説明

積層型半導体パッケージ

【課題】接合用電極端子による接合の信頼性を高め、各層半導体パッケージの半導体素子間の発熱の影響を小さくする。
【解決手段】積層型半導体パッケージ11は、プリント配線基板2、及びプリント配線基板2に実装された半導体素子1を有する半導体パッケージ4を備えている。また、積層型半導体パッケージ11は、プリント配線基板6、及びプリント配線基板6に実装された半導体素子5を有する半導体パッケージ8を備え、半導体パッケージ4,8が積み重ねられて3次元実装される。半導体パッケージ8は、互いに対向する2つのプリント配線基板2,6を接合する複数の接合用電極端子7を有する。そして、2つのプリント配線基板2,6で挟まれた領域Rのうち、複数の接合用電極端子7の間隙を含む領域R1に、2つのプリント配線基板2,6間に介在する半導体素子1と非接触状態でアンダーフィル材9が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体パッケージが積み重ねられて3次元実装されている積層型半導体パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルカメラ、PDA(Personal Digital Assistants)等の携帯用電子製品は高機能化、高性能化、軽薄短小化が年々進んでいる。このような市場動向に対応するために、その製品で使用される半導体パッケージについても同様の方向性が要求される。
【0003】
電子製品の高機能化により半導体パッケージの電極端子数は今後増える傾向にある。一方、電子製品の小型化により半導体パッケージの大きさは小型化が要求される。そこで両方の要求を満たすには電極端子間隔を狭くする必要がある。
【0004】
電極端子間隔が狭くなるとBGA(Ball Grid Array)のように半田接合の電極端子の場合は使用半田ボール径の小型化により接合面積が小さくなる。
【0005】
半導体パッケージは線膨張係数に大きな差がある半導体素子(シリコン:約3ppm/℃)とプリント配線基板(ガラスエポキシ材:10〜15ppm/℃)から構成されているため、動作時発熱による温度変動でひずみが生じる。
【0006】
そのひずみは半導体素子とそれを搭載しているプリント配線基板との接合箇所である電極端子に応力としてかかるが、接合面積が小さくなっているため、従来と比較すると接合強度が低下し、接合信頼性が低下するという問題が発生する。
【0007】
そこで、半導体素子とプリント配線基板との間に封止樹脂材としてアンダーフィル材を注入して、半導体素子全体で応力を受けて緩和するという補強方法が知られている(特許文献1参照)。
【0008】
図7は、従来の半導体パッケージを示す説明図である。図7(A)に示すように、半導体パッケージ100Aは、半導体素子101Aと、プリント配線基板102Aとを備え、半導体素子101Aとプリント配線基板102Aとを電極端子103Aで接合して構成されている。この半導体素子101Aとプリント配線基板102Aとの間には、アンダーフィル材104が充填され、電極端子103Aによる接合を補強している。この半導体パッケージ100Aは、図7(B)に示すように、プリント配線基板102Aに設けた接合用電極端子105Aにより、マザーボード106の配線パターンに接合される。そして、プリント配線基板102Aとマザーボード106との間にもアンダーフィル材107が充填され、接合用電極端子105Aによる接合を補強している。
【0009】
また、半導体パッケージの形態のひとつとして、半導体パッケージ上に半導体パッケージを搭載したPoP(Package on Package)技術を採用した積層型半導体パッケージが知られている(特許文献2参照)。
【0010】
図8は、従来の積層型半導体パッケージを示す説明図である。積層型半導体パッケージ200は、半導体パッケージ100Aと、半導体パッケージ100Aの上方に配置される半導体パッケージ100Bと、を備えている。半導体パッケージ100Bは、半導体素子101Bと、半導体素子101Bが実装されるプリント配線基板102Bとを有している。そして、プリント配線基板102Bの下面に形成された接合用電極端子105Bをプリント配線基板102Aの配線パターンに接合することで、3次元実装がなされている。
【0011】
このPoP技術により、実装面積割合を小さくすることができるため、高密度実装が可能であり、プリント配線基板を小型化できる。また、平面的に並べて実装するよりも信号配線間距離を短くすることが可能であり、高速伝送に適している。
【0012】
【特許文献1】特開2000−260912号公報
【特許文献2】特開平06−013541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
今後、上述した積層型半導体パッケージにおいても、多ピン化、小型化が進むことが予想され、その際には半導体パッケージ間の接合用電極端子が小型化して接合面積が小さくなるので、従来と同様に、接合用電極端子の接合強度が低下すると考えられる。そこで、半導体パッケージ間にアンダーフィル材を注入して補強することが考えられる。
【0014】
ところで、半導体素子は、動作により発熱するが、ある一定の温度を超えると動作不安定や特性劣化等の現象が発生する可能性が高くなる。半導体素子をプリント配線基板に平面的に搭載する場合には、半導体素子間の距離は数mm〜数十mm程度であり、放熱するには十分な距離があるため、他の半導体素子の熱による影響はほとんどなく、主に各自の半導体素子の発熱について留意すればよい。
【0015】
これに対し、上述した積層型半導体パッケージでは、各半導体パッケージが積層されており、半導体素子間の距離が1mm以下程度まで接近するため、各自の半導体素子の発熱以外にも、他の半導体素子から伝導する熱による温度上昇の影響も考慮する必要がある。したがって、互いに半導体素子の発熱の影響を小さくするには、積層型半導体パッケージの各半導体素子間を断熱させることが望ましい。
【0016】
しかしながら、一般にアンダーフィル材としてよく使用されるエポキシ樹脂の熱伝導率は0.2〜0.5W/mKであり、空気の熱伝導率(約0.02W/mK)と比較して高い。そのため、各半導体パッケージ間にアンダーフィル材を注入することにより、半導体素子の熱がアンダーフィル材を通じて他の半導体素子へ伝導し易くなり、互いに発熱の影響を受ける可能性が大きくなるという問題が発生する。
【0017】
そして、今後、携帯用電子製品の高機能化、高性能化、軽薄短小化による積層型半導体パッケージの需要はますます高くなると考えられるため、積層型半導体パッケージ内の断熱及び接合強度の両方の対策が重要となる。
【0018】
そこで本発明の目的は、接合用電極端子による接合の信頼性を高め、各層半導体パッケージの半導体素子間の発熱の影響を小さくすることができる積層型半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、配線基板と、前記配線基板に実装された半導体素子と、を有する半導体パッケージを複数備え、前記複数の半導体パッケージが積み重ねられて3次元実装される積層型半導体パッケージにおいて、互いに対向する2つの配線基板を接合する複数の接合用電極端子を有し、前記2つの配線基板で挟まれた領域のうち、前記複数の接合用電極端子の間隙を含む領域に、前記2つの配線基板間に介在する半導体素子と非接触状態で封止樹脂材が充填されている、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の接合用電極端子の間隙が封止樹脂材で充填されるので、接合用電極端子にかかる応力を緩和させることができる。これにより配線基板同士の接合の信頼性が向上する。更に、2つの配線基板に介在する半導体素子は、充填された封止樹脂材に非接触であるので、他の半導体素子と高い断熱状態を維持することができる。したがって、各半導体素子は、他の半導体素子の発熱による影響が小さくなるので、熱による動作不安定や特性劣化等の現象が発生する可能性が低くなり、電気的に高い信頼性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る第1実施形態の積層型半導体パッケージ11を示す断面図である。
【0023】
本第1実施形態の積層型半導体パッケージ11は、第1の半導体パッケージ4と、第1の半導体パッケージ4の上方に配置される第2の半導体パッケージ8と、を備え、2つの半導体パッケージ4,8が積み重ねられて3次元実装されている。
【0024】
第1の半導体パッケージ4は、第1の半導体素子1、配線基板としての第1のプリント配線基板2、及び半田バンプ等の複数の第1の接合用電極端子3を有している。
【0025】
第1の半導体素子1は、第1のプリント配線基板2の上面の略中央に実装されている。第1の接合用電極端子3は、第1のプリント配線基板2の下面に設けられており、不図示のマザーボード等の配線基板に半田で接合することができる。
【0026】
第2の半導体パッケージ8は、第2の半導体素子5、配線基板としての第2のプリント配線基板6、及び半田バンプ等の複数の第2の接合用電極端子7を有している。
【0027】
第2の半導体素子5は、第2のプリント配線基板6の上面の略中央に実装されている。第2の接合用電極端子7は、第2のプリント配線基板6の下面に設けられている。そして、第2の接合用電極端子7は、第2のプリント配線基板6を第1のプリント配線基板2に積み重ねた際に第1の半導体素子1に接触しないように配置され、第1のプリント配線基板2の上面に形成された配線パターンに半田で接合することができる。
【0028】
つまり、互いに対向する2つのプリント配線基板2,6が、複数の第2の接合用電極端子で機械的・電気的に半田接合される。
【0029】
これにより、第1のプリント配線基板2と第2のプリント配線基板6との間(2つの配線基板間)には、第1の半導体素子1が介在することとなる。
【0030】
第1の半導体パッケージ4は、第1の半導体素子1が例えばCPU等であるロジック系の半導体パッケージである。
【0031】
第1の半導体素子1は、1辺が約5〜8mmの平面視略四角形状で、厚さが0.1〜0.2mmである。第1のプリント配線基板2は、1辺が10〜15mmの平面視略四角形状で、厚さが0.5〜0.8mmである。半田バンプである第1の接合用電極端子3は、半田バンプ径が0.25〜0.4mmであり、第1の接合用電極端子3同士の間隙が0.3〜0.5mmである。
【0032】
第2の半導体パッケージ8は、第2の半導体素子5が例えばメモリ等であるメモリ系半導体パッケージである。
【0033】
第2の半導体素子5は、1辺が約5〜8mmの平面視略四角形状で、厚さが0.1〜0.2mmである。第2のプリント配線基板6は、1辺が10〜15mmの平面視略四角形状で、厚さが0.5〜0.8mmである。半田バンプである第2の接合用電極端子7は、半田バンプ径が0.25〜0.4mmであり、第2の接合用電極端子7同士の間隙は0.3〜0.5mmである。
【0034】
そして、積層型半導体パッケージ11は、高さが1〜2mmである。第2の接合用電極端子7により接合された2つのプリント配線基板2,6の間隔は、0.1〜0.4mmである。
【0035】
なお、本第1実施形態では外形状の寸法を上記の如く設定したが、本発明はそれに限定するものではない。また、上下のプリント配線基板2,6間の接合方法を半田接合としているが、接合方法は半田接合に限ったものではない。
【0036】
ところで、積層型半導体パッケージ11が不図示のマザーボードに実装されて動作する際、第1の半導体素子1又は第2の半導体素子5の発熱によりプリント配線基板2,6間の第2の接合用電極端子7に応力がかかる。
【0037】
そこで、本第1実施形態では、第1のプリント配線基板2と、第2のプリント配線基板6との2つの配線基板で挟まれた領域Rのうち、複数の第2の接合用電極端子7の間隙を含む領域R1に、封止樹脂材としてアンダーフィル材9が充填されている。このアンダーフィル材9が第2の接合用電極端子7の接合強度を補強する応力緩衝材としての役割を果たす。
【0038】
このアンダーフィル材9は、例えばエポキシ系の樹脂であり、その熱伝導率(0.2〜0.5W/mK)は、空気の熱伝導率(約0.02W/mK)よりも高い。
【0039】
つまり、アンダーフィル材9は空気よりも熱伝導率が高いため、仮に第1の半導体素子1に接触させてしまうと断熱の効果が下がる。したがって、アンダーフィル材9は、2つのプリント配線基板2,6間に介在する半導体素子としての第1の半導体素子1に非接触状態で充填される。
【0040】
ここで、積層型半導体パッケージ11は、複数の第2の接合用電極端子7の間隙を含む領域R1と、2つのプリント配線基板2,6間に介在する第1の半導体素子1の近傍を含む領域R2とを仕切る仕切り部15を備えている。
【0041】
仕切り部15は、第1の半導体素子1を囲うように、領域R内に設けられている。この仕切り部15は、第1のプリント配線基板2の上面にレジストで形成されているダム13と、第2のプリント配線基板6の下面にレジストで形成されているダム14と、からなり、ダム13,14が互いに対向して形成されている。ダム13,14は、高さ30〜50μmのレジストで形成されている。
【0042】
図2は、第2の接合用電極端子7の位置で水平に切断した場合の積層型半導体パッケージ11の平面図である。
【0043】
第2の接合用電極端子7は、図2に示すように、10行×10列で4辺のそれぞれに2列ずつ配置され、第1の半導体素子1が、仕切り部15を介して複数の第2の接合用電極端子7で囲われている。
【0044】
このように仕切り部15で領域R1と領域R2とが仕切られることにより、2つのプリント配線基板2,6間に介在する第1の半導体素子1の周り(領域R2)には、空隙(空気層)が形成される。このように形成された空隙により、第1の半導体素子1で生じた熱が第2の半導体素子5に熱伝導するのを抑制することができ、第2の半導体素子5で生じた熱が第1の半導体素子1に熱伝導するのを抑制することができる。これにより、各半導体素子1,5の温度を一定以下に抑えることができるため、電気的に安定した動作が得られる。
【0045】
次に、積層型半導体パッケージ11の製造方法について説明する。
【0046】
まず、アンダーフィル材9を充填する前に、2つのプリント配線基板2,6を複数の接合用電極端子7で接合する。
【0047】
これにより、第1のプリント配線基板2の上面に形成されたダム13と、第2のプリント配線基板6の下面に形成されたダム14とが対向して仕切り部15が形成され、第1の半導体素子1と第2の接合用電極端子7とが仕切り部15で隔てられる。
【0048】
その後、アンダーフィル材9を領域R1の外側から注入して領域R1に充填するが、アンダーフィル材9が仕切り部15で堰き止められるので、アンダーフィル材9が領域R2に流れ込むのを防止することができる。これにより、第1の半導体素子1は、領域R1に注入したアンダーフィル材9と非接触状態となり、第1の半導体素子1の周りには空隙が形成されるので、空隙内の空気により断熱効果が高められる。したがって、第1の半導体素子1と第2の半導体素子5とが互いの発熱による影響を受けにくくなり、熱による動作不安定や特性劣化等が発生する可能性が低くなり、電気的に高い信頼性を維持することができる。
【0049】
なお、アンダーフィル材9で第2の接合用電極端子7の間隙全体を覆うと、領域R2が密閉されるため、温度上昇により領域R2の空気が膨張して第1の半導体素子1に応力がかかる可能性もあるので、不図示の空気抜きの通路を設けてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
次に第2実施形態の積層型半導体パッケージについて説明する。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図3は、本発明に係る第2実施形態の積層型半導体パッケージ11Aを示す断面図であり、図4は、第2の接合用電極端子7の位置で水平に切断した場合の積層型半導体パッケージ11Aの平面図である。ここで、第2の半導体パッケージ8の多ピン化等により第1の半導体素子1が空気層と接するのが困難な場合がある。
【0052】
本第2実施形態の積層型半導体パッケージ11Aは、2つのプリント配線基板2,6間に介在する第1の半導体素子1を覆う、アンダーフィル材9よりも熱伝導率の低い低熱伝導性樹脂材10を備えている。
【0053】
低熱伝導性樹脂材10は、多孔性の材料からなり、例えばウレタン樹脂である。このウレタン樹脂は熱伝導率が約0.03W/mKとアンダーフィル材9のエポキシ系樹脂の熱伝導率(0.2〜0.5W/mK)と比較して低いため、断熱効果は高い。
【0054】
低熱伝導性樹脂材10は、最大の断熱効果を得るために、第1の半導体素子1の基板側の面以外の周面を全て覆っている。なお、低熱伝導性樹脂材10は、第2のプリント配線基板6と接触していても接触していなくてもいずれであってもよい。
【0055】
これにより、第1の半導体素子1と第2のプリント配線基板6との間隙には、アンダーフィル材9よりも断熱効果の高い低熱伝導性樹脂材10が充填されるので、第1の半導体素子1と第2の半導体素子5とは、互いの発熱による影響が小さくなる。
【0056】
次に、積層型半導体パッケージ11A製造方法について説明する。
【0057】
まず、2つのプリント配線基板2,6を接合用電極端子7で接合する前に、低熱伝導性樹脂材10を予め第1の半導体素子1に塗布しておく。つまり、領域R2に低熱伝導性樹脂材10を充填しておく。この状態で2つのプリント配線基板2,6を接合用電極端子7で接合し、その後、アンダーフィル材9を領域R1に注入する。
【0058】
これにより、第1の半導体素子1は、領域R1に注入したアンダーフィル材9と非接触状態となり、第1の半導体素子1の周りには低熱伝導性樹脂材10が設けられているので、低熱伝導性樹脂材10により断熱効果が高められる。したがって、第1の半導体素子1と第2の半導体素子5とが互いの発熱による影響を受けにくくなり、熱による動作不安定や特性劣化等が発生する可能性が低くなり、電気的に高い信頼性を維持することができる。
【0059】
また、第1の半導体素子1を覆っている低熱伝導性樹脂材10を多孔性の材料にすることにより、断熱効果を高めることができる。
【0060】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の積層型半導体パッケージについて説明する。なお、本第3実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図5は、本発明に係る第3実施形態の積層型半導体パッケージ11Bを示す平面図であるが、第2の半導体パッケージの第2の半導体素子及び第2のプリント配線基板の図示を省略している。
【0062】
積層型半導体パッケージ11Bの複数の接合用電極端子7は、プリント配線基板2の4辺の内の対向する2辺の近傍に2列で配置されている。そして、仕切り部15の一対のダムが、2辺に平行に設けられて半導体素子1の両側に配置される。
【0063】
このように仕切り部15を配置することにより、アンダーフィル材9を領域R1に注入充填しても、半導体素子1はアンダーフィル材9と非接触状態に保たれる。
【0064】
そして、複数の接合用電極端子7がプリント配線基板2の2辺近傍にのみ配置されているため、半導体素子1は、アンダーフィル材9を充填していない領域R2を通じて外気と接触可能である。したがって、半導体素子1の周囲の空気が熱膨張しても、空気が領域R2から抜けるので、半導体素子1に応力がかかるのを抑制することができる。
【0065】
また、領域R2自体が空気抜きの通路となるため、別途、空気抜き通路を設ける必要が無く、製造が容易となる。
【0066】
なお、複数の接合用電極端子7を略コ字形状に配列する場合等、領域R2が外気と接していれば複数の接合用電極端子7の配置は任意でよく、この場合も同様の効果を奏する。
【0067】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の積層型半導体パッケージについて説明する。なお、本第3実施形態において、上記第3実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
図6は、本発明に係る第4実施形態の積層型半導体パッケージ11Cを示す平面図であるが、第2の半導体パッケージの第2の半導体素子及び第2のプリント配線基板の図示を省略している。
【0069】
図6に示す積層型半導体パッケージ11Cは、上記第3実施形態の積層型半導体パッケージ11Bの半導体素子1に、上述した低熱伝導性樹脂材10を塗布したものである。半導体素子は、領域R1に注入したアンダーフィル材9と非接触状態となり、半導体素子の周りには低熱伝導性樹脂材10が設けられているので、低熱伝導性樹脂材10により断熱効果が高められる。したがって、各半導体素子が互いの発熱による影響を受けにくくなり、熱による動作不安定や特性劣化等が発生する可能性が低くなり、電気的に高い信頼性を維持することができる。
【0070】
また、半導体素子を覆っている低熱伝導性樹脂材10を多孔性の材料にすることにより、断熱効果を高めることができる。
【0071】
なお、上記第1〜第4実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
上記第1〜第4実施形態では、積層型半導体パッケージが半導体パッケージを2つ備える場合について説明したが、本発明はこの個数に限定するものではなく、積層型半導体パッケージが、半導体パッケージを複数備える(2以上備える)場合に適用可能である。この場合、複数の配線基板のうち、対向する2つの配線基板が複数の接合用電極端子で接合される。そして、接合用電極端子間に封止樹脂材としてアンダーフィル材が充填される。
【0073】
また、上記第1〜第4実施形態では、各配線基板に1つの半導体素子が実装される場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、各配線基板に複数の半導体素子が実装される場合であってもよい。
【0074】
また、上記第1〜第4実施形態では、配線基板の上面に半導体素子が実装され、この半導体素子がこの配線基板と対向する他の配線基板との間に介在する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではない。すなわち、配線基板の下面に半導体素子が実装され、この配線基板と対向する他の配線基板との間に半導体素子が介在する場合であってもよい。
【0075】
また、上記第1〜第4実施形態では、複数の接合用電極端子の間隙全体がアンダーフィル材で完全に充填されている場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではない。複数の接合用電極端子の間隙全体がアンダーフィル材で完全に充填されている場合には、接合補強の効果が最大となるので好ましいが、所望の条件を満たしていれば完全に充填されていなくてもよく、一部に空隙がある場合でもよい。
【0076】
上記第1及び第2実施形態では、接合用電極端子を、10行×10列で4辺に2列ずつ配置した場合について、上記第3及び第4実施形態では、接合用電極端子を、2辺に2列ずつ配置した場合について説明したが、これに限定するものではない。すなわち、接合用電極端子の配置、配列は任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る第1実施形態の積層型半導体パッケージを示す断面図である。
【図2】第2の接合用電極端子の位置で水平に切断した場合の積層型半導体パッケージの平面図である。
【図3】本発明に係る第2実施形態の積層型半導体パッケージを示す断面図である。
【図4】第2の接合用電極端子の位置で水平に切断した場合の積層型半導体パッケージの平面図である。
【図5】本発明に係る第3実施形態の積層型半導体パッケージを示す平面図である。
【図6】本発明に係る第4実施形態の積層型半導体パッケージを示す平面図である。
【図7】従来の半導体パッケージを示す説明図である。
【図8】従来の積層型半導体パッケージを示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1 第1の半導体素子(半導体素子)
2 第1のプリント配線基板(配線基板)
3 第1の接合用電極端子
4 第1の半導体パッケージ
5 第2の半導体素子
6 第2のプリント配線基板(配線基板)
7 第2の接合用電極端子(接合用電極端子)
8 第2の半導体パッケージ
9 アンダーフィル材(封止樹脂材)
10 低熱伝導性樹脂材
11,11A,11B,11C 積層型半導体パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、前記配線基板に実装された半導体素子と、を有する半導体パッケージを複数備え、前記複数の半導体パッケージが積み重ねられて3次元実装される積層型半導体パッケージにおいて、
互いに対向する2つの配線基板を接合する複数の接合用電極端子を有し、
前記2つの配線基板で挟まれた領域のうち、前記複数の接合用電極端子の間隙を含む領域に、前記2つの配線基板間に介在する半導体素子と非接触状態で封止樹脂材が充填されている、
ことを特徴とする積層型半導体パッケージ。
【請求項2】
前記2つの配線基板間に介在する半導体素子の周りに空隙が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の積層型半導体パッケージ。
【請求項3】
前記2つの配線基板間に介在する半導体素子が、前記封止樹脂材よりも熱伝導率の低い低熱伝導性樹脂材で覆われている、
ことを特徴とする請求項1に記載の積層型半導体パッケージ。
【請求項4】
前記低熱伝導性樹脂材は、多孔性の材料である、
ことを特徴とする請求項3に記載の積層型半導体パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−153651(P2010−153651A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331194(P2008−331194)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】