説明

磁気デバイス

【課題】小型、軽量でかつローコストに製造可能な、磁気素子を備えた磁気デバイスを提供する。
【解決手段】磁気デバイス10は、半導体からなる基板11と、この基板11の一面側11aに重ねて配された磁気センサ12とを有する。また、磁気センサ12に重なるように配された磁界印加手段13を備えている。磁界印加手段13は、第一絶縁層(絶縁層)14を挟んで、第一導電層15と第二導電層16とを備え、これら第一導電層15と第二導電層16とが、例えば導電材からなる連結層17によって電気的接続される。かかる構成によって、磁界印加手段13は、第一導電層15、第二導電層16および連結層17からなるコイル形状を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサを備えた磁気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コスト低減やチップ部品の削減を目的に、磁気インピーダンス素子等の誘導素子を、例えば半導体などの基板に集積化したものが提案されている。このような磁気インピーダンス素子を磁気センサとして利用する際には、インピーダンス変化の特性に起因して、磁気インピーダンス素子に対してバイアス磁界を印加することが必要である。
【0003】
磁気インピーダンス素子に対してバイアス磁界を印加する手段としては、例えば、磁気インピーダンス素子の近傍に磁石を配置することが考えられる(特許文献1)。しかし、こうした磁石によるバイアス磁界の印加は、個々の磁石によって磁界強度が一定せず、安定して一定値のバイアス磁界を印加することが困難なために、磁気センサに適用するには課題がある。
【0004】
一方、磁気インピーダンス素子に対して、一定の強度で安定してバイアス磁界を印加する手段として、磁気インピーダンス素子の近傍にスパイラル状やコイル状の導電層を形成し、この導電層に通電することによって、バイアス磁界を発生させる方法も知られている(特許文献2)。特に、コイル状に形成した導電層の巻き線中心軸に沿って磁気インピーダンス素子を配置した磁気センサは、磁気インピーダンス素子に対して強いバイアス磁界を安定して印加できる特性から、高精度な磁気センサとして好適である。
【特許文献1】特開2002−43649号公報
【特許文献2】特開2001−221838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁気インピーダンス素子に対してバイアス磁界を印加するために、磁気インピーダンス素子の周囲にコイル状の磁界印加手段を形成する場合、従来はこうしたコイルを別体で形成しておいて、磁気インピーダンス素子の周囲に配置するなどしていたため、磁気デバイス全体の外形が大きくなってしまい、磁気デバイスを搭載する機器の小型化、薄型化の障害になるといった課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高感度で、かつ小型化、軽量化とともに低コスト化も図ることが可能な、磁気素子を備えた磁気デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の磁気デバイスは、半導体からなる基板の一面側に配された磁気センサと、前記一面側にあって前記磁気センサと重なるように順に配された第一導電層、絶縁層および第二導電層とを少なくとも備え、前記第一導電層と前記第二導電層が電気的に接続されてコイル形状をなすことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の磁気デバイスは、半導体からなる基板の一面側に配された磁気センサと、前記一面側にあって前記磁気センサと重なるように配された第一導電層と、前記基板の他面側に配された第二導電層とを備え、前記第一導電層と前記第二導電層が電気的に接続されて前記磁気センサを包み込むコイル形状をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気デバイスによれば、磁気デバイスは、第一導電層、第二導電層および連結層からなるコンパクトなコイル形状の磁界印加手段を1チップで小さく形成し、かつ半導体からなる基板の一面側に重ねて磁気センサを配することによって、コイル形状を構成できるので、小型、薄型の磁気デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る磁気デバイスの一例を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明の磁気デバイス(磁気センサ)の一例を示す斜視図である。また、図2は、図1に示した磁気デバイスのA−A線における断面図である。本発明の磁気デバイス10は、半導体からなる基板11と、この基板11の一面側11aに重ねて配された磁気センサ12と、磁気センサ12に重なるように配された磁界印加手段13を備えている。
【0010】
磁界印加手段13は、第一絶縁層(絶縁層)14を挟んで、第一導電層15と第二導電層16とを備え、これら第一導電層15と第二導電層16とが、例えば導電材からなる連結層17によって電気的接続される。かかる構成によって、磁界印加手段13は、第一導電層15、第二導電層16および連結層17からなるコイル形状を構成する。
【0011】
そして、このコイル形状を構成する磁界印加手段13の両端13a,13bの間に電流を流すことによって、磁界印加手段13に磁界が発生し、隣接する磁気センサ12に対して、一方向に向いたバイアス磁界Mとして印加される。
【0012】
このような構成によって、磁気デバイス10は、第一導電層15、第二導電層16および連結層17からなるコンパクトなコイル形状の磁界印加手段13を1チップで小さく形成できるので、磁気センサ12と、この磁気センサ12にバイアス磁界を印加する磁界印加手段13を備えた磁気デバイス10を小型、薄型に形成することが可能になる。
【0013】
基板11は、半導体基板、例えば、シリコンウェハから形成されていれば良い。基板11の一面側11aには、例えばシリコンウェハの表面を酸化させたパッシベーション膜(酸化絶縁膜)18を形成すればよい。磁気センサ12と第一導電層15との間には第二絶縁層21が形成されていれば良い。また、第一絶縁層14に重ねて、第二導電層16を覆う第三絶縁層22が形成されていればよい。これら第一絶縁層14、第二絶縁層21および第三絶縁層22は、例えば、絶縁性の樹脂等から構成されていれば良い。また、第一絶縁層14、第二絶縁層21および第三絶縁層22は、それぞれ別体に形成しても、一体の絶縁層として形成しても良い。
【0014】
磁気センサ12は、両端で電流Wが印加され、外部磁界の強度や方向に応じて電流Wの出力電圧値が変動する。この出力電圧値の変動を検出することによって、外部磁界の強度や方向を検出することができる。こうした磁気センサ12は、例えば磁性基板の表面に、軟磁性膜を形成したものであればよい。第一導電層15や第二導電層16は、導電性に優れた材料、例えば、Cu,Al,Auなどから形成されれば良い。また、連結層17は、第一絶縁層14に開口を形成し、この開口に、例えば導電ペーストなどを充填することによって形成すればよい。
【0015】
次に、本発明に係る磁気デバイスの別な一例を図面に基づいて説明する。図3は、本発明の磁気デバイス(磁気センサ)の別な一例を示す斜視図である。また、図4(a)は、図3に示した磁気デバイスのB−B線における断面図であり、図4(b)はC−C線における断面図である。本発明の磁気デバイス30は、半導体からなる基板31と、この基板31の一面側31aに重ねて配された磁気センサ32とを有する。また、磁気センサ32に重なるように配された第一導電層35と、基板31の他面側31bに重ねて配された第二導電層36とを有する。また、第一導電層35と第二導電層36とは、例えば導電材からなり基板31を貫通する連結層37によって電気的接続される。
【0016】
かかる構成によって、第一導電層35、第二導電層36および連結層37からなるコイル形状をなす磁界印加手段33を構成する。こうした磁界印加手段33は、コイル形状の略中心に磁気センサ32が配され、この磁気センサ32の周囲を包むように第一導電層35、第二導電層36および連結層37が形成されている。
【0017】
こうしたコイル形状を構成する磁界印加手段33の両端33a,33bの間に電流を流すことによって、磁界印加手段33に磁界が発生し、磁界印加手段33のコイル形状の中心に配された磁気センサ32に対して、一方向に向いたバイアス磁界Mが印加される。
【0018】
以上の構成によって、磁気デバイス30は、第一導電層35、第二導電層36および連結層37からなるコンパクトなコイル形状の磁界印加手段33を1チップで小さく形成でき、コイル形状の略中心に配された磁気センサ32にバイアス磁界を印加する磁界印加手段33を備えた磁気デバイス30を小型、薄型に形成することが可能になる。
【0019】
基板31は、半導体基板、例えば、シリコンウェハから形成されていれば良い。基板31の一面側31aには、例えばシリコンウェハの表面を酸化させたパッシベーション膜(酸化絶縁膜)38を形成すればよい。磁気センサ32と第一導電層35との間には第一絶縁層41が形成されていれば良い。また、第一絶縁層41に重ねて、第一導電層35を覆う第二絶縁層42が形成されていればよい。
【0020】
また、基板31の他面側31bと第二導電層36との間には、第三絶縁層43が形成されていれば良い。さらに、第三絶縁層43に重ねて、第二導電層36を覆う第四絶縁層44が形成されていればよい。
【0021】
これら第一絶縁層41、第二絶縁層42、第三絶縁層43および第四絶縁層44は、例えば、絶縁性の樹脂等から構成されていれば良い。また、第一絶縁層41、第二絶縁層42、第三絶縁層43および第四絶縁層44は、それぞれ別体に形成しても、一体の絶縁層として形成しても良い。
【0022】
磁気センサ32は、両端で電流Wが印加され、外部磁界の強度や方向に応じて電流Wの出力電圧値が変動する。この出力電圧値の変動を検出することによって、外部磁界の強度や方向を検出することができる。こうした磁気センサ32は、例えば磁性基板の表面に、軟磁性膜を形成したものであればよい。第一導電層35や第二導電層36は、導電性に優れた材料、例えば、Cu,Al,Auなどから形成されれば良い。また、連結層37は、第一絶縁層41、基板31および第三絶縁層43を貫通する開口45を形成し、この開口45に、例えば導電ペーストなどを充填することによって形成すればよい。
【0023】
次に、本発明の磁気デバイスの製造方法の一例を示す。この一例では、図3、図4に示したような、磁気センサを包み込む第一導電層、第二導電層および連結層からなるコイル形状の磁界印加手段を形成した磁気デバイスの製造方法を、図5、図6に例示する。なお、図5、図6のA列は、図3に示す磁気デバイスのB−B線における断面を示し、図5、図6のB列は、図3に示す磁気デバイスのD−D線における断面を示す。また、図5、図6のA列はB列よりも幅を縮小して示している。
【0024】
まず、例えばシリコンウェハなどの半導体からなる基板31を用意し、この基板31に後工程で連結層を形成するための開口45を形成する(図5(a)参照)。この開口45に、例えば導電ペーストなどを充填し、連結層37を形成する(図5(b)参照)。基板31の一面側31aに磁気センサ(磁性膜)32を形成する(図5(c)参照)。この磁気センサ32を覆うように第一絶縁層41を形成する(図5(d)参照)。
【0025】
そして、第一絶縁層41の連結層37に対応する部分に開口41aを形成する(図5(e)参照)。第一絶縁層41の上に第一導電層35を形成するととともに、開口41aを介して第一導電層35と連結層37とを電気的に接続する(図5(f)参照)。第一導電層35は、例えば、フォトリソグラフィック法によりレジストマスクを形成した後、メッキによって導電体を積層すればよい。この後、第一導電層35を覆う第二絶縁層42を形成する(図6(a)参照)。
【0026】
次に、基板31の他面側31bに第三絶縁層43を形成する(図6(b)参照)。そして、第三絶縁層43の連結層37に対応する部分に開口43aを形成する(図6(c)参照)。第三絶縁層43の上に第二導電層36を形成するととともに、開口43aを介して第二導電層36と連結層37とを電気的に接続する(図6(d)参照)。
【0027】
これにより、第一導電層35、第二導電層36および連結層37からなるコイル形状をなす磁界印加手段33が形成される。そして、磁気センサ32の周囲を包むコイル形状を構成する第一導電層35、第二導電層36および連結層37が形成される。第二導電層36は、例えば、フォトリソグラフィック法によりレジストマスクを形成した後、メッキによって導電体を積層すればよい。この後、第二導電層36を覆う第四絶縁層44を形成すれば、本発明の磁気デバイス30は完成する(図6(e)参照)。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の磁気デバイスの一例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線での断面図である。
【図3】本発明の磁気デバイスの他の一例を示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線での断面図である。
【図5】本発明の磁気デバイスの製造方法の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の磁気デバイスの製造方法の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 磁気デバイス、11 基板、12 磁気センサ、13 磁界印加手段、14 第一絶縁層(絶縁層)、15 第一導電層、16 第二導電層、17 連結層。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体からなる基板の一面側に配された磁気センサと、前記一面側にあって前記磁気センサと重なるように順に配された第一導電層、絶縁層および第二導電層とを少なくとも備え、前記第一導電層と前記第二導電層が電気的に接続されてコイル形状をなすことを特徴とする磁気デバイス。
【請求項2】
半導体からなる基板の一面側に配された磁気センサと、前記一面側にあって前記磁気センサと重なるように配された第一導電層と、前記基板の他面側に配された第二導電層とを備え、前記第一導電層と前記第二導電層が電気的に接続されて前記磁気センサを包み込むコイル形状をなすことを特徴とする磁気デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−292544(P2007−292544A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119210(P2006−119210)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】