説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】反射光および透過光を用いたときの視認性に優れ、液晶表示装置の光源部等に用いられる、積層ポリエステルフィルム基材自体が半透過反射性能を有する積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル層(A)、ポリエステル層(B)及びポリエステル層(A)の少なくとも3層からなる二軸配向した積層ポリエステルフィルムであって、中間層のポリエステル層(B)中に平均長径0.5μm以上125μm以下のパール顔料を0.5〜30重量%含有し、該積層ポリエステルフィルムの光線透過率が下記式(1)を満足し、ポリエステル層(A)を形成するポリエステルの融点がポリエステル層(B)を形成するポリエステルの融点より2℃以上高いことを特徴とする半透過反射性能を有する積層ポリエステルフィルム。
(平行光線透過率/全光線透過率)×100≧3……(1)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半透過反射性能を有する積層ポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは、反射光および透過光を用いたときの視認性に優れ、液晶表示装置の光源部等に用いられる、積層ポリエステルフィルム基材自体が半透過反射性能を有する積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレイはCRTディスプレイに比べ軽薄化・小型化が容易であり、また消費電力が少ない等のメリットから、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション、PDA、携帯電話等の表示体として急速に普及してきている。しかしながら、液晶表示体は、その表示を見るためには液晶セルの視認される反対側からの透過光が必要なため、表示認識のための光源が必要であり、液晶表示体が省電力であるとはいえ携帯電話やPDAといった携帯電子機器の表示においてその消費電力は大きく、これらの使用時間を制限する要因となっている。
【0003】
この問題を解決するために、半透過反射型の液晶表示装置が用いられている。この半透過反射型の液晶表示装置は、外光を利用し周囲環境が明るい時には反射光によって表示が認識でき、周囲環境が暗い時にはその半透過性を利用して内蔵された光源を点灯させることによって表示が認識できるようにしたものである。
【0004】
しかしながら、半透過反射型の液晶表示装置においても、反射光による表示と透過光による表示の両方に於いて十分な視認性を確保することは非常に困難である。これは、反射光による視認性を十分に得ようとすると透過光による視認性が極端に落ち、逆に透過光による視認性を十分に得ようとすると反射光による視認性が極端に落ちてしまうことによる。
【0005】
透過光および反射光の双方において良好な視認性を得る方法として、特開平8−179125号公報、特開平11−231114号公報、特開平11−271512号公報に、パール顔料を含む半透過反射層をフィルム基材上に塗布し設ける方法が提案されている。しかしながら、パール顔料がフィルム基材の平面方向に配向していない状態では良好な反射特性が得られにくいといった問題点がある。そこで、半透過反射層中のパール顔料を配向させる方法として、例えば半透過反射層を形成する塗液層にせん断応力を与える方法が提案されているが、この方法では、層厚調整部材と塗液層とのずり速度、または塗液供給部材と被塗布シートとのずり速度を調整する必要があり、また塗工速度とずり速度によって変動する外観との調整が容易でないといった欠点がある。
【0006】
また、フィルム基材と半透過反射層との界面の密着性が不十分な場合、経時的に剥がれが生じる場合もある。また、塗布によって得られた半透過反射層は、有機溶剤などに対して侵されやすく、加工工程中にトラブルが発生する場合もある。更に、反射率を向上させる目的で塗液中のパール顔料濃度を上げた場合、得られる半透過反射層の強度が低下し、凝集破壊が起こりやすくなるといった欠点もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような問題点や欠点の無い、液晶表示用に適した新規な半透過反射性能を有する積層ポリエステルフィルムを提供することにある。更に詳しくは、液晶表示部のバックライトを光源とする透過光において良好な視認性が得られ、同時に、可視光を反射、拡散する添加剤をその特性が発揮されるべく、フィルム基材中に配置させた状態で含有せしめる方法を用いることによって、透過光および反射光両方での液晶表示の視認性に優れ、さらに液晶表示部材と積層ポリエステルフィルムとの経時密着性を高め、積層構成にすることで製膜安定性の高い液晶表示用に好適な積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。即ち本発明は、ポリエステル層(A)、ポリエステル層(B)及びポリエステル層(A)の少なくとも3層からなる二軸配向した積層ポリエステルフィルムであって、中間層のポリエステル層(B)中に平均長径0.5μm以上125μm以下のパール顔料を0.5〜30重量%含有し、該積層ポリエステルフィルムの光線透過率が下記式(1)を満足し、ポリエステル層(A)を形成するポリエステルの融点がポリエステル層(B)を形成するポリエステルの融点より2℃以上高いことを特徴とする半透過反射性能を有する積層ポリエステルフィルムである。
【0009】
【数2】

また、本発明の好ましい実施態様として、(2)パール顔料が、二酸化チタンおよび/または酸化鉄により被覆された平板状マイカ粒子である(1)に記載の積層ポリエステルフィルム、(3)積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に粘着層が積層された(1)または(2)に記載の積層ポリエステルフィルム、(4)積層ポリエステルフィルムの片面上にハードコート層が積層された(1)乃至(3)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム、(5)液晶表示装置の光源部に用いられる(1)乃至(4)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムを挙げることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
[ポリエステルフィルム]
本発明においてポリエステル層(A)を構成するポリエステルAは、熱可塑性ポリエステルであるが、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる結晶性の線状飽和ポリエステルであることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等を挙げることができる。これらの中では製膜性および透明性の点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。これらのポリエステルはホモポリマーが好ましく、共重合成分を含む場合は共重合比率が5モル%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明においてポリエステル層(B)を構成するポリエステルBは、その融点がポリエステルAの融点よりも2℃以上低い熱可塑性ポリエステルことを必要とする。この融点差が2℃未満であると、延伸工程においてパール顔料とポリエステルBの界面に生じたボイド(空隙)が熱固定工程後も残存し、平行光線(直進)透過率が低下する傾向がある。
【0013】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)の融点差の上限には特に制限が無いが、60℃以上融点差があるとポリエステルBの製膜性が低下し、フィルム生産が困難となる傾向があので60℃以下であることが好ましい。
【0014】
このようなポリエステルBは、ポリエステルAが単独重合体の場合は共重合体であることが好ましく、ポリエステルAが共重合体の場合はポリエステルAよりも共重合比率が大きいポリエステル共重合体であることが好ましい。上記の共重合成分としては、例えば、ポリエステルA、ポリエステルBがエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルの場合は、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸を挙げることができ、また、ジオール成分としてテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールを挙げることができる。なお、これらの共重合成分は1種のみでなく、2種以上併用してもよい。これらの中で、製膜時の延伸性の点からイソフタル酸を特に好ましい共重合成分として挙げることができる。イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートの場合、イソフタル酸は1モル%以上、好ましくは5モル%以上、25モル%未満、好ましくは18モル%未満の範囲で使用される。イソフタル酸が1モル%未満であるとポリエステルAがポリエチレンテレフタレートの場合、融点差が2℃未満になり、25モル%を超えると製膜安定性が失われる。
【0015】
上記ポリエステルA及び/又はポリエステルB(以下、これら併せて『ポリエステル』と略記することがある)は、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸等のような3個以上のエステル形成性官能基を有する成分を極小量(実質的に線状のポリマーが得られる範囲)共重合したものであってもよい。あるいは、耐加水分解性を向上させるために例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコール等の1個のエステル形成性官能基を有する化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってもよい。
【0016】
本発明におけるポリエステルの固有粘度(オルトクロロフェノール溶液で、35℃にて測定)は、0.40dl/g〜1.50dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.45dl/g〜1.20dl/gである。固有粘度が0.40dl/g未満の場合は引裂き強度をはじめ、基材として積層ポリエステルフィルムに要求される機械特性が不足することがある。他方、固有粘度が1.50dl/gを越える場合は、原料製造工程およびフィルム製膜工程における生産性が損なわれる。
【0017】
本発明におけるポリエステルは、その製法によって限定されることはない。例えば、ポリエチレンテレフタレートのホモポリマー、またはその共重合体の製法としては、テレフタル酸、エチレングリコールおよび必要に応じて加えた共重合成分をエステル化反応させ、得られる反応生成物をさらに重縮合反応させてポリエステルとする方法が好ましく用いられる。
【0018】
かかるポリエステルには、必要に応じて蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0019】
[パール顔料]
本発明における積層ポリエステルフィルムには、透過光および反射光両方での液晶表示の視認性を付与するため、ポリエステル層(B)にパール顔料を添加することが必要である。本発明におけるパール顔料とは、パール調を出現させることができる顔料のことであり、例えばパール顔料として市販されているものである。これらのうち平板状マイカ粒子が好ましく、二酸化チタン、酸化鉄などにより被覆された平板状マイカ粒子であることが特に好ましい。パール顔料として二酸化チタンにより被覆された平板状マイカ粒子を用いる場合は、二酸化チタンによる表面の被覆率が10%〜50%の範囲のものが好ましい。かかるパール顔料としては、例えば「イリオジン」(メルクジャパン社製)や「Mearlin」(マール社製)を挙げることができる。
【0020】
本発明におけるパール顔料の平均長径は、0.5〜125μmであることが必要であり、1〜100μmがより好ましい。パール顔料の平均長径が0.5μm未満の場合は、十分な反射特性が得られない。また、パール顔料の平均長径が125μmを超える場合は、ポリエステルフィルム製造の際に破断が多発するなど生産性に劣ったものとなる。
【0021】
かかるパール顔料の厚みは、0.01〜10μmであることが好ましい。0.01μm未満の場合は、十分な反射特性が得られ難く、また製膜工程においてパール顔料が折損しやすくなる。また、10μmを超える場合は板状の特徴が失われやすく、延伸によるパール顔料の配向が低下し、反射光および透過光における視認性が得られ難くなる。
【0022】
上記パール顔料は、ポリエステル層(B)中でフィルムの平面方向に30°以下の配向角で配向していることが望ましい。また、かかるパール顔料の配向角は、より好ましくは15°以下である。ここで配向角とは、一定数の板状フィラーであるパール顔料の平板状面とポリエステルフィルムの平面とでなす角度の平均値を指す。具体的には、得られた半透過反射積層ポリエステルフィルムの任意の断面を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JSM−5200)にて写真撮影し、任意の100個のパール顔料について、該フィラーの平板状面のポリエステルフィルム面に対する配向角を測定して平均値を算出し、その値をもって「配向角」とする。ポリエステル層(B)に含有されるパール顔料の配向角が30°より大きくなると、反射光における高い視認性を得ることができ難い。このような配向は該積層フィルムの製膜に際し、縦および横方向に2.5倍以上延伸することにより得ることができる。
【0023】
本発明におけるパール顔料の添加は、ポリエステル合成の際のエステル交換反応終了前、または重縮合反応開始前に添加してもよく、またポリエステルフィルム製膜の際に添加してもよい。また、あらかじめパール顔料を多量に添加したマスターペレットを製造しておき、ポリエステル合成時、あるいはポリエステルフィルム製膜時に、パール顔料を含有しないポリエステルと混練して所定量の濃度に調整する方法であってもよい。なお、ポリエステル合成時にパール顔料を添加する場合には、これらをジオール成分に分散させてから、スラリーとして反応系に添加する方法が好ましい。パール顔料のポリエステルBへの添加量は0.5〜30重量%であることが必要であり、1〜10重量%が好ましく、2〜8重量%がより好ましい。添加量が0.5重量%未満であると反射光が不足し、30重量%を超えると透過光が不足する。
【0024】
[不活性粒子]
本発明における積層ポリエステルフィルムには、表層のポリエステル層(A)に不活性粒子を含有させることが好ましい。かかる不活性粒子としては、例えば周期律表第IIA、第IIB、第IVA、第IVBの元素を含有する無機微粒子(例えば、カオリン、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化珪素、硫酸バリウムなど)、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂などの耐熱性の良い高分子よりなる有機微粒子を挙げることができ、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
これら不活性粒子の平均粒径は0.1〜5μm、更に0.5〜3μm、特に0.8〜2.5μmであることが好ましい。不活性粒子の平均粒径が0.1μm未満の場合は、ポリエステル層(A)中への分散が不良となりやすく、滑り性を得ようとすると平行光線(直線)透過率が減少しやすい。一方、5μmを超えると透過率が低下し、製膜安定性が低下するため好ましくない。また、不活性粒子の添加量は、ポリエステル層(A)の重量を基準として0.001〜5重量%が好ましい範囲として例示できる。不活性粒子の添加量が0.001重量%未満の場合は、該ポリエステルフィルムの巻取り時の滑り性や表面加工時のハンドリング性が低下しやすく、一方5重量%を超えると透過率が低下し、製膜安定性が低下するため好ましくない。これら不活性粒子の添加時期は、ポリエステルの重合段階、または製膜時のいずれであってもよい。
【0026】
[粘着層]
本発明の積層ポリエステルフィルムには、その片面上に粘着層を積層することができる。この場合偏光フィルムなどからなる液晶表示部またはバックライトと粘着層とを貼り合わせることができるので好ましい。使用する粘着剤は特に限定されないが、アクリル系、ゴム系、ウレタン系の粘着剤が好ましく使用される。
【0027】
粘着層の厚みは0.5〜60μmが好ましい。粘着層の厚みが0.5μmより薄いと十分な粘着性が得られず、60μmを超えると端面からの粘着剤のはみ出しや巻取りが難しくなるなど、フィルムの製造工程における取り扱い性が低下する。また、粘着層の厚みは、好ましくは2〜40μmである。
【0028】
[ハードコート層]
本発明の積層ポリエステルフィルムには、その片面上にハードコート層を積層することができる。この場合、積層ポリエステルフィルムと液晶表示部またはバックライト部とが貼り合わされた中間部品を積み重ねて保管する場合や、運搬する過程で、積層ポリエステルフィルムに傷が発生するのを抑制し、最終製品の歩留まりを防止することができるので好ましい。
【0029】
ハードコート層に用いられる材料としては、例えばシラン系、放射線硬化系など通常用いられる材料を挙げることができるが、特に放射線硬化系のハードコート用材料が好ましく、中でも紫外線(UV)硬化系のハードコート用材料が好ましく用いられる。
【0030】
ハードコート層の形成に用いられるUV硬化性材料としては、ウレタン−アクリレート系、エポキシ−アクリレート系、ポリエステルアクリレート系などが挙げられる。積層ポリエステルフィルムにハードコート層を積層するには、積層ポリエステルフィルムの片面上に、ハードコート層を形成する材料を塗布し、加熱、放射線(例えば紫外線)照射等により該材料を硬化させる。
【0031】
ハードコート層の厚みは0.5〜10μmが好ましい。ハードコート層の厚みが0.5μmより薄いと、中間部品を十分に保護できず、10μmを超えると加熱または放射線による硬化が十分に得られずブロヅキングを起こしやすくなる。また、ハードコート層の厚みは、より好ましくは1〜5μmである。
【0032】
[全光線透過率ならびに平行光線(直線)透過率]
本発明の目的である透過光での十分な視認性を得るために、積層ポリエステルフィルムの全光線透過率ならびに平行光線透過率(試料を直進する光線の透過率)が下記式(1)を満足することを必要とする。
【0033】
【数3】

ここで、全光線透過率とは、分光光度計を用い550nmでの波長に於いて測定する。光源を積層ポリエステルフィルムに照射した時にフィルムを透過した光量の照射光量に対する百分率を指す。また、平行光線透過率(直線透過率)とは積層ポリエステルフィルムを直進して透過する光量のみの透過率であり、全光線透過率は積分球用いて測定した値である。
【0034】
本発明において、積層ポリエステルフィルムの550nmにおける平行光線透過率の全光線透過率に対する割合が3%未満であると、液晶表示板上の文字などの輪郭がぼやけて視認性が低下する。散乱光が増加する要因の一つにポリエステル(B)層に添加したパール顔料と樹脂の界面に発生するボイドがある。このボイドを無くすには種々の方法が挙げられる。例えば、
1.パール顔料に表面処理を施しポリエステルとの親和性を高める方法。
2.ポリエステル樹脂を共重合化し低結晶性化させ顔料と樹脂の分散性や親和性を高める方法。
3.製膜工程にてボイドの発生を抑える方法。
等を挙げることができる。手段としては本発明の特性を損なわない限りを特に限定される物ではないが、上記手段の中でもポリエステル(B)の融点より高い温度で熱固定して発生したボイドを消失させるとよい。通常融点より高い温度で熱固定すると、フィルムが切断することがあるが、本発明の場合、ポリエステル(B)層の融点がポリエステル(A)層の融点より2℃以上低く、A層で支持されているので、正常な熱固定が可能である。平行光線透過率の上限は特定できないが、現実的には70%を超えるのは困難である。
【0035】
本発明の積層ポリエステルフィルムの全光線透過率は、20%以上、更に25%以上であることが好ましい。全光線透過率が20%に満たない場合は、透過光における十分な視認性が得られ難い。
【0036】
[積層フィルムの層構造]
本発明における積層ポリエステルフィルムの層構成は、滑剤粒子を含むポリエステル層(A)が両表層を形成し、中間層はパール顔料を含む共重合ポリエステル層(B)とからなり、その層数は3層が基本である。本発明の主旨を逸脱しない範囲で別の層を追加してもよく(例えばA層/B層/A層/B層/A層の構成)、また表裏のA層に若干の差(例えば、滑剤の種類や量、ポリマーの融点等)をつけてもよい。各層の厚みは5〜15/70〜90/5〜15(%)であることが好ましい。A層が5%未満では支持層の役割が果たせないことがあり、15%を超えるとパール顔料の濃度が過剰になり、製膜性が低下することがある。積層ポリエステルフィルム全体の厚みは特に限定されるものではないが、12〜125μm、更には25〜75μmであることが好ましい。積層ポリエステルフィルムの厚みが12μm未満では反射光における視認性が不十分となることがある。一方、積層ポリエステルフィルムの厚みが125μmを超えると、フィルムの剛性が強くなりハンドリング性が悪化する結果、生産性が低下することがある。また、積層ポリエステルフィルムを通過する透過光の損失が大きくなり視認性を低下させることがある。
【0037】
[製造方法]
本発明における積層ポリエステルフィルムは、例えば押出機によりフィルム状に押出され、冷却ロールなどで冷却固化させて得られる未延伸フィルムを逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法などの公知の方法を用いて、二軸延伸フィルムに製膜される。また、積層方法としては、同時多層押出法を挙げることができる。その具体例を3層フィルム(A/B/A)の場合を例に、以下に説明する。
【0038】
ポリエステル層(A)を構成するポリエステルAのチップ、およびポリエステル層(B)を形成するポリエステルBのチップをそれぞれ乾燥し、それぞれ別の押出機内で通常の押出温度、すなわち融点(以下、Tmと表わす)以上、(Tm+70℃)以下の温度で溶融混練し、ダイ内部で例えばフイードブロックを通じて積層させる同時多層押出法により、A/B/Aが積層された未延伸フィルムにする。ダイより押出された積層溶融フィルムは、キャスティングドラムで冷却固化され積層未延伸フィルムを得る、この工程でフィルム状溶融物とキャスティングドラムとの密着性を高める目的で、フィルム状溶融物に静電荷を付与する静電密着法を使用することが好ましい。このようにして得られた未延伸フィルムは、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度は、ポリエステルAのガラス転移温度(以下、Tgと表わす)より高い温度、さらには(Tg+20)〜(Tg+40)℃の温度であることが好ましく、延伸倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.4倍以上4.0倍以下とするのが好ましく、2.5倍以上3.9倍以下であることがより好ましく、2.7倍以上3.8倍以下であることがさらに好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、ポリエステルフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムを得ることが難しい。また、延伸倍率が2.5倍未満の場合は、延伸時にパール顔料が受ける応力が十分でないため、パール顔料の配向角が要求される状態に至ることが困難で、反射光における視認性が低くなる可能性がある。一方延伸倍率が4.0倍を超える場合は、製膜中に破断が発生しやすくなる。縦方向の延伸後、必要に応じて易接着性の水分散性塗液を片面または両面に塗布してもよい。
【0039】
得られた縦延伸フィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して二軸配向フィルムとするが、これらの処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルAのガラス転移温度(Tg)より20℃高い温度から始め、ポリエステルAの融点(Tm)より(110〜140)℃低い温度まで昇温させながら行う。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2・5倍以上4・2倍以下が好ましい。より好ましくは2.6倍以上3.9倍以下であり、さらには2.8倍以上3.8倍以下とするのが好ましい。2.5倍未満の場合はフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、また4.0倍を超える場合は製膜中に破断が発生しやすくなる。
【0040】
横延伸のあと、続いて熱固定処理を行うが、好ましい熱固定の温度範囲は、ポリエステルAの(Tg+70)〜(Tm−10)℃である。例えばポリエステルAがポリエチレンテレフタレートの場合は180〜235℃、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合は220〜240℃が好ましい熱固定温度条件として例示される。また、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。さらに熱収縮率の低滅が必要な用途については、必要に応じて熱弛緩処理を行っても構わない。
【0041】
このようにして厚み12〜125μm、固有粘度0.40〜1.50dl/gで、B層のパール顔料がポリエステルフィルムの平面方向に30°以下の配向角で配向している積層ポリエステルフィルムが得られる。
【0042】
[加工]
本発明においては、積層ポリエステルフィルムの片面上に、更に粘着層を設けてもよい。粘着層については前述の通りである。
【0043】
本発明において、必要に応じ、積層ポリエステルフィルムの片面上に、ハードコート層を設けてもよい。かかるハードコート層は、ポリエステルフィルムを介して、粘着層と反対側に形成されることが好ましく、更には、製品として使用される際に、最外層に位置することが好ましい。該ハードコート層は、ポリエステルフィルムに公知の塗工方法で塗布し、硬化処理を行う。ハードコート層の塗布には、公知の任意の塗工方法が適用できる。例えば、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、リバースコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤバーコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法などを単独または組み合わせて適用するとよい。
【0044】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、各特性値は下記の方法で測定した。
【0045】
1.パール顔料の配向角
得られた半透過反射積層ポリエステルフィルムの任意の断面を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JSM−5200)にて1000〜5000倍に拡大して写真撮影し、B層に存在する任意の100個のパール顔料について、該フィラーの平面状面のポリエステルフィルム面に対する配向角を測定して平均値を算出した。
【0046】
2.全光線透過率および平行光線透過率
紫外・可視分光光度計(島津製作所製、製品名UV−3101PC)を用い、得られた半透過反射積層ポリエステルフィルムの、550nmにおける全光線透過率および平行光線透過率を測定した。
【0047】
3.ポリエステルの融点
ポリエステルの融点測定は、DSC装置(デュポン社製 Thermal Analyst 2000型 示差熱量計)を用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求める方法による。なおサンプル量は約20mgとする。
【0048】
4.ポリエステルのガラス転移温度(Tg)
試料10mgをDSC装置(デュポン社製 Thermal Analyst2000型 示差熱量計)にセットし、300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中で急冷する。この急冷試料を20℃/分で昇温させ、ガラス転移温度を測定する。
【0049】
5.製膜安定性
半透過反射積層ポリエステルフィルムの製膜工程における製膜状況について、下記基準で評価した。
○:破断無く非常に安定した状況で製膜できる
△:時々破断が発生するものの、製膜できる
×:破断が頻発し、全く製膜できない
【0050】
6.視認性
試料フィルムの片面に、油性ペンで幅3mm、長さ3cmの直線を引き、その反対面より蛍光灯を光源とし、書かれた線の観察を行い、以下の下記基準で評価した。
○:線がくっきりと認識できる。
△;線がややぼやけるが、かなり認識できる。
×:線がぼやけて認識辛い。
【0051】
[実施例1]
ポリエステル層(A)として、平均粒径1.7μmの塊状シリカ粒子を0.07重量%含有するポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.64dl/g、融点258℃、ガラス転移温度78℃)を用い、ポリエステル層(B)として、平均長径15μmのパール顔料(メルク社製、製品名「IRIODIN 111」)5重量%を含有するイソフタル酸を12モル%共重合した融点228℃の共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.64dl/g、融点228℃)を用い、A、B層とも別々の押出機にて280℃で溶融混練し、A/B/Aの3層構成で、厚み比が3/19/3となるよう3層ダイに送り、急冷固化して465μmの未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを110℃に加熱し、縦方向に3.0倍に延伸し、次いで120℃に加熱した縦延伸フィルムを、横方向に3.1倍に延伸した。その後、230℃の熱固定温度で3秒間熱固定処理を行い、厚み50μm(厚み比6/38/6μm)の二軸配向延伸積層フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0052】
[実施例2〜4、比較例1〜5]
表1に示す材料を用いた以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを作製し評価した。評価結果を表1に示す。
【0053】
なお、実施例4では、延伸温度を縦横共140℃として、未延伸フィルムの厚みを400μmとした。比較例4は、縦延伸倍率を3.4倍、横延伸倍率を3.6倍とした。
【0054】
【表1】

【0055】
表1の結果から明らかなように、本発明の要件を満足する実施例1〜4のフィルムは、実使用においても満足すべき結果である。一方、いずれかの要件を満足していない比較例1〜5のフィルムは従来品と比較して劣るものである。
【0056】
【発明の効果】
本発明により得られた積層ポリエステルフィルムは、優れた半透過反射性能を有し、液晶表示部のバックライトを光源とする透過光において良好な視認性が得られ、同時に、可視光を反射、拡散する添加剤をその特性が発揮されるべく、フィルム基材中に配置させた状態で含有せしめる方法を用いることによって、透過光および反射光両方での液晶表示の視認性に優れ、積層構成にすることで製膜安定性の高い、液晶表示用に好適な積層ポリエステルフィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル層(A)、ポリエステル層(B)及びポリエステル層(A)の少なくとも3層からなる二軸配向した積層ポリエステルフィルムであって、中間層のポリエステル層(B)中に平均長径0.5μm以上125μm以下のパール顔料を0.5〜30重量%含有し、該積層ポリエステルフィルムの光線透過率が下記式(1)を満足し、ポリエステル層(A)を形成するポリエステルの融点がポリエステル層(B)を形成するポリエステルの融点より2℃以上高いことを特徴とする半透過反射性能を有する積層ポリエステルフィルム。
【数1】

【請求項2】
パール顔料が、二酸化チタンおよび/または酸化鉄により被覆された平板状マイカ粒子である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に粘着層が積層された請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
積層ポリエステルフィルムの片面上にハードコート層が積層された請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
液晶表示装置の光源部に用いられる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2007−15108(P2007−15108A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−90885(P2002−90885)
【出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】