説明

積層光学フィルムの製造方法、積層光学フィルムおよびその用途

【課題】本発明は、液晶表示装置において画面を斜め方向から見たときのコントラスト比が高く、また画面を斜め方向から見たときのカラーシフト量が小さく、更に均一な画面表示を可能にするとともに、耐久性に優れ、外光の映り込みが少ない積層光学フィルムとその製造方法、並びにそれを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の積層光学フィルムの製造方法は、固有複屈折が正の樹脂と固有複屈折が負の樹脂とを共押出法により積層製膜し、固有複屈折が正の樹脂からなる層と固有複屈折が負の樹脂からなる層とが積層された原反フィルムを得る工程と、得られた原反フィルムをフィルム長手方向に対して直交方向に一軸延伸する工程と有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層光学フィルムの製造方法、積層光学フィルムおよびその用途に関する。詳しくは、本発明は、液晶表示装置において優れた視野角特性を実現する積層光学フィルムとその製造方法、並びに該フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルムは液晶表示装置の視野角補償を目的として一般的に用いられており、斜め視野角での光漏れを防ぎ、コントラスト比の低下を防ぐ働きをする。位相差フィルムとして用いられる光学フィルムには、ポリカーボネートフィルム、ポリエステルフィルム、セルロースアセテートフィルム、環状オレフィンフィルム等が挙げられる。
【0003】
中でも環状オレフィンフィルムは、透明性、耐熱性、寸法安定性、低光弾性等に優れることから、位相差フィルムを始め各種光学部品の材料として注目されている。
近年、従来のTNモードに加え、VAモードやIPSモードの高視野角液晶モードが実用化され、高画質が要求されるテレビ用途においても、液晶表示装置(液晶テレビ)が広く普及してきている。例えばVAモードの液晶表示装置用の位相差フィルムとしては、AプレートとCプレートを組み合わせた補償方式や、二軸性フィルムを1枚または2枚組み合わせた補償方式が、視野角改善に特に効果が高いと知られている。
【0004】
しかしこれらの補償方式であっても、画面を斜め方向から見たときの色の変化(以下、カラーシフトと略す)、例えば黒表示状態で本来黒色になるべきところが紫に着色して見える等、については視野角補償が不十分であった。これを改善するためには、可視光領域で短波長ほど位相差が小さく、長波長になるにつれて位相差が大きくなるような特性、いわゆる逆波長分散性を持つ位相差フィルムが必要であることが知られている。例えば特許文献1では、位相差フィルムに用いる樹脂の改質によって逆波長分散性を実現する手法が提案されている。しかしながら、樹脂の改質により樹脂製造条件の確立が困難になったり、フィルムの強度、透明性、安定性等が損なわれたりするなど、広く実用化されるには至っていない。
【0005】
樹脂の改質以外の方法として、特定位相差の層を積層し、合計の位相差が逆波長分散性となるよう制御するものもある。例えば特許文献2では重合性液晶からなる位相差層と樹脂フィルムとの積層により、逆波長分散性を実現する手法が提案されている。しかしながら、重合性液晶による位相差層は数ミクロン程度の厚みの層を数%の厚みバラツキでコントロールする必要がある等、作製難度が高い。加えてこのような積層による手法では、正面方向から観測した時は所定の位相差値および逆波長分散性が得られるものの、斜め方向から観測した時は光軸ずれの影響により所定の位相差が得られず、斜め方向の視野角補償ができないという問題がある。
【0006】
位相差層を積層するための他の方法として、特許文献3では共押出し法によるフィルム製膜、位相差フィルム作製が提案されている。しかしながら、各層の密着が悪く層間に接着層を挟む必要があり、層構成および製造装置が複雑になるという問題がある。以上のように、斜め方向からのコントラスト比を高くし、かつカラーシフトを低下させるための手法は十分に確立されておらず、改良が要望されていた。さらに、携帯電話、携帯ゲーム機等の携帯機器用や車載用の液晶表示装置には、上記の優れた視野角特性に加えて、厳しい環境下での長期使用にも耐えうる耐久性も要求されていた。
【特許文献1】特開2006−225626
【特許文献2】特開2006−268033
【特許文献3】特開2004−133313
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液晶表示装置において画面を斜め方向から見たときのコントラスト比が高く、また画面を斜め方向から見たときのカラーシフト量が小さく、更に均一な画面表示を可能にするとともに、耐久性に優れ、外光の映り込みが少ない積層光学フィルムとその製造方法、並びにそれを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層光学フィルムの製造方法は、
固有複屈折が正の樹脂と固有複屈折が負の樹脂とを共押出法により積層製膜し、固有複屈折が正の樹脂からなる層と固有複屈折が負の樹脂からなる層とが積層された原反フィルムを得る工程と、
得られた原反フィルムをフィルム長手方向に対して直交方向に一軸延伸する工程とを有し、
下記式(i)〜(iii)で表される特性を全て満たす積層光学フィルムを製造すること
を特徴としている。
R450≦R550≦R650 …(i)
1.0≦R650/R550≦1.2 …(ii)
70nm≦R550≦150nm …(iii)
(上記式(i)〜(iii)中、R450、R550、R650は、順に、波長450nm
、550nm、650nmにおける積層光学フィルムの面内位相差を表す。)
【0009】
本発明の積層光学フィルムの製造方法では、固有複屈折が正の樹脂が、環状オレフィン系樹脂からなることが好ましく、環状オレフィン系樹脂が、下記式(1)で表わされる構造単位(1)および下記式(2)で表わされる構造単位(2)を有する共重合体を含むことがより好ましい。
【0010】
【化1】

(式(1)中、mは0以上の整数、pは0以上の整数であり、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R4は、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしく
は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)極性基、
(f)R1とR2、またはR3とR4が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、
前記結合に関与しないR1〜R4は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)R1とR2、R3とR4、またはR2とR3が、相互に結合して形成された芳香環あるい
は非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないR1〜R4は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。])
【0011】
【化2】

(式(2)中、Yは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R5〜R8はそれぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f
)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしく
は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)極性基、
(f)R5とR6、またはR7とR8が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、
前記結合に関与しないR5〜R8は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)R5とR6、R7とR8、またはR6とR7が、相互に結合して形成された芳香環あるい
は非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないR5〜R8は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。])
【0012】
本発明の積層光学フィルムの製造方法では、固有複屈折が負の樹脂が、ビニル芳香族系樹脂からなることが好ましく、
ビニル系芳香族系樹脂が、
下記式(3)で表わされる構造単位(3)と、
下記式(4)で表わされる構造単位(4)および/または下記式(5)で表わされる構造単位(5)と
を有する共重合体を含むことがより好ましい。
【0013】
【化3】

(式(3)中、A1は水素原子またはメチル基を示す。A2〜A4は各々独立に水素原子;
ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を表す。)
【0014】
【化4】

(式(4)中、Xは酸素原子もしくは置換気を有する窒素原子である。式(5)中、A5
は水素原子またはメチル基を示す。A6は水素原子もしくは炭素原子数1〜30の炭化水
素基である。)
本発明の積層光学フィルムの製造方法では、固有複屈折が正の樹脂からなる層と固有複屈折が負の樹脂からなる層とが直接接して積層されていることが好ましい。
【0015】
本発明の積層光学フィルムの製造方法では、固有複屈折が正の樹脂のガラス転移温度と固有複屈折が負の樹脂のガラス転移温度との差が、20℃以内であることが好ましい。
本発明の積層光学フィルムは、上記本発明の積層光学フィルムの製造方法により得られることを特徴としている。
【0016】
また本発明の積層光学フィルムは、固有複屈折が正の樹脂からなる層と固有複屈折が負の樹脂からなる層とが直接接して積層しており、かつ、下記式(i)〜(iii)で表され
る特性を全て満たすことを特徴としている。
R450≦R550≦R650 …(i)
1.0≦R650/R550≦1.2 …(ii)
70nm≦R550≦150nm …(iii)
(上記式(i)〜(iii)中、R450、R550、R650は、順に、波長450nm
、550nm、650nmにおける積層光学フィルムの面内位相差を表す。)
【0017】
このような本発明の積層光学フィルムは、さらに下記式(iv)で表わされる特性を満
たすことが好ましい。
【0018】
1.0≦NZ≦3.0 …(iv)
(式(iv)中、NZはNZ=(nx−nz)/(nx−ny)で表される係数であり、波長550nmにおける値である。ここで、nxは積層光学フィルム面内での最大屈折率、nyは積層光学フィルム面内でnxに直交する方向の屈折率、nzはnxおよびnyに対
して直交する積層光学フィルム厚み方向の屈折率を表す。)
本発明の積層光学フィルムは、固有複屈折が正の樹脂のガラス転移温度と固有複屈折が負の樹脂のガラス転移温度とが、いずれも110℃以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の偏光板は、上記本発明の積層光学フィルムが、偏光子の少なくとも片面に、接着剤もしくは粘着剤を介して貼合されてなることを特徴としている。
このような本発明の偏光板は、反射防止層および防眩層から選ばれる少なくとも1種の層をさらに有することが好ましい。
【0020】
本発明の偏光板は、積層光学フィルムの面内での最大屈折率方向と、偏光子の透過軸方向とが平行でないように貼合されてなることが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、上記本発明の偏光板を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液晶表示装置において画面を斜め方向から見たときのコントラスト比が高く、また画面を斜め方向から見たときのカラーシフト量が小さく、更に均一な画面表示が可能な液晶表示装置に好適な積層光学フィルムおよびその製造方法を提供することができる。また、本発明の積層光学フィルムを用いることにより、液晶表示装置において画面を斜め方向から見たときのコントラスト比が高く、また画面を斜め方向から見たときのカラーシフト量が小さく、更に均一な画面表示が可能な偏光板およびそれを用いた液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について具体的に説明する。
[積層光学フィルムの製造方法]
本発明に係る積層光学フィルムの製造方法は、
固有複屈折が正の樹脂と固有複屈折が負の樹脂とを共押出法により積層製膜し、固有複屈折が正の樹脂からなる層と固有複屈折が負の樹脂からなる層とが積層された原反フィルムを得る工程と、
得られた原反フィルムをフィルム長手方向に対して直交方向に一軸延伸する工程とを有する。
【0023】
[固有複屈折]
固有複屈折とは、本来は樹脂を構成する分子鎖の構成単位に遡って、モノマー当りの光学異方性を屈折率値で表した値である(文献「機能材料、1987年3月号、21頁」参照)。樹脂の複屈折は、このモノマーの固有複屈折と配向関数の積で記述され、光学フィルムにおいては、樹脂の固有複屈折の正負によって、フィルムの光学特性が大きくかわる。例えば、正の固有複屈折を持つ樹脂であれば、フィルム長手方向に対して直交方向に一軸延伸する工程を経た場合に、延伸方向に沿って発生したフィルム面内の光軸方向の屈折率が最も大きくなるという性質を有する。一方、負の固有複屈折を持つ樹脂であれば、フィルム長手方向に対して直交方向に一軸延伸する工程を経た場合に、延伸方向に沿って発生したフィルム面内の光軸方向の屈折率が最も小さくなり、正の固有複屈折を持つ樹脂とは逆の性質を有する。本発明では、これら固有複屈折が正の樹脂と固有複屈折が負の樹脂とを共押出法等により積層製膜するところに特徴を有する。
【0024】
固有複屈折が正の樹脂
本発明において、固有複屈折が正の樹脂としては、固有複屈折が正であって、フィルム状に押出成形可能な樹脂を特に制限なく用いることができる。固有複屈折が正の樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、環状オレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0025】
本発明では、固有複屈折が正の樹脂が、環状オレフィン系樹脂からなることが好ましい。本発明において、環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系単量体を重合あるいは共重合して得られる重合体であり、たとえば以下のものが挙げられる。
(1)環状オレフィン系単量体の開環重合体。
(2)環状オレフィン系単量体と共重合性単量体との開環共重合体。
(3)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体。
(4)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体。
(5)環状オレフィン系単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体。
(6)環状オレフィン系単量体の付加型(共)重合体及びその水素添加(共)重合体。
(7)環状オレフィン系単量体とアクリレートとの交互共重合体。
【0026】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂としては、このうち上記(1)、(2)、(3)が好ましく、上記(3)がより好ましい。
本発明で用いる環状オレフィン系樹脂は、より好ましくは、下記式(1)で表わされる構造単位(1)と、下記式(2)で表わされる構造単位(2)とを有する。さらに必要に応じて(1)、(2)以外の構造単位を含むことは任意である。
【0027】
【化5】

(式(1)中、mは0以上の整数、pは0以上の整数であり、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R4は、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしく
は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)極性基、
(f)R1とR2、またはR3とR4が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、
前記結合に関与しないR1〜R4は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)R1とR2、R3とR4、またはR2とR3が、相互に結合して形成された芳香環あるい
は非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないR1〜R4は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。])
【0028】
【化6】

(式(2)中、Yは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R5〜R8はそれぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f
)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしく
は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)極性基、
(f)R5とR6、またはR7とR8が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、
前記結合に関与しないR5〜R8は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)R5とR6、R7とR8、またはR6とR7が、相互に結合して形成された芳香環あるい
は非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないR5〜R8は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。])
【0029】
構造単位(1)および(2)を有する環状オレフィン系樹脂は、たとえば、下記式(1−m)で表わされる1種以上の単量体と、下記式(2−m)で表わされる1種以上の単量体とを開環共重合して、必要に応じて水素添加して得られる。
【0030】
【化7】

(式(1−m)中、m、p、R1、R2、R3およびR4の定義は、式(1)の定義のとおりである。)
【0031】
【化8】

(式(2−m)中、R5、R6、R7およびR8の定義は、式(2)の定義のとおりである。)
式(1)または(1−m)中のR1〜R4は、水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、式(2)または(2−m)中のR5〜R8は、水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を表す。前記の原子および基について以下に説明する。
【0032】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
【0033】
また、上記の置換または非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基(例えば、−(CH2m−(式中、mは1〜10の整数)で表されるアルキレン基);酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基(例えば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルホン基(−SO2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−
NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R2)−(式中、Rはメチル、エチル等のアルキル基))等が挙げられ、これらの複数を含
む連結基であってもよい。
【0034】
極性基としては、例えば水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド環含有基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル含有基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等が挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0035】
本発明で環状オレフィン系樹脂のより具体的な例としては、下記<1>〜<3>に示す共重合体を挙げることができる。これらのうち、優れた熱安定性を有し、光学特性に優れることから、<3>に示す共重合体が特に好ましい。
<1> 単量体(1−m)と単量体(2−m)との開環共重合体。
<2> 単量体(1−m)と単量体(2−m)およびその他の共重合性単量体との開環共
重合体。
<3> <1>および<2>の開環共重合体の水素添加物。
【0036】
<単量体(1−m)>
構造単位(1)は、通常、単量体(1−m)に由来する。以下に単量体(1−m)の具体例を挙げるが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。また、単量体(1−m)は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイ
コセン、
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘン
エイコセン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。
式(1−m)においてmが1でありpが0である単量体を用いると、ガラス転移温度の高い共重合体が得られる点で好ましい。
【0038】
<単量体(2−m)>
構造単位(2)は、通常、単量体(2−m)に由来する。以下に単量体(2−m)の具体例を挙げるが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。また、単量体(2−m)は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(α,βの両タイプとも可)、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0040】
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−フェニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)フェニルスルホニルベンゼン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]−8−デセン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)
などを挙げることができる。
【0041】
これらのうち、式(2−m)のR5〜R8が全て水素原子、若しくは何れか1つが炭素原子数1〜30の炭化水素基であり他が水素原子である単量体(2−m)は、得られる光学用フィルムの靭性を向上させる効果が大きい点で好ましく、特に、R5〜R8が全て水素原子、若しくは何れか1つがメチル基、エチル基またはフェニル基であり他が全て水素原子である単量体は、耐熱性の観点からも好ましい。さらに、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)は、
その合成が容易である点と、樹脂の靭性向上、ガラス転移温度の調整、良好な共押出し成形性を確保できる点で好ましい。
【0042】
本発明において、単量体(1−m)と単量体(2−m)との使用割合は、通常、重量比では単量体(1−m):単量体(2−m)=95:5〜5:95、好ましくは95:5〜60:40、より好ましくは95:5〜70:30、さらに好ましくは95:5〜75:25である。単量体(1−m)の割合が上記範囲より大きいと靱性改良の効果が期待できない場合があり、逆に、単量体(1−m)の割合が上記範囲より小さいとガラス転移温度が低くなり、耐熱性に問題が生じる場合がある。
【0043】
また他素材との密着性・接着性を高めるためには、構造単位(2)が極性基を有することも好ましい。この場合には、極性基の存在により、共押出し製膜におけるビニル芳香族系樹脂などの固有複屈折が負の樹脂からなる層との密着性を向上させることができる。
【0044】
<他の共重合性単量体>
単量体(1−m)および単量体(2−m)と共重合させることができる他の共重合性単量体としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、トリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセンなどのシクロオレフィンを挙げるこ
とができる。シクロオレフィンの炭素原子数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。これら共重合性単量体は位相差発現性改良、Tg調整、成形性改良等、樹脂の改質に有用である。
【0045】
さらにポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖にオレフィン性不飽和結合を有する不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に単量体(1−m)および単量体(2−m)を重合させてもよい。そして、この場合に得られる共重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
【0046】
単量体(1−m)および単量体(2−m)と共重合性環状単量体または不飽和二重結合含有化合物との使用割合は、[単量体(1−m)+単量体(2−m)]:[共重合性環状単量体または不飽和二重結合含有化合物]が、重量比で100:0〜50:50であることが好ましく、より好ましくは100:0〜60:40、さらに好ましくは100:0〜70:30である。
【0047】
<開環重合触媒>
これらの単量体の開環重合反応はメタセシス触媒の存在下に行われる。このメタセシス触媒は、タングステン化合物、モリブデン化合物およびレニウム化合物から選ばれた少なくとも1種の金属化合物(以下、「(a)成分」という。)と、周期表第1族元素(例えばLi、Na、Kなど)、第2族元素(例えばMg、Caなど)、第12族元素(例えばZn、Cd、Hgなど)、第13族元素(例えばB、Alなど)、第4族元素(例えばTi、Zrなど)あるいは第14族元素(例えばSi、Sn、Pbなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種の化合物(以下、「(b)成分」という。)との組み合わせからなるものであり、触媒活性を高めるために添加剤(以下、「(c)成分」という。)が含有されていてもよい。
【0048】
上記(a)成分を構成する好適な金属化合物の具体例としては、WCl6、MoCl5、ReOCl3などの特開平1−240517号公報に記載の金属化合物を挙げることがで
きる。
【0049】
上記(b)成分を構成する化合物の具体例としては、n−C49Li、(C253
l、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルミノキサン、LiHなどの特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0050】
上記(c)成分としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などを好適に用いることができるが、その他に特開平1−240517号公報に示される化合物を用いることができる。
また、上記(a)(b)(c)成分以外のメタセシス触媒として、グラブス触媒として公知のルテニウム化合物を用いることもできる。
【0051】
<水素添加>
上記<3>に示す水素添加(共)重合体における水素添加率は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0052】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)が0.2〜5.0dl/gであることが好ましい。
また、環状オレフィン系樹脂の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が8,000〜10
0,000、重量平均分子量(Mw)が20,000〜300,000の範囲のものが好適
である。
【0053】
更に、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、熱安定性および共押出し成形性を確保するため好ましくは100〜250℃、より好ましくは110〜180℃、さらに好ましくは120〜170℃である。また、本発明で用いる環状オレフィン系樹脂(B)は、上述のような環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物であってもよい。樹脂組成物には、環状オレフィン系樹脂の他、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、位相差調整剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、加工性向上剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機または無機の充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加することができる。
【0054】
固有複屈折が負の樹脂
本発明において、固有複屈折が負の樹脂としては、固有複屈折が負であって、フィルム状に押出成形可能な樹脂を特に制限なく用いることができる。固有複屈折が負の樹脂としては、たとえば、ポリスチレン樹脂、スチレンとN−フェニルマレイミドの共重合体からなる樹脂、スチレンとアクリル酸との共重合体からなる樹脂などのビニル芳香族系樹脂が挙げられる。
【0055】
本発明では、固有複屈折が負の樹脂が、ビニル芳香族系樹脂からなることが好ましい。本発明で用いるビニル芳香族系樹脂は、下記式(3)で表わされる構造単位(3)を有する。
【0056】
【化9】

(式(3)中、A1は水素原子またはメチル基を示す。A2〜A4は各々独立に水素原子;
ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を表す。)
【0057】
構造単位(3)を誘導する単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−トリフルオロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−tertブトキシスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これら単量体はいずれか単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレンを単独で/併用して用いるのが好ましい。
【0058】
本発明では、ビニル芳香族系樹脂として、上記式(3)で表わされる構造単位(3)とともに、さらに下記式(4)で表わされる構造単位(4)および/または下記式(5)で
表わされる構造単位(5)を有する共重合体を用いることがより好ましい。
【0059】
【化10】

(式(4)中、Xは酸素原子もしくは置換気を有する窒素原子である。式(5)中、A5
は水素原子またはメチル基を示す。A6は水素原子もしくは炭素原子数1〜30の炭化水
素基である。)
【0060】
ビニル芳香族系樹脂は、構造単位(4)と構造単位(5)の両方を含む構造であっても良く、構造単位(4)と構造単位(5)のいずれか一方のみが含まれる構造であっても良い。また構造単位(4)の酸無水物構造またはイミド構造は、加水分解してジカルボン酸構造やアミド酸構造になっていても良い。
【0061】
構造単位(4)を誘導する単量体の具体例としては、無水マレイン酸、マレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN置換マレイミド類、マレイン酸およびその誘導体、フマル酸およびその誘導体などが挙げられる。これら単量体はいずれか単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミドが耐熱性と環状オレフィン系樹脂層との密着性の面から好ましく用いられる。
【0062】
構造単位(5)を誘導する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アミドなどが挙げられる。これら単量体はいずれか単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの単量体のうち、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルが耐熱性と環状オレフィン系樹脂層との密着性の面から好ましく用いられる。
【0063】
本発明において、ビニル芳香族系樹脂中の構造単位(3)と、構造単位(4)および/または構造単位(5)との使用割合は、通常、重量比では構造単位(3):[構造単位(4)+構造単位(5)]=100:0〜50:50、好ましくは98:2〜60:40、より好ましくは95:5〜70:30である。使用割合が上記範囲にあることでガラス転移温度の調整、位相差発現性の調整、共押出し成形性の確保、環状オレフィン系樹脂などの固有複屈折が正の樹脂からなる層との密着性の確保が可能となる。
【0064】
本発明で用いるビニル芳香族系樹脂には、上述した構造単位(3)、(4)、(5)以外にも、必要に応じてその他の共重合成分から誘導される構造単位が含まれていてもよい。その他の共重合成分としては、たとえば、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、酢酸ビニル、塩
化ビニルなどが挙げられる。その他の共重合成分から誘導される構造単位は、ビニル芳香族系樹脂を構成する全構造単位中10mol%以下、好ましくは5mol%以下であるのが望ましい。
【0065】
本発明に用いられるビニル芳香族系樹脂は、30℃のクロロベンゼン溶液(濃度0.5g/dL)中で測定した対数粘度(η)が、0.1〜3.0dL/gであることが好まし
い。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが通常30,000〜1,000,000、好ましくは40
,000〜800,000、より好ましくは50,000〜500,000である。分子量が小さすぎると、得られるフィルム等の成形品の強度が低くなることがある。分子量が大きすぎると、溶液粘度が高くなりすぎて本発明に用いる樹脂組成物の生産性や加工性が悪化することがある。
【0066】
さらに、ビニル芳香族系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0〜10、好ましくは1.2〜5.0、より好ましくは1.2〜4.0である。
本発明に用いられるビニル芳香族系樹脂は、構造単位(3)、(4)、(5)などを誘導する上記単量体を、適当な重合開始剤の存在下で重合反応させる方法により製造するのが好ましい。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、アニオン重合触媒、配位重合触媒、カチオン重合触媒等を用いるのが好ましく、ラジカル重合開始剤を用いるのが特に好ましい。
【0067】
重合反応に用いられるラジカル開始剤としては、フリーラジカルを発生する公知の有機過酸化物、またはアゾビス系のラジカル重合開始剤を用いることができる。なお、多官能開始剤または水素引き抜き反応を起こし易い開始剤は、得られるスチレン系共重合体の線状性が低下するおそれがあるので、好ましくない。
【0068】
有機過酸化物としては、ジアセチルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチロイルパーオキサイド、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサオド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ビス{4−(m−トルオイル)ベンゾイル}パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;
過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α−クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;
ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;
t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオドデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシm−トルオイルベンゾエート、3,3',4,4'−テトラ(t−ブ
チルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのパーオキシエステル類;
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ピバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール類;
t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートなどのパーオキシモノカーボネート類;
ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;
その他、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明に用いられる有機過酸化物はこれらの例示化合物に限定されるものではない。
【0069】
アゾビス系ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル
)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)
、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス[2−メチル−N
−{1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル}プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−{2−(1−ヒドロキシブチル)}プロピオンア
ミド]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオン
アミド]、2,2'−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド
]、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス[2−(
5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'
−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェート・ジ
ハイドレート、2,2'−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−
2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−{1−(2−ヒ
ドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル}プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[N−(
2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]、2,2'−アゾビス(2
−メチルプロピオンアミドキシム)、ジメチル2,2'−アゾビスブチレート、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2'−アゾビス(2,4,4−ト
リメチルペンタン)などが挙げられるが、本発明に用いられるアゾビス系ラジカル重合開始剤はこれらの例示化合物に限定されるものではない。
【0070】
これらラジカル開始剤の使用量は、ビニル芳香族系樹脂を誘導する単量体全量100mol%中、通常0.01〜5mol%、好ましくは0.03〜3mol%、より好ましくは0.05〜2mol%である。
【0071】
さらに、前記ビニル芳香族系樹脂を誘導する単量体の重合反応には、触媒が用いられて
もよい。この触媒は、特に限定されず、たとえば、公知のアニオン重合触媒、配位重合触媒、カチオン重合触媒などが挙げられる。
【0072】
前記ビニル芳香族系樹脂を誘導する単量体の重合反応は、上記重合開始剤や触媒の存在下で、塊状重合法、溶液重合法、沈殿重合法、乳化重合法、懸濁重合法または塊状−懸濁重合法などの従来公知の方法で共重合させることにより行なわれる。
【0073】
溶液重合を実施する際に使用する溶剤としては、前記単量体および重合体を溶解するものであれば特に限定されないが、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が好ましい。溶剤の使用量は、前記単量体全量に対し、0〜3倍(重量比)の量であるのが望ましい。
【0074】
重合反応時間は、通常1〜30時間、好ましくは3〜20時間であり、重合反応温度は、使用するラジカル開始剤の種類に依存するため、特に限定されないが、通常40〜180℃、好ましくは50〜120℃である。
【0075】
ビニル芳香族系樹脂のガラス転移温度は、熱安定性および共押出し成形性を確保するため110〜200℃、さらに好ましくは120〜170℃である。本発明で用いるビニル芳香族系樹脂フィルムは、上述のようなビニル芳香族系樹脂を含む樹脂組成物から形成されていてもよい。樹脂組成物には、ビニル芳香族系樹脂の他、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、位相差調整剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、加工性向上剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機または無機の充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加することができる。
【0076】
また、ノバケミカルズ製ダイラークD332、ダイラークD232、大日本インキ化学工業製リューレックスA14、リューレックスA15、CHI MEI製PN−177等の市販樹脂も本発明のビニル芳香族系樹脂として好ましく用いることができる。
【0077】
原反フィルムを得る工程
本発明の積層光学フィルムの製造方法では、環状オレフィン系樹脂などの固有複屈折が正の樹脂からなる層(A層)と、ビニル芳香族系樹脂などの固有複屈折が負の樹脂からなる層(B層)とが積層された原反フィルムを得る工程を有する。この原反フィルムを得る好適な方法は、固有複屈折が正の樹脂と固有複屈折が負の樹脂とを共押出することによる積層製膜である。具体的には、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。本発明ではA層/B層の二層からなる積層光学フィルム、A層/B層/A層の三層からなる積層光学フィルム、および、B層/A層/B層の三層からなる積層光学フィルムが、製造効率、強度の確保、光学特性、位相差制御の観点で好適に用いられる。二層からなる積層光学フィルムは光学特性(透明性)、位相差制御でより好ましく、三層からなる積層光学フィルムはフィルムの反りを防ぎ、また力学強度を得る上でより好ましい。
【0078】
共押出法における押出し温度は、樹脂が押出製膜に適した溶融粘度になるよう適宜選択されるが、A層、B層ともに好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜300℃、さらに好ましくは240〜280℃である。またA層の押出温度とB層の押出温度の温度差は、両樹脂がTダイ内あるいはフィードブロック内で接触した際に、温度変化によって溶融粘度が過度に変化し、成形性が悪化することが無いよう、好ましくは50℃以内、より好ましくは30℃以内、さらに好ましくは20℃以内である。A層とB層を構成する樹脂の溶融粘度の差は、成形性、特に各層の厚みの均一性を確保するため、好ましく
は5倍以内、より好ましくは3倍以内、さらに好ましくは2倍以内である。
【0079】
本発明で用いる環状オレフィン系樹脂などの固有複屈折が正の樹脂と、ビニル芳香族系樹脂などの固有複屈折が負の樹脂とは、互いの密着性に優れているため、フィルム層間に接着層、粘着層を設けたり、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の易接着処理を施したりする必要が無い。共押出による熱融着により、A層とB層が直接接した状態において十分な密着強度を得ることができる。また延伸処理をした後であっても、A層とB層の密着性は良好に保持される。
【0080】
得られる原反フィルムは、幅方向、長さ方向ともに厚みが均一であることが望ましい。厚みバラツキは、得られる積層光学フィルムの位相差バラツキの原因となり、液晶表示装置に組み込んだ際の表示の均一性を損なうことになる。従って、厚みバラツキを生じさせる原因となるダイライン(Tダイリップの傷等に起因する長さ方向のスジ)、クロスマーク(長さ方向での周期的な厚み変動)等は少ないことが望ましい。また点状の欠点として輝点や光漏れ等の表示不良を招くゲル、異物等も少ないことが望ましい。これらは、例えば、ポリマーフィルタを有する押出機の使用、溶融樹脂の滞留時間最適化、ギヤポンプの脈動の低減、Tダイリップの研磨や表面処理、転写ロール、剥離ロールの平滑化、表面処理等により抑制することができる。原反フィルムにおける各層の厚み分布は、好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内、特に好ましくは±2%以内である。
【0081】
延伸工程
位相差フィルムとしての機能を有する本発明の積層光学フィルムは、上記原反フィルムを延伸処理することにより製造することができる。積層光学フィルムを延伸する方法は従来公知の方法が適用され得るが、フィルム長手方向に対して直交方向、すなわち幅方向に一軸延伸することが好適である。具体的には、テンターを用いて幅方向に一軸延伸する方法が好ましい。そうすることで本発明の優れた位相差特性を発現することができる。
【0082】
本発明の製造方法における延伸工程において、延伸温度は環状オレフィン系樹脂などの固有複屈折が正の樹脂のTg(以下、「TgA」ともいう)と、ビニル芳香族系樹脂などの固有複屈折が負の樹脂のTg(以下、「TgB」ともいう)に基づいて決定するのが位相差を調整するうえで好ましい。具体的には、(TgAとTgBとで低い方の値)−10(℃)〜(TgAとTgBとで高い方の値)+30(℃)の範囲、好ましくは(TgAとTgBとで低い方の値)−5(℃)〜(TgAとTgBとで高い方の値)+20(℃)の範囲である。
【0083】
また、TgAとTgBの関係は、下記式を満たすことが好ましい。
|TgA−TgB|≦20(℃)
上記式の値は、さらに好ましくは|TgA−TgB|≦15(℃)、より好ましくは|TgA−TgB|≦12(℃)、特に好ましくは|TgA−TgB|≦10(℃)である。
【0084】
延伸温度、TgAおよびTgBを上記範囲とすることにより、A層およびB層それぞれの位相差を延伸によって同時に制御することができ、積層光学フィルムの目的とする特性(後述する式(i)、式(ii)、式(iii)および式(iv)で表される特性等)を容易に
得ることができる。それにより、コントラスト比が高く、画面を斜め方向から見たときのカラーシフトが小さい液晶表示装置を実現できる。加えて、高温での耐久性に優れた積層光学フィルムを得ることができる。
【0085】
なお、TgAおよびTgBは、いずれも110℃以上であることが好ましく、熱安定性および延伸加工性を確保するため、さらに好ましくは110〜200℃、特に好ましくは
120〜170℃である。
【0086】
本発明の製造方法においては、延伸倍率は、通常1.1〜10倍、好ましくは1.2〜7倍、さらに好ましくは1.3倍〜5倍である。特にフィルム長手方向に対して直交方向に一軸延伸する横一軸延伸で1.3〜5倍に好適に延伸される。横一軸延伸することにより、本発明の積層光学フィルムは光軸(面内の最大屈折率方向)がフィルム長手方向に対して直交方向になるため、積層光学フィルムと偏光子をロールtoロールで接着することが可能になり生産性が向上する。延伸倍率を上記範囲にすることで、位相差フィルムの光軸、位相差値、NZ係数、あるいはそれらのフィルム面内での分布を好適にコントロールすることができ、コントラスト比が高く、画面を斜め方向から見たときのカラーシフトが小さく、また均一な画面表示が可能な液晶表示装置を実現できる。
【0087】
[積層光学フィルム]
本発明の積層光学フィルムは、上記A層とB層とが積層してなり、好ましくは上記A層とB層とが直接接して積層してなる。A層とB層とを積層する方法としては、上述した共押出法の他に、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、基材樹脂フィルムに対して樹脂溶液をコーティングするコーティング成形方法などの公知の方法を適宜利用することができるが、製造効率などの観点から、共押出法が最も好ましい。
【0088】
積層光学フィルムの長手方向の長さは、好ましくは50m以上であり、100m以上であることがより好ましい。このような長尺フィルムは、通常フィルムロールとして取り扱われる。またフィルムの幅は好ましくは1000mm以上、さらに好ましくは1500mm以上、特に好ましくは2000mm以上である。
【0089】
本発明の積層光学フィルムは、特に限定されるものではないが、フィルム厚みが通常10〜400μm、好ましくは20〜300μm、特に好ましくは20〜200μmであるのがハンドリング性や光軸と位相差値の調整上望ましい。
また厚みのバラツキが少ない方が位相差値のバラツキが少なくなり、表示品位の均一性が得られるため望ましい。積層光学フィルムの厚みバラツキの範囲は平均値±10%以内、好ましくは平均値±5%以内、より好ましくは平均値±2%以内である。
【0090】
また、本発明の積層光学フィルムは、未延伸のフィルムであっても延伸したフィルムであってもよいが、式(i)〜(iii)および好ましくは式(iv)に記載の特性を満たすた
め、延伸したフィルムであることが好ましい。
本発明の積層光学フィルムは、本発明の積層光学フィルムの製造方法により形成することが特に好ましい。
【0091】
積層光学フィルムの光学特性
本発明の積層光学フィルムは、積層光学フィルムとしての位相差の測定値が、下記式(i)〜(iii)の特性を全て満たしていることを特徴とする。
R450≦R550≦R650 ・・・(i)
1.0≦R650/R550≦1.2 ・・・(ii)
70nm≦R550≦150nm ・・・(iii)
[上記式(i)〜(iii)中、R450、R550、R650は、順に、波長450nm
、550nm、650nmにおける積層光学フィルムの面内位相差を表す。]
【0092】
上記(i)および(ii)は、位相差の波長分散性を示しており、上記(i)は、長波長になるほど面内位相差が大きい、いわゆる逆波長分散性を有することを示している。これは、積層光学フィルムを通過した光の偏光状態が波長によって異なることを防ぎ、画面を斜め方向から見たときのカラーシフト量を小さくする上で必要な特性である。上記(ii)
の値は逆波長分散性の程度を表す。カラーシフト量を減らし良好な視野角補償を行うためにはこの値が大きい方が望ましく、好ましくは1.01〜1.18、より好ましくは1.02〜1.18である。上記(iii)はフィルム面内位相差の量を示す。VAモードの液
晶表示装置用の位相差フィルムとしては、AプレートとCプレートを組み合わせた補償方式が有効と知られており、このときAプレートとして有効に機能する面内位相差は(iii
)に示した範囲で、好ましくは75nm〜145nm、より好ましくは75nm〜140nmである。上記(iii)を満たすことによって良好なコントラスト比が得られ、加えて
上記(i)および(ii)を満たすことでカラーシフトを減らすことができ、斜め方向から観察した時のコントラスト比のさらなる向上にも寄与する。
【0093】
また表示品位の均一性を得るためには、フィルムの幅方向、長手方向ともに、場所による位相差のバラツキが少ない方が望ましい。上記(ii)のR650/R550のバラツキの範囲は、好ましくは±0.04以内、より好ましくは±0.03以内、特に好ましくは±0.02以内である。上記(iii)のR550のバラツキの範囲は、好ましくは±7n
m以内、より好ましくは±5nm以内、特に好ましくは±3nm以内である。
【0094】
同様に表示品位の均一性を得るためには、場所による光軸のバラツキも少ない方が望ましく、フィルム長手方向に直交するフィルム幅方向を基準とすると、好ましくは±2°以内、より好ましくは±1°以内、さらに好ましくは±0.7°以内、特に好ましくは±0.5°以内である。
【0095】
また、本発明の積層光学フィルムは、下記式(iv)を満たすことが好ましい。
1.0≦NZ≦3.0 ・・・(iv)
[上記式(iv)中、NZはNZ=(nx−nz)/(nx−ny)で表される係数であり、波長550nmにおける値である。ここで、nxは積層光学フィルム面内での最大屈折率、nyは積層光学フィルム面内でnxに直交する方向の屈折率、nzはnxおよびnyに対して直交する積層光学フィルム厚み方向の屈折率を表す。ただし、積層光学フィルムの平均屈折率をNaveとすると、Nave=(nx+ny+nz)/3で表され、Naveは積層光学フィルム中でA層とB層の、それぞれの平均屈折率を厚み比によって加重平均した値である。]
【0096】
上記(iv)はNZ係数と呼ばれる数値であり、積層光学フィルムの面内位相差と厚み方向位相差のバランスを表した数値である。NZ係数を算出するには、積層光学フィルムの面内位相差と斜め方向位相差(通常、遅相軸傾斜で極角40°から入射した時の値)を測定し、フィルム合計厚みおよびフィルム平均屈折率を用いて数値計算することにより、nx、ny、nzが求められ、そこからNZ=(nx−nz)/(nx−ny)として決定される。しかし、本発明の積層光学フィルムの場合、A層とB層の平均屈折率が異なるため、Naveを直接測定して求めることはできない。
【0097】
そこで本発明においては、積層光学フィルムの平均屈折率Naveを便宜的に、A層とB層のそれぞれの平均屈折率を厚み比によって加重平均した値としている。すなわち、A層の平均屈折率をNaveA、厚みをdA(μm)、B層の平均屈折率をNaveB、厚みをdB(μm)としたとき、Nave=(dA×NaveA+dB×NaveB)/(dA+dB)としてnx、ny、nzを数値計算しNZを決定する。
【0098】
各層の厚みdA、dBは、各層を剥がしてそれぞれの層の厚みを接触式マイクロメーターで測定するか、積層光学フィルムの断面を顕微鏡観察するか、公知の非接触式測定法、例えば光干渉式膜厚測定装置を用いて計測される。中でも測定精度が良いこと、非破壊であること、オンライン、オフラインいずれにおいても測定できることから光干渉式膜厚測定が好ましい。
【0099】
なお、A層および/またはB層がそれぞれ2層以上ある場合、たとえばA層/B層/A層という3層構成のような場合、dAは2層以上のA層の厚みを合計した値、dBは2層以上のB層の厚みを合計した値である。
【0100】
NZ係数は1に近い方がポジティブAプレートに近くなり、VA液晶の補償方式であるAプレートとCプレートを組み合わせた補償方式に合致し、コントラスト比が良くなるため望ましい。好ましくは1.0〜2.5であり、さらに好ましくは1.0〜2.0である。なお、NZ係数が1未満のフィルムは、逆波長分散性を有さない。
【0101】
各層の光学特性(面内位相差)
本発明の積層光学フィルムを構成するA層とB層は、それぞれ望ましい位相差値および位相差波長分散性を有する。ただし、積層した状態ではA層とB層それぞれ単独の位相差を測定することはできないため、積層光学フィルムからA層とB層を剥がし別々に位相差を測定するか、A層とB層を構成する重合体それぞれの位相差波長分散性と積層光学フィルムの位相差波長分散性からA層とB層の位相差値を算出するか、A層のみのフィルムとB層のみのフィルムを積層光学フィルムと同じ条件で延伸し、別々に位相差を測定することにより、各層の特性を確認することができる。波長450nm、550nmにおけるA層の面内位相差をR450A、R550Aとし、波長450nm、550nmにおけるB層の面内位相差をR450B、R550Bとすると、各層は下記条件(v)〜(ix)を満
たすよう調整される。
R450A/R550A≦1.04 …(v)
200nm≦R550A≦400nm …(vi)
1.04<R450B/R550B …(vii)
100nm≦R550B≦300nm …(viii)
R550A>R550B …(ix)
【0102】
A層とB層が上記式(v)〜(ix)を満たすことで、積層光学フィルムとして上記式(
i)〜(iii)を満たし、液晶表示装置を斜め方向から見たときのカラーシフトを減少さ
せ、同時にコントラスト比を向上させることが可能となる。なお、A層とB層は固有複屈折の正負が異なるため、積層光学フィルムとしてA層とB層を同時に延伸した場合、A層とB層の最大屈折率方向は互いに直交する。そのため互いに面内位相差を打ち消しあうことになり、積層光学フィルムの面内位相差R550はR550A−R550Bで表される。上記式(ix)より、積層光学フィルムの光軸はフィルム長手方向と直交する方向となり、偏光子とのロール トゥ ロール接着が可能となり、偏光板の生産性が向上する。
【0103】
本発明の積層光学フィルムの製造方法を用い、上述の延伸温度および延伸倍率でフィルム幅方向に延伸することにより、各層は1回の延伸処理で上記式(v)〜(ix)を満たす
ことができ、同時に積層光学フィルム全体として上記(i)〜(iii)を満たすことがで
きる。このため、本発明の積層光学フィルムの製造方法は、非常に生産性に優れる。
【0104】
上記(v)および(vii)は、各層の位相差の波長分散性を表す。A層のR450A/R550AはB層のR450B/R550Bよりも小さく、A層の波長分散性は波長毎にあまり変わらないフラットな波長分散か、波長が大きくなるにつれ位相差が大きくなる逆波長分散である。対してB層の波長分散性はA層に比べ波長が大きくなるにつれ位相差が小さくなる、いわゆる正波長分散である。A層とB層がこの特性を満たすことにより、A層とB層とで位相差を打ち消しあった時に積層光学フィルムが上記式(i)および(ii)の特性を満たす。
【0105】
なお、A層および/またはB層がそれぞれ2層以上ある場合、たとえばA層/B層/A
層という3層構成のような場合、R450A、R550Aは2層以上のA層の位相差を合計した値、R450B、R550Bは2層以上のB層の位相差を合計した値である。
【0106】
またA層、B層ともに場所による位相差のバラツキが少ない方が表示品位の均一性を得るうえで望ましい。(v)および(vii)のバラツキの範囲は、好ましくは±0.03以内、さらに好ましくは±0.02以内、特に好ましくは±0.01以内である。(vi)および(viii)で表されるR550AおよびR550Bのバラツキの範囲は、好ましくは±7nm以内、さらに好ましくは±5nm以内、特に好ましくは±3nm以内である。
【0107】
また場所による各層の光軸バラツキも少ない方が表示品位の均一性を得るためには望ましい。A層の光軸は、フィルム幅方向を基準とすると、好ましくは±2度以内、より好ましくは±1度以内、さらに好ましくは±0.7度以内、特に好ましくは±0.5度以内である。B層の光軸は、フィルム長手方向を基準とすると、好ましくは±2度以内、より好ましくは±1度以内、さらに好ましくは±0.7度以内、特に好ましくは±0.5度以内である。
【0108】
また表示品位の均一性を得るうえでは、A層、B層ともに場所による厚みバラツキが少ない方が位相差のバラツキが少なくなり望ましい。dA、dBのバラツキ範囲は、積層光学フィルム全体の厚みバラツキの範囲と同様に、それぞれ平均値±10%以内、好ましくは平均値±5%以内、より好ましくは平均値±2%以内である。
【0109】
A層とB層の厚み比率は、各層および積層光学フィルム全体の光学特性が望ましい範囲にあれば特に制限は無いが、位相差を制御する上で、具体的には1回の横延伸処理で所定位相差を発現させるため、好ましくはA層の厚み比率は積層光学フィルム全体の20〜90%、より好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜80%である。(A層および/またはB層がそれぞれ2層以上存在する場合は、各層の厚みを合計し、全A層の積層光学フィルム全体に対する厚み比率で表す)
同様に表示品位の均一性を得るうえでは場所によるNZのバラツキは少ない方が望ましい。NZのバラツキ範囲は平均値±0.3以内、好ましくは平均値±0.2以内、さらに好ましくは平均値±0.1以内である。
【0110】
さらに、本発明の積層光学フィルムのNZ係数が上記式(v)を満たすためには、積層光学フィルムを構成するA層とB層にはそれぞれ望ましいNZ係数の範囲がある。ただし積層した状態ではA層とB層それぞれ単独のNZ係数を求めることはできないため、積層光学フィルムからA層とB層を剥がし別々に位相差を測定しNZ係数を求めるか、A層のみのフィルムとB層のみのフィルムを積層光学フィルムと同じ条件で延伸し、別々に位相差を測定して各層のおおよそのNZ係数を求めるという方法をとる。A層のNZ係数をNZA、B層のNZ係数をNZBとすると、下記条件(x)〜(xi)を満たすように調整さ
れる。
1.0≦NZA≦1.7 …(x)
−1.0≦NZB≦0 …(xi)
【0111】
[上記式(x)中、NZAはNZA=(nxA−nzA)/(nxA−nyA)で表され
る係数であり、波長550nmにおける値である。ここで、nxAはA層の面内での最大屈折率、nyAはA層の面内でnxAに直交する方向の屈折率、nzAはnxAおよびnyAに対して直交するA層の厚み方向の屈折率を表し、NaveA=(nxA+nyA+nzA)/3である。上記式(xi)中、NZBはNZB=(nxB−nzB)/(nxB−nyB)で表される係数であり、波長550nmにおける値である。ここで、nxBはB層の面内での最大屈折率、nyBはB層の面内でnyBに直交する方向の屈折率、nzBはnxBおよびnyBに対して直交するB層の厚み方向の屈折率を表し、NaveB=
(nxB+nyB+nzB)/3である。]
【0112】
上記式(x)は、環状オレフィン系樹脂層を横延伸したときに発現する位相差に相当し
、nxAは延伸方向すなわちフィルム幅方向、nyAは延伸方向と直交すなわちフィルム長手方向である。屈折率楕円体においては一般にポジティブAプレートと呼ばれる。上記式(xi)は、ビニル芳香族系樹脂層を横延伸したときに発現する位相差に相当し、nxBは延伸方向と直交すなわちフィルム長手方向、nyBは延伸方向すなわちフィルム幅方向である。屈折率楕円体においては一般にネガティブAプレートと呼ばれる。積層光学フィルムのNZはNZAおよびNZBから単純計算で求めることはできず、ポアンカレ球表示によるA層での偏光状態の変化とB層での偏光状態の変化の結果として関連付けられる。
【0113】
NZAとNZBには望ましい範囲があり、(NZA+NZB)/2=0.1〜0.8であるのが好ましく、より好ましくは(NZA+NZB)/2=0.2〜0.8、さらに好ましくは(NZA+NZB)/2=0.3〜0.7である。NZAとNZBがこの範囲を満たすことで、積層光学フィルムはどの方向から見ても逆波長分散性が発現しており、どの方向から見ても各層の光軸ズレによって所定位相差が得られなくなる問題は発生せず、カラーシフト減少によるパネル特性の向上につながる。またNZAは小さい方がパネル特性向上につながり、好ましくは1.0〜1.6、さらに好ましくは1.0〜1.5である。同時にNZBは大きい方がパネル特性向上につながり、好ましくは−0.6〜0、さらに好ましくは−0.5〜0である。各層のNZ係数を上記範囲とすることで斜め方向から観測した時も所定の位相差を有することができ、液晶表示装置の斜め視野角でのカラーシフトを減少させ、同時にコントラスト比を向上させることが可能となる。
【0114】
また表示品位の均一性を得るうえでは、NZA、NZBともに場所によるバラツキが少ない方が望ましい。NZA、NZBのバラツキ範囲は、好ましくはそれぞれ平均値±0.2以内、さらに好ましくは平均値±0.1以内である。
【0115】
[偏光板]
本発明の偏光板は、位相差フィルムとしての機能を有する本発明の積層光学フィルムを少なくとも一面に有するものであって、偏光子(偏光膜)の少なくとも一面に上記本発明の積層光学フィルムを積層した構成であるのが望ましい。本発明の偏光板を構成する偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)やPVAの一部をホルマル化したポリマーなどからなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料などからなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理などを適当な順序や方法で施して得られるフィルムであって、自然光を入射させると直線偏光となって透過するものである。特に、光の透過率が高く、偏光度の優れたものが好ましく用いられる。
【0116】
偏光板を構成する偏光子の厚さは、一般に5〜80μmのものが好適に使用されるが、本発明ではこれに限定されない。また、偏光子としては、上記PVA系フィルムの他に、同様の特性を発現するものであれば他のものを使用してもよい。たとえば、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムに、染色処理、延伸処理、架橋処理などを適当な順序や方法で施したものでもよいし、二色性物質の溶液をコーティングし配向させたものでもよいし、ワイヤグリッド型の偏光子であってもよい。
【0117】
通常、偏光板は、偏光子と、位相差フィルムと、保護フィルムとから構成されるが、本発明では、偏光板を構成する位相差フィルムとして、積層光学フィルムを偏光子の少なくとも一面に接着剤もしくは粘着剤を介して貼合して用いる。積層光学フィルムはA層側で偏光子と貼合されていてもよいし、B層側で偏光子と貼合されていてもよい。このような偏光板は、位相差フィルムが耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの性状に優れ、保護フィルムとしても十分な機能を有するため、偏光子上に位相差フィルムとしての機能を有する本発
明の積層光学フィルムが積層された面には、別途保護フィルムが積層されていなくてもよい。本発明の偏光板が、偏光子の片面のみに位相差フィルムとしての機能を有する本発明の積層光学フィルムが積層された構成である場合には、偏光子のもう一方の面は、たとえばトリアセチルセルロース(TAC)、環状オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルムなどの公知の保護フィルムが積層されていてもよい。また、本発明の偏光板は、積層光学フィルムの面内での最大屈折率方向と、偏光子の透過軸方向とが平行でないように貼合されてなる、いわゆる楕円偏光板であることも好ましい。
【0118】
本発明の積層光学フィルムと偏光子の貼合、保護フィルムと偏光子の貼合は、各層を感圧接着剤、熱硬化接着剤、光硬化性接着剤などの公知の接着剤や粘着剤を介して接着することにより、好適に製造することができる。粘着剤、接着剤としては、透明性に優れたものが好ましく、具体的には、天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂等の粘着剤;水酸基、アミノ基等の官能基を有する前記樹脂等にイソシアナート基含有化合物などの硬化剤を添加した硬化型粘着剤;ポリウレタン系のドライラミネート用接着剤;合成ゴム系接着剤;エポキシ系接着剤などが挙げられる。
【0119】
また、本発明の偏光板は、反射防止層および防眩層から選ばれる少なくとも1種の層をさらに有することが好ましく、偏光子とは反対側の保護フィルム面の外側に設けることが望ましい。
【0120】
これらの層は、熱硬化性樹脂組成物あるいは光硬化性樹脂組成物をグラビアコート、ダイコート、スロットコート等公知の塗工方法で塗工し、必要に応じて乾燥させた後、硬化して形成することができる。これらの層は、保護フィルム上に直接設けてもよいし、基材フィルムを用いてその上に設け、当該基材フィルムを保護フィルムに貼り合わせることにより形成してもよい。また、保護フィルムまたは基材フィルムを偏光子に貼合する前に当該層を形成してもよいし、偏光子に貼合した後に当該層を形成してもよい。
【0121】
反射防止層は通常、低屈折率層からなり、さらに反射防止性能を高めるために、低屈折率層と高屈折率層との積層構造を有していてもよく、またさらに耐擦傷性を確保するため、ハードコート層を有していてもよい。積層順は、保護フィルムに近い側から、好ましくは、ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層の順に積層される。また必要に応じて、低屈折率層と高屈折率層の間、あるいはハードコート層と高屈折率層の間に中屈折率層を有してもよい。これらの層は、スパッタリングや蒸着等により形成することもできるが、好ましくは、上述したような硬化性組成物の塗工により形成される。
【0122】
低屈折率層および高屈折率層を形成するための組成物としては、公知の硬化性組成物が挙げられる。例えば、バインダー樹脂として、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン樹脂等を1種以上含有し、さらに、低屈折率層形成用組成物はフッ素含有化合物を含有し、高屈折率層形成用組成物は高屈折率の無機粒子、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、スカンジア、フッ化マグネシウム等金属酸化物粒子を含有する。
【0123】
低屈折率層および高屈折率層の屈折率および厚みは公知の範囲で用いられるが、反射防止効果を高めるため、低屈折率層の屈折率(25℃、波長589nmでの平均屈折率)は、1.45以下であることが好ましく、低屈折率層の厚みは50〜300nmであることが好ましい。また、高屈折率層の屈折率(25℃、波長589nmでの平均屈折率)は、低屈折率層の屈折率より0.05以上大きい屈折率であることが好ましく、厚みは50〜10,000nmであることが好ましい。
【0124】
ハードコート層の構成材料については公知の材料を使用することができる。このような材料としては、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の1種以上を挙げることができ、金属酸化物等の無機粒子が含まれていてもよい。なお、ハードコート層は、後述する防眩層としての効果を有するものであってもよい。
【0125】
また、ハードコート層の厚みは特に制限されるものではないが、2〜10μmとするのが好ましい。
防眩層としては、通常、層表面に凹凸を有することにより防眩性を発現する層が用いられ、表面の中心線平均粗さが0.1〜1.0μmである層が好ましい。当該防眩層を形成するための組成物としては、有機粒子および/または無機粒子を含有する硬化性組成物が好ましく用いられる。硬化性組成物に用いられるバインダー樹脂としては、上述した反射防止膜の形成に用いられる硬化性組成物のバインダー樹脂を用いることができる。好ましい防眩性としては、当該層のHazeが5〜65%であり、全光線透過率が80〜98%である。
【0126】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、上記本発明の偏光板を有するものであり、好ましくは上記本発明の偏光板を有する。本発明の液晶表示装置は、画面を斜め方向から見たときのコントラスト比が高く、画面を斜め方向から見たときのカラーシフト量が小さく、また、光学ムラが小さい積層光学フィルムあるいは偏光板を有するため、均一な表示が可能であるとともに厳しい環境下での長期使用にも耐えうる耐久性に優れ、外光の映りこみが少ない。
【実施例】
【0127】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断りのない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。また、室温とは25℃である。
【0128】
以下の実施例、比較例において、各種測定および評価は以下のようにして行った。
[重合反応率]
アルミニウム製容器中に秤量した重合反応溶液を入れ、300℃に熱したホットプレートで恒温となるまで加熱し、残留モノマーおよび溶媒を除去した後、残留した重合体重量を計測し、理論上の重合体生成量との比から反応率を求めた。
【0129】
[水素添加率]
核磁気共鳴分光計(NMR)はBruker社製AVANCE500を用い、測定溶媒はd−クロロホルムで1H−NMRを測定した。5.1〜5.8ppmのビニレン基、3
.7ppmのメトキシ基、0.6〜2.8ppmの脂肪族プロトンの積分値より、単量体の組成を算出後、水素添加率を算出した。
【0130】
[ガラス転移温度(Tg)]
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、商品名:DSC6200)を用いて、日本工業規格K7121に従って昇温速度:20℃/minの条件で測定した。
【0131】
[重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSKgel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1mL/min、サンプル濃度:0.7〜0.8重量%、注入量:7
0μL、測定温度:40℃とし、検出器:RI(40℃)、標準物質:東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、前記Mnは数平均分子量である。
【0132】
[対数粘度]
ウベローデ型粘度計を用いて、クロロベンゼン中、試料濃度0.5g/dL、温度30
℃とし、対数粘度を測定した。
【0133】
[樹脂の固有複屈折]
樹脂を熱プレスによりフィルム状成形品とし、このフィルムを切って短冊状の試験片とした。この短冊状試験片をインストロン社製の加熱オーブン付き引張試験機にて、Tg+10℃の温度、200%/分の速度にて延伸し、フィルムを急冷した。この延伸試験片を自動複屈折計(王子計測機器(株)製、KOBRA−21ADH)を用いて面内遅相軸の方向および位相差を測定した。延伸方向と面内遅相軸の方向が一致するものを固有複屈折が正の樹脂、延伸方向と面内遅相軸が直交するものを固有複屈折が負の樹脂と判定した。
【0134】
[厚み]
積層光学フィルムの断面を光学顕微鏡で観察して測定した。断面が顕微鏡観察に適さない場合、断面部分をエポキシ樹脂に包埋し、大和光機(株)製ミクロトームRV−240を用いてスライスし、断面を明確にした上で光学顕微鏡で観察して測定した。
【0135】
[位相差]
自動複屈折計(王子計測機器(株)製、KOBRA−21ADH)を用いて測定した。波長478.8nm、546.0nm、629.3nm、747.3nmでの実測値をコーシーの式で回帰計算することにより波長450nm、550nm、650nmでのフィルム面内位相差R450、R550、R650を求めた。フィルム面内位相差と遅相軸傾斜で極角40度からの斜め方向位相差、フィルム厚みおよびフィルム平均屈折率からNZ係数を求めた。
【0136】
[単体透過率、偏光度]
日本分光(株)製V−7300を用い、偏光板の単体透過率および偏光度を測定した。
【0137】
[液晶表示装置のコントラスト比等測定]
ELDIM(株)製の「EZ Contrast−XL88」を用い、液晶パネルの輝
度、視野角、コントラスト比およびカラーシフトを照度1lx以下の暗室にて測定した。
【0138】
[積層光学フィルム層間の密着性]
積層光学フィルムを両面テープでガラス板に貼り付け、各層間にカッター刃を入れて剥離させるという方法で密着性を確認し、以下の基準で評価した。
◎:カッター刃が層間に入らず、剥離もしない。
○:カッター刃が層間に入り、剥離箇所を作製できるが、連続的に剥離はしない。
×:カッター刃が層間に入り、その剥離箇所から連続的に剥離する。
【0139】
[反射防止層、防眩層の密着性]
セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用いて、JIS−D0202に記載の方法にて碁盤目剥離試験を実施し、以下の基準で評価した。
◎:残存マス数が100マス中、100マス。
○:残存マス数が100マス中、90マス以上。
×:残存マス数が100マス中、90マス未満。
【0140】
[環境試験(位相差変化)]
作製した積層光学フィルムについて、乾熱試験として95℃で500時間、湿熱試験として85℃、相対湿度85%で500時間、ヒートショック試験として−40℃で30分と85℃で30分の行き来を1サイクルとして200サイクル、の3つの条件下におき、前後で面内位相差の変化量(%)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:位相差の変化量が3条件とも±2%以内、かつ、外観の変化なし。
○:位相差の変化量が3条件とも±3%以内、かつ、外観の変化なし。
×:位相差の変化量がいずれかの条件で±3%を越える。あるいは目視で変形、白化、クラックや層間の剥離など外観の変化が認められる。
【0141】
[環境試験(塗膜の変化)]
反射防止層、防眩層を設けた保護フィルムについて、上記3条件下に置き、試験前後で当該層の外観変化や層間剥離の有無を調べ、以下の基準で評価した。
◎:3条件とも外観の変化なし。
○:白化、黄変など、わずかに色の変化が認められる。
×:目視で変形、クラックや層間の剥離など、明らかな外観の変化が認められる。
【0142】
[反射率]
反射防止層を設けた保護フィルム(偏光子と貼合する前、あるいは偏光板から剥がした状態)の反射防止層の無い面を黒色スプレーで塗装し、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)により、波長380〜780nmの範囲で反射率を反射防止層側から測定して評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、反射防止用積層体(反射防止膜)の反射率を380〜780nmの範囲で測定した。
【0143】
[Haze(曇価)および全光線透過率]
偏光子と貼合する前、あるいは偏光板から剥がした状態の保護フィルムについて、ヘーズメーターHZ−2(スガ試験機(株)製)を用い、JIS K7105に記載の方法によりHazeおよび全光線透過率を測定した。
【0144】
[合成例1]環状オレフィン系樹脂(A1)の合成
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン215部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン35部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)750部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/l)3.7部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した対数粘度は0.75dl/gであった。
【0145】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反
応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、環状オレフィン系樹脂(A1))を得た。
このようにして得られた樹脂A1について、水素添加率は99.9%、ガラス転移温度は
125℃、数平均分子量(Mn)は32,000、重量平均分子量(Mw)は137,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.29、対数粘度は0.69dl/gであった。樹脂A1について固有複屈折を判定したところ、固有複屈折が正の樹脂であることがわかった。
【0146】
[合成例2]環状オレフィン系樹脂(A2)の合成
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン53部と、8−エチリデ
ンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン46部と、トリシクロ[
4.3.0.12,5]−デカ−3,7−ジエン66部とを使用し、1−ヘキセン(分子量
調節剤)の添加量を22部とし、開環重合反応用溶媒としてトルエンの代わりにシクロヘキサンを使用したこと以外は、合成例1と同様にして水素添加重合体(以下、環状オレフィン系樹脂(A2))を得た。
【0147】
得られた樹脂A2について、水素添加率は99.9%、ガラス転移温度(Tg)は125℃、Mnは30,000、Mwは122,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.07、対数粘度は0.63dl/gであった。樹脂A2について固有複屈折を判定したところ、固有複屈折が正の樹脂であることがわかった。
【0148】
[合成例3]ビニル芳香族系樹脂(B2)の合成
攪拌機、コンデンサー、温度計を備えたガラス製フラスコにスチレン145.6g(1.40mol)、溶媒としてトルエン75g、およびラジカル開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)0.67g(2.7mmol)を加え、90℃に加熱し、15時間反応させた。この重合液の一部を取り出し、反応率を測定したところ93%であった。
【0149】
得られた重合反応溶液をテトラヒドロフランで希釈し、大量のメタノール中に凝固させることにより重合体を回収・精製し、80℃の真空乾燥機で2日間乾燥させた。得られた重合体の分子量、対数粘度をそれぞれ測定したところMw=168,300(Mw/Mn=1.68)、対数粘度η=0.42dL/g、収率は87%であった。得られた重合体はポリスチレンでありガラス転移温度は102℃であった。以後、得られたビニル芳香族系共重合体(樹脂)をB2とする。樹脂B2について固有複屈折を判定したところ、固有複屈折が負の樹脂であることがわかった。
【0150】
[調製例1]水系接着剤の調製
反応容器に蒸留水250部を仕込み、当該反応容器にアクリル酸ブチル90部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8部と、ジビニルベンゼン2部と、オレイン酸カリウム0.1部とを添加し、これをテフロン(登録商標)製の撹拌羽根により撹拌して分散処理した。当該反応容器内を窒素置換した後、この系を50℃まで昇温し、過硫酸カリウム0.2部を添加して重合を開始した。2時間経過後、過硫酸カリウム0.1部をさらに添加し、この系を80℃まで昇温し、1時間にわたり重合反応を継続させて重合体分散液を得た。
【0151】
次いで、エバポレータを用いて、固形分濃度が70%になるまでこの重合体分散液を濃縮することにより、アクリル酸エステル系重合体の水系分散体からなる水系接着剤(極性基を有する接着剤)を得た。
【0152】
このようにして得られた水系接着剤を構成するアクリル酸エステル系重合体について、GPC法によるMnは69,000、Mwは135,000であり、30℃のクロロホルム中で測定した対数粘度は1.2dL/gであった。
【0153】
[調製例2]ハードコート層用塗工液の調製
紫外線を遮蔽した容器中において、表面を不飽和基で修飾した平均粒径20nmのシリカ粒子のメチルエチルケトン/イソプロピルアルコール分散液を86部(固形分として30部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート65部、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン5部、MIBK44部を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液のハードコート層用塗工液を得た。この塗工液をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、50重量%であった。
【0154】
[調製例3]低屈折率層用塗工液の調製
内容積2リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル400g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)53.2g、エチルビニルエーテル36.1g、ヒドロキシエチルビニルエーテル44.0g、過酸化ラウロイル1.00g、アゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001(商品名)、和光純薬工業(株)製)6.0g及びノニオン性反応性乳化剤(NE−30(商品名)、旭電化工業(株)製)20.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
【0155】
次いでヘキサフルオロプロピレン120.0gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×105Paを示した。その後、7
0℃で20時間攪拌下に反応を継続し、圧力が1.7×105Paに低下した時点でオー
トクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い220gの水酸基含有含フッ素重合体を得た。
【0156】
続いて、電磁攪拌機、ガラス製冷却管及び温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、上記水酸基含有含フッ素重合体を50.0g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.01g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)370gを仕込み、20℃で水酸基含有含フッ素重合体がMIBKに溶解して、溶液が透明、均一になるまで攪拌を行った。
【0157】
次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート15.1gを添加し、溶液が均一になるまで攪拌した後、ジブチルチンジラウレート0.1gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間攪拌を継続することにより、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のMIBK溶液を得た。この溶液の固形分含量を求めたところ、15.0重量%であった。
【0158】
上記エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のMIBK溶液を507g(固形分として76g)、表面を不飽和基で修飾した平均粒径45nmのシリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を65.6g(固形分として21g)、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)3g、及びMIBK1424.4gを、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて1時間攪拌し均一な低屈折率層用塗工液を得た。この塗工液の固形分濃度を求めたところ5.0重量%であった。
【0159】
[調製例4]防眩層兼ハードコート層用塗工液の調製
ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成(株)製、商品名「アロニックスM−305」(比重1.179))90.0部、平均粒径1.5μmのシリカ粒子(東ソー・シリカ(株)製、商品名「ニップシールE−200」(比重2.150))10.0質
量部、及び光重合開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガキュア184」)5.0部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルに加え、混合して固形分濃度30重量%の塗工液を調製した。
【0160】
[製造例1]偏光子の製造
膜厚120μmの、ロール状のポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう。)製フィルムを、ヨウ素濃度が0.03重量%であり、ヨウ化カリウム濃度が0.5重量%である30℃水溶液の染色浴にて、連続的に延伸倍率3倍で長手方向に一軸延伸(前延伸)した後、ほう酸濃度が5重量%であり、ヨウ化カリウム濃度が8重量%である水溶液の55℃の架橋浴中で、さらに延伸倍率2倍で長手方向に一軸延伸(後延伸)し、乾燥処理して巻き取りロール状の偏光子を得た。
【0161】
[製造例2]光学フィルム(ネガティブCプレート)および偏光板の製造
合成例1で得た環状オレフィン系樹脂(A1)のフィルムロール(150μm)を、延伸温度133℃、延伸倍率1.6倍で縦延伸し、次いで延伸温度135℃、延伸倍率2.4倍でテンター横延伸し、厚さ68μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの面内位相差R550=0〜2nmであり、平均Rth=190nmであった。(Rthは厚み方向位相差を表す指標の1つであり、{(nx+ny)/2−nz}×dで表される。nxは光学フィルム測定点での面内の最大屈折率、nyは面内でnxに直交する方向の屈折率、nzはnxおよびnyに対して直交する延伸フィルム厚み方向の屈折率を表し、dは測定点におけるフィルム厚み(nm)である。)
【0162】
このフィルムを製造例1で得た偏光子の片面にロール状のフィルムを揃えるようにして、調製例1で得た水系接着剤を用いて両者を連続的に貼付し、偏光子のもう一方の面にケン化処理された80μm厚みのトリアセチルセルロース(以下、「TAC」ともいう。)製フィルムを濃度5%のPVA水溶液からなる接着剤を用いて貼付し、偏光板(P0)を得た。得られた偏光板の単体透過率は42.1%、偏光度は99.9%であった。
【0163】
[実施例1]
<積層光学フィルム(F1)の製造>
環状オレフィン系樹脂(A2)ペレットと、ビニル芳香族系樹脂(B1)としてノバケミカルズ製ダイラークD332のペレットを、それぞれ乾燥空気を流した熱風乾燥機を用いて100℃で5時間乾燥した。なお、ノバケミカルズ製ダイラークD332について、固有複屈折を判定したところ、固有複屈折が負の樹脂であることがわかった。これらのペレットを、65mmφスクリューおよび50mmφスクリューを有する2系列の溶融押出成形機を用いて、溶融樹脂温度260℃、Tダイリップ開口幅600mmの条件で共押出し成形することにより、A2層(150μm)/B1層(130μm)の構成の未延伸積層光学フィルムロールを得た。
【0164】
この積層光学フィルムロールを、延伸温度130℃、延伸倍率2.0倍でテンター横延伸し、厚さ133μmの積層光学フィルム(F1)を得た。得られた積層光学フィルムの面内位相差R450=82nm、R550=91nm、R650=96nmであり、NZ=1.72であった。この積層光学フィルムの密着性を確認したところ、層間が一部剥離したが剥がす途中で材料破壊した。また環境試験の結果、3条件とも位相差の変化量は±2%以内であり、外観の変化は見られなかった。
【0165】
<偏光板(P1)の製造および液晶表示装置の評価>
得られた積層光学フィルム(F1)を、製造例1で得た偏光子の片面にロール状のフィルムを揃えるようにして(偏光子の吸収軸である延伸方向と積層光学フィルムの延伸方向
が直交にする)、ビニル芳香族系樹脂層が偏光子側に面するようにし、調製例1で得た水系接着剤を用いて両者を連続的に貼付し、偏光子のもう一方の面に、保護フィルムとして、ケン化処理された80μm厚みのTACフィルムを濃度5%のPVA水溶液からなる接着剤を用いて貼付し、偏光板(P1)を得た。得られた偏光板の単体透過率および偏光度を調べたところ、それぞれ42.0%および99.9%であった。
【0166】
この偏光板の特性を評価するため、三星電子(株)製液晶テレビ(型番LN40R81BD)の液晶パネルの観察者側の前面および背面に貼付している偏光板および位相差フィルムを剥がし、この剥がした箇所に、製造例2で得たネガティブCプレート偏光板(P0)を背面に、偏光板(P1)を前面に、それぞれ元々貼合されていた偏光板の透過軸と同一にしてアクリル系透明粘着フィルムを用いて貼合した。このとき背面、前面ともに偏光板の位相差フィルム(積層光学フィルム)が液晶セル側になるように貼合した。
【0167】
この偏光板を有する液晶テレビのコントラスト比を測定したところ、全方位、極角0〜80度の範囲で最大値:4970、最小値:100と高い数値であり、目視でムラは観察されなかった。また黒表示状態で方位角45度において、極角0〜60度でのカラーシフトを測定したところ、Δu’v’=0.04であった。
【0168】
[比較例1]
<光学フィルム(F2)の製造>
環状オレフィン系樹脂(A1)を単独で押出し成形することにより、A1のフィルムロール(150μm)を得た。A1のフィルムロールを、延伸温度140℃、延伸倍率3.0倍でテンター横延伸し、厚さ55μmの光学フィルム(F6)を得た。この光学フィルムの面内位相差R450=121nm、R550=120nm、R650=119nmであり、NZ=1.33であった。また環境試験の結果、3条件とも位相差の変化量は±2%以内であり、外観の変化は見られなかった。
【0169】
<偏光板(P2)の製造および液晶表示装置の評価>
積層光学フィルム(F1)の代わりに光学フィルム(F2)を用いた他は実施例1と同様にして偏光板(P2)を得た。得られた偏光板の単体透過率および偏光度を調べたところ、それぞれ41.8%および99.9%であった。偏光板(P1)の代わりに偏光板(P2)を用いた他は実施例1と同様にして、液晶テレビのコントラスト比を測定したところ、全方位、極角0〜80度の範囲で最大値:5160、最小値:85と高い数値であり、目視でムラは観察されなかった。また黒表示状態で方位角45度において、極角0〜60度でのカラーシフトを測定したところ、Δu’v’=0.11であった。光学フィルムF2が逆波長分散性を有しないためΔu’v’値が少し大きくなり、カラーシフトは改良されなかった。
【0170】
[比較例2]
<積層光学フィルム(F3)の製造>
環状オレフィン系樹脂(A2)とビニル芳香族系樹脂(B2)とを用いた他は実施例1と同様にして、A2層(130μm)/B2層(130μm)の構成の未延伸積層光学フィルムロールを得た。この積層光学フィルムロールを、延伸温度130℃、延伸倍率2.0倍でテンター横延伸し、厚さ133μmの積層光学フィルム(F3)を得た。得られた積層光学フィルムの面内位相差R450=258nm、R550=255nm、R650=252nmであり、NZ=1.45であった。この積層光学フィルムの密着性を確認したところ、層間が容易に剥離した。また環境試験の結果、乾熱試験において位相差の変化量が5%を超え、湿熱試験およびヒートショック試験において層間が剥離してしまった。
【0171】
<偏光板(P3)の製造および液晶表示装置の評価>
積層光学フィルム(F1)の代わりに積層光学フィルム(F3)を用いた他は実施例1と同様にして偏光板(P3)を得た。得られた偏光板の単体透過率および偏光度を調べたところ、それぞれ42.0%および99.9%であった。偏光板(P1)の代わりに偏光板(P3)を用いた他は実施例1と同様にして、液晶テレビのコントラスト比を測定したところ、全方位、極角0〜80度の範囲で最大値:5320、最小値:5となった。また黒表示状態で方位角45度において、極角0〜60度でのカラーシフトを測定したところ、Δu’v’=0.22であった。積層光学フィルム(F3)に用いたビニル芳香族系樹脂(B2)のガラス転移温度が低く、延伸した際にB2層が所定の位相差が発現せず、積層光学フィルムが望ましい位相差を有していないため、正面コントラスト比は問題ないものの、斜め方向のコントラスト比が悪く、カラーシフトも多い。
【0172】
[比較例3]
<積層光学フィルム(F4)の製造>
環状オレフィン系樹脂(A1)を単独で押出し成形することにより、A1のフィルムロール(150μm)を得た。A1のフィルムロールを、延伸温度130℃、延伸倍率2.0倍でテンター横延伸し、厚さ77μmの光学フィルムを得た。この光学フィルムの面内位相差R450=263nm、R550=260nm、R650=257nmであり、NZ=1.38であった。
【0173】
続いてPETフィルム上に配向膜用のポリイミド溶液をワイヤーバーで塗布し、80℃の温風で1分、さらに100℃の温風で2分乾燥した後、このポリイミド配向膜の表面をラビング処理した。この配向膜上に重合性ネマチック液晶溶液をワイヤーバーで塗布し、100℃で2分乾燥後、高圧水銀灯を用いて、700mJ/cm2でUV照射し重合性ネ
マチック液晶化合物を重合させた。PETフィルムからこの液晶硬化膜を剥がし位相差を測定したところ、R450=174nm、R550=165nm、R650=159nmであり、NZ=1.02、厚さは2μmであった。
【0174】
得られた液晶硬化膜をアクリル系透明粘着フィルムを用いて上記光学フィルム上に、光軸方向(面内の最大屈折率方向)が互いに直交するように貼合し、積層光学フィルム(F4)を得た。得られた積層光学フィルムの面内位相差R450=89nm、R550=95nm、R650=98nmであり、NZ=3.80であった。また環境試験の結果、3条件での位相差の変化量は最大2.3%であり、外観の変化は見られなかった。
【0175】
<偏光板(P4)の製造および液晶表示装置の評価>
積層光学フィルム(F1)の代わりに積層光学フィルム(F4)を用い、液晶硬化層が偏光子側に面するようにした他は実施例1と同様にして偏光板(P4)を得た。得られた偏光板の単体透過率および偏光度を調べたところ、それぞれ41.9%および99.9%であった。偏光板(P1)の代わりに偏光板(P4)を用い、実施例1と同様にして液晶テレビのコントラスト比を測定したところ、全方位、極角0〜80度の範囲で最大値:4900、最小値:15であり、目視でムラは観察されなかった。また黒表示状態で方位角45度において、極角0〜60度でのカラーシフトを測定したところ、Δu’v’=0.15であった。液晶硬化膜を積層したF4は、フィルム面内位相差R450、R550、R650は逆波長分散性になっており問題ないものの、斜め方向の位相差異常によりNZ係数が望ましい範囲に無い。よって正面コントラスト比は問題ないものの、斜め方向のコントラスト比が悪く、カラーシフトも多い。
【0176】
[参考例]
液晶テレビにあらかじめ貼合してある位相差フィルムを偏光板からはがし、参照として上記方法により環境試験を実施したところ、3条件での位相差の変化量は最大5%であり、試験サンプルはカールしてしまった。
【0177】
以上の結果のうち、積層光学フィルムの評価結果を表1に、偏光板および液晶表示装置の評価結果並びに参照として上記液晶テレビから偏光板を剥がす前のパネル特性を、表2に示す。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明に係る積層光学フィルムおよび偏光板は、様々な光学部品に使用することができる。たとえば、液晶テレビ、液晶モニタ、携帯電話、カーナビゲーション、携帯ゲーム機、デジタル情報端末などの各種液晶表示装置、液晶プロジェクタ、エレクトロルミネッセンス表示素子またはITO等の透明導電膜を設けてタッチパネルなどに使用することができる。また光ディスクの記録・再生装置の光学系に使用される波長板、カメラ等の光学系に使用される近赤外カットフィルムとしても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有複屈折が正の樹脂と固有複屈折が負の樹脂とを共押出法により積層製膜し、固有複屈折が正の樹脂からなる層と固有複屈折が負の樹脂からなる層とが積層された原反フィルムを得る工程と、
得られた原反フィルムをフィルム長手方向に対して直交方向に一軸延伸する工程とを有し、
下記式(i)〜(iii)で表される特性を全て満たす積層光学フィルムを製造すること
を特徴とする積層光学フィルムの製造方法。
R450≦R550≦R650 …(i)
1.0≦R650/R550≦1.2 …(ii)
70nm≦R550≦150nm …(iii)
(上記式(i)〜(iii)中、R450、R550、R650は、順に、波長450nm
、550nm、650nmにおける積層光学フィルムの面内位相差を表す。)
【請求項2】
固有複屈折が正の樹脂が、環状オレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1に
記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
環状オレフィン系樹脂が、下記式(1)で表わされる構造単位(1)および下記式(2)で表わされる構造単位(2)を有する共重合体を含むことを特徴とする請求項2に記載の積層光学フィルムの製造方法。
【化1】

(式(1)中、mは0以上の整数、pは0以上の整数であり、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R4は、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしく
は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)極性基、
(f)R1とR2、またはR3とR4が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、
前記結合に関与しないR1〜R4は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す

(g)R1とR2、R3とR4、またはR2とR3が、相互に結合して形成された芳香環あるい
は非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないR1〜R4は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。]
【化2】

(式(2)中、Yは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R5〜R8はそれぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f
)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしく
は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)極性基、
(f)R5とR6、またはR7とR8が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、
前記結合に関与しないR5〜R8は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)R5とR6、R7とR8、またはR6とR7が、相互に結合して形成された芳香環あるい
は非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないR5〜R8は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。])
【請求項4】
固有複屈折が負の樹脂が、ビニル芳香族系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3
のいずれかに記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
ビニル系芳香族系樹脂が、
下記式(3)で表わされる構造単位(3)と、
下記式(4)で表わされる構造単位(4)および/または下記式(5)で表わされる構造単位(5)と
を有する共重合体を含むことを特徴とする請求項4に記載の積層光学フィルムの製造方法

【化3】

(式(3)中、A1は水素原子またはメチル基を示す。A2〜A4は各々独立に水素原子;
ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を表す。)
【化4】

(式(4)中、Xは酸素原子もしくは置換気を有する窒素原子である。式(5)中、A5
は水素原子またはメチル基を示す。A6は水素原子もしくは炭素原子数1〜30の炭化水
素基である。)
【請求項6】
固有複屈折が正の樹脂からなる層と固有複屈折が負の樹脂からなる層とが直接接して積層されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
固有複屈折が正の樹脂のガラス転移温度と固有複屈折が負の樹脂のガラス転移温度との差が、20℃以内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とする積層光学フィルム。
【請求項9】
固有複屈折が正の樹脂からなる層と固有複屈折が負の樹脂からなる層とが直接接して積層しており、かつ、下記式(i)〜(iii)で表される特性を全て満たすことを特徴とす
る積層光学フィルム。
R450≦R550≦R650 …(i)
1.0≦R650/R550≦1.2 …(ii)
70nm≦R550≦150nm …(iii)
(上記式(i)〜(iii)中、R450、R550、R650は、順に、波長450nm
、550nm、650nmにおける積層光学フィルムの面内位相差を表す。)
【請求項10】
さらに下記式(iv)で表わされる特性を満たすことを特徴とする請求項8または9に
記載の積層光学フィルム。
1.0≦NZ≦3.0 …(iv)
(式(iv)中、NZはNZ=(nx−nz)/(nx−ny)で表される係数であり、波長550nmにおける値である。ここで、nxは積層光学フィルム面内での最大屈折率、nyは積層光学フィルム面内でnxに直交する方向の屈折率、nzはnxおよびnyに対して直交する積層光学フィルム厚み方向の屈折率を表す。)
【請求項11】
固有複屈折が正の樹脂のガラス転移温度と固有複屈折が負の樹脂のガラス転移温度とが、いずれも110℃以上であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の積層光学フィルム。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれかに記載の積層光学フィルムが、偏光子の少なくとも片面に、接着剤もしくは粘着剤を介して貼合されてなることを特徴とする偏光板。
【請求項13】
反射防止層および防眩層から選ばれる少なくとも1種の層をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
積層光学フィルムの面内での最大屈折率方向と、偏光子の透過軸方向とが平行でないように貼合されてなることを特徴とする請求項12または13に記載の偏光板。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−237534(P2009−237534A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295690(P2008−295690)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】