説明

神経変性疾患関連蛋白質凝集線維化抑制剤

【課題】
αシヌクレインをはじめとする蛋白質の線維形成および凝集を抑制する組成物を提供する。
【解決手段】
PQQおよびPQQ誘導体を含む組成物をαシヌクレインをはじめとする蛋白質を含む溶液に添加する。
【効果】PQQおよびPQQ誘導体を含む組成物をαシヌクレインをはじめとする蛋白質を含む溶液に添加することで、当該蛋白質の線維形成ならびに凝集が抑制される。この組成物をもちいたパーキンソン病をはじめとする蛋白質変性による疾患の薬剤開発が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患関連蛋白質凝集線維化を抑制する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生体における酸化還元酵素の補酵素として、ニコチンアミド化合物(NAD、NADP)とフラビン化合物(FAD、FMN)が知られている。1979年、メタノール資化菌のメタノール脱水素酵素を手助けする新しい酸化還元酵素が発見され、ピロロキノリンキノン(以下、PQQとも略記する)と命名された。しかし、これまでに同化合物ならびにその誘導体が蛋白質凝集線維化の抑制に効果があることは全く報告されていない。
【0003】
一方、アルツハイマー病、パーキンソン病といった神経変性疾患においては特定の蛋白質が凝集線維化することで、神経細胞が壊死することに起因しているとされている。このことから神経変性疾患に関わる凝集線維化している蛋白質の抗凝集線維化薬剤の開発が望まれている。
【0004】
例えば、初期のアルツハイマー病の治療薬として、最も有望とされている薬物は、β−アミロイド蛋白質の産生抑制剤と神経細胞壊死阻害剤が挙げられている。
【0005】
αシヌクレインは、140残基からなる熱に安定な蛋白質である。パーキンソン病患者脳のLewy小体にαシヌクレイン凝集物の蓄積がみられる事から、多くの神経変性疾患と同様、異常蛋白質の蓄積と神経細胞死との関連性が注目されている。αシヌクレインは、生体内では特定の立体構造をとらず、native unfolded protein familyに属するとされている。αシヌクレインは、一次構造上3つの領域に分けられ、その内中央領域を構成する35アミノ酸残基が、アルツハイマー病患者脳に見られる老人斑の第二の構成成分NAC(Non-amyloidβcomponent of Alzheimer's disease amyloid)であり、βシート形成能が高く、凝集に特に深く関わる領域である事実が示されてきた(例えば、非特許文献1〜非特許文献3)。
【0006】
パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療方法としてこれらの疾患はその原因と考えられているタンパク質の凝集・線維化阻害剤について盛んに研究が行われている。これまでにin vitroにおいて報告されている凝集タンパク質の凝集・線維化を抑制する低分子化合物にはメラトニン、クルクミン、バイカレイン、ドーパミンといった抗酸化作用のある化合物が報告されている。しかし、抗酸化作用を有する化合物がすべて蛋白質の凝集線維化を抑制することはない。
【0007】
なお、本件発明に関する先行技術文献としては、以下ものがある。
【非特許文献1】Ueda K, Fukushima H, Masliah E, Xia Y, Iwai A, Yoshimoto M, Otero DA, Kondo J, Ihara Y, Saitoh T. Proc. Natl Acad Sci U S A. 1993 ;90 (23):11282-6.
【非特許文献2】Iwai A, Yoshimoto M, Masliah E, Saitoh T., Biochemistry. 1995 ;34(32):10139-45.
【非特許文献3】Han H, Weinreb PH, Lansbury PT Jr. Chem Biol. 1995 (3):163-9.
【非特許文献4】Pappolla, M., et al., Inhibition of Alzheimer beta-fibrillogenesis by melatonin. J Biol Chem, 1998. 273(13): p. 7185-8.
【非特許文献5】Ono, K., et al., Curcumin has potent anti-amyloidogenic effects for Alzheimer's beta-amyloid fibrils in vitro. J Neurosci Res, 2004. 75(6): p. 742-50.
【非特許文献6】Yang, F., et al., Curcumin inhibits formation of amyloid beta oligomers and fibrils, binds plaques, and reduces amyloid in vivo. J Biol Chem, 2005. 280(7): p. 5892-901.
【非特許文献7】Zhu, M., et al., The flavonoid baicalein inhibits fibrillation of alpha-synuclein and disaggregates existing fibrils. J Biol Chem, 2004. 279(26): p. 26846-57.
【非特許文献8】Li, H.T., et al., Inhibition of alpha-synuclein fibrillization by dopamine analogs via reaction with the amino groups of alpha-synuclein. Implication for dopaminergic neurodegeneration. Febs J, 2005. 272(14): p. 3661-72.
【非特許文献9】Li, J., et al., Dopamine and L-dopa disaggregate amyloid fibrils: implications for Parkinson's and Alzheimer's disease. Faseb J, 2004. 18(9): p. 962-4.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、神経変性疾患関連蛋白質凝集線維化を抑制する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、蛋白質の凝集線維化を抑制する化合物としてピロロキノリンキノン(PQQ)が有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、以下の事項に関するものである。すなわち、
1)ピロロキノリンキノン(PQQ)および/又はその誘導体を含むことを特徴とする蛋白質の凝集線維化を抑制する組成物。
(2)前記誘導体は、ピロロキノリンキノン(PQQ)が結合した蛋白質であることを特徴とする(1)に記載の組成物。
(3)前記誘導体は、ピロロキノリンキノン(PQQ)が結合した蛋白質の加水分解生成物であることを特徴とする(1)に記載の組成物。
(4)前記蛋白質は、神経変性疾患関連蛋白質であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)前記神経変性疾患関連蛋白質は、ヒトαシヌクレインであることを特徴とする(4)に記載の組成物。
(6)ピロロキノリンキノン(PQQ)とアミノ酸を混合し生成する化合物(PQQアダクト)を含むことを特徴とするヒトαシヌクレインの凝集線維化を抑制する組成物。
(7)前記アミノ酸は、セリンであることを特徴とする(6)に記載の組成物。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする神経変性疾患予防剤。
(9)(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする神経変性疾患治療剤に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピロロキノリンキノンおよびその誘導体を含む蛋白質により、蛋白質の線維形成・凝集を抑制することができる。特に、ヒトαシヌクレインの線維形成・凝集の抑制を効果的に行うことができる。これにより、パーキンソン氏病をはじめとする蛋白質変性による疾患の薬剤開発が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、適宜図面を参照する。本発明の組成物は、下記式で表されるピロロキノリンキノンおよびその誘導体を含む蛋白質の凝集線維化を抑制することを特徴とするものである。
【0013】
【化1】

【0014】
本発明のピロロキノリンキノンおよびその誘導体を含む蛋白質の凝集線維化を抑制する組成物は、PQQおよびその誘導体を含む溶液あるいはこれを乾燥させた粉黛あるいは錠剤である。これらの組成物を対象とする蛋白質を含む溶液に添加することで、当該蛋白質の凝集線維化を抑制する。
【0015】
対象とする蛋白質としては、疾患に関連する蛋白質として神経変性疾患関連蛋白質であれば特に制限されるものではなく、例えば、プリオン、βアミロイド、αシヌクレイン、あるいは透析アミロイドーシスに関連するβ2ミクログロブリンが挙げることができる。上記これらの蛋白質の溶液に本発明の組成物を適量添加することで、当該蛋白質の凝集線維化を抑制できる。
【0016】
たとえば、パーキンソン病の原因蛋白質と考えられているαシヌクレインにおいて本発明の組成物は、顕著な効果を示す。すなわち、ヒトαシヌクレインが溶解している溶液は室温にて24時間以上放置することで、アミロイド様線維が形成され、それとともに凝集塊も観測される。このアミロイド様線維の形成は、βアミロイドを特異的に染色することが知られているチオフラビンT(以下、TfTと略する。)の蛍光強度変化を観測することで、容易にその形成と蓄積が計測できる。
【0017】
また凝集塊の観測は、光散乱によって観察され、波長330〜600nm程度の波長での散乱を観測することで定量される。これらの方法は、前述した非特許文献1等の学術論文にも紹介され、標準的なin vitroにおける神経変性疾患関連蛋白質の凝集線維化の観察・実験に用いられている。
【0018】
標準的にはヒトαシヌクレインを緩衝溶液中にて図1に記すように60〜80時間程度放置することで、顕著にTfTのβアミロイド構造結合に基づく蛍光強度増加が観測され、また、図6に記すように波長500nmにおける光散乱が増加し、ヒトαシヌクレインの線維形成ならびに凝集塊形成が観測される。
【0019】
しかしながら、このヒトαシヌクレイン溶液に本発明の組成物を添加すると驚くべきことにヒトαシヌクレインの凝集線維化が抑制される。
【0020】
すなわち、PQQをヒトαシヌクレイン溶液に添加することで、図1および図5に記すように線維の形成ならびに凝集塊の形成が抑制される。特に顕著なのは線維形成の抑制である。
【0021】
さらに、この抑制能力はPQQの濃度に依存している。すなわち、ヒトαシヌクレイン溶液中のPQQ濃度が増加するとともに、線維形成・凝集の抑制効果は高まっていた。
【0022】
また、このPQQ溶液に還元剤であるジチオスレイトール(DTT)を加え、PQQを還元状態とした場合においても、図3に記されるようにヒトαシヌクレインの線維形成・凝集は抑制されていた。
【0023】
さらに驚くべきことに、本効果はPQQだけでなく、その誘導体においても発揮された。すなわち、PQQ誘導体としてPQQとアミノ酸を混合して合成されるPQQアダクトを組成とした場合においてもヒトαシヌクレインの線維形成が抑制された。
【0024】
たとえば、PQQアダクトとしてPQQとセリンから合成されるPQQアダクトをヒトαシヌクレイン溶液に添加することで、図4および図5に記すように線維の形成が、PQQアダクトの濃度依存的に抑制される。
【0025】
このように、ピロロキノリンキノンおよびその誘導体を含む蛋白質の凝集線維化を抑制する組成物は、ヒトαシヌクレインの線維形成ならびに凝集を抑制する。また、βアミロイドをはじめとする各種アミロイド形成蛋白質においても、ヒトαシヌクレインと同様にコンフォメーション変化が起こり、βシート構造が豊富なアミロイド線維を形成すること明らかとなった。
【0026】
従って、本発明のピロロキノリンキノンおよびその誘導体を含む蛋白質の凝集線維化を抑制する組成物が、疾患に関連する蛋白質として神経変性疾患関連蛋白質であるβアミロイド、あるいは透析アミロイドーシスに関連するβ2ミクログロブリン神経変性疾患関連蛋白質の線維形成や凝集の抑制に有効であることは自明である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は何らこれに制限されるものではない。
【0028】
(実施例1)
<ヒトαシヌクレインの調製>
ヒトαシヌクレインは、例えば既報(K.Sode et al., Biochemical Biophys. Res. Commun., 335, 432-436(2005))等の公知の方法に従い、大腸菌を用いた組み換え生産により調製した。精製されたαシヌクレインを限外ろ過フィルターAmicon Ultra-15(MILLIPORE)を用いて、タンパク質濃度が約5〜6 mg/ml程度になるように濃縮した。これを超遠心分離( 195000 g、60 min、4℃)にかけ不溶性凝集塊を除去した。超遠心後の上清のタンパク質濃度を測定し、9.5mMリン酸緩衝生理食塩水(137mM NaCl)(Phosphate buffered saline;PBS)を用いて希釈し、それぞれタンパク質濃度4.0 mg/mlに調製した。
【0029】
(実施例2)
<ヒトαシヌクレインの凝集・線維化>
4 mg/ml(140 μM)に調製したαシヌクレイン500 μlと以下に示す濃度のPQQ(560 μM、280 μM、140 μM、70 μM)またはPQQ−D-Serine付加体(280 μM、70 μM)500 μlを混合しさらにこの試料に10%アジ化ナトリウムを2 μl加え(終濃度0.02%)MPC処理1.5 mlチューブ 中において総量1 ml、37℃下で線維形成が定常状態になるまで振とうし(130 h〜)線維形成を進行させた。
【0030】
(実施例3)
<ヒトαシヌクレインの線維形成の観察>
37℃で振とうしているサンプルから任意の時間に20 μlずつサンプリングを行い、氷中にて保存した。サンプリングしてきたものから10 μlを25 μM チオフラビンT(TfT)溶液1.0mlに加え攪拌し、直ちに励起波長450 nm、蛍光波長482 nmのTfT由来の蛍光強度を観察した。これを計2回行い、2回の平均をそのサンプルの蛍光強度とした。測定条件は、励起バンド幅:5 nm、蛍光バンド幅:5 nm、レスポンス:1 sec、感度:medium、繰り返し:5回、で行った。
【0031】
(実施例4)
<PQQによるヒトαシヌクレイン線維形成の抑制>
TfT由来の482 nmにおける蛍光強度の経時変化を図1に示す。αシヌクレイン単独試料はインキュベート開始から35時間で蛍光強度の上昇が見られ、約70時間で蛍光強度が定常状態に達した。一方、PQQの終濃度が280 μM 、140 μM、70 μMの混合試料ではPQQの濃度依存的に蛍光強度の増加が抑制され、ヒトαシヌクレインの線維形成が抑制された。
【0032】
図2にインキュベーション開始110時間後の線維形成量とPQQ濃度との相関を表す。図2から明らかなように、PQQ濃度依存的に線維形成量が抑制されており、αシヌクレイン単独試料の最大蛍光強度を100%とした時、それぞれ約20%(70μM)、10%(140μM)および7%(280μM)まで低下した。線維伸長速度もPQQの濃度依存的に線維伸長速度が低下した。このことから、PQQはヒトαシヌクレイン線維形成抑制効果があることが明らかである。
【0033】
(実施例4)
<還元型PQQによるヒトαシヌクレイン線維形成の抑制>
反応溶液に還元剤ヂチオスレイトール(DTT)を加え、PQQを還元し、還元型PQQのヒトαシヌクレイン線維形成抑制効果を調べた。TfT由来の482 nmにおける蛍光強度の経時変化を図3に示す。溶液にDTTを単独で加えた場合でもαシヌクレイン試料はインキュベート開始から35時間で蛍光強度の上昇が見られた。一方、DTT存在下、PQQの終濃度が280 μM 加えた試料では蛍光強度の増加が抑制され、ヒトαシヌクレインの線維形成が抑制された。このことから、還元型PQQもヒトαシヌクレイン線維形成抑制効果があることが明らかである。
【0034】
(実施例5)
<PQQ誘導体によるヒトαシヌクレイン線維形成の抑制>
TfT由来の482 nmにおける蛍光強度の経時変化を図4に示す。PQQ−D-Serine付加体混合試料ではPQQ−D-Serine付加体の濃度依存的に最大蛍光強度の低下が見られた。PQQ−D-Serine付加体の終濃度が140 μM、 35 μMの混合試料ではαシヌクレイン単独試料の最大蛍光強度を100%とした時、約25%、35%まで低下した。線維伸長速度についても混合したPQQ−D-Serine付加体の濃度依存的に低下した(図5)。このことから、PQQのセリン付加体はヒトαシヌクレイン線維形成抑制効果があることが明らかである。
【0035】
(実施例6)
<ヒト由来αシヌクレインの凝集体形成の観察>
37℃で振とうしているサンプルから任意の時間に25 μlずつサンプリングを行い、使用しているbufferで2倍に希釈後、波長250 〜600 nmの紫外・可視吸収スペクトルを測定した。波長250 〜600 nmのうちPQQ及びPQQ―D-Serine付加体の経時変化による吸収スペクトルの変化の影響を受けない500 nmにおける光散乱(OD500)によって凝集体量の評価を行った。
【0036】
(実施例7)
<PQQによるヒトαシヌクレイン凝集塊形成の抑制>
波長500 nmにおける光散乱(ΔOD値)の経時変化を図6に示す。αシヌクレイン単独試料及びPQQ混合試料、いずれもインキュベート開始から24.5時間でΔOD値の上昇が見られた。図7にインキュベーション開始110時間後の凝集塊形成抑制のPQQ濃度依存性を記す。PQQの終濃度が280 μM 、140 μM、70 μM、の混合試料ではPQQの濃度依存的に最大ΔOD値の低下が見られ、αシヌクレイン単独試料の最大ΔOD値を100%とした時、それぞれ約35%、60%、75%まで低下した。このことからPQQにはヒトαシヌクレイン凝集塊形成抑制効果があることが明らかである。
【0037】
(実施例8)
<PQQと結合したαシヌクレインによるαシヌクレインの凝集線維化の抑制>
PQQと結合したαシヌクレインは、2mMPQQとともに実施例1で調製したものと同様のαシヌクレインを採択した。このαシヌクレイン溶液を終濃度140μMとし、37℃で約100時間、インキュベートした。その後、余剰のPQQをゲルろ過クロマトグラフィーによる除去した。このように調製したPQQと結合したαシヌクレインのスペクトルを図8に示す。図8に示すように、PQQと結合したαシヌクレインは、αシヌクレイと異なりPQQに特徴的なスペクトルを示しており、PQQと結合していることが明らかとなった。
【0038】
また、上記PQQと結合したαシヌクレインを終濃度70 μM、35 μM あるいは 14 μMとなるように調整し、終濃度 140 μMのαシヌクレインとともに実施例1の線維化試験と同様に混合し、37℃でインキュベートした。その結果を図9に示す。驚くべきことに、αシヌクレイン単独では線維が形成されているにもかかわらず、PQQと結合したαシヌクレインを混合することで、その線維化がきわめて抑制された。その効果は70 μM 加えたときがもっとも大きく、35 μM あるいは14 μM のPQQと結合したαシヌクレインを加えても効果が顕著であることは明らかであった。本発明においては、このようにPQQのみならず、PQQと結合したαシヌクレインも線維形成抑制能力があることが明らかとなった。また、PQQと結合したαシヌクレインを140μMの濃度で同様にインキュベートしたところ、αシヌクレイン単独とは異なり、まったく線維が形成しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のピロロキノリンキノン(PQQ)およびその誘導体を含む蛋白質の凝集線維化を抑制する組成物は、蛋白質の凝集及び線維化を効果的に抑制できるものである。従って、本発明は、パーキンソン病やアルツハイマー病等に代表されるいわゆる神経変性疾患の予防及び治療に貢献することができるものであり、医療分野の技術革新に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】TfT蛍光強度増加を指標としたヒトαシヌクレイン線維形成のPQQの添加効果を示したグラフである。
【図2】TfT蛍光強度増加を指標としたヒトαシヌクレイン線維形成のPQQの濃度依存性を示したグラフである。
【図3】TfT蛍光強度増加を指標としたヒトαシヌクレイン線維形成の還元型PQQの添加効果を示したグラフである。
【図4】TfT蛍光強度増加を指標としたヒトαシヌクレイン線維形成のPQQ付加体の添加効果を示したグラフである。
【図5】TfT蛍光強度増加を指標としたヒトαシヌクレイン線維形成のPQQ付加体濃度依存性を示したグラフである。
【図6】ヒトαシヌクレイン凝集塊形成のPQQ添加効果を示したグラフである。
【図7】ヒトαシヌクレイン凝集塊形成のPQQ濃度依存性を示したグラフである。
【図8】PQQと結合したαシヌクレインの吸収波長を示した図である。
【図9】TfT蛍光強度増加を指標としたヒトαシヌクレイン線維形成に対するPQQと結合したαシヌクレインの添加効果を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロロキノリンキノン(PQQ)および/又はその誘導体を含むことを特徴とする蛋白質の凝集線維化を抑制する組成物。
【請求項2】
前記誘導体は、ピロロキノリンキノン(PQQ)が結合した蛋白質であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記誘導体は、ピロロキノリンキノン(PQQ)が結合した蛋白質の加水分解生成物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記蛋白質は、神経変性疾患関連蛋白質であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記神経変性疾患関連蛋白質は、ヒトαシヌクレインであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ピロロキノリンキノン(PQQ)とアミノ酸を混合し生成する化合物(PQQアダクト)を含むことを特徴とするヒトαシヌクレインの凝集線維化を抑制する組成物。
【請求項7】
前記アミノ酸は、セリンであることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の組成物を含有することを特徴とする神経変性疾患予防剤。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の組成物を含有することを特徴とする神経変性疾患治療剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−269769(P2007−269769A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235398(P2006−235398)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(503195850)有限会社アルティザイム・インターナショナル (31)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】