説明

移動体用周辺監視システム

【課題】伝送経路の選択処理を信頼性良く行うことができるようにした移動体用周辺監視システムを提供する。
【解決手段】
送信機5がエラー検出用情報を表示器3の表示画面の単位データ毎に付加して撮像信号を伝送する。受信機6が伝送系Aを通じて伝送された複数の単位データに連続してエラーを検出したことを条件として伝送系Aによる伝送状態を異常であると判定し、当該伝送系Aに代えて伝送系Bを通じて伝送される撮像信号を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の周辺を監視するための移動体用周辺監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の移動体用周辺監視システムは、カメラなどの撮像機器が移動体の外方を撮像するように設置されることによって構成されている。撮像機器の撮像信号は、移動体の運転者付近に設置された表示器に伝達され表示器が移動体の外方を画像表示する。これにより運転者が移動体の外方を観察できる。
【0003】
運転者は、移動体の主な進行方向である前方方向に注意を集中しやすい。特に自動車の運転者が後方確認を怠ると、自動車の死角に潜む子供や建物などと接触事故を起こす虞を生じる。撮像機器が移動体の後方に向けて設置されていると運転者が表示器に映される移動体後方の撮像画像を観察することで後方確認できるため接触事故を未然に防ぐことができる。
運転者が、このような撮像画像を確認するためには移動体内の情報ネットワーク技術が不可欠である。この種の情報ネットワーク技術が例えば特許文献1〜4に開示されている。
【0004】
特許文献1には、車両内の各種電気的装置の車両内通信システムにおいて、データの伝送経路の異常を検出するとデータの伝送経路が迂回路を通過演算するように構成した技術思想が開示されている。また、特許文献2には、一方の伝送経路が異常な場合には他方の伝送経路に切替えて監視画像を表示器に表示するように構成した技術思想が開示されている。また、特許文献3には、通信データに含まれる複数のビットデータとチェックデータとの関係に基づいて通信エラーを判定する技術思想が開示されている。また、特許文献4にも本発明に関連した技術思想が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−64626号公報(0057段落)
【特許文献2】特開平11−98490号公報(0008段落)
【特許文献3】特開2003−273950号公報(0005段落)
【特許文献4】特開2000−43764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通信異常の原因は誘導ノイズによる瞬断、断線、故障など多種に渡っており、前記特許文献1〜3などの技術思想を適用すると、例えばすぐに復帰可能な瞬断であるにも関わらず、伝送経路に異常があると誤検出してしまう虞があり不必要に伝送経路の選択切替処理が行われてしまう。
【0007】
また、送受信機間で2つの伝送経路が互いに有線接続されている場合に移動体の特定部分に対し事故などによる衝撃や電磁波ノイズなどが加えられると、2つの伝送経路に流れる情報が同時に異常となってしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、伝送経路の選択処理を信頼性良く行うことができるようにした移動体用周辺監視システムを提供することにあり、その第2の目的は、移動体の特定の部分に衝撃や電磁波ノイズなどの伝送妨害が発生したとしても伝送経路を確保できるようにした移動体用周辺監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明によれば次のように作用する。すなわち、撮像機器が移動体の周辺を撮像すると、送信機が受信機に向けて2つの第1および第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送することができる。送信機がエラー検出用情報を表示器の表示画面の単位データ毎に付加して撮像信号を伝送するが、受信機が第1の伝送経路を通じて伝送された複数の単位データに連続してエラーを検出したことを条件として第1の伝送経路による伝送状態を異常であると判定し、当該第1の伝送経路に代えて第2の伝送経路を通じて伝送される撮像信号を選択する。
【0010】
すると、連続する複数単位データ中にエラーが検出されないと異常と判定されないので、異常であることを誤検出してしまう虞がなくなり、不必要に伝送経路の選択切替処理が行われてしまう虞もなくなる。これにより、伝送経路の選択処理を信頼性良く行うことができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、次のように作用する。すなわち、撮像機器が移動体の周辺を撮像すると、送信機が受信機に向けて2つの第1および第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送することができる。送信機がエラー検出用情報を表示器の表示画面の単位データ毎に付加して撮像信号を伝送し、受信機が1又は複数の単位データにエラーが検出されたことを条件として第1または第2の伝送経路による伝送状態を異常であると判定した後、送信機が撮像信号を送信して受信機が当該撮像信号のエラー検出処理を行うときには、受信機が、異常判定されたときにエラーが検出された単位データの数よりも多い数の単位データに連続してエラーを検出しないことを条件として異常と判定された伝送経路による伝送状態が異常から正常に復帰したと判定する。
【0012】
このため、伝送機器は、一旦伝送経路が異常と判定されたとしても当該異常と判定された伝送経路を再度正常と判定された状態で使用することができる。しかも一旦異常であると判定された伝送経路は正常判定されにくくなり例えば伝送効率の悪い伝送経路を極力使用しないように構成できる。これにより、伝送経路の選択処理を信頼性良く行うことができる。
【0013】
請求項3記載の発明のように、単位データを表示器の表示画面の1ライン分のデータとしても良いし、請求項4記載の発明のように、1フレーム分のデータとしても良い。
請求項5記載の発明のように、第1および第2の伝送経路に対応して撮像機器が2つ設けられていても良い。この場合、一方の撮像機器が故障など何らかの不具合を生じていたとしても他方の撮像機器が正常に動作するため、当該不具合をカバーすることができる。
【0014】
請求項6記載の発明のように、CRC方式、パリティ方式などの所定の誤り検出方式に適用されると共に撮像信号に付加された冗長ビットをエラー検出用情報として用いてエラー検出処理を行っても良い。
【0015】
請求項7記載の発明のように、撮像信号内に付加される水平同期信号、色同期信号、垂直同期信号のうち少なくとも何れか1つをエラー検出用情報として用いてエラー検出処理を行っても良い。
【0016】
請求項8記載の発明のように、撮像機器と表示機器との間を無線接続するように送信機および受信機を構成し、当該無線接続チャンネルを2チャンネル設けることによって第1および第2の伝送経路を構成しても良い。
【0017】
請求項9記載の発明によれば、次のように作用する。すなわち、伝送機器は、第1の伝送経路が異常であると判定されたときに第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送し、第1の伝送経路が正常であると判定されると第2の伝送経路に代えて第1の伝送経路を通じて撮像信号を伝送する。この場合、第2の伝送経路を補助的に用いることができる。
【0018】
請求項10記載の発明によれば、次のように作用する。すなわち、伝送機器は、第1の伝送経路が異常であると判定されたときには撮像信号が第2の伝送経路を通じて伝送され、第2の伝送経路が異常であると判定されるまで第1の伝送経路を用いず第2の伝送経路を通じて撮像信号が伝送され続ける。この場合、第1および第2の伝送経路を共に主経路として用いることができる。
【0019】
請求項11記載の発明によれば、次のように作用する。すなわち、撮像機器が移動体の周辺を撮像すると、送信機が受信機に2つの第1および第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送する。このとき、伝送機器は送信機と受信機との間を有線接続する伝送ケーブルを2つ設けることによって第1および第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送可能に構成されており、2つの伝送ケーブルは、その敷設経路が移動体内で互いに離間して設置されているため、たとえ移動体の特定部分に衝撃や電磁波ノイズなどの集中的な伝送妨害が発生し一方の伝送ケーブルに伝送障害が発生したとしても、他方の伝送ケーブルを通じて撮像信号を伝送することができ、伝送経路を確保できる。
【0020】
請求項12または13記載の発明のように、撮像機器が移動体の後方に設置されていると共に表示器が移動体の前方に設置されているときには、2つの伝送ケーブルをそれぞれ移動体の左右側部に沿って互いに離間して設置しても良いし、移動体の上下方向に離間して設置しても良い。
【0021】
請求項14記載の発明によれば、第1の伝送経路が異常であると判定されたときに、第1の伝送経路が異常である旨を示す情報を報知手段に報知させているため、移動体と共に移動するユーザ(例えば運転者)に第1の伝送経路が異常である旨を知らせることができ、これにより修理を促すことができる。
【0022】
請求項15記載の発明によれば、第1および第2の伝送経路が2つのみの経路しか構成されていない場合に両経路共に異常であると判定されたときには、当該第1および第2の伝送経路が異常である旨を示す情報を移動体に搭載された報知手段に報知させているため、移動体と共に移動するユーザ(例えば運転者)に第1および第2の伝送経路が共に異常である旨を知らせることができ修理を促すことができる。
【0023】
例えば撮像機器が故障したときに当該撮像機器が正常に動作していると運転者が誤認識すると、運転者は危険であることを認識することなく移動体を操作してしまう虞がある。請求項15記載の発明によれば、移動体の周辺を目視確認する旨の警告情報を報知手段に報知させているため、移動体周辺の危険を直接運転者が察知すべきであることを運転者に認識させることができる。
【0024】
前記した報知情報を報知手段に報知させたとしても、ユーザは後にその旨を忘れてしまう虞がある。そこで、請求項16記載の発明によれば、伝送経路が異常である旨を示す情報を予め登録された携帯端末に送信するようにしているため、ユーザが当該携帯端末を普段使い慣れている場合には、ユーザは伝送経路が異常であることを忘れたとしても携帯端末の受信内容を把握することで思い出すことができ伝送経路の修理を適切に行うことができる。
【0025】
また、異常の原因を示すエラーコードを携帯端末にデータ送信するため、ユーザは伝送経路の異常状態を修理者(例えば、移動体が自動車のときディーラーなど)に対し的確に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態について移動体周辺監視システムの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】移動体内における伝送ケーブルの敷設態様を概略的に示す配置図
【図3】伝送ケーブルの敷設態様の具体例を示す配置図(その1)
【図4】伝送ケーブルの敷設態様の具体例を示す配置図(その2)
【図5】データとエラー検出用情報による撮像信号の構成図
【図6】伝送経路の異常時の処理内容を概略的に示すフローチャート
【図7】伝送経路の正常異常判定方法を表す状態遷移図
【図8】本発明の第2実施形態を示す図6相当図
【図9】本発明の第3実施形態について撮像機器の接続態様を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明の移動体周辺監視システムを、車両周辺監視システムに適用した第1実施形態について図1ないし図7を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、車両周辺監視システムを概略的なブロック図により示しており、図2は、車両周辺監視システムの車両内部の配置形態について車両内を上面から見た図により概略的に示している。
図1に示すように、車両周辺監視システム1は、カメラ(撮像機器)2と、このカメラ2の撮像信号を受信し表示画面に表示させる表示器3と、これらのカメラ2から表示器3に向けて撮像信号を伝送する伝送機器4とを具備し運転支援装置として構成されている。
【0029】
伝送機器4は、送信機5および受信機6間に2本の伝送ケーブル7、8を接続して構成されている。送信機5はカメラ2側に設置され当該カメラ2に電気的に接続されている。受信機6は表示器3側に設置され当該表示器3に電気的に接続されている。
【0030】
図2に示すように、カメラ2は、例えば車両9の最後部に位置して設置されており送信機5はカメラ2に装着されている。カメラ2は、車両9の外方に向けて1又は複数個設置されており車両9の周辺を撮像する。表示器3は例えば車両9内の運転席の脇に位置して当該運転者が視認可能に設置されており、受信機6は表示器3に装着されている。
【0031】
車両9内には、伝送経路として伝送ケーブル7、8が2つ(複数)敷設されている。伝送ケーブル7、8は、カメラ2と表示器3との間が所定距離(例えば数m程度)離間しているため当該機器間を接続するために設けられている。伝送ケーブル7はメインケーブルとなるもので通常時に主な伝送系A(第1の伝送経路)として用いられる。また、伝送ケーブル8は異常時に補助的な伝送系B(第2の伝送経路)として用いられる。
【0032】
これらの伝送ケーブル7、8は互いに離間して設置されている。車両9は進行方向に対して左右対称に構成されているため、伝送ケーブル7、8を例えば左右側部に沿って設置するようにしても良い。
【0033】
例えば伝送ケーブル7、8を車両9の後部から前部にかけて設置するときには、図3に示すようにAピラー9bに沿うと共に車両9の上部に沿って設けても良いし、図4に示すように、車両9の乗車席の脇に位置するステップカバー9aの内側に覆設して車両9の下部に沿って設けても良い。また、伝送ケーブル7、8を車両9内の上下方向に離間して設けても良い。
【0034】
これは、伝送ケーブル7、8が互いに近接していると、車両9内の特定部分に対する集中的な伝送妨害(例えば、誘導ノイズなどの電磁波障害、事故などによる断線)が生じたときに、両伝送ケーブル7、8上を伝送する伝送信号(撮像信号)が共に異常を来してしまうことがあるためである。
【0035】
特に、車両9の内部にはモータが使用されるため、各種モータから発生する電磁波が伝送ケーブル7、8に誘導ノイズとして悪影響を与えやすい。ユーザが車両9内の改造を行ったり、他のオプション機器など各種電気機器を接続するとその悪影響が増幅されることになり、伝送ケーブル7、8に伝送する信号がその影響を受けて正常に撮像信号が伝送されなくなる虞がある。
【0036】
伝送ケーブル7、8が互いに離間して設置されていると何れか一方を伝送する伝送信号に異常を来したとしても他方を伝送する信号は正常に伝送される可能性が高くなり、たとえ集中的な伝送妨害が発生したとしても正常に撮像信号が伝送されるようになる。
【0037】
図1に戻って、カメラ2は車両9の外方を撮像したときには動画像もしくは静止画像の撮像信号として送信機5に送信する。この送信機5は、撮像信号を表示器3の1画面分の情報を必要に応じて分割した単位データに割り振る。この単位データは所定の情報量を有する撮像信号の情報を示している。
【0038】
送信機5はエラー検出用情報付加回路10を備えており、当該エラー検出用情報付加回路10が、単位データに基づいてエラー検出用情報として所定の誤り検出方式に適用される冗長ビットを作成し当該冗長ビットを単位データに付加して伝送用の撮像信号とする。
【0039】
尚、誤り検出方式としては、CRC(Cyclic Redundancy Check)方式、パリティ方式などの各種方式を適用できる。図5(a)はCRC方式を適用したときの伝送用の撮像信号のフォーマットを示している。図5(a)中の1ラインとは図5(b)に示すように表示器3の表示画面の水平1ラインを表しており、1フレームとは1静止画像の全てのライン分を示している。本実施形態では1ライン分または1フレーム分の情報が単位データとして割り当てられている。
【0040】
図1に戻って、送信機5は、冗長ビットが付加された伝送用の撮像信号を、伝送ケーブル7、8を通じて伝送する。受信機6は送信機5から伝送された撮像信号を受信する。
受信機6には、エラー検出回路11、12、切替制御回路13、セレクタ14が設けられている。エラー検出回路11、12は、伝送ケーブル7、8に対応してそれぞれ設けられており、エラー検出回路11が伝送ケーブル7を通じて伝送される撮像信号のエラーを検出し、エラー検出回路12が伝送ケーブル8を通じて伝送される撮像信号のエラーを検出する。
【0041】
切替制御回路13は、エラー検出回路11、12により検出されたエラー情報に基づいてセレクタ14を切替える。セレクタ14は、伝送ケーブル7による伝送系A、伝送ケーブル8による伝送系Bの何れかの伝送系により伝送された撮像信号を選択して表示器3に切替出力する。表示器3は選択された撮像信号を用いて表示画面に表示させる。
【0042】
受信機6の切替制御回路13は報知制御回路15に接続されている。報知制御回路15は表示器3およびスピーカ16に接続されており、切替制御回路13からの指示信号に基づいて各種警告情報などの情報を表示器3に表示させたりスピーカ16から警告音などの音を出力させたりする。
【0043】
報知制御回路15には無線機17が接続されており、報知制御回路15は当該無線機17、通信網18を通じて携帯端末19との間で通信する。
上記構成の動作説明を行う。
【0044】
図6は、伝送経路の異常時の処理をフローチャートにより概略的に示しており、図7は、伝送経路の正常異常判定方法を状態遷移図により概略的に示している。
図6に示すように、通常時、受信機6は、伝送ケーブル7を通じて伝送される伝送系Aの伝送状態をエラー検出回路11および切替制御回路13により監視し(S1)、伝送系Aの伝送状態が正常と判定されていることを条件として(S1:正常)、切替制御回路13がセレクタ14を伝送ケーブル7側に切替制御することで伝送系Aを通じて伝送される撮像信号を選択し(S2)、表示器3が当該撮像信号に応じた画面を表示する(S3)。そして、報知制御回路15が必要に応じて「メイン伝送系Aを選択しています」という旨の表示/音声アナウンスを表示器3/スピーカ16を通じて行い(S4)、ステップS1に戻る。ステップS1において、伝送系Aの伝送状態に異常を生じたと判定されると(S1:異常)、伝送系Bの伝送状態の監視へ移行する(S5)。
【0045】
ここで伝送系A、Bの正常異常判定方法について図7を参照しながら説明する。図5(a)に示すように、送信機5および受信機6間では撮像信号を単位データ(例えば1ライン、1フレーム)毎に分割して伝送するものの、伝送経路の途中では車両9内に誘導ノイズなどの伝送障害が引き起こされる。しかし、この誘導ノイズは、例えば車両9内に設置されるモータの回転数が所定の条件を満たしたときなど一時的な障害であることもあり恒久的な悪影響には至らない場合もある。
【0046】
そこで本実施形態では、図7に示すような伝送系A、Bの正常異常判定方法を適用している。この図7に示すように、真正の「正常」の状態において、連続した3回の単位データ(単位データの数=「3」)が全てエラーであることが検出されると「異常」であると判定する。したがって、1回や2回のエラーが検出されたとしても「正常」状態が保持され、その次の判定においてエラーが検出されなければ、真正の「正常」の状態に戻る。
【0047】
また、図7に示すように、一旦「異常」であると判定されると、連続した5回の単位データ(即ち、異常判定されたときの単位データの数(=「3」)よりも多い単位データの数=「5」)が全てエラーで無いことが検出されない限り真正の「正常」に復帰したと判定されることはない。
【0048】
したがって、1回〜4回連続してエラーが単位データ内に検出されなかったとしても、その次の判定でエラーが検出されると「異常」であると判定される。この場合、一旦伝送系が異常と判定されたとしても、5回正常と判断されれば異常と判定された伝送系を「正常」と判定された状態で使用することができる。しかも一旦異常であると判定された伝送系は正常判定されにくくなり、伝送効率の悪い伝送系を極力使用しないように構成することができる。尚、「正常」「異常」と判定される単位データの回数は適宜調整すれば良い。
【0049】
図6に戻って、ステップS1において伝送系Aが異常であると判定されると、伝送系Bが正常と判定されている(S5:正常)限り、伝送系Bを選択し(S6)、前述と同様に画面表示を行い(S7)、必要に応じて「メイン伝送系Aが異常でありサブ伝送系Bを選択している」旨を表示器3、スピーカ16から報知する(S8)。具体的には、報知制御回路15が、「サブ伝送系Bを選択しています。」「メイン伝送系Aは故障です。」「速やかにメイン伝送系Aの修理をお願いします。」という旨のメッセージを表示器3に表示させたり、スピーカ16から音出力させる。これにより、ユーザ(特に車両9の運転者)に伝送系Aが故障していることを知らせることができ、修理を促すことができる。
【0050】
また、予め受信器6又は報知制御回路15などに登録された携帯端末19に、無線機17、通信網18を通じてこの旨をメールなどで送信するようにしても良い。ユーザが当該携帯端末19を普段使い慣れている場合には、ユーザは伝送系Aが異常であることを忘れたとしても携帯端末19の受信内容を把握することで思い出すことができ伝送系Aの修理を適切に行うことができる。
【0051】
ステップS1に戻って、伝送系Aと共に伝送系Bも異常であることが判定されると(S1、S5:異常)、切替制御回路13がセレクタ14から選択出力させないことで撮像信号を無効化し表示器3に撮像信号を出力しないようにする(S9)。すると、表示器3はその表示画面を例えばブルーバック画面表示とするため、ユーザはカメラ2の画像を視認することはできない。また、必要に応じて「メイン伝送系A、サブ伝送系Bが共に異常」である旨を表示器3、スピーカ16から報知する(S10)。
【0052】
具体的には、報知制御回路15は、「メイン伝送系A、サブ伝送系Bは共に故障です。」「安全は目視にてお願いします。」「速やかに修理をお願いします。」という旨のメッセージを表示器3に表示させたり、スピーカ16から音出力させる。これにより、ユーザ(特に車両9の運転者)に伝送系A、伝送系B共に故障していることを知らせることができ、修理を促すことができる。しかも、車両9の周辺を目視確認する旨の警告情報を表示器3、スピーカ16から報知させているため、車両9の周辺の危険を直接運転者が察知すべきであることを運転者などに認識させることができる。これらの警告情報は、ユーザに注意喚起を促すため、表示を点滅させても良いし、警告音を途中に割り込ませることでユーザに注目させるようにしても良い。
【0053】
また、予め受信機6又は報知制御回路15などに登録された携帯端末19に、無線機17、通信網18を通じてこの旨を電子メールなどで送信するようにしても良い。ユーザが当該携帯端末19を普段使い慣れている場合には、ユーザは伝送系AおよびBが異常であることを忘れたとしても携帯端末19の受信内容を見ることで思い出すことができ伝送系AおよびBの修理を適切に行うことができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、送信機5がエラー検出用情報を表示器3の表示画面の単位データ毎に付加して撮像信号を伝送するが、受信機6が伝送系Aを通じて伝送された複数の単位データに連続してエラーを検出したことを条件として伝送系Aによる伝送状態を異常であると判定し、当該伝送系Aに代えて伝送系Bを通じて伝送される撮像信号を選択している。
【0055】
すると、受信機6は、連続する複数単位データ中にエラーが検出されないと異常であると判定しないので、異常であることを誤検出してしまう虞が少なくなり、不必要に伝送系A、Bの切替選択処理が行われてしまう虞もなくなる。これにより、伝送系A、Bの選択処理を信頼性良く行うことができる。
【0056】
また、伝送系AまたはBによる伝送状態を異常であると判定した後、送信機5が撮像信号を送信して受信機6が当該撮像信号のエラー検出処理を行うときに、受信機6が5つ(即ち、3つ以上、3つを超える)の単位データに連続してエラーを検出しないことを条件として、異常と判定された伝送系AまたはBによる伝送状態が異常から正常に復帰したと判定している。
【0057】
このため、一旦伝送系AまたはBが異常と判定されたとしても上記条件を満たせば当該異常と判定された伝送系AまたはBを「正常」と判定された状態で使用することができる。しかも一旦異常であると判定された伝送系AまたはBは正常判定されにくくなり伝送効率の悪い伝送系AまたはBを極力使用しないように構成できる。これにより、伝送系A、Bの選択処理を信頼性良く行うことができる。
【0058】
メインの伝送系Aが一旦異常であると判定されたとしても伝送系Bを用いることになり、メインの伝送系Aが正常であると判定されると伝送系Bに代えてメイン伝送系Aを通じて撮像信号が伝送されるため、伝送系Bを補助的に用いることができる。
【0059】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、一方の伝送経路が一旦異常であると判定されたときに他方の伝送経路を用い、一方の伝送経路の正常異常変化に関わらず他方の伝送経路が異常にならない限り当該他方の伝送経路を使用し続けるところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0060】
図8に示すように、伝送系Aが異常であると共に伝送系Bが正常であるときには、ステップS7に示す警告処理の後、受信機6は、伝送系Bが正常判定されている(S11:正常)限り、ステップS1の処理には戻らない。受信機6は伝送系Bが異常判定されれば(S11:異常)ステップS1に戻り、再度、伝送系Aが正常であるか否かを判定する。このとき、伝送系Aも異常であれば、伝送系A、B共に異常判定されることになるため、ステップS10において伝送系A、B共に異常である旨が報知される。
【0061】
本実施形態によれば、伝送系Aが一旦異常であると判定されると伝送系Bを用いることになり、伝送系Bが異常であると判定されるまで伝送系Aを用いず伝送系Bを用いて撮像信号が伝送され続けられる。このため、伝送系A、Bを共に主経路として用いることができる。
【0062】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、第1および第2の伝送経路に対応して撮像機器を2つ設けたところにある。図9に示すように、伝送系A,Bにはそれぞれカメラ2、2が接続されている。送信機5は、カメラ2、2により撮像された撮像信号についてそれぞれ伝送系A,Bを通じて送信する。本実施形態では、メインのカメラ2と、サブのカメラ2を設けて構成しているため、一方のカメラ2が故障など何らかの不具合を生じたとしても、他方のカメラ2が正常に動作するため、不具合をカバーすることができる。
【0063】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形または拡張が可能である。
移動体として自動車による車両9に適用したが、オートバイ、自転車などの他の車両、その他歩行者などに適用してもよい。車両9の後方画像の撮像信号を伝送するため、伝送ケーブル7、8を前後方向に敷設して伝送系A、Bを構成した実施形態を示したが、車両9のその他の外部や内部(特に死角となる領域)にカメラ2を設置して伝送系A,Bを構築した例に適用しても良い。
【0064】
単位データは、1ライン分または1フレーム分のデータである実施形態を示しているが、そのデータ量が可変調整可能であっても良い。
前述実施形態ではデジタル伝送方式に適用した実施形態を示したが、他のアナログ伝送方式に適用しても良い。
【0065】
例えば、NTSC(National Television System Committee)方式は、日本および米国内においてテレビ放送のカラー放送方式として普及しているが、この方式では映像信号の中に同期信号として水平同期信号、色同期信号、垂直同期信号を用いている。
【0066】
送信機5および受信機6間でこの方式で撮像信号を送受信するときには、受信機6がこれらの同期信号のうち少なくとも何れか一つの信号を誤検出することでエラーであると判定しても良い。
伝送系A、B(第1および第2の伝送経路)としてそれぞれ有線接続する伝送ケーブル7、8を用いた実施形態を示したが、無線接続する伝送経路を適用し、チャンネルを2つ(複数)設けて適用しても良い。
【符号の説明】
【0067】
図面中、1は車両周辺監視システム(移動体周辺監視システム)、2はカメラ(撮像機器)、3は表示器、4は伝送機器、5は送信機、6は受信機、7、8は伝送ケーブル、9は車両(移動体)、16はスピーカ(報知手段)、17は無線機、18は通信網、19は携帯端末、Aは伝送系(第1の伝送経路)、Bは伝送系(第2の伝送経路)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺を撮像する撮像機器から前記移動体の運転者の周辺に設置される表示器に向けて前記撮像機器の撮像信号を送信機および受信機を用いて伝送する伝送機器を備え、
前記伝送機器は前記送信機から前記受信機に向けて第1および第2の伝送経路により撮像信号を伝送可能に構成され、前記送信機がエラー検出用情報を前記表示器の表示画面の単位データ毎に付加して撮像信号を伝送し、前記受信機が前記エラー検出用情報を用いて前記第1の伝送経路のエラー検出処理を行い前記伝送された複数単位データに連続してエラーが検出されたことを条件として前記第1の伝送経路による伝送状態を異常であると判定し前記第1の伝送経路に代えて前記第2の伝送経路を通じて伝送される撮像信号を選択することを特徴とする移動体周辺監視システム。
【請求項2】
移動体の周辺を撮像する撮像機器から前記移動体の運転者の周辺に設置される表示器に向けて前記撮像機器の撮像信号を送信機および受信機を用いて伝送する伝送機器を備え、
前記伝送機器は前記送信機から前記受信機に向けて第1および第2の伝送経路により撮像信号を伝送可能に構成され、前記送信機がエラー検出用情報を前記表示器の表示画面の単位データ毎に付加して撮像信号を伝送し、前記受信機が前記エラー検出用情報を用いてエラー検出処理を行い伝送された1又は複数の第1単位データにエラーが検出されたことを条件として前記第1または第2の伝送経路による伝送状態を異常であると判定した後、
前記送信機が撮像信号を送信し前記受信機が撮像信号のエラー検出処理を行うときに、
前記受信機は、前記異常判定されたときにエラーが検出された単位データの数よりも多い数の単位データに連続してエラーを検出しないことを条件として前記異常判定された第1または第2の伝送経路による伝送状態が異常から正常に復帰したと判定することを特徴とする移動体周辺監視システム。
【請求項3】
前記単位データは前記表示器の表示画面の1ライン分のデータであることを特徴とする請求項1または2記載の移動体周辺監視システム。
【請求項4】
前記単位データは前記表示器の表示画面の1フレーム分のデータであることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の移動体周辺監視システム。
【請求項5】
前記第1および第2の伝送経路に対応して前記撮像機器が2つ設けられていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の移動体用周辺監視システム。
【請求項6】
前記受信機は、CRC(Cyclic Redundancy Check)方式、パリティ方式などの所定の誤り検出方式に適用され前記撮像信号内に付加された冗長ビットを前記エラー検出用情報として用いてエラー検出処理を行うことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の移動体周辺監視システム。
【請求項7】
前記受信機は、前記撮像信号内に付加される水平同期信号、色同期信号、垂直同期信号のうち少なくとも何れか1つを前記エラー検出用情報として用いてエラー検出処理を行うことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の移動体周辺監視システム。
【請求項8】
前記伝送機器の送信機および受信機は、前記撮像機器と前記表示機器との間を無線接続するチャンネルを2チャンネル設けることによって前記第1および第2の伝送経路を構成することを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の移動体用周辺監視システム。
【請求項9】
前記伝送機器は、前記第1の伝送経路が異常であると判定されたときに前記第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送し、前記第1の伝送経路が正常であると判定されると前記第2の伝送経路に代えて前記第1の伝送経路を通じて撮像信号を伝送することを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の移動体周辺監視システム。
【請求項10】
前記伝送機器は、前記第1の伝送経路が異常であると判定されたときに前記第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送し、当該第2の伝送経路が異常であると判定されるまで前記第1の伝送経路を用いず前記第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送し続けることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の移動体周辺監視システム。
【請求項11】
移動体の周辺を撮像する撮像機器から前記移動体の運転者の周辺に設置される表示器に向けて前記撮像機器の撮像信号を送信機および受信機を用いて伝送する伝送機器を備え、
前記伝送機器は、前記送信機と前記受信機との間を有線接続する伝送ケーブルを2つ設けることによって第1および第2の伝送経路を通じて撮像信号を伝送可能に構成され、前記2つの伝送ケーブルは、その敷設経路が前記移動体内で互いに離間して設置されていることを特徴とする移動体周辺監視システム。
【請求項12】
前記撮像機器が移動体の後方に設置されていると共に前記表示器が移動体の前方に設置されているときには、
前記2つの伝送ケーブルは、それぞれ移動体の左右側部に沿って互いに離間して設置されていることを特徴とする請求項11記載の移動体周辺監視システム。
【請求項13】
前記撮像機器が移動体の後方に設置されていると共に前記表示器が移動体の前方に設置されているときには、
前記2つの伝送ケーブルは、それぞれ移動体の上下方向に離間して設置されていることを特徴とする請求項11または12記載の移動体周辺監視システム。
【請求項14】
前記第1の伝送経路が異常であると判定されたときに、当該第1の伝送経路が異常である旨を示す情報を移動体に搭載された報知手段に報知させることを特徴とする請求項1ないし13の何れかに記載の移動体周辺監視システム。
【請求項15】
前記第1および第2の伝送経路が2つのみの経路しか構成されていない場合、前記第1および第2の伝送経路が共に異常であると判定されたときに、当該第1および第2の伝送経路が異常である旨を示す情報と共に移動体の周辺を目視確認する旨の警告情報を当該移動体に搭載された報知手段に報知させることを特徴とする請求項1ないし14の何れかに記載の移動体周辺監視システム。
【請求項16】
前記伝送経路が、異常である旨を示す情報と共に当該異常の原因を示すエラーコードを、予め登録された携帯端末にデータ送信することを特徴とする請求項1ないし15の何れかに記載の移動体周辺監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−93465(P2011−93465A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250437(P2009−250437)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】