説明

神経変性障害の処置および予防のための5−HT6アゴニストの使用

本発明は、神経変性障害の処置、軽減または予防を必要とする患者において、神経変性障害を処置するか、軽減するか、または防止するための方法を提供する。この方法は、この患者に、有効量の5−ヒドロキシトリプタミン−6アゴニストを投与する工程を包含する。神経変性障害の処置における使用のための薬学的組成物もまた提供され、この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアと、有効量の5−ヒドロキシトリプタミン−6アゴニストとを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
グルタミン酸は、中枢神経系における主要な神経伝達物質であり、神経形成術において重要な役割を果たす。グルタミン酸の過剰な細胞外レベルは、急性神経変性障害(例えば、脳卒中、一過性脳虚血発作、または脊髄/脳損傷)および慢性神経変性障害(例えば、てんかん、アルツハイマー病、筋萎縮側索硬化症、ハンティングトン病、パーキンソン病、AIDS痴呆および網膜疾患)の両方の病態生理学に関連している(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。グルタミン酸の放出を阻害する化合物は、グルタミン酸機能不全が役割を果たす慢性疾患(例えば、慢性神経変性、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、筋萎縮側索硬化症、てんかん、精神分裂病、AIDS痴呆、または網膜疾患)の処置に有用であることが予測される。さらに、グルタミン酸の放出を阻害または軽減する化合物はまた、脳卒中、一過性脳虚血発作、または脳/脊髄損傷から生じる虚血(非特許文献6、非特許文献7)、または血流が一定時間停止されなければならない外科手術(例えば、心臓バイパス外科手術)(非特許文献8)から生じる虚血の処置のための、潜在的な神経保護因子もまた、提供し得る。アメリカ合衆国単独でも約500〜600万人の人々が、慢性神経変性障害または急性神経変性障害に罹患している。従って、神経変性状態を処置および予防するための効率的な化合物に対する必要性が存在する。
【非特許文献1】Holt,W.F.ら,Glutamate in Health and Disease:The Role of Inhibitors,Neuroprotection in CNS Diseases,Bar,P.R.およびBeal,M.F.編,Marcel Dekker,Inc.,New York,1997,p.87−199
【非特許文献2】Engelsen,B.A.ら,Alterations in Excitatory Amino Acid Transmitters in Human Neurological Disease and Neuropathology,Neurotoxicity of Excitatory Amino Acids,Guidotti,A.編,Raven Press Ltd.,New York,1990,p.311−332
【非特許文献3】Guidotti,A.編,Raven Press Ltd.,New York,1990,p.311−332
【非特許文献4】Ince,P.G.ら,The Role of Excitotoxicity in Neurological Disease,Res.Contemp.Pharmacother,(1997),8,p.195−212
【非特許文献5】Meldrum,B.S.,The Gultamate Synapse as a Therapeutical Target:Perspective for the Future,Prog.BrainRes.,(1998),p.441−458
【非特許文献6】Koroshetz,W.J.およびMoskowitz,M.A.,Emerging Treatment for Stroke in Humans,Trends in Pharmacol.Science,(1996),17,p.227−233
【非特許文献7】Dunn,C.D.R.,Stroke:Trends,Tratments and Markets,Scrip Reports,PJB Publications,Richmond Virginia,1995
【非特許文献8】Arrowsmith,J.E.ら,Neuroprotection of the Brain During Cardiopulmonary Bypass:A Randomized Trial of Remacemide During Coronary Artery Bypass in 171 Patients,Stroke,(1998),29,p.2357−2362
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
従って、神経変性障害の処置または予防のための方法を提供することが、本発明の目的である。
【0003】
神経変性因子の供給源を提供することが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のさらなる目的および特徴は、本明細書中以下に記載される詳細な説明によってより明白になる。
【0005】
(発明の概要)
本発明は、神経変性障害の処置を必要とする患者における神経変性障害の処置のための方法を提供する。この方法は、この患者に、治療有効量の5−ヒドロキシトリプタミン−6アゴニストを提供する工程を包含する。
【0006】
神経変性障害の処置における使用のための薬学的組成物もまた提供され、この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアと、有効量の5−ヒドロキシトリプタミン−6アゴニストとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
機能不全性グルタミン酸放出(特に、過剰なグルタミン酸放出)は、急性神経変性障害(例えば、脳卒中、一過性脳虚血発作、または脊髄/脳損傷)および慢性神経変性障害(例えば、てんかん、アルツハイマー病、筋萎縮側索硬化症、ハンティングトン病、パーキンソン病、AIDS痴呆および網膜疾患)の両方の病態生理学に関連している。
【0008】
さらに、内因性GABA機能は、虚血性脳損傷後、脳において著しく減少しているようである(Green A.R.ら,Neuroscience Letters,1992,138,141−144;およびGreen A.R.ら,Neuropharmacology,2000,39,1483−1493)。研究により、GABA作動性機能を刺激することができる薬物(例えば、GABAアゴニスト)が、グルタミン酸作動性神経伝達物質を減少させることができる因子と合わされたときに、神経保護効果を有し得ることが実証されている(Lydenら,Journal of Neurotrauma,1995,12(2),223−230)。
【0009】
さらに、神経成長因子ファミリーのタンパク質のメンバーである脳由来神経栄養因子(BDNF)は、ニューロンの神経保護および神経変性を促進することが示されている(Binder,D.K.およびScharfman,H.E.,Growth Factors,2004,22(3),pp.123−131)。それゆえ、BDNFのレベルを増加させる化合物は、ニューロンの生存および柔軟性を促進し、そしてそれに比例して神経保護効果を示す(Nagappan,G.およびLu,B.,Trends in Neurosciences,2005,28(9),pp.464−471)。
【0010】
驚くべきことに、5−HT6レセプターアゴニストが、効率的に、細胞外GABA濃度を増加させ、そして虚血誘導性因子によって引き起こされるグルタミン酸放出を減少させることが、今回見出された。さらに、5−HT6アゴニストが、効率的に、培養皮質ニューロンにおける脳由来神経栄養因子(BDNF)タンパク質のレベルを増加させることが、今回見出された。これらの発見は、5−HT6アゴニストが神経保護特性(ニューロンの生存および柔軟性を促進することを含む)を有し、そして神経変性障害の処置および予防のための効率的な治療剤であり得ることを強力に示す。
【0011】
有利なことに、神経変性障害の処置のための選択的5−HT6アゴニストの使用は、最小の副作用を有し得る。脳における5−HT6レセプターの独占的な局在に起因して、周辺の臓器系(例えば、心血管系)は、5−HT6アゴニストによって影響されない。さらに、5−HT6アゴニストの特異性は、作用の急性の開始および増強された治療有効性をもたらし得る。
【0012】
5−HT6アゴニストは、本明細書中では、当該分野で周知の慣習的な結合アッセイ法によって測定された場合に、5−HT6レセプターに結合することができ、かつ5−HT6レセプター部位において、セロトニンと比較して、アデノシン3’5’−環状一リン酸(cAMP)の25%より大きい蓄積、好ましくは50%より大きい蓄積、より好ましくは70%より大きい蓄積、特に90%より大きい蓄積を示す、任意の化合物と定義される。
【0013】
5−HT6アゴニストの中で、WO99/47516、英国特許第2,341,549号、米国特許第6,770,642号、同第6,767,912号、同第6,800,640号、同第6,727,246号および米国特許出願公開第2003−0236278号に記載されるものが、本発明における使用に適している。米国特許第6,770,642号、同第6,767,912号、同第6,800,640号、同第6,727,246号および米国特許出願公開第2003−0236278号は、本明細書中に参考として援用される。
【0014】
本発明の方法における使用のために適した5−HT6アゴニストの調製法は、上述の特許および特許出願に記載され、そして米国特許第4,940,710号にもまた記載されている。
【0015】
本発明の方法において使用するために適切な、好ましい5−HT6アゴニストとしては、国際公開第99/147516号、英国特許第2,341,549号、米国特許第6,770,642号および米国特許出願公開第2003−0236278号に開示され、そして式Iの構造
【0016】
【化2】

を有する化合物、またはその立体異性体あるいはその薬学的に受容可能な塩が挙げられ、式Iにおいて、
Xは、CHまたはNであり;
およびRは、各々独立して、H、ハロゲン、CN、OCO12、CO13、CONR1415、CNR16NR1718、SO19、NR2021、OR22、COR23、または各々が必要に応じて置換された、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基、C〜Cアルキニル基、C〜Cシクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基であり;
は、Xが、CHである場合、SOであり、またはXがNである場合、(CHNRであり;
は、H、ハロゲン、または各々が必要に応じて置換された、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、アリール基もしくはヘテロアリール基であり;
は、XがCHである場合、(CHNRであり、またはSOである場合、XがNであり;
nは、2または3の整数であり;
およびRは、各々独立して、H、または各々が必要に応じて置換されたC〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基、C〜Cアルキニル基、C〜Cシクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基であるか、あるいはRおよびは、これらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換された5〜7員環を形成し得、この5〜7員環は、必要に応じて、O、NまたはSから選択されるさらなるヘテロ原子を含有し;
は、必要に応じて置換された、アリール、ヘテロアリールまたは8〜13員の二環式環系もしくは三環式環系であり、この二環式環系もしくは三環式環系は、橋頭に1個のN原子を有し、そして必要に応じて、N、OもしくはSから選択される1個、2個もしくは3個のさらなるヘテロ原子を含み;
mは、0であるか、または1もしくは2の整数であり;
12、R13、R19およびR23は、各々独立して、H、または各々が必要に応じて置換された、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基、C〜Cアルキニル基、C〜Cシクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基であり;
14、R15およびR22は、各々独立して、H、または必要に応じて置換されたC〜Cアルキル基であり;そして
16、R17、R18、R20およびR21は、各々独立して、H、または必要に応じて置換されたC〜Cアルキル基であるか;あるいはR20およびR21は、これらが結合している原子と一緒になって、5〜7員環を形成し得、該5〜7員環は、必要に応じて、O、NまたはSから選択される別のヘテロ原子を含有する。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIを表し、そして用語シクロヘテロアルキルは、1個または2個のヘテロ原子(これらのヘテロ原子は、同じであっても異なっていてもよく、窒素、酸素および硫黄から選択される)を含み、そして必要に応じて、1つの二重結合を含む、5〜7員環系を表す。本明細書中で表されるようなこの用語に含まれる、シクロヘテロアルキル環系の例は、Xが、NR、OまたはSであり;そしてRが、Hまたは本明細書中以下に記載されるような任意の置換基である、以下の環である:
【0018】
【化3】

同様に、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語ヘテロアリールは、1個、2個または3個のヘテロ原子(これらのヘテロ原子は、同じであっても異なっていてもよく、N、OまたはSから選択される)を含む、5〜10員の芳香族環系を現す。このようなヘテロアリール環系としては、ピロリル、アゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソオキサゾリルなどが挙げられる。
【0019】
用語アリールは、例えば、6個〜14個の炭素原子を有する、炭素環式芳香族環系(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニルなど)を現す。
【0020】
用語ハロアルキルとは、本明細書中で使用される場合、1個〜(2n+1)個のハロゲン原子(これらは、同じであっても異なっていてもよい)を有するC2n+1基を表し、そして用語ハロアルコキシは、本明細書中で使用される場合、1個〜(2n+1)個のハロゲン原子(これらは、同じであっても異なっていてもよい)を有するOC2n+1基を表す。
【0021】
本明細書中で表されるような用語に含まれる、橋頭に1個のN原子を有し、そして必要に応じて、N、OもしくはSから選択される1個、2個もしくは3個のさらなるヘテロ原子を含む、8〜13員の二環式環系または三環式環系の例は、Wが、NR、OまたはSであり、そしてRが、Hまたは必要に応じて置換された本明細書中以下に記載されるような置換基である、以下の環系である:
【0022】
【化4】

本明細書および特許請求の範囲において、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキルアリールまたはヘテロアリールのような用語が、必要に応じて置換されているように表される場合、必要に応じて存在する置換基は、薬学的化合物の開発またはこのような化合物の修飾において、これらの化合物の構造/活性、持続性、吸収、安定性または他の有利な特性に影響を与えるために通常使用される置換基のうちの、1つ以上(例えば、2個または3個)であり得る。このような置換基の具体的な例としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルボニル基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、カルバモイル基、アルキルアミド基、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基、ベンジルオキシ基、ヘテロシクリル基(例えば、ヘテロアリール基もしくはシクロヘテロアリール基)またはシクロアルキル基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子または低級アルキル基である。代表的に、0〜3個の置換基が、存在し得る。上記置換基のいずれかが、基として、または基の一部として、アルキル置換基を含む場合、このアルキル置換基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、そして12個まで、好ましくは6個まで、より好ましくは4個までの炭素原子を含み得る。
【0023】
式Iの化合物は、英国特許第2,341,549号、米国特許第6,770,642号および米国特許出願公開第2003−0236278号に記載される方法に従って、調製され得る。
【0024】
本発明の方法において使用するために適切な、より好ましい5−HT6アゴニストは、Xが、CHであり;nが、2であり;そしてRが、各々が必要に応じて置換されるフェニル基またはイミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾリル基である、式Iの化合物が挙げられる、1−スルホニルトリプタミン誘導体である。本発明の方法において使用するために適切な、より好ましい5−HT6アゴニストの別の群は、Xが、Nであり;nが、2であり;そしてRが、各々が必要に応じて置換されるフェニル基またはイミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾリル基である、式Iの化合物が挙げられる、3−スルホニルアザインドール誘導体である。
【0025】
本発明の方法において使用するために適切な式Iの5−HT6アゴニスト化合物のうちでもとりわけ、2−{1−[6−クロロイミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾール−5−イル)スルホニル]−1H−インドール−3−イル}エタンアミン;(2−{3−[(2,5−ジメトキシフェニル)スルホニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}エチル)アミン;N−(2−{3−[(3−フルオロフェニル)スルホニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}エチル)−N,N−ジメチルアミン;2−{[1−(フェニルスルホニル)−1H−インドール−3−イル]エチル}−N,N−ジメチルアミン;その薬学的に受容可能な塩;またはその立体異性体である。
【0026】
5−HT6レセプターアゴニスト活性を示す化合物は、酸(例えば、従来の薬学的に受容可能な酸であり、例えば、酢酸、リン酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、硝酸、スルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸など)と、酸付加塩を形成し得る。従って、5−HT6レセプターアゴニストの塩は、本発明の方法に含まれる。
【0027】
本発明の方法は、5−HT6アゴニスト化合物のエステル、カルバメートまたは他の従来のプロドラッグ形態を含み、これらは、一般に、5−HT6アゴニスト化合物の機能性誘導体であり、インビボで活性な部分に容易に変換される。同様に、本発明の方法は、5−HT6アゴニスト(例えば、式Iの化合物)または特に開示されていないが投与の際にインビボで5−HT6アゴニストに変換される化合物による、神経変性障害の処置を包含する。また、5−HT6アゴニスト化合物の代謝産物も含まれ、この5−HT6アゴニスト化合物の代謝産物は、生物学的システムへのそのアゴニストの導入の際に生成される活性種として規定される。
【0028】
5−HT6レセプターアゴニスト活性を示す化合物は、1つ以上の立体異性体として存在し得る。種々の立体異性体としては、鏡像異性体、ジアステレオマー、アトロプ異性体および幾何異性体が挙げられる。当業者は、ある立体異性体が、他の立体異性体と比べて富化されるかまたは他の立体異性体から分離された場合に、より活性であり得るか、または有利な効果を示し得ることを理解する。さらに、当業者は、上記の立体異性体をどのように分離するか、富化するか、または選択的に調製するかを理解している。したがって、本発明の方法は、5−HT6アゴニスト化合物、それらの立体異性体およびそれらの薬学的に受容可能な塩を包含する。上記アゴニスト化合物は、立体異性体の混合物、個々の立体異性体、または最適に活性な形態もしくは鏡像異性的に純粋な形態として存在し得る。
【0029】
したがって、本発明は、神経変性障害の処置および予防を必要とする患者における神経変性障害の処置および予防のために有効な方法を提供し、その方法は、その患者に、本明細書で上に記載されるような5−HT6アゴニストの治療有効量を提供する工程を包含する。
【0030】
本発明の一実施形態において、それを必要とする患者において脳由来神経栄養因子タンパク質を増加させるための方法が提供され、その方法は、組成物の患者に、本明細書で上に記載されるような5−HT6アゴニストの治療有効量を提供する工程を包含する。
【0031】
上記5−HT6アゴニストは、経口投与または非経口投与によって、あるいは治療因子を必要とする患者に対する治療因子の効果的な投与であることが公知の任意の一般的様式によって、提供され得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、治療有効量は、一定の程度の神経保護を提供するか、あるいは神経変性または過剰なグルタミン酸放出もしくは機能不全性グルタミン酸放出に関連する症状を処置、予防または改善するのに十分な量である。
【0033】
本発明の方法による処置に適した神経変性障害は、慢性神経変性障害および急性神経変性障害の両方を含む。慢性神経変性障害としては、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンティングトン病、パーキンソン病、エイズ痴呆、てんかんまたは網膜疾患が挙げられるが、これらに限定されない。急性神経変性障害としては、卒中、頭部外傷もしくは脊椎外傷、または仮死が挙げられるが、これらに限定されない。卒中としては、急性血栓塞栓性卒中、局所性虚血および全虚血、一過性脳虚血性発作または脳虚血に伴う他の脳血管の問題が挙げられる。他の急性神経変性状態は、頭部外傷、脊椎外傷、全身性無酸素症(general anoxia)、低酸素症(胎児低酸素症を含む)、低血糖、低血圧、および脱臼整復、過剰灌流(hyperfusion)または低酸素症からの進行の間に見られる類似の傷害と関連している。
【0034】
本発明の方法は、一連の出来事(手術中(特に、心臓手術)を含む)、頭蓋出血(cranial hemmorhage)の出来事、周産期仮死またはてんかん重積症における出来事(特に、脳への血流が一定の期間停止される場合)に有用であり得る。
【0035】
神経変性障害の処置において提供される治療有効量は、患者のサイズ、年齢および応答パターン、その障害の重篤度、担当医の判断などに従って変化し得る。一般に、経口投与に有効な1日あたりの量は、約0.01mg/kg〜1,000mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg〜500mg/kgであり、非経口投与に有効な量は、約0.1mg/kg〜100mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg〜50mg/kgであり得る。
【0036】
実際の実務において、上記5−HT6アゴニストは、5−HT6アゴニスト化合物またはその前駆体を固体形態または液体形態で、何も加えずにまたは1つ以上の従来の薬学的キャリアもしくは賦形剤と組み合わせてのいずれかで投与することによって提供される。したがって、本発明は、神経変性障害の処置および予防において使用するための薬学的組成物を提供し、その薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび本明細書で上に記載されるような5−HT6アゴニストの有効量を含む。
【0037】
本発明の組成物において使用するのに適した固体キャリアとしては、矯味矯臭剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、流動促進剤、圧縮補助剤(compression aide)、結合剤、錠剤崩壊剤または封入物質としての役割も果たし得る1つ以上の物質が挙げられる。散剤では、キャリアは、微粉化された5−HT6アゴニスト化合物との混合物中に存在する微粉化された固体であり得る。錠剤では、上記5−HT6アゴニスト化合物は、必要な圧縮特性を有するキャリアと適切な割合で混合され、望ましい形状およびサイズに圧縮され得る。上記散剤および錠剤は、99重量%までの5−HT6アゴニスト化合物を含み得る。本発明の組成物において使用するのに適した固体キャリアとしては、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂が挙げられる。
【0038】
液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤およびエリキシル剤を調製するのに適した任意の薬学的に受容可能な液体キャリアが、本発明の組成物において使用され得る。5−HT6アゴニスト化合物は、薬学的に受容可能な液体キャリア(例えば、水、有機溶媒、または薬学的に受容可能なオイルもしくは脂、またはそれらの混合物)に溶解または懸濁され得る。上記液体組成物は、他の適切な薬学的添加剤(例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝材、保存剤、甘味料、矯味矯臭剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定剤、浸透圧調節剤など)を含み得る。経口投与および非経口投与に適した液体キャリアの例としては、水(特に、上記のような添加剤(例えば、セルロース誘導体)を含むもの、好ましくは、カルボキシメチルセルロース溶液)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール(例えば、グリコール)を含む)またはそれらの誘導体、あるいはオイル(例えば、ヤシ油およびラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与に関して、キャリアはまた、油性エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはミリスチン酸イソプロピル)であり得る。
【0039】
滅菌溶液または懸濁液である本発明の組成物は、筋内注射、腹腔内注射または皮下注射に適している。滅菌溶液はまた、静脈内投与され得る。経口投与に適している本発明の組成物は、液体組成物形態または固体組成物形態のいずれかであり得る。
【0040】
より明りょうな理解のため、そして本発明をより明りょうに説明するために、その特定の実施例が、本明細書で以下に示される。以下の実施例は、単に例示に過ぎず、いかなる様式でも本発明の範囲および基本的な原理を制限するものと理解されるべきではない。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
(種々の5−HT6リガンドの5−HT6結合親和性およびcAMP生成の決定)
A)試験化合物の5−HT6結合親和性の評価
セロトニン5−HT6レセプターに対する試験化合物の親和性を、以下の様式で評価する。ヒトクローン化5−HT6レセプターを発現する培養Hela細胞を採取し、低速で(1,000×g)10.0分間遠心分離して、培養培地を除去する。採取した細胞を、半分の体積の新鮮な生理的リン酸緩衝生理食塩水溶液に懸濁させ、同じ速度で再度遠心分離する。この操作を繰り返す。次いで、回収した細胞を10体積の50mM Tris HCl(pH7.4)および0.5mM EDTA中でホモジナイズする。そのホモジネートを40,000×gで30.0分間遠心分離し、沈殿物を回収する。得られたペレットを、10体積のTris.HCl緩衝液に再懸濁させ、同じ速度で再度遠心分離する。最後のペレットを、小体積のTris.HCl緩衝液に懸濁させ、組織タンパク質の含有量を10μl〜25μlの体積のアリコート中で決定する。Lowryら、J.Biol.Chem.,193:265(1951)に記載される方法にしたがって、ウシ血清アルブミンをタンパク質決定における標準として使用する。懸濁した細胞膜の体積を調整して、1mlの懸濁液あたり1.0mgの組織タンパク質濃度にする。調製した膜懸濁液(10倍濃縮されたもの)を、1.0mlの体積に等分し、その後の結合実験で使用するまで−70℃で保存する。
【0042】
結合実験を、96ウェルのマイクロタイタープレートの形式で、200μlの全体積で行う。各ウェルに、以下の混合物を添加する:10.0mM MgClと0.5mM EDTAとを含む50mM Tris.HCl緩衝液(pH7.4)で作製されたインキュベーション緩衝液(80.0μl)、および[H]−LSD(S.A.,86.0Ci/mmol、Amersham Life Scienceから入手可能)(3.0nM)(20μl)。ヒトセロトニン5−HT6レセプターにおける[H]LSDの解離定数(K)は、[H]LSDの漸増濃度を用いる飽和結合によって決定されるように、2.9nMである。その反応は、100.0μlの組織懸濁液の最終添加によって開始される。非特異的結合を、10.0μMのメチオセピンの存在下で測定する。試験化合物を、20.0μlの体積で添加する。
【0043】
上記の反応を、室温において暗中で120分間進行させ、その時点で、結合型リガンド−レセプター複合体を、Packard Filtermate(登録商標)196 Harvesterを用いて96ウェルユニフィルターで濾過して除去した。このフィルターディスク上に捕捉された結合型複合体を、風乾させた。浅いウェル各々に40.0μlのMicroscint(登録商標)−20シンチラントに添加した後、その放射能を、6つの光増倍管を備えたPackard TopCount(登録商標)において測定した。このユニフィルターを、熱シールし、トリチウム効率31.0%にてPackardTopCount(登録商標)において計数した。
【0044】
5−HT6レセプターに対する特異的結合を、(結合した全放射能)−(10.0μM非標識メチオテピンの存在下で結合した量)として定義する。種々の濃度の試験化合物の存在下における結合を、試験化合物の非存在下における特異的結合のパーセンテージとして表わす。それらの結果を、試験化合物のlog濃度に対するlog結合%としてプロットする。コンピューター支援プログラムであるPrism(登録商標)を用いるデータ点の非線形回帰分析によって、95%信頼限界で、試験化合物IC50値およびK値が得られた。データ点の線形回帰線をプロットする。それから、そのIC50値を決定し、そのK値を、等式:
= IC50/(1+L/K
に基づいて決定する。この等式において、Lは、使用した放射性リガンドの濃度であり、Kは、そのレセプターに対するそのリガンドの解離定数であり、両方ともnMで表わす。
【0045】
このアッセイを使用して、以下のKi値を決定し、それを、上記の5−H6レセプターに対する結合を示すことが公知である代表的化合物により得られる値と比較する。それらのデータを、以下の表Iにおいて示す。
((B)cAMP蓄積を使用する5−HT6アゴニスト活性の決定)
細胞内cAMPレベルを、HELA細胞中に安定にトランスフェクトされたヒト5−HT6レセプターを含む24ウェルプレートを使用して測定する。このアッセイの開始時に、細胞維持用の培地を吸引し、細胞を、KREBS緩衝液中にて37℃で15分間プレインキュベートする。この一次インキュベーションの後、この緩衝液を吸引し、さらなるインキュベーションを、500μM IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)を含むKREBS緩衝液中にて37℃で5分間実施する。その後、細胞を、10−6M〜10−11Mの範囲の試験化合物濃度とともに、37℃で10分間インキュベートする。細胞内cAMPレベルを、cAMP SPAスクリーニングキットを介するラジオイムノアッセイによって決定する。データを、GraphPad Prism(GraphPad Software,San Diego,CA)を用いてグラフ分析する。5−HT6アゴニストを、本明細書によって、セロトニン(100nM)の添加により測定されるcAMPレベルに対して≧25%の活性を示す化合物として低芸する。その値を、Emax(%)として記録して表Iに示す。
【0046】
【表1】

(実施例2)
(ニューロン生存における5−HT6アゴニストの評価)
この評価において、ニューロン培養物を、E16ラット胚から調製する。24時間後、試験化合物Bを、この培養物に対して種々の濃度で添加する。72時間後、ニューロン生存を、神経フィラメントELISAによって決定する。
【0047】
そのデータは、全神経フィラメント含量として表わす。この評価における試験化合物BについてのEC50は、50nMである。それらの結果を、図1において示す。
(結果および考察)
図1において示されるように、培養におけるニューロン生存を、72時間後に存在する神経フィラメントの量によって測定する。試験化合物Bで培養ニューロンを処理すると、ビヒクル処理したコントロールと比較した場合に、その神経フィラメント含量は増加する。生存の顕著な増強を提供する試験化合物Bの最低濃度は、10nMである。
【0048】
(実施例3)
(培養した皮質ニューロンにおける神経突起成長に対する5−HT6アゴニストの評価)
この評価において、皮質ニューロン培養物を、E16ラット胚から調製する。24時間後、試験化合物Bを、この培養物に対して種々の濃度で添加する。72時間後に、細胞をチューブリン抗体(TUJ−1)で染色すること、およびEnhanced Neurite Outgrowth(ENO)アルゴリズムを使用して、Cellomics ArrayScanを用いて神経突起の長さを測定することによって、そのデータを、全神経突起の長さとして表わす。この評価における試験化合物BについてのEC50は、48nMである。それらの結果を、図2において示す。
【0049】
(結果および考察)
図2において示されるように、培養ニューロンの全神経突起の長さを、培養72時間後に定量する。培養ニューロンを試験化合物Bで処理すると、ビヒクル処理したコントロールと比較した場合、全神経突起の長さを増加させた。全神経突起の長さの顕著な増強を手共する試験化合物Bの最低濃度は、10nMである。
【0050】
(実施例4)
(小脳顆粒ニューロンにおける酸素およびグルコースの除去に対する5−HT6アゴニストの神経保護効果の評価)
P7仔ラットの脳から単離した小脳を、1mm片になるように切断し、HBSS中に0.3mg/mlのトリプシンを含むチューブへと移す。酵素消化の後、その組織を機械的に破砕する。その上清を、収集し、12000rpにて10分間遠心分離する。得られたペレットを、完全培地(Neurobasal、25nMカリウム、0.5mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、10% FBS)注に再懸濁し、24ウェルプレート中に密度0.5×10細胞/ウェルにてプレーティングする。24時間後、培地を、完全無血清培地(Neurobasal、25nMカリウム、0.5mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、B−27補充物)で交換する。
(CGNにおける酸素グルコース除去(OGD))
これは、グルタミン酸誘導性興奮毒性に関わる虚血様ニューロン損傷についての充分に特徴付けられたモデルである(A.Kaasikら、Neuroscience(2001)102,pp427−432)。培養物を、実験前にインビトロにて14日間維持する。培養物を、種々の濃度の試験化合物Cで1時間予備処理し、嫌気チャンバーへと移す。このチャンバーにおいて、その培地を、脱酸素処理済み緩衝液で交換し、新しい試験化合物Cの存在下で4時間維持する。その4時間後のOGDの後、脱酸素処理済み緩衝液を、完全培地で交換する。培養物を、新しい試験化合物Cの存在下で24時間維持する。その24時間の終了時に、その培地中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を測定することによって細胞死を測定し、細胞死のパーセントとして表わす。それらの結果を、図3において示し、5つの実験からの平均±標準偏差(SD)として表わす。「sham(偽)」と表示されている棒は、OGF処理も薬物処理もすることなく操作および培地変化に供された培養物を用いて得られた結果を示す。
【0051】
(結果および考察)
図3において示されるように、4時間のOGDに対してCGN培養物を曝露すると、その培地中への細胞質酵素(LDH)の放出によって測定した場合に50%を超える細胞死をもたらす。試験化合物Cで培養ニューロンを予備処理し、その後、そのニューロンをOGDに対して曝露して、試験化合物Cの存在下で24時間の回復期間を与えると、ニューロン細胞死が用量依存的に減少する。顕著な保護を提供する試験化合物Cの最低濃度は、10nMである。1μMの試験化合物で処理すると、ニューロン死が50%減少した。
【0052】
(実施例5)
(小脳顆粒ニューロンにおけるカリウム撤去(withdrawal)誘導性アポトーシスに対する5−HT6アゴニストの神経保護効果の評価)
上記CGN培地におけるカリウム撤去(withdrawal)(すなわち、25nMカリウムの置換)は、アポトーシスにするよるニューロン細胞死についての充分に確立されたモデルである(T.M.MillerおよびE.M.Johnson,Journal of Neuroscience,(1996)16(23),pp7487−7495)。培養物を、実験前に7日間維持する。25mM Kを含む完全培地を、5mM Kを含む完全培地で交換する。種々の濃度の試験化合物Cを、この培養物に添加する。24時間後、ELISAを介してDNA断片化を測定することによって、アポトーシス細胞死を測定する。アポトーシス細胞死を、アポトーシス%として表わす。その結果を、2つの実験からの平均±標準偏差(SD)として示し、図4に示す。
【0053】
(結果および考察)
図4において観察され得るように、5mMカリウムによる25mMカリウムの置換は、24時間の間隔を置いた後に、75%のアポトーシス性ニューロン細胞死を誘導する。上記の低カリウム処理の間に試験化合物Cが存在すると、このモデルにおいてアポトーシスの尺度として使用される断片化したDNAの量を顕著かつ用量依存的に低下させる。評価した試験化合物Cの最低濃度(0.3μM)は、細胞死を50%低下させた。一方、アポトーシスのほぼ完全な保護が、3.0μMの試験化合物Cの存在下で見出された。
【0054】
(実施例6)
(培養皮質ニューロンにおける脳由来神経栄養因子タンパク質レベルに対する5−HT6アゴニストの効果の評価)
この評価において、皮質ニューロン培養物を、E16ラット胚から調製し、プレコーティングした10cmペトリ皿にプレートする。24時間後、試験化合物Bを、この培養物に添加する。脳由来神経栄養因子(BDNF)タンパク質のレベルを、その細胞を溶解してBDNFサンドイッチELISAを使用することによって、72時間後に測定した。より具体的には、ELISAプレートを、抗BDNFモノクローナル抗体でコーティングした。非特異的結合をブロックし、50μgのサンプルタンパク質を添加した。第二の抗BDNF抗体を添加してインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化抗IgY抗体を添加してインキュベートした。TMB溶液を添加し、比色反応をプレートリーダーにおいて測定した(吸光度450nm)。BDNFレベルを、培養72時間後に定量する。そのデータを、図6においてグラフ表示する。
【0055】
(結果および考察)
図6において示されるように、試験化合物Bで培養ニューロンを処理すると、ビヒクル処理したコントロールと比較した場合に、BDNFタンパク質レベルを顕著に増加させた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、神経フィラメントELISAによって測定された、神経生存における5−HT6アゴニスト(試験化合物B)の神経保護効果の概略図である。
【図2】図2は、神経突起成長における5−HT6アゴニスト(試験化合物B)の神経保護効果の概略図である。
【図3】図3は、小脳顆粒ニューロンにおける、OGD誘導性ニューロン細胞死に対する5−HT6アゴニスト(試験化合物C)の神経保護効果の概略図である。
【図4】図4は、小脳顆粒ニューロンにおける、カリウム撤去(withdrawal)誘導性アポトーシスに対する5−HT6アゴニスト(試験化合物C)の神経保護効果の概略図である。
【図5】図5は、培養皮質ニューロンにおける脳由来神経栄養因子(BDNF)タンパク質レベルに対する5−HT6アゴニスト(試験化合物B)の効果の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性障害の処置を必要とする患者における、神経変性障害の処置のための方法であって、該方法は、該患者に、治療有効量の5−ヒドロキシトリプタミン−6アゴニストを提供する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記5−ヒドロキシトリプタミン−6アゴニストが、1−スルホニルトリプタミン誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記5−ヒドロキシトリプタミン−6アゴニストが、1−アミノアルキル−3−スルホニルアザインドール誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記5−ヒドロキシトリプタミン−6アゴニストが、式Iの化合物
【化1】

、またはその立体異性体あるいはその薬学的に受容可能な塩である、請求項1に記載の方法であって、式Iにおいて、
Xは、CHまたはNであり;
およびRは、各々独立して、H、ハロゲン、CN、OCO12、CO13、CONR1415、CNR16NR1718、SO19、NR2021、OR22、COR23、または各々が必要に応じて置換される、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基、C〜Cアルキニル基、C〜Cシクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基であり;
は、XがCHである場合、SOであり、またはXがNである場合、(CHNRであり;
は、H、ハロゲン、または各々が必要に応じて置換される、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、アリール基もしくはヘテロアリール基であり;
は、XがCHである場合、(CHNRであり、またはXがNである場合、SOであり;
nは、2または3の整数であり;
およびRは、各々独立して、H、または各々が必要に応じて置換される、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基、C〜Cアルキニル基、C〜Cシクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基であるか、あるいはRおよびは、これらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換された5〜7員環を形成し得、該5〜7員環は、必要に応じて、O、NまたはSから選択されるさらなるヘテロ原子を含有し;
は、必要に応じて置換された、アリール、ヘテロアリールまたは8〜13員の二環式環系もしくは三環式環系であり、該二環式環系もしくは三環式環系は、橋頭に1個のN原子を有し、そして必要に応じて、N、OもしくはSから選択される1個、2個もしくは3個のさらなるヘテロ原子を含み;
mは、0であるか、または1もしくは2の整数であり;
12、R13、R19およびR23は、各々独立して、H、または各々が必要に応じて置換された、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基、C〜Cアルキニル基、C〜Cシクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基であり;
14、R15およびR22は、各々独立して、H、または必要に応じて置換されたC〜Cアルキル基であり;そして
16、R17、R18、R20およびR21は、各々独立して、H、または必要に応じて置換されたC〜Cアルキル基であるか;あるいはR20およびR21は、これらが結合している原子と一緒になって、5〜7員環を形成し得、該5〜7員環は、必要に応じて、O、NまたはSから選択される別のヘテロ原子を含有する、
方法。
【請求項5】
式Iの化合物において、Xが、CHであり;nが、2であり;そしてRが、各々が独立して置換されたフェニル基またはイミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾール基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式Iの化合物において、Xが、Nであり;nが、2であり;そしてRが、各々が必要に応じて置換されたフェニル基またはイミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾール基である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
式Iの化合物が、以下:
2−{1−[6−クロロイミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾール−5−イル)スルホニル]−1H−インドール−3−イル}エタンアミン;
(2−{3−[(2,5−ジメトキシフェニル)スルホニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}エチル)アミン;
N−(2−{3−[(3−フルオロフェニル)スルホニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}エチル)−N,N−ジメチルアミン;
2−{[1−(フェニルスルホニル)−1H−インドール−3−イル]エチル}−N,N−ジメチルアミン;
これらの薬学的に受容可能な塩;および
これらの立体異性体、
からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記障害が、急性神経変性障害である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記障害が、慢性神経変性障害である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記障害が、脳卒中;頭部外傷;脊椎外傷;仮死、アルツハイマー病;ハンティングトン病;パーキンソン病;てんかん;筋萎縮性側索硬化症;エイズ痴呆および網膜疾患から選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
薬学的に受容可能なキャリアと、有効量の5−HT6アゴニストまたは請求項2〜8のいずれか1項において定義される5−HT6アゴニストとを含有する、神経変性障害を処置するための薬学的組成物。
【請求項12】
神経変性障害を処置するための医薬の調製における、5−HT6アゴニストまたは請求項2〜8のいずれか1項において定義される5−HT6アゴニストの使用。
【請求項13】
前記障害が、脳卒中;頭部外傷;脊椎外傷;仮死、アルツハイマー病;ハンティングトン病;パーキンソン病;てんかん;筋萎縮性側索硬化症;エイズ痴呆および網膜疾患から選択される、請求項12に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−523146(P2008−523146A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546799(P2007−546799)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/044820
【国際公開番号】WO2006/065710
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(502161704)ワイス (51)
【Fターム(参考)】