移相発振器およびアンテナ
本発明は、新しい改善された移相注入発振器、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器、およびフェーズド・アレイ・アンテナ(PAA)について説明する。本発明の例示的な実施形態によるPAAは低コストであるため、種々の商業用途、例えば、無線通信または衛星モバイル・テレビにおいて用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、情報を利用するために電波エネルギーを送受信するためのデバイスおよびプロセスに関し、より具体的には、フェーズド・アレイ・アンテナおよび無線通信におけるその応用例に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、電磁波を送受信するように設計されている。フェーズド・アレイ・アンテナは、指向性放射パターン(ビーム)を伴う複数の放射器要素(放射器)を備えるアンテナであって、アンテナ内の個々の放射器要素(放射器)または放射器要素群を制御することによって放射パターンの制御を行なうことができるアンテナである。一般的に、放射パターンの配向方向は、放射器要素へのまたは放射器要素からの信号の位相を制御することによって決められる。従来のフェーズド・アレイ・アンテナでは、位相制御は位相シフタによって構成されている。通常、具体的な位相はデジタル信号処理(DSP)サブシステムによって決定される。
【0003】
フェーズド・アレイ・アンテナの一例が、特許文献1に開示されている。この文献では、フェーズド・アレイ・アンテナであって、入力と、入力に電子的に結合された給電ネットワークと、複数の放射器と、放射器へ信号を送信または放射器から信号を受信する前に信号に対する位相シフトを与える複数の位相シフタと、位相シフタが与えた位相シフトを制御するためのコントローラと、を備えるフェーズド・アレイ・アンテナが開示されている。
【0004】
図1に、概略的に参照されるシステム100の単純化されたブロック図を例示する。当該技術分野において知られているように、システム100は、基準信号101を一以上の送信機/受信機(T/R)モジュールに分配するための多電力分配器140と、単純なフェーズド・アレイ・アンテナ(PAA)150とを備える。図1は、電子的に配向された信号波面を示す。取り得る3つの波面162、164、166が示されている。基準信号101は多電力分配器140に入力される。基準信号は通常、基準信号発生器(図1において示さず)によって生成される。
【0005】
電力分配器140は、基準信号101を、4つの位相シフタ112、114、116、118に分配する。位相シフタ112、114、116、118は、それぞれ位相シフトs1度、s2度、s3度、s4度(図示せず)を与える。波面162、164、または166は、位相シフタの位相シフトs1、s2、s3、s4によって決定される。フェーズド・アレイ・アンテナ150は、位相シフタ112、114、116、118、増幅器122、124、126、128、および放射器132、134、136、138を備えている。位相シフタ112、114、116、118はそれぞれ、増幅器122、124、126、128に接続されている。増幅器122、124、126、128はそれぞれ、増幅かつ位相シフトされた信号を、対応する放射器へ送信する。図1のフェーズド・アレイ・アンテナは、波面を方位角の次元または仰角の次元のいずれかにおいて1次元でのみ配向することができる。
【0006】
典型的なフェーズド・アレイ・アンテナは、放射器のアレイを備えており、このアレイは、放射器から放射される電磁信号の相対位相を、フェーズド・アレイ・アンテナの放射パターンが所望の方向になるような方法で変化させる。図1において、部材番号161は放射パターン(ビーム)を示している。
【0007】
図1に例示する単純化されたフェーズド・アレイ・アンテナ150は通常、T/Rモジュール102、104、106、108のアレイと、放射器132、134、136、138のアレイとを備える。図1のフェーズド・アレイ・アンテナのアーキテクチャにおいて、各放射器は1つのT/Rモジュールに接続されている。図1では、T/Rモジュール102、104、106、108の送信部のみを示している。
【0008】
典型的なフェーズド・アレイ・アンテナは、信号の位相を所定の程度シフトさせるなどの機能を果たす送信機(TR)または受信機(RX)もしくはT/Rモジュールを用いる。例えば、図1におけるT/Rモジュール102は、信号をs1度位相シフトさせる。
【0009】
典型的な従来のT/Rモジュール102には、他にも要素はあるが、位相シフタ112および増幅器122が含まれている。典型的なフェーズド・アレイ・アンテナは、複数のT/Rモジュールを用いており、各T/Rモジュールは位相シフタ(PS)を備えている。位相シフタは、フェーズド・アレイ・アンテナを機械的に再位置合わせすることなく、アンテナ・ビームを所望の方向に電子的に配向させることができる電子デバイスである。従来のフェーズド・アレイ・アンテナは極めて高価であるとともに消費電力が大きいため、主に軍事用途、例えば、航空機レーダおよびミサイル・レーダで使用されている。例えば、典型的なフェーズド・アレイ・アンテナでは、約4000個の位相シフタが使用され、各位相シフタのコストは数千米国ドルである。その結果、このようなフェーズド・アレイ・アンテナに対する全コストは数百万米国ドルとなる。そのため、従来の高コストのフェーズド・アレイ・アンテナの場合とほぼ同じ性能を与える低コストのフェーズド・アレイ・アンテナが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,759,980号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の態様は一般的に、フェーズド・アレイ・アンテナ(「PAA」)システムに関し、より具体的には、無線または電気通信網、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Wi-Max、セルラー通信、または衛星モバイル・テレビジョンで使用されるフェーズド・アレイ・アンテナに関する。
【0012】
本発明のフェーズド・アレイ・アンテナは、アクティブ式フェーズド・アレイ・アンテナである。用語アクティブを用いているのは、フェーズド・アレイ・アンテナが機械的にではなく電子的に配向され、また各放射器に対するT/Rモジュールを用いて配向されていることを強調するためである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、高品質ビデオ・サービス、高速データ・サービス、ボイス・オーバーIP(VOIP)、またはインターネット電話通信用のフェーズド・アレイ・アンテナに関する。本発明のいくつかの実施形態の一態様は、移相注入発振器(PSIO)と以下で呼ばれる新しい装置または回路に関する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)と以下で呼ばれる新しい装置または回路に関する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、複数のPSIOまたは複数のPSIPPOを備えるフェーズド・アレイ・アンテナ・システムに関する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、低コストまたは安価なフェーズド・アレイ・アンテナに関する。本発明の例示的な実施形態において、複数のPSIPPOを用いるフェーズド・アレイ・アンテナは、従来の移相回路に基づく従来の技術のT/Rモジュールを用いた従来のフェーズド・アレイ・アンテナシステムとほぼ同じかまたはより良好な性能(例えば、より高効率)を達成する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、複数のPSIPPOを用いることで方位角または仰角のビーム配向を可能とするフェーズド・アレイ・アンテナに関する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、複数のPSIPPOを用いることで細いビームを生成するフェーズド・アレイ・アンテナに関する。
【0017】
本発明の例示的な実施形態において、細いビームによって、従来技術に基づく従来のアンテナよりも受信可能範囲を広くするかまたは電磁妨害を小さくすることが可能になる。これによって、データ・スループットを著しく増加させること、または無線ネットワーク、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Wi-Max、および他の無線ネットワークの同時ユーザの数を増加させることが可能になる。
【0018】
本発明の例示的な実施形態によれば、反射型増幅器と、少なくとも1つの可変コンデンサと少なくとも1つの共振器とを備える帯域阻止フィルタと、を備える発振器が提供される。ここで、前記帯域阻止フィルタは前記反射型増幅器に接続される。本発明の例示的な実施形態において、帯域阻止フィルタは2ポート帯域阻止フィルタである。本発明の例示的な実施形態において、入力基準信号が発振器に注入される。本発明の例示的な実施形態において、発振器の出力信号が同期される。本発明の例示的な実施形態において、発振器が電圧制御される。
【0019】
本発明の例示的な実施形態によれば、電力分配器と、時間遅延ユニットと、帯域阻止フィルタと、少なくとも2つの反射型増幅器と、電力合成器と、を備える発振器が提供される。本発明の例示的な実施形態において、帯域阻止フィルタは、共振器を形成する少なくとも2つの可変コンデンサおよび少なくとも2つのインダクタを備える。本発明の例示的な実施形態において、可変コンデンサは、DSPユニットによって生成される信号によって電圧制御される。
【0020】
本発明の例示的な実施形態によれば、受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配するように動作する電力分配器であって、第2の部分は第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている、電力分配器と、第1および第2の部分を受信して出力信号を生成するプッシュ・プッシュ発振器と、を備え、プッシュ・プッシュ発振器は、第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成された帯域阻止フィルタを備える移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器も提供される。本発明の例示的な実施形態において、電力分配器はゼロ度電力分配器である。本発明の例示的な実施形態において、電力分配器はウィルキンソン型電力分配器である。本発明の例示的な実施形態において、生成された出力信号は、受信した基準信号とほぼ同じ安定性特性を有する。本発明の例示的な実施形態において、生成された出力信号は、受信した基準信号とほぼ同じノイズ特性を有する。本発明の例示的な実施形態において、所定の量の遅延時間は、基準信号の周期の約半分である。本発明の例示的な実施形態において、所定の量の遅延時間は、基準信号の周期の約半分の奇数倍である。本発明の例示的な実施形態において、生成された出力信号は、受信した基準信号と同じ周波数およびほぼ同じノイズ特性を有する。本発明の例示的な実施形態において、生成された出力信号は、受信した基準信号とほぼ同じ安定性特性を有する。本発明の例示的な実施形態において、受信された基準信号に対する出力信号の位相シフトは、約−100度〜約+100度の範囲内である。本発明の例示的な実施形態において、帯域阻止フィルタは少なくとも2つの可変コンデンサを備える。本発明の例示的な実施形態において、可変コンデンサは、帯域阻止フィルタの共振周波数を変更するために使用される。
【0021】
本発明の例示的な実施形態によれば、注入同期プッシュ・プッシュ発振器を位相シフトするための方法であって、受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配する工程であって、第2の部分が第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている工程と、第1および第2の部分をプッシュ・プッシュ発振器によって受信する工程と、出力信号をプッシュ・プッシュ発振器によって生成する工程と、を含み、プッシュ・プッシュ発振器は、第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成される、方法も提供される。本発明の例示的な実施形態において、第2の部分が第1の部分に対して遅延される所定の量の遅延時間は、基準信号の周期の約半分である。本発明の例示的な実施形態において、第2の部分が第1の部分に対して遅延される所定の量の遅延時間は、基準信号の周期の約半分の奇数倍である。
【0022】
本発明の例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのレベルの移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器と、少なくとも1つのレベルの移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器によって後に取り扱われる電力のサンプリング部分を受信する受信機能と、を備えるフェーズド・アレイ・アンテナ送信機/受信機モジュールも提供される。
【0023】
本発明の例示的な実施形態によれば、注入同期プッシュ・プッシュ発振器を位相シフトするための方法であって、位相を有する第1の信号を受信する工程と、第1の信号を分配して、第1の信号の第1の部分を帯域阻止フィルタに注入し、第1の信号の第2の部分を時間遅延ユニットに注入する工程と、第1の信号の第1または第2の部分の共振周波数を変更する工程と、第1の信号の第1の部分および第2の部分を、帯域阻止フィルタと少なくとも2つの反射型増幅器との間で発振させる工程と、少なくとも2つの反射型増幅器から得られる第1の信号の第1および第2の部分を合成する工程と、合成信号を出力する工程と、を含む方法も提供される。本発明の例示的な実施形態において、第1の信号は、基準信号または注入同期プッシュ・プッシュ発振器の以前の位相シフトから得られる信号である。本発明の例示的な実施形態において、合成信号は、注入同期プッシュ・プッシュ発振器の別の位相シフトへまたは放射器へ出力される。本発明の例示的な実施形態において、合成信号は、第1の信号の約2倍の周波数および2倍の位相シフトを有する。本発明の例示的な実施形態において、時間遅延ユニットは、第1の信号の周期の約半分の遅延時間を形成する。
【0024】
本発明の例示的な実施形態によれば、方位角および仰角において配向可能なアンテナ・ビームを有するフェーズド・アレイ・アンテナであって、複数の放射器、増幅器、ミキサ、サンプリング・カプラ、および位相シフタ注入同期発振器を備え、前記位相シフタ注入同期発振器は仰角および方位角方向でのアンテナ・ビーム配向用であるフェーズド・アレイ・アンテナも提供される。本発明の例示的な実施形態において、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器はそれぞれ、受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配するように動作する電力分配器であって、第2の部分は第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている、電力分配器と、第1および第2の部分を受信して出力信号を生成するプッシュ・プッシュ発振器と、を備え、プッシュ・プッシュ発振器は、第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成された帯域阻止フィルタを備える。本発明の例示的な実施形態において、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第1の部分は第1の程度位相シフトされ、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第2の部分は第2の程度位相シフトされ、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第3の部分は第3の程度位相シフトされ、前記第1の程度は前記第2の程度に相関し、前記第2の程度は前記第3の程度に相関している。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは無線通信デバイスとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは無線アクセス・ポイントとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは衛星モバイル・テレビ・システムとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは人工衛星アンテナとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは、データ・スイッチング・デバイスに接続されたアンテナとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは、データ送受信デバイスに接続されたアンテナとともに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】当該技術分野で知られる多電力分配器および単純なフェーズド・アレイ・アンテナを備えるシステムを示す概略ブロック図。
【図2】本発明の例示的な一実施形態による移相注入発振器(PSIO)を示す概略図。
【図3】本発明の例示的な一実施形態による帯域阻止フィルタ(BRF)を示す概略図。
【図4】本発明の例示的な実施形態によるPSIOの挙動を示す非限定的な例を示す図。
【図5】本発明の例示的な実施形態によるPSIOの挙動を示す非限定的な例の示す図。
【図6】本発明の例示的な一実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)を示す概略ブロック図。
【図7】本発明の例示的な一実施形態によるBRFを示す概略図。
【図8A】本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)の波形挙動の非限定的な例を示す図。
【図8B】本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)の波形挙動の非限定的な例を示す図。
【図8C】本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)の波形挙動の非限定的な例を示す図。
【図8D】本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)の波形挙動の非限定的な例を示す図。
【図9】本発明の例示的な一実施形態によるアンテナ・ビームを方位角および仰角において配向することが可能なフェーズド・アレイ・アンテナを示す図。
【図10】本発明の例示的な一実施形態による無線ネットワーク・システムを示す図。
【図11】本発明の例示的な一実施形態による衛星モバイル・テレビ・システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施形態の説明とともに図を参照して、本発明の例示的で非限定的な実施形態について説明する。図は一般的に一定の比率では示しておらず、どのようなサイズも単に例示的であることが意図されており、必ずしも限定ではない。図において、複数の図に現れる同一の構造、要素、または部品は好ましくは、それらが現れるすべての図において同一または同様の符号を用いて示される。
【0027】
本発明では、新しい改善された移相注入発振器、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器、およびフェーズド・アレイ・アンテナ(PAA)について説明する。本発明の例示的な実施形態によるフェーズド・アレイ・アンテナは低コストであるため、種々の商業用途、例えば、無線通信または衛星モバイル・テレビにおいて用いることができる。本発明のフェーズド・アレイ・アンテナは、従来技術のフェーズド・アレイ・アンテナと比べて著しい向上および改善を提供することが、明細書および図から示されるであろう。
【0028】
本発明によるフェーズド・アレイ・アンテナは、複数の位相シフト要素および他の電子部品を備える。従来の位相シフタは高価な電子部品であるか、または高いRF損失の影響を受ける。コストおよびRF損失の双方は、従来のT/Rモジュールまたは従来の位相シフタを用いた従来のフェーズド・アレイ・アンテナの非常に高いコストの一因である。
【0029】
本発明の例示的な一実施形態において、位相シフタ(例えば、図1の112、114、116、または118)は、移相注入発振器(PSIO)または移相注入プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)である。それらの双方は本発明の新しい新規な電子デバイスであり、以下に説明する。最初にPSIOについて説明し、そしてPSIPPOについて説明する。PSIPPOはPSIOの改善と考えることができる。PSIOまたはPSIPPOは、図1に示す構造またはアーキテクチャとともに用いることができるが、本発明では、図1に示したアンテナおよび従来技術の他のアンテナに比べて種々の優位性を有するフェーズド・アレイ・アンテナの新しい分散構造またはアーキテクチャを開示する。
【0030】
図2に、本発明の例示的な実施形態による回路300(本明細書においてPSIOと言う)の概略図を示す。図2のPSIOは、帯域阻止フィルタ(BRF)330に接続された反射型増幅器340を備える。BRFは、バラクタ・ダイオードを備えており、そのバイアス電圧は、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)390によって制御されている。BRF330は2つのポート332、333を有している。
【0031】
図3は、本発明の例示的な実施形態によるBRF330の概略図350である。BRF330は、少なくとも1つの可変コンデンサ352と絶縁変圧器に埋め込まれた少なくとも1つのインダクタ304とを備えている。PSIOの帯域阻止フィルタによる共振を起こすために、インダクタ304は可変コンデンサ352とともに共振することができる。部材番号338は接地を示している。図3の可変コンデンサ352は、DSP390(DSP390は図3では示さず)によって生成される信号380によって電圧制御される。
【0032】
本発明の例示的な一実施形態において、図2の信号301がPSIO300に注入されて、PSIO300の出力信号341が信号301に同期されるようになっている。信号341の同期とは、信号341が同期して、かつ信号301と同じ周波数およびほぼ同じ基本スペクトル純度を有することを意味する。図4、5を共に参照することにより、図2のPSIO300の挙動がより良く理解されるであろう。図4、5は、PSIO300の挙動を示す特定の非限定的な一例である。PSIO300は、入力RF信号301を受信して信号341を出力する。信号341は、入力基準信号301と同じ周波数およびほぼ同じ基本スペクトル純度を有する。波形401、401Bは、可変コンデンサ352の2つの異なる電圧V1およびV2に対する信号301の波形図である。同様に、波形441、441Bは、2つの異なる電圧V1およびV2に対する信号341の波形を示している。信号441および441Bは異なる位相を有することが分かる。
【0033】
波形401、431、441は、PSIOの特定の場所における時間領域の電圧を表わしており、可変コンデンサ352の電圧V1に対応している。波形401B、431B、441Bは、PSIOの特定の場所における時間ドメイン電圧を表わしており、可変コンデンサ352での電圧V2に対応している。波形401は301に対応し、波形431は331に対応し、波形441は341に対応することに留意されたい。
【0034】
本発明の例示的または好ましい一実施形態において、BRF330の共振周波数を変更するためにBRF300の可変コンデンサ352が使用され、そして可変コンデンサはDSP390によって制御される。
【0035】
図6は、本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)を示す概略ブロック図600である。本発明の例示的な一実施形態において、PSIPPOは、電力分配器610、時間遅延ユニット620、帯域阻止フィルタ(BRF)630、少なくとも2つの反射型増幅器640および650、電力合成器660を備える。
【0036】
図7は、本発明の例示的な実施形態による図6のBRF630を示す概略図である。BRF730は、2つの絶縁変圧器に埋め込まれた少なくとも2つのインダクタ734、735を備える。これらは、可変コンデンサ722、723とともに共振することができる。部材番号738は接地を示している。可変コンデンサ722、723は、図2、3に示すDSP390によって生成される信号380によって電圧制御される。
【0037】
図8A、8B、8C、8Dを共に参照することにより、図6のPSIPPO600の挙動がより良く理解されるであろう。PSIPPO600は、特定の位相を有する信号601を受信して、入力信号601と同じまたは異なる位相を有する信号661を出力する。
【0038】
本発明の例示的な一実施形態において、信号601は基準信号または以前のPSIPPOからの信号であり、信号661は別のPSIPPOまたは放射器に出力される。
図8A、8Bにおける波形801、801Bは、2つの異なる電圧V1およびV2のそれぞれに対する入力基準信号601の波形図であり、図8B、8Dにおける波形861、861Bは、2つの異なる電圧V1およびV2に対する信号661の波形図であり、これらは特定の非限定的な一例におけるものである。出力信号661は、入力基準信号601の2倍の周波数および2倍の位相角度を有する。出力信号661は入力基準信号601の2倍の周波数および約2倍の位相角度を有してもよいことが、当業者にとって理解されるであろう。
【0039】
電力分配器610は信号601を受信して、第1の部分602(図8A、8Cの波形802、802Bによって示される)および第2の部分621(図8A、8Cの波形821、821Bによって示される)を、BRF630に注入する。ここで、第2の部分621は、時間遅延ユニット620を用いることによって得られる。時間遅延ユニット620は、基準信号601の周期の約半分の遅延時間を生成する。本発明の別の例示的な一実施形態において、遅延時間は予め決められている。本発明の代替的な例示的実施形態において、遅延時間は、基準信号の周期の約半分の奇数倍である。BRF630に入力される信号602および621は、同一の出力レベルを有するが、反対の位相を有する。BRF630に入力される信号602および621は、ほぼ同じ出力レベルを有してもよいことが、当業者には理解されるであろう。
【0040】
BRF630は、BRP630の可変コンデンサ622、623のバイアス電圧が値V1を有するときに、波形831、832によってそれぞれ示される信号631、632を出力する。BRF630は、BRF630の可変コンデンサ622、623のバイアス電圧が値V2を有するときに、波形831B、832Bによってそれぞれ示される信号631、632を出力する。本発明の別の例示的な一実施形態において、受信した基準信号に対する出力信号の位相シフトは、約−100度〜約+100度の範囲内である。反射型増幅器640および650は、対応して、信号641および651を出力する。信号641および651は合成器661に供給される。合成器661から信号661が出力される。信号641、651は、BRF630の可変コンデンサ622、623のバイアス電圧が値V1を有するときに、波形841、851によってそれぞれ表わされる。信号641、651は、BRF630の可変コンデンサ622、623のバイアス電圧が値V2を有するときに、波形841B、851Bによってそれぞれ表わされる。
【0041】
図8A、8B、8C、8Dから、波形861、861Bによって表わされる信号661の周波数は信号601の2倍の周波数を有することに留意されたい。さらに、バイアス電圧V1に対応する波形861の位相は、バイアス電圧V2に対応する波形861Bの位相とは異なっている。
【0042】
図9は、本発明の例示的な一実施形態によるアンテナ・ビームを方位角および仰角において配向することができるフェーズド・アレイ・アンテナを示す。図9の例示的なフェーズド・アレイ・アンテナは、4つの基本ブロック502、504、506、508を有している。当業者であれば容易に理解するように、フェーズド・アレイ・アンテナの構成は複数の分散された基本ブロックから作ることができ、また本例は、本発明の簡略かつ明瞭な説明を与える便宜上示したものである。図9において、部材番号541、542、543、544、545、546、547、548は放射器を表し、部材番号571、572、573、574、575、576、577、578は増幅器を表し、部材番号561、562、563、564、565、566、567、568はミキサを表し、部材番号551、552、553、554、555、556、557、558はサンプリング・カプラを表し、部材番号512、514、516、518はアンテナ・ビームを仰角方向において配向するために使用されるPSIPPOを表し、部材番号531、532、533、534、535、536、537、538はアンテナ・ビームを方位角方向において配向するために使用されるPSIPPOを表している。本発明の例示的な一実施形態において、PSIPPO531、533、535、537は、角度β1、β3、β5、β7それぞれ位相シフトされており、PSIPPO532、534、536、538は、それぞれ角度β2、β4、β6、β8を位相シフトされており、PSIPPO512、514、516、518は、それぞれ角度α1、α2、α3、α4を位相シフトされている。特定の一例において、角度β1=β3=β5=β7=100度、角度β2=β4=β6=β8=0度、および角度α1=−150度、角度α2=−50度、角度α3=+50度、角度α4=+150度である。他の角度は、前述の例から容易に理解されるであろう。
【0043】
図9で説明したシステムは、ビームを仰角および方位角において配向することができる簡単なフェーズド・アレイ・アンテナの一例である。ブロック502を参照して、PSIPPOの分散ネットワークによって生成される信号の目的は、変調信号をアップ・コンバートするために適切なRFポンプをミキサ561、562に提供することである。ミキサの符号中に示す矢印が示す通り、変調信号がミキサに入力される。サンプリング・コンデンサ551、552の目的は、受信信号をダウン・コンバートするために適切なポンプを受信機(図示せず)のダウン・コンバータに提供することである。
【0044】
また、図5はPSSIO(例えば、512、514、516、518)が複数の放射器に影響するという意味で、分散したフェーズド・アレイ・アンテナ・アーキテクチャを示す。一方、非分散アーキテクチャ(例えば、図1に示したもの)では、T/Rモジュールにおける位相シフタ(例えば、112、114、116、または118)は1つの放射器にのみ影響する。
【0045】
図10は、本発明の例示的な一実施形態による無線ネットワーク・システム250を示す。システム250によれば、向上かつ改善された無線通信ネットワークが開示されている。システム250は、複数の無線アクセス・ポイント252、254を備えており、それぞれ信号260、262、264、266、268を送受信するフェーズド・アレイ・アンテナ256、258を用いている。信号260、262、264、266の一部は、複数の無線デバイス(例えば、パーソナル・コンピュータ270、272、274、および携帯端末278)間の通信のために使用される。無線デバイスは、アクセス・ポイント252を用いることによって第1のネットワーク280にアクセスすることができ、その結果、他の遠隔コンピュータ284または他の遠隔の携帯機器と通信することができる。これらは、携帯端末および無線通信デバイス(無線およびネットワーク電話を含む)を含んでもよい。この例示的な図において、第1のネットワーク280および第2のネットワーク282は、強固な通信線を介して接続されてはいない。本発明の256、258のフェーズド・アレイ・アンテナを用いるアクセス・ポイント252、254は通信範囲内にあり、したがって第1および第2のネットワーク282間の橋渡しをすることができる。Wi-Fi(登録商標)またはWi-Max技術を利用する広帯域アクセス・ポイント256、258を用いることによって、遠隔コンピュータ284、286間の通信を可能にすることを補助することができる。本発明のフェーズド・アレイ・アンテナを有する無線アクセス・ポイント252、254を用いることによって、本発明により示される新しい改善されたフェーズド・アレイ・アンテナを用いる結果として、各無線アクセス・ポイントにアクセスして利用することができるユーザの数を著しく増加することが可能となる。したがって、複数のPSIPPO(図示しない)を有するフェーズド・アレイ・アンテナ252、254を用いることにより、現在のところ利用可能ではないサービスを提供することが可能になるであろう。例えば、ネットワーク電話の利用、テレビ電話呼び出し、著しいデータ・ダウンロードおよびアップロード機能、ならびに他の任意のサービスとして、付加的な帯域幅と、はるかに多い数のユーザまたは加入者を、より少ない数のアクセス・ポイントを用いて取り扱う能力とを必要とするサービスである。
【0046】
図11に、本発明の例示的な実施形態による衛星携帯テレビ・システム200を示す。人工衛星202から信号204が送信される。フェーズド・アレイ・アンテナ206が、車両210の上空から見える屋根または他の場所に配置されており、信号を受信して、対応する信号を車両210の内部に配置されたテレビ受像機(TV)に送信する。当業者であれば理解するように、前述のシステムは例示的なものであり、本発明の新しい改善されたフェーズド・アレイ・アンテナに対する多くの利用可能な応用例のいくつかを説明するのに役立つ。本発明の例示的な実施形態によれば、フェーズド・アレイ・アンテナにおいて複数のPSIPPOが使用され、PSIPPOが本発明の特定の典型的なアーキテクチャにおいて組織化されれば、結果として生じるフェーズド・アレイ・アンテナは優位であり、例えば、コストが低くなるかまたは消費電力が小さくなる。さらに、本発明のフェーズド・アレイ・アンテナを、人工衛星アンテナ、データ交換またはスイッチング・デバイスによって使用されるアンテナなどを含むような任意のデータ送受信デバイスに対して利用できることが理解される。
【0047】
本発明を、その実施形態の詳細な説明を用いて説明してきたが、詳細な説明は非限定的なものであって、一例として提供されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。一実施形態に対して記載した特徴または工程を他の実施形態とともに用いても良いこと、また特定の図に示し、または実施形態の1つに対して記載したすべての特徴または工程が、本発明のすべての実施形態に備わっているわけではないことを理解されたい。前述した実施形態のいくつかにおいて、発明者が意図する最良の実施形態が記載されている場合があり、したがって構造、作用、または構造および作用の詳細として、本発明にとって本質的ではない場合があり例として記載されるものが含まれることに留意されたい。
【0048】
ここで説明した構造および作用は、同じ機能を行なう均等物によって、たとえその構造または作用が異なっていたとしても交換可能であることは、当該技術分野で知られている。したがって、特許請求の範囲で用いた要素および限定のみによって、本発明の範囲は限定される。さらに、用語「備える」、「含む」、「有する」およびそれらの活用形は、特許請求の範囲で用いた場合、「含むがこれらに限定されない」を意味する。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、情報を利用するために電波エネルギーを送受信するためのデバイスおよびプロセスに関し、より具体的には、フェーズド・アレイ・アンテナおよび無線通信におけるその応用例に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、電磁波を送受信するように設計されている。フェーズド・アレイ・アンテナは、指向性放射パターン(ビーム)を伴う複数の放射器要素(放射器)を備えるアンテナであって、アンテナ内の個々の放射器要素(放射器)または放射器要素群を制御することによって放射パターンの制御を行なうことができるアンテナである。一般的に、放射パターンの配向方向は、放射器要素へのまたは放射器要素からの信号の位相を制御することによって決められる。従来のフェーズド・アレイ・アンテナでは、位相制御は位相シフタによって構成されている。通常、具体的な位相はデジタル信号処理(DSP)サブシステムによって決定される。
【0003】
フェーズド・アレイ・アンテナの一例が、特許文献1に開示されている。この文献では、フェーズド・アレイ・アンテナであって、入力と、入力に電子的に結合された給電ネットワークと、複数の放射器と、放射器へ信号を送信または放射器から信号を受信する前に信号に対する位相シフトを与える複数の位相シフタと、位相シフタが与えた位相シフトを制御するためのコントローラと、を備えるフェーズド・アレイ・アンテナが開示されている。
【0004】
図1に、概略的に参照されるシステム100の単純化されたブロック図を例示する。当該技術分野において知られているように、システム100は、基準信号101を一以上の送信機/受信機(T/R)モジュールに分配するための多電力分配器140と、単純なフェーズド・アレイ・アンテナ(PAA)150とを備える。図1は、電子的に配向された信号波面を示す。取り得る3つの波面162、164、166が示されている。基準信号101は多電力分配器140に入力される。基準信号は通常、基準信号発生器(図1において示さず)によって生成される。
【0005】
電力分配器140は、基準信号101を、4つの位相シフタ112、114、116、118に分配する。位相シフタ112、114、116、118は、それぞれ位相シフトs1度、s2度、s3度、s4度(図示せず)を与える。波面162、164、または166は、位相シフタの位相シフトs1、s2、s3、s4によって決定される。フェーズド・アレイ・アンテナ150は、位相シフタ112、114、116、118、増幅器122、124、126、128、および放射器132、134、136、138を備えている。位相シフタ112、114、116、118はそれぞれ、増幅器122、124、126、128に接続されている。増幅器122、124、126、128はそれぞれ、増幅かつ位相シフトされた信号を、対応する放射器へ送信する。図1のフェーズド・アレイ・アンテナは、波面を方位角の次元または仰角の次元のいずれかにおいて1次元でのみ配向することができる。
【0006】
典型的なフェーズド・アレイ・アンテナは、放射器のアレイを備えており、このアレイは、放射器から放射される電磁信号の相対位相を、フェーズド・アレイ・アンテナの放射パターンが所望の方向になるような方法で変化させる。図1において、部材番号161は放射パターン(ビーム)を示している。
【0007】
図1に例示する単純化されたフェーズド・アレイ・アンテナ150は通常、T/Rモジュール102、104、106、108のアレイと、放射器132、134、136、138のアレイとを備える。図1のフェーズド・アレイ・アンテナのアーキテクチャにおいて、各放射器は1つのT/Rモジュールに接続されている。図1では、T/Rモジュール102、104、106、108の送信部のみを示している。
【0008】
典型的なフェーズド・アレイ・アンテナは、信号の位相を所定の程度シフトさせるなどの機能を果たす送信機(TR)または受信機(RX)もしくはT/Rモジュールを用いる。例えば、図1におけるT/Rモジュール102は、信号をs1度位相シフトさせる。
【0009】
典型的な従来のT/Rモジュール102には、他にも要素はあるが、位相シフタ112および増幅器122が含まれている。典型的なフェーズド・アレイ・アンテナは、複数のT/Rモジュールを用いており、各T/Rモジュールは位相シフタ(PS)を備えている。位相シフタは、フェーズド・アレイ・アンテナを機械的に再位置合わせすることなく、アンテナ・ビームを所望の方向に電子的に配向させることができる電子デバイスである。従来のフェーズド・アレイ・アンテナは極めて高価であるとともに消費電力が大きいため、主に軍事用途、例えば、航空機レーダおよびミサイル・レーダで使用されている。例えば、典型的なフェーズド・アレイ・アンテナでは、約4000個の位相シフタが使用され、各位相シフタのコストは数千米国ドルである。その結果、このようなフェーズド・アレイ・アンテナに対する全コストは数百万米国ドルとなる。そのため、従来の高コストのフェーズド・アレイ・アンテナの場合とほぼ同じ性能を与える低コストのフェーズド・アレイ・アンテナが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,759,980号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の態様は一般的に、フェーズド・アレイ・アンテナ(「PAA」)システムに関し、より具体的には、無線または電気通信網、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Wi-Max、セルラー通信、または衛星モバイル・テレビジョンで使用されるフェーズド・アレイ・アンテナに関する。
【0012】
本発明のフェーズド・アレイ・アンテナは、アクティブ式フェーズド・アレイ・アンテナである。用語アクティブを用いているのは、フェーズド・アレイ・アンテナが機械的にではなく電子的に配向され、また各放射器に対するT/Rモジュールを用いて配向されていることを強調するためである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、高品質ビデオ・サービス、高速データ・サービス、ボイス・オーバーIP(VOIP)、またはインターネット電話通信用のフェーズド・アレイ・アンテナに関する。本発明のいくつかの実施形態の一態様は、移相注入発振器(PSIO)と以下で呼ばれる新しい装置または回路に関する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)と以下で呼ばれる新しい装置または回路に関する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、複数のPSIOまたは複数のPSIPPOを備えるフェーズド・アレイ・アンテナ・システムに関する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、低コストまたは安価なフェーズド・アレイ・アンテナに関する。本発明の例示的な実施形態において、複数のPSIPPOを用いるフェーズド・アレイ・アンテナは、従来の移相回路に基づく従来の技術のT/Rモジュールを用いた従来のフェーズド・アレイ・アンテナシステムとほぼ同じかまたはより良好な性能(例えば、より高効率)を達成する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、複数のPSIPPOを用いることで方位角または仰角のビーム配向を可能とするフェーズド・アレイ・アンテナに関する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様は、複数のPSIPPOを用いることで細いビームを生成するフェーズド・アレイ・アンテナに関する。
【0017】
本発明の例示的な実施形態において、細いビームによって、従来技術に基づく従来のアンテナよりも受信可能範囲を広くするかまたは電磁妨害を小さくすることが可能になる。これによって、データ・スループットを著しく増加させること、または無線ネットワーク、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Wi-Max、および他の無線ネットワークの同時ユーザの数を増加させることが可能になる。
【0018】
本発明の例示的な実施形態によれば、反射型増幅器と、少なくとも1つの可変コンデンサと少なくとも1つの共振器とを備える帯域阻止フィルタと、を備える発振器が提供される。ここで、前記帯域阻止フィルタは前記反射型増幅器に接続される。本発明の例示的な実施形態において、帯域阻止フィルタは2ポート帯域阻止フィルタである。本発明の例示的な実施形態において、入力基準信号が発振器に注入される。本発明の例示的な実施形態において、発振器の出力信号が同期される。本発明の例示的な実施形態において、発振器が電圧制御される。
【0019】
本発明の例示的な実施形態によれば、電力分配器と、時間遅延ユニットと、帯域阻止フィルタと、少なくとも2つの反射型増幅器と、電力合成器と、を備える発振器が提供される。本発明の例示的な実施形態において、帯域阻止フィルタは、共振器を形成する少なくとも2つの可変コンデンサおよび少なくとも2つのインダクタを備える。本発明の例示的な実施形態において、可変コンデンサは、DSPユニットによって生成される信号によって電圧制御される。
【0020】
本発明の例示的な実施形態によれば、受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配するように動作する電力分配器であって、第2の部分は第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている、電力分配器と、第1および第2の部分を受信して出力信号を生成するプッシュ・プッシュ発振器と、を備え、プッシュ・プッシュ発振器は、第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成された帯域阻止フィルタを備える移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器も提供される。本発明の例示的な実施形態において、電力分配器はゼロ度電力分配器である。本発明の例示的な実施形態において、電力分配器はウィルキンソン型電力分配器である。本発明の例示的な実施形態において、生成された出力信号は、受信した基準信号とほぼ同じ安定性特性を有する。本発明の例示的な実施形態において、生成された出力信号は、受信した基準信号とほぼ同じノイズ特性を有する。本発明の例示的な実施形態において、所定の量の遅延時間は、基準信号の周期の約半分である。本発明の例示的な実施形態において、所定の量の遅延時間は、基準信号の周期の約半分の奇数倍である。本発明の例示的な実施形態において、生成された出力信号は、受信した基準信号と同じ周波数およびほぼ同じノイズ特性を有する。本発明の例示的な実施形態において、生成された出力信号は、受信した基準信号とほぼ同じ安定性特性を有する。本発明の例示的な実施形態において、受信された基準信号に対する出力信号の位相シフトは、約−100度〜約+100度の範囲内である。本発明の例示的な実施形態において、帯域阻止フィルタは少なくとも2つの可変コンデンサを備える。本発明の例示的な実施形態において、可変コンデンサは、帯域阻止フィルタの共振周波数を変更するために使用される。
【0021】
本発明の例示的な実施形態によれば、注入同期プッシュ・プッシュ発振器を位相シフトするための方法であって、受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配する工程であって、第2の部分が第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている工程と、第1および第2の部分をプッシュ・プッシュ発振器によって受信する工程と、出力信号をプッシュ・プッシュ発振器によって生成する工程と、を含み、プッシュ・プッシュ発振器は、第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成される、方法も提供される。本発明の例示的な実施形態において、第2の部分が第1の部分に対して遅延される所定の量の遅延時間は、基準信号の周期の約半分である。本発明の例示的な実施形態において、第2の部分が第1の部分に対して遅延される所定の量の遅延時間は、基準信号の周期の約半分の奇数倍である。
【0022】
本発明の例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのレベルの移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器と、少なくとも1つのレベルの移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器によって後に取り扱われる電力のサンプリング部分を受信する受信機能と、を備えるフェーズド・アレイ・アンテナ送信機/受信機モジュールも提供される。
【0023】
本発明の例示的な実施形態によれば、注入同期プッシュ・プッシュ発振器を位相シフトするための方法であって、位相を有する第1の信号を受信する工程と、第1の信号を分配して、第1の信号の第1の部分を帯域阻止フィルタに注入し、第1の信号の第2の部分を時間遅延ユニットに注入する工程と、第1の信号の第1または第2の部分の共振周波数を変更する工程と、第1の信号の第1の部分および第2の部分を、帯域阻止フィルタと少なくとも2つの反射型増幅器との間で発振させる工程と、少なくとも2つの反射型増幅器から得られる第1の信号の第1および第2の部分を合成する工程と、合成信号を出力する工程と、を含む方法も提供される。本発明の例示的な実施形態において、第1の信号は、基準信号または注入同期プッシュ・プッシュ発振器の以前の位相シフトから得られる信号である。本発明の例示的な実施形態において、合成信号は、注入同期プッシュ・プッシュ発振器の別の位相シフトへまたは放射器へ出力される。本発明の例示的な実施形態において、合成信号は、第1の信号の約2倍の周波数および2倍の位相シフトを有する。本発明の例示的な実施形態において、時間遅延ユニットは、第1の信号の周期の約半分の遅延時間を形成する。
【0024】
本発明の例示的な実施形態によれば、方位角および仰角において配向可能なアンテナ・ビームを有するフェーズド・アレイ・アンテナであって、複数の放射器、増幅器、ミキサ、サンプリング・カプラ、および位相シフタ注入同期発振器を備え、前記位相シフタ注入同期発振器は仰角および方位角方向でのアンテナ・ビーム配向用であるフェーズド・アレイ・アンテナも提供される。本発明の例示的な実施形態において、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器はそれぞれ、受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配するように動作する電力分配器であって、第2の部分は第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている、電力分配器と、第1および第2の部分を受信して出力信号を生成するプッシュ・プッシュ発振器と、を備え、プッシュ・プッシュ発振器は、第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成された帯域阻止フィルタを備える。本発明の例示的な実施形態において、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第1の部分は第1の程度位相シフトされ、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第2の部分は第2の程度位相シフトされ、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第3の部分は第3の程度位相シフトされ、前記第1の程度は前記第2の程度に相関し、前記第2の程度は前記第3の程度に相関している。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは無線通信デバイスとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは無線アクセス・ポイントとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは衛星モバイル・テレビ・システムとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは人工衛星アンテナとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは、データ・スイッチング・デバイスに接続されたアンテナとともに使用される。本発明の例示的な実施形態において、フェーズド・アレイ・アンテナは、データ送受信デバイスに接続されたアンテナとともに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】当該技術分野で知られる多電力分配器および単純なフェーズド・アレイ・アンテナを備えるシステムを示す概略ブロック図。
【図2】本発明の例示的な一実施形態による移相注入発振器(PSIO)を示す概略図。
【図3】本発明の例示的な一実施形態による帯域阻止フィルタ(BRF)を示す概略図。
【図4】本発明の例示的な実施形態によるPSIOの挙動を示す非限定的な例を示す図。
【図5】本発明の例示的な実施形態によるPSIOの挙動を示す非限定的な例の示す図。
【図6】本発明の例示的な一実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)を示す概略ブロック図。
【図7】本発明の例示的な一実施形態によるBRFを示す概略図。
【図8A】本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)の波形挙動の非限定的な例を示す図。
【図8B】本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)の波形挙動の非限定的な例を示す図。
【図8C】本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)の波形挙動の非限定的な例を示す図。
【図8D】本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)の波形挙動の非限定的な例を示す図。
【図9】本発明の例示的な一実施形態によるアンテナ・ビームを方位角および仰角において配向することが可能なフェーズド・アレイ・アンテナを示す図。
【図10】本発明の例示的な一実施形態による無線ネットワーク・システムを示す図。
【図11】本発明の例示的な一実施形態による衛星モバイル・テレビ・システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施形態の説明とともに図を参照して、本発明の例示的で非限定的な実施形態について説明する。図は一般的に一定の比率では示しておらず、どのようなサイズも単に例示的であることが意図されており、必ずしも限定ではない。図において、複数の図に現れる同一の構造、要素、または部品は好ましくは、それらが現れるすべての図において同一または同様の符号を用いて示される。
【0027】
本発明では、新しい改善された移相注入発振器、移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器、およびフェーズド・アレイ・アンテナ(PAA)について説明する。本発明の例示的な実施形態によるフェーズド・アレイ・アンテナは低コストであるため、種々の商業用途、例えば、無線通信または衛星モバイル・テレビにおいて用いることができる。本発明のフェーズド・アレイ・アンテナは、従来技術のフェーズド・アレイ・アンテナと比べて著しい向上および改善を提供することが、明細書および図から示されるであろう。
【0028】
本発明によるフェーズド・アレイ・アンテナは、複数の位相シフト要素および他の電子部品を備える。従来の位相シフタは高価な電子部品であるか、または高いRF損失の影響を受ける。コストおよびRF損失の双方は、従来のT/Rモジュールまたは従来の位相シフタを用いた従来のフェーズド・アレイ・アンテナの非常に高いコストの一因である。
【0029】
本発明の例示的な一実施形態において、位相シフタ(例えば、図1の112、114、116、または118)は、移相注入発振器(PSIO)または移相注入プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)である。それらの双方は本発明の新しい新規な電子デバイスであり、以下に説明する。最初にPSIOについて説明し、そしてPSIPPOについて説明する。PSIPPOはPSIOの改善と考えることができる。PSIOまたはPSIPPOは、図1に示す構造またはアーキテクチャとともに用いることができるが、本発明では、図1に示したアンテナおよび従来技術の他のアンテナに比べて種々の優位性を有するフェーズド・アレイ・アンテナの新しい分散構造またはアーキテクチャを開示する。
【0030】
図2に、本発明の例示的な実施形態による回路300(本明細書においてPSIOと言う)の概略図を示す。図2のPSIOは、帯域阻止フィルタ(BRF)330に接続された反射型増幅器340を備える。BRFは、バラクタ・ダイオードを備えており、そのバイアス電圧は、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)390によって制御されている。BRF330は2つのポート332、333を有している。
【0031】
図3は、本発明の例示的な実施形態によるBRF330の概略図350である。BRF330は、少なくとも1つの可変コンデンサ352と絶縁変圧器に埋め込まれた少なくとも1つのインダクタ304とを備えている。PSIOの帯域阻止フィルタによる共振を起こすために、インダクタ304は可変コンデンサ352とともに共振することができる。部材番号338は接地を示している。図3の可変コンデンサ352は、DSP390(DSP390は図3では示さず)によって生成される信号380によって電圧制御される。
【0032】
本発明の例示的な一実施形態において、図2の信号301がPSIO300に注入されて、PSIO300の出力信号341が信号301に同期されるようになっている。信号341の同期とは、信号341が同期して、かつ信号301と同じ周波数およびほぼ同じ基本スペクトル純度を有することを意味する。図4、5を共に参照することにより、図2のPSIO300の挙動がより良く理解されるであろう。図4、5は、PSIO300の挙動を示す特定の非限定的な一例である。PSIO300は、入力RF信号301を受信して信号341を出力する。信号341は、入力基準信号301と同じ周波数およびほぼ同じ基本スペクトル純度を有する。波形401、401Bは、可変コンデンサ352の2つの異なる電圧V1およびV2に対する信号301の波形図である。同様に、波形441、441Bは、2つの異なる電圧V1およびV2に対する信号341の波形を示している。信号441および441Bは異なる位相を有することが分かる。
【0033】
波形401、431、441は、PSIOの特定の場所における時間領域の電圧を表わしており、可変コンデンサ352の電圧V1に対応している。波形401B、431B、441Bは、PSIOの特定の場所における時間ドメイン電圧を表わしており、可変コンデンサ352での電圧V2に対応している。波形401は301に対応し、波形431は331に対応し、波形441は341に対応することに留意されたい。
【0034】
本発明の例示的または好ましい一実施形態において、BRF330の共振周波数を変更するためにBRF300の可変コンデンサ352が使用され、そして可変コンデンサはDSP390によって制御される。
【0035】
図6は、本発明の例示的な実施形態による移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器(PSIPPO)を示す概略ブロック図600である。本発明の例示的な一実施形態において、PSIPPOは、電力分配器610、時間遅延ユニット620、帯域阻止フィルタ(BRF)630、少なくとも2つの反射型増幅器640および650、電力合成器660を備える。
【0036】
図7は、本発明の例示的な実施形態による図6のBRF630を示す概略図である。BRF730は、2つの絶縁変圧器に埋め込まれた少なくとも2つのインダクタ734、735を備える。これらは、可変コンデンサ722、723とともに共振することができる。部材番号738は接地を示している。可変コンデンサ722、723は、図2、3に示すDSP390によって生成される信号380によって電圧制御される。
【0037】
図8A、8B、8C、8Dを共に参照することにより、図6のPSIPPO600の挙動がより良く理解されるであろう。PSIPPO600は、特定の位相を有する信号601を受信して、入力信号601と同じまたは異なる位相を有する信号661を出力する。
【0038】
本発明の例示的な一実施形態において、信号601は基準信号または以前のPSIPPOからの信号であり、信号661は別のPSIPPOまたは放射器に出力される。
図8A、8Bにおける波形801、801Bは、2つの異なる電圧V1およびV2のそれぞれに対する入力基準信号601の波形図であり、図8B、8Dにおける波形861、861Bは、2つの異なる電圧V1およびV2に対する信号661の波形図であり、これらは特定の非限定的な一例におけるものである。出力信号661は、入力基準信号601の2倍の周波数および2倍の位相角度を有する。出力信号661は入力基準信号601の2倍の周波数および約2倍の位相角度を有してもよいことが、当業者にとって理解されるであろう。
【0039】
電力分配器610は信号601を受信して、第1の部分602(図8A、8Cの波形802、802Bによって示される)および第2の部分621(図8A、8Cの波形821、821Bによって示される)を、BRF630に注入する。ここで、第2の部分621は、時間遅延ユニット620を用いることによって得られる。時間遅延ユニット620は、基準信号601の周期の約半分の遅延時間を生成する。本発明の別の例示的な一実施形態において、遅延時間は予め決められている。本発明の代替的な例示的実施形態において、遅延時間は、基準信号の周期の約半分の奇数倍である。BRF630に入力される信号602および621は、同一の出力レベルを有するが、反対の位相を有する。BRF630に入力される信号602および621は、ほぼ同じ出力レベルを有してもよいことが、当業者には理解されるであろう。
【0040】
BRF630は、BRP630の可変コンデンサ622、623のバイアス電圧が値V1を有するときに、波形831、832によってそれぞれ示される信号631、632を出力する。BRF630は、BRF630の可変コンデンサ622、623のバイアス電圧が値V2を有するときに、波形831B、832Bによってそれぞれ示される信号631、632を出力する。本発明の別の例示的な一実施形態において、受信した基準信号に対する出力信号の位相シフトは、約−100度〜約+100度の範囲内である。反射型増幅器640および650は、対応して、信号641および651を出力する。信号641および651は合成器661に供給される。合成器661から信号661が出力される。信号641、651は、BRF630の可変コンデンサ622、623のバイアス電圧が値V1を有するときに、波形841、851によってそれぞれ表わされる。信号641、651は、BRF630の可変コンデンサ622、623のバイアス電圧が値V2を有するときに、波形841B、851Bによってそれぞれ表わされる。
【0041】
図8A、8B、8C、8Dから、波形861、861Bによって表わされる信号661の周波数は信号601の2倍の周波数を有することに留意されたい。さらに、バイアス電圧V1に対応する波形861の位相は、バイアス電圧V2に対応する波形861Bの位相とは異なっている。
【0042】
図9は、本発明の例示的な一実施形態によるアンテナ・ビームを方位角および仰角において配向することができるフェーズド・アレイ・アンテナを示す。図9の例示的なフェーズド・アレイ・アンテナは、4つの基本ブロック502、504、506、508を有している。当業者であれば容易に理解するように、フェーズド・アレイ・アンテナの構成は複数の分散された基本ブロックから作ることができ、また本例は、本発明の簡略かつ明瞭な説明を与える便宜上示したものである。図9において、部材番号541、542、543、544、545、546、547、548は放射器を表し、部材番号571、572、573、574、575、576、577、578は増幅器を表し、部材番号561、562、563、564、565、566、567、568はミキサを表し、部材番号551、552、553、554、555、556、557、558はサンプリング・カプラを表し、部材番号512、514、516、518はアンテナ・ビームを仰角方向において配向するために使用されるPSIPPOを表し、部材番号531、532、533、534、535、536、537、538はアンテナ・ビームを方位角方向において配向するために使用されるPSIPPOを表している。本発明の例示的な一実施形態において、PSIPPO531、533、535、537は、角度β1、β3、β5、β7それぞれ位相シフトされており、PSIPPO532、534、536、538は、それぞれ角度β2、β4、β6、β8を位相シフトされており、PSIPPO512、514、516、518は、それぞれ角度α1、α2、α3、α4を位相シフトされている。特定の一例において、角度β1=β3=β5=β7=100度、角度β2=β4=β6=β8=0度、および角度α1=−150度、角度α2=−50度、角度α3=+50度、角度α4=+150度である。他の角度は、前述の例から容易に理解されるであろう。
【0043】
図9で説明したシステムは、ビームを仰角および方位角において配向することができる簡単なフェーズド・アレイ・アンテナの一例である。ブロック502を参照して、PSIPPOの分散ネットワークによって生成される信号の目的は、変調信号をアップ・コンバートするために適切なRFポンプをミキサ561、562に提供することである。ミキサの符号中に示す矢印が示す通り、変調信号がミキサに入力される。サンプリング・コンデンサ551、552の目的は、受信信号をダウン・コンバートするために適切なポンプを受信機(図示せず)のダウン・コンバータに提供することである。
【0044】
また、図5はPSSIO(例えば、512、514、516、518)が複数の放射器に影響するという意味で、分散したフェーズド・アレイ・アンテナ・アーキテクチャを示す。一方、非分散アーキテクチャ(例えば、図1に示したもの)では、T/Rモジュールにおける位相シフタ(例えば、112、114、116、または118)は1つの放射器にのみ影響する。
【0045】
図10は、本発明の例示的な一実施形態による無線ネットワーク・システム250を示す。システム250によれば、向上かつ改善された無線通信ネットワークが開示されている。システム250は、複数の無線アクセス・ポイント252、254を備えており、それぞれ信号260、262、264、266、268を送受信するフェーズド・アレイ・アンテナ256、258を用いている。信号260、262、264、266の一部は、複数の無線デバイス(例えば、パーソナル・コンピュータ270、272、274、および携帯端末278)間の通信のために使用される。無線デバイスは、アクセス・ポイント252を用いることによって第1のネットワーク280にアクセスすることができ、その結果、他の遠隔コンピュータ284または他の遠隔の携帯機器と通信することができる。これらは、携帯端末および無線通信デバイス(無線およびネットワーク電話を含む)を含んでもよい。この例示的な図において、第1のネットワーク280および第2のネットワーク282は、強固な通信線を介して接続されてはいない。本発明の256、258のフェーズド・アレイ・アンテナを用いるアクセス・ポイント252、254は通信範囲内にあり、したがって第1および第2のネットワーク282間の橋渡しをすることができる。Wi-Fi(登録商標)またはWi-Max技術を利用する広帯域アクセス・ポイント256、258を用いることによって、遠隔コンピュータ284、286間の通信を可能にすることを補助することができる。本発明のフェーズド・アレイ・アンテナを有する無線アクセス・ポイント252、254を用いることによって、本発明により示される新しい改善されたフェーズド・アレイ・アンテナを用いる結果として、各無線アクセス・ポイントにアクセスして利用することができるユーザの数を著しく増加することが可能となる。したがって、複数のPSIPPO(図示しない)を有するフェーズド・アレイ・アンテナ252、254を用いることにより、現在のところ利用可能ではないサービスを提供することが可能になるであろう。例えば、ネットワーク電話の利用、テレビ電話呼び出し、著しいデータ・ダウンロードおよびアップロード機能、ならびに他の任意のサービスとして、付加的な帯域幅と、はるかに多い数のユーザまたは加入者を、より少ない数のアクセス・ポイントを用いて取り扱う能力とを必要とするサービスである。
【0046】
図11に、本発明の例示的な実施形態による衛星携帯テレビ・システム200を示す。人工衛星202から信号204が送信される。フェーズド・アレイ・アンテナ206が、車両210の上空から見える屋根または他の場所に配置されており、信号を受信して、対応する信号を車両210の内部に配置されたテレビ受像機(TV)に送信する。当業者であれば理解するように、前述のシステムは例示的なものであり、本発明の新しい改善されたフェーズド・アレイ・アンテナに対する多くの利用可能な応用例のいくつかを説明するのに役立つ。本発明の例示的な実施形態によれば、フェーズド・アレイ・アンテナにおいて複数のPSIPPOが使用され、PSIPPOが本発明の特定の典型的なアーキテクチャにおいて組織化されれば、結果として生じるフェーズド・アレイ・アンテナは優位であり、例えば、コストが低くなるかまたは消費電力が小さくなる。さらに、本発明のフェーズド・アレイ・アンテナを、人工衛星アンテナ、データ交換またはスイッチング・デバイスによって使用されるアンテナなどを含むような任意のデータ送受信デバイスに対して利用できることが理解される。
【0047】
本発明を、その実施形態の詳細な説明を用いて説明してきたが、詳細な説明は非限定的なものであって、一例として提供されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。一実施形態に対して記載した特徴または工程を他の実施形態とともに用いても良いこと、また特定の図に示し、または実施形態の1つに対して記載したすべての特徴または工程が、本発明のすべての実施形態に備わっているわけではないことを理解されたい。前述した実施形態のいくつかにおいて、発明者が意図する最良の実施形態が記載されている場合があり、したがって構造、作用、または構造および作用の詳細として、本発明にとって本質的ではない場合があり例として記載されるものが含まれることに留意されたい。
【0048】
ここで説明した構造および作用は、同じ機能を行なう均等物によって、たとえその構造または作用が異なっていたとしても交換可能であることは、当該技術分野で知られている。したがって、特許請求の範囲で用いた要素および限定のみによって、本発明の範囲は限定される。さらに、用語「備える」、「含む」、「有する」およびそれらの活用形は、特許請求の範囲で用いた場合、「含むがこれらに限定されない」を意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)反射型増幅器と、
(b)少なくとも1つの可変コンデンサおよび少なくとも1つの共振器を備える帯域阻止フィルタと、を備え、
前記帯域阻止フィルタは前記反射型増幅器に接続される発振器。
【請求項2】
前記帯域阻止フィルタは2ポート帯域阻止フィルタである請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
入力基準信号が前記発振器に注入される請求項1に記載の発振器。
【請求項4】
前記発振器の出力信号が同期される請求項1に記載の発振器。
【請求項5】
前記発振器が電圧制御される請求項1に記載の発振器。
【請求項6】
電力分配器と、
時間遅延ユニットと、
帯域阻止フィルタと、
少なくとも2つの反射型増幅器と、
電力合成器と、を備える発振器。
【請求項7】
前記帯域阻止フィルタは、共振器を形成する少なくとも2つの可変コンデンサおよび少なくとも2つのインダクタを備える請求項6に記載の発振器。
【請求項8】
前記可変コンデンサは、DSPユニットによって生成される信号によって電圧制御される請求項7に記載の発振器。
【請求項9】
(a)受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配するように動作する電力分配器であって、前記第2の部分は前記第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている、電力分配器と、
(b)前記第1および第2の部分を受信して出力信号を生成するプッシュ・プッシュ発振器と、を備え、
前記プッシュ・プッシュ発振器は、前記第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が前記基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成された帯域阻止フィルタを備える移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項10】
前記電力分配器はゼロ度電力分配器である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項11】
前記電力分配器はウィルキンソン型電力分配器である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項12】
前記生成された出力信号は、前記受信した基準信号とほぼ同じ安定性特性を有する請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項13】
前記生成された出力信号は、前記受信した基準信号とほぼ同じノイズ特性を有する請求項12に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項14】
前記所定の量の遅延時間は、前記基準信号の周期の約半分である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項15】
前記所定の量の遅延時間は、前記基準信号の周期の約半分の奇数倍である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項16】
前記生成された出力信号は、前記受信した基準信号と同じ周波数およびほぼ同じノイズ特性を有する請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項17】
前記生成された出力信号は、前記受信した基準信号とほぼ同じ安定性特性を有する請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項18】
前記受信した基準信号に対する前記出力信号の位相シフトは、約−100度〜約+100度の範囲内である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項19】
前記帯域阻止フィルタは少なくとも2つの可変コンデンサを備える請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項20】
前記可変コンデンサは、前記帯域阻止フィルタの共振周波数を変更するために使用される請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項21】
注入同期プッシュ・プッシュ発振器を位相シフトするための方法であって、
(a)受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配する工程であって、前記第2の部分は前記第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている工程と、
(b)前記第1および第2の部分をプッシュ・プッシュ発振器によって受信する工程と、
(c)出力信号を前記プッシュ・プッシュ発振器によって生成する工程と、を備え、
前記プッシュ・プッシュ発振器は、前記第1または第2の部分の位相を変更することにより、前記出力信号が基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成される方法。
【請求項22】
前記第2の部分が前記第1の部分に対して遅延される前記所定の量の遅延時間は、前記基準信号の周期の約半分である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の部分が前記第1の部分に対して遅延される前記所定の量の遅延時間は、前記基準信号の周期の約半分の奇数倍である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
(a)少なくとも1つのレベルの請求項1に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器と、
(b)前記少なくとも1つのレベルの移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器によって後に取り扱われる電力のサンプリング部分を受信する受信機能と、を備える送信機/受信機モジュール。
【請求項25】
注入同期プッシュ・プッシュ発振器を位相シフトするための方法であって、
位相を有する第1の信号を受信する工程と、
前記第1の信号を分配して、前記第1の信号の第1の部分を帯域阻止フィルタに注入するとともに、前記第1の信号の第2の部分を時間遅延ユニットに注入する工程と、
前記第1の信号の前記第1または第2の部分の共振周波数を変更する工程と、
前記第1の信号の前記第1の部分および第2の部分を、前記帯域阻止フィルタと少なくとも2つの反射型増幅器との間で発振させる工程と、
前記少なくとも2つの反射型増幅器から得られる前記第1の信号の前記第1および第2の部分を合成する工程と、
前記合成信号を出力する工程と、を備える方法。
【請求項26】
前記第1の信号は、基準信号または注入同期プッシュ・プッシュ発振器の以前の位相シフトから得られる信号である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記合成信号は、注入同期プッシュ・プッシュ発振器の別の位相シフトへまたは放射器へ出力される請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記合成信号は、前記第1の信号の約2倍の周波数および2倍の位相シフトを有する請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記時間遅延ユニットは、前記第1の信号の周期の約半分の遅延時間を生成する請求項25に記載の方法。
【請求項30】
方位角および仰角において配向可能なアンテナ・ビームを有するフェーズド・アレイ・アンテナであって、
複数の放射器、増幅器、ミキサ、サンプリング・カプラ、および位相シフタ注入同期発振器を備え、前記位相シフタ注入同期発振器は仰角および方位角方向でのアンテナ・ビーム配向用であるフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項31】
前記移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器はそれぞれ、
(a)受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配するように動作する電力分配器であって、前記第2の部分は前記第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている、電力分配器と、
(b)前記第1および第2の部分を受信して出力信号を生成するプッシュ・プッシュ発振器と、を備え、
前記プッシュ・プッシュ発振器は、前記第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が前記基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成された帯域阻止フィルタを備える請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項32】
前記移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第1の部分は第1の程度位相シフトされ、前記移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第2の部分は第2の程度位相シフトされ、前記移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第3の部分は第3の程度位相シフトされ、前記第1の程度は前記第2の程度に相関し、前記第2の程度は前記第3の程度に相関している請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項33】
無線通信デバイスで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項34】
無線アクセス・ポイントで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項35】
衛星モバイル・テレビ・システムで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項36】
人工衛星アンテナで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項37】
データ・スイッチング・デバイスに接続されたアンテナで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項38】
データ送受信デバイスに接続されたアンテナで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項1】
(a)反射型増幅器と、
(b)少なくとも1つの可変コンデンサおよび少なくとも1つの共振器を備える帯域阻止フィルタと、を備え、
前記帯域阻止フィルタは前記反射型増幅器に接続される発振器。
【請求項2】
前記帯域阻止フィルタは2ポート帯域阻止フィルタである請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
入力基準信号が前記発振器に注入される請求項1に記載の発振器。
【請求項4】
前記発振器の出力信号が同期される請求項1に記載の発振器。
【請求項5】
前記発振器が電圧制御される請求項1に記載の発振器。
【請求項6】
電力分配器と、
時間遅延ユニットと、
帯域阻止フィルタと、
少なくとも2つの反射型増幅器と、
電力合成器と、を備える発振器。
【請求項7】
前記帯域阻止フィルタは、共振器を形成する少なくとも2つの可変コンデンサおよび少なくとも2つのインダクタを備える請求項6に記載の発振器。
【請求項8】
前記可変コンデンサは、DSPユニットによって生成される信号によって電圧制御される請求項7に記載の発振器。
【請求項9】
(a)受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配するように動作する電力分配器であって、前記第2の部分は前記第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている、電力分配器と、
(b)前記第1および第2の部分を受信して出力信号を生成するプッシュ・プッシュ発振器と、を備え、
前記プッシュ・プッシュ発振器は、前記第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が前記基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成された帯域阻止フィルタを備える移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項10】
前記電力分配器はゼロ度電力分配器である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項11】
前記電力分配器はウィルキンソン型電力分配器である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項12】
前記生成された出力信号は、前記受信した基準信号とほぼ同じ安定性特性を有する請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項13】
前記生成された出力信号は、前記受信した基準信号とほぼ同じノイズ特性を有する請求項12に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項14】
前記所定の量の遅延時間は、前記基準信号の周期の約半分である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項15】
前記所定の量の遅延時間は、前記基準信号の周期の約半分の奇数倍である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項16】
前記生成された出力信号は、前記受信した基準信号と同じ周波数およびほぼ同じノイズ特性を有する請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項17】
前記生成された出力信号は、前記受信した基準信号とほぼ同じ安定性特性を有する請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項18】
前記受信した基準信号に対する前記出力信号の位相シフトは、約−100度〜約+100度の範囲内である請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項19】
前記帯域阻止フィルタは少なくとも2つの可変コンデンサを備える請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項20】
前記可変コンデンサは、前記帯域阻止フィルタの共振周波数を変更するために使用される請求項9に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器。
【請求項21】
注入同期プッシュ・プッシュ発振器を位相シフトするための方法であって、
(a)受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配する工程であって、前記第2の部分は前記第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている工程と、
(b)前記第1および第2の部分をプッシュ・プッシュ発振器によって受信する工程と、
(c)出力信号を前記プッシュ・プッシュ発振器によって生成する工程と、を備え、
前記プッシュ・プッシュ発振器は、前記第1または第2の部分の位相を変更することにより、前記出力信号が基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成される方法。
【請求項22】
前記第2の部分が前記第1の部分に対して遅延される前記所定の量の遅延時間は、前記基準信号の周期の約半分である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の部分が前記第1の部分に対して遅延される前記所定の量の遅延時間は、前記基準信号の周期の約半分の奇数倍である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
(a)少なくとも1つのレベルの請求項1に記載の移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器と、
(b)前記少なくとも1つのレベルの移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器によって後に取り扱われる電力のサンプリング部分を受信する受信機能と、を備える送信機/受信機モジュール。
【請求項25】
注入同期プッシュ・プッシュ発振器を位相シフトするための方法であって、
位相を有する第1の信号を受信する工程と、
前記第1の信号を分配して、前記第1の信号の第1の部分を帯域阻止フィルタに注入するとともに、前記第1の信号の第2の部分を時間遅延ユニットに注入する工程と、
前記第1の信号の前記第1または第2の部分の共振周波数を変更する工程と、
前記第1の信号の前記第1の部分および第2の部分を、前記帯域阻止フィルタと少なくとも2つの反射型増幅器との間で発振させる工程と、
前記少なくとも2つの反射型増幅器から得られる前記第1の信号の前記第1および第2の部分を合成する工程と、
前記合成信号を出力する工程と、を備える方法。
【請求項26】
前記第1の信号は、基準信号または注入同期プッシュ・プッシュ発振器の以前の位相シフトから得られる信号である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記合成信号は、注入同期プッシュ・プッシュ発振器の別の位相シフトへまたは放射器へ出力される請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記合成信号は、前記第1の信号の約2倍の周波数および2倍の位相シフトを有する請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記時間遅延ユニットは、前記第1の信号の周期の約半分の遅延時間を生成する請求項25に記載の方法。
【請求項30】
方位角および仰角において配向可能なアンテナ・ビームを有するフェーズド・アレイ・アンテナであって、
複数の放射器、増幅器、ミキサ、サンプリング・カプラ、および位相シフタ注入同期発振器を備え、前記位相シフタ注入同期発振器は仰角および方位角方向でのアンテナ・ビーム配向用であるフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項31】
前記移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器はそれぞれ、
(a)受信した基準信号を第1の部分および第2の部分に分配するように動作する電力分配器であって、前記第2の部分は前記第1の部分に対して所定の量の遅延時間を遅延されている、電力分配器と、
(b)前記第1および第2の部分を受信して出力信号を生成するプッシュ・プッシュ発振器と、を備え、
前記プッシュ・プッシュ発振器は、前記第1または第2の部分の位相を変更することにより、出力信号が前記基準信号の位相に対してシフトされた位相を有するように構成された帯域阻止フィルタを備える請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項32】
前記移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第1の部分は第1の程度位相シフトされ、前記移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第2の部分は第2の程度位相シフトされ、前記移相注入同期プッシュ・プッシュ発振器の第3の部分は第3の程度位相シフトされ、前記第1の程度は前記第2の程度に相関し、前記第2の程度は前記第3の程度に相関している請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項33】
無線通信デバイスで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項34】
無線アクセス・ポイントで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項35】
衛星モバイル・テレビ・システムで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項36】
人工衛星アンテナで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項37】
データ・スイッチング・デバイスに接続されたアンテナで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【請求項38】
データ送受信デバイスに接続されたアンテナで使用される請求項30に記載のフェーズド・アレイ・アンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−506484(P2010−506484A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531008(P2009−531008)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001144
【国際公開番号】WO2008/041222
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509093646)ビーム ネットワークス リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】BEAM NETWORKS LTD.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001144
【国際公開番号】WO2008/041222
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509093646)ビーム ネットワークス リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】BEAM NETWORKS LTD.
【Fターム(参考)】
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