説明

移植機における昇降制御装置

【課題】 移植機の昇降制御装置においてエンジンコントロールレバーと感度調節レバーとフロート側とのシンプルな連結構造を提供することを課題としている。
【解決手段】 エンジン6の回転数を調節するエンジンコントロールレバー74により操作されるコントロールワイヤ73と、移植作業機10に上下動自在に支持された接地フロート14の姿勢を揺動自在に設定するフロートワイヤ71とを連結具25を介して直結し、該連結具25が、接地フロート14の圃場の土圧に応じた上下動に基づく移植作業機10の昇降制御の感度を調節する感度調節レバー50の所定のポジションに対して所定の範囲でフロートワイヤ71の操作を許容し、且つ感度調節レバー50の揺動操作により両ワイヤ71,73の操作方向にスライドせしめられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は接地フロートの圃場から受ける土圧に応じた上下動により移植作業機を自動的に昇降制御せしめる移植機における昇降制御装置に関する。
【従来の技術】
【0002】乗用田植機等の移植機は、手動位置及び自動位置に操作し得る昇降制御レバーを備えていて、該レバーの手動操作により作業機を昇降制御すると共に、該レバーの自動位置にて、作業機のフロートに作用する土圧を感知して適正植付位置になるように作業機を油圧にて自動昇降制御を行う構造のものが知られている。
【0003】しかし圃場面の泥土が軟らかい場合は、一般にフロート前部が下がりぎみになると共に、もぐり込んで泥押しを起こすので、作業機は沈み込んで植付け深さが深くなりすぎ、反対に圃場面の泥土が硬い場合は、フロート前部が上がりぎみとなって、作業機が浮き上って植付け深さが浅くなると共に、土塊等により頻繁に上下スイングを起こすという欠点があった。
【0004】これを解消する手段として、例えば、フロートに作用する土圧の感知ポイントを変えることにより、泥土が柔らかい場合は感知ポイントを下げ早期に土圧を検出し、また泥土が硬い場合は感知ポイントを上げ遅れて土圧を検出する手段(以下、前者の従来例)と、フロートの感知荷重を変更して対応する手段(以下、後者の従来例)とが知られている。
【0005】そして前者の従来例として、フロートの前部を強制的に上下位置変更してフロートの滑走姿勢を変え、フロートの感知ポイントを上下に変更して圃場条件に対応させるようにしたものが知られており、また後者の従来例として、圃場面の硬軟に応じてフロートの上下動を高感度で制御したり、感度を鈍らせて制御することにより、フロートの感知荷重を変更して対応するようにしたものが知られている。
【0006】例えば後者の従来例として、泥土が軟らかい場合は、フロートを圃場面方向に付勢しているスプリングの張力を弱くして、わずかな土圧によってもフロートの上動を可能として鋭い感度でフロートの上下動を制御し、また、泥土が硬い場合は、前記スプリングの張力を強くして、フロートの上動抵抗を大きくして、大きな土圧でなければフロートが上動しないようにして鈍い感度でフロートの上下動を制御するようなものが一般的である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし前述した前者の従来例によると、圃場面の硬軟に応じてフロートの前部を強制的に上下調節して感知ポイントを変えるものであるため、フロー卜の接地面積が小さくなりフロートのバタツキが生じやすく、また、極めて軟らかい泥土の場合には、フロートの前部を下げて早めに土圧を感知しようとしても、フロートの前部が沈下して泥を押しながらどんどん地中にもぐっていってしまうおそれがあった。
【0008】また、後者の従来例によると、フロートを圃場面方向に付勢するスプリングをフロート近傍に配置し、このスプリングの付勢力をリンク機構を介してフロートに連結し、調節レバーの操作により前記スプリングの張力を変更するものであるため、部品点数が増加すると共に構造が複雑になるという欠点があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するための本発明の移植機における昇降制御装置は、接地フロート14が上下動自在に設けられた移植作業機10を走行機体5に昇降自在に連結し、該接地フロート14の圃場の土圧に応じた上下動に基づいて油圧シリンダ19により上記移植作業機10を自動的に昇降制御するとともに、該昇降制御の感度を調節する感度調節レバー50とエンジン6の回転数を調節するエンジンコントロールレバー74を設け、上記油圧シリンダ19をエンジン6の回転により駆動される油圧ポンプにより作動せしめる移植機において、上記エンジンコントロールレバー74により操作されるコントロールワイヤ73と、接地フロート14の姿勢を揺動自在に設定するフロートワイヤ71とを連結具25を介して直結し、該連結具25が所定のポジションの感度調節レバー50に対して所定の範囲でフロートワイヤ71の操作を許容するとともに、感度調節レバー50の揺動操作により両ワイヤ71,73の操作方向にスライドせしめられる構造であることを第1の特徴としている。
【0010】また連結具25に両ワイヤ71,73の操作方向に長尺な長孔25cを穿設せしめ、該長孔25cに感度調節レバー50の揺動に伴って前記長孔25cの長尺方向に移動せしめられる揺動端をスライド自在に挿入せしめたことを第2の特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】次に図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明を適用した乗用田植機の全体側面図であり、乗用田植機1は、前輪2及び後輪3により支持された走行機体5の後方に移植作業機10(以降作業機10とする)が連結された構造となっており、該走行機体5にはその前方部分にエンジン6が搭載されているとともに、前後輪2,3の略中間位置にシート7を有する運転席9が配設されている。
【0012】そして上記作業機10は、多数の植付杆11,接地フロート14,マット苗を載置する苗載せ台12等が備えられており、アッパリンク8aとロアリンク8b等からなる昇降リンク機構8により走行機体5側に昇降自在に、且つ昇降リンク機構8の後端部のリンク支え枠55(図2参照)に設置されたローリング軸(図示せず)によりローリング自在に支持されている。
【0013】このとき図2に示されるように上記接地フロート14の前部には連結ピン62aを介して感知プレート62が回動自在に枢支・連結されており、該接地フロート14は後述するように該感知プレート62が揺動アーム75を介して作業機10側に連結され、且つ後部が伝動ケースの下部側に回動可能に軸着されることで作業機10の下部に上下昇降自在に取り付け支持されている。
【0014】一方前記走行機体5の前部に設けられたミッションケース16と前記昇降リンク機構8との間には、伸縮により上記昇降リンク機構8を作動(昇降)せしめる油圧シリンダ19が設けられているが、運転席9の下方には上記油圧シリンダ19の伸縮を制御するロータリスプールバルブからなる油圧制御バルブ35が油圧シリンダ19に接続されて配設されており、上記油圧シリンダ19はこの油圧制御バルブ35により作動せしめられるように構成されている。
【0015】そして図2〜図4に示されるように油圧制御バルブ35のスプールと一体の軸35aに作動用のアーム37が取り付けられているとともに、該アーム37が後述する構成の感知リンク機構15を介して前記接地フロート14側に連結されており、これにより接地フロート14に作用する圃場の土圧の変動に基づく接地フロート14の上下昇降により感知リンク機構15を介してアーム37が操作されて油圧制御バルブ35が自動的に制御され、前記作業機10が油圧シリンダ19により自動昇降制御(油圧感知制御)される構造となっている。
【0016】なお接地フロート14(感知プレート62)を支持する前述の揺動アーム75は、二又状のアーム75a,75bから成り、中央部分が機体左右側のロアリンク8b,8bを連結している連結軸21に装着された連結プレート23に回動支点60を中心として回動自在に軸支されて作業機10(昇降リンク機構8)側に取り付けられている。
【0017】そして揺動アーム75における一方のアーム75aがピン72を介して上記感知プレート62に穿設された長孔62bに連結されているとともに、ピン72と連結ピン62aとの問にはスプリング76が張設されており、該スプリング76を介して揺動アーム75と感知プレート62とが連結されているとともに、さらに他方のアーム75bが前記感知リンク機構15を構成する感知ロッド39に連結されており、以上のように接地フロート14の前部が作業機10側に連結されている。
【0018】なお感知プレート62の上端部分にはフロートワイヤ71(アウタ)が固定されているとともに、該フロートワイヤ71のインナーワイヤ71aが前述のピン72に固定されており、これによりスプリング76がインナーワイヤ71aを張り、前記ピン72と連結ピン62aとの問の長さからなる感知プレート62の作用長を位置決め設定せしめるが、さらにフロートワイヤ71(インナーワイヤ71a)の操作により接地フロート14の前部が強制的に上下位置変更され、接地フロート14の滑走姿勢が変更されるように構成されている。
【0019】次に前記感知リンク機構15の構造について説明する。該感知リンク機構15は前述の感知ロッド39,連牽リンク42,感知ロッド39と連牽リンク42とを連結せしめるリンク比調整部20等により構成されており、前記のようにアーム75bと感知ロッド39とが連結されているとともに、連牽リンク42の他端側がアーム37に連結されて、接地フロート14側と油圧制御バルブ35(アーム37)側とを連結せしめている。
【0020】なお連牽リンク42とアーム37とは連牽リンク42に突設されたピン43を介して連結されており、また感知ロッド39とアーム75bとは、感知ロッド39を構成するロッド部材の後部に取り付けられたリンク金具40を介して連結されているが、更に詳細にはリンク金具40に形成された長孔40bにアーム75bの先端に固着されたピン32が嵌入せしめられ、且つピン32とリンク金具40に突設されたピン40aとの問にスプリング41が張設されて、付勢的に連結された構造となっている。
【0021】さらに前記リンク比調整部20は、基端側が枢支連結部17によりロアリンク8bに回動可能に軸着されたアーム状の変換レバー22により構成されており、該変換レバー22の揺動側先端に感知ロッド39(ロッド部材)の前部に取り付けられたピン継手部38がピン27を介して回動可能に軸着されているとともに、長手方向に沿って複数個形成せしめられた穴22aのいずれか1つにピン46を介して前記連牽リンク42の一端が回動自在に取り付けられた構造となっている。
【0022】一方前述の運転席9内には上記油圧制御バルブ35の作動感度を調節せしめる感度調節レバー50が揺動操作自在に設けられており、該感度調節レバー50の揺動により以下に示すように油圧制御バルブ35の感度を調節せしめることができるように構成されている。
【0023】上記感度調節レバー50は図5に示されるように開口した下端部が回動自在に軸支された略コの字状のブラケット50aの上端に略L字状のレバーアーム50bが固定された構造となっており、上記レバーアーム50bの屈曲部分に設けられたピン50cを介してワイヤ24(アウタが走行機体5側に固定されている)のインナーワイヤ24aが固定されている。そして該インナーワイヤ24aの他端と、前記連牽リンク42の中間部に突設されたピン44との間には戻しスプリング45が張設されている。
【0024】以上に示される構造により上記乗用田植機1による植付け作業中に圃場の条件等により接地フロート14の姿勢が乱れた場合、例えば作業機10が田面に対して上昇して接地フロート14に作用する土圧が減少すると、接地フロート14の前方が下がり、この動きが感知プレート62及び長孔62bの所定位置に位置決めされているピン72を介して揺動アーム75aに図2における反時計方向の回転として伝えられ、更に回動支点60を介して揺動アーム75bも同方向に回転して感知ロッド39を図2における左方向に押圧する。
【0025】これにより枢支連結部17を中心として変換レバー22が上記反時計方向に回転させられるが、枢支連結部17を中心とする感知ロッド39の反時計方向への回動量と連牽リンク42の同方向への回動量との比がR/rとなるため、感知ロッド39の回動量がr/R倍されて、連牽リンク42に図面左方向への移動量として伝達される。
【0026】そしてこの連牽リンク42の図面左方向への移動がピン43を介してアーム37に伝達され、油圧制御バルブ35の作動軸35aが図2に示される時計方向に回転せしめられ、油圧制御バルブ35が、油圧シリンダ19内の油を排出するように切換えられ、該シリング装置19が収縮して作業機10が下降せしめられ、接地フロート14の姿勢が適正に補正される。
【0027】また作業機10が下降して接地フロート14に作用する土圧が増大した場合は、接地フロート14の前方が持上り、該動きは感知プレート62、揺動アーム75a,75b、及び感知ロッド39を介して、変換レバー22を枢支連結部17を中心として図2における時計方向に回動せしめ、この変換レバー22の回動により、連牽リンク42を図2における右方向に移動せしめる。
【0028】これにより連牽リンク42の作動がピン43を介してアーム37に伝達され、油圧制御バルブ35の作動軸35aが図2における反時計方向に回転せしめられ、油圧制御バルブ35が油圧シリンダ19に圧油を圧送するように切換えられ、該油圧シリンダ19のロッドを伸張して作業機10を適正位置まで上昇させ、接地フロート14の姿勢が適正に補正され、すなわち以上のように作業機10の昇降が自動制御される。
【0029】ただし戻しスプリング45の付勢力により接地フロート14は前記連牽リンク42等(感知リンク機構15)を介しては常時下げ方向に付勢せしめられており、油圧制御バルブ35は接地フロート14側に上記付勢力を越える力が作用するとアーム37が揺動され油圧制御バルブ35が作動せしめられ、作業機10の昇降制御が行われる。
【0030】そして上記戻しスプリング45の付勢力は上記構造により感度調節レバー50の揺動により変更されるため、感度調節レバー50の揺動操作により油圧制御バルブ35を作動せしめる付勢力(油圧制御バルブ35の作動荷重)、すなわち接地フロート14の感知感度(感知荷重)が変更される。
【0031】なおピン46は、リンク比調整部20の穴22aに対して抜き差しにより自由にその差し込み位置を変えることが可能であり、これにより変換レバー22の枢支連結部17と先端のピン27との距離Rと前記枢支連結部17とピン46との距離rとの比を変更することが可能となっている。
【0032】これにより変換レバー22と連牽リンク42との連結点の変更(R:rを変更)を行うことで、感知ロッド39に加わる荷重(接地フロート14の感知荷重)と連牽リンク42に伝達される荷重との比が、r/Rとなり、戻しスプリング45の付勢力をPとした場合、感知ロッド39にはP・r/Rの荷重が伝達され、この荷重(P・r/R)に比例した荷重が接地フロート14の下げ方向に作用する。すなわちリンク比調整部20によりリンク比を変える(R:rを変更)ことでも、接地フロート感知感度を変更することができるように構成されている。
【0033】またR:rの変更により枢支連結部17を中心とする感知ロッド39の回動量(接地フロート14の上下移動量)と連牽リンク42の回動量の比も変更されるが、感知ロッド39の回動量(接地フロート14の上下移動量)と連牽リンク42の回動量との比はR/rとなり、感知ロッド39の回動量はr/R倍されて連牽リンク42に伝達され、この所定比率に変更された変更後の移動量により前記油圧制御バルブ35が制御されるため、接地フロート14の昇降量に対する油圧制御バルブ35の作動量を調節することもできるように構成されている。
【0034】一方感度調節レバー50におけるレバーアーム50bは、上記感知感度を調節設定すべく感度調節レバー50を揺動せしめることでブラケットの回動軸心cを中心に揺動するが、このレバーアーム50bの基端部分にはL型プレート状のアウタ固定部材30が回動(揺動)自在に支持されており、該アウタ固定部材30にコントロールワイヤ73におけるアウタ73bが固定されている。なお該コントロールワイヤ73はエンジン6の回転数(機体の走行速度)を調整すべく運転席9側に設けられたエンジンコントロールレバー74側にインナーワイヤ73aの一端が連結されている。
【0035】そして該インナーワイヤ73aの他端(アウタ固定部材30側の端部)が図6に示される略コの字状の連結板25a等からなる連結部材25の開放端にピン25bを介して軸支されているとともに、上記連結部材25における開放端の反対側に前述のフロートワイヤ71におけるインナーワイヤ71aの他端が取り付けられており、さらに連結部材25(連結板25a)の側面には両ワイヤ71,73の作動方向に長尺な長孔25cが形成せしめられていると共に、該長孔25c内に前述のレバーアーム50bの基端部Eがスライド自在に挿入されている。
【0036】これによりエンジンコントロールレバー74を揺動操作すると、コントロールワイヤ73(インナーワイヤ73a)が操作され連結部材25がレバーアーム50bをガイドに上記長孔25cの範囲内でスライド移動してフロートワイヤ71(インナーワイヤ71a)が直接操作され前述のように接地フロート14の滑走姿勢が変更せしめられる。すなわちエンジンコントロールレバー74によりエンジン6の回転数の調整と同時に接地フロート14の滑走姿勢変更が行われ、接地フロート14の滑走姿勢変更により接地フロート14における圃場からの土圧を感知するポイント(感知ポイント)が変更される。
【0037】また感度調節レバー50を揺動操作すると、レバーアーム50bが揺動移動され、アウタ固定部材30が移動するため、連結部材25がこの移動に伴い移動して、フロートワイヤ71(インナーワイヤ71a)が操作される。すなわち感度調節レバー50の揺動操作により両ワイヤ71,73の操作方向に連結部材25がスライドせしめられ、接地フロート14の感知感度調整と同時に接地フロート14の滑走姿勢(感知ポイント)の変更が行われる。
【0038】そしてこのとき連結部材25とレバーアーム50b(基端部分E)とは連結部材25の長孔25cを介して連結されているため、感度調節レバー50が所定のポジションに位置している(接地フロート14の感知感度が所定値に設定されている)際に、エンジンコントロールレバー74を操作すると、上記長孔25cの範囲でコントロールワイヤ73によりフロートワイヤ71が操作され、感度調節レバー50により設定された接地フロート14の感知感度を保ったまま、エンジン6の回転数の変化に応じた感度(感知ポイント)に接地フロート14の姿勢が設定される。
【0039】これにより例えば比較的軟らかい田面においては接地フロート14の感知感度を上げることにより良好に作業機10の昇降制御を行うことができるため、感度調節レバー50を所定のポジション(所定の感度)から感度を上げる方向に揺動せしめることで適切な作業機10の昇降制御を行うことができるが、同時に接地フロート14の感知ポイントも調節され(接地フロート14の感知ポイントが早くなり)、より適切な作業機10の昇降制御が行われる。
【0040】また逆に例えば比較的硬い田面においては接地フロート14の感知感度を下げることにより良好に作業機10の昇降制御を行うことができるため、感度調節レバー50を所定のポジション(所定の感度)から感度を下げる方向に揺動せしめることで適切な作業機10の昇降制御を行うことができるが、上記同様同時に接地フロート14の感知ポイントも調節され(接地フロート14の感知ポイントが遅くなり)、より適切な作業機10の昇降制御が行われる。
【0041】そして更に上記状態からエンジンコントロールレバー74によりエンジン6の回転数(機体の走行速度)を変更せしめると、これに連動して接地フロート14の感知ポイントが変更され(増速せしめると感知ポイントが遅れ、減速せしめると感知ポイントが早くなる)、より圃場条件及び機体の走行条件に対応した良好な作業機10の昇降制御が行われる。なお上記長孔25cはエンジンコントロールレバー74のフルストロークに対応している。
【0042】このときコントロールワイヤ73の操作により連結部材25を介してフロートワイヤ71が直接操作されるため、よりシンプルな構造で上記作業機10の昇降制御の適正化処理が行われるとともに、フロートワイヤ71の操作がより安定して行われ、また連結部材25(長孔25c)を介して感度調節レバー50側とエンジンコントロールレバー74側が連結されるため、この連結構造もよりシンプルとなる。
【0043】なお感度調節レバー50の揺動により連結部材25が移動せしめられる場合、アウタ固定部材30がレバーアーム50bの揺動軌跡に沿って移動せしめられ、且つ連結部材25もレバーアーム50bの揺動軌跡に沿って移動せしめられ、コントロールワイヤ73においてはインナーワイヤ73aが揺動せしめられる。
【0044】しかしアウタ固定部材30はレバーアーム50bに対して揺動自在に支持されているため、アウタ固定部材30が揺動し、コントロールワイヤ73の操作時(エンジンコントロールレバーの揺動操作時)にインナーワイヤ73aとアウタ受けがほぼ一直線上に位置して、コントロールワイヤ73はフロートワイヤ71の姿勢にあわせてフロートワイヤ71をほぼ一直線上に操作する。
【0045】これによりフロートワイヤ71(エンジンコントロールレバー74)の操作荷重が必要以上に大きくなることが無く、フロートワイヤ71は円滑に操作されるが、本実施形態の場合特にアウタ固定部材30がレバーアーム50bに支持されているため、アウタの受け部分の構造がシンプルになるとともに、よりサイズで構成することができる。
【0046】なお前記接地フロート14の上下移動量を一定とした場合、リンク比調整部20を調整することにより、油圧制御バルブ35には接地フロート14の上下移動量に対してR:rの比に応じて移動量が伝達され、これにより接地フロート14の所定量の上下移動に対する油圧制御バルブ35の変位量が設定され、接地フロート14の作動不感帯域が変更される。
【0047】これにより軟らかい田面では作動不惑帯域を大きくして、田面のわずかな凹凸には反応することなく油圧制御バルブ35のハンチングが防止されると共に、硬い田面では作動不感帯域を小さくして、接地フロート14の接地圧を大きくし、該接地圧により小さな凹凸を接地フロート14の接地圧でならすことが可能となっている。
【0048】
【発明の効果】以上のように構成される本発明の構造によれば、感度調節レバーが所定のポジションに位置しているときに、この感度調節レバーにより設定される昇降制御の感度に対して、エンジンコントロールレバーの操作によりコントロールワイヤとフロートワイヤを介してフロートの姿勢が直接変更され、エンジン回転の変化に対応した感度にフロート姿勢が設定され、安定した高精度な自動昇降制御を行うことができるが、このときエンジンコントロールレバーとフロート側とが連結具を介して直結されているとともに、該連結具が感度調節レバーに連係された構造となっているため、エンジンコントロールレバーと感度調節レバーとフロート側との連結構造がシンプルとなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用田植機の全体側面図である。
【図2】昇降制御装置の要部側面図である。
【図3】感度調節レバー部分の要部側面図である。
【図4】感度調節レバー部分の要部平面図である。
【図5】(a),(b)は感度調節レバーの側面図及び正面図を示す。
【図6】連結部材部分の正面図を示す。
【符号の説明】
5 走行機体
6 エンジン
10 移植作業機
14 接地フロート
19 油圧シリンダ
25 連結部材(連結具)
25c 長孔
50 感度調節レバー
71 フロートワイヤ
73 コントロールワイヤ
74 エンジンコントロールレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 接地フロート(14)が上下動自在に設けられた移植作業機(10)を走行機体(5)に昇降自在に連結し、該接地フロート(14)の圃場の土圧に応じた上下動に基づいて油圧シリンダ(19)により上記移植作業機(10)を自動的に昇降制御するとともに、該昇降制御の感度を調節する感度調節レバー(50)とエンジン(6)の回転数を調節するエンジンコントロールレバー(74)を設け、上記油圧シリンダ(19)をエンジン(6)の回転により駆動される油圧ポンプにより作動せしめる移植機において、上記エンジンコントロールレバー(74)により操作されるコントロールワイヤ(73)と、接地フロート(14)の姿勢を揺動自在に設定するフロートワイヤ(71)とを連結具(25)を介して直結し、該連結具(25)が所定のポジションの感度調節レバー(50)に対して所定の範囲でフロートワイヤ(71)の操作を許容するとともに、感度調節レバー(50)の揺動操作により両ワイヤ(71),(73)の操作方向にスライドせしめられる構造である移植機における昇降制御装置。
【請求項2】 連結具(25)に両ワイヤ(71),(73)の操作方向に長尺な長孔(25c)を穿設せしめ、該長孔(25c)に感度調節レバー(50)の揺動に伴って前記長孔(25c)の長尺方向に移動せしめられる揺動端をスライド自在に挿入せしめた請求項1の移植機における昇降制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−106722(P2000−106722A)
【公開日】平成12年4月18日(2000.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−281665
【出願日】平成10年10月2日(1998.10.2)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】