説明

移動体制御装置における断線検知装置

【課題】装置の製造作業を容易にし、かつ製造コストの増大を抑えて、信号線の断線異常を容易に検知すること。
【解決手段】装置本体10に対して移動可能な分注アーム20を備えた分析装置1において、分注アーム20側から装置本体10側に信号を伝送する信号線29,31,32,35の断線を検知する断線検知装置17であって、信号線29,31,32,35における分注アーム20の移動を許容する弛み部分Lからの赤外線量を赤外線検知部17aで検出し、赤外線検知部17aによる赤外線量Tに基づいて弛み部分Lでの断線異常を断線判断部17bで判断し、この断線判断部17bにより断線異常が判断された場合に、警報部17cから警報を発するで、分析装置1の操作者に警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に対して移動する移動体と制御部間を信号線で接続して、信号の伝送を行う移動体制御装置に関し、特に信号線の断線異常を検知する移動体制御装置における断線検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
装置本体に対して移動する移動体を備える装置としては、たとえば血液や尿等の検体と試薬とを反応させて分析を行う分析装置がある。この分析装置は、装置本体の上面に分注アームを備えている。分注アームは、装置本体に対して移動可能に構成された移動体で、たとえば、装置本体の上面に対して前後方向および上下方向のそれぞれに移動が可能に設定されている。この分注アームは、分注ノズルおよび吸排シリンジを備えており、分注ノズルは、検体や試薬等の液体試料を分注するためのノズルで、分注アームの先端に設けてある。分注ノズルは、分注アームの動作によって所定の吸引位置および吐出位置の間を移動可能である。また、吸排シリンジは、分注ノズルに液体試料を吸引、吐出させるためのシリンジで、ピストンを駆動する駆動モータとともに、分注アームの内部に設けられている。駆動モータは、装置本体に設けられた駆動部に接続される。駆動部は、装置本体に設けられたメカ制御部からの駆動指令に従って、駆動モータの駆動を可能にする。
【0003】
この分析装置では、分注アームおよび吸排シリンジのピストンが適宜動作することにより、吸引位置に配置された試料容器から液体試料を分注ノズルの内部に吸引し、この液体試料を吐出位置に配置された反応容器に吐出することができる。こうして反応容器に分注された検体および試薬は、互いに反応した後、その反応結果が検体の分析に用いられる。
【0004】
ところで、分注アームには、吸排シリンジのピストンを駆動制御するための各種のセンサ、たとえばピストンの移動限度を検出するリミットセンサや、ピストンを駆動する駆動モータの変位を検出するエンコーダが設けられている。また、分注アームと装置本体との間には、これら各種センサからの信号をメカ制御部に伝送するための信号線が複数配置される。これら複数の信号線には、分注アームの移動を許容するために、所要の弛み、すなわち分注アームの移動範囲において、分注アームがメカ制御部から最も離れた場合であっても、これら複数の信号線に過大な引っ張り力が作用することのないように、所要の弛みを持たせている。
【0005】
しかしながら、この分析装置では、これら複数の信号線の弛んだ部分(以下、「弛み部分」という)に、分注アームの往復移動に伴う繰り返し応力が作用するため、長年の長期に渡って使用した場合に、たとえば経年劣化などによって、これら複数の信号線の弛み部分が断線する虞れがある。これら複数の信号線のうち一本の信号線でも断線した場合には、吸排シリンジのピストンを正常に駆動制御することができなくなるため、液体試料の分注に支障をきたす等の問題を生じる虞れがある。このため、この分析装置では、断線の虞れのある全ての信号線の断線を検知することが求められる。
【0006】
信号線の断線を検知する従来技術としては、信号線に対して抵抗器を直列に接続し、この抵抗器の両端間電圧の変化に基づいて断線を検知する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、信号線の両端間に所定の電圧が加わっている状態で信号線が断線すると、抵抗器の両端間電圧が所定の値から零に変化する現象を利用し、この電圧変化に基づいて信号線の断線を検知している。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、信号を伝送する上で本来不要な抵抗器を断線の虞れのある全ての信号線に設けねばならず、装置の製造作業が煩雑になるとともに、抵抗器の抵抗値を所要の値に設定することが困難な場合がある。
【0008】
そこで、従来では、非接触式の電流計によって信号線を流れる電流を計測し、この電流の変化に基づいて信号線の断線を検知することにより、上述した問題を回避する技術も提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−137020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この従来技術であっても、断線の虞れのある全ての信号線の断線を検知するには、特許文献1と同様、これら全ての信号線に適用する必要があるので、これら全ての信号線に電流計を個別に設ける結果、装置の製造作業が煩雑になるとともに、専有スペースが広くなって、装置の大型化を招き、製造コストが著しく増大する虞れがある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、装置の製造作業を容易にし、かつ製造コストの増大を抑えて、信号線の断線異常を容易に検知することができる移動体制御装置における断線検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる移動体制御装置における断線検知装置は、装置本体と、該装置本体に対して移動する移動体と、前記移動体を動作制御する制御手段と、前記移動体と前記制御手段間を接続して信号の伝送を行う信号線と、を備えた移動体制御装置において、前記信号線からの赤外線量を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて、前記信号線の断線を判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の発明にかかる断線検知装置は、上記発明において、前記判断手段の判断結果に基づいて、警告を発する警告手段を、さらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3の発明にかかる断線検知装置は、上記発明において、前記検知手段は、前記移動体の移動による曲率の変化が最大となる前記信号線の所定部位から前記赤外線量を検出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4の発明にかかる断線検知装置は、上記発明において、前記判断手段は、前記検出手段で検出された赤外線量が予め設定した赤外線量の基準値よりも大きい場合に、前記信号線の断線異常と判断することを特徴とする。
【0016】
また、請求項5の発明にかかる断線検知装置は、上記発明において、前記判断手段によって前記信号線の断線と判断された場合に、前記制御手段は、前記移動体の動作を停止させ、かつ前記警告手段は、警告を発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる断線検知装置は、信号線から発生する赤外線量を検知し、この赤外線量が基準値よりも大きい場合に、信号線の断線異常と判断することで、装置の製造作業を容易にし、かつ製造コストの増大を抑えて、信号線の断線異常を容易に検知することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる移動体制御装置における断線検知装置の実施の形態を図1〜図3の図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。また、以下の実施の形態では、本発明にかかる移動体制御装置を血液や尿等の検体と試薬とを反応させて分析を行う分析装置に適用した場合を説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明にかかる分析装置の実施の形態の構成を示す構成図である。図1において、分析装置1は、装置本体10と、装置本体10の上面に移動可能に配設される移動体としての分注アーム20と、同じく装置本体10の上面に回転可能に配設される収容テーブル40と、同じく装置本体10の上面に回転可能に配設される反応テーブル50とを備えている。
【0020】
分注アーム20は、上下方向に開口した筒形状に形成されるコラム部21と、コラム部21の上端から前方(図1中、左方向)へ向けて直交する中空のアーム部22とを備えている。コラム部21は、ベース部36を介して装置本体10に取り付けられている。ベース部36は、上下に開口した筒形状に形成されるベース部本体37と、ベース部本体37内部に挿入されたコラム部21を上下移動および回転移動させるための駆動機構部38と、このコラム部21を前後方向(図1中、左右方向)に移動させるための駆動機構部39とを備える。装置本体10の上面には、コラム部21が前後方向に移動した場合にコラム部21の下方域と連通するように開口する上面開口10aが設けてある。アーム部22は、中空に形成された部分で、先端側の下端部に開口した先端開口22aを有している。アーム部22には、先端開口22aを通じて下方に延びる分注ノズル23が設けられる。
【0021】
分注ノズル23は、液状の検体あるいは液状の試薬(以下、これらを総称して「液体試料S」という)を分注するためのノズルで、先端が開口した筒形状に形成されている。分注ノズル23は、アーム部22が前後方向に移動することに伴って、収容テーブル40に対して設定された吸引位置P1と、反応テーブル50に対して設定された吐出位置P2との間を移動可能である。また、分注ノズル23は、アーム部22が上下方向に移動することに伴って、これら吸引位置P1および吐出位置P2のそれぞれにおいて上下方向に移動可能である。
【0022】
また、この分注アーム20のアーム部22内部には、吸排シリンジ24が設けられる。吸排シリンジ24は、シリンジ本体25およびピストン26を備えて構成される。シリンジ本体25は、円筒形状に形成されており、シリンジ本体25の前端中央から前方に延びる細管部25aを有している。細管部25aには、分注ノズル23および給水配管27が三方弁28を介して接続されている。給水配管27は、可撓性を有する素材によって形成された配管で、分注アーム20の内部からベース部本体37内部を通り、上面開口10aを介して装置本体10内部に挿入される。給水配管27の下端27aは、装置本体10内部に設けられる水タンク11に挿入されて、水タンク11内部に貯留される脱気水Wの吸い上げを可能にしている。この給水配管27には、水ポンプPが設けてある。水ポンプPは、水タンク11の内部の脱気水Wを吸い上げ、給水配管27を通じて三方弁28へ圧送するためのポンプである。三方弁28は、分注ノズル23および吸排シリンジ24の間の流路を開閉する弁と、分注ノズル23および給水配管27の間の流路を開閉する弁とを備える。三方弁28は、通常時、分注ノズル23および吸排シリンジ24の間の流路を開いた状態に保持し、かつ分注ノズル23および給水配管27の間の流路を閉じた状態に保持している。三方弁28には、弁の開閉を制御するための信号を伝送する信号線29が接続されている。
【0023】
ピストン26は、シリンジ本体25の内周面を前後に摺動する円板形状の摺動部26aと、摺動部26aの後面中央から後方に延びる軸26bとを同軸上に備える。また、ピストン26の軸26bには、後端部に遮光板26cが設けてある。アーム部22の内部においてピストン26の遮光板26cを挟んで前後となる位置には、リミットセンサ30a,30bが設けてある。リミットセンサ30a,30bは、たとえばフォトインタラプタによって構成したセンサで、ピストン26の前後の移動限界を検知可能に構成される。具体的には、ピストン26が前方の移動限界に位置した場合に、リミットセンサ30aが遮光板26cによって遮光され、かつ、ピストン26が後方の移動限界に位置した場合に、リミットセンサ30bが遮光板26cによって遮光されるように構成される。リミットセンサ30a,30bには、信号線31,32が接続されている。
【0024】
この軸26bの後端部には、伝達機構部33を介して駆動モータMが連結される。伝達機構部33は、駆動モータMの回転動作を直線動作に変換する機構部である。駆動モータMは、その回転動作により、伝達機構部33を介してピストン26を前後に駆動することが可能となる。駆動モータMには、回転変位を検出するためのエンコーダ等の回転センサ34が設けられ、この回転センサ34には、信号線35が接続される。
【0025】
回転センサ34の信号線35は、上述した三方弁28の信号線29およびリミットセンサ30a,30bの信号線31,32とともに、分注アーム20内部からベース部本体37内部を通り、上面開口10aを介して装置本体10内部に挿入されている。これら信号線29,31,32,35は、装置本体10内部に設けられたメカ制御部12に接続される。これら信号線29,31,32,35には、アーム部22の移動を許容するために、所要の弛み、すなわちアーム部22がメカ制御部12から最も離れた場合であっても、信号線29,31,32,35に過大な引っ張り力が作用することのないように、所要の弛みを持たせている。ここで、アーム部22がメカ制御部12から最も離れた場合とは、図1において例示するように、分注ノズル23が吸引位置P1において最も上方に位置する場合をいう。信号線29,31,32,35の弛んだ部分(以下、「弛み部分」という。)Lは、チューブ13によって覆われている。チューブ13は、可撓性および赤外線に対する透過性を有する素材によって蛇腹形状に形成した部材である。
【0026】
収容テーブル40は、断面が凹状の上方に開口した円筒形状に形成されて、装置本体10の上面に配設されており、この円筒形の中心軸回りに回転可能に構成される。この収容テーブル40には、複数の試料容器41が周方向に沿って配置される。図には明示していないが、収容テーブル40と装置本体10との間には、装置本体10に対して収容テーブル40を回転可能に支持することにより、複数の試料容器41を吸引位置P1に択一的に配置するための駆動機構部が設けられている。なお、各試料容器41には、分注の対象となる液体試料Sが個別に貯留されている。
【0027】
反応テーブル50は、断面が凹状の上方に開口した円筒形状に形成されて、装置本体10の上面に配設されており、この円筒形の中心軸回りに回転可能に構成される。この反応テーブル50には、複数の反応容器51が周方向に沿って配置される。図には明示していないが、反応テーブル50と装置本体10との間には、装置本体10に対して反応テーブル50を回転可能に支持することにより、複数の反応容器51を吐出位置P2に択一的に配置するための駆動機構部が設けられている。
【0028】
装置本体10内のメカ制御部12は、駆動モータM、三方弁28および駆動機構部38,39の動作を制御するための処理部で、モータ駆動部14、弁駆動部15およびアーム駆動部16に接続される。モータ駆動部14は、駆動モータMを駆動するためのドライバ回路等の回路によって構成された駆動部で、図示せぬ動力線を通じて駆動モータMに接続される。弁駆動部15は、三方弁28を駆動するための回路によって構成された駆動部で、図示せぬ動力線を通じて三方弁28に接続される。アーム駆動部16は、ベース部36の駆動機構部38,39を駆動するためのドライバ回路等の回路によって構成された駆動部で、図示せぬ動力線を介して駆動機構部38,39に接続される。このメカ制御部12は、信号線29,31,32,35を介して取得した信号に基づいて各駆動部14〜16に駆動指令を送出することにより、吸排シリンジ24のピストン26、三方弁28および駆動機構部38,39を駆動制御できるように構成されている。
【0029】
ここで、分析装置1によって試料容器41に貯留した液体試料Sを反応容器51に分注する際の動作について以下に説明する。まず、三方弁28を所定時間だけ開いた状態で水ポンプPを駆動し、水タンク11内の脱気水Wを給水配管27を通して分注ノズル23に圧送し、分注ノズル23の先端に空気層Aを所定量残して脱気水Wを満たす。
【0030】
つぎに、駆動機構部39によってアーム部22を前方へ移動させ、分注ノズル23を吸引位置P1に位置決めした後、駆動機構部38によってアーム部22を下方に移動させ、分注ノズル23の先端を吸引位置P1に配置された試料容器41内の液体試料S中に所定位置まで挿入させる。そして、駆動モータMによって吸排シリンジ24のピストン26を後方に引き、分注ノズル23の内部に液体試料Sを規定量吸い込む。このとき、液体試料Sは、脱気水Wとの間に空気層Aが介在した状態で吸い込まれるので、脱気水Wと混ざり合う虞れがない。
【0031】
つぎに、駆動機構部38によるアーム部22の上方移動によって分注ノズル23を上昇させた後、駆動機構部39によるアーム部22の後方への移動によって吐出位置P2に位置決めする。その後、駆動機構部38によるアーム部22の下方移動によって分注ノズル23を再び降下させ、分注ノズル23の先端を吐出位置P2に配置された反応容器51内に挿入させる。そして、駆動モータMによって吸排シリンジ24のピストン26を前方に押して、分注ノズル23内の液体試料Sを反応容器51内に吐出する。
【0032】
この結果、吐出位置P2に配置された反応容器51には、吸引位置P1に配置された試料容器41の液体試料Sが規定量分注される。このように一回分の分注動作が完了すると、新たな反応容器51が吐出位置P2に配置され、以降、上述した動作を繰り返すことにより、反応テーブル50上の各反応容器51に液体試料Sを順次分注することができる。
【0033】
この間、信号線29,31,32,35の弛み部分Lには、駆動機構部38,39によってアーム部22が上下方向および前後方向に往復移動するのに伴い、曲率が変化して繰り返し応力が作用することになる。具体的には、分注ノズル23が吸引位置P1において最も上方に位置する際の姿勢(図1中、二点鎖線で例示する弛み部分L)と、吐出位置P2において最も下方に位置する際の姿勢(図1中、破線で例示する弛み部分L)とを繰り返すため、曲率が変化して繰り返し応力が作用することになる。このため、長年(たとえば10年以上の長期)に渡って分析装置1を使用した場合には、経年劣化などによって信号線29,31,32,35の弛み部分Lが断線する虞れがある。信号線29,31,32,35のうち一本の信号線でも弛み部分Lにおいて断線しかかった半断線の状態(以下、「断線異常」という)になると、断線異常が生じた部位の抵抗値が著しく増大し、当該部位が発熱して赤外線を発するようになる。
【0034】
そこで、この実施の形態にかかる断線検知装置17では、信号線29,31,32,35の弛み部分Lから発せられる赤外線の量を検出し、この検出結果に基づいて弛み部分Lでの断線異常を検知するように構成する。この断線検知装置17は、信号線の弛み部分L周辺の装置本体10内下方に設けられる検知手段としての赤外線検知部17aと、この赤外線検知部17aに接続される判断手段としての断線判断部17bと、この断線判断部17bに接続される警告手段としての警報部17cとを備える。
【0035】
赤外線検知部17aは、各信号線の弛み部分Lからチューブ13を介して外部に発せられる赤外線量を検知している。この赤外線検知部17aは、分注動作の際に各信号線の弛み部分Lが曲率の変化が最大となる所定部位、具体的には、分注ノズル23が吐出位置P2において、最も下方に位置する時の弛み部分Lが最下方となる所定部位に近接するように配置される。なお、この曲率の変化が最大となる所定部位の近接する位置に赤外線検知部17aを設けた理由は、曲率の変化が最大となる所定部位が作用する繰り返し応力が最大となる部位であり、他の部位よりも先に断線異常が発生する可能性が高いためである。
【0036】
断線判断部17bは、この弛み部分Lでの断線異常発生を判断するものであり、装置本体10内に設けられる。断線判断部17bは、赤外線検知部17aから入力する検知値(赤外線量)を取得し、この赤外線量に基づいて、断線を判断して警報部17cに警報指令を送出するように構成される。断線判断部17bは、たとえば、図2の機能ブロック図に示すように、赤外線検知部17aに接続される入力インターフェース部17b1と、データ格納部17b2と、異常判定部17b3と、出力インターフェース部17b4と、これら各部を制御する制御部17b5とを備える。
【0037】
入力インターフェース部17b1は、赤外線検知部17aから入力する赤外線量Tを取得するための入力処理部である。データ格納部17b2は、赤外線量の基準値T0等のデータを予め格納するものである。このデータ格納部17b2に格納される基準値T0としては、各信号線の弛み部分Lに断線異常が生じていない状態で分注ノズル23が吐出位置P2において最も下方に位置する際に、赤外線検知部17aにより検出された赤外線量Tと比較する基準となるもので、赤外線量Tがこの基準値T0を超える場合には、異常判定部17b3によって弛み部分Lに断線異常が発生したと判定する。出力インターフェース部17b4は、警報部17cに警報指令を送出し、かつモータ駆動部14、弁駆動部15およびアーム駆動部16に停止指令等の指令を送出するための出力処理部である。
【0038】
制御部17b5は、入力インターフェース部17b1を介して赤外線検知部17aから赤外線量Tを取得した場合に、この赤外線量Tとデータ格納部17b2に予め格納させた赤外線量の基準値T0との比較によって、弛み部分Lの断線異常の有無を判断するように異常判定部17b3を制御する。また、異常判定部17b3により、弛み部分Lに断線異常が生じたと判定された場合には、出力インターフェース部17b4を介して、モータ駆動部14、弁駆動部15およびアーム駆動部16に停止指令等の指令を送出し、かつ警報部17cに警報指令を送出する。制御部17b5は、たとえばCPUによって構成することができ、断線判断部17bは、ICチップによって構成することができる。
【0039】
つぎに、図3のフローチャートを用いて、図1に示した断線判断部17bにおいて断線異常発生を判断する際の動作を説明する。図3において、まず、断線判断部17bでは、制御部17b5によって予め格納された赤外線量の基準値T0をデータ格納部17b2から読み込む(ステップ101)。基準値T0を読み込んだ制御部17b5は、つぎに入力インターフェース部17b1を介して赤外線検知部17aで検知された赤外線量Tを取得する(ステップ102)。この赤外線量Tとしては、たとえば分注動作の際に分注ノズル23が吐出位置P2において最も下方に位置する度、つまり各信号線の弛み部分Lにおいて断線異常発生の可能性が高い所定部位に赤外線検知部17aが近接する度に、この赤外線検知部17aによって検出される検出値を示している。
【0040】
つぎに、断線判断部17bにおいては、異常判定部17b3による赤外線量Tと基準値T0との比較を行う(ステップ103)。ここで、検知された赤外線量Tが、赤外線量の基準値T0以下の場合には、異常判定部17b3は、各信号線の弛み部分Lにおいて断線異常が発生していないと判定して、この判定結果を制御部17b5に出力する。制御部17b5は、この判定結果を異常判定部17b3から取得すると、ステップ102に戻って赤外線検知部17aから次の赤外線量Tの取得を行い、上記動作を繰り返す。
【0041】
また、ステップ103において、検知された赤外線量Tが、赤外線量の基準値T0よりも大きい場合には、異常判定部17b3は、断線異常が発生したと判定して、この判定結果を制御部17b5に出力する。制御部17b5は、この判定結果を異常判定部17b3から取得すると、断線の虞れがあると判断し、出力インターフェース部17b4を介して、モータ停止指令、弁閉止指令およびアーム停止指令を、モータ駆動部14、弁駆動部15およびアーム駆動部16へそれぞれ送出する(ステップ104)。このモータ停止指令が入力すると、モータ駆動部14は、吸排シリンジ24のピストン26の動作を停止させる。また、この弁閉止指令が入力すると、弁駆動部15は、三方弁28を閉止させて停止させる。さらに、このアーム停止指令が入力すると、アーム駆動部16は、分注アーム20の動作を停止させる。
【0042】
これら指令を送出した制御部17b5は、さらに出力インターフェース部17b4を介して警報指令を警報部17cに送出する(ステップ105)。この結果、警報部17cは、エラーメッセージの表示等の警報を発することができる。
【0043】
このように、この実施の形態では、断線検知装置において、断線の虞れのある全ての信号線の断線異常を共通の赤外線検知部を用いて検知することで、断線の虞れのある信号線の本数が増大した場合であっても、この共通の赤外線検知部によって断線異常を検知することができ、このため検知部を信号線の数に応じて増加するなどの製造作業が不要になり、装置の製造作業を容易にし、かつ装置の大型化を防いで製造コストの増大を抑えて、信号線の断線を容易に検知することができる。
【0044】
また、この実施の形態では、赤外線検知部は、各信号線の弛み部分において、分注アームの移動による曲率の変化が最大となる所定部位に近接するように配置されるので、この断線異常が生じる所定部位から赤外線検知部に至る赤外線量の減衰が小さなものとなり、赤外線検知部に要求される検知感度等の性能を抑えることができ、このため赤外線検知部の製造コストを低減することも可能である。
【0045】
また、この実施の形態では、信号線のうち一本の信号線でも弛み部分において断線しかかった半断線(断線異常)が生じると、この断線異常を直ちに検知し、駆動モータおよび分注アームの動作を停止させ、かつ三方弁を閉止させるので、これらの信号線が完全に断線する以前に、駆動モータおよび分注アームの動作を停止させ、かつ三方弁を閉止させることができ、このため、これら駆動モータ、分注アームおよび三方弁の誤動作を確実に防止することができる。
【0046】
さらに、この実施の形態では、駆動モータおよび分注アームの動作を停止させ、かつ三方弁を閉止させた後に、警報部によって警報を発するように動作制御するので、断線異常が生じたことを分析装置の操作者に知らせ、復旧を促すことができる。なお、この断線検知装置では、各信号線の断線を検知することができるものの、いずれの信号線が断線したかを特定することはできない。しかしながら、分析装置では、長期に渡って使用された後に一本でも信号線が断線すると、他の信号線の寿命も経年劣化などによって十分でないと判断され、全ての信号線が交換されることになるため、断線した信号線を特定できなくても、復旧に伴う作業を煩雑化する虞れがない。
【0047】
なお、上述した実施の形態では、分注動作を繰り返す間中、赤外線検知部から赤外線量を取得し、各信号線の弛み部分での断線異常の有無を判断するようにしているが、本発明は必ずしもその必要はない。たとえば、所定の分注回数毎あるいは所定の時間が経過する毎に、赤外線検知部からの赤外線量を取得し、各信号線の弛み部分での断線異常の有無を判断するようにしても良い。
【0048】
また、上述した実施の形態では、分析装置に断線検知装置を適用した場合を示したが、本発明では分析装置以外の装置であっても断線検知装置を適用可能である。すなわち、装置本体に対して移動する移動体を備え、かつ移動体の移動に伴って曲率が変化する信号線を有した装置であれば、上述した実施の形態の場合と同様に、断線検知装置を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明にかかる分析装置の実施の形態の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示した断線判断部の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】同じく、断線判断部において断線異常発生を判断する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 分析装置
10 装置本体
10a 上面開口
11 水タンク
12 メカ制御部
13 チューブ
14 モータ駆動部
15 弁駆動部
16 アーム駆動部
17 断線検知装置
17a 赤外線検知部
17b 断線判断部
17b1 入力インターフェース部
17b2 データ格納部
17b3 異常判定部
17b4 出力インターフェース部
17b5 制御部
17c 警報部
20 分注アーム
21 コラム部
22 アーム部
22a 先端開口
23 分注ノズル
24 吸排シリンジ
25 シリンジ本体
25a 細管部
26 ピストン
26a 摺動部
26b 軸
26c 遮光板
27 給水配管
28 三方弁
29,31,32,35 信号線
30a,30b リミットセンサ
33 伝達機構部
34 回転センサ
36 ベース部
37 ベース部本体
38,39 駆動機構部
40 収容テーブル
41 試料容器
50 反応テーブル
51 反応容器
A 空気層
M 駆動モータ
P 水ポンプ
S 液体試料
W 脱気水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、該装置本体に対して移動する移動体と、前記移動体を動作制御する制御手段と、前記移動体と前記制御手段間を接続して信号の伝送を行う信号線と、を備えた移動体制御装置において、
前記信号線からの赤外線量を検知する検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記信号線の断線を判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする移動体制御装置における断線検知装置。
【請求項2】
前記断線検知装置は、前記判断手段の判断結果に基づいて、警告を発する警告手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の移動体制御装置における断線検知装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記移動体の移動による曲率の変化が最大となる前記信号線の所定部位から前記赤外線量を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の移動体制御装置における断線検知装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記検出手段で検出された赤外線量が予め設定した赤外線量の基準値よりも大きい場合に、前記信号線の断線異常と判断することを特徴とする請求項1または2に記載の移動体制御装置における断線検知装置。
【請求項5】
前記判断手段によって前記信号線の断線異常と判断された場合に、前記制御手段は、前記移動体の動作を停止させ、かつ前記警告手段は、警告を発することを特徴とする請求項4に記載の移動体制御装置における断線検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−309887(P2007−309887A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141662(P2006−141662)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】