説明

積層コンデンサ、積層コンデンサの実装構造及び積層コンデンサの製造方法

【課題】 等価直列抵抗の増大及び等価直列インダクタンスの低減を実現しつつ、実装方向を容易に識別可能な積層コンデンサ、積層コンデンサの実装構造及び積層コンデンサの製造方法を提供すること。
【解決手段】 積層コンデンサC1のコンデンサ素体10は、第1及び第2の主面101、102と、第1及び第2の主面の双方と隣り合う第1及び第2の側面103、104と、第1及び第2の主面の双方と隣り合う第3及び第4の側面105、106と、第1の主面と第1の側面とを連結する第1の稜部107と、第2の主面と第1の側面とを連結する第2の稜部108とを有する。第1及び第2の稜部107、108は何れも、第3及び第4の側面の対向方向に沿ったコンデンサ素体10の中心軸Axから離れる方向に凸に湾曲する曲率を有している。第1の稜部107は第2の稜部108よりも小さい曲率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサ、積層コンデンサの実装構造及び積層コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁体層と内部電極とが交互に積層されてなるコンデンサ素体と、コンデンサ素体の側面に形成され互いに電気的に絶縁された端子電極及び外部接続導体とを備えた積層コンデンサがある。
【0003】
このような積層コンデンサとして、例えば特許文献1に記載の積層コンデンサがある。この積層コンデンサは、4種の内部電極を有している。そのうち2種の内部電極は、端子電極及び外部接続導体の双方に接続されている。一方、他の2種の内部電極は、外部接続導体にのみ接続され、端子電極には接続されていない。特許文献1に記載の積層コンデンサでは、このように端子電極に直接接続されない内部電極を備えることで、等価直列抵抗を増大させている。
【特許文献1】特開2003−168621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、等価直列抵抗の増大及び等価直列インダクタンスの低減を実現しつつ、実装方向を容易に識別可能な積層コンデンサ、積層コンデンサの実装構造及び積層コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された積層コンデンサは、例えばICにおけるデカップリングコンデンサとして用いられる。ICの高速化・低電圧化が進む現状では、積層コンデンサにおけるESR(等価直列抵抗)の向上と、ESL(等価直列インダクタンス)の低減との双方を実現することが要求されている。
【0006】
積層コンデンサでは、その内部を流れる電流経路の長さを短くすることによって、流れる電流に起因して発生する磁界を低減することができる。そこで、本願発明者は、回路基板に形成されたランド電極等から端子電極に流れる電流の経路が短くなるよう、端子電極及び外部接続導体の双方に直接接続される内部電極を積層コンデンサの実装面近傍に配置する積層コンデンサに想到した。
【0007】
しかしながら、このような積層コンデンサでは、意図していた方向と異なる方向で実装してしまうと、ランド電極から端子電極を通って内部電極に至るまでの電流経路を長くしてしまうおそれがある。そこで、本願発明者は、等価直列抵抗を増大させた積層コンデンサにおいて、等価直列インダクタンスの低減が図られた実装方向を識別可能な積層コンデンサについて鋭意研究を重ねた。そして、本願発明者はその結果、本発明に想到したのである。
【0008】
そこで、上述の検討結果に基づき、本発明に係る積層コンデンサは、互いに対向する第1及び第2の主面と、第1及び第2の主面の双方と隣り合い且つ互いに対向する第1及び第2の側面と、第1及び第2の主面の双方と隣り合い且つ互いに対向する第3及び第4の側面と、第1の主面と第1の側面とを連結する第1の稜部と、第2の主面と第1の側面とを連結する第2の稜部とを有する、複数の絶縁体層が第1及び第2の主面の対向方向に積層されたコンデンサ素体と、複数の絶縁体層のうち少なくとも一層を間に挟んで対向するように、交互にコンデンサ素体内の第1の領域に配置された複数の第1及び第2の内部電極と、コンデンサ素体内の第2の領域に配置された、それぞれ少なくとも一層の第3及び第4の内部電極と、を備え、各第1の内部電極は、第2の内部電極と協働して静電容量を形成する第1の主電極部分と、該主電極部分を第1の外部接続導体に接続する第1の引き出し電極部分と、を有し、各第2の内部電極は、第1の内部電極と協働して静電容量を形成する第2の主電極部分と、該主電極部分を第2の外部接続導体に接続する第2の引き出し電極部分と、を有し、各第3の内部電極は、第3の主電極部分と、第3の主電極部分を第1の外部接続導体に接続する第3の引き出し電極部分と、該第3の主電極部分を第1の端子電極に接続する第4の引き出し電極部分と、を有し、各第4の内部電極は、第4の主電極部分と、第4の主電極部分を第2の外部接続導体に接続する第5の引き出し電極部分と、第4の主電極部分を第2の端子電極に接続する第6の引き出し電極部分と、を有し、第1及び第2の領域は複数の絶縁体層の積層方向に沿って併置されており、第2の領域は、積層方向において、第1の領域よりも第2の主面側に配置されており、第3及び第4の内部電極の総数は、第1及び第2の内部電極の総数よりも少なく、第1及び第2の稜部は何れも、第3及び第4の側面の対向方向に沿ったコンデンサ素体の中心軸から離れる方向に凸に湾曲するような曲率を有しており、第1の稜部の曲率は第2の稜部の曲率よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
上述の積層コンデンサは、外部接続導体のみに接続される第1及び第2の内部電極と外部接続導体及び端子電極の双方に接続される第3及び第4の内部電極とを備えるため、等価直列抵抗を増大させることができる。さらに、第3及び第4の内部電極の総数は、第1及び第2の内部電極の総数よりも少ないため、等価直列抵抗をさらに大きくすることができる。また、上述の積層コンデンサでは、第3及び第4の内部電極が配置された第2の領域は、積層方向において、第1及び第2の内部電極が配置された第1の領域よりも第2の主面側に配置されている。そのため、第2の主面を実装面として基板等に実装した場合、第1及び第2の端子電極を通過して第3及び第4の内部電極に至る電流経路の長さを短くすることができ、等価直列インダクタンスを小さくすることが可能となる。さらに、この積層コンデンサでは、第1の主面と第1の側面とを連結する第1の稜部の曲率が第2の主面と第1の側面とを連結する第2の稜部の曲率よりも小さい。そのため、稜部の曲率を目視で比べることで容易に第1の主面と第2の主面とを識別することができる。
【0010】
コンデンサ素体は、第1の主面と第2の側面とを連結する第3の稜部と、第2の主面と第2の側面とを連結する第4の稜部とをさらに備え、第3及び第4の稜部は何れも、第3及び第4の側面の対向方向に沿ったコンデンサ素体の中心軸から離れる方向に凸に湾曲するような曲率を有しており、第3の稜部の曲率は第4の稜部の曲率よりも小さいことが好ましい。この場合、より一層容易に第1の主面と第2の主面とを識別することができる。
【0011】
コンデンサ素体は、その頂点部及び稜部が曲率を有するように湾曲された直方体形状を呈し、第1及び第2の主面は、長方形状を呈し、第1及び第2の側面は、第1及び第2の主面の長辺方向に伸び、第3及び第4の側面は、第1及び第2の主面の短辺方向に伸びることが好ましい。この場合、第1及び第2の稜部は、長方形状の第1及び第2の主面の長辺方向に相当するので、曲率の差の識別が容易になる。
【0012】
コンデンサ素体内に配置されている第3及び第4の内部電極は、それぞれ一層のみであることが好ましい。この場合、等価直列抵抗をより一層増大することが可能となる。
【0013】
第1の外部接続導体は、コンデンサ素体の第1の側面に配置され、第2の外部接続導体は、コンデンサ素体の第2の側面に配置され、第1の端子電極は、コンデンサ素体の第3の側面に配置され、第2の端子電極は、コンデンサ素体の第4の側面に配置されていてもよい。
【0014】
第3の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅及び第4の引き出し電極部分の第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は何れも、第1の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、第5の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅及び第6の引き出し電極部分の第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は何れも、第2の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭いことが好ましい。このように、端子電極に接続される内部電極の引き出し電極部分を狭くすることで、等価直列抵抗をより一層増大することが可能となる。
【0015】
第3の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅及び第4の引き出し電極部分の第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は何れも、第1の主電極部分の第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、第1の主電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、且つ第1の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも広く、第5の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅及び第6の引き出し電極部分の第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は何れも、第2の主電極部分の第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、第2の主電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、且つ第2の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも広いことが好ましい。このように、端子電極に接続される内部電極の引き出し電極部分の幅を、外部接続導体にのみ接続される内部電極の主電極部分の幅より狭くすることで、等価直列抵抗をより一層増大することが可能となる。さらに、第3及び第4の内部電極の引き出し電極部分の幅を、第1及び第2の内部電極の引き出し電極部分の幅より広くすることで、引き出し電極がコンデンサ素体の表面に露出しない、いわゆるオープン不良の発生が抑制できる。
【0016】
第4の引き出し電極部分の第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は、第3の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅より狭く、第6の引き出し電極部分の第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は、第5の引き出し電極部分の第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭いことが好ましい。
【0017】
この場合、第3及び第4の内部電極において、端子電極接続用の引き出し電極部分の幅が、外部接続導体接続用の引き出し電極部分の幅よりも狭いため、等価直列抵抗をより一層増大することが可能となる。
【0018】
第1の領域において最も第2の領域側に配置された第1又は第2の内部電極と、第2の領域において最も第1の領域側に配置された第3又は第4の内部電極との間の間隔は、第1の領域における第1及び第2の内部電極の層間距離よりも大きいことが好ましい。この場合、第3及び第4の内部電極の端子電極接続用の引き出し電極が第2の主面近くに位置することになる。そのため、第2の主面を基板等に対向させて実装した場合、端子電極を通って第3及び第4の内部電極に流れ込むまでの電流の経路を短くすることができるため、等価直列インダクタンスをより一層低減することが可能になる。
【0019】
本発明に係る積層コンデンサの実装構造は、上記積層コンデンサと、少なくとも2つのランド電極及び配線が取り付けられた回路基板と、を備え、第2の主面が回路基板と対向し、積層コンデンサの第1及び第2の端子電極が、それぞれ少なくとも2つのランド電極の異なるランド電極に接続されることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る積層コンデンサの製造方法は、複数の絶縁体層と第1〜第4の内部電極とが積層されてなるコンデンサ素体と、コンデンサ素体の外表面に設けられ且つ第3の内部電極に接続された第1の端子電極と、コンデンサ素体の外表面に設けられ且つ第4の内部電極に接続された第2の端子電極と、コンデンサ素体の外表面に設けられ且つ第1及び第3の内部電極に接続された第1の外部接続導体と、コンデンサ素体の外表面に設けられ且つ第2及び第4の外部接続導体と、を備えた積層コンデンサの製造方法であって、複数の絶縁体層の一部に対応する複数のセラミックグリーンシートと第1及び第2の内部電極に対応する第1及び第2の内部電極パターンとが積層されてなる第1のグリーン領域と、複数の絶縁体層の一部に対応する複数のセラミックグリーンシートと第3及び第4の内部電極に対応する第3及び第4の内部電極パターンとが積層されてなる第2のグリーン領域と、を有するグリーン積層体を準備する準備工程と、グリーン積層体の第2のグリーン領域側を金型で固定し、グリーン積層体の第1のグリーン領域側からグリーン積層体をプレスするプレス工程と、グリーン積層体を切断し、焼成してコンデンサ素体を得る焼成工程と、コンデンサ素体の外表面に、第1及び第2の外部接続導体並びに第1及び第2の端子電極を形成する電極形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
上述の製造方法では、プレス工程において、グリーン積層体の第2のグリーン領域側を金型で固定し、第1のグリーン領域側からグリーン積層体をプレスしている。そのため、第3及び第4の内部電極に対応する第3及び第4の内部電極パターンの引き出し電極部分に相当する部分が、断線してしまうことが抑制される。また、プレス工程において、グリーン積層体の第2のグリーン領域側を金型で固定し、第1のグリーン領域側からグリーン積層体をプレスしていることから、グリーン積層体において第1のグリーン領域側が第2のグリーン領域側に比べてより一層周辺部で縮む。そのため、得られるコンデンサ素体の方向の識別が容易になる。
【0022】
プレス工程において、グリーン積層体を静水圧プレスすることが好ましい。この場合、グリーン積層体が均一に加圧されるため、グリーン積層体の周辺部が中央部に比べて一層縮み、得られるコンデンサ素体の方向の識別がより一層容易になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、等価直列抵抗の増大及び等価直列インダクタンスの低減を実現しつつ、実装方向を容易に識別可能な積層コンデンサ、積層コンデンサの実装構造及び積層コンデンサの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、好適な実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0025】
(第1実施形態)
図1〜図4に基づいて、第1実施形態に係る積層コンデンサC1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。図2は、第1実施形態に係る積層コンデンサの側面図である。図3(a)は、第1実施形態に係る積層コンデンサのIIIa−IIIa矢印断面図である。図3(b)は、第1実施形態に係る積層コンデンサのIIIb−IIIb矢印断面図である。図4は、第1実施形態に係る積層コンデンサが備えるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【0026】
積層コンデンサC1は、図1に示すように、その頂点部及び稜部が曲率を有するように湾曲された略直方体状をしたコンデンサ素体10と、コンデンサ素体10の外表面に配置された第1の端子電極1及び第2の端子電極2と、コンデンサ素体10の外表面に配置された第1の外部接続導体3及び第2の外部接続導体4とを備える。
【0027】
コンデンサ素体10は、相対向する略長方形状の第1の主面101及び第2の主面102と、相対向する第1の側面103及び第2の側面104と、相対向する第3の側面105及び第4の側面106とを含んでいる。第1及び第2の側面103、104は、第1及び第2の主面101、102間を連結するように第1及び第2の主面101、102の長辺方向に伸びている。第3及び第4の側面105、106は、第1及び第2の主面101、102間を連結するように第1及び第2の主面101、102の短辺方向に伸びている。
【0028】
第1及び第2の主面101、102、並びに第1〜第4の側面103〜106は、その頂点部が曲率を有するように湾曲された略長方形状を呈する。
【0029】
第1及び第2の側面103、104はそれぞれ、第1及び第2の主面101、102の双方と隣り合う。第3及び第4の側面105、106はそれぞれ、第1及び第2の主面101、102の双方と隣り合う。
【0030】
コンデンサ素体10は、第1の主面101と第1の側面103とを連結する第1の稜部107と、第2の主面102と第1の側面103とを連結する第2の稜部108とを有する。コンデンサ素体10はさらに、第1の主面101と第2の側面104とを連結する第3の稜部109と、第2の主面102と第2の側面104とを連結する第4の稜部110とを有する。
【0031】
第1の稜部107は、平面である第1の主面101の第1の側面103側の端縁から、平面である第1の側面103の第1の主面101側の端縁までの曲面をいう。第2の稜部108は、平面である第2の主面102の第1の側面103側の端縁から、平面である第1の側面103の第2の主面102側の端縁までの曲面をいう。第3の稜部109は、平面である第1の主面101の第2の側面104側の端縁から、平面である第2の側面104の第1の主面101側の端縁までの曲面をいう。第4の稜部110は、平面である第2の主面102の第2の側面104側の端縁から、平面である第2の側面104の第2の主面102側の端縁までの曲面をいう。
【0032】
第1〜第4の稜部107〜110は何れも、第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿ったコンデンサ素体10の中心軸Axから離れる方向に凸に湾曲するような曲率を有している。中心軸Axは、第3及び第4の側面105、106それぞれの中心を通る。
【0033】
図3(a)に示されているように、第1の稜部107の曲率は第2の稜部108の曲率よりも小さい。第3の稜部109の曲率は第4の稜部110の曲率よりも小さい。ここで、第1の稜部107の曲率とは、平面である第1の主面101の第1の側面103側の端縁から、平面である第1の側面103の第1の主面101側の端縁までの曲面の曲率の平均をいう。第2の稜部108の曲率とは、平面である第2の主面102の第1の側面103側の端縁から、平面である第1の側面103の第2の主面102側の端縁までの曲面の曲率の平均をいう。第3の稜部109の曲率とは、平面である第1の主面101の第2の側面104側の端縁から、平面である第2の側面104の第1の主面101側の端縁までの曲面の曲率の平均をいう。第4の稜部110の曲率とは、平面である第2の主面102の第2の側面104側の端縁から、平面である第2の側面104の第2の主面102側の端縁までの曲面の曲率の平均をいう。
【0034】
第1の端子電極1は、コンデンサ素体10の第3の側面105上に、第1及び第2の主面101、102の双方に跨るとともに第1及び第2の側面103、104の双方に跨るように配置されている。すなわち、第1の端子電極1は、第3の側面105全域を覆いつつ、第1及び第2の主面101、102並びに第1及び第2の側面103、104のすべてに配置される部分を有する。第2の端子電極2は、コンデンサ素体10の第4の側面106上に、第1及び第2の主面101、102の双方に跨るとともに第1及び第2の側面103、104の双方に跨るように配置されている。すなわち、第2の端子電極2は、第4の側面106全域を覆いつつ、第1及び第2の主面101、102並びに第1及び第2の側面103、104のすべてに配置される部分を有する。
【0035】
第1の外部接続導体3は、コンデンサ素体10の第1の側面103上に、第1の稜部107を通過して第1の主面101に跨るとともに、第2の稜部108を通過して第2の主面102に跨るように配置されている。第1の外部接続導体3は、第1の側面103の長手方向における略中心位置に配置されている。第2の外部接続導体4は、コンデンサ素体10の第2の側面104上に、第3の稜部109を通過して第1の主面101に跨るとともに、第4の稜部110を通過して第2の主面102に跨るように配置されている。第2の外部接続導体4は、第2の側面104の長手方向における略中心位置に配置されている。
【0036】
コンデンサ素体10は、図4に示されるように、第1及び第2の主面101、102の対向方向に沿って併置された第1の領域11と第2の領域12とを備える。第2の領域12は、第1及び第2の主面101、102の対向方向において、第1の領域11よりも第2の主面102側に配置されている。コンデンサ素体10は、複数の積層された絶縁体層21〜29を有し、誘電特性を有する。
【0037】
各絶縁体層21〜29は、第1及び第2の主面101、102に平行な方向に伸びており、第1及び第2の主面101、102の対向方向に積層されている。各絶縁体層21〜29は、例えば誘電体セラミックを含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。各絶縁体層21〜29は、は、例えば一枚のセラミックグリーンシートの焼結体から構成されていても、あるいは複数枚のセラミックグリーンシートの焼結体から構成されていてもよい。絶縁体層21、29は、例えば他の絶縁体層22〜28より厚くてもよく、その厚みは積層されたセラミックグリーンシートの枚数によってもあるいはセラミックグリーンシート自体の厚みによってもよい。実際の積層コンデンサC1では、各絶縁体層21〜29は、絶縁体層21〜29の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0038】
第1の領域11には、図4に示されるように、複数(本実施形態では7層)の絶縁体層21〜27と、複数(本実施形態では3層)の第1の内部電極31〜33と、複数(本実施形態では3層)の第2の内部電極41〜43とが配置されている。第1の内部電極31〜33と第2の内部電極41〜43とは、コンデンサ素体10の一部である一つの絶縁体層22〜26を間に挟んで絶縁体層21〜29の積層方向に対向するように交互に配置されている。第1及び第2の内部電極31〜33、41〜43は、導電性ペーストの焼結体から構成される。
【0039】
各第1の内部電極31〜33は、第1の主電極部分31a〜33aと、第1の引き出し電極部分31b〜33bとを含んでいる。第1の主電極部分31a〜33aは、長方形状を呈し、後述する第2の内部電極41〜43の主電極部分41a〜43aと協働して静電容量を形成する。第1の引き出し電極部分31b〜33bは、対応する第1の主電極部分31a〜33aから第1の側面103に引き出されるように伸び、第1の外部接続導体3に機械的かつ電気的に接続される。
【0040】
各第2の内部電極41〜43は、第2の主電極部分41a〜43aと、第2の引き出し電極部分41b〜43bとを含んでいる。第2の主電極部分41a〜43aは、長方形状を呈し、第1の内部電極31〜33の主電極部分31a〜33aと協働して静電容量を形成する。第2の引き出し電極部分41b〜43bは、対応する第2の主電極部分41a〜43aから第2の側面104に引き出されるように伸び、第2の外部接続導体4に機械的かつ電気的に接続される。
【0041】
第2の領域12には、図4に示されるように、複数(本実施形態では2層)の絶縁体層28、29と、本実施形態では1層の第3の内部電極51と、本実施形態では1層の第4の内部電極61とが配置されている。第3の内部電極51と第4の内部電極61とは、コンデンサ素体10の一部である1つの絶縁体層28を間に挟んで絶縁体層21〜29の積層方向に対向するように配置されている。第3及び第4の内部電極51、61は、導電性ペーストの焼結体から構成される。
【0042】
第3の内部電極51は、第3の主電極部分51aと、第3の引き出し電極部分51bと、第4の引き出し電極部分51cとを含んでいる。第3の主電極部分51aは、長方形状を呈し、第2の内部電極43の主電極部分43a及び後述する第4の内部電極61の主電極部分61aと協働して静電容量を形成する。第3の引き出し電極部分51bは、第3の主電極部分51aから第1の側面103に引き出されるように伸び、第1の外部接続導体3に機械的かつ電気的に接続される。第4の引き出し電極部分51cは、第3の主電極部分51aから第3の側面105に引き出されるように伸び、第1の端子電極1に機械的かつ電気的に接続される。
【0043】
第4の内部電極61は、第4の主電極部分61aと、第5の引き出し電極部分61bと、第6の引き出し電極部分61cとを含んでいる。第4の主電極部分61aは、長方形状を呈し、第5の内部電極51の主電極部分51aと協働して静電容量を形成する。第5の引き出し電極部分61bは、第4の主電極部分61aから第2の側面104に引き出されるように伸び、第2の外部接続導体4に機械的かつ電気的に接続される。第6の引き出し電極部分61cは、第4の主電極部分61aから第4の側面106に引き出されるように伸び、第2の端子電極2に機械的かつ電気的に接続される。
【0044】
第3及び第4の内部電極51、61の総数は2であって、第1及び第2の内部電極31〜33、41〜43の総数である6よりも少ない。
【0045】
次に、実施形態に係る積層コンデンサC1の製造方法について図5を参照して説明する。まず、図5(a)に示されるように、複数の絶縁体層(本実施形態では7層)21〜27に対応する複数のセラミックグリーンシートと第1及び第2の内部電極31〜33、41〜43に対応する第1及び第2の内部電極パターン131〜133、141〜143とが積層されてなる第1のグリーン領域G11と、複数の絶縁体層(本実施形態では2層)28、29に対応する複数のセラミックグリーンシートと第3及び第4の内部電極51、61に対応する第3及び第4の内部電極パターン151、161とが積層されてなる第2のグリーン領域G12と、を有するグリーン積層体G1を準備する(準備工程)。グリーン積層体G1は、複数の積層コンデンサのコンデンサ素体に対応するグリーン積層チップG10を含む。
【0046】
続いて、図5(b)に示されるように、準備工程において用意されたグリーン積層体G1の第2のグリーン領域G12側を下金型121で固定し、第1のグリーン領域G11側から上金型122を用いて、圧力F1でグリーン積層体G1をプレスする(プレス工程)。プレス工程では、さらに、図5(c)に示されるように、グリーン積層体G1を圧力F2で静水圧プレスする。プレス工程を経て、第1〜第4の内部電極パターン131〜133、141〜143、151、161が積層された各グリーン積層チップG10の中央部と、内部電極パターンの引き出し電極部分相当部分が積層された各グリーン積層チップG10の端部とでは、その縮み方が大きく異なる。すなわち、内部電極パターンの引き出し電極部分相当部分が積層された各グリーン積層チップG10の端部では、すべての内部電極の部分がそこに引き出されてはいないため、縮みが大きくなる。
【0047】
続いて、グリーン積層体G1を切断し、複数のグリーン積層チップG10を得る。そして、得られたグリーン積層チップG10を焼成してコンデンサ素体10を得る(焼成工程)。
【0048】
続いて、コンデンサ素体10の外表面に、第1及び第2の外部接続導体3,4並びに第1及び第2の端子電極1、2を形成する(電極形成工程)。
【0049】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る積層コンデンサC1を、2つの異極性のランド電極201、202及びランド電極201、202それぞれに接続された配線203、204が取り付けられた回路基板Sに実装する実装構造を説明する。図6は、積層コンデンサC1を回路基板Sに実装した実装構造の断面構成を説明するための図である。
【0050】
図6に示されるように、積層コンデンサC1は、その第2の主面102が回路基板Sと対向するように実装される。さらに、積層コンデンサC1は、第1及び第2の端子電極1、2がランド電極201、202にそれぞれ接続されるように実装される。その際、第1及び第2の外部接続導体3、4は、回路基板Sに形成されたランド電極201、202には直接接続されない。したがって、信号電流Aは、例えば配線203、ランド電極201、第1の端子電極1、第3の内部電極51をこの順で通過し、静電容量を形成し、第4の内部電極61、第2の端子電極2、ランド電極202、配線204をこの順で通過する。
【0051】
積層コンデンサC1は、外部接続導体3、4のみに接続される第1及び第2の内部電極31〜33,41〜43と外部接続導体3、4及び端子電極1、2の双方に接続される第3及び第4の内部電極51、61とを備える。すなわち、端子電極1、2に直接接続される内部電極は、複数の内部電極31〜33,41〜43、51、61のうち第3及び第4の内部電極51、61のみである。そのため、積層コンデンサC1では、その等価直列抵抗を増大させることができる。
【0052】
特に、第3及び第4の内部電極51、61の総数は2であって、第1及び第2の内部電極31〜33、41〜44の総数6よりも少ない。そのため、積層コンデンサC1では、等価直列抵抗をさらに大きくすることができる。
【0053】
また、積層コンデンサC1では、第3及び第4の内部電極51、61が配置された第2の領域12は、積層方向において、第1及び第2の内部電極31〜33、41〜43が配置された第1の領域11よりも第2の主面102側に配置されている。そのため、図6に示したように第2の主面102を実装面として基板等に実装した場合、ランド電極201、202、第1及び第2の端子電極1、2を通過して第3及び第4の内部電極51、61に至る信号電流Aの電流経路の長さを短くすることができる。等価直列インダクタンスは電流経路の長さに依存するので、その値を小さくすることが可能となる。
【0054】
ただし、これは第2の主面102を基板Sに対向させて実装させた場合であって、第1の主面101側を基板Sに実装してしまった場合には逆に第1及び第2の端子電極1、2を流れる経路は長くなってしまい、その結果等価直列インダクタンスを大きくしてしまう。これに対し、積層コンデンサC1では、第1の主面101と第1の側面103とを連結する第1の稜部107の曲率が、第2の主面102と第1の側面103とを連結する第2の稜部108の曲率よりも小さい。そのため、第1の主面101側から積層コンデンサC1を見たときに観察される稜部107と、第2の主面102側から積層コンデンサC1を見たときに観察される稜部108とで、その曲率が異なるため、目視により容易に第1の主面101側かあるいは第2の主面102側かを識別することができる。したがって、容易に等価直列インダクタンスを低減する向きで実装することができる。
【0055】
特に、積層コンデンサC1では、第1の主面101と第2の側面104とを連結する第3の稜部109の曲率が、第2の主面102と第2の側面104とを連結する第4の稜部110の曲率よりも小さい。したがって、積層コンデンサC1では、より一層容易に第1の主面101と第2の主面102とを識別することができる。
【0056】
第1及び第2の稜部107、108並びに第3及び第4の稜部109、110は何れも、第1又は第2の主面101、102の長辺方向に相当するので、曲率の差の識別が容易になる。
【0057】
積層コンデンサC1では、コンデンサ素体10内に配置されている第3及び第4の内部電極51、61は、それぞれ一層のみである。したがって、等価直列抵抗をより一層増大することが可能となる。
【0058】
積層コンデンサC1の製造方法では、プレス工程において、グリーン積層体G1の第2のグリーン領域G12側を金型121で固定し、第1のグリーン領域G11側からグリーン積層体G1をプレスしている。そのため、第3及び第4の内部電極51、61に対応する第3及び第4の内部電極パターン151、161の引き出し電極部分に相当する部分は圧力を印加する側から離れているため、これらが断線してしまうことが抑制される。
【0059】
また、プレス工程において、グリーン積層体G1の第2のグリーン領域G12側を金型121で固定し、第1のグリーン領域G11側からグリーン積層体G1をプレスしている。そのため、グリーン積層体G1において第1のグリーン領域G11側が第2のグリーン領域G12側に比べてより一層周辺部で縮む。そのため、得られるコンデンサ素体10において、第1及び第3の稜部107、109の曲率が第2及び第4の稜部108、110の曲率より小さくなる。
【0060】
また、積層コンデンサC1の製造方法では、第3及び第4の内部電極51、61の引き出し電極部分51b、61bに相当する第3及び第4の内部電極パターン151、161の部分は、積層方向から見て他に重なる導体がない。すなわち、積層方向において電極パターンの密度が低い。そのため、その箇所においてコンデンサ素体10はより一層縮みやすい。
【0061】
プレス工程において、グリーン積層体G1を静水圧プレスしているので、グリーン積層体G1が均一に加圧される。そのため、グリーン積層体G1の周辺部が中央部に比べて一層縮み、得られるコンデンサ素体10の方向の識別がより一層容易になる。
【0062】
図7に第1実施形態に係る積層コンデンサC1の変形例である積層コンデンサC1Aを示す。積層コンデンサC1Aでは、第1の領域11において最も第2の領域12側に配置された第2の内部電極43と、第2の領域12において最も第1の領域11側に配置された第3の内部電極51との間の間隔である層間距離D3は、第1の領域11における第1及び第2の内部電極31〜33、41〜43の層間距離D1並びに第2の領域12における第3及び第4の内部電極51、61の層間距離D2よりも大きい。
【0063】
そのため、積層コンデンサC1Aでは、第3及び第4の内部電極51、61の端子電極接続用の引き出し電極部分51b、61bが第2の主面102近くに位置することになる。よって、第2の主面102を基板S等に対向させて実装した場合、端子電極1、2を通って第3及び第4の内部電極51、61に流れ込むまでの電流の経路を短くすることができるため、等価直列インダクタンスをより一層低減することが可能になる。
【0064】
また、第3及び第4の内部電極51、61をより一層コンデンサ素体10の第2の主面102近くに配置することで、端子電極1、2との接続不良の発生を低減することが可能になる。
【0065】
積層コンデンサC1が2012形状の場合において、図6に示すような向きで実装した場合は、それとは逆向きに実装した場合に対して、例えば、インダクタンスは約1/4となる。具体的には、例えば1GHzの信号で図6のように実装した場合のインダクタンスが250pHであったとすると、100MHzの信号で図6とは逆向きに実装した場合のインダクタンスは1000pHとなる。さらに、積層コンデンサC1が2012形状の場合において、図6に示すような向きで実装した場合は、それとは逆向きに実装した場合に対して、例えば、インピーダンスは約1/5〜1/10となる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る積層コンデンサを、図8に基づいて説明する。第2実施形態に係る積層コンデンサは、第3及び第4の内部電極51、61の形状の点で、第1実施形態に係る積層コンデンサC1と異なる。図8は、第2実施形態に係る積層コンデンサが備えるコンデンサ素体70の分解斜視図である。
【0067】
コンデンサ素体70は、第1及び第2の内部電極31〜33,41〜43が配置された第1の領域71と、第3及び第4の内部電極51、61が配置された第2の領域72とを備える。
【0068】
第3の内部電極51は、第3の主電極部分51aと、第3の引き出し電極部分51bと、第4の引き出し電極部分51cとを含んでいる。第3の主電極部分51aは、L字型を呈する。第3の引き出し電極部分51bは、第3の主電極部分51aのL字の一片の延長部分であり、第3の主電極部分51aから第1の側面103に引き出されるように伸びる。第3の引き出し電極部分51bは、第1の外部接続導体3に機械的かつ電気的に接続される。第4の引き出し電極部分51cは、第3の主電極部分51aのL字の他片の延長部分であり、第3の主電極部分51aから第3の側面105に引き出されるように伸びる。第4の引き出し電極部分51cは、第1の端子電極1に機械的かつ電気的に接続される。
【0069】
第4の内部電極61は、第4の主電極部分61aと、第5の引き出し電極部分61bと、第6の引き出し電極部分61cとを含んでいる。第4の主電極部分61aは、L字型を呈する。第5の引き出し電極部分61bは、第4の主電極部分61aのL字の一片の延長部分であり、第4の主電極部分61aから第2の側面104に引き出されるように伸びる。第5の引き出し電極部分61bは、第2の外部接続導体4に機械的かつ電気的に接続される。第6の引き出し電極部分61cは、第4の主電極部分61aのL字の他片の延長部分であり、第4の主電極部分61aから第4の側面106に引き出されるように伸びる。第6の引き出し電極部分61cは、第2の端子電極2に機械的かつ電気的に接続される。
【0070】
第3の引き出し電極部分51bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W1及び第4の引き出し電極部分51cの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅W3は何れも、第1の引き出し電極部分31b〜33bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W5よりも狭い。すなわち、W1<W5、W3<W5が成り立つ。
【0071】
第4の引き出し電極部分51cの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅W3は、第3の引き出し電極部分51bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W1よりも狭い。すなわち、W3<W1が成り立つ。
【0072】
第5の引き出し電極部分61bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W2及び第6の引き出し電極部分61cの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅W4は何れも、第2の引き出し電極部分41b〜43bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W6よりも狭い。すなわち、W2<W6、W4<W6が成り立つ。
【0073】
第6の引き出し電極部分61cの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅W4は、第5の引き出し電極部分61bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W2よりも狭い。すなわち、W4<W2が成り立つ。
【0074】
第2実施形態に係る積層コンデンサでは、第1実施形態に係る積層コンデンサC1の効果に加え、以下のような効果が得られる。
【0075】
第2実施形態に係る積層コンデンサでは、W1<W5、W3<W5、W2<W6、W4<W6が成り立っている。すなわち、第1の端子電極1に接続される第3の内部電極51の第4の引き出し電極部分51c及び第2の端子電極2に接続される第4の内部電極61の第6の引き出し電極部分61cが狭くなっている。そのため、第2実施形態に係る積層コンデンサでは、等価直列抵抗をより一層増大することが可能となる。
【0076】
さらに、第2実施形態に係る積層コンデンサでは、W3<W1、W4<W2が成り立つ。すなわち、第3及び第4の内部電極51、61において、端子電極接続用の第4及び第6の引き出し電極部分51c、61cの幅が、外部接続導体接続用の第3及び第5の引き出し電極部分51b、61bの幅よりも狭い。そのため、第2実施形態に係る積層コンデンサでは、等価直列抵抗をさらにより一層増大することが可能となる。
【0077】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る積層コンデンサを、図9に基づいて説明する。第3実施形態に係る積層コンデンサは、第3及び第4の内部電極51、61の形状の点で、第1実施形態に係る積層コンデンサC1と異なる。図9は、第3実施形態に係る積層コンデンサが備えるコンデンサ素体80の分解斜視図である。
【0078】
コンデンサ素体80は、第1及び第2の内部電極31〜33,41〜43が配置された第1の領域81と、第3及び第4の内部電極51、61が配置された第2の領域82とを備える。
【0079】
第3の内部電極51は、第3の主電極部分51aと、第3の引き出し電極部分51bと、第4の引き出し電極部分51cとを含んでいる。第3の主電極部分51aは、L字型を呈する。第3の引き出し電極部分51bは、第3の主電極部分51aのL字の一片の延長部分であり、第3の主電極部分51aから第1の側面103に引き出されるように伸びる。第3の引き出し電極部分51bは、第1の外部接続導体3に機械的かつ電気的に接続される。第4の引き出し電極部分51cは、第3の主電極部分51aのL字の他片の延長部分であり、第3の主電極部分51aから第3の側面105に引き出されるように伸びる。第4の引き出し電極部分51cは、第1の端子電極1に機械的かつ電気的に接続される。
【0080】
第4の内部電極61は、第4の主電極部分61aと、第5の引き出し電極部分61bと、第6の引き出し電極部分61cとを含んでいる。第4の主電極部分61aは、L字型を呈する。第5の引き出し電極部分61bは、第4の主電極部分61aのL字の一片の延長部分であり、第4の主電極部分61aから第2の側面104に引き出されるように伸びる。第5の引き出し電極部分61bは、第2の外部接続導体4に機械的かつ電気的に接続される。第6の引き出し電極部分61cは、第4の主電極部分61aのL字の他片の延長部分であり、第4の主電極部分61aから第4の側面106に引き出されるように伸びる。第6の引き出し電極部分61cは、第2の端子電極2に機械的かつ電気的に接続される。
【0081】
第3の引き出し電極部分51bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W1は、第1の主電極部分31a〜33aの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅L2よりも狭く、第1の主電極部分31a〜33aの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅L1よりも狭く、且つ第1の引き出し電極部分31b〜33bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W5よりも広い。すなわち、W1<L1、W1<L2、W1>W5が成り立つ。
【0082】
第4の引き出し電極部分51cの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅W3は、第1の主電極部分31a〜33aの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅L2よりも狭く、第1の主電極部分31a〜33aの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅L1よりも狭く、且つ第1の引き出し電極部分31b〜33bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W5よりも広い。すなわち、W3<L1、W3<L2、W3>W5が成り立つ。
【0083】
第5の引き出し電極部分61bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W2は、第2の主電極部分41a〜43aの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅L4よりも狭く、第2の主電極部分41a〜43aの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅L3よりも狭く、且つ第2の引き出し電極部分41b〜43bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W6よりも広い。すなわち、W2<L4、W2<L3、W2>W6が成り立つ。
【0084】
第6の引き出し電極部分61cの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅W4は、第2の主電極部分41a〜43aの第1及び第2の側面103、104の対向方向に沿った幅L4よりも狭く、第2の主電極部分41a〜43aの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅L3よりも狭く、且つ第2の引き出し電極部分41b〜43bの第3及び第4の側面105、106の対向方向に沿った幅W6よりも広い。すなわち、W4<L4、W4<L3、W4>W6が成り立つ。
【0085】
第3実施形態に係る積層コンデンサでは、第1実施形態に係る積層コンデンサC1の効果に加え、以下のような効果が得られる。
【0086】
第3実施形態に係る積層コンデンサでは、W1<L1、W1<L2、W3<L1、W3<L2、W2<L4、W2<L3、W4<L4、W4<L3が成り立つ。すなわち、第3実施形態に係る積層コンデンサでは、端子電極1、2に接続される内部電極51、61の引き出し電極部分51b、51c、61b、61cの幅W1〜W4を、外部接続導体3、4にのみ接続される内部電極31〜33、41〜43の主電極部分31a〜33a、41a〜43aの幅L1〜L4より狭くすることで、等価直列抵抗をより一層増大することが可能となる。
【0087】
さらに、第3実施形態に係る積層コンデンサでは、W1>W5、W3>W5、W2>W6、W4>W6が成り立つ。すなわち、第3及び第4の内部電極51、61の引き出し電極部分51b、51c、61b、61cの幅W1〜W4が、第1及び第2の内部電極31〜33、41〜43の引き出し電極部分31b〜34b、41b〜44bの幅W5、W6より広い。そのため、第3実施形態に係る積層コンデンサでは、オープン不良の発生が抑制できる。
【0088】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、絶縁体層21〜29及び各内部電極31〜33、41〜44、51、61の積層数、端子電極1、2、外部接続導体3、4の数は、上記実施形態及び変形例での数に限られない。端子電極1、2、外部接続導体3、4の配置は、上記実施形態及び変形例での配置に限られない。また、第2の領域12、72、82は、それぞれ一層より多く第3及び第4の内部電極51、61を有していてもよい。第3の稜部109の曲率は、第4の稜部110の曲率以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る積層コンデンサの側面図である。
【図3】第1実施形態に係る積層コンデンサの断面図である。
【図4】第1実施形態に係る積層コンデンサが備えるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る積層コンデンサの製造方法について説明するための図である。
【図6】積層コンデンサを回路基板に実装した実装構造の断面構成を説明するための図である。
【図7】第1実施形態に係る積層コンデンサの変形例の断面図である。
【図8】第2実施形態に係る積層コンデンサが備えるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【図9】第3実施形態に係る積層コンデンサが備えるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0090】
C1…積層コンデンサ、10、70、80…コンデンサ素体、101…第1の主面、102…第2の主面、103〜106…第1〜第4の側面、107〜110…第1〜第4の稜部、1…第1の端子電極、2…第2の端子電極、3…第1の外部接続導体、4…第2の外部接続導体、11、71、81…第1の領域、12、72、82…第2の領域、21〜29…絶縁体層、31〜33…第1の内部電極、31a〜33a…第1の主電極部分、31b〜33b…第1の引き出し電極部分、41〜43…第2の内部電極、41a〜43a…第2の主電極部分、41b〜43b…第2の引き出し電極部分、51…第3の内部電極、51a…第3の主電極部分、51b…第3の引き出し電極部分、51c…第4の引き出し電極部分、61…第4の内部電極、61a…第4の主電極部分、61b…第5の引き出し電極部分、61c…第6の引き出し電極部分。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1及び第2の主面と、前記第1及び第2の主面の双方と隣り合い且つ互いに対向する第1及び第2の側面と、前記第1及び第2の主面の双方と隣り合い且つ互いに対向する第3及び第4の側面と、前記第1の主面と前記第1の側面とを連結する第1の稜部と、前記第2の主面と前記第1の側面とを連結する第2の稜部とを有する、複数の絶縁体層が前記第1及び第2の主面の対向方向に積層されたコンデンサ素体と、
前記複数の絶縁体層のうち少なくとも一層を間に挟んで対向するように、交互に前記コンデンサ素体内の第1の領域に配置された複数の第1及び第2の内部電極と、
前記コンデンサ素体内の第2の領域に配置された、それぞれ少なくとも一層の第3及び第4の内部電極と、を備え、
前記各第1の内部電極は、前記第2の内部電極と協働して静電容量を形成する第1の主電極部分と、該主電極部分を前記第1の外部接続導体に接続する第1の引き出し電極部分と、を有し、
前記各第2の内部電極は、前記第1の内部電極と協働して静電容量を形成する第2の主電極部分と、該主電極部分を前記第2の外部接続導体に接続する第2の引き出し電極部分と、を有し、
前記各第3の内部電極は、第3の主電極部分と、前記第3の主電極部分を前記第1の外部接続導体に接続する第3の引き出し電極部分と、該第3の主電極部分を前記第1の端子電極に接続する第4の引き出し電極部分と、を有し、
前記各第4の内部電極は、第4の主電極部分と、前記第4の主電極部分を前記第2の外部接続導体に接続する第5の引き出し電極部分と、前記第4の主電極部分を前記第2の端子電極に接続する第6の引き出し電極部分と、を有し、
前記第1及び第2の領域は前記複数の絶縁体層の積層方向に沿って併置されており、前記第2の領域は、前記積層方向において、前記第1の領域よりも前記第2の主面側に配置されており、
前記第3及び第4の内部電極の総数は、前記第1及び第2の内部電極の総数よりも少なく、
前記第1及び第2の稜部は何れも、前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った前記コンデンサ素体の中心軸から離れる方向に凸に湾曲するような曲率を有しており、
前記第1の稜部の曲率は前記第2の稜部の曲率よりも小さいことを特徴とする積層コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素体は、前記第1の主面と前記第2の側面とを連結する第3の稜部と、前記第2の主面と前記第2の側面とを連結する第4の稜部とをさらに備え、
前記第3及び第4の稜部は何れも、前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った前記コンデンサ素体の前記中心軸から離れる方向に凸に湾曲するような曲率を有しており、
前記第3の稜部の曲率は前記第4の稜部の曲率よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記コンデンサ素体は、その頂点部及び稜部が曲率を有するように湾曲された直方体形状を呈し、
前記第1及び第2の主面は、長方形状を呈し、
前記第1及び第2の側面は、前記第1及び第2の主面の長辺方向に伸び、
前記第3及び第4の側面は、前記第1及び第2の主面の短辺方向に伸びることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
前記コンデンサ素体内に配置されている前記第3及び第4の内部電極は、それぞれ一層のみであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の積層コンデンサ。
【請求項5】
前記第1の外部接続導体は、前記コンデンサ素体の前記第1の側面に配置され、
前記第2の外部接続導体は、前記コンデンサ素体の前記第2の側面に配置され、
前記第1の端子電極は、前記コンデンサ素体の前記第3の側面に配置され、
前記第2の端子電極は、前記コンデンサ素体の前記第4の側面に配置されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の積層コンデンサ
【請求項6】
前記第3の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅及び前記第4の引き出し電極部分の前記第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は何れも、前記第1の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、
前記第5の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅及び前記第6の引き出し電極部分の前記第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は何れも、前記第2の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭いことを特徴とする請求項5記載の積層コンデンサ。
【請求項7】
前記第3の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅及び前記第4の引き出し電極部分の前記第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は何れも、前記第1の主電極部分の前記第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、前記第1の主電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、且つ前記第1の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも広く、
前記第5の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅及び前記第6の引き出し電極部分の前記第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は何れも、前記第2の主電極部分の前記第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、前記第2の主電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭く、且つ前記第2の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも広いことを特徴とする請求項5記載の積層コンデンサ。
【請求項8】
前記第4の引き出し電極部分の前記第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は、前記第3の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅より狭く、
前記第6の引き出し電極部分の前記第1及び第2の側面の対向方向に沿った幅は、前記第5の引き出し電極部分の前記第3及び第4の側面の対向方向に沿った幅よりも狭いことを特徴とする請求項5〜7の何れか一項記載の積層コンデンサ。
【請求項9】
前記第1の領域において最も前記第2の領域側に配置された第1又は第2の内部電極と、前記第2の領域において最も前記第1の領域側に配置された第3又は第4の内部電極との間の間隔は、前記第1の領域における前記第1及び第2の内部電極の層間距離よりも大きいことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項記載の積層コンデンサ。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載された積層コンデンサと、
少なくとも2つのランド電極及び配線が取り付けられた回路基板と、を備え、
前記第2の主面が前記回路基板と対向し、
前記積層コンデンサの前記第1及び第2の端子電極が、それぞれ前記少なくとも2つのランド電極の異なるランド電極に接続されることを特徴とする積層コンデンサの実装構造。
【請求項11】
複数の絶縁体層と第1〜第4の内部電極とが積層されてなるコンデンサ素体と、前記コンデンサ素体の外表面に設けられ且つ前記第3の内部電極に接続された第1の端子電極と、前記コンデンサ素体の外表面に設けられ且つ前記第4の内部電極に接続された第2の端子電極と、前記コンデンサ素体の外表面に設けられ且つ前記第1及び第3の内部電極に接続された第1の外部接続導体と、前記コンデンサ素体の前記外表面に設けられ且つ前記第2及び第4の外部接続導体と、を備えた積層コンデンサの製造方法であって、
前記複数の絶縁体層の一部に対応する複数のセラミックグリーンシートと前記第1及び第2の内部電極に対応する第1及び第2の内部電極パターンとが積層されてなる第1のグリーン領域と、前記複数の絶縁体層の一部に対応する複数のセラミックグリーンシートと前記第3及び第4の内部電極に対応する第3及び第4の内部電極パターンとが積層されてなる第2のグリーン領域と、を有するグリーン積層体を準備する準備工程と、
前記グリーン積層体の前記第2のグリーン領域側を金型で固定し、前記グリーン積層体の前記第1のグリーン領域側から前記グリーン積層体をプレスするプレス工程と、
前記グリーン積層体を切断し、焼成してコンデンサ素体を得る焼成工程と、
前記コンデンサ素体の外表面に、第1及び第2の外部接続導体並びに第1及び第2の端子電極を形成する電極形成工程と、を備えることを特徴とする積層コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記プレス工程において、前記グリーン積層体を静水圧プレスすることを特徴とする請求項11に記載の積層コンデンサの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−80615(P2010−80615A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246164(P2008−246164)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】