説明

磁気レオロジー仕上げにより形成された均一な薄膜

【課題】基板要素の下面に予め被覆することのできる極めて均一な厚さを有する薄い層を形成する改良された方法を提供する。
【解決手段】材料の加工層70は、所望の最終厚さ78よりも厚い厚さ74を有するように形成される。偏光解析法、レーザ干渉法、又はx線回折法又はその他の既知の手段により加工層70の領域的(XY)厚さの決定が行われる。加工層70の自由面から除去すべき厚さのマップは、磁気レオロジー式仕上げ装置の制御システムに入力される。加工層70は、装置の加工物ホルダに取り付けられ且つ、機械に対して正確に割り出される。次に、機械は、制御システムにより命令されたように磁気レオロジー式仕上げにより材料を除去し、公称平均厚さ及び極めて高度の表面完全性にて極めて高度の厚さの均一さを有する残留層が残るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の製造、より特定的には、高度の厚さの均一さを有する薄膜、最も特定的には、磁気レオロジー流体仕上げシステムがそれ以前に不均一な基板に対して被覆することのできる薄い層から材料をプログラマブルに除去し、極めて高度の厚さの均一さを有する層が残るようにする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を研磨して仕上げ且つポリッシングするため、磁気的に強化した磁気レオロジー流体を使用することは周知である。液体担体中に分散された磁気的に柔軟な研磨性粒子を保持するかかる流体は、磁気流体の存在下にて電磁的に誘発された塑性振舞いを示す。流体の見掛け密度を何倍も磁気的に増大させ、流体のコンシステンシーをほぼ水状から極めて硬いペーストまで変化させることができる。かかるペーストが例えば、光学要素のような整形し又はポリシングすべき基板の表面に対し適宜に向けられたとき、極めて高度の仕上げ品質、精度、及び制御を実現することができる。典型的なMRF仕上げシステムは、米国、ニューヨーク州、ロチェスターのQEDテクノロジーズ(QEDTechnologies)から入手可能なQEDテクノロジーズQ22 MRFシステムである。
【0003】
典型的な磁気レオロジー式仕上げシステムにおいて、加工表面は、ハブの周りにて対称にアンダーカットされた軸方向に広いリブを有する垂直に向き決めしたホイールを備えている。特別な形状の磁極片がアンダーカットのリムの下方にてホイールの両側部に向けて伸びており、好ましくは、上死点中心位置付近にてホイール表面に磁気加工領域を提供する。ホイールの表面は球の赤道部分であることが好ましい。
【0004】
仕上げるべき基板を加工領域内に伸ばすため、基板の受け入れ部及び加工ホルダが加工領域に隣接して取り付けられている。仕上げシステムは、加工ホルダを複数のモード及び動作速度にて動かし、加工領域の位置又は加工領域を通る加工物の移動速度、従って加工領域における露出時間を変化させることにより、加工物からより多く又はより少ない材料を除去するようにプログラム化することができる。仕上げは、キャリアホイールにおける加工領域の任意の所望の角度位置にて行うことができ、例えば、加工物を、制御可能な床に配置し、キャリアホイールを基板の上方に配置し、また、加工領域がキャリアホイールの上の下死点中心位置にあるようにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薄層製造技術において、極めて薄い材料層を基板に被覆することは既知である。かかる層は、例えば、マイクロエレクトロニクス製造分野にて極めて有用である。例えば、薄いケイ素層をケイ素ウェハのガラス面に被覆し、ガラスが絶縁体(「絶縁体上ケイ素」すなわちSOI)となるようにすることが既知である。ケイ素層は、典型的に、約100nmの極めて均一な厚さであり、層内に又は層を通じて伸びる亀裂が無いことが極めて望ましい。
【0006】
しかし、極めて高度の厚さの均一性及び表面の一体性を必要とする被覆を形成するとき、重大な問題点が生ずる可能性がある。被覆は、基板の非平坦部分に順応可能に従うことができず、その非平坦部分は自由な被覆面にて充填され、また丸味が付けられる傾向となる。このため、実際の被覆は、被覆される基板の局部的形態に依存して望ましくないようにより厚く且つより薄い領域となる可能性がある。従来の技術において、極めて均一な厚さ及び表面の一体性を形成することは、化学的−機械的ポリッシングを含む、極めて複雑な製造過程を必要とする可能性がある。
【0007】
更に、かかる適用例の幾つかにおいて、例えば、所望の絶対的厚さを実現する等のため、従来の光学的ポリッシングにより被覆の上面を機械的に又は化学的−機械的に仕上げる必要性がある。しかし、かかる研磨は、必要とされる機械的応力のため、仕上げた表面に残留顕微鏡的応力破断箇所が残ることが知られている。超薄層の場合、かかる破断箇所は実際に層を貫通して全経路に亙って伸びて、層の機械的及び電気的性質を損なう可能性がある。
【0008】
使用時、かかる被覆が的確であるかどうかの判断基準は、その絶対的平坦度ではなくて、その絶対的厚さ、厚さの均一性の程度、及び表面の一体性の程度である。このように、特に、被覆した層自体の厚さと同程度又はより厚くすることのできる非平坦な表面伸長部を有する基板に被覆するとき、極めて高度の厚さの均一性及び高度の表面の一体性を有する超薄層を提供する手段が必要とされている。
【0009】
層に対する残留応力の損傷が最小であるかかる層を提供し得ることが更に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主目的は、特に、非平坦な基板上に薄層を形成する方法であって、このように形成された層が高度の厚さの均一性を有し且つ表面亀裂が存在しないようにした方法を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、仕上げにより残る自由な薄層表面の応力破断箇所が最小である、薄層を仕上げる方法を提供することである。
簡単に説明すれば、極めて均一な厚さを有し且つ、表面又は表面下亀裂が存在しない薄層を形成する改良された方法において、材料の加工層は所望の最終厚さよりも厚い厚さに形成される。該層は、独立的要素とし、又はキャリア基板における被覆として形成することができる。加工層の厚さの領域的(XY)決定は、偏光解析法、レーザ干渉法又はx線回折法のような既知の技術により行われる。現在の好ましい手段は、米国、マサチューセッツ州、ニュートンのADEテクノロジーズインク(ADETechnologies, Inc.)から入手可能なアキュマップセカンド(AcuMap II)装置である。加工層の自由表面から除去すべき厚さのマップを表わすデータは、磁気レオロジー仕上げ装置の制御システムに入力される。独立的な層要素又は被覆した基板要素が装置の加工物ホルダに取り付けられ且つ、機械に対し正確に割り出される。次に、MRF機械は、制御システムにより命令されたように材料を除去し、公称平均厚さにて極めて高度の厚さの均一性及び極めて高度の表面一体性を有する残量層を形成する。
【0012】
本発明は、非限定的に、セラミック、ガラス、金属、遷移金属酸化物、磁気抵抗性合金、アルミニウム酸化物、窒化物、炭化物、ヒ化ガリウム、タングステン、ケイ素、及びサファイアを含む材料の薄膜を形成するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】可動床上にて基板の上面を仕上げるために使用される装置を示す、本発明に従った磁気レオロジー式仕上げシステムの立面断面図である。
【図2】凹凸のある非平坦な基板表面に被覆した加工層の概略的な立面断面図である。
【図3】本発明に従った非平坦な基板表面と順応可能な均一な厚さに仕上がった層を示す、図に示した図と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の上記、その他の目的、特徴及び有利な点並びにその現在の好ましい実施の形態は、添付図面に関する以下の説明を読むことにより一層明らかになるであろう。
図1を参照すると、本発明に従った方法にて使用するのに適した磁気レオロジー仕上げシステム10(例えば、米国、ニューヨーク州、ロチェスターのQEDテクノロジーから入手可能なQ22システム)は、基部12と、磁石組立体17を支持する第一のアーム15とを有している。組立体17は、電磁石のコア及び巻線13と、球状キャリアホイール20に適合可能である半径方向端部を有する平面状スラブであることが好ましく、また、従来の方法にてコアに接続されたそれぞれの左側磁石ヨーク部材14及び右側ヨーク部材16とを有している。基部12から伸びる第二のブラケット11は、軸受24内に軸支された軸22と、該基部から片持ち状に支持されたモータ駆動装置18とを支持している。駆動装置18は、駆動装置コントローラ(図示せず)により従来の仕方にて制御され、駆動装置の回転速度を所望の目的にて制御する。駆動装置18は、システムコントローラ19に更に接続され、システムの色々な構成要素の作用を調和させる。軸22は、駆動装置18から離れる方向に向けてフランジ30から伸びる球形面32を支持するキャリアホイールフランジ30に回転可能に結合されている。フランジ30及び面32は、共に全体としてボウル形状のキャリアホイール20を画成し、該キャリアホイールは、フランジ30に対向する側にて開放し、磁石組立体17を受け入れる。好ましくは、表面32は、1つの球の赤道部分であるものとする。
【0015】
アプリケーションノズル(図1の断面図に図示せず)は、移動する加工表面32に対し既知の仕方にて帯状に磁気レオロジー流体を提供する。好ましくは、装置は、図1に示すように配置され、加工領域58がキャリアホイール20の下死点中心位置に形成され、平面状基板を仕上げることができ、該平面状基板は、既知の仕方にてコンピュータ制御による5軸位置決め機械64に作用可能に接続されたサブステージすなわち床62に、従来の仕方にて取り付け、これにより加工領域58に対する平面状基板の速度及び方向を精密に制御することができるようにする。機械64は、磁気レオロジー仕上げシステム10のサブシステムであり且つ一体的な部分であり、システムコントローラ19により制御される。勿論、これと代替的に、基板は、既知の技術に従って表面32に対し所望の任意の角度にて取り付けてもよい。
【0016】
次に、図1ないし図3を参照すると、非平坦な上面68を有する基板66(明確化のため、非平坦度の垂直方向縮尺は極めて誇張して示してある)は、本発明に従って極めて均一な層72に仕上がるよう材料の加工層70にて被覆されている。加工層は、選択的に、表面68に下塗りを施し、例えば、加工層70の接着を促進するか又は加工層70を基板から電気的に又は光学的に絶縁することができる。かかる選択的な下塗りは、図面の明確化のため、図面にて省略してあるが、理解し得るであろう。
【0017】
加工層70は、最初に、x線結晶学機械、レーザ干渉計、又は偏光解析計のような従来の薄膜測定装置により既知の仕方にてその特徴を把握し、層70の上面76と基板表面68との間の厚さの変化部分74に対する被覆した層70の領域(二次元的)のデータマップを生成する。入力した各厚さのデータ値から所望の厚さ78の値を減算し、この減算により、均一な層72となるように層70から除去すべき材料80の領域厚さのマップが得られ、このマップは、システム10にプログラム化される。
【0018】
基板66は、床62に取り付けられ且つ、基板66の位置を、システム10の上記除去すべき材料80の領域厚さのマップに対応して割り出され、除去すべき層70の量が正確な領域から除去されるようにする。次に、システム10は進行して床62の方向及び平行移動速度を既知の仕方にて変化させることにより、プログラム化した除去マップに従う。材料80の全てが除去されたとき、自由表面82を有する均一な層72が形成される。
【0019】
電磁レオロジー仕上げは、その表面に対して平行な基板に極めて小さい公称応力を作用させ、このため、残留表面82の上に殆ど又は全く応力亀裂を生じさせないことを認識すべきである。更に、層72の厚さは、+/−5nm以下の範囲にて均一である。
実験例:従来の200mmのケイ素ウェハを、絶縁ガラスの下塗りにて被覆し、その後に、200nm±20nmのガラス表面からの公称厚さを有するケイ素加工層を施した。ケイ素層の所望の仕上げ厚さは、100nmである。加工層厚さの特徴を領域的に決定し且つ、除去パターンを、QEDQ22システム内にプログラム化する。ウェハを、加工物ホルダ内に取り付け、また、計算した除去パターンに割り出し、除去パターンを実行し、公称厚さ100nm及び厚さの変化が±5nm以下である仕上がった残留ケイ素層が残るようにする。表面には応力誘発の亀裂は存在しない。
【0020】
本発明の上記の方法及び装置は、キャリア基板に対して被覆されない独立的な薄い要素に等しく適用可能であることを理解すべきである。加工要素の厚さの変化は、要素の背面からの内反射を使用して同様に特徴を決定することができる。基板に対して被覆された層と同様に、例えば、厚さ数ミリまでの独立的な要素は、TTV(厚さの全変化)と称される場合もある、頂部対谷(PV)の差が50nm以下、また、場合によっては、10nm以下である所望の厚さに仕上げることができる。
【0021】
本発明は、上述したケイ素ウェハ以外の多岐に亙る用途にて有用である。例えば、磁気抵抗性合金層は、磁気記憶技術の読み取り−書き込みヘッドにて使用し得るように極めて高度の厚さの均一性に仕上げることができる。更に、ダイヤモンド、アルミニウム酸化物、及び窒化物のような材料の極めて硬い被覆は、使用中、研磨性損傷を受ける、さもなければ傷付き易い要素における磨耗保護層として使用し得るように仕上げることができる。
【0022】
本発明は、非限定的に、セラミック、ガラス、金属、遷移金属酸化物、磁気抵抗性合金、アルミニウム酸化物、窒化物、炭化物、ヒ化ガリウム、タングステン、ケイ素及びサファイアを含む、広範囲の材料の薄膜を提供するのに有用である。
【0023】
上記の説明から、磁気レオロジー的仕上げ法により高度の厚さの均一性を有する極めて薄い層を形成するための改良された方法が提供されることが明らかであろう。本発明に従った本明細書に記載した方法の変更例及び形態変更は、疑いなく、当該技術の当業者にそれ自体、明らかであろう。従って、上記の説明は、単に一例であり、限定的な意味ではないと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の厚さ、高精度の厚さ均一性と亀裂が存在しない高精度の表面完全性を有する材料の層要素(72)を、厚さの不均一性及び所望の厚さ(78)以上の厚さ(74)を有する加工層要素(70)から形成する方法において、
a)前記加工層要素(70)の実際の厚さ値(74)を示す第一の二次元的マップを形成するステップと、
b)前記所望の厚さ(78)の値を前記実際の厚さ(74)値の各々から減算することにより、前記加工層要素(70)から除去すべき材料の値(80)を示す第二の二次元的マップを形成するステップと、
c)除去すべき材料の前記値(80)のマップにて磁気レオロジー式仕上げシステムをプログラミングするステップと、
d)前記加工層要素(70)を前記磁気レオロジー式仕上げシステムに取り付けるステップと、
e)加工層要素(70)の位置を、前記システムの前記除去すべき材料の値のマップに対応して割り出すステップと、
f)前記値のマップに従って磁気レオロジー式仕上げにより前記加工要素層から材料を除去し、前記所望の厚さ(78)、高精度の厚さの均一性と亀裂が存在しない高精度の表面完全性とを有する均一層要素(72)が残るようにするステップとを備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記加工層要素が、
キャリア基板に対し予め被覆される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記キャリア基板が、ガラス、金属、セラミック、ケイ素及びサファイアの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記加工層要素が、セラミック、ガラス、金属、半導体、遷移金属酸化物、磁気抵抗性合金、アルミニウム酸化物、窒化物、炭化物、ヒ化ガリウム、タングステン、ケイ素及びサファイアから成る群から選ばれた材料にて形成される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記加工層要素が10mm以下の厚さを有する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記均一層要素(72)の厚さが50nm以下だけ変化する、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、
前記均一層要素(72)の厚さが10nm以下だけ変化する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−115779(P2010−115779A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15358(P2010−15358)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【分割の表示】特願2004−526402(P2004−526402)の分割
【原出願日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【出願人】(507131779)キューイーディー・テクノロジーズ・インターナショナル・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】