説明

磁気検出装置

【課題】従来の磁気検出装置に比べて、配置による製造精度のばらつきを抑制した磁気検出装置を提供する。
【解決手段】磁気検出装置1は、基板10上に放射状に区分けされた領域のうち少なくとも対向する領域に配置され、第1の方向に長手方向を有する第1の磁気抵抗素子群と、放射状に区分けされた領域のうち、少なくとも対向する領域であって、第1の磁気抵抗素子と隣り合う領域に、第1の方向と直交する第2の方向に長手方向を有する第2の磁気抵抗素子群と、第1の磁気抵抗素子群の磁気抵抗素子及び前記第2の磁気抵抗素子群の磁気抵抗素子を複数組み合わせて、当該組み合わせた複数の磁気抵抗素子を直列に接続したもので抵抗部分を構成し、複数の当該抵抗部分でブリッジ回路を構成する配線部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造精度のばらつきを抑制した磁気検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気検出装置を構成する複数の磁気抵抗素子に加わる応力等を原因として、各磁気抵抗素子の抵抗がばらつくことを抑制するため、各磁気抵抗素子を分割配置する磁気検出装置がある(例えば、特許文献1参照)。この磁気検出装置は、基板上に、例えば、ブロック状に分割された領域に、それぞれ複数の磁気抵抗素子群を配置し、分割された領域の周囲に磁気抵抗素子に加わる応力を緩和するための応力緩和用開口を設けて構成される。なお、1つの分割された領域に配置される複数の磁気抵抗素子はそれぞれ同一の感磁方向を有する。この磁気抵抗素子群は、コモンセントロイド配置によりブリッジ回路を構成する。
【0003】
この磁気検出装置によれば、応力緩和用開口によって外部から加わる応力を分散することができ、磁気抵抗素子に加わる応力のばらつきを抑制することができるとともに、各磁気抵抗素子群を感磁方向に関してコモンセントロイド配置することで、ブリッジ回路を構成する各抵抗ばらつきを抑制することができ、ブリッジ回路から出力される出力電圧のオフセットを減少することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図6に示すように、磁気検出装置の基板は、一般的に半導体ウエハ100から基板分割パターン110に沿って切り出されるが、半導体ウエハ100はその中心から放射状に分布する特性のばらつき(オフセット電圧ばらつき、後述)を有しており、特許文献1に示す磁気検出装置は、各磁気抵抗素子群が分割された領域にコモンセントロイド配置されているものの、図6に示す半導体ウエハ100の中心から放射状に生じる特性のばらつきを抑制するには十分でなく、製造精度のばらつきを必ずしも改善しているとは言えなかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、従来の磁気検出装置に比べて、配置による製造精度のばらつきを抑制した磁気検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、基板上に放射状に区分けされた領域のうち少なくとも対向する領域に配置され、第1の方向に長手方向を有する第1の磁気抵抗素子群と、
前記基板上の放射状に区分けされた領域のうち、少なくとも対向する領域であって、前記第1の磁気抵抗素子と隣り合う領域に、前記第1の方向と異なる第2の方向に長手方向を有する第2の磁気抵抗素子群と、
前記第1の磁気抵抗素子群の磁気抵抗素子及び前記第2の磁気抵抗素子群の磁気抵抗素子を複数組み合わせて、当該組み合わせた複数の磁気抵抗素子を直列に接続したもので抵抗部分を構成し、複数の当該抵抗部分でブリッジ回路を構成する配線部とを有する磁気検出装置。
【0008】
また、上記磁気検出装置において、前記第2の方向は、前記第1の方向と直交してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の磁気検出装置に比べて、配置による製造精度のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る磁気検出装置の一例を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示す磁気検出装置の等価回路図である。
【図3】図3は、本発明と従来の磁気検出装置の出力オフセット電圧ばらつきを示したものである。
【図4】図4は、従来の磁気検出装置の一例を示す平面図である。
【図5】図5は、従来の磁気検出装置の他の例を示す平面図である。
【図6】図6は、半導体基板の領域と、出力オフセット電圧ばらつきとの関係を示した概略図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る磁気検出装置の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(磁気検出装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気検出装置の一例を示す平面図である。また、図2は、図1に示す磁気検出装置の等価回路図である。
【0012】
磁気検出装置1は、半導体ウエハ100(図6)から基板分割パターン110に沿って切り出された、例えば、シリコン等の半導体の基板10上にニッケルコバルト等の強磁性金属又は合金の磁気抵抗素子群を8つ有する。また、基板10と磁気抵抗素子との間には、絶縁膜が形成され、磁気抵抗素子の表面には窒化ケイ素や二酸化ケイ素等の保護膜が設けられる。
【0013】
各磁気抵抗素子は、磁界の強度が一定の条件下においては、それぞれの長手方向と磁界のなす角度により抵抗値が変化する。つまり、磁気抵抗素子R1−1、R1−2、R4−1及びR4−2は図面横方向、R2−1、R2−2、R3−1及びR3−2は図面縦方向を長手方向とし、磁界の強度が一定の条件下においては、長手方向に印加される電流と磁界のなす角度に応じて抵抗値が変化する。また、磁気抵抗素子R1−1とR1−2、R2−1とR2−2、R3−1とR3−2及びR4−1とR4−2は金属配線によりそれぞれ直列に接続される。なお、磁気抵抗素子R1−1〜R4−2は、図1に示すパターンのように同種の強磁性金属をつづら折状にしてもよいし、折り返しの部分を、例えば、アルミニウム等の金属配線を用いて平行に配置された強磁性金属を直列に接続して形成してもよい。
【0014】
また、磁気抵抗素子R1−1及びR1−2のペアとR2−1及びR2−2のペアとは、直列に接続され電極Pcc及びPGNDにより図示しない電源により電圧Vccで駆動される。また、同様に磁気抵抗素子R3−1及びR3−2のペアとR4−1及びR4−2のペアとは、直列に接続され電極Pcc及びPGNDに接続された図示しない電源により電圧Vccにより駆動され、上述した磁気抵抗素子R1−1及びR1−2のペアとR2−1及びR2−2のペアとからなる回路と並列に接続されてホイートストンブリッジからなるブリッジ回路を構成し、電極P及びPからそれぞれ電圧Vout+及びVout−を出力する。なお、電極Pcc及びPGND並びに電極P及びPは接続関係を説明するために便宜上示したものであり、実際の配置は図に示される配置に限定されるものではない。
【0015】
また、各磁気抵抗素子は基板10上に放射状に区分けされた領域上に配置され、ブリッジ回路の電極Pcc−P間、Pcc−P間、PGND−P間、PGND−P間にそれぞれその長手方向が一致する磁気抵抗素子のペアを用い、かつ当該ペアの磁気抵抗素子は、図に示す例では、対向しない領域に配置される。なお、例えば、電極Pcc−P間、Pcc−P間、PGND−P間、PGND−P間に用いられる磁気抵抗素子の数はペアに限らず複数あってもよい。また、ペアの磁気抵抗素子は対向する領域に配置されてもよい。
【0016】
また、電極P及びPは、金属配線等により図示しないパッド(電極)により接続され、パッドからワイヤボンディング等で図示しない差動アンプ等に接続され、差動アンプの後段の回路は、電圧Vout−及びVout+との差により、例えば、磁界方向及び磁界の強さを計算する。
【0017】
図4は、従来の磁気検出装置の一例を示す平面図である。
【0018】
磁気検出装置2は、磁気検出装置1と同様に、基板20上に8つの磁気抵抗素子を有し、磁気抵抗素子R1−1、R1−2、R4−1及びR4−2は図面右上左下方向、R2−1、R2−2、R3−1及びR3−2は図面左上右下方向を長手とする。また、磁気抵抗素子R1−1とR1−2、R2−1とR2−2、R3−1とR3−2及びR4−1とR4−2はそれぞれ直列に接続される。
【0019】
また、磁気検出装置2の磁気抵抗素子R1−1及びR1−2のペアとR2−1及びR2−2のペアとは、直列に接続され電極Pcc及びPGNDにより電圧Vccにより駆動される。また、同様に磁気抵抗素子R3−1及びR3−2のペアとR4−1及びR4−2のペアとは、直列に接続され電極Pcc及びPGNDにより電圧Vccにより駆動され、上述した磁気抵抗素子R1−1及びR1−2のペアとR2−1及びR2−2のペアとからなる回路と並列に接続されてブリッジ回路を構成し、電極P及びPからそれぞれ電圧Vout+及びVout−を出力する。
【0020】
以上の点において磁気検出装置2は、磁気検出装置1と同様であり、等価回路も図2と同様である。しかし、磁気抵抗素子は、その配置される領域が基板20上に放射状に区分けされていない。
【0021】
図5は、従来の磁気検出装置の他の例を示す平面図である。
【0022】
磁気検出装置3は、基板30上に4つの磁気抵抗素子を有し、磁気抵抗素子R1及びR4は図面右上左下方向、R2及びR3は図面左上右下方向を長手方向とする。
【0023】
また、磁気検出装置3の磁気抵抗素子R1とR2とは、直列に接続され電極Pcc及びPGNDにより電圧Vccにより駆動される。また、同様に磁気抵抗素子R3とR4とは、直列に接続され電極Pcc及びPGNDにより電圧Vccにより駆動され、上述した磁気抵抗素子R1とR2とからなる回路と並列に接続されてブリッジ回路を構成し、電極P及びPからそれぞれ電圧Vout+及びVout−を出力する。
【0024】
磁気検出装置3は、上述したようにブリッジ回路の電極Pcc−P間、Pcc−P間、PGND−P間、PGND−P間に、それぞれ2つの磁気抵抗素子のペアを用いることなく、それぞれ1つの磁気抵抗素子R1〜R4を配置したものである。
【0025】
図3は、上記磁気検出装置1〜3の出力電圧Vout+とVout−との出力オフセット電圧ばらつきを磁気検出装置3を基準として示したものである。
【0026】
ブリッジ回路において、電極Pcc−P間、Pcc−P間、PGND−P間、PGND−P間の抵抗値がそれぞれ等しい場合、さらに、無磁界又は長手方向の異なる各磁気抵抗素子に対して磁界のなす角度θが等価となる方向の場合(図1に示す例では、各磁気抵抗素子について、θ=45°、135°、225°、315°のいずれかとなる場合)、電極PとPの出力電圧Vout+とVout−は、等しい値となり、Vccの値に関わらずVout+とVout−との出力電圧差分は0となるが、対称性が悪い場合は抵抗値がばらついた結果、Vout+とVout−との出力電圧差分が0とならずオフセット電圧が生じる。
【0027】
磁気検出装置2のようにブリッジ回路に磁気抵抗素子のペアを用いた場合、それを用いない場合の磁気検出装置3に比べて出力オフセット電圧ばらつきは約7〜8割に抑えられる。また、磁気検出装置1のようにブリッジ回路に磁気抵抗素子のペアを用い、かつ、ペアの配置に対称性をもたせた場合、磁気検出装置3に比べて出力オフセット電圧ばらつきは約6割に抑えられる。なお、それぞれの磁気抵抗素子の抵抗値及び測定条件は同一の条件で行ったものとする。
【0028】
図6は、半導体ウエハの領域と、出力オフセット電圧ばらつきとの関係を示した概略図である。
【0029】
図6に示すように、磁気検出装置1の基板10は、半導体ウエハ100から基板分割パターン110に沿って切り出されるが、半導体ウエハ100の特性は、その特性をオフセット電圧ばらつき(図3)で測ると、半導体ウエハ100の中心から放射状に分布する。なお、オフセット電圧ばらつきは、値が0のものを良とし(濃度低)、プラス側及びマイナス側に値が大きいものを悪として(濃度高)、一定の値の範囲毎に濃度を区分けして表示している。
【0030】
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、磁気抵抗素子のペアを基板10上に放射状に区分けされた領域上に配置し、これらの磁気抵抗素子を直列接続してブリッジ回路の抵抗部分を構成したため、従来の磁気検出装置に比べて、放射状に区分けされた領域のうち対向する領域に配置された同一の長手方向を有する磁気抵抗素子のペアとの特性のばらつきを抑制することができる。つまり、磁気検出装置1の放射状に区分けされた領域を磁気抵抗素子とする構成が半導体ウエハ100が有する特性のばらつきの対称性、つまり図6に示す放射状の特性ばらつきと一致するため、磁気抵抗素子の配置による製造精度のばらつきを抑制することができる。
【0031】
また、本実施の形態において説明した磁気検出装置は、本発明を適用する一例であり、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。例えば、本実施の形態では、磁気抵抗素子を三角形状のものを示したがこれに限られるものではなく、配置の条件を満たせば他の形状、例えば、扇形等でも同一の効果を得られる。
【0032】
例えば、図7(a)に示すように、放射状に区分けされた領域をさらに区分けして磁気抵抗素子を配置しても同等の効果が得られる。また、図7(b)に示すように、放射状に区分けされた領域を、対称性を大きく崩さない程度にオフセットして、磁気抵抗素子を配置しても従来の配置に比べて効果が得られる。また、金属配線の引き回しは平面に限るものではなく、多層の配線により交差させることもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 磁気検出装置
2 磁気検出装置
3 磁気検出装置
10 基板
20 基板
30 基板
cc、PGND、P、P 電極
R1−1、R1−2、R2−1、R2−2、R3−1、R3−2、R4−1、R4−2 磁気抵抗素子
R1-R4 磁気抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に放射状に区分けされた領域のうち少なくとも対向する領域に配置され、第1の方向に長手方向を有する第1の磁気抵抗素子群と、
前記基板上の放射状に区分けされた領域のうち、少なくとも対向する領域であって、前記第1の磁気抵抗素子と隣り合う領域に、前記第1の方向と異なる第2の方向に長手方向を有する第2の磁気抵抗素子群と、
前記第1の磁気抵抗素子群の磁気抵抗素子及び前記第2の磁気抵抗素子群の磁気抵抗素子を複数組み合わせて、当該組み合わせた複数の磁気抵抗素子を直列に接続したもので抵抗部分を構成し、複数の当該抵抗部分でブリッジ回路を構成する配線部とを有する磁気検出装置。
【請求項2】
前記第2の方向は、前記第1の方向と直交する請求項1に記載の磁気検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−184995(P2012−184995A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47446(P2011−47446)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】