説明

移動ユニットの位置追尾方法

移動ユニットの位置は、無線信号特性の現在のサンプルに基づく可能な位置に対する第1の確率と、移動ユニットが前の位置又は可能性のある位置から可能な各位置へ移動する第2の確率とから得た複合確率により決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IEEE標準規格802.11のような無線データ通信プロトコルを用い、固定装置と無線データ通信するように配置された移動ユニット、例えば、アクセスポイントを位置決めするシステムに関するものである。特に、本発明は、移動ユニットが動作している、工場、倉庫、学校、病院、小売店、その他の設備のような領域内の無線信号特性を校正し且つデータベース内に記憶するようにした上述したシステムに関するものである。移動ユニットは、これら移動ユニットと複数のアクセスポイントとの間の無線通信特性をサンプリングし、このサンプリングした信号をデータベースと比較することにより領域内で位置決めされる。これらの無線通信特性は、例えば、IEEE標準規格802.11のRSSI機能を用いているアクセス点が受けるような信号強度とすることができる。
【背景技術】
【0002】
このようなシステムは、代表的には、領域内の可能なあらゆる位置に対する信号特性の値を校正しない。位置は、しばしば、校正された位置間での補外により決定する必要がある。更に、多くの領域、特に室内の領域における無線信号特性は、信号のフェージング、多重通路伝送及び遮蔽により影響を受ける。従って、信号特性の何れかのサンプルが位置の決定を不明瞭にしてしまうおそれがある。その理由は、無線伝播が影響を受けることにより、1個所よりも多い個所が同様な信号特性を有するようにしてしまうおそれがある為である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、移動ユニットの位置を無線信号サンプル間で追尾し、移動ユニットの位置の不明瞭な決定を解消するようにした、改善した移動ユニットの位置決めシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、固定装置と無線通信するように配置された移動ユニットを領域内で位置決めする方法であって、移動ユニットと固定装置との間の無線信号特性を、この無線信号特性を領域内の位置と関連づけているデータベースと比較することにより、位置を決定するようにする方法を提供する。
【0005】
本発明によれば、無線信号特性の順次のサンプルを取得する。無線信号特性の各サンプル毎に、前記移動ユニットに対し2つ以上の可能な位置を決定し、この移動ユニットがこれら可能な位置の各々にある第1の確率を割り当てる。最初のサンプル後のサンプルを用いて決定した可能な位置の各々に対して、移動ユニットが、1つ以上の前のサンプルに対する各可能な位置から現在のサンプルに対する可能な位置へ移動する第2の確率を決定する。移動ユニットに対する位置を、第1及び第2の確率の組み合わせに基づき現在のサンプルに対する最も可能性のある位置として選択する。
【0006】
一例では、サンプリングした無線信号特性と、データベースにおける位置に対する無線信号特性との比較に応じて第1の確率を割り当てる。他の例では、領域内の位置に対する無線信号特性の質を特徴付けるデータをデータベースに含め、この質を特徴付けるデータに応じて第1の確率を割り当てる。第2の確率は、位置間の距離を、サンプル間の期間で移動ユニットが移動する予想距離と比較することにより決定することができる。この第2の確率は、1つ以上の前のサンプルに対する可能な位置と現在のサンプルに対する可能な位置との間の移動に対する障害物を表わすファクタにより変更させることができる。
【実施例】
【0007】
本発明を他の目的とともに一層良好に理解するために、以下に添付図面と関連させて本発明を説明する。しかし、本発明の範囲は特許請求の範囲に記載した通りである。
【0008】
図1及び2を参照するに、本発明の方法を実施するシステムの一例を示す。コンピュータ10は、ローカルエリアネットワーク13によりアクセスポイント12、14、16及び18に接続されている。これらアクセスポイント12、14、16及び18は、IEEE標準規格802.11のようなプロトコルを用いる無線データ通信により移動ユニット17と通信する。本発明のシステムは、アクセスポイントと移動ユニットとの間の通信を双方向性とすることを要しないということが分かるであろう。移動ユニットを、アクセスポイントに信号を周期的に送信する簡単な送信機とする方法を実施することができる。
【0009】
コンピュータ10には、移動ユニットの位置決めに用いるデータベース11が設けられている。このデータベース11は、移動ユニット17が動作する領域内の位置に対するアクセスポイント12、14、16及び18とこの移動ユニットとの間の信号に対する無線信号特性に関するものである。一例では、データベースを、領域内の位置に対するアクセスポイントの受信機のRSSI機能により測定したこれら受信機における信号強度に関連付けることができる。或いはまた、データベースは、位置に対する信号到達時間に関連付けることができる。測定の基礎となる信号は、移動ユニット17が送信し且つアクセスポイント12、14、16及び18が受信する信号とするか、或いはアクセスポイントが送信し且つ移動ユニット17が受信する信号とすることができることを理解すべきである。後者の場合、信号特性を移動ユニットが測定し、移動ユニットが受信した信号を特徴付けるデータがデータ通信によりコンピュータ10に送られる。
【0010】
コンピュータ10は、移動ユニット17か又はアクセスポイント12、14、16及び18により測定され、データ通信としてローカルエリアネットワーク13を経て送られる信号特性を表わすデータを、データベース11と比較して、移動ユニットに対する位置を決定するように構成配置されている。ある場合には、1つよりも多い可能な位置を無線信号特性データに基づかせることができる。コンピュータ10は、移動ユニットに対する最も可能性のある位置、例えば、確率が最大である2つ又は3つの可能な位置を決定するように構成配置する。
【0011】
移動ユニットが特定の位置にある確率は、サンプリングされたデータと密接に適合する位置を特徴付けるデータベース中のデータと、サンプリングされた無線信号特性を表わすデータとの間の差に基づかせることができる。或いはまた、領域内の位置に対する無線信号特性の質を特徴付ける他のデータをデータベースに含めることができる。この質を特徴付けるデータを用いて可能な位置に確率を割り当てることができる。
【0012】
図2を参照するに、コンピュータ10は無線信号の第1サンプルに応答して、移動ユニットの3つの可能な位置に対し位置及び確率L1P1、L1P2及びL1P3を割り当てる。確率がデータベースにおける質特性に基づいて割り当てられる場合には、データベースは陳列ケース20、22及び24の相互間にある領域26及び28内に位置を割り当て、これら領域においては信号強度が低いか又は多重通路伝送となる為に確率を低くするようにすることができる。
【0013】
コンピュータ10は無線信号特性の第2サンプルに応答して、移動ユニット17の3つの最も可能な位置に対し、可能な位置及び確率L2P1、L2P2及びL2P3を割り当てる。第3サンプルに応答すると、位置及び確率L3P1、L3P2及びL3P3が割り当てられる。幾つかの可能な位置の確率は極めて低く、例えば、零となる場合があることが分かるであろう。
【0014】
コンピュータ10は2つ又は3つのサンプルに対する可能な位置を決定した後、第3サンプルで決定された可能な各位置に対する第2の確率を決定する。この第2の確率は、順次のサンプルで決定された位置間での移動ユニットの移動距離に基づいている。例えば、3つのサンプルを用いる場合には、コンピュータは各第3位置に対して第2の確率を計算する。例えば、位置L3P1の場合、位置L1P1から位置L3P1までの移動に対して第2の確率MP1131、位置L2P1から位置L3P1までの移動に対してMP2131、位置L1P2から位置L3P1までの移動に対してMP1231、位置L2P2から位置L3P1までの移動に対してMP2231、位置L1P3から位置L3P1までの移動に対してMP1331及び位置L2P3から位置L3P1までの移動に対してMP2331がそれぞれ計算される。この処理は、第3サンプルの場合の可能な各位置に対して繰返される。次に、例えば、各確率に得点を割り当て、最大得点を有する位置を決定することにより、又はこれらの確率を乗算することにより、これらの確率を組み合わせる。従って、位置L3P1の場合、確率の組み合わせは、
CP(L3P1)=W・P(L1P1)・MP1131・P(L3P1)+W・P(L1P2)・MP1231
+W・P(L1P3)・MP1331・P(L3P1)+V・P(L2P1)・MP2131・P(L3P1)
+V・P(L2P2)・MP2231・P(L3P1)+V・P(L2P3)・MP2331・P(L3P1)
として計算しうる。ここで、W及びVは重み係数である。
【0015】
この組み合わせた複合確率は第3サンプルの可能な位置に対し計算されたものであり、最大の複合確率を有する位置が移動ユニットの位置として選択される。
【0016】
本発明の変形例では、移動ユニットは前のサンプルに対し選択した最も可能性のある位置にいたものと、各サンプルに対してみなすことができる。従って、位置L3P1に対する複合確率は、
CP(L3P1)=W・MP(1-31)・P(L3P1)+V・MP(2-31)・P(L3P1)
となる。ここで、P(1-31)及びP(2-31)は、移動ユニットがサンプル1及び2に対する最も可能性のある位置から位置L3P1に移動する確率である。
【0017】
各サンプルに対し2つのみの可能な位置を選択するか、又は2つのみのサンプルを用いる場合には、更なる簡単化を達成しうる。
【0018】
上述したように第1及び第2の確率を用いることにより、移動ユニットが連続的に追尾される為、正しい位置が殆ど、可能性のある位置から選択される。このことは図2において明らかである。図2では、サンプル間でL2P1からL3P1への移動がありそうもない為、実際の位置に対し位置L3P2が最も選択される可能性が高くなるであろう。
【0019】
本発明の好適実施例を説明したが、本発明にはその精神を逸脱することなく変更を施しうること当業者にとって明らかであり、これらの変更は特許請求の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の方法を実施しうる代表的なシステムを示すブロック線図である。
【図2】図2は、本発明の方法の実施を示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定装置と無線通信するように配置された移動ユニットを領域内で位置決めする位置決め方法であって、前記移動ユニットと前記固定装置との間の無線信号特性を、前記領域内の位置に対する前記無線信号特性に関するデータベースと比較することにより位置を決定する位置決め方法が、
前記無線信号特性の順次のサンプルを取得する過程と、
前記無線信号特性の各サンプルに対して、前記移動ユニットの2つ以上の可能な位置を決定するとともに、前記移動ユニットが前記可能な位置の各々にある第1の確率を割り当てる過程と、
最初のサンプルの後の現在のサンプルを用いて決定された可能な各位置について、1つ以上の前のサンプルに対する可能な各位置から前記決定された可能な各位置へ移動ユニットが移動する第2の確率であって、前記1つ以上の前のサンプルに対する前記可能な位置と前記現在のサンプルに対する前記可能な位置との移動距離から取り出す第2の確率を決定する過程と、
前記第1及び第2の確率の組み合わせに基づいて、前記移動ユニットに対する位置を前記現在のサンプルに対する最も可能性のある位置として選択する過程と
を有する位置決め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の位置決め方法において、サンプリングした前記無線信号を、前記データベースにおける前記位置に対する無線信号特性と比較することにより、前記第1の確率を割り当てる位置決め方法。
【請求項3】
請求項1に記載の位置決め方法において、前記領域内の位置に対する無線信号特性の質を特徴付けるデータを前記データベースに含め、前記第1の確率をこの質を特徴付けるデータにより割り当てる位置決め方法。
【請求項4】
請求項1に記載の位置決め方法において、前記位置間の距離を、前記サンプル間の期間で前記移動ユニットが移動する予想距離と比較することにより、前記第2の確率を決定する位置決め方法。
【請求項5】
請求項1に記載の位置決め方法において、前記1つ以上の前のサンプルに対する前記可能な位置と現在のサンプルに対する前記可能な位置との間での移動に対する障害物を表わすファクタにより前記第2の確率を変更する位置決め方法。
【請求項6】
固定装置と無線通信するように配置された移動ユニットを領域内で位置決めする位置決め方法であって、前記移動ユニットと前記固定装置との間の無線信号特性を、前記領域内の位置に対する前記無線信号特性に関するデータベースと比較することにより位置を決定する位置決め方法が、
前記無線信号特性の順次のサンプルを取得する過程と、
前記無線信号特性の各サンプルに対して、前記移動ユニットの2つ以上の可能な位置を決定するとともに、前記移動ユニットが前記可能な位置の各々にある第1の確率を割り当てる過程と、
最初のサンプルの後のサンプルを用いて決定された可能な各位置について、1つ以上の前のサンプルに対し決定された選択位置から現在のサンプルに対する前記可能な位置へ移動ユニットが移動する第2の確率であって、前記1つ以上の前のサンプルに対する前記可能な位置と前記現在のサンプルに対する前記可能な位置との移動距離から取り出す第2の確率を決定する過程と、
前記第1及び第2の確率の組み合わせに基づいて、前記移動ユニットに対する位置を前記現在のサンプルに対する最も可能性のある位置として選択する過程と
を有する位置決め方法。
【請求項7】
請求項6に記載の位置決め方法において、サンプリングした前記無線信号を、前記データベースにおける前記位置に対する無線信号特性と比較することにより、前記第1の確率を割り当てる位置決め方法。
【請求項8】
請求項6に記載の位置決め方法において、前記領域内の位置に対する無線信号特性の質を特徴付けるデータを前記データベースに含め、前記第1の確率をこの質を特徴付けるデータにより割り当てる位置決め方法。
【請求項9】
請求項6に記載の位置決め方法において、前記位置間の距離を、前記サンプル間の期間で前記移動ユニットが移動する予想距離と比較することにより、前記第2の確率を決定する位置決め方法。
【請求項10】
請求項6に記載の位置決め方法において、前記1つ以上の前のサンプルに対する前記可能な位置と現在のサンプルに対する前記可能な位置との間での移動に対する障害物を表わすファクタにより前記第2の確率を変更する位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−515851(P2007−515851A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533323(P2006−533323)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/016160
【国際公開番号】WO2004/106963
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(599101597)シンボル テクノロジーズ インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】