説明

移動型医療装置及び医療装置間の通信方法

【課題】
【解決手段】本発明は、移動型医療装置、及び医療装置間の通信方法に関する。本発明の医療装置は、少なくとも第二の医療装置と通信するモジュールを備え、上記通信モジュールは、動物の生理学的パラメータの値によって起動されるようにされる。本発明の方法は、第一の医療装置と、少なくとも第二の医療装置とを備え、上記医療装置間の通信は、動物の生理学的パラメータの値により起動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動型医療装置、及び医療装置の通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の治療用の移動型医療装置は、例えば、体外インスリンポンプと、例えば、携帯型血糖メータのような血糖測定装置とを有している。インスリンポンプは、基準量のインスリン(基準インスリン量)及び手操作により制御された追加的な「食事ボーラス」インスリンの量を人体内に連続的に注入し、これにより膵臓によるインスリン分泌を反映することによって、血糖濃度を良好に制御することを許容する。更に、連続的な血糖センサを開発すれば、一日の全体に亙って生体内の血糖濃度を測定することが可能となるであろう。測定された血糖データを使用して個人の必要性に対応して糖尿病の治療法を調節することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
糖尿病の治療を改良するため、品質を保証する態様にて医療装置の間にてデータを伝送する手段及び方法を提供することが重要である。
このため、本発明の目的は、医療装置の間にて制御されたデータの伝送を許容する医療装置及び制御されたデータの伝送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一の形態において、本発明は、少なくとも第二の医療装置と通信するモジュールを備える医療装置であって、上記医療装置内の通信モジュールは、動物の生理学的パラメータの値によって起動されるようにした、上記医療装置に関する。
【0005】
本発明の医療装置は、無線通信用の遠隔測定システム、好ましくは、RF通信用の遠隔測定システムを備えることが好ましい。
好ましくは、医療装置は、遠隔制御装置と、PDAと、分析物質の測定装置、好ましくは、例えば、携帯型血糖メータのような血糖測定装置、より好ましくは、試験紙(strip)利用の血糖メータ又はそれらの組み合わせ体とから成る群から選ばれるものとする。
【0006】
生理学的パラメータは、分析物質の濃度、動物の導電率のような生理学的特徴、心拍数又は呼吸数、体温、動き、空気又は構造体−伝播音のような生理学的に重要な標識、ECG(電気心電図)及び同様のものから成る群から選ばれることが好ましい。
【0007】
本発明の1つの好ましい実施の形態において、分析物質の濃度は血糖濃度である。
好ましくは、本発明の医療装置は、血糖を測定する電気化学的又は光度測定モジュールを備えている。適した医療装置は、例えば、アキュチェックコンパクト(AccuChek Compact)のような試験紙利用の血糖メータである。
【0008】
第二の形態において、本発明は、医療装置のシステムに関する。上記システムは、以前の部分に記載された本発明の第一の医療装置と、上記第一の医療装置と通信することができる少なくとも第二の医療装置とを備えている。
【0009】
1つの好ましい実施の形態において、第二の医療装置は、体外注入ポンプと、植込み型注入ポンプと、ペースセッタと、分析物質又は重要な標識のセンサ、好ましくは、連続的な分析物質又は重要な標識のセンサ、より好ましくは、連続的な血糖センサとから成る群から選ばれる。
【0010】
更に、好ましい実施の形態において、第一の医療装置及び少なくとも第二の医療装置は、無線通信用の遠隔測定システム、好ましくは、RF通信用の遠隔測定システムを備えている。
【0011】
第三の形態において、本発明は、第一の医療装置と、少なくとも第二の医療装置との間の通信方法であって、上記医療装置間の通信は、動物の生理学的パラメータの値により可能とされ且つ(又は)起動される、上記通信方法に関する。
【0012】
1つの好ましい実施の形態において、少なくとも2つの医療装置間の通信は、所定の時間、可能とされ且つ(又は)起動される。持続時間は、一定にし、ランダムにし又は通信を可能にし且つ(又は)起動させる生理学的パラメータ又は動物の身体のその他の生理学的パラメータに依存するものとすることができる。
【0013】
生理学的パラメータは、分析物質の濃度、動物の導電率のような生理学的特徴、心拍数又は呼吸数、体温、動き、空気又は構造体−伝播音、ECG(心電図)及び同様のもののような生理学的に重要な標識から成る群から選ばれることが好ましい。好ましくは、分析物質の濃度は血糖濃度であるものとする。
【0014】
1つの好ましい実施の形態において、医療装置の間の通信の起動は、生理学的パラメータの値により第一の医療装置にて実行されるものとする。
更なる好ましい実施の形態において、第一の医療装置は、遠隔制御装置と、PDAと、分析物質の測定装置、好ましくは、血糖測定装置、より好ましくは、試験紙利用の血糖メータとから成る群から選ばれる。
【0015】
第二の医療装置は、体外注入ポンプと、植込み型注入ポンプと、ペースセッタと、分析物質センサ、好ましくは、連続的な分析物質センサ、より好ましくは、連続的な血糖センサとから成る群から選ばれることが好ましい。
【0016】
1つの好ましい実施の形態において、上記医療装置の間の通信は、無線通信、好ましくは、RF通信である。
更に好ましい実施の形態において、第一の医療装置は、第二の医療装置からデータを受け取る。
【0017】
更に好ましい実施の形態において、第一の医療装置は、上記装置の機能の少なくとも一部を制御する命令を第二の医療装置に対して送る。
1つの形態において、本発明は、医療装置、特に、連続的な血糖センサのような医療感知装置及び(又は)インスリンポンプのような治療装置及び(又は)血糖メータのような診断医療装置との間の通信を制御し及び(又は)可能にする新規な方法に関する。
【0018】
例えば、人体に当てがわれた連続的な血糖センサと、血糖メータとの間の通信は、血糖メータにて血糖の測定が行われたときにのみ、確立することができる。血糖メータにて血糖の値を生成させれば、特定の制限時間、2つの装置の間にて通信を可能にし及び(又は)起動させることができる。時間範囲の間、データはセンサから血糖メータまで伝送し且つ(又は)血糖メータからの命令をセンサに送ることができる。制限時間の満了後、2つの装置の間の通信を不作動にする。更なる通信を確立するためには、2つの装置の間の通信リンクは血糖メータにて更なる血糖値を生成させることにより起動させなければならない。
【0019】
本明細書にて使用した「値を生成する」という用語は、分析物質の値の測定値、特に血糖値に対する方法のような生理学的パラメータを決定する任意の方法又は手順を包含する。血糖値を決定するのに適した方法は、例えば、当該技術の当業者に既知の電気化学的方法及び光度測定方法である。
【0020】
医療装置の間の通信リンクが実際の分析物質の値に依存することにより、医療センサ装置及び(又は)医療治療装置から医療診断装置に伝達されるデータの品質を保証することになる。
【0021】
センサから診断装置に伝送されたデータは、例えば、血糖メータのような診断装置に記憶させることができ、また、更なる処理及び(又は)分析のため、PDA又はコンピュータのような第三の装置に伝送することができる。的確なソフトウェアによりデータを分析し且つボーラスの推奨又は体外又は体内インスリンポンプを使用する患者に対する基準インスリン量を調節するため、使用することができる。
【0022】
診断装置と、例えば、コンピュータのような第三の装置との間の通信リンクは上記診断装置内にて血糖値を生成することにより起動させる必要はない。
1つの好ましい実施の形態において、本発明は、診断医療装置、好ましくは、血糖メータと、注入ポンプ、好ましくは、体外インスリンポンプとの間の通信方法に関する。この特定の実施の形態おいて、診断医療装置は、注入ポンプの機能を制御する遠隔制御装置として使用される。血糖値が血糖メータ内にて生成された後、メータとポンプとの間の通信リンクを所定の時間、可能にし且つ(又は)起動させ、遠隔制御装置、すなわち血糖メータからポンプまで命令を伝送することができる。通信時間範囲の間、ポンプに記憶させたデータを診断装置に伝送することも充分に可能である。
【0023】
注入ポンプの遠隔制御部が血糖濃度を測定するモジュールを備えていない場合、ポンプと遠隔制御部との間の通信は、血糖メータにて測定された現在の血糖値を遠隔制御部に入力することにより、起動される。この値は、例えば、遠隔制御部のボタンを使用して入力し又は無線又は有線接続を介して血糖メータに伝送することができる。血糖値が遠隔制御部に入力された後、遠隔制御部と注入ポンプとの間の通信リンクは、好ましくは、所定の時間だけ確立される。時間間隔が満了した後、通信は遮断され、2つの装置の間のデータの交換は最早、不可能である。更なる回数の通信をするためには、新しい現在の血糖値を遠隔制御部に入力することにより、通信を新たに起動させることを必要とする。本明細書にて使用する遠隔制御部という用語は、PDA、スマートフォン、小型で且つポンプ特定の遠隔制御部を包含する。
【0024】
医療装置の間のデータの伝送は、既知の技術を使用して実行することができ、有線接続及び無線通信を含む。これらの技術は、当該技術の当業者に既知である。好ましい通信は、無線通信、より好ましくは、RF通信である。
【0025】
装置の間のデータの伝送は、無権限の第三者が患者の個人データにアクセスすることができないことを保証し得るよう暗号化することができる。データの暗号化方法は、当該技術の当業者に既知である。
【0026】
更なる好ましい実施の形態において、医療装置の間の通信は、例えば、ボタン又はレバーを押し、電池の挿入、タッチスクリーンの使用、振り動作、揺動、絞り動作又は同様のもののような、インスリンポンプのような第二の医療装置に対する操作によって起動される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下の文節において、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
医療装置の好ましいシステムは、間質液の血糖値を測定するため、人体に配置される連続的な血糖センサ装置と、血糖メータとを備えている。センサ装置は、間質組織内の血糖濃度を所定の態様にて測定する電気化学的血糖センサを備えている。センサ装置は、センサを制御するプロセッサ手段を含む体外部分と、測定された血糖値を記憶する記憶装置と、データを血糖メータ、好ましくは、試験紙利用の血糖メータに伝送する遠隔測定システムとを更に備えている。次に、センサ装置に記憶させた血糖値は、遠隔測定システムを介して血糖メータに伝送される。
【0028】
2つの装置の間の通信、すなわち無線リンクは、血糖メータ、好ましくは、試験紙利用の血糖メータを使用して患者の血液検体内の血糖濃度を測定することにより、確立され且つ(又は)起動される。試験紙利用の血糖メータが使用されるとき、患者は、試験紙を血糖メータに挿入し且つ血液の一滴を試験紙に配置する。血糖メータは、血糖値を測定し且つ、その値をそのディスプレイに表示する。血糖値を測定した後、例えば、起動ボタンのような血糖メータにおけるボタンを押し又は血糖遠隔測定システムを制御するプロセッサに対して直接、電子的リンクによって通信リンクを起動/確立し、血糖値の測定が完了すると、装置間の無線リンクが自動的に起動されるようにすることができる。
【0029】
次に、通信リンクを確立し、所定の時間間隔、医療装置間のデータの伝送が可能である。所定の時間間隔が満了した後、通信リンクを不作動にし、医療装置間にて更なるデータ/命令を伝送することはできない。次に、医療装置間にて新たな無線リンクを開放するため、血糖メータにて新たな血糖の測定値が必要である。
【0030】
更なる形態において、本発明は、データを処理し又はデータを使用する方法に関する。上記方法は、生理学的パラメータの値によって起動させた後にのみ、データの処理又はデータの使用が可能であることを特徴とする。この方法は、人体に当てがわれたセンサによって測定されたデータのような医療データを処理するため使用されることが好ましい。
【0031】
1つの好ましい実施の形態において、この方法は、人体に当てがわれたセンサ装置、好ましくは、連続的な血糖センサにより測定された医療データを処理するために使用される。次に、データは、例えば、診断医療措置、好ましくは、血糖メータに伝送される。データは、無線リンクを介してセンサ装置から診断装置に伝送されることが好ましい。この場合、少なくとも2つの医療装置の各々は、無線通信のための遠隔測定システムを備えている。無線通信は、双方向又は単方向とすることができる。
【0032】
上記2つの医療装置間に恒久的な通信リンクが存在することが好ましいが、例えば、医療センサ装置の記憶装置に記憶され且つ診断装置に伝送されたデータは、生理学的パラメータの値によって、処理が起動された後にのみ診断装置にて更に処理することができるようにすることができる。生理学的パラメータの値により、好ましくは、血糖値より起動された後、診断装置の記憶装置に記憶させたデータを処理し又は使用することができる。例えば、データは、連続的な血糖センサから血糖メータに伝送し且つ血糖メータの記憶装置に記憶させる。次に、これらのデータの更なる処理は、生理学的パラメータの値、好ましくは、血糖値により処理が起動された後にのみ、可能である。
【0033】
1つの好ましい実施の形態において、生理学的パラメータの値により起動された後の制限された時間間隔の間のみデータを処理することが可能である。データを処理するための所定の時間間隔が経過したとき、生理学的パラメータの値によって新たに起動させない限り、更なるデータの処理は不可能である。
【0034】
更なる形態において、本発明は、生理学的パラメータの値によって起動され得るようにされた、データを処理するモジュールを備える医療装置に関する。好ましくは、上記モジュールは、データを記憶する記憶装置を有するマイクロプロセッサを備えている。
【0035】
上記医療装置は、血糖メータであることが好ましい。好ましくは、血糖メータの記憶装置内に記憶させたデータの処理は、血糖メータのボタン(起動ボタン)を押すか又はデータ処理モジュール/システムを制御するプロセッサに対する直接的な電子的リンクの何れかにより起動され、血糖の測定が完了したとき、データの処理が自動的に起動されるようにする。
【0036】
本明細書にて使用する「データの処理」又は「データの使用」という用語は、データの任意の操作を意味し、また、データの分析、データの提供、データの解釈及びデータの表示を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第二の医療装置と通信するモジュールを備える医療装置において、前記第一の医療装置内の通信モジュールは、動物の生理学的パラメータの値によって起動されるようにした、医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療装置において、通信モジュールは、無線通信用の遠隔測定システム、好ましくは、RF通信用の遠隔測定システムである、医療装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療装置において、遠隔制御装置と、PDAと、分析物質の測定装置、好ましくは、血糖測定装置、より好ましくは、試験紙利用の血糖測定装置とから成る群から選ばれる、医療装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つの項に記載の医療装置において、生理学的パラメータは、動物の分析物質の濃度である、医療装置。
【請求項5】
請求項4に記載の医療装置において、分析物質の濃度は血糖濃度である、医療装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医療装置において、第一の医療装置は、血糖を測定する電気化学的モジュールを備える、医療装置。
【請求項7】
請求項5に記載の医療装置において、第一の医療装置は、血糖を測定する光度測定モジュールを備える、医療装置。
【請求項8】
医療装置のシステムにおいて、
a)請求項1ないし7の何れか1つの項に記載の第一の医療装置と、
b)前記第一の医療装置と通信することができる少なくとも第二の医療装置とを備える、医療装置のシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、第二の医療装置は、体外注入ポンプと、植込み型注入ポンプと、ペースセッタと、分析物質のセンサ、好ましくは、連続的な分析物質のセンサ、より好ましくは、連続的な血糖センサとから成る群から選ばれる、システム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のシステムにおいて、第一の医療装置及び少なくとも第二の医療装置は、無線通信用の遠隔測定システム、好ましくは、RF通信用の遠隔測定システムを備える、システム。
【請求項11】
第一の医療装置と、少なくとも第二の医療装置との間の通信方法において、前記医療装置間の通信は、動物の生理学的パラメータの値により可能とされ且つ(又は)起動される、通信方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、通信は、所定の時間範囲、可能とされ且つ(又は)起動される、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、時間範囲は、動物の生物学的パラメータに従って、又はそれ以前の時間期間の間に得られた1組みのデータに従って確立される、方法。
【請求項14】
請求項11ないし13の何れか1つの項に記載の方法において、生理学的パラメータは、動物の分析物質の濃度、心拍数、電気生理学的値、好ましくは、血糖濃度から成る群から選ばれる、方法。
【請求項15】
請求項11ないし14の何れかの1つの項に記載の方法において、通信の起動は、前記第一の医療装置内にて生理学的パラメータの値を生成させることにより第一の医療装置にて実行される、方法。
【請求項16】
請求項11ないし15の何れか1つの項に記載の方法において、第一の医療装置は、遠隔制御装置と、PDAと、分析物質の測定装置、好ましくは、血糖測定装置、より好ましくは、試験紙利用の血糖測定装置とから成る群から選ばれる、方法。
【請求項17】
請求項11ないし16の何れか1つの項に記載の方法において、第二の医療装置は、体外注入ポンプと、植込み型注入ポンプと、ペースセッタと、分析物質センサ、好ましくは、連続的な分析物質センサ、より好ましくは、連続的な血糖センサとから成る群から選ばれる、方法。
【請求項18】
請求項11ないし17の何れか1つの項に記載の方法において、前記医療装置の間の通信は、無線通信、好ましくは、RF通信である、方法。
【請求項19】
請求項11ないし18の何れか1つの項に記載の方法において、第一の医療装置は、第二の医療装置からデータを受け取る、方法。
【請求項20】
請求項11ないし19の何れか1つに項に記載の方法において、第一の医療装置は、前記第二の装置の少なくとも一部を制御するよう第二の医療装置に対して命令を送る、方法。

【公表番号】特表2008−529569(P2008−529569A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553506(P2007−553506)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000663
【国際公開番号】WO2006/081975
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(505073196)ディセトロニック・ライセンシング・アクチェンゲゼルシャフト (24)
【Fターム(参考)】