説明

移動端末試験装置

【課題】表示された被試験端末と擬似基地局との位置関係を変化させるのみで、被試験端末への通信信号の信号レベルを自動変更する。
【解決手段】 被試験端末11aと通信回線を形成してこの被試験端末との間で各種信号の送受信を行う擬似基地局3c〜5cと、被試験端末と擬似基地局を表示する表示器6と、この表示器に表示された被試験端末と擬似基地局との間の表示画面上における距離を変化させる操作部30、31と、被試験端末と擬似基地局との間の表示画面上における距離の変化に応じて、擬似基地局から試験端末への送信信号の出力レベルを変化させる出力レベル制御部29、25とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば移動端末からなる被試験端末における基地局との間における通信動作を、擬似基地局を用いて試験する移動端末試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、新規の移動端末の開発において、この移動端末が基地局との間で正常に動作することを確認する必要がある。この場合、被試験端末を実際の基地局に接続できないので、実際の基地局の機能を有した擬似基地局を用いて被試験端末と基地局との間の通信動作を確認するようにしている。
【0003】
移動端末が有する特性の一つとして、基地局から送信されてくる信号(電波)を受信するときの受信特性(受信感度等)がある。この移動端末の受信感度を測定する一般的手法としては、基地局から出力している規定信号レベルの信号を移動端末で受信し移動端末側でこの受信信号の受信レベルを測定する。そして、移動端末の基地局からの距離を大きくしていき、移動端末側での受信信号の受信レベルが許容値(限界値)以下に低下した時点の受信信号の受信レベルを当該移動端末の受信感度としている。
【0004】
また、上述した擬似基地局が組込まれた移動端末試験装置を用いて、移動端末の受信感度を測定する場合の一例としては、移動端末と移動端末試験装置との間の距離は変化させずに(又はケーブルで接続したまま)、移動端末試験装置から移動端末へ所定のデジタルデータを含む試験信号を送信して、移動端末側で受信した試験信号に含まれるデジタルデータの誤り率(EBR エラービット・レイト)を測定する。
【0005】
そして、移動端末試験装置から移動対象へ送信する送信信号の送信電力(出力レベル)を順次低下させていった場合における移動端末の受信信号の誤り率(EBR)の変化を測定して、誤り率(EBR)が許容値(限界値)を超えた時点の送信信号の送信電力(出力レベル)を当該移動端末の受信感度としている。
【0006】
また、移動端末試験装置から移動端末へ送信される通常の通信用の信号の送信電力(出力レベル)を順次低下させていき、移動端末から移動端末試験装置側へ正常な応答信号が返信されるか否かを調べる手法も考えられる。
【0007】
したがって、このような移動端末の受信機能(感度)の試験を実施する機能を有した移動端末試験装置において、試験実施者は移動端末への送信信号の送信電力(出力レベル)を入力する必要がある。
【0008】
なお、特許文献1の「マウスによるデータ入力機能付き表示装置」においては、従来から機器に装備されていた物理的なスイッチを、表示器の表示画面上に表示し、この表示されたスイッチのイラストにおけるノブをマウスで移動させることにより、ソフト的にスイッチ投入を実現している。
【特許文献1】特開平10―307154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、本来は、移動端末の受信機能(感度)の試験は、移動端末の基地局からの距離を変化させながら実施する必要がある。したがって、試験実施者は、移動端末と基地局との位置関係を確認しながら移動端末試験装置から移動端末への送信信号の送信電力(出力レベル)を、その都度、キーボード等の入力装置を用いて、入力する必要があり、試験操作が非常に煩雑である。
【0010】
また実際には、各基地局は、自己が移動端末と通信可能な通信エリアを有しており、この通信エリア内に位置する移動端末との間の通信状態、移動端末が自己の通信エリアと隣接する基地局の通信エリアとの重なる部分に位置した場合の移動端末と各基地局との間の通信状態を実現(シミュレート)させる必要がある。したがって、移動端末におけるより複雑な受信機能を試験するためには、試験操作がより一層煩雑になる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、試験実施者にとって、表示画面上に表示された移動端末としての被試験端末と擬似基地局との位置関係を簡単な操作で変更可能とし、かつ、擬似基地局から被試験端末への通信信号の信号レベルが自動的に定まり、その結果、表示された被試験端末と擬似基地局との位置関係を変化させるのみで、被試験端末への通信信号の送信電力(出力レベル)を自動変更できることで、直感的な操作により、試験操作性をより一層向上できる移動端末試験装置を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、上述した目的に加えて、被試験端末が複数の擬似基地局に対応する擬似エリアの重なる部分に位置した場合においても、各擬似基地局から被試験端末への通信信号の各送信電力(出力レベル)を各々の位置関係に基づいて制御でき、被試験端末に対するより複雑な試験を実施できる移動端末試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解消するために、本発明の移動端末試験装置においては、被試験端末と通信回線を形成してこの被試験端末との間で各種信号の送受信を行う少なくとも一つの擬似基地局と、被試験端末と少なくとも一つの擬似基地局を表示する表示器と、この表示器に表示された被試験端末と少なくとも一つの擬似基地局との間の表示画面上における距離を変化させる操作部と、被試験端末と少なくとも一つの擬似基地局との間の表示画面上における距離の変化に応じて、少なくとも一つの擬似基地局から被試験端末への送信信号の出力レベルを変化させる出力レベル制御部とを備えている。
【0014】
このように構成された移動端末試験装置においては、表示器に被試験端末と少なくとも一つの擬似基地局が表示されている。そして、試験実施者は、操作部を操作して、表示器に表示された被試験端末と擬似基地局部との間の表示画面上における距離を変化させると、擬似基地局から試験端末への送信信号の出力レベルが変化する。
【0015】
したがって、試験実施者にとって、視覚的に識別しやすい距離の変化により、被試験端末への通信信号の送信電力(出力レベル)を自動変更でき、試験操作性をより一層向上できる。
【0016】
また、別の発明は、上述した発明における移動端末試験装置において、被試験端末と少なくとも一つの擬似基地局とは、表示画面上に形成された直交座標上に表示される。表示画面上の距離は、直交座標上における被試験端末と擬似基地局の位置を示す直交座標のうちの一方の第1の座標軸で定められた座標のみで求められる。
【0017】
このように構成された移動端末試験装置においては、被試験端末と擬似基地局とは、表示画面上に形成された直交座標上に表示さる。そして、被試験端末と擬似基地局との間の距離は、例えば、直交座標がxy直交座標の場合、x座標またはy座標のいずれか一方の座標で求まるので、距離の算出速度が速くなる。
【0018】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、複数の擬似基地局が直交座標のうちの他方の第2の座標軸で定められた座標の方向に分散して配置されている。出力レベル制御部は、被試験端末と擬似基地局との表示画面上における第2の座標軸で定められた座標の方向の距離を、第1の座標軸で定められた座標のみで求められた距離に加えて表示画面上における距離とし、前記表示画面上における距離の変化に応じて、各擬似基地局それぞれからの前記被試験端末への送信信号の出力レベルを変化させる。
【0019】
このように構成された移動端末試験装置においては、複数の擬似基地局が第2の座標軸で定められた座標の方向に分散して配置されている。各擬似基地局からの被試験端末への送信信号の各出力レベルは、各擬似基地局からの被試験端末へ第1の座標軸の方向の距離(x座標方向距離)との第2の座標軸の方向の距離(y座標方向距離)との加算距離に応じて変化する。
【0020】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、複数の擬似基地局における各擬似基地局が有する被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアをそれぞれ表示器に表示する擬似エリア表示制御部を備えている。出力レベル制御部は、複数の擬似基地局のうち被試験端末が自局の擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信を可能としている。かつ複数の擬似基地局が各々有する擬似的な通信エリアが重なる部分においては、直交座標のうちの他方の第2の座標軸で定められた座標の方向の被試験端末と擬似基地局との表示画面上における距離のそれぞれを、第1の座標軸で定められた座標のみで求められたそれぞれの距離に加えて表示画面上における距離とし、表示画面上における距離の変化に応じて、各擬似基地局それぞれからの被試験端末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる。
【0021】
このように構成された移動端末試験装置においては、複数の擬似基地局毎に擬似的な通信エリアが設けられている。そして、被試験端末が複数の擬似基地局の擬似エリアの重なる部分に位置した場合において、各擬似基地局からの被試験端末への各送信信号の出力レベルは、各擬似基地局からの被試験端末へ第1の座標軸の方向の距離(x座標方向距離)と第2の座標軸の方向の距離(y座標方向距離)との加算距離に応じて変化する。なお、被試験端末が自局の擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信が可能である。
【0022】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、複数の擬似基地局における各擬似基地局が有する被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアをそれぞれ表示器に表示する擬似エリア表示制御部を備えている。出力レベル制御部は、複数の擬似基地局のうち被試験端末が自局の擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信を可能とし、かつ複数の擬似基地局が各々有する擬似的な通信エリアが重なる部分において、擬似的な通信エリアが重なった範囲の境界から被試験端末までの直交座標のうちの他方の第2の座標軸で定められた座標の方向の距離のそれぞれを、第1の座標軸で定められた座標のみで求められたそれぞれの距離に加えて表示画面上における距離とし、表示画面上における距離の変化に応じて、各擬似基地局それぞれからの被試験端末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる。
【0023】
このように構成された移動端末試験装置においても、複数の擬似基地局毎に擬似的な通信エリアが設けられている。そして、被試験端末が複数の擬似基地局の擬似エリアの重なる部分に位置した場合において、各擬似基地局からの被試験端末への送信信号の出力レベルは、各擬似基地局からの被試験端末へ第1の座標軸の方向の距離(x座標方向距離)と擬似的な通信エリアが重なった範囲内における第2の座標軸の方向の距離(y座標方向距離)との加算距離に応じて変化する。なお、被試験端末が自局の擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信が可能である。
【0024】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、複数の擬似基地局における各擬似基地局が有する被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアをそれぞれ表示器に表示する擬似エリア表示制御部を備えている。出力レベル制御部は、複数の擬似基地局のうち被試験端末が自局の擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信を可能とし、かつ複数の擬似基地局が各々有する擬似的な通信エリアが重なる部分において、第1の座標軸で定められた座標のみで求められたそれぞれの距離を表示画面上における距離とし、表示画面上における距離の変化に応じて、各擬似基地局それぞれからの前記被試験珊末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる。
【0025】
このように構成された移動端末試験装置においては、複数の擬似基地局毎に擬似的な通信エリアが設けられている。そして、被試験端末が複数の擬似基地局の擬似エリアの重なる部分に位置した場合において、各擬似基地局からの被試験端末への送信信号の出力レベルは、各擬似基地局からの被試験端末へ第1の座標軸の方向の距離(x座標方向距離)に応じて変化する。なお、被試験端末が自局の擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信が可能である。
【0026】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、擬似基地局が有する被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアを表示器に表示する擬似エリア表示制御部が設けられている。
【0027】
このように構成された移動端末試験装置においては、擬似基地局に擬似的な通信エリアが設けられている。
【0028】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、表示画面上の距離は、表示画面上における被試験端末の位置と擬似基地局の位置とを直線で結ぶ直線距離としている。
【0029】
このように、表示画面上の距離を表示画面上における直線距離としているので、求められた表示画面上の距離が視覚的に認識しやすく、より直感的な操作が可能である。
【0030】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、複数の擬似基地局が表示画面上に分散して配置されており、出力レベル制御部は、被試験端末の各擬似基地局との間において表示画面上におけるそれぞれの直線距離の変化に応じて、各擬似基地局それぞれからの被試験端末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる。
【0031】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、複数の擬似基地局における各擬似基地局が有する被試験端末と通信可能な擬似的な通信エリアをそれぞれ表示器に表示する擬似エリア表示制御部を備えている。さらに、出力レベル制御部は、複数の擬似基地局部が各々有する擬似的な通信エリアが重なる部分において、被試験端末の各擬似基地局との間において表示画面上におけるそれぞれの直線距離の変化に応じて、各擬似基地局それぞれからの被試験端末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる。
【0032】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、擬似基地局が有する被試験端末と通信可能な擬似的な通信エリアをそれぞれ表示器に表示する擬似エリア表示制御部を備えている。
【0033】
また、別の発明は、上述した移動端末試験装置において、操作部は、擬似基地局の送信出力レベルを入力することにより、その送信出力レベルの数値に応じて表示器に表示された被試験端末と少なくとも一つの擬似基地局との表示画面上の距離を変化させる。
このように、逆に、擬似基地局の送信出力レベルを入力することにより、表示された被試験端末と擬似基地局との表示画面上の距離を変化させることも可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明においては、表示画面上に表示された移動端末としての被試験端末と擬似基地局との距離を簡単な操作で変更可能とし、かつ、擬似基地局から被試験端末への通信信号の信号レベルを被試験端末と擬似基地局との間の距離に応じて自動的に定めている。
【0035】
したがって、試験実施者としては、表示された被試験端末と擬似基地局との間の距離を変化させるのみで、被試験端末への通信信号の信号レベルを自動変更できることで、直感的な操作により、試験操作性をより一層向上できる。
さらに、実環境での基地局からの距離を概略シミュレーションさせることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0037】
図1は本発明の一実施形態に係わる移動端末試験装置の外観図である。筐体1の上面にモジュール装着部2が形成されており、このモジュール装着部2に、複数の擬似基地局モジュール3a、4a、5aが着脱自在に設けられている。筐体1の前面に表示器6及び操作パネル7が設けられている。
【0038】
表示器6には、図2に示すように、3つの擬似基地局3b、4b、5b、各擬似基地局3b、4b、5b毎に設けられた3つの擬似エリア8、9、10、移動端末としての被試験端末11b、接続状態12、送信電力18が表示される。各擬似エリア8、9、10は、試験端末11a(11b)と通信可能な各擬似基地局3b、4b、5bがそれぞれ有する実際の通信エリアに対応する。
【0039】
接続状態12は、図1に示す実際の被試験端末11a(図2の表示画面上においては被試験端末11bに相当)が、擬似基地局3b、4b、5b、接続線17、ネットワーク13、接続線17を介して、接続先としての例えば仮想通話先14、仮想サーバ15、仮想TV電話16等に接続される状態を示す。具体的には、被試験端末11bと実際に接続されている仮想通話先14、仮想サーバ15、仮想TV電話16及びそれに至る通信経路に存在する接続線17を点滅及び点灯表示する。
【0040】
送信電力18は、図3における実際の擬似基地局3c(3b)、4c(4b)、5c(5b)が、実際の被試験端末11a(11b)に実際に送信する送信信号の送信電力(出力レベル)の設定値を示す。この図2においては、被試験端末11a(11b)は、擬似基地局3bの擬似エリア8内に位置しているので、擬似基地局3c(3b)の送信電力(出力レベル)のみ値を有し、他の擬似基地局4c(4b)、5c(5b)の送信電力(出力レベル)は出力停止状態の表示となる(例えば送信電力の値の消去)。
【0041】
なお、送信電力18の出力停止状態は、この移動端末試験装置によっては完全に実施できない場合もあるので、被試験端末11aの受信能力以下に設定することによって実現する。さらに、送信電力の出力停止状態において、被試験端末11aが受信信号と認識できない種類の信号を出力することでも同様の状態を擬似的に実現することも可能である。
【0042】
距離40は、試験実施者にて設定された各擬似基地局3c(3b)、4c(4b)、5c(5b)と実際の被試験端末11a(11b)との間の実際の距離である。この図2においては、被試験端末11a(11b)は、擬似基地局3bの擬似エリア8内に位置しているので、擬似基地局3c(3b)との距離40のみ値を有し、他の擬似基地局4c(4b)、5c(5b)の距離40は表示停止状態(値の消去等)となる。
【0043】
このように、表示器6に表示された各擬似基地局3b、4b、5b近傍に、実際の被試験端末11a(11b)との間の実際の距離40を表示しているので、表示画面上の距離が実環境上においていかなる距離に相当するかが、一瞥して把握でき、この移動端末試験装置の操作性が向上する。
【0044】
図1において、筐体1の例えば前面に実際の移動端末としての試験端末11a(図2の表示画面上においては被試験端末11bに相当)が信号線20を介して接続される信号端子19が設けられている。
【0045】
図3は移動端末試験装置の概略構成を示すブロック図である。被試験端末11aからの信号aは信号線20を介して、擬似基地局部21を構成する3つの例えばコンピュータで構成された各擬似基地局3c、4c、5cに並列に入力される。この各擬似基地局3c、4c、5cは、図1に示す各擬似基地局モジュール3a、4a、5a内に組込まれており、図2の表示画面上において各擬似基地局3b、4b、5bに相当する。各擬似基地局3c、4c、5cからの信号bは信号線20を介して被試験端末11aへ送出される。
【0046】
各擬似基地局3c、4c、5cは、被試験端末11aに対して、実際の基地局と同様の対応機能を有し、被試験端末11aからの通信先を指定した、接続要求に対して、この被試験端末11aと仮想の接続先である仮想通話先14、仮想サーバ15、仮想TV電話16との間で通信回線を形成する。
【0047】
擬似基地局制御部22は、擬似基地局部21に組込まれた各擬似基地局3c、4c、5cの状態及び動作をそれぞれ個別に管理及び制御する機能を有する。そして、この擬似基地局制御部22内には、通信先制御部23、擬似基地局リソース管理部24、送信電力制御部25等が設けられている。
【0048】
通信先制御部23は、各擬似基地局3c、4c、5cで指定された被試験端末11bと実際に接続されている仮想通話先14、仮想サーバ15、仮想TV電話16に対する接続状態を認識し、編集して接続状態表示制御部26へ送出する。接続状態表示制御部26は、通信先制御部23から入力された接続状態12を図2に示すように表示器6に表示出力する。
【0049】
擬似基地局リソース管理部24は、擬似基地局部21に組込まれた各擬似基地局3c、4c、5cの位置、及び各擬似基地局3c、4c、5cの擬似エリア8、9、10の位置、大きさ(広がり)を記憶しており、これらの位置情報を擬似基地局・擬似エリア表示制御部27へ送出する。
【0050】
擬似基地局・擬似エリア表示制御部27は、各擬似基地局3c、4c、5cに対応する各擬似基地局3b、4b、5b、各擬似エリア8、9、10を、図2に示すように、表示器6の表示画面上の指定された位置に表示する。具体的には、図6(a)に示すように、表示器6の表示画面には、x座標とy座標とからなる直交座標(xy座標)が形成(表示又は非表示)されており、各擬似基地局3b、4b、5b、各擬似エリア8、9、10の位置は、このxy座標上の座標(X、Y)で示される。なお、x座標軸が第1の座標軸に対応し、y座標軸が第2の座標軸に対応する。
【0051】
擬似基地局・擬似エリア表示制御部27は、図6(b)に示すように、各擬似基地局3b、4b、5bの表示器6のxy座標上における位置を示す各座標B1(Xb1、Yb1)、B2(Xb2、Yb2)、B3(Xb3、Yb3)を距離算出部34へ送出する。
【0052】
このように、擬似基地局リソース管理部24及び擬似基地局・擬似エリア表示制御部27は、擬似基地局部21に組込まれた各擬似基地局3c、4c、5cの位置及び擬似エリア8、9、10の位置を記憶し、各擬似基地局3b、4b、5b及び各擬似エリア8、9、10を表示器6に表示出力する機能を有しているので、例えば、図4(a)に示すように、筐体1の上面のモジュール装着部2に2つの擬似基地局モジュール3a、4aのみが装着されている場合は、表示器6には、該当擬似基地局モジュール3a、4aに対応する擬似基地局3b、4b及び擬似エリア8、9のみが表示される。
【0053】
さらに、図4(a)に示す状態から、一方の擬似基地局モジュール4aを抜きとって、図4(b)に示す状態へ移行すると、表示器6に表示されていた擬似基地局4b及び擬似エリア9が消去し、擬似基地局3b及び擬似エリア8が残る。なお、擬似基地局4b及び擬似エリア9を消去する代わりに、擬似基地局4b及び擬似エリア9を破線等の無効を示す表示形態で表示することも可能である。
【0054】
図3における送信電力制御部25は、送信電力算出部29から入力された各電力値に基づいて、各擬似基地局3c、4c、5cがそれぞれ被試験端末11aへ送信する信号bの送信電力(出力レベル)を各擬似基地局3c、4c、5cに設定する。さらに、送信電力制御部25は、各擬似基地局3c、4c、5cに設定した各送信電力(出力レベル)を送信電力表示制御部28へ送出する。送信電力表示制御部28は、受領した各擬似基地局3c、4c、5c毎の送信電力(出力レベル)を、図2に示すように、表示器6に送信電力18として表示する。
【0055】
次に、被試験端末移動入力部30と被試験端末移動制御部31の構成及び動作を説明する。被試験端末移動入力部30と被試験端末移動制御部31は、表示器6に表示された被試験端末11bと擬似基地局3c(4c、5c)との間の表示画面上における距離を変化させる。擬似基地局3b(4b、5b)の位置は原則として固定であるので、被試験端末11bの表示器6の表示画面上のxy座標上の座標(X、Y)を変更する。この実施形態においては、GUI32を用いて、試験実施者の操作パネル7の操作に応じて、被試験端末11bのxy座標上の座標(X、Y)を変更する。
【0056】
この被試験端末11bの表示器6の表示画面上のxy座標上の座標(X、Y)を変更する手法として、上述した操作パネル7を用いる他に、図5(a)に示すように、表示器6に表示された被試験端末11bをアイコンとみなして、この被試験端末11bのアイコンをマウス36で移動(ドラッグ操作)させることが可能である。また、図5(b)に示すように、表示器6の表面にタッチパネル37を設けて、試験実施者が指でタッチパネル37上の被試験端末11bの位置を移動操作することが可能である。
【0057】
さらに、図5(c)に示すように、表示器6に送信電力の入力枠38を表示し、試験実施者が擬似基地局3b(4b、5b)の被試験端末11bに対する送信電力(出力レベル)の値を操作パネル7からこの入力枠38内に入力すると、擬似基地局3b(4b、5b)と被試験端末11bとの距離が、入力された送信電力(出力レベル)に対応した距離になるように、被試験端末11bの位置を移動させることも可能である。
【0058】
図5(a)(b)(c)においては、全て、同一画面上での操作について説明したが、図5(d)に示すように、別途の専用の距離入力画面を用いて、被試験端末11bの位置を移動させることも可能である。すなわち、この図5(d)においては、画面上に表示されたノブ42の位置をマウスで移動させることによって、被試験端末11bの位置を移動させる。移動に応じて、表示されている実際の距離40及び送信電力18が変化する。
【0059】
このように、別途の専用の距離入力画面を採用することにより、1画面では表示領域が少なくて、被試験端末11bの移動範囲が制限を受ける場合においても、操作が可能となる。
【0060】
また、図2に示すように、各擬似エリア8、9、10内に、ズームボタン43を設け、このズームボタン43をマウスでクリックすることによって、図5(e)に示すように、専用の距離入力画面に、距離入力画面を拡大表示することが可能である。すなわち、被試験端末11a(11b)の受信可能レベル限界の距離(結果として送信電力)のときに、被試験端末11bをわずかに移動させたい場合の入力操作が容易になる。なお、図5(a)(b)(c)に示す同一画面上であっても拡大表示をすることで微小移動入力が容易になる。
【0061】
さらに、図5(f)に示すように、表示器6に実際の距離の入力枠41を表示し、試験実施者が擬似基地局3b(4b、5b)と被試験端末11aとの設定すべき実際の距離を操作パネル7からこの入力枠41内に入力すると、擬似基地局3b(4b、5b)と被試験端末11bとの表示上の距離を、入力された実際の距離に対応した値に変化させ、被試験端末11bの位置を移動させることも可能である。
【0062】
すなわち、実環境における試験において移動端末と基地局間の距離が既知である場合には、表示画面上の被試験端末11bを移動させて所望の距離に合わせ込むよりも、入力枠41に実際の距離を数値入力する事で被試験端末11bを移動させる方がよい。入力された実際の距離は、原則として前述したxy座標における一方の座標軸方向(例えばx座標)の移動に置き換えられる。
【0063】
また二つの擬似基地局3b、4bに対する実際の距離がそれぞれ個別に入力された場合は、直線距離で換算し、その交点を被試験端末11bの位置とする。但し、交点が求められない場合は、エラーとして被試験端末11bを移動しない。
【0064】
被試験端末位置算出部33は、被試験端末移動制御部31を介して、図6(a)(b)に示すように、表示器6のxy座標上における被試験端末11bの位置を示す座標U1(Xu1、Yu1)を読取り、距離算出部34へ送出する。
【0065】
距離算出部34は、各擬似基地局3b、4b、5bの各座標B1(Xb1、Yb1)、B2(Xb2、Yb2)、B3(Xb3、Yb3)と被試験端末11bの座標U1(Xu1、Yu1)とから、被試験端末11bと一つ又は複数の擬似基地局3b、4b、5bとの間の距離を算出して、送信電力算出部29へ送出する。
【0066】
また、距離算出部34は、算出された表示画面上の各距離から各擬似基地局3c、4c、5cと実際の被試験端末11aとの間の実際の各距離40を算出して表示器6に表示出力する。
【0067】
送信電力算出部29は、入力された一つ又は複数の擬似基地局3b、4b、5bとの間の距離を用いて、各擬似基地局3c、4c、5cから被試験端末11aへ送信する信号bの各送信電力(出力レベル)を算出して、送信電力制御部25へ送出する。一般的には、被試験端末11aとの間の距離が短くなるに従って被試験端末11aへ送信する信号の送信電力(出力レベル)を上昇させる。
【0068】
次に、距離算出部34及び送信電力算出部29の具体的動作を、図7〜図11を用いて説明する。
【0069】
この実施形態においては、被試験端末11b(座標U1(Xu1、Yu1))と擬似基地局3b(4b、5b)(座標B1(Xb1、Yb1))との間の距離の定義は、図7(a)に示すx座標方向の距離D1と、図7(b)に示すy座標方向の距離C1とx座標方向の距離D1とを加算した距離(C1+D1)と、図8に示す直線距離E1との3種類あり、どの種類の距離D1、(C1+D1)、E1を採用するかは、試験実施者が、予め距離算出部34に設定しておく。
【0070】
例えば、図4(b)に示すように、被試験端末11bと1つの擬似基地局3bがある場合など、y軸方向の移動が必要でないため、被試験端末11bの移動操作において、y軸方向の変化が発生しても、設定に影響のないx座標方向の距離D1を採用する。これにより、操作性の向上にも寄与する。
【0071】
また、図4(a)に示すように、被試験端末11bと複数の擬似基地局3b、4bがある場合においても、y軸方向の移動による距離の変化が必要ない場合などは、同様にx座標方向の距離D1を採用する。
【0072】
図7(a)に示すx座標方向の距離D1は、
D1=|Xb1―Xu1|
で示され、擬似基地局3cから被試験端末11aへ送信する信号の送信電力PD1は、
D1=F(G(D1))
で示される。
【0073】
但し、G( )はxy座標上の距離から実際の距離(40)を求めるための関数である。この関数G( )は、試験の目的や、被試験端末11aの性能等にあわせて、一次関数、数次の関数、指数関数や、対数関数等で、実際の距離を求めることができ、求めた実際の距離40は表示器6に表示される。いずれの関数を使用するかは、被試験端末11bの表示画面上の移動がどのような実際の距離を表すかを試験実施者が試験目的や操作性等から選択して、予め距離算出部34に設定しておく。
【0074】
また、F( )は、実際の距離から送信電力(出力レベル)を算出するための予め定められた関数である。この関数F( )は、一般に、距離が短くなるに従って送信電力(出力レベル)を上昇させる関数である。
【0075】
図7(b)に示すy座標方向の距離C1、及びx座標方向の距離D1は、
C1=|Yb1―Yu1|
D1=|Xb1―Xu1|
で示され、擬似基地局3cから被試験端末11aへ送信する信号の送信電力PA1は、加算した距離(C1+D1)を用いて、
A1=F(G(C1+D1))
で示される。
【0076】
なお、xy座標上の距離から実際の距離を求める関数G( )は、x軸方向の実際の距離を求める関数Gx( )と、y軸方向の実際の距離を求める関数Gy( )とを個別に設定することも可能である。
【0077】
この場合、上述した、擬似基地局3cから被試験端末11aへ送信する信号の送信電力PA1は、y方向の距離C1、x方向の距離D1から、y方向の実際の距離Gy(C1)、x方向の実際の距離Gx(D1)を求めた後に下式で求める。
【0078】
A1=F(Gy(C1)+Gx(D1))
この処理により、画面上での移動可能範囲が一方の座標軸方向に少ない場合においても、操作性を向上することができる。
【0079】
図8に示す直線距離E1は、
E1=[(Xb1―Xu1)2+(Yb1―Yu1)21/2
で示され、擬似基地局3cから被試験端末11aへ送信する信号の送信電力PE1は、
E1=F(G(E1))
で示される。
【0080】
なお、図7(a)、図7(b)、図8で求めた各送信電力PD1、PA1、PE1は、例えば、図4(b)に示すように、1台の被試験端末11aと1つの擬似基地局3cのみが存在する条件における送信電力である。
【0081】
図9、図10は、図6(a)に示すように、1台の被試験端末11aとy座標方向に分散配置された3つの擬似基地局3c(3b)、4c(4b)、5c(5b)とが存在し、各擬似エリア8、9、10が存在しない条件における各擬似基地局3c、4c、5cの被試験端末11aに対する各送信電力(出力レベル)を求める手順を示す図である。
【0082】
図9においては、各擬似基地局3b、4b、5bと被試験端末11bとの各y座標方向の距離C1、C2、C3を求め、さらに、各擬似基地局3b、4b、5bと被試験端末11bとの各x座標方向の距離D1、D2、D3を求める。そして、各擬似基地局3b、4b、5bと被試験端末11bとの各加算した各距離(C1+D1)、(C2+D2)、(C3+D3)を求める。
【0083】
この加算した各距離(C1+D1)、(C2+D2)、(C3+D3)から、各擬似基地局3c、4c、5cの被試験端末11aに対する各送信電力PA1、PA2、PA3を求めている。
【0084】
A1=F(G(C1+D1))
A2=F(G(C2+D2))
A3=F(G(C3+D3))
一方、図10においては、各擬似基地局3b、4b、5bと被試験端末11bとの各距離を、直線距離E1、E2、E3として求め、この直線距離E1、E2、E3から、各擬似基地局3c、4c、5cの被試験端末11aに対する各送信電力PE1、PE2、PE3を求めている。
【0085】
E1=F(G(E1))
E2=F(G(E2))
E3=F(G(E3))
図11は、図4(a)に示すように、1台の被試験端末11a(11b)とy座標方向に分散配置された2つの擬似基地局3c(3b)、4c(4b)と、対応する各擬似エリア8、9が存在し、かつ各擬似エリア8、9の重なる部分35が存在する条件において、前述した被試験端末移動入力部30と被試験端末移動制御部31とで、表示器6に表示された被試験端末11bを、y座標方向へ移動させた場合における各擬似基地局3c、4cの被試験端末11aに対する各送信電力(出力レベル)を求める手順を示す図である。
【0086】
図11(a)は、被試験端末11bが、擬似基地局3bの擬似エリア8内で重なる部分35以外に位置している状態を示す。この状態においては、擬似基地局3cの被試験端末11aに対する送信電力は、この擬似基地局3bと被試験端末11bとのx座標方向の距離D1から求めた送信電力PD1=F(G(D1))と、直線距離E1から求めた送信電力PE1=F(G(E1))との2種類の送信電力となる。
【0087】
なお、被試験端末11bは、擬似基地局4bの擬似エリア9内に存在しないので、擬似基地局4cの被試験端末11aに対する2種類の送信電力PD2、PE2はいずれも「0」(出力停止状態)である。
【0088】
このように、試験実施者は、表示器6の表示画面上で、被試験端末と擬似基地局との距離を変更操作するのみで、擬似基地局の被試験端末に対する送信電力(出力レベル)が距離変化に応じて自動的に変化するので、被試験端末に対する試験作業効率を大幅に向上できる。
【0089】
図11(b)は、被試験端末11bが各擬似エリア8、9の重なる部分35内に位置している状態を示す。この状態においては、擬似基地局3cの被試験端末11aに対する送信電力は、
この擬似基地局3bと被試験端末11bとのx座標方向の距離D1から求めた送信電力PD1=F(G(D1))と、
この擬似基地局3bと被試験端末11bとのy座標方向の距離C1とx座標方向の距離D1との加算した距離(C1+D1)から求めた送信電力PA1=F(G(C1+D1))と、
直線距離E1から求めた送信電力PE1=F(G(E1))と
の3種類の送信電力となる。
【0090】
同様に、擬似基地局4cの被試験端末11aに対する送信電力は、
この擬似基地局4bと被試験端末11bとのx座標方向の距離D2から求めた送信電力PD2=F(G(D2))と、
この擬似基地局4bと被試験端末11bとのy座標方向の距離C2とx座標方向の距離D2との加算した距離(C2+D2)から求めた送信電力PA2=F(G(C2+D2))と、
直線距離E2から求めた送信電力PE2=F(G(E2))と
の3種類の送信電力となる。
【0091】
このように、被試験端末11bが各擬似エリア8、9の重なる部分35内に位置している状態においては、各擬似基地局3c、4cの被試験端末11aに対する送信電力の算出に用いる表示画面上の距離を、x座標方向の距離D1と、y座標方向の距離C1とx座標方向の距離D1とを加算した距離(C1+D1)と、直線距離E1との3種類のなかから選択可能としているので、各擬似基地局3c(3b)、4c(4b)、5c(5b)の二次元空間上の配置の条件に応じて、最適な「距離」を選択すればよい。
【0092】
例えば、各擬似基地局3b、4bがy軸方向にのみ分散配置されていた条件においては、加算した距離(C1+D1)、(C2+D2)、で各送信電力PA1、PA2を求める。この場合、被試験端末11bが重なる部分35内でy軸と平行に移動している状態においては、この被試験端末11bが各擬似基地局3b、4bから受信する信号の合計信号レベルは一定値を維持する。
【0093】
図11(c)は、被試験端末11bが、擬似基地局4bの擬似エリア9内で重なる部分35以外に位置している状態を示す。この状態においては、擬似基地局4cの被試験端末11aに対する送信電力は、この擬似基地局4bと被試験端末11bとのx座標方向の距離D1から求めた送信電力PD2=F(G(D2))と、直線距離E2から求めた送信電力PE2=F(G(E2))との2種類の送信電力となる。
【0094】
なお、被試験端末11bは、擬似基地局3bの擬似エリア8内に存在しないので、擬似基地局3cの被試験端末11aに対する2種類の送信電力PD1、PE1はいずれも、図11(a)と同様に、「0」(出力停止状態)である。
【0095】
ここまで、図11(a)、(c)の説明では、被試験端末11bが各擬似エリア8、9のみにのみ位置しているとき、y軸方向の距離C1、C2をx軸方向の距離D1、D2に加算する処理を含まないように記述しているが、それぞれの擬似エリア8、9においても、加算した距離(C1+D1)、(C2+D2)を使用して送信電力を求めてもよい。
【0096】
なお、3種類の送信電力のうち、いずれの送信電力を採用するかは、試験実施者が、予め距離算出部34、送信電力算出部29に設定しておく。
【0097】
このように、被試験端末11bが互いに重なる部分35が存在する複数の擬似エリア8、9を横切る場合における、被試験端末11bの各位置における各擬似基地局3c、4cの被試験端末11aに対する送信電力を設定しているので、より現実に近い条件で被試験端末11aに対するハンドオーバ試験等の試験を実施できる。
【0098】
図12は、前述した図11(b)に示す被試験端末11bが各擬似エリア8、9の重なる部分35内に位置している状態における各擬似基地局3c、4cの被試験端末11aに対する第4の送信電力PK1、PK2の算出方法を示す図である。
【0099】
各擬似エリア8、9の重なる部分35の境界線上における、被試験端末11b(座標U1(Xu1、Yu1))のX座Xu1に対応する各位置(交点)J1(座標(Xu1、Yj1))、J2(座標(Xu1、Yj2))から、被試験端末11bまでのy軸方向の各距離H1、H2を求める。
【0100】
H1=|Yj1―Yu1|
H2=|Yj2―Yu1|
さらに、前述した表示画面上における擬似基地局3b、4bと被試験端末11bとのx座標方向の各距離D1、D2を求める。
【0101】
そして、擬似基地局3cの被試験端末11aに対する第4の送信電力PK1は、この重なる部分35の擬似エリア8側の境界線から被試験端末11bまでのy座標方向の距離H1と、擬似基地局3bと被試験端末11bとのx座標方向の距離D1との加算した距離(H1+D1)から下式にて求める。
【0102】
K1=F(G(H1+D1))
同様に、擬似基地局4cの被試験端末11aに対する第4の送信電力PK2は、この重なる部分35の擬似エリア9側の境界線から被試験端末11bまでのy座標方向の距離H2と、擬似基地局4bと被試験端末11bとのx座標方向の距離D2との加算した距離(H2+D2)から下式にて求める。
【0103】
K2=F(G(H2+D2))
このように、被試験端末11bが各擬似エリア8、9の重なる部分35内に位置している状態における各擬似基地局3c、4cの被試験端末11aに対する第4の送信電力PK1、PK2を採用することも可能である。
【0104】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。実施形態の移動端末試験装置においては、1台の被試験端末11aの試験を実施したが、もう1台の被試験端末をこの移動端末試験装置に接続し、この2台の被試験端末を表示器6に表示し、この2台の被試験端末相互間の対向試験を擬似基地局を介して実施することが可能である。
【0105】
また、各擬似エリア8、9、10の形状を円形にすることも可能であるし、3つ以上の擬似基地局の各擬似エリアが共に重なる様に擬似基地局を配置(図示しない)して、被試験端末11aの試験を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に係わる移動端末試験装置の外観図
【図2】同移動端末試験装置に組込まれた表示器の表示内容を示す図
【図3】同移動端末試験装置の概略構成を示すブロック図
【図4】同移動端末試験装置の擬似基地局モジュールの装着状態と表示器の表示内容との関係を示す図
【図5】同移動端末試験装置の表示された被試験端末の移動手法を示す図
【図6】同移動端末試験装置に組込まれた表示器に形成されたxy座標を示す図
【図7】同移動端末試験装置における擬似基地局と被試験端末との間の距離及び送信電力の算出手順を示す図
【図8】同じく同移動端末試験装置における擬似基地局と被試験端末との間の距離及び送信電力の算出手順を示す図
【図9】同じく同移動端末試験装置における擬似基地局と被試験端末との間の距離及び送信電力の算出手順を示す図
【図10】同じく同移動端末試験装置における擬似基地局と被試験端末との間の距離及び送信電力の算出手順を示す図
【図11】同じく同移動端末試験装置における擬似基地局と被試験端末との間の距離及び送信電力の算出手順を示す図
【図12】同じく同移動端末試験装置における擬似基地局と被試験端末との間の距離及び送信電力の算出手順を示す図
【符号の説明】
【0107】
1…筐体、3a,4a,5a…擬似基地局モジュール、3a,3b,3c,4a,4b,4c,5a,5b,5c…擬似基地局、6…表示器、7…操作パネル、8,9,10…擬似エリア、11a,11b…被試験端末、12…接続状態、18…送信電力、20…信号線、21…擬似基地局部、22…擬似基地局制御部、23…通信制御部、24…擬似基地局リソース部、25…送信電力制御部、26…接続状態表示制御部、27…擬似基地局・擬似エリア表示制御部、28…送信電力表示制御部、29…送信電力算出部、30…被試験端末移動入力部、31…被試験端末移動制御部、33…被試験端末位置検出部、34…距離算出部、35…重なる部分、40…距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験端末(11a)と通信回線を形成してこの被試験端末との間で各種信号の送受信することで通信を行う少なくとも一つの擬似基地局(3c、4c、5c)と、
前記被試験端末と前記少なくとも一つの擬似基地局を表示する表示器(6)と、
この表示器に表示された前記被試験端末と前記少なくとも一つの擬似基地局との間の表示画面上における距離を変化させる操作部(30、31)と、
前記被試験端末と前記少なくとも一つの擬似基地局との間の前記表示画面上における距離の変化に応じて、前記少なくとも一つの擬似基地局から前記被試験端末への送信信号の出力レベルを変化させる出力レベル制御部(25、29、34)と
を備えたことを特徴とする移動端末試験装置。
【請求項2】
前記被試験端末と前記少なくとも一つの擬似基地局とは、前記表示画面上に形成された直交座標上に表示され、
前記表示画面上の距離は、前記直交座標上における前記被試験端末と前記擬似基地局の位置を示す前記直交座標のうちの一方の第1の座標軸で定められた座標のみで求められる
ことを特徴とする請求項1記載の移動端末試験装置。
【請求項3】
複数の擬似基地局が前記直交座標のうちの他方の第2の座標軸で定められた座標の方向に分散して配置されており、
前記出力レベル制御部は、前記被試験端末と前記擬似基地局との表示画面上における前記第2の座標軸で定められた座標の方向の距離を、前記第1の座標軸で定められた座標のみで求められた距離に加えて前記表示画面上における距離とし、前記表示画面上における距離の変化に応じて、前記各擬似基地局それぞれからの前記被試験端末への送信信号の出力レベルを変化させる
ことを特徴とする請求項2記載の移動端末試験装置。
【請求項4】
複数の擬似基地局における各擬似基地局が有する前記被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアをそれぞれ前記表示器に表示する擬似エリア表示制御部(27)を備え、
前記出力レベル制御部は、前記複数の擬似基地局のうち被試験端末が自局の前記擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信を可能とし、かつ複数の擬似基地局が各々有する前記擬似的な通信エリアが重なる部分において、前記直交座標のうちの他方の第2の座標軸で定められた座標の方向の前記被試験端末と前記擬似基地局との表示画面上における距離のそれぞれを、前記第1の座標軸で定められた座標のみで求められたそれぞれの距離に加えて前記表示画面上における距離とし、前記表示画面上における距離の変化に応じて、前記各擬似基地局それぞれからの前記被試験端末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる
ことを特徴とする請求項2記載の移動端末試験装置。
【請求項5】
複数の擬似基地局における各擬似基地局が有する前記被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアをそれぞれ前記表示器に表示する擬似エリア表示制御部(27)を備え、
前記出力レベル制御部は、前記複数の擬似基地局のうち被試験端末が自局の前記擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信を可能とし、かつ複数の擬似基地局が各々有する前記擬似的な通信エリアが重なる部分において、前記擬似的な通信エリアが重なった範囲の境界から前記被試験端末までの前記直交座標のうちの他方の第2の座標軸で定められた座標の方向の距離のそれぞれを、前記第1の座標軸で定められた座標のみで求められたそれぞれの距離に加えて前記表示画面上における距離とし、前記表示画面上における距離の変化に応じて、前記各擬似基地局それぞれからの前記被試験端末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる
ことを特徴とする請求項2記載の移動端末試験装置。
【請求項6】
複数の擬似基地局における各擬似基地局が有する前記被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアをそれぞれ前記表示器に表示する擬似エリア表示制御部(27)を備え、
前記出力レベル制御部は、前記複数の擬似基地局のうち被試験端末が自局の前記擬似的な通信エリアに存在するとき、被試験端末と通信を可能とし、かつ複数の擬似基地局が各々有する前記擬似的な通信エリアが重なる部分において、前記第1の座標軸で定められた座標のみで求められたそれぞれの距離を前記表示画面上における距離とし、前記表示画面上における距離の変化に応じて、前記各擬似基地局それぞれからの前記被試験珊末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる
ことを特徴とする請求項2記載の移動端末試験装置。
【請求項7】
前記擬似基地局が有する前記被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアを前記表示器に表示する擬似エリア表示制御部(27)を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の移動端末試験装置。
【請求項8】
前記表示画面上の距離は、前記表示画面上における前記被試験端末の位置と前記擬似基地局の位置とを直線で結ぶ直線距離であることを特徴とする請求項1記載の移動端末試験装置。
【請求項9】
複数の擬似基地局が表示画面上に分散して配置されており、
前記出力レベル制御部は、前記被試験端末の各擬似基地局との間において表示画面上におけるそれぞれの直線距離の変化に応じて、前記各擬似基地局それそれからの前記被試験端末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる
ことを特徴とする請求項8記載の移動端末試験装置。
【請求項10】
複数の擬似基地局における各擬似基地局が有する前記被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアをそれぞれ前記表示器に表示する擬似エリア表示制御部(27)を備え、
前記出力レベル制御部は、複数の擬似基地局が各々有する前記擬似的な通信エリアが重なる部分において、前記被試験端末の各擬似基地局との間における表示画面上におけるそれぞれの前記直線距離の変化に応じて、前記各擬似基地局それぞれからの前記被試験端末への送信信号の出力レベルをそれぞれ変化させる
ことを特徴とする請求項9記載の移動端末試験装置。
【請求項11】
前記擬似基地局が有する前記被試験端末との通信範囲を示す擬似的な通信エリアを前記表示器に表示する擬似エリア表示制御部(27)を備えたことを特徴とする請求項8又は9項記載の移動端末試験装置。
【請求項12】
前記操作部は、前記擬似基地局の送信出力レベルを入力することにより、その送信出力レベルの数値に応じて前記表示器に表示された前記被試験端末と前記少なくとも一つの擬似基地局との前記表示画面上の距離を変化させることを特徴とする請求項1記載の移動端末試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−101141(P2006−101141A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284239(P2004−284239)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】