説明

移動許容型胴縁保持部材及び外装材の固定構造

【課題】外装材や胴縁の熱伸縮があっても、安定して外装材を支持すること。
【解決手段】胴縁10と間隙を形成しつつ胴縁10の長手方向に交差する方向において把持する把持部21と、胴縁10を、外装材9を胴縁10に施工する前は胴縁10の長手方向と交差する方向における所定の位置に仮保持し、外装材9を胴縁10に施工した後は胴縁10の長手方向と交差する方向の移動を許容する仮保持部材と、を有することを特徴とする移動許容型胴縁保持部材20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁や屋根に胴縁を固定するための移動許容型胴縁保持部材及びそれを用いた外装材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅やビルなどの建物の外壁に外装材として鋼板製やアルミ製のスパンドレル仕上の採用が増えている。また、環境問題を背景にして、RC造の建物で外断熱構法が採用され、RC外壁の外側に胴縁を流し金属製外装材で仕上る物件が増えつつある。一般的には、RC造の場合、後施工アンカーなどでRC下地に取り付けられた金属製の胴縁に金属製スパンドレルがビス止めされる。
【0003】
たとえば、金属製の胴縁を、胴縁を固定する固定手段によりコンクリート等の外壁材の外部に固定する構成として特許文献1などがある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−251031
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属外装材は日射を直接受け高温にさらされ大きな温度変化を受ける。またアルミは線膨張係数が大きいため熱による伸縮量も大きくなる。たとえば金属スパンドレルなどの外装材が熱伸縮を起こすと、それに伴い胴縁が胴縁の長手方向に交差する方向に移動しようとする。
【0006】
また、金属外装材の場合日射により高温になるため、この熱が伝導し胴縁材も高温にさらされる。更に、前述の特許文献1のように、胴縁が外壁材の外に配設されることとなると、胴縁は外壁材よりも熱容量が小さいため、熱の影響を受けやすくなる。このように胴縁は温度変化によって胴縁の長手方向に伸縮する。
【0007】
前述の特許文献1のように胴縁が外壁材に固定状態で支持され、外装材が胴縁にビス止めされた場合、前述の外装材や胴縁の熱伸縮に追従することができず、胴縁の固定手段や胴縁が固定される外壁材を傷めるおそれがあった。外壁材がコンクリートのような硬質の材料の場合は胴縁の固定手段自体が損傷したり、外壁材がALC(軽量気泡コンクリート)のような軟質の材料の場合は胴縁の固定手段が外壁材を傷めるおそれがある。
【0008】
また、RC下地に後施工アンカーで胴縁を止めつける場合、比較的アンカー強度が強いため、外装材の剛性の方が負けて、熱伸縮により外装材自体がアンカー間で面外方向にはらむ問題があった。
【0009】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、外装材や胴縁の熱伸縮があっても、安定して外装材を支持することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明に係る移動許容型胴縁保持部材は、胴縁と間隙を形成しつつ前記胴縁の長手方向に交差する方向において把持する把持部と、前記胴縁を、外装材を前記胴縁に施工する前は前記胴縁の長手方向と交差する方向における所定の位置に仮保持し、外装材を前記胴縁に施工した後は前記胴縁の長手方向と交差する方向の移動を許容する仮保持部材と、を有することを特徴とする移動許容型胴縁保持部材である。
【0011】
また、本発明に係る外装材の固定構造は、前記移動許容型胴縁保持部材、及び前記移動許容型胴縁保持部材を下地材に固定する固定手段を具備する第一胴縁固定具により、胴縁を介して下地材に外装材を固定することを特徴とする外装材の固定構造である。
【0012】
また、前記外装材の固定構造において、前記第一胴縁固定具と、胴縁、前記胴縁と間隙を形成しつつ前記胴縁の長手方向に交差する方向において把持する把持部にて前記胴縁を保持し且つ前記外装材を前記胴縁に施工した後には前記外装材の面内方向であって前記胴縁の長手方向に交差する方向の少なくとも一方向の移動を拘束する拘束型胴縁保持部材、及び前記拘束型胴縁保持部材を下地材に固定する固定手段を具備する第二胴縁固定具と、を有し、前記外装材の重心の近傍の位置においては、前記外装材を前記第二胴縁固定具によって前記下地材に固定し、前記外装材の重心の近傍以外の位置においては、前記第一胴縁固定具によって前記下地材に固定することを特徴としてもよい。
【0013】
また、前記外装材の固定構造において、前記外装材の前記重心の近傍の位置は、前記外装材の重心から垂直距離で最も近い位置に配設される胴縁の位置、又は前記外装材の重心から垂直距離で最も近い位置と次に近い位置に配設される胴縁の位置であることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述の移動許容型胴縁保持部材又は外装材の固定構造において、移動許容型胴縁保持部材を用いたことにより、まず胴縁の長手方向の熱伸縮においては、胴縁が胴縁の長手方向に交差する方向において間隙を形成しつつ把持する把持部によって胴縁が把持される。このため、胴縁は長手方向に摺動可能である。また、胴縁の長手方向と交差する方向の胴縁の移動においては、前記間隙の間を移動可能に構成される。また、仮保持部材があることによって、胴縁の施工時には、胴縁を移動許容型胴縁保持部材の所定の位置に容易にセットすることができる。これにより、胴縁を確実に保持することができる。
【0015】
また、重心の近傍において拘束型胴縁保持部材を有する第二胴縁固定具を用い、重心から離れた位置において移動許容型胴縁保持部材を有する第一胴縁固定具を用いることで、外装材の重心から近い位置で外装材の支持をすることができる。この結果、地震時に受ける水平加速度による転倒モーメントを低減することができる。
【0016】
以上のように、胴縁の熱伸縮や外力があっても、安定して外装材を下地材に対して支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図を用いて本発明の実施形態を説明する。本発明に係る外装材の固定構造は、外装材9を胴縁10に固定し、胴縁10を胴縁固定具1にて外壁材(下地材)60に固定して構成される。胴縁固定具1には、移動許容型胴縁保持部材20を具備する胴縁固定具1aと、拘束型胴縁保持部材120を具備する胴縁固定具1bとがある。まず、胴縁固定具1について具体的に説明する。
【0018】
(第一胴縁固定具1a)
まず、図1乃至図3を用いて、移動許容型胴縁保持部材20を用いた第一胴縁固定具1aについて説明する。図1は本実施形態に係る第一胴縁固定具1aを示す分解斜視図である。図2は本実施形態に係る第一胴縁固定具1aの使用状態を示す断面図である。図3は本実施形態に係る移動許容型胴縁保持部材20の詳細説明図である。
【0019】
図1に示すように、胴縁固定具1aは、長手方向にガイド部12が形成される胴縁10と、胴縁10のガイド部12を長手方向に摺動可能に把持する把持部21が形成される保持部材20と、保持部材20を外壁材60の壁面60aに対して固定する固定手段(板状体としてのプレート30、釘40、ブラケット50)とを有する。胴縁固定具1aを用いることにより、胴縁10のガイド部12が把持部21に沿って長手方向に摺動可能となるように、胴縁10が外壁材60の壁面60aに対して固定される。
【0020】
胴縁10は、長手方向に、胴部11から外側方向に突出したレール状のガイド部12を有する。本実施形態は横胴縁であるため、胴部11は横方向に長く構成される。このとき、胴縁側面に配設されるガイド部12は胴部11から上下方向に突出して配設されることになる。
【0021】
保持部材20は、胴縁10のガイド部12を上下両側面から把持するために、保持部材20の表面方向に突出する把持部21を有する。把持部21は、胴縁10の長手方向に交差する方向において、胴縁10のガイド部12を把持する。ここで、ガイド部12と所定の寸法の間隙C1(図2及び図3(b)参照)を有するように把持する。このため、胴縁10のガイド部12は、把持部21によって摺動可能に把持される。尚、間隙C1は、後述の胴縁固定具1bにおける間隙C2よりも大きい(C1>C2)ことが一般的である。これは、胴縁固定具1bの間隙C2は、胴縁10の長手方向の摺動を許容するためなのに対し、胴縁固定具1aの間隙C1は、胴縁10の長手方向の摺動に加えて胴縁10の上下方向の移動をも許容するためである。尚、所定の寸法である間隙C1は、外装材の材質、大きさ、想定される温度変化範囲を条件として、設計して設定する。例えば、胴縁の長手方向に交差する方向の長さが5m程度のアルミの外装板であれば、C1は2〜3mmとすればよい。
【0022】
また、保持部材20は、ビスSが貫通するビス穴22が形成される。また、保持部材20の中央部には、開口部23が設けられる。
【0023】
図3に示すように、移動許容型胴縁保持部材20の把持部21の側部には、弾性があり変形可能なウレタン等の複数の弾性部材(仮保持部材)24が配設され、胴縁10を仮保持する。弾性部材24は、胴縁10の長手方向と交差する方向における中央で胴縁10を仮保持する。尚、本実施形態においては、弾性部材24の数を4つとしたがこれに限るものではない。
【0024】
図3(b)に示すように、弾性部材24は、上下方向の中心となる線から等しい距離Xの位置に配設される。即ち、胴縁10の長手方向と交差する方向において、対称に配設される。このため、胴縁10を保持部材20にて保持した場合、図3(b)の右図のように、胴縁10は、保持部材20の中央にくるように、自然と位置決めがされる。胴縁10を仮保持する位置は保持部材20の中央とは限らないが、中央とした場合は、使い勝手に方向性がなくなるため施工性に優れる。
【0025】
弾性部材の剛性は、施工中、胴縁の自重分を支持できるレベルの剛性を有し、仕上材の熱変形の力には負けて収縮するものを使用する。
【0026】
このような構成により、移動許容型胴縁保持部材20においては、図3(c)中央図及び図3(c)右図に示すように、胴縁10の移動に伴って、弾性部材24が変形する。すると、胴縁10に固定される外装材9が熱により伸び縮みすることに伴って、外装材9に固定される胴縁10が上下方向に移動しようとしたとき、弾性部材24がその動きを妨げることがないため、胴縁10は一定範囲(間隙C1の距離)を移動することができる。
【0027】
以上のように、移動許容型胴縁保持部材20は、胴縁10の長手方向に移動可能になるように把持部21が形成されることによって、胴縁10が長手方向に伸びた場合であっても、その伸びを許容することができる。加えて、外装材9の伸縮に伴って胴縁10が長手方向と交差する方向(図3における上下方向)に移動する場合であっても、保持部材20に間隙C1が形成され且つ弾性部材24が配設されることで、胴縁10が上下方向に移動する場合であっても、その移動を許容することができる。
【0028】
プレート30は、図1及び図2に示すように、保持部材20の裏面に当接し、ビスSによって保持部材20を固定する。プレート30の中央には、後述するブラケット50の胴縁側固定軸51の外周面に形成されたネジ部51aが螺合するためのネジ穴31が形成される。
【0029】
ブラケット50は、胴縁10側に突出する胴縁側固定軸51と、これと反対方向の外壁材60側に突出する外壁側固定軸52と、胴縁側固定軸51と外壁側固定軸52との間に配設され、各軸51、52よりも径の大きい鍔部53とを有する。胴縁側固定軸51は、プレート30のネジ穴31と螺合するネジ部51aが形成される。また、胴縁側固定軸51及び外壁側固定軸52の内部にはブラケット50の軸方向に貫通する貫通孔51b(図2参照)が形成される。
【0030】
外壁材60は、ブラケット50の外壁側固定軸52を取り付けるための溝61が形成される。本実施形態の外壁材60はALC(軽量気泡コンクリート)パネルで構成された一例であるが、外壁材60の材質は特に限定するものではない。
【0031】
上述の構成により、胴縁固定具1aを用いて、外装材9、胴縁10及び外壁材60を一体的に構成するには、まず、図1に示すように、ブラケット50のネジ部51aに対して、プレート30のネジ穴31を螺合させ、プレート30を外壁材60の方向にねじ込む。
【0032】
一方、胴縁10は、予め保持部材20に対して組み立てて一体的にしておく。この組み立てに際しては、胴縁10の上下2つのガイド部12を、保持部材20の2つの把持部21の内部に摺動させる。これにより、胴縁10が保持部材20に把持されて、胴縁10と保持部材20とは一体的になる。
【0033】
次に、プレート30上に保持部材20のビス穴22がくるように、保持部材20を配置し、この状態で保持部材20のビス穴22に対してビスSを打ち込む。これにより胴縁10がプレート30に対して固定される。
【0034】
以上のような手順をとることにより、胴縁10と、保持部材20と、固定手段(プレート30、釘40、ブラケット50)とを有する胴縁固定具1aによって、胴縁10のガイド部12が保持部材20の把持部21に沿って摺動可能となるように、胴縁10が外壁材60の壁面60aに対して固定される。
【0035】
上記のように保持部材20により長手方向に摺動可能に固定され且つ上下方向に移動可能に固定された胴縁10には、外装材9がビスSを用いて取り付けられる。
【0036】
以上のように、第一胴縁固定具1aを用いて胴縁10を固定すれば、胴縁10のガイド部12と保持部材20の把持部21との間が摺動可能に構成される。このため、外壁材60の外部に配設する胴縁10が熱伸縮した場合であっても、保持部材20や固定手段に影響はなく、胴縁10を安定して保持することができる。
【0037】
また、移動許容型胴縁保持部材20においては、上下方向の胴縁10のガイド部12と把持部21との間隙C1が大きく、中央で胴縁10を仮保持する弾性部材24が配設される。このため、外装材9が熱伸縮して胴縁10の上下方向に移動しようとする場合であっても、上下方向の胴縁10の移動を許容することができる。尚、第一胴縁固定具1aは、主に外装材9に作用する面外方向にかかる力を負担する。面外方向の力には、主に風荷重や地震の慣性力などがある。
【0038】
(第二胴縁固定具1b)
次に、図4乃至図5を用いて、拘束型胴縁保持部材120を用いた第二胴縁固定具1bについて説明する。図4は本実施形態に係る第二胴縁固定具1bを示す分解斜視図である。図5は本実施形態に係る第二胴縁固定具1bを示す断面図である。前述の構成と同様の作用効果を有するものには、同符号を付すことで説明を省略する。
【0039】
図4に示すように、胴縁固定具1bは、胴縁10と、保持部材120と、固定手段(板状体としてのプレート30、釘40、ブラケット50)とを有する。
【0040】
保持部材120は、把持部21を有する。把持部21は、胴縁10の長手方向に交差する方向において胴縁10のガイド部12を把持する。ここで、把持部21は、ガイド部12との間に若干の間隙C2(図5参照)を有するように把持する。このため、胴縁10のガイド部12は、把持部21によって摺動可能に把持される。尚、前述のように、間隙C2は、胴縁固定具1aにおける間隙C1よりも小さい(C1>C2)ことが一般的である。
【0041】
また、拘束型胴縁保持部材120は、前述と同様、ビス穴22、開口部23が設けられるが、弾性部材24は配設されない。これにより、保持部材120は、胴縁10に固定される外装材9の面内方向であって胴縁10長手方向に交差する方向の少なくとも一方向(本実施形態では鉛直下方)の移動を拘束する。
【0042】
上述の構成により、胴縁固定具1bを用いて外装材9、胴縁10、外壁材60を一体的に構成する。取り付け方法は、前述と同様であるため省略する。
【0043】
上記のように保持部材20により長手方向に摺動可能に固定された胴縁10には、外装材9がビスSを用いて取り付けられる。
【0044】
以上のように、第二胴縁固定具1bによれば、外壁材60の外部に配設する胴縁10が熱伸縮した場合であっても、保持部材20や固定手段に影響はなく、胴縁10を安定して保持することができる。この結果、胴縁10に固定される外装材9をも安定して支持することができる。尚、第一胴縁固定具1aとは異なり、外装材9の熱伸縮に伴う胴縁10の上下方向への移動は許容しない。このように、第二胴縁固定具1bは主に外装材9の自重及び外装材9の面外方向の力を支える部分として用いられる。
【0045】
(外壁構造)
以上の第一胴縁固定具1a、第二胴縁固定具1bを用いて構成した本実施形態の外壁構造について説明する。図6は本実施形態に係る外壁構造の模式図である。
【0046】
図6に示すように、外装材9を外壁材に固定する際には、外装材9の重心Gの近傍に位置する胴縁10を、胴縁固定具1bを用いて固定する。そして、重心Gから離れた位置(重心の近傍以外の位置)の胴縁10を、胴縁固定具1aを用いて固定する。尚、外装材9の重心Gの近傍の位置として、外装材9の重心Gから垂直距離で最も近い位置に配設される胴縁10の位置、又は外装材9の重心Gから垂直距離で最も近い位置と次に近い位置に配設される胴縁の位置とすると好ましい。
【0047】
本実施形態においては、図6に示すように、重心Gに対して、上下方向に隣接する位置にある胴縁10を固定する1列ずつを胴縁固定具1bで固定し、その他の列を胴縁固定具1aで固定する。
【0048】
このように、外装材9の重心Gが位置する中央部分にて外装材9の重量を支持するように固定し、重心Gから離れた部分を横方向及び上下方向(水平方向及び鉛直方向)に移動することを許容するように固定すると、重心Gから重量の支持点(支持ライン)までの距離が短くなる。このため、外装材の重量を最下端や最上端の位置で支持した場合に比べ、外装材9に地震等により慣性力Iが働いたときに、外装材9に作用する転倒モーメントを小さくすることができる。その結果、ALCパネルのような比較的母材強度が低く、アンカー強度の低い外壁材(下地材)であっても、大地震時にアンカー取付部(固定手段の部分)が損傷する危険性が少ない。
【0049】
尚、本実施形態においては重心Gのすぐ上下に隣接する2本の胴縁10を、胴縁固定具1bを用いて固定するとしたが、これに限るものではない。例えば、重心Gのすぐ下に隣接する胴縁10のみを胴縁固定具1bを用いて固定し、他の胴縁10は全て、胴縁固定具1aを用いて固定するとしてもよい。
【0050】
〔他の実施形態〕
前述の実施形態においては、胴縁固定具1によって胴縁10を固定する際、釘40を、2部材にて構成され、外壁材60内部で開脚する開脚釘を用いた。しかしながら、釘40の構成はこれに限るものではない。例えば、貫通ボルトとしてもよい。
【0051】
また、前述の実施形態では、固定手段として、プレート30、釘40、ブラケット50を用いて構成されていたが、固定手段の構成はこれに限るものではない。胴縁保持部材に固定手段が貫通する穴を形成し、固定手段により胴縁保持部材を直接外壁材(下地材)に固定してもよい。たとえば固定手段としては、後施工アンカー、ビス、釘などがある。
【0052】
前述の実施形態の外壁構造においては、第一胴縁固定具1aと第二胴縁固定具1bとを両方用いたが、これに限るものではない。例えば、図7(a)に示すように、全てを第一胴縁固定具1aとしてもよい。この場合、重心Gの上下に隣接する位置の第一胴縁固定具1aを、図3(c)の右図に示すように、胴縁固定具1aの把持部21の下端で胴縁10を支持するように配置すればよい。これにより、前述と同様の効果を得ることができる。
【0053】
前述の実施形態の外壁構造においては、1つの胴縁10を固定する際に胴縁固定具1aのみを用いる構造や、胴縁固定具1bのみを用いる構造を例示して説明したが、必ずしも同一種類の胴縁で固定する必要はない。例えば、図7(b)に示すように、1つの胴縁10を固定する際に、胴縁固定具1aと胴縁固定具1bの双方を用いてもよい。
【0054】
前述の実施形態においては、仮保持部材として、弾性部材24を用いたが、これに限るものではない。例えば、図8に示すような移動許容型胴縁保持部材220としてもよい。即ち、移動許容型胴縁保持部材220は、把持部21、ビス穴22、開口部23を有し、且つ把持部21の側方の保持部材本体220aには、仮保持部材として仮保持爪224が形成される。図8に示すように、仮保持爪224は、把持部21の側方に、上下方向に対称に4箇所設けられ、保持部材220の中央側に開いている。これにより、胴縁10を把持部21にて把持する場合、胴縁10のガイド部12は、仮保持爪224に当接されつつ仮保持爪224の内側に把持される。これにより、胴縁10は、保持部材220の所定の位置にくるように、自然と位置決めがされる。仮保持爪224は、胴縁10に固定される外装材9の面内方向であって胴縁9が胴縁9の長手方向に交差する方向に移動する際には容易に変形する程度の強度であるのが好ましい。
【0055】
前述の実施形態においては、下地材として外壁材60を用いたが、これに限るものではない。例えば、下地材を屋根下地材としてもよい。陸屋根の場合、第一胴縁固定具1aは、主に外装材9に作用する面外方向にかかる力を負担する。第二胴縁固定具1bは主に外装材9の面内方向の力及び外装材9の面外方向の力を負担する。面外方向の力には主に風荷重があり、面内方向の力には地震時の慣性力がある。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、建物の外壁の胴縁を固定するための胴縁固定具及びそれを用いた外壁構造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態に係る第一胴縁固定具1aを示す分解斜視図。
【図2】本実施形態に係る第一胴縁固定具1aの使用状態を示す断面図。
【図3】本実施形態に係る移動許容型胴縁保持部材20の詳細説明図。
【図4】本実施形態に係る第二胴縁固定具1bを示す分解斜視図。
【図5】本実施形態に係る第二胴縁固定具1bを示す断面図。
【図6】本実施形態に係る外壁構造の模式図。
【図7】他の実施形態に係る外装材の固定構造を説明する模式図。
【図8】他の実施形態に係る移動許容型胴縁保持部材220の構造を説明する図。
【符号の説明】
【0058】
G…重心、S…ビス、W…荷重、X…距離、1a…胴縁固定具、1b…胴縁固定具、9…外装材、10…胴縁、12…ガイド部、20…移動許容型胴縁保持部材、21…把持部、22…ビス穴、23…開口部、24…弾性部材、30…プレート、31…ネジ穴、40…釘、50…ブラケット、51…胴縁側固定軸、51a…ネジ部、51b…貫通孔、52…外壁側固定軸、53…鍔部、60…外壁材、60a…壁面、61…溝、120…拘束型胴縁保持部材、220…移動許容型胴縁保持部材、220a…保持部材本体、224…仮保持爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴縁と間隙を形成しつつ前記胴縁の長手方向に交差する方向において把持する把持部と、
前記胴縁を、外装材を前記胴縁に施工する前は前記胴縁の長手方向と交差する方向における所定の位置に仮保持し、外装材を前記胴縁に施工した後は前記胴縁の長手方向と交差する方向の移動を許容する仮保持部材と、を有することを特徴とする移動許容型胴縁保持部材。
【請求項2】
前記移動許容型胴縁保持部材、及び前記移動許容型胴縁保持部材を下地材に固定する固定手段を具備する第一胴縁固定具により、胴縁を介して前記下地材に外装材を固定することを特徴とする外装材の固定構造。
【請求項3】
前記第一胴縁固定具と、
胴縁、前記胴縁と間隙を形成しつつ前記胴縁の長手方向に交差する方向において把持する把持部にて前記胴縁を保持し且つ前記外装材を前記胴縁に施工した後には前記外装材の面内方向であって前記胴縁の長手方向に交差する方向の少なくとも一方向の移動を拘束する拘束型胴縁保持部材、及び前記拘束型胴縁保持部材を下地材に固定する固定手段を具備する第二胴縁固定具と、
を有し、
前記外装材の重心の近傍の位置においては、前記外装材を前記第二胴縁固定具によって前記下地材に固定し、
前記外装材の重心の近傍以外の位置においては、前記第一胴縁固定具によって前記下地材に固定することを特徴とする請求項2に記載の外装材の固定構造。
【請求項4】
前記外装材の前記重心の近傍の位置は、前記外装材の重心から垂直距離で最も近い位置に配設される胴縁の位置、又は前記外装材の重心から垂直距離で最も近い位置と次に近い位置に配設される胴縁の位置であることを特徴とする請求項3に記載の外装材の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−41260(P2009−41260A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207346(P2007−207346)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】