブローして乾燥し、下記の評価基準に従い、基板表面の洗浄性を表面観察装置(VISION PSYTEC社製、VMX−4100Napier)で評価した。尚、本評価は大気からの汚染を防ぐため、クラス1,00(HED−STD−209D、米国連邦規格、1988年)のクリーンルーム内で実施した。
◎:ほぼ完全に除去できている。
○:ほとんど洗浄できている。
△:若干粒子が残留している。
×:ほとんど洗浄できていない。
【0106】
<洗浄性−2の評価方法>
研磨剤として市販のアルミナスラリー(粒径約0.4μm)を用いた以外は、洗浄性−1と同様にして評価した。
【0107】
<洗浄性−3の評価方法>
研磨剤として酸化セリウムスラリー(粒径約1μm)を用い、また磁気ディスク用基板として2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板を用いた以外は洗浄性−1と同様にして評価した。
【0108】
<洗浄性−4の評価方法>
磁気ディスク用基板として2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板を用いた以外は洗浄性−1と同様にして評価した。
【0109】
<表面平坦性−1の評価方法>
20mlのガラス製容器に洗浄液を10ml採り、30℃に温調した後、Ni−Pメッキされた磁気ディスク用基板を2cm×2cmの大きさにカットした基板を入れ、30℃で20分間浸漬した後、ピンセットを用いて基板を取り出し、超純水で十分にリンスして洗浄液を除去した後、室温下(25℃)、窒素でブローして基板を乾燥した。乾燥した基板表面の表面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、E−Sweep)を用いて測定し、表面平坦性を評価した。尚、試験前の基板の表面粗さ(Ra)は、0.12nmであった。
【0110】
<表面平坦性−2の評価方法>
基板として磁気ディスク用ガラス基板を用いた以外は、表面平坦性−2と同様に評価した。尚、試験前の基板の表面粗さ(Ra)は、0.10nmであった。
【0111】
<溶出したNi含量(エッチング性)の評価方法>
ポリプロピレン製容器に洗浄液100部を採り、その中に3.5インチのNi−Pメッキされた磁気ディスク用基板1枚を入れ、上部をポリ塩化ビニリデン製薄膜フィルムでラッピングして水分が蒸発しないように密閉し、23℃に温調された室内で12時間静置した。静置後、洗浄液を採取し、ICP発光分析装置(VARIAN社製、Varian730−ES)で洗浄液中のNi含量を測定した。尚、予め試験前の洗浄液についても同様にNi含量を測定しておき、その差を求めることで試験中に溶出したNi含量(ppm)を求めた。この溶出したNi含量が多いほど、エッチング性が高い。
【0112】
<洗浄後基板の接触角−1の測定方法>
上記洗浄性−1で評価した直後の基板について全自動接触角計[協和界面科学(株)社製、PD−W]を用いて、水に対する接触角(25℃、1秒後)を測定した。
【0113】
<洗浄後基板の接触角−2の測定方法>
上記洗浄性−3で評価した直後の基板について全自動接触角計[協和界面科学(株)社製、PD−W]を用いて、水に対する接触角(25℃、1秒後)を測定した。
【0114】
<洗浄液の接触角−1の測定方法>
3.5インチのNi−Pメッキされた磁気ディスク用基板に対する各洗浄液の接触角(25℃、1秒後)を、全自動接触角計[協和界面科学(株)社製、PD−W]を用いて測定した。
【0115】
<洗浄液の接触角−2の測定方法>
2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板に対する各洗浄液の接触角(25℃、1秒後)を、全自動接触角計[協和界面科学(株)社製、PD−W]を用いて測定した。
【0116】
<リンス性評価−1の評価方法>
ガラス製ビーカーに洗浄液100部を採り、その中に3.5インチのNi−Pメッキされた磁気ディスク用基板1枚を入れ、5分間静置した。静置後、基板を取り出し、自然乾燥した。乾燥した基板を、予めガラス製ビーカーに採っておいた超純水1,000部に5秒間浸積した後に直ちに取り出し自然乾燥した。下記の評価基準に従い、基板表面の洗浄剤残渣を表面観察装置(VISION PSYTEC社製、VMX−4100Napier)で評価した。尚、本評価は大気からの汚染を防ぐため、クラス100(HED−STD−209D、米国連邦規格、1988年)のクリーンルーム内で実施した。また洗浄液、超純水は予め23℃に温調したものを用いた。
◎:ほとんど残留物無し。
○:ほとんど残留物ないが、微かに残留物が認められる。。
△:僅かに残留物がある。
×:残留物多い。
【0117】
<リンス性評価−2の評価方法>
基板として2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板を用いた以外は、リンス性評価−1と同様に評価した。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
表1〜表3から、本発明の洗浄剤は、洗浄後の磁気ディスク用基板表面に付着するパーティクルの除去性が極めて優れることがわる。また、適度なエッチング性を有するが、洗浄後の基板表面の平坦性にほとんど変化が無いことから、洗浄時に基板表面荒れを引き起こす心配がなく、基板表面に強固に付着したパーティクルについても非常に有効であることがわる。更に、本発明の洗浄剤は、洗浄後の基板表面の水の接触角を低くできることから、極めて清浄な基板表面を実現できるといった効果やリンス性が高いといった効果も奏することがわる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の洗浄剤は、磁気ディスク基板上のパーティクルの洗浄性に優れているため、磁気ディスク基板(アルミ基板及びガラス基板等)を製造する工程の洗浄剤として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に少なくとも4個のホスホン酸基を有するキレート剤(A)を含有してなる磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項2】
更に、界面活性剤(B)を含有してなる請求項1記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項3】
前記界面活性剤(B)が、非イオン性界面活性剤及び/又は高分子型アニオン性界面活性剤である請求項2記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項4】
更に、アルカリ成分(C)及び/又は親水性溶剤(D)を含有してなる請求項1〜3のいずれか記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の磁気ディスク基板用洗浄剤を含有し、有効成分濃度が0.01〜15重量%である磁気ディスク基板用洗浄液。
【請求項6】
請求項5記載の磁気ディスク基板用洗浄液を用いて磁気ディスク基板を洗浄する磁気ディスク基板の洗浄方法。
【請求項7】
磁気ディスク基板がNi−Pメッキを施したアルミ基板又はガラス基板である請求項6記載の磁気ディスク基板の洗浄方法。
【請求項8】
研削工程後の洗浄工程、研磨工程後の洗浄工程、テクスチャリング工程後の洗浄工程及び/又は成膜工程前の洗浄工程で磁気ディスク基板を洗浄する請求項6又は7記載の磁気ディスク基板の洗浄方法。
【請求項9】
前記研磨工程で研磨剤としてアルミナ又はシリカを用い、前記テクスチャリング工程でダイヤモンドを用いる請求項8記載の磁気ディスク基板の洗浄方法。
【請求項10】
超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、浸漬洗浄、浸漬揺動洗浄及び枚葉式洗浄からなる群から選ばれる少なくとも1種の洗浄方式を用いて行われる請求項6〜9のいずれか記載の磁気ディスク基板の洗浄方法。
【請求項11】
洗浄後の基板に対する25℃での水の接触角が、20°以下である請求項6〜10のいずれか記載の磁気ディスク基板の洗浄方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか記載の洗浄方法で磁気ディスク基板を洗浄する工程を含む磁気ディスク基板の製造方法。

【公開番号】特開2009−280802(P2009−280802A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105796(P2009−105796)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】