説明

積層体および包装材料

【課題】少なくとも、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる積層体であって、強浸透性物質からなる内容物を包装しても、バリア層としてのアルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度が低下することなく密着強度に優れ、かつプレス成形の際、外観上の不良等が起こりにくい成形性に優れた積層体および包装材料を提供する。
【解決手段】前記アルミニウム箔層、アンカーコート層、サンド樹脂層がそれぞれ下記に示す層からなることを特徴とする積層体。(1)アルミニウム箔層が、厚さ9〜200μmの範囲からなり、少なくともシーラント層側に表面処理が施されている層。(2)アンカーコート層が、イオン高分子錯体と架橋剤からなる層。(3)サンド樹脂層が、熱可塑性樹脂からなる層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる積層体に関し、さらに詳しくはアルミニウム箔に対する密着性に優れ、かつプレス成形工程において外観上の不良が起こりにくい成形性に優れた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話などの携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星などに用いられる電池として、超薄型化、小型化の可能なリチウム電池が盛んに開発されている。このリチウム電池用の外装材としては、従来電池包材として用いられてきた金属製缶とは異なり、軽量で電池の形状を自由に選択できるという利点から、多層フィルム(例えば、最外層/バリア層/シーラント層のような構成)が用いられるようになってきた。こうした積層体をプレス成形して凹部を形成し、該当部に電解液を収納してリチウム電池とする。
【0003】
リチウム電池は、その内容物として正極材、負極材と共に、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの非プロトン性溶媒にリチウム塩を溶解した電解液、もしくはその電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層を含んでいる。この電解液は強浸透性であり、シーラント層を通過して、アルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度を低下させる。その結果、最終的には電解液が漏れ出すといった問題があり、アルミニウム箔層とシーラント層との層間密着強度を強め、内容物耐性を持たせることは必須である。
【0004】
また、電池の電解質であるリチウム塩としてはLiPF6、LiBF4などの物質が用いられているが、これらの塩は水分との加水分解反応によりフッ化水素酸を発生する。フッ化水素酸は金属面を腐食し、多層フィルムの各層間のラミネート強度低下を引き起こす。アルミニウム箔をバリア層に用いることで、包材表面からの水分侵入はほぼ遮断される。しかしながら、リチウム電池用の外装材は多層フィルムをヒートシールによって貼り合わせた構造をしているため、最内層であるシーラント層のシール部端面からの水分の侵入を完全に遮断することはできない。ゆえにアルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度をさらに強固にし、発生したフッ化水素酸によってそれらのラミネート強度が低下しないようにすることも必須である。
【0005】
また、アルミニウム箔層とシーラント層のラミネート強度が弱いと、積層体をプレス成形する際に、デラミネーションが発生し、成形安定性が悪いだけでなく、シーラント層が白化したり、クラックが発生するなど外観上の不具合が問題となることも多い。こうした理由から、プレス成形のような大きな衝撃が加わる状況下においても十分なラミネート強度を維持できることが重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、強浸透性物質からなる内容物を包装しても、バリア層としてのアルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度が低下することなく密着強度に優れ、かつプレス成形の際、外観上の不良等が起こりにくい成形性に優れた積層体および包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、少なくとも、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/
サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる積層体であって、前記アルミニウム箔層、アンカーコート層、サンド樹脂層がそれぞれ下記に示す層からなることを特徴とする積層体である。
(1)アルミニウム箔層が、厚さ9〜200μmの範囲からなり、少なくともシーラント層側に表面処理が施されている層。
(2)アンカーコート層が、イオン高分子錯体と架橋剤からなる層。
(3)サンド樹脂層が、熱可塑性樹脂からなる層。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記アンカーコート層を構成するイオン高分子錯体が、ポリエチレンイミンとカルボキシル基を有する多糖類からなることを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記アンカーコート層を構成するイオン高分子錯体が、ポリエチレンイミンおよびエチレンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体からなることを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記アンカーコート層を構成する架橋剤が、オキサゾリン誘導体基を有するポリマーからなることを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記アンカーコート層をアルミニウム箔表面上に1.0g/m2以下の範囲で塗布した後に、サンド樹脂層を積層させたことを特徴とする請求項1〜4記載の積層体である。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記サンド樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、またはエチレン−α−オレフィン共重合体、またはポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もしくはそれら2種以上の混合物系であることを特徴とする請求項1〜5記載の積層体である。
【0013】
請求項7記載の発明は、前記アルミニウム箔に施した表面処理が、熱水変成処理であることを特徴とする請求項1〜6記載の積層体である。
【0014】
請求項8記載の発明は、前記熱水変成処理が、ベーマイト処理であることを特徴とする請求項7記載の積層体である。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体を作製する段階で、もしくは作製した後に、熱ラミネートを施したことを特徴とする積層体である。
【0016】
請求項10記載の発明は、少なくとも請求項1〜9のいずれかに記載の積層体を最小単位として含むことを特徴とする包装材料である。
【0017】
請求項11記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の積層体をリチウム電池用包装材料として用いたことを特徴とする包装材料である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層体は、表面処理(特に熱水変成処理)を施したアルミニウム箔上に、熱可塑性樹脂からなるサンド樹脂層でシーラント層を貼り合わせた構成をしている。特に、アンカーコート剤として、イオン高分子錯体に架橋剤を添加することでアンカーコート剤の硬化が促進され、より密着強度に優れた積層体を得ることが可能である。また、同時に成形性に優れた積層体を得ることができる。さらに、熱ラミネートを行うことでより強固な剥離できない積層体を得ることもできる。
【0019】
本発明の積層体およびそれを用いた包装材料は、リチウム電池用包装材料や浴用剤の包装材料、および蓋材以外にもその強浸透性内容物耐性から、殺菌剤、湿布剤などの包装材料として使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1記載の発明は、少なくとも、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなり、アルミニウム箔層、アンカーコート層、サンド樹脂層がそれぞれ以下に示すような層であることを特徴とする積層体である。
【0021】
アルミニウム箔層は、厚さ9〜200μmからなり、少なくともシーラント層側に表面処理が施されている層である。
【0022】
アンカーコート層は、イオン高分子錯体と架橋剤からなる層である。
【0023】
サンド樹脂層は、熱可塑性樹脂からなる層である。
【0024】
アルミニウム箔層は外からの水分を遮断するバリア層として用いられ、樹脂層との密着強度(ラミネート強度)を向上させるために、表面のサンド樹脂層側もしくは両面に表面処理が施されている。特に熱水変成処理が好ましい。
【0025】
このようなアルミニウム箔の熱水変成処理方法としては、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理のような化成処理、アルマイトを形成する陽極酸化処理などの公知の表面処理技術を用いることも可能であるが、純水に少量のアンモニアやトリエタノールアミンなどのアルカリを添加し、80℃以上の温度で表面処理を施す、ベーマイト処理が好ましく用いられる。
【0026】
ベーマイト処理に用いる処理水としては水道水、脱イオン水、蒸留水、あるいは脱イオン後に蒸留した蒸留水などいずれも使用可能であるが、特に、脱イオン化された蒸留水が好ましく、その指標として電気伝導度1μS/cm以下の水を使用するのが好ましい。また、これらの処理水には、少量のアンモニアやトリエタノールアミンなどのアミン類のようなアルカリを0.1〜1%添加し、常圧下で80〜100℃、さらに好ましくは90〜100℃の範囲でベーマイト処理を施した方がよい。
【0027】
上記のような熱水変成処理をアルミニウム箔表面に施すことで、表面に凹凸を作って表面形状を粗くすることができる。また同時に、水酸基などの官能基を表面に形成させることも可能である。表面の粗さによる投錨効果、および官能基とサンド樹脂とで水素結合などが起こることで、アルミニウム箔層と樹脂層との密着強度を強くすることができる。密着をよくすることで、ヒートシール強度向上や、層間からの水分の侵入を遮断することが可能である。
【0028】
アルミニウム箔としては、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9〜200μm、好ましくは15〜100μmの範囲の厚みを持つものが使用できる。また、その材質は一般の軟質アルミニウム箔を用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、および成形時の延展性を付与させる目的で、鉄含有率が0.1〜9.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%の範囲のアルミニウム箔を用いるのがよい。鉄含有率が0.1wt%以下であると耐ピンホール性、延展性を十分に付与させることができず、9.0wt%以上になると柔軟性が損なわれる。その結果、プレス成形時の大きな衝撃を軽減することが困
難で、デラミネーションの発生原因となる。
【0029】
熱水変成処理を施したアルミニウム箔上に直接熱可塑性樹脂を押出ラミネーションなどの方法を用いて積層すると、電解液によるアルミニウム表面の侵食を受けやすく、ラミネート強度の低下が著しい。より強浸透性内容物に対する耐性を持たせるには、アルミニウム箔上にアンカーコート層をグラビアコーティングなどの方法により設けることが望ましい。
【0030】
アンカーコート層には、イオン高分子錯体に架橋剤としてオキサゾリン誘導体基を有するポリマーを添加したものを用いる。
【0031】
イオン高分子錯体としては、一つは、ポリエチレンイミンを主成分とし、カルボキシル基を有する多糖類とのキレート錯体である。多糖類としてはデンプン、セルロース、キチン、ペクチン、植物ゴム(例えばアラビアゴム)などが挙げられるが、とくに制限されるものではない。それら多糖類をカルボキシル基に誘導体化したものが用いられる。
【0032】
もう一つは、同様にポリエチレンイミンを主成分とし、エチレンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体とのキレート錯体である。カルボキシル基を有するモノマーとしてはα、β−不飽和カルボン酸などのアクリル酸、メタクリル酸が代表的で、それらをエチレンなどと共重合させイオン架橋したアイオノマーもキレート錯体を形成できる。さらにはフマル酸やマレイン酸などもエチレンやα−オレフィンなどと共重合して用いることも可能である。
【0033】
上記高分子イオン錯体はともにポリエチレンイミンとのキレート錯体で、ポリエチレンイミン単独時の物性と比較するとアルミニウム箔に対する濡れ特性が向上する。
【0034】
架橋剤としては、オキサゾリン誘導体基を有するポリマーが用いられる。ポリマー主鎖には、好ましくはスチレン・アクリル系の樹脂を用いることが可能であるが、特にこれに制限されるものではない。
【0035】
オキサゾリン誘導体基がイオン高分子錯体中のカルボキシル基と架橋反応することで、アンカーコート剤の硬化が促進され、さらに強固な密着性を付与することができる。これにより耐湿性、耐熱性、耐溶剤性および耐内容物特性が向上するだけでなく、プレス時のクラック発生や白化を抑制し、安定した成形安定性を得ることが可能となる。
【0036】
アンカーコート層は塗布量1.0g/m2以下の範囲、好ましくは0.5g/m2以下の範囲であることが望ましい。塗布量が1.0g/m2以上であると、アンカーコート層での凝集剥離が起きてラミネート強度が低くなる。
【0037】
次に、サンド樹脂層について詳細な説明をする。包材のシーラント層とアンカーコート層を施したアルミニウム箔層とを貼り合わせる方法としては、ドライラミネーション、ウェットラミネーションなどの接着剤を使用する方法とがある。しかしながら、このような方法に使用する接着剤には強浸透性の内容物に対する耐性がないものが多く、特にリチウム電池用の電解液のような内容物を入れると、接着剤が膨潤してデラミネーションが起こる。
【0038】
従って、シーラント層とアルミニウム箔層とを接着する場合には、接着剤を必要としない押出ラミネーションが好ましく用いられる。そこでサンド樹脂としては、ポリエチレン、またはエチレン−α−オレフィン共重合体、またはポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もし
くはそれら2種以上の混合物系などの熱可塑性樹脂が用いられる。
【0039】
包材への耐熱性付与を考慮する必要がある場合は、酸無水物変成したポリプロピレンをサンド樹脂として用いることが好ましい。このベースとなるポリプロピレンとしては特に制限を受けることはなく、ホモタイプ、ブロックタイプ、ランダムタイプいずれも使用することができるが、プレス成形時の白化を抑制する必要性から結晶化度の低いランダムタイプのポリプロピレンを採用することが望ましい。
【0040】
サンド樹脂層の厚みは30μm以下であることが好ましい。30μmより厚いとシーラント層と貼り合わせた際の全体の厚みが厚くなり、シール不良を引き起こす原因となる。
【0041】
シーラント層は包装材料を形成する際に、積層体同士をヒートシールするために積層するものである。シーラント層としては、サンド樹脂との接着性を考慮すると同種のものが好ましい。さらに包材の耐熱性を考慮すると、ポリプロピレン系が好ましく用いられ、単層でも、ランダム/ホモなどの2層構成でも、ランダム/ホモ/ランダム、ランダム/ブロック/ランダムなどのような3層構成でもかまわない。
【0042】
シーラント層の厚みは20〜100μmの範囲、好ましくは30〜70μmの範囲のものがより好適である。厚みが薄すぎるとシール強度が弱くなり、厚すぎると積層体全体の厚みが厚くなるために、シール不良が発生しやすい。さらに、充填ラインでのシールに充分な時間を必要とし、サイクル短縮に支障をきたして、生産効率が悪化する。また、シーラント端面からの水分侵入が起こりやすくなる可能性がある。
【0043】
バリア層として用いるアルミニウム箔が最外層になった場合、加工、流通などのときにピンホールが発生する恐れがあり、これを防ぐ目的でアルミニウム箔の外に最外層を設けることができる。また、リチウム電池用外装材として用いる場合には、アルミニウムとハードとの直接の接触を避けなければならない。これらを考慮して、最外層は絶縁性のある樹脂層が好ましく用いられる。そのような樹脂層の例として、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの延伸もしくは未延伸フィルムを単層、または2層以上積層した多層フィルムを使用することができる。耐ピンホール性、絶縁性を向上させるために6μm以上、また成形性を考慮すると40μm以下の厚みのフィルムがよく、好ましくは15〜25μmのものである。
【0044】
最外層フィルムとアルミニウム箔層はドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーションなど公知の手法により貼り合わせることができる。
【0045】
さらに、この積層体の層間密着性を向上させるために熱ラミネートを行うことができる。熱ラミネート方法は公知のラミネート技術を用いることができる。一般には最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる積層体を作製した後に、加熱ロールとプレスロール間に通すことによって加熱加圧処理を行う方法である。
【0046】
熱ラミネートによりアルミニウム箔とシーラント層間の密着はより向上し、リチウム電池の電解液のような強浸透性内容物に対する耐性も著しく向上する。
【0047】
本発明の積層体は、単体もしくは各層間に中間層を設けることで、各種包装材料として用いることが可能である。以下に、構成例を示す。
【0048】
・熱可塑性樹脂層(最外層)/熱可塑性樹脂層(中間層)/AL/ac/サンド/シー
ラント層
・熱可塑性樹脂層(最外層)/紙層(中間層)/AL/ac/サンド/シーラント層
・熱可塑性樹脂層(最外層)/AL/ac/サンド/シーラント層
なお、上記のALはアルミニウム箔層、acはアンカーコート層、サンドはサンド樹脂層をそれぞれ示す。最外層、および中間層はドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーションなどの公知の手法により貼り合わせることができる。
【0049】
本発明において、積層体を構成する各層には、表面濡れ性や積層化加工、成形安定性を改善する目的のために、適宜、コロナ処理やオゾン処理などの表面活性化処理を施してよい。
【0050】
本発明の積層体は、リチウム電池用の包装材料だけでなく、浴用剤用の包装材料や蓋材などにも用いることが可能である。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
[使用材料]
<アルミニウム箔>
・AL−1:ベーマイト処理を施したもの
・AL−2:ベーマイト処理を施していないもの
<アンカーコート剤>
・ac−1:ポリエチレンイミン/エチレン−アクリル酸共重合体錯体+5wt%オキサゾリン基を有するポリスチレンポリマー
・ac−2:ポリエチレンイミン/エチレン−アクリル酸共重合体錯体
<サンド樹脂>
・サンド−1:酸無水物変成ポリプロピレン(ランダムベース 融点140℃ 15μm)
・サンド−2:酸無水物変成ポリプロピレン(ホモベース 融点165℃ 15μm)
<シーラントフィルム(40μm)>
・ シ−1:ポリプロピレン系3層フィルム(ランダム/ホモ/ランダム)
<実施例1>
最外層として厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルムと、アルミニウム箔AL−1をドライラミネーションにより貼り合わせた。次に、AL−1のベーマイト処理面にアンカーコート層としてac−1の固形分5wt%酢酸エチル溶液を、乾燥後の塗布量が0.5g/m2以下になるように塗布し、サンド樹脂としてサンド−1を押出ラミネートすることによりシーラント層であるシ−1を貼り合わせた。このときサンド樹脂層の厚みは15μmとした。この評価用サンプルを用いて、下記評価方法1〜4を行った。
【0053】
<実施例2>
アルミニウム箔にAL−1、アンカーコート剤にac−2、サンド樹脂にサンド−1、シーラント層にシ−1を用いた以外は実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、下記評価方法1〜4を行った。
【0054】
<実施例3>
アルミニウム箔にAL−1、サンド樹脂にサンド−1、シーラント層にシ−1を用いた以外は実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。アンカーコート剤は使用しなかった。この評価用サンプルを用いて、下記評価方法1〜4を行った。
【0055】
<実施例4>
アルミニウム箔にAL−2、アンカーコート剤にac−1、サンド樹脂にサンド−1、シーラント層にシ−1を用いた以外は実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、下記評価方法1〜4を行った。
【0056】
<実施例5>
アルミニウム箔にAL−1、アンカーコート剤にac−1、サンド樹脂にサンド−2、シーラント層にシ−1を用いた以外は実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、下記評価方法1〜4を行った。
【0057】
<実施例6>
実施例1で得られた積層体を、200℃の加熱ロールとプレスロール間に通すことによって熱ラミネートを行い、評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、下記評価方法1〜4を行った。
【0058】
<実施例7>
実施例5で得られた積層体を、200℃の加熱ロールとプレスロール間に通すことによって熱ラミネートを行い、評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、下記評価方法1〜4を行った。
【0059】
[評価]
<評価方法1:シール強度>
評価用サンプルのシーラント層同士を、190℃、294kPa、3sec、シール幅15mmの条件にてヒートシールしたサンプルの剥離試験を行い、ヒートシール強度を測定した。また、100℃雰囲気下におけるヒートシール強度も同様の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0060】
<評価方法2:ラミネート強度>
炭酸エチル/炭酸エチルメチル=1/1溶液にLiPF6を1.5Nとなるように濃度調製したリチウム電池用電解液中に、15mm幅にカットした評価用サンプルを浸漬した。85℃で2週間保存した後に、アルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度を測定した。結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

表1の実施例3より、アンカーコート剤を塗布しない場合、リチウム電池用電解液への耐性が著しく低下することが示された。また、表1の実施例4より、アルミニウム箔にベーマイト処理が施されていない場合、ヒートシール強度、ラミネート強度ともに充分な強度を得ることができないことがわかった。
【0062】
<評価方法3:成形性>
評価用サンプルを各100個プレス成形して、成形後のピンホールやしわ、白化の状況などの外観を確認した。プレス成形は、その凹部の形状を30mm×50mm×5mmに調整した。結果を表2に示した。
【0063】
【表2】

表2の実施例3、実施例4より、ラミネート強度が弱い評価サンプルは耐衝撃性に劣り、プレス成形時にデラミネーションが発生することがわかった。また、表2の実施例5、実施例7より、サンド樹脂にホモベースのポリプロピレンを用いた場合、ランダムベースのポリプロピレンよりも白化しやすいことがわかった。さらに、実施例1と実施例2を比
較することにより、ランダムベースのポリプロピレンを使用した場合でも、アンカーコート剤にオキサゾリン基を有するポリスチレンポリマーの架橋剤を添加したほうが、成形時の白化を抑制できることがわかった。これは、架橋剤の添加により、アンカーコート層の硬化が促進され、アルミニウム箔との密着が改善された結果であると考察した。
【0064】
<評価方法4:その他>
強浸透性の内容物である香料を含む浴用剤粉末を、各評価用サンプルの三方製袋したパウチに入れてシールし密封した。40℃で1ヵ月保存した後、アルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度を測定した。結果を表3に示した。
【0065】
【表3】

表3の実施例3より、アンカーコート剤を塗布しない場合、また実施例4より、ベーマイト処理を施さない場合、ラミネート強度が劣化することがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる積層体であって、前記アルミニウム箔層、アンカーコート層、サンド樹脂層がそれぞれ下記に示す層からなることを特徴とする積層体。
(1)アルミニウム箔層が、厚さ9〜200μmの範囲からなり、少なくともシーラント層側に表面処理が施されている層。
(2)アンカーコート層が、イオン高分子錯体と架橋剤からなる層。
(3)サンド樹脂層が、熱可塑性樹脂からなる層。
【請求項2】
前記アンカーコート層を構成するイオン高分子錯体がポリエチレンイミンとカルボキシル基を有する多糖類からなることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記アンカーコート層を構成するイオン高分子錯体が、ポリエチレンイミンおよびエチレンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体からなることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記アンカーコート層を構成する架橋剤が、オキサゾリン誘導体基を有するポリマーからなることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項5】
前記アンカーコート層をアルミニウム箔表面上に1.0g/m2以下の範囲で塗布した後に、サンド樹脂層を積層させたことを特徴とする請求項1〜4記載の積層体。
【請求項6】
前記サンド樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、またはエチレン−α−オレフィン共重合体、またはポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もしくはそれら2種以上の混合物系であることを特徴とする請求項1〜5記載の積層体。
【請求項7】
前記アルミニウム箔に施した表面処理が、熱水変成処理であることを特徴とする請求項1〜6記載の積層体。
【請求項8】
前記熱水変成処理が、ベーマイト処理であることを特徴とする請求項7記載の積層体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の積層体を作製する段階で、もしくは作製した後に、熱ラミネートを施したことを特徴とする積層体。
【請求項10】
少なくとも請求項1〜9のいずれかに記載の積層体を最小単位として含むことを特徴とする包装材料。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の積層体をリチウム電池用包装材料として用いたことを特徴とする包装材料。

【公開番号】特開2006−82464(P2006−82464A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270980(P2004−270980)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】