説明

秘匿情報入力装置及び方法

【課題】秘匿情報を他者に盗み見等されることなくより安全に入力できるようにし、これにより秘匿性のさらなる向上を図る。
【解決手段】操作ユニット2にペルチェ素子を用いた温度提示部23を配置する。情報処理ユニット1では、暗証番号の入力候補となる0〜9の数字を一定の時間間隔(1秒)でランダムに1つずつ選択し、この選択した数字に対応する温度制御情報を読み出して温度提示制御信号TCSを生成し、操作ユニット2へ送信する。これにより、温度提示部23に上記0〜9の数字に対応する温度パターンが一定時間ずつランダムに提示される。そして、上記温度提示中に操作ユニット2で利用者が選択キー213を押下した場合に、情報処理ユニット1ではその操作信号KSを受信した時点で提示中の温度パターンに対応する数字を、入力された暗証番号の1桁を表す数字として入力情報記憶部142に記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば現金自動支払機やクレジットカード決裁受付装置において、暗証番号等の秘匿情報の入力を受け付けるための秘匿情報入力装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関に設置された現金自動支払機や商店に設置されたクレジットカード決済受付装置では、本人認証のために暗唱番号の入力が要求される。しかし、暗証番号としては一般に4桁の数字が用いられるため、テンキーによる数字の入力操作を盗み見られると、暗証番号が漏洩してしまう。そこで、テンキーに覆いを設けたり、暗証番号として数字と数字以外の記号やアイコンを組み合わせることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−301674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、これらの対策を講じたとしても、利用者自身がキーを操作して数字又は記号等を入力操作することに変わりがない。このため、利用者の入力操作を盗み見ることで暗証番号が推測されるおそれは依然として解消されず、暗証番号の漏洩を完全に防止することは困難だった。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、秘匿情報を他者に盗み見等されることなくより安全に入力できるようにし、これにより秘匿性のさらなる向上を図った秘匿情報入力装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにこの発明の一観点は、操作デバイスに、利用者が操作する操作スイッチの他に、所定の温度範囲内で温度を発生可能な温度提示体を設け、情報処理ユニットには、秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号の各々に対応付けて予め設定された温度制御情報を記憶した記憶部を設ける。そして、情報処理ユニットの制御の下で、秘匿情報の入力受付期間に上記記憶部から温度制御情報を読み出して、この読み出された温度制御情報により表される温度を上記温度提示体から時分割に発生させ、操作スイッチが操作されたときにこの時点で発生されている温度を表す温度制御情報に対応する数字又は記号を、入力された秘匿情報として記憶するようにしたものである。
【0007】
このような構成であるから、暗証番号等の秘匿情報を入力する際に、秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号がそれぞれ異なる温度として温度提示体で提示される。このため利用者は、温度提示体を例えば自身の指で触れた状態において、温度提示体により提示される温度により数字又は記号を認識することが可能となる。そして、自身が入力しようとする秘匿情報の数字又は記号を認識した時点で操作スイッチを操作すると、この操作時点で提示されている温度に対応する数字又は記号が入力情報として記憶される。
したがって、数字キー等を操作して秘匿情報を入力したり音声入力により秘匿情報を入力する場合のように、入力情報を第三者により盗み見されたり盗み聞きされる心配はなく、これにより秘匿情報を漏洩することなく安全に入力することが可能となる。
【0008】
また、この発明の一観点は以下のような各種実施態様を備えることも特徴とする。
第1の実施態様は、温度を提示する際に、秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号に対応する温度制御情報を前記記憶部からランダムに読み出し、このランダムに読み出された温度制御情報により表される温度を温度提示体において一定時間ずつ発生させるものである。
このようにすると、数字又は記号が予め決められた順ではなくランダムに読み出され、温度提示体において温度として一定時間ずつ、つまり同一の条件で提示される。このため、第三者が操作スイッチの操作タイミングから入力情報を推測しようとしても、推測は困難となる。
【0009】
第2の実施態様は、記憶部に、秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号の各々に対応付けてそれぞれ変化パターンの異なる温度を発生させるための温度制御情報を記憶する。そして、温度を提示する際に、上記記憶部から読み出された温度制御情報に従い、変化パターンの異なる温度を温度提示体において発生させるものである。
一般に、人の皮膚は温度変化に対し敏感に反応するという性質を有している。このため、秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号を温度の変化パターンにより区別して提示することで、数字又は記号を温度差のみにより区別して提示しようとする場合に比べ、利用者は提示された数字又は記号をさらに正確に認識することが可能となる。
【0010】
第3の実施態様は、記憶部に、変化パターンの異なる温度を発生させるための温度制御情報として、温度が一定の変化率で変化するリニア状変化パターンを表す情報と、温度がインパルス状に変化するインパルス状変化パターンを表す情報を選択的に記憶しておき、温度を提示する際に、上記記憶部から読み出された温度制御情報がリニア状変化パターンを表す情報である場合には当該変化パターンに従い温度提示体において発生される温度をリニアに変化させ、上記読み出された温度制御情報がインパルス状変化パターンを表す情報である場合には当該変化パターンに従い温度提示体において発生される温度をインパルス状に変化させるようにしたものである。
このようにすると、数字又は記号をより明確に区別することが可能となり、これにより温度の変化パターンとして提示された数字又は記号に対する利用者の認識率を高めることが可能となる。また、温度変化のパターン数をさらに増やすことができ、これにより入力候補となる数字又記号の種類をさらに増やすことが可能となる。
【0011】
第4の実施態様は、操作スイッチの操作面上に温度提示体を取着し、温度提示体が押下された場合に当該押下を上記操作スイッチにより検出するようにしたものである。
このようにすると、利用者は温度提示体から指を離すことなく、同じ指によりそのまま入力操作を行うことが可能となる。このため、温度提示体と操作スイッチが別の位置に配置されている場合に比べ、利用者の操作性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、この発明によれば、秘匿情報を他者に盗み見等されることなく安全に入力することができ、これにより秘匿性のさらなる向上を図った秘匿情報入力装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に係わる情報処理装置のハードウエア及びソフトウエアの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した操作デバイスの構成を示す平面図である。
【図3】図2に示した操作デバイスの部分断面図である。
【図4】図1に示した秘匿情報入力装置の温度制御情報記憶部に記憶される温度変化パターン情報を示す図である。
【図5】図1に示した秘匿情報入力装置の情報処理ユニットによる暗証番号入力制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる情報処理装置のハードウエア及びソフトウエアの構成を示すブロック図である。
この秘匿情報入力装置は、例えば金融機関の現金自動支払機、又は商業施設のクレジットカード用暗証番号の入力装置として使用されるもので、情報処理ユニット1と、この情報処理ユニット1に対し信号ケーブルを介して接続される操作ユニット2とから構成される。なお、情報処理ユニット1と操作ユニット2との間は、信号ケーブルの代わりに無線回線を介して接続することも可能である。
【0015】
先ず操作ユニット2は、操作デバイス21と、駆動部22と、温度提示部23とを備えている。操作デバイス21は例えばタッチパネルを使用したもので、図2に示すようにテンキー211及び確定キー212を有し、さらに選択キー213を有している。そして、これらのキーが操作されたときにその操作信号KSを信号ケーブルを介して情報処理ユニット1へ送信する。
【0016】
温度提示部23は、図2に示すように操作ユニット2の操作パネル上においてユーザが無理なく指の腹を触れることが可能な位置に設置される。温度提示部23は、例えば一辺が10mmの正方形をなす1個のペルチェ素子からなり、例えば図3に示すように選択キー213のキートップ上に設置される。選択キー213は、ユーザが温度提示部23に指を置いた状態で暗証番号を選択するための押下操作を行ったときに、当該押下操作を検出して操作信号KSを出力する。
【0017】
駆動部22は、情報処理ユニット1から信号ケーブルを介して送られる温度提示制御信号TCSを受信する。そして、この受信した温度提示制御信号TCSに従い、温度提示部23を構成するペルチェ素子に駆動信号を与えることで、温度提示部23を発熱又は冷却させる。
【0018】
一方、情報処理ユニット1は、マイクロプロセッサからなる中央処理ユニット(CPU;Central Processing Unit)11を備える。このCPU11には、バス12を介してプログラムメモリ13及びデータメモリ14が接続され、さらに通信インタフェース15、表示インタフェース16及び操作インタフェース17が接続されている。
【0019】
通信インタフェース15は、CPU11の制御の下で、図示しないホストコンピュータとの間で認証処理や入出金処理等のための通信を行う。
表示インタフェース16には、表示デバイス18が接続される。表示デバイス18はLCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなる。表示インタフェース16は、CPU11からの指示に従い、操作ガイダンス情報や入出金データ等を上記表示デバイス18に表示させる。
【0020】
操作インタフェース17は、操作ユニット2の操作デバイス21から信号ケーブルを介して送られた操作信号KSをCPU11に転送すると共に、CPU11の制御の下で温度提示制御信号TCSを信号ケーブルを介して操作ユニット2の駆動部22へ送出する。
【0021】
データメモリ14には、この発明を実施するために必要な記憶部として、温度制御情報記憶部141と、入力情報記憶部142が設けられている。
温度制御情報記憶部141には、暗証番号の入力候補となる0〜9の数字に対応付けて、当該数字をそれぞれ温度で区別して表現するために予め設定された温度制御情報が記憶される。温度制御情報には、任意の一定の温度を発生させるための情報と、所定のパターンで変化する温度を発生させるための情報が含まれる。このうち所定のパターンで変化する温度を発生させるための情報には、温度が一定の変化率で変化するリニア状変化パターンを表す情報と、温度がインパルス状に変化するインパルス状変化パターンを表す情報とが含まれる。
【0022】
図4は、上記0〜9の数字にそれぞれ対応付けて設定された温度変化パターンの一例を示すもので、図中TM0は予め設定された基準温度レベルを示している。同図に示すように各温度変化パターンは、上記基準温度TM0を基準に温度が増加又は低下するように設定される。なお、基準温度レベルは、例えば図示しない温度センサにより室温を検出し、この検出された室温と同等の値に設定される。
【0023】
例えば、“0”は温度が基準温度レベルTM0を維持するように設定される。“1”は温度が基準温度レベルTM0から第1の温度までリニアに緩やかに増加する正のリニア状変化パターンとなるように設定され、反対に“2”は温度が基準温度レベルTM0から第2の温度までリニアに緩やかに低下する負のリニア状変化パターンとなるように設定される。“3”は温度が上記第1の温度より高い第3の温度までリニアに急速に増加する正のリニア状変化パターンに設定され、反対に“4”は第2の温度より低い第4の温度までリニアに急速に低下する負のリニア状変化パターンに設定される。また、“5”は一定時間内に温度が第3の温度まで増加したのち基準温度レベルTM0に戻る正のインパルス状変化パターンとなるように設定され、反対に“6”は一定時間内に温度が第4の温度まで低下したのち基準温度レベルTM0に戻る負のインパルス状変化パターンとなるように設定される。さらに、“7”、“8”、“9”は上記一定時間における上記インパルス状変化の回数を異ならせるように設定される。
【0024】
入力情報記憶部142は、上記温度提示部23による温度提示に対し利用者が選択キー213の押下操作により選択した数字情報を、入力された暗証番号として格納するために使用される。
【0025】
プログラムメモリ13には、この発明を実施するために必要なアプリケーション・プログラムとして、温度提示制御プログラム131と、入力受付制御プログラム132と、認証制御プログラム133が格納されている。
【0026】
温度提示制御プログラム131は、次の処理を上記CPU11に実行させる。
(1) 暗証番号の入力受付モードにおいて、暗証番号の入力候補となる0〜9の数字を一定の時間間隔でランダムに1つずつ選択し、この選択した数字に対応する温度制御情報を上記温度制御情報記憶部141から読み出す処理。
(2) 上記読み出された温度制御情報に基づいて温度提示制御信号TCSを生成し、この生成した温度提示制御信号TCSを操作インタフェース17から操作ユニット2の駆動部22へ送信させる処理。
【0027】
温度提示制御信号TCSは、温度提示部23のペルチェ素子を発熱させるか冷却させるかを指定する極性制御信号と、ペルチェ素子の発熱温度又は冷却温度を指定するための駆動パルス信号と、当該駆動パルス信号の繰り返し周期を指定する信号とから構成される。上記発熱温度又は冷却温度は駆動パルス信号のパルス幅又はデューティ比を指定することにより指定できる。なお、上記発熱温度又は冷却温度は5〜50℃の範囲に設定するとよい。
【0028】
入力受付制御プログラム132は、上記温度提示制御による温度提示中に、操作ユニット2から選択キー213の操作信号KSが受信された場合に、この操作信号KSを受信した時点で提示中の温度パターンに対応する数字を、入力された暗証番号の1桁を表す情報として入力情報記憶部142に記憶させる処理を、CPU11に実行させる。
【0029】
認証制御プログラム133は、次の処理をCPU11に実行させる。
(1) 暗証番号の入力ガイダンス情報を生成し、このガイダンス情報を表示インタフェース16を介して表示デバイス18に表示させる処理。
(2) 暗証番号を構成するすべての桁の入力が終了し、操作ユニット2において確定ボタン212が押下されたことを当該確定ボタン212の操作信号KSにより検出した場合に、入力情報記憶部142から暗唱番号の入力情報を読み出して、この情報を通信インタフェース15からホストコンピュータへ送信させ、認証処理を行わせる処理。
(3) ホストコンピュータから返送される認証結果を表す情報を表示インタフェース16を介して表示デバイス18に表示させる処理。
【0030】
次に、以上のように構成された秘匿情報入力装置による暗証番号の入力受付動作を説明する。図5は、情報処理ユニット1による処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0031】
利用者が、例えば預金の引き出しを指定したのち、図示しないカードスロットにカードを挿入すると、情報処理ユニット1のCPU11は暗証番号の入力受付モードとなる。CPU11の温度提示制御プログラム131は、暗証番号の入力受付モードになったことをステップS1で検出すると、先ずステップS2において暗証番号の入力候補となる0〜9の数字の中から1つをランダムに選択し、この選択した数字に対応する温度制御情報をステップS3により上記温度制御情報記憶部141から読み出す。なお、上記選択した数字はデータメモリ14内の数字選択履歴記憶部(図示せず)に保存される。
【0032】
次にCPU11は、ステップS4において、上記読み出された温度制御情報に基づいて温度提示制御信号TCSを生成し、この生成した温度提示制御信号TCSを操作インタフェース17から操作ユニット2の駆動部22へ送信させる。
例えば、いま数字“3”が選択されていれば、温度制御情報記憶部141からは図4に示すように温度が第3の温度までリニアに急速に増加する正のリニア状変化パターンを表す情報が読み出される。このためCPU11は、ペルチェ素子を発熱させるための極性制御信号と、ペルチェ素子の発熱温度を一定時間(例えば1秒)内に第3の温度まで増加させるべくデューティ比が設定された駆動パルス信号を生成し、この生成された極性制御信号及び駆動パルス信号を温度提示制御信号TCSとして操作ユニット2の駆動部22へ送信する。
【0033】
また、数字“8”が選択されれば、温度制御情報記憶部141からは図4に示すように一定時間内に温度が第4の温度まで低下したのち基準温度レベルTM0に戻る負のインパルス状変化パターンを2回繰り返すための情報が読み出される。このためCPU11は、ペルチェ素子を一旦冷却したのち再び発熱させるための極性制御信号と、上記冷却及び再発熱時の温度を指定するべくデューティ比が設定された駆動パルス信号を、一定時間内に2回繰り返し生成する。そして、この生成された極性制御信号及び駆動パルス信号を温度提示制御信号TCSとして操作ユニット2の駆動部22へ送信する。
【0034】
これに対し操作ユニット2では、上記情報処理ユニット1から温度提示制御信号TCSが送られると、この温度提示制御信号TCSに従い駆動部22により温度提示部23が駆動される。例えば、上記した数字“3”に対応する温度提示制御信号TCSが送られた場合には、温度が一旦第3の温度までリニアに増加したのち基準温度レベルTM0まで戻るといった温度制御動作が行われる。また、上記した数字“8”に対応する温度提示制御信号TCSが送られた場合には、温度が一旦第4の温度まで急速に低下したのち基準温度レベルTM0まで急速に復帰するといった温度制御動作が、一定時間(例えば1秒)内に2回繰り返し行われる。
【0035】
利用者は自身の指を温度提示部23上に置き、温度提示部23の温度変化パターンを監視する。そして、自身が暗証番号として入力しようとする数字に対応する温度パターンが上記温度提示部23において提示されたことを感知すると、その時点で温度提示部23を押下する。そうすると、この温度提示部23の押下操作はその下方に配置された選択キー213により検出され、その操作信号KSが情報処理ユニット1へ送信される。
【0036】
情報処理ユニット1のCPU11は、上記温度提示制御信号TCSを送信してから一定時間(1秒)が経過したか否かをステップS5で監視しながら、ステップS6において操作ユニット2からの選択キー213の操作信号KSの到来を監視する。そして、操作信号KSが到来しないまま一定時間が経過すると、CPU11はステップS8に移行する。そして、暗唱番号の入力候補となる0〜9の数字のうちまだ選択されていない数字はあるか否かを判定し、未選択の数字が残っていればステップS2に戻って未選択の数字の中の1つをランダムに選択する。そして、上記選択された数字に対応する温度制御情報をステップS3により読み出し、この温度制御信号に基づいて温度提示制御信号TCSをステップS4により生成して操作ユニット2へ送信する。
以後、同様に一定時間(1秒)周期で、上記数字の選択から温度提示制御信号の送信までの処理が繰り返し行われる。
【0037】
一方、上記一定時間(1秒)内に選択キー213の操作信号KSが到来したとする。この場合CPU11はステップS7に移行し、入力受付制御プログラム132に従い、上記操作信号KSを受信した時点で提示中の温度パターンに対応する数字を、上記データメモリ14内の数字選択履歴記憶部から読み出す。そして、この読み出された数字を、入力された暗証番号の1桁を表す情報としてデータメモリ14内の入力情報記憶部142に記憶させる。
以後同様に、操作ユニット2から選択キー213の操作信号KSが到来するごとに、当該操作信号KSの受信時点で提示中の温度パターンに対応する数字が、入力された暗証番号の1桁を表す情報として入力情報記憶部142に順次記憶される。
【0038】
以上のようにして暗証番号を構成するすべての桁(例えば4桁)の数字の選択操作が終了し、利用者が確定ボタン212を押下すると、操作ユニット2からその操作信号KSが情報処理ユニット1へ送られる。情報処理ユニット1のCPU11は、ステップS9において、上記操作信号KSの受信により上記確定ボタン212の押下を検出すると、暗証番号の入力受付制御手順を終了する。
【0039】
なお、上記確定ボタン212が操作されないまま所定の時間が経過した場合には、CPU11はステップS10においてデータメモリ14内の数字選択履歴記憶部に保持された選択履歴をクリアし、ステップS2に戻って数字0〜9の選択から温度提示制御信号TCSの送信までの温度提示制御手順を繰り返す。これにより、0〜9の数字に対応する温度パターンを一定時間(1秒)間隔でランダムに提示する1回の温度提示制御手順において、利用者が暗証番号の入力を完了できなかった場合でも、次の温度提示制御手順において暗証番号の入力操作を続けることができる。
【0040】
以上詳述したようにこの実施形態では、操作ユニット2にペルチェ素子を用いた温度提示部23を配置する。情報処理ユニット1では、暗証番号の入力候補となる0〜9の数字を一定の時間間隔(1秒)でランダムに1つずつ選択して、この選択した数字に対応する温度制御情報を温度制御情報記憶部141から読み出し、この温度制御情報をもとに温度提示制御信号TCSを生成して操作ユニット2の駆動部22へ送信する。これにより、上記温度提示部23に上記0〜9の数字に対応する温度パターンを一定時間ずつランダムに提示させる。そして、上記温度提示中に、操作ユニット2において利用者が選択キー213を押下した場合に、情報処理ユニット1はその操作信号KSを受信した時点で提示中の温度パターンに対応する数字を、入力された暗証番号の1桁を表す情報として入力情報記憶部142に記憶するようにしている。
【0041】
したがって、温度パターンとして提示された数字を選択入力する方式であるため、暗証番号を数字キーを操作して入力したり音声入力により入力する場合のように、暗証番号が第三者に盗み見されたり盗み聞きされる心配はなくなり、これにより暗証番号を漏洩を生じることなく安全に入力することが可能となる。
【0042】
また、温度パターンを提示する際に、暗証番号の入力候補となる0〜9の数字をランダムに選択して、このランダムに選択された数字に対応する温度パターンを一定時間ずつ温度提示体で提示するようにしている。したがって、暗証番号の入力候補となる0〜9の数字に対応する温度パターンが、予め決められた順ではなくランダムにしかも一定時間ずつ提示される。このため、第三者が操作スイッチの操作タイミングから入力情報を推測しようとしても、推測は困難となる。
【0043】
さらに、一般に人の皮膚は温度変化に対し敏感に反応するという性質を有していることに着目し、暗証番号の入力候補となる0〜9の数字を温度の変化パターンにより区別して提示するようにしたので、数字を温度差のみにより区別して提示しようとする場合に比べ、利用者は提示された数字をより簡単にかつ正確に認識することが可能となる。
【0044】
さらに、温度変化パターンとして、温度が一定の変化率で変化するリニア状変化パターンと、温度がインパルス状に変化するインパルス状変化パターンとを定義し、温度パターンを提示する際に上記リニア状変化パターンとインパルス状変化パターンとを選択的に使用して温度パターンを提示するようにしたので、数字をさらに明確に区別することが可能となり、これにより温度の変化パターンとして提示された数字に対する利用者の認識率を高めることが可能となる。また、温度変化のパターン数をさらに増やすことができ、これにより入力候補となる情報として、数字に限らず記号を含めることも可能となる。
【0045】
さらに、選択キー213のキートップに温度提示部23を固定し、温度提示部23が押下され場合に当該押下操作を上記選択キー213により検出するようにしたので、利用者は温度提示部23から指を離すことなく、同じ指によりそのまま入力操作を行うことが可能となる。このため、温度提示部23と選択キー213が別の位置に配置されている場合に比べ、利用者の操作性を高めることができる。
【0046】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、利用者の指先に温度変化を応答性よく伝達するために、温度提示部の表面には熱伝導率の高いコーティングを施すとよい。また、温度提示部は、複数のペルチェ素子をマトリクス状に配置したものを使用し、これらの複数のペルチェ素子をその位置により選択的に駆動したり、位置に応じて温度変化に時間差を設けるように制御してもよい。このようにすると、温度の変化だけでなく、温度提示部上における温度変化の発生位置や温度変化の移動方向によっても情報を提示することが可能となり、これによりさらに多種類の入力候補を区別して提示することが可能となる。
【0047】
また、操作ユニット2に、温度提示部23の発熱又は冷却温度を検出する温度センサと、温度制御回路を設け、この温度制御回路において温度センサにより検出された温度を温度提示制御信号により指定された発熱又は冷却温度と比較し、その差を零に近づけるべく駆動部22を制御するようにしてもよい。このようにすると、温度提示部23の発熱又は冷却温度をより正確に可変制御することができる。
【0048】
その他、情報処理ユニット及び操作ユニットの構成や、温度提示制御、入力受付制御及び認証制御の各手順と制御内容、入力候補となる数字又は記号の種類やこれらの入力候補に応じた温度変化パターンの種類等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0049】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…情報処理ユニット、2…操作ユニット、11…CPU、12…バス、13…プログラムメモリ、14…データメモリ、15…通信インタフェース、16…表示インタフェース、17…操作インタフェース、18…表示デバイス、21…操作デバイス、22…駆動部、23…温度提示部、131…温度提示制御プログラム、132…入力受付制御プログラム、133…認証制御プログラム、141…温度制御情報記憶部、142…入力情報記憶部、211…数字キー、212…確定ボタン、213…選択キー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理ユニットと、この情報処理ユニットに接続される操作デバイスとを具備し、
前記操作デバイスは、
利用者が操作する操作スイッチと、
所定の温度範囲内で温度を発生可能な温度提示体と
を備え、
前記情報処理ユニットは、
秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号の各々に対応付けて予め設定された温度制御情報を記憶した記憶部と、
前記秘匿情報の入力受付期間に、前記記憶部から温度制御情報を読み出し、この読み出された温度制御情報により表される温度を前記温度提示体から時分割に発生させる温度提示制御手段と、
前記操作スイッチが操作されたとき、その操作時点で発生されている温度を表す温度制御情報に対応する数字又は記号を、入力された秘匿情報として記憶する入力受付処理手段と
を備えることを特徴とする秘匿情報入力装置。
【請求項2】
前記温度提示制御手段は、前記秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号に対応する温度制御情報を前記記憶部からランダムに読み出し、このランダムに読み出された温度制御情報により表される温度を前記温度提示体において一定時間ずつ発生させることを特徴とする請求項1記載の秘匿情報入力装置。
【請求項3】
前記記憶部は、秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号の各々に対応付けてそれぞれ変化パターンの異なる温度を発生させるための温度制御情報を記憶し、
前記温度提示制御手段は、前記読み出された温度制御情報に従い変化パターンの異なる温度を前記温度提示体において発生させることを特徴とする請求項1又は2記載の秘匿情報入力装置。
【請求項4】
前記記憶部は、変化パターンの異なる温度を発生させるための温度制御情報として、温度が一定の変化率で変化するリニア状変化パターンを表す情報と、温度がインパルス状に変化するインパルス状変化パターンを表す情報とを含み、
前記温度提示制御手段は、前記読み出された温度制御情報がリニア状変化パターンを表す情報である場合には、当該変化パターンに従い前記温度提示体において発生される温度をリニアに変化させ、前記読み出された温度制御情報がインパルス状変化パターンを表す情報である場合には、当該変化パターンに従い前記温度提示体において発生される温度をインパルス状に変化させることを特徴とする請求項3記載の秘匿情報入力装置。
【請求項5】
前記操作デバイスは、操作スイッチの操作面上に温度提示体を取着し、温度提示体が押下された場合に当該押下を前記操作スイッチにより検出するように構成されることを特徴とする請求項1記載の秘匿情報入力装置。
【請求項6】
秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号の各々に対応付けて予め設定された温度制御情報を記憶した記憶部を備える報処理ユニットと、利用者が操作する操作スイッチと、所定の温度範囲内で温度を発生可能な温度提示体とを備える操作デバイスとを具備する秘匿情報入力装置で使用される秘匿情報入力方法であって、
前記秘匿情報の入力受付期間に、前記記憶部から温度制御情報を読み出し、この読み出された温度制御情報により表される温度を前記温度提示体から時分割に発生させる温度提示過程と、
前記操作スイッチが操作されたとき、その操作時点で発生されている温度を表す温度制御情報に対応する数字又は記号を、入力された秘匿情報として記憶する入力受付過程と
を備えることを特徴とする秘匿情報入力方法。
【請求項7】
前記温度提示過程は、前記秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号に対応する温度制御情報を前記記憶部からランダムに読み出し、このランダムに読み出された温度制御情報により表される温度を前記温度提示体から一定時間ずつ発生させることを特徴とする請求項6記載の秘匿情報入力方法。
【請求項8】
前記記憶部が、秘匿情報の入力候補となる複数の数字又は記号の各々に対応付けて、それぞれ温度値又は温度変化パターンの異なる温度を発生させるための温度制御情報を記憶している場合に、
前記温度提示過程は、前記読み出された温度制御情報に従い、温度値又は温度変化パターンの異なる温度を前記温度提示体から発生させることを特徴とする請求項6又は7記載の秘匿情報入力方法。
【請求項9】
前記記憶部が、温度変化パターンの異なる温度を発生させるための温度制御情報として、温度が一定の変化率で変化するリニア状変化パターンを表す情報と、温度がインパルス状に変化するインパルス状変化パターンを表す情報とを記憶している場合に、
前記温度提示過程は、前記読み出された温度制御情報がリニア状変化パターンを表す情報である場合には、当該変化パターンに従い前記温度提示体から発生される温度をリニアに変化させ、前記読み出された温度制御情報がインパルス状変化パターンを表す情報である場合には、当該変化パターンに従い前記温度提示体から発生される温度をインパルス状に変化させることを特徴とする請求項8記載の秘匿情報入力方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−238106(P2010−238106A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87381(P2009−87381)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】