積層型表示および書き込み装置
【課題】多様な用途に適用できる可搬性表示体、および可搬性表示体の各ディスプレイ手段を簡単に交換可能とするための構成を提案する。
【解決手段】積層型表示および書き込み装置は、表示媒体65として、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、そして紙を積層した状態で有しており、これらの表示媒体65には、複数個の穴66を設け、バインダー62のピン64によって嵌合され、外側カバー60ならびにカバー留め具61によってブック状に構成される。外側カバー60は内部にポリマー電解質電池などのバッテリーを内蔵し、表示媒体65などの内容物を保護するとともに電子的な表示媒体65のための電力供給手段としての機能を有する。
【解決手段】積層型表示および書き込み装置は、表示媒体65として、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、そして紙を積層した状態で有しており、これらの表示媒体65には、複数個の穴66を設け、バインダー62のピン64によって嵌合され、外側カバー60ならびにカバー留め具61によってブック状に構成される。外側カバー60は内部にポリマー電解質電池などのバッテリーを内蔵し、表示媒体65などの内容物を保護するとともに電子的な表示媒体65のための電力供給手段としての機能を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型表示および書き込み装置に関し、特に、情報等の入出力装置を一体化した表示および書き込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報社会の発達とともに従来新聞や書籍で配信されていた各種の情報が電子情報となり、コンピュータあるいはPDA等の各種端末に配信され、それらの情報をディスプレイによって見る時代になってきて久しい。それに応じて、各種ディスプレイの研究開発が盛んになってきている。
これらのディスプレイには大きく分けて自ら発光する自発光型ディスプレイと室内灯や太陽光などの外光によって視認できる反射型ディスプレイがある。
【0003】
前者の代表例はCRTディスプレイであるが、近年はバックライトを備えた液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、さらには電子放出型ディスプレイ(例えば、特許文献1参照。)のような薄型のものに取って代わられようとしている。
さらに最近は、薄型軽量化、量産時の低コスト化が期待でき、液晶ディスプレイの欠点であるコントラストの低さや、視野角の狭さ等を容易に解決できる技術として、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)素子を利用したいわゆる有機ELディスプレイが注目を集め、その材料研究が盛んである(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方で、視野角の狭さ等の技術課題があるものの、自発光型ディスプレイほどエネルギー消費をしない反射型液晶ディスプレイも携帯端末用ディスプレイとして捨てがたい魅力があり、明るさ向上等を目的として引き続きその改良研究が行われている(例えば、特許文献3参照)。
他に、いわゆるマイクロカプセル粒子の電気泳動を利用した反射型ディスプレイの研究も盛んになってきている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
これら以外にも、分散粒子配向型ディスプレイ、着色粒子回転型ディスプレイ、PLZTディスプレイ、DMD(デジタル・マイクロミラーデバイス)ディスプレイ、電子粉流体ディスプレイ等各種のディスプレイ技術が研究されている。
これはある一つの技術で、高精細、カラー化、動画表示、低エネルギー駆動、薄型、軽量化、可撓性、ロバストネス、ペーパーライクな取り扱い性、低コスト等全ての要求を満たす技術が存在しないからであり、今後それぞれの要求に応じて、それに最適な技術で実用化されていくものと考えられる。
【0006】
一方で、このような電子情報表示技術とは別に、従来より使用されている紙による表示は、電子表示ディスプレイのようなコンピュータ等の情報の表示手段としての多様性はないもののその扱いやすさは捨てがたいものがある。
【特許文献1】特開2000−30605号公報
【特許文献2】特開2003−142269号公報
【特許文献3】特開平5−61027号公報
【特許文献4】特表2002−520655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、多様な用途に適用できる新規な構成の可搬性表示体を提案することにある。
また、第2の目的は、このような新規な構成の可搬性表示体の各ディスプレイ手段を簡単に交換可能とするための構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するためのもので、第1に、有機ELを表示媒体としたカラーディスプレイと液晶を表示媒体としたモノクロディスプレイと電気泳動粒子を表示媒体としたディスプレイと紙とを積層してなるディスプレイと紙の混合群と、該混合群の外側に配され、全体を1枚のシート状構成としたバッテリー兼カバー部材とよりなる積層型表示および書き込み装置とした。
【0009】
また第2に、上記第1の積層型表示および書き込み装置において、前記混合群の各ディスプレイならびに紙を保持する複数個のピン状部材を有し、前記各ディスプレイならびに紙は、それぞれ前記ピン状部材に対応して嵌合させるための複数個の穴をそれぞれ有するとともに、前記各ディスプレイならびに紙は、前記バッテリー兼カバー部材に対して前記ピン状部材を介して脱着可能とした。
【発明の効果】
【0010】
第1の手段に対応した効果
有機ELを表示媒体としたカラーディスプレイと液晶を表示媒体としたモノクロディスプレイと電気泳動粒子を表示媒体としたディスプレイと紙とを積層してなるディスプレイと紙の混合群と、該混合群の外側に配され、全体を1枚のシート状構成としたバッテリー兼カバー部材とよりなる積層型表示および書き込み装置としたので、これらの表示手段を適宜選ぶことにより、表示する内容に適した表示媒体を選ぶことが可能となった。
【0011】
第2の手段に対応した効果
このような積層型表示および書き込み装置において、前記混合群の各ディスプレイならびに紙を保持する複数個のピン状部材を有し、前記各ディスプレイならびに紙は、それぞれ前記ピン状部材に対応して嵌合させるための複数個の穴をそれぞれ有するとともに、前記各ディスプレイならびに紙は、前記バッテリー兼カバー部材に対して前記ピン状部材を介して脱着可能としたので、それぞれのディスプレイ手段が故障、破損しても、そのディスプレイ手段のみを交換すればよく、大変経済的な可搬性表示体とすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る積層型表示および書き込み装置の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、これに限定されるものではない。
図1は、本発明に好適に適用される表示手段の一例である有機EL素子の断面図であり、基板1上に順次第1電極2、電荷輸送性着色層3、発光層4および第2電極5が積層された構造になっている。この有機EL素子では、発光層4から放射された光は電荷輸送性着色層3、透明な第1電極2、透明な基板1を通して取り出される。この電荷輸送性着色層3がカラーフィルターとして機能し、発光スペクトル分布が修正され着色された光が取り出される。
【0013】
本発明に適用される有機EL素子ではさらに、電荷輸送性着色層に正孔輸送あるいは正孔注入などの機能を付加することで着色した正孔輸送層あるいは正孔注入層とし、また、発光層を白色発光層として、この白色発光層を着色した正孔輸送層、正孔注入層と組み合わせることで任意の発光色を取り出すようにできる。
【0014】
図2は、本発明に適用されるフルカラー有機EL素子の断面図であり、基板1上に第1電極2が設けられ、第1電極2上に赤色電荷輸送性着色層6、緑色電荷輸送性着色層7および青色電荷輸送性着色層8が、これら3色の電荷輸送性着色層上に発光層4が、さらに発光層4上に第2電極5が積層された構造になっている。このような赤、緑、青色の3色の電荷輸送性着色層(正孔輸送層)を微細配置することで、発光層の微細な配置やカラーフィルターを必要とすることなく、赤、緑、青の発光ピクセルを微細配置でき、フルカラー有機ELディスプレイを形成することができる。もちろん、この電荷輸送性着色層の微細配置を発光層の微細配置、カラーフィルターと組み合わせて用いることもできる。
【0015】
本発明に適用される有機EL素子に設けられるEL層とは、対向する第1電極と第2電極間に設けられる有機物層である。少なくともEL層の1層がエレクトロルミネッセンスを起こすものであれば限定されない。また、EL層は第1電極上(第1電極と第2電極の間)に設けられるが、第1電極上に直接設けられたものであっても、必要に応じ第1電極とEL層との間に他の層を介在させたものであってもよい。
【0016】
本発明のEL層はさらに、その構成要素として、必須の層として発光層、電荷輸送性着色層、任意の層として、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層および電子を輸送する電子輸送層(これらはまとめて、電荷輸送層と呼ぶことがある)、ならびに、発光層または正孔輸送層に正孔を注入する正孔注入層および発光層または電子輸送層に電子を注入する電子注入層(これらはまとめて、電荷注入層と呼ぶことがある)を設けることができる。
これらEL層を構成する材料としては以下のものが挙げられる。
【0017】
まず第1に、電荷輸送性着色層であるが、本発明で用いる電荷輸送性着色層は、光透過率が特定の波長領域のみで大きくなる電荷輸送性を有する有機化合物層である。本発明で用いる電荷輸送性着色層は、それ自体電荷輸送性を有する染料、顔料で構成されるか、または、電荷輸送性を有さなくともよい染料、顔料を電荷輸送性材料に分散させて構成される。また、正孔注入、正孔輸送など他の機能を備えたものであってもよい。電荷輸送性着色層に用いることのできる染料、顔料としては、例えばトリフェニルメタン色素、キサンチン色素、アゾ色素などの有機色素、金属フタロシアニン、金属錯体アゾなどの金属錯体、α−Fe2O3、CoO・Al2O3などの無機顔料、CdS、CdSSeなどの可視域にバンドギャップの値を持つ半導体などが挙げられる。染料、顔料を分散させる場合の電荷輸送性材料として、後述の正孔輸送材料などを用いることができる。このような材料を用いた場合、発光強度に悪影響はない。
【0018】
電荷輸送性着色層の厚みは、好ましくは選択透過波長領域以外での透過率を20%以下にするため、20〜2000nm、より好ましくは100〜500nmと通常の正孔輸送層より厚いものとする。染料、顔料を電荷輸送性材料に分散させて用いる場合には、染料、顔料と電荷輸送性材料との間で塩を形成することや電荷移動錯体を形成することによる沈降や色変化を生じにくいことが重要である。
【0019】
次に、発光層は、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層であり、電圧印加時に陽極または正孔輸送層から正孔を注入できるとともに陰極または電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能を有することができる。発光層の材料として用いることのできる材料としては、例えばオキサジアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、キナクリドン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などの高分子化合物、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0020】
次に、正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能の少なくともいずれかを有している層である。また、機能別に正孔注入層、正孔輸送層など複数層に分割してもよい。正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体などの正孔輸送性低分子、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体などの正孔輸送性高分子、ポリメチルメタクリレートやポリスチレンのような電荷輸送性のない高分子をバインダーとして正孔輸送性低分子を分散したものなどが挙げられる。前出の電荷輸送性着色層材料を分散させることで着色した正孔輸送層として用いることができる。
【0021】
本発明においては、先に設ける電極を第1電極、その後EL層上に設ける電極を第2電極として呼ぶ。これらの電極は特に限定されないが、好ましくは電極は陽極と陰極からなり、この場合第1電極は陽極、陰極のいずれであってもよい。好ましくは陽極と陰極のどちらか一方が、透明または半透明である。
【0022】
陽極は正孔を注入しやすいように4eVより大きい仕事関数を持つものが好ましく、例えば酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)などの導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケルなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリピロールなどの有機導電性材料、これらの混合物または積層物などが挙げられ、特に、高導電性、透明性などの点からITOが好ましい。
【0023】
陰極は電子を注入しやすいように4eVより小さい仕事関数を持つものが好ましく、例えばアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、セシウムなど)およびそのフッ化物、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)およびそのフッ化物、アルミニウム、銀などの金属およびこれらの合金または混合物などが挙げられる。
【0024】
本発明においては基板を設けることができる。この基板は、その上に電極やEL層が設けられるものであり、所望により透明材料からなることができるが、不透明材料であってもよい。基板には、例えば石英、ソーダガラスなどのガラス板、金属板や金属箔、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などのプラスチックなどが用いられるが、ガラス、プラスチックのような透明なものが望ましい。特にプラスチック基板は軽量化ができ、壊れにくく、また可撓性があるので、表示手段の操作性が紙に近くなる(他の表示手段との切り替え時にめくるという感覚が紙に近くなる)ので好ましい。
【0025】
本発明の有機EL素子の製造方法は、前記の有機EL素子が製造できる方法であれば限定されない。具体的には、例えば基板上に第1電極を設ける工程と、前記第1電極上に赤色、緑色および青色の電荷輸送性着色層を形成する工程と、前記赤色、緑色および青色の電荷輸送性着色層上に白色発光層を形成する工程と、前記白色発光層上に第2電極を設ける工程から少なくともなる有機EL素子の製造方法を用いることができる。
【0026】
このような手順による製造方法とすることにより、従来一般的な、基板上にカラーフィルター、第1電極、正孔輸送層、白色発光層、第2電極を順次設ける手順と比較して、製造工程を短縮することができる。なお、カラーフィルター、基板、第1電極の順での配置は、視差が大きくなるため実用的ではない。また、発光層と電荷輸送性着色層が隣接するので、従来のカラーフィルターと発光層との間に第1電極を挟む有機EL素子と比べてもさらに色純度が良好である。さらに、第1電極の形成が、耐熱温度が最高でも250℃程度のカラーフィルターなどの熱に弱い中間層を介在させることなく基板上に形成できるので、第1電極が高温で形成でき、そのため第1電極の抵抗値が従来の1/4程度まで低下して、導電性が高まり、有機EL素子の発光効率が高まる利点がある。
【0027】
また、本発明に用いることのできる正孔輸送層は厚膜化が可能なものであるので、正孔輸送層や電荷輸送性着色層の形成に印刷法を用いることができ、この点でも製造工程の簡略化やコストダウンが可能である。さらに、EL素子の発光層は、薄くしかも空気との接触を避ける必要がありパターニングが困難であるが、本発明は発光層のパターニングを行わずパターニングしやすい電荷輸送性着色層について行うことが可能であるので、製造工程上有利である。
【0028】
図3は、本発明に適用される反射型液晶表示素子の概略構成を示す断面図であり、図4は、図3に示す反射型液晶表示素子に適用される表示用光学システムの一例を示す説明図である。
図3ならびに図4を用いて、本発明に適用される一例として液晶表示素子について説明する。ここでは消費電力が少なくてすむ反射型液晶表示素子の実施形態の説明をするが、これによって、本発明が限定されるものではない。
【0029】
本実施形態に好適に適用される反射型液晶表示素子は、対向して配される一対の透光性基板と、該一対の透光性基板の対向面間に挟装される液晶材料とを有し、該液晶材料の有する電気光学効果を用いて表示を行う液晶表示素子であって、上記一対の透光性基板のいずれか一方の対向面側に、光反射層と、透光性の光散乱層とがこの順に積層されてなる構造を有している。より具体的には、液晶表示素子(反射型液晶表示素子)30は図3に示すように、透光性基板11の一方の面(対向面)上に、反射層(光反射層)12、透光性の光散乱層13、平行に配された複数の信号電極(液晶駆動用電極)15、並びに液晶配向膜16が順に形成されてなる信号電極側基板10と、透光性基板21の一方の面(対向面)上に、平行に配された複数の走査電極(液晶駆動用電極)22および液晶配向膜23が順に形成されてなる走査電極側基板20とが、それぞれの対向面により液晶材料17を挟装するべく対向配置された液晶パネル構造を有している。また、上記信号電極15と走査電極22とは互いに直行するように配されている。
【0030】
なお、それぞれの「透光性基板の対向面側」とは、透光性基板11(または透光性基板21)の対向面側と液晶材料17との間を指すものとする。また、「対向面側にA層とB層とがこの順に積層される」とは、A層とB層とが積層構造になっているとともに、該A層がB層より対向面近傍に位置していることを指す。したがって、場合によっては、上記対向面とA層との間に、他の層が介在していてもよい。
【0031】
この液晶表示素子30は、白黒表示に適用された単純マトリクス型の液晶表示素子であり、上記信号電極15と走査電極22との交差部間に所定の電圧を印加し、液晶材料17の有する電気光学効果を用いて表示を行う反射型液晶表示素子である。なお、この液晶パネル構造において、透光性基板11、21それぞれの「対向面」は液晶セル内面を形成するものであり、場合によっては「内面」と称するものとする。また、透光性基板11、21それぞれの「内面」の背向面を、「外面」と称するものとする。
【0032】
以下、上記液晶表示素子30の製造工程の概略について説明を行う。まず、液晶表示素子30を構成する信号電極側基板10の製造工程を説明する。
はじめに、透光性基板11の一方の面(対向面)上にアルミニウム等の高反射特性を有する材料よりなる薄膜、すなわち反射層12をスパッタリング法により面内均一に形成する。反射層12の層厚(膜厚)は特に限定されるものではないが、本実施の形態では約1000Åである。また、反射層12をなす材料は所望される反射特性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銀などを使用することもできる。
【0033】
続いて、基材としてのアクリル系樹脂に粒径2μmの粒状シリカ(光散乱粒子)14がほぼ均一に分散されてなる透光性樹脂材料をスピンコーティングにより反射層12上に均一に塗布し、例えば紫外線硬化することで層厚6μmの光散乱層(透光性樹脂層)13を形成した。なお、本実施の形態では、図3に示すように、反射層12が完全に被覆されるべく光散乱層13を形成している。また、光散乱層13の層厚は特に限定されるものではないが、平面平坦性を確保しながら、膜厚分布による散乱特性の面内分布を抑えるという理由により、5μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0034】
上記透光性樹脂材料をなす基材は、透光性を有し、かつ、光散乱粒子を変質させることなく分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、などをアクリル系樹脂に代えて使用することができる。ただし、平坦な薄膜を容易に形成することが可能である(平面平坦性が良好である)という観点からはアクリル系樹脂がより好ましい。また、光散乱粒子14は、上記基材とは異なる屈折率を有する粒子状物質であって、光散乱層13の層厚以下の粒子径を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラスビーズ、プラスチックビーズなどを使用することができる。
【0035】
続いて、上記光散乱層13上にITO(Indium Tin oxide)などの透明(透光性)導電性材料よりなる透明導電膜をスパッタリング法により面内均一に形成した。そして、該透明導電膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることで、互いに略平行に配された複数の信号電極(1つのみ図示される)15が形成される。そして、この信号電極15を被覆し、かつ、凹凸を平坦化するように、ポリイミド材料等の透光性材料よりなる薄膜が印刷法によりパターン形成され、該薄膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜16が形成される。上記説明のようにして信号電極側基板10は製造される。
【0036】
次に、走査電極側基板20の製造工程の概略について、以下に説明を行う。
はじめに、透光性基板21の一方の面(対向面)上にITO(Indium Tin oxide)等の透明(透光性)導電性材料よりなる透明導電膜をスパッタリング法により面内均一に形成する。そして、該透明導電膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることで、互いに略平行に配された複数の走査電極22が形成される。そして、この走査電極22を被覆し、かつ、凹凸を平坦化するように、ポリイミド材料等の透光性材料よりなる薄膜が印刷法によりパターン形成され、該薄膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜23が形成される。
【0037】
続いて、液晶配向膜16、23の一方(場合によっては両方)に対しスペーサー18を分散するとともに、信号電極側基板10または走査電極側基板20の周縁部に、接着材および封止材としてのシール樹脂層19を形成する。なお、シール樹脂層19は図示しない液晶注入口に相当する部分には形成しない。
【0038】
そして、信号電極側基板10と走査電極側基板20とがシール樹脂19を介して貼り合わされる。次いで、液晶セル内部に対し液晶注入口より液晶材料17を注入・充填し、液晶注入口を封止することで液晶表示素子30が製造される。なお、上記のスペーサー18は、上記液晶表示素子30のセル間隔を一定に保持するべく機能する。また、上記信号電極15が走査電極として、かつ、走査電極22が信号電極として機能する構成であってもよい。
【0039】
上記の製造工程でも説明したように、反射層12と光散乱層13とはいずれも平面状に均一に形成されている。したがって、凹凸形状を有する樹脂層上にその形状に沿って反射層(光反射層)を形成して光散乱・反射板とする従来の反射型液晶表示素子(従来型液晶表示素子と称する)と比較すれば、該凹凸形状平坦化のために平坦化樹脂層を設ける必要がない。よって、目的とする光散乱・反射板(すなわち、本実施の形態における反射層12と光散乱層13との積層構造板)を備えた反射型液晶表示素子を効率よく製造することが可能である。
【0040】
また、本実施の形態において、反射層12は1000Åと極めて薄い層厚で透光性基板11内面上に形成されており、該内面と同等の平坦性を有すると考えられる。すなわち、光散乱層13は、高い平坦性を有する反射層12上に形成されるので、面内分布および基板間分布よく(すなわち、品質安定性よく)形成可能である。本実施の形態では光散乱層13の層厚は6μmであるが、面内分布と基板間分布との双方に優れるとともに、その表面平坦性も水平面を基準として±0.1μm以内と極めて優れた値を示した。さらに、この構造では、反射層12と光散乱層13との間に介在する層がないため光学的なロスを抑制することが可能であり、上記従来型液晶表示素子と同等の極めて優れた光学特性(コントラストや視野角等)を有する反射型液晶表示素子を品質安定性良く製造することが可能である。
【0041】
図4に示すように、製造された液晶表示素子30が反射型のみに適用される場合、表示に利用される光は透光性基板21の外面側(図中、観測者のいる側)にある反射用光源31より該液晶表示素子30内に入射される。この光は、例えば、偏光板と位相差板とを積層してなるフィルム(以下、偏光位相差板27と称する)を透過させた光として液晶表示素子30に与えられ、透光性基板21、透明導電性材料よりなる走査電極22(光の一部は走査電極22、22間を透過する)、液晶配光膜23、液晶材料17、液晶配向膜16、透明導電性材料よりなる信号電極15(光の一部は信号電極15、15間を透過する)、並びに、透光性樹脂層である光散乱層13、を順に透過して反射層12に到達し、該反射層12において透光性基板21方向に反射される。
【0042】
反射層12において反射された上記光は、直ちに光散乱層13に入射され、該光散乱層13中に均一に分散された光散乱粒子14により、液晶セル内部に均一に拡散されて表示に利用される。なお、光散乱層13の光散乱特性(光拡散特性)は、例えば、基材と光散乱粒子14との組合せ;光散乱粒子の粒子径;光散乱粒子14の含有量;層厚;基材中における光散乱粒子14の分散均一性度合い;等の要素を変更することにより所望するように制御可能である。
【0043】
上記偏光位相差板27は、反射用光源31と液晶表示素子30との間に配置されていればよく、透光性基板21の外面上に貼り付けられて液晶表示素子30と一体化されたものであってもよい。偏光位相差板27を設けることにより、反射用光源31の存在下で良好な表示品位を得ることが可能となる。また、上記光を発する反射用光源31は特に限定されるものではなく、自然光源または人工光源(補助光源等)より任意に選択すればよい。
【0044】
なお、透光性基板11、21としては、一般的には寸法安定性に優れている等の理由でガラス基板が使用されるが、本発明のように可搬性を重視し、また、使用時に他の表示手段とを切り替えて使用するという特殊性を考慮すると、透光性プラスチック基板(透光性プラスチック材料からなる基板)を使用することが望ましい。この理由として、本実施の形態にかかる液晶表示素子30は白黒表示に適用されるものゆえ、1)透光性基板11、21のそれぞれに形成される樹脂層の数は比較的少なく、寸法変化の制御が比較的容易であること、2)厳密な位置あわせが要求されるのは、基本的に、液晶駆動用電極(信号電極15および走査電極22)同士の位置関係だけであるため寸法変化に対する許容度が比較的広いこと、3)可撓性とすることにより、他の表示手段との切り替え使用時に、より紙に近い使用感覚(ページをめくる感覚)が得られること等が挙げられる。
【0045】
加えて、ガラス基板にかえて透光性プラスチック基板を使用すれば、本発明にかかる反射型液晶表示素子の薄型化、軽量化が可能となるとともに、割れ・ひびなどの破損が生じにくい等の利点がある。本発明では実際に透光性基板11、21として透光性プラスチック基板を使用した場合でも、図4に示す表示用光学システムを適用することで良好な表示品位を得ることができている。なお、本発明において、プラスチック基板とは、透光性、可撓性を有するプラスチック基板であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリイミドからなる基板を指している。
【0046】
図5は、本発明に適用されるマイクロカプセル型のディスプレイの断面図を示し、図6は、本発明に適用されるマイクロカプセル型のディスプレイの電極構成を示す部分破断斜視図である。デバイスは、一般的に、KAPTON薄膜のような薄い、可撓性の材料である基板40を備える。行電極42は、印刷プロセスによって基板40上に被着されていることが好ましい。例示の実施態様では、非線形バックプレーン44は、粒状バリスター材料または粒状ダイオード材料の連続層である。44で示す非線形バックプレーンの構造は、また、粒状シリコンの層、印刷された金属接点、及び、粒状シリコンの別の層とすることができる。代替的には、構造44は、PNPNPNNPNPNPのような上に向かうパターンで印刷された、P型及びN型のドーピングされた粒状半導体インクの層から構成することができる。任意の多くの数の層を印刷することができ、その最適な数は、主として所望の破壊電圧に依存して決まる。
【0047】
第1の組42に位置合わせされた、オプションの第2の組の印刷された行電極46(図5にのみ示している)は、非線形材料44の他方の面に対する接点を設ける。Acheson ML25208のような絶縁材料が、電極42間の空間を画定するレーン48に印刷被着され、これによって、なめらかな表面が形成される。電気泳動式ディスプレイのマイクロカプセルの層のような電気光学ディスプレイ41は、行電極46上に、もしそれらが省かれている場合には、非線形バックプレーン44上に印刷被着される。1組の透明な列電極49が、行電極42(及び、もし、含まれていれば46)に直交するパターンで、ディスプレイ41上に印刷被着される。絶縁材料は、列電極49間のレーン50に印刷被着される。アクティブな画素は、電気光学ディスプレイ41の領域内で画定され、そこでは、これらの直交する電極の組がオーバーラップする。従って、M個の行電極とN個の列電極を備えるディスプレイは、M×N個の画素を有する。
【0048】
図7、図8は、マイクロカプセル47によるディスプレイ表示の動作原理を示す。図7は、単一のタイプまたは色の粒子を含む電気泳動マイクロカプセルの例である。電極46および49に、選択的に逆向きのバイアスをかけることによって、スピロピランとキレート剤を含み、マイクロカプセル47に封入されている、電荷を有する着色粒子51の多くが、オイルよりなる染料添加懸濁流体52の中で、一方の電極の方向あるいは逆向きに移動をおこす。
【0049】
ここで、白色を得るためにこのような着色粒子51としては、例えば酸化チタンを用いることもできる。その場合、着色粒子51が電極46の方向に引きつけられ、その色(今ここでは白色)が見えるようになる。その逆の形態になると、着色粒子51が電極46の方向に引きつけられ、その結果粒子は、染料添加懸濁流体52によって見えなくなってしまう。
【0050】
図8(A)および(B)は、複数のタイプまたは色の粒子を含む電気泳動マイクロカプセルの例である。図8(A)においては、電気泳動マイクロカプセル47の中にオイルよりなる懸濁流体53があり、その中にはスピロピランおよびキレート剤を含む単一の色の多量の電荷粒子54と、別な色あるいは視覚的に対照的な色で同程度の量の非電荷粒子55が分散されている。
【0051】
ここで、それぞれの粒子54、55は、例えば酸化チタン(白色用粒子)とカーボンブラック(黒色用粒子)とされる。
電極49および46にバイアスをかけると、電荷を有する着色粒子54が、電極49の方に移動する(この場合にはその粒子の色が強くなる。今ここでは白色。)か、あるいは、電極46の方に移動する(この場合には、粒子54は粒子55の後に隠れてしまうので、粒子55の色が強くなる。今ここでは黒色。)。この実施態様においては、それぞれの粒子54、55は、例えば酸化チタン(白色用粒子)とカーボンブラック(黒色用粒子)としたが、スピロピランおよびキレート剤を、電荷粒子54や非電荷粒子55の中に入れてもよい。
【0052】
別な方法を図8(B)に示すが、粒子54と、それとは別の色にした粒子56に逆の電荷を担持させると、プッシュ・プル効果が生まれ、電極49に引きつけられる粒子の視認性を高め、逆側の粒子による視覚的な妨害を防ぐことができる。また、別な方法では、異なった粒子の組を作る際に、同じ符号の電荷であるがその電荷の大きさを変えておくこともできる。これらすべての実施態様において、粒子54と粒子56の電気泳動的な移動性には実質的に差がある。なお、本明細書で「実質的に差がある」という用語を用いる場合には、一方の色の粒子の約25%未満、好ましくは約5%未満しか、他方の色の粒子と同一あるいは類似の電気泳動的挙動を示さないことを意味する。
【0053】
次に、本発明に係る積層型表示および書き込み装置の実施の形態の全体的構成について図9から図11を用いて説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、これに限定されるものではない。
図9(A)は、本発明の積層型表示および書き込み装置の斜視図であり、このように外側カバー60ならびにカバー留め具61よりなり、ブック状に構成される。図9(B)は、留め具61をはずし、内部を本のように開いた状態であり、保持された表示媒体65は、バインダー62により保持されている。
【0054】
本発明においては、この表示媒体65として、上記説明のようなカラー表示を行う有機ELによるディスプレイと、モノクロ表示を行う液晶ディスプレイと、電気泳動粒子を利用したディスプレイ、さらに古典的表示装置である紙をこの順序で積層し、このような電子的な表示装置と紙の混合群をバインダー62(図10)により保持している。紙は、表示媒体であるとともに、いわゆるノートとしての使い方もできるので、表示媒体ならびに書き込み媒体ということもできる。なお、表示媒体65は先のような積層順序で積層するのが一般的であるが、このような積層順序に限られるものではなく、適宜任意の順序に変更することができる。
【0055】
図10は、本発明の積層型表示および書き込み装置に適用されるバインダーを示す斜視図であり、図11は、本発明の積層型表示および書き込み装置に適用される各種表示媒体ならびに紙の概念を示す斜視図である。本発明の積層型表示および書き込み装置は、表示媒体65として、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、そして紙を有しているものであるが、これらの表示媒体ならびに書き込み媒体には、複数個の穴66を設け、バインダー62のピン64によって嵌合されている。そしてこのような電子的な表示媒体と紙の混合群は、本のようにめくることができるので、所望の表示媒体を必要に応じて自由に使用することができる。
【0056】
なお、このバインダー62は、図10に示すように、回転部63を軸とし、バインダー留め部62cとバインダー留め部62dの着脱を行うことにより、バインダー62aとバインダー62bに図の矢印方向に回転分割でき、ピン64も分割され、表示媒体(あるいは紙)65を着脱可能としている。
すなわち、紙などは筆記によりたまったものを新たな紙に交換することができる。また紙に限らず、上記電子的な表示媒体も、故障等が生じた場合に交換することも簡単にできるようになっている。
【0057】
次に、本発明の他の特徴について説明する。
前述のように、本発明は、電子的な表示媒体と紙の混合群よりなる積層型表示および書き込み装置であるが、このような電子的な表示媒体に電力を供給する構成について説明する。
【0058】
本発明の積層型表示および書き込み装置は、本来の趣旨(表示機能あるいは書き込み機能)からいえば、表示媒体65を上記のように積層したものをバインダー62によって保持すれば一応機能する。しかしながら、本発明では図9に示すように、内容物である表示媒体65をバインダー62によって保持するとともに、外側カバー60によって覆っている。これは高価な電子的な表示媒体である内容物を保護するためのものであるが、本発明においては、この外側カバー60に内容物を保護する以上の機能を持たせている。すなわち、電子的な表示媒体に電力供給手段としての機能である。
具体的には本発明においては、外側カバー60を全体を1枚のシート状構成としたバッテリーとしている。より具体的には、ポリマー電解質電池が好適に用いることができる。
【0059】
以下、その構造の1例について図12から図14を用いて説明する。
図12において、70はゲル状ポリマー電解質保持正極ユニットで、72はゲル状ポリマー電解質保持負極ユニットである。上記ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70は、図13に示すように、正極75を袋状の支持体77に収容し、正極75と支持体77とを一体化した後、ゲル化成分含有電解液を含浸させ、その状態で紫外線を照射してモノマー成分を重合するとともに電解液をゲル化してゲル状ポリマー電解質76にすることにより構成されたものである。ただし、この図13はゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70を模式的に示すもので、ゲル状ポリマー電解質76が支持体77の周囲に形成されているかのように図示されているが、実際には、正極ユニットへのゲル化成分含有電解液の含浸時に上記ゲル化成分含有電解液が多孔質の不織布で構成される支持体の内部に侵入し、さらに正極の内部の空孔部分にも侵入し、そこで重合とゲル化が行われてゲル状ポリマー電解質になっている。しかし、その部分のゲル状ポリマー電解質は図示しがたいので、この図13においては図示していない。
【0060】
また、ゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット72は、図14に示すように、負極78を袋状の支持体77に収容し、負極78と支持体77とを一体化した後、ゲル化成分含有電解液を含浸させ、モノマー成分を重合するとともにゲル化してゲル状ポリマー電解質76とすることによって構成されたものであり、このゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット72におけるゲル状ポリマー電解質76の形成態様も上記ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70に関連して説明した場合と同様である。
【0061】
そして、図12において、74は上記ラミネートフィルムからなる外装体であり、この外装体74で上記ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70とゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット72とを積層して構成したユニットセルを外装しており、上記ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70の正極75のリード部と正極端子71とは溶接によって接続され、ゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット72の負極のリード部と負極端子73とは溶接によって接続され、正極端子71の自由端側と負極端子73の自由端側が外装体74の外部に引き出されて電池が構成されている。
【実施例1】
【0062】
以下、具体的な実施例を説明する。
この実施例では、正極、負極ともあらかじめ支持体となる不織布で包んで電極と支持体とを一体化しておき、そのリード部に熱剥離シートを貼着してから、そのそれぞれにゲル化成分含有電解液を含浸させ、ゲル化してゲル状ポリマー電解質にする。まず、電極と支持体とを一体化して電極ユニット(つまり、電極と支持体との一体化物)とする工程から説明する。
【0063】
正極ユニットの作製:支持体としては、厚さ30μm、坪量12g/m2のポリブチレンテレフタレート不織布〔NKK社製、MB1230(商品名)〕を用い、これを200mm×320mmに切断した。
【0064】
上記正極のリード部に熱剥離シート〔日東電工(株)製のリバアルファ(商品名)〕を貼着した後、この正極を上記ポリブチレンテレフタレート不織布の長さ方向の中央部より左側の部分に載置し、右側の部分を折り返して正極を覆った後、その幅方向の両側部を熱融着器(商品名:ポリシーラー、富士インパルス(株)製)でシールして支持体としてのポリブチレンテレフタレート不織布を袋状にし、両者を密接させて正極と支持体とを一体化して正極ユニットとした。
【0065】
負極ユニットの作製:上記負極のリード部に正極の場合と同様の熱剥離シートを貼着した後、この負極を正極の場合と同様の袋状のポリブチレンテレフタレート不織布に収容し、両者を密接させて負極と支持体とを一体化して負極ユニットとした。
【0066】
上記正極ユニットおよび負極ユニットをそれぞれ前記ゲル化成分含有電解液に減圧下で1分間浸漬して正極ユニットおよび負極ユニットにゲル化成分含有電解液を含浸させた後、それぞれをポリエチレン製の袋に入れ、密閉した。
【0067】
つぎに、上記電極ユニット入りのポリエチレン製袋の両面から、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置を用いて、紫外線を1.2W/cm2の照度で8秒間照射し、電解液中のモノマー成分を重合させるとともに、電解液をゲル化してゲル状ポリマー電解質にした。
【0068】
上記のように、ゲル化してゲル状ポリマー電解質を保持させた正極ユニットおよび負極ユニットを袋から取り出し、そのリード部に140℃〜160℃の熱風を吹きつけることによって熱剥離シートをリード部から剥がした後、上記のゲル状ポリマー電解質保持正極ユニットとゲル状ポリマー電解質保持負極ユニットとを積層してユニットセルとし、それをポリエステルフィルム−アルミニウムフィルム−変性ポリオレフィンフィルムの三層構造のラミネートフィルムからなる外装体で外装して密閉することによりポリマー電解質電池を作製した。
【0069】
このように、ポリマー電解質電池では、電解質をシート状にすることができ、それによって、例えばA5版〜A3版などの大面積でしかも薄形の電池の作製が可能になる。このようなポリマー電解質を用いた電池は、耐漏液性を含めた安全性、貯蔵性が優れている。このポリマー電解質電池は、通常、アルミニウムフィルムを芯材にしたラミネートフィルムを外装体に用い、薄いシート状の電極とシート状のポリマー電解質層とを積層したユニットセルを上記外装体で外装して密閉することによって、薄形電池に仕上げられる。さらに薄く、フレキシブルなものとすることができるので、機器の形状に合わせた電池を設計できる。よって、本発明のような電子的な表示媒体を積層し、ブック状にしたものの外側カバー60として好適に適用でき、カバーと電力供給を兼ね備えた構成とすることができる。
【0070】
以上の説明より明らかなように、本発明では、有機ELを表示媒体としたカラーディスプレイと液晶を表示媒体としたモノクロディスプレイと電気泳動粒子を表示媒体としたディスプレイと紙とを積層してなるディスプレイと紙の混合群によって構成される。そしてそれぞれ、カラー表示を必要とする場合、モノクロ表示で充分な場合、動画表示を必要とする場合、静止画表示で充分な場合、さらには、書き込みを必要とする場合といった用途に応じた表示手段あるいは書き込みならびにその書き込み後の情報の表示手段としてそれぞれの特性に応じて効果的に活用できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に適用される有機EL素子の断面図である。
【図2】本発明に適用されるフルカラー有機EL素子の断面図である。
【図3】本発明に適用される反射型液晶表示素子の概略構成を示す断面図である。
【図4】図3に示す反射型液晶表示素子に適用される表示用光学システムの一例を示す説明図である。
【図5】本発明に適用される電気泳動ディスプレイの断面図である。
【図6】本発明に適用される電気泳動ディスプレイの電極構成を示す部分波断斜視図である。
【図7】本発明に適用される電気泳動ディスプレイで単一のタイプまたは色の粒子を含む電気泳動マイクロカプセルによるディスプレイ表示の動作原理を示す図である。
【図8】本発明に適用される電気泳動ディスプレイで複数のタイプまたは色の粒子を含む電気泳動マイクロカプセルによるディスプレイ表示の動作原理を示す図である。
【図9】本発明の積層型表示および書き込み装置を示す図である。
【図10】本発明の積層型表示および書き込み装置に適用されるバインダーを示す斜視図である。
【図11】本発明の積層型表示および書き込み装置に適用される各種表示媒体ならびに紙の概念を示す斜視図である。
【図12】本発明に適用されるポリマー電解質電池を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明に適用されるポリマー電解質電池のゲル状ポリマー電解質保持正極ユニットを模式的に示す断面図である。
【図14】本発明に適用されるポリマー電解質電池のゲル状ポリマー電解質保持負極ユニットを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…基板、2…第1電極、3…電荷輸送性着色層、4…発光層、5…第2電極、6…赤色電荷輸送性着色層、7…緑色電荷輸送性着色層、8…青色電荷輸送性着色層、10…信号電極側基板、11…透光性基板、12…反射層(光反射層)、13…光散乱層(透光性樹脂層)、14…光散乱粒子、15…信号電極(液晶駆動用電極)、16…液晶配向膜、17…液晶材料、18…スペーサー、19…シール樹脂層、20…走査電極側基板、21…透光性基板、22…走査電極、23…液晶配向膜、27…偏光位相差板、30…液晶表示素子(反射型液晶表示素子)、31…反射用光源、40…基板、41…電気光学ディスプレイ、42…電極、44…非線形バックプレーン、46…電極、47…マイクロカプセル、48…レーン、49…電極、50…レーン、51…着色粒子、52…染料添加懸濁流体、53…懸濁流体、54…電荷を有する着色粒子、55…非電荷粒子、56…別の色にした粒子、60…外側カバー、61…カバー留め具、62(62a、62b)…バインダー、62c…バインダー留め部c、62d…バインダー留め部d、63…回転部、64…ピン、65…表示媒体、66…穴、70…ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット、71…正極端子、72…ゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット、73…負極端子、74…外装体、75…正極、76…ゲル状ポリマー電解質、77…支持体、78…負極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型表示および書き込み装置に関し、特に、情報等の入出力装置を一体化した表示および書き込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報社会の発達とともに従来新聞や書籍で配信されていた各種の情報が電子情報となり、コンピュータあるいはPDA等の各種端末に配信され、それらの情報をディスプレイによって見る時代になってきて久しい。それに応じて、各種ディスプレイの研究開発が盛んになってきている。
これらのディスプレイには大きく分けて自ら発光する自発光型ディスプレイと室内灯や太陽光などの外光によって視認できる反射型ディスプレイがある。
【0003】
前者の代表例はCRTディスプレイであるが、近年はバックライトを備えた液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、さらには電子放出型ディスプレイ(例えば、特許文献1参照。)のような薄型のものに取って代わられようとしている。
さらに最近は、薄型軽量化、量産時の低コスト化が期待でき、液晶ディスプレイの欠点であるコントラストの低さや、視野角の狭さ等を容易に解決できる技術として、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)素子を利用したいわゆる有機ELディスプレイが注目を集め、その材料研究が盛んである(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方で、視野角の狭さ等の技術課題があるものの、自発光型ディスプレイほどエネルギー消費をしない反射型液晶ディスプレイも携帯端末用ディスプレイとして捨てがたい魅力があり、明るさ向上等を目的として引き続きその改良研究が行われている(例えば、特許文献3参照)。
他に、いわゆるマイクロカプセル粒子の電気泳動を利用した反射型ディスプレイの研究も盛んになってきている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
これら以外にも、分散粒子配向型ディスプレイ、着色粒子回転型ディスプレイ、PLZTディスプレイ、DMD(デジタル・マイクロミラーデバイス)ディスプレイ、電子粉流体ディスプレイ等各種のディスプレイ技術が研究されている。
これはある一つの技術で、高精細、カラー化、動画表示、低エネルギー駆動、薄型、軽量化、可撓性、ロバストネス、ペーパーライクな取り扱い性、低コスト等全ての要求を満たす技術が存在しないからであり、今後それぞれの要求に応じて、それに最適な技術で実用化されていくものと考えられる。
【0006】
一方で、このような電子情報表示技術とは別に、従来より使用されている紙による表示は、電子表示ディスプレイのようなコンピュータ等の情報の表示手段としての多様性はないもののその扱いやすさは捨てがたいものがある。
【特許文献1】特開2000−30605号公報
【特許文献2】特開2003−142269号公報
【特許文献3】特開平5−61027号公報
【特許文献4】特表2002−520655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、多様な用途に適用できる新規な構成の可搬性表示体を提案することにある。
また、第2の目的は、このような新規な構成の可搬性表示体の各ディスプレイ手段を簡単に交換可能とするための構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するためのもので、第1に、有機ELを表示媒体としたカラーディスプレイと液晶を表示媒体としたモノクロディスプレイと電気泳動粒子を表示媒体としたディスプレイと紙とを積層してなるディスプレイと紙の混合群と、該混合群の外側に配され、全体を1枚のシート状構成としたバッテリー兼カバー部材とよりなる積層型表示および書き込み装置とした。
【0009】
また第2に、上記第1の積層型表示および書き込み装置において、前記混合群の各ディスプレイならびに紙を保持する複数個のピン状部材を有し、前記各ディスプレイならびに紙は、それぞれ前記ピン状部材に対応して嵌合させるための複数個の穴をそれぞれ有するとともに、前記各ディスプレイならびに紙は、前記バッテリー兼カバー部材に対して前記ピン状部材を介して脱着可能とした。
【発明の効果】
【0010】
第1の手段に対応した効果
有機ELを表示媒体としたカラーディスプレイと液晶を表示媒体としたモノクロディスプレイと電気泳動粒子を表示媒体としたディスプレイと紙とを積層してなるディスプレイと紙の混合群と、該混合群の外側に配され、全体を1枚のシート状構成としたバッテリー兼カバー部材とよりなる積層型表示および書き込み装置としたので、これらの表示手段を適宜選ぶことにより、表示する内容に適した表示媒体を選ぶことが可能となった。
【0011】
第2の手段に対応した効果
このような積層型表示および書き込み装置において、前記混合群の各ディスプレイならびに紙を保持する複数個のピン状部材を有し、前記各ディスプレイならびに紙は、それぞれ前記ピン状部材に対応して嵌合させるための複数個の穴をそれぞれ有するとともに、前記各ディスプレイならびに紙は、前記バッテリー兼カバー部材に対して前記ピン状部材を介して脱着可能としたので、それぞれのディスプレイ手段が故障、破損しても、そのディスプレイ手段のみを交換すればよく、大変経済的な可搬性表示体とすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る積層型表示および書き込み装置の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、これに限定されるものではない。
図1は、本発明に好適に適用される表示手段の一例である有機EL素子の断面図であり、基板1上に順次第1電極2、電荷輸送性着色層3、発光層4および第2電極5が積層された構造になっている。この有機EL素子では、発光層4から放射された光は電荷輸送性着色層3、透明な第1電極2、透明な基板1を通して取り出される。この電荷輸送性着色層3がカラーフィルターとして機能し、発光スペクトル分布が修正され着色された光が取り出される。
【0013】
本発明に適用される有機EL素子ではさらに、電荷輸送性着色層に正孔輸送あるいは正孔注入などの機能を付加することで着色した正孔輸送層あるいは正孔注入層とし、また、発光層を白色発光層として、この白色発光層を着色した正孔輸送層、正孔注入層と組み合わせることで任意の発光色を取り出すようにできる。
【0014】
図2は、本発明に適用されるフルカラー有機EL素子の断面図であり、基板1上に第1電極2が設けられ、第1電極2上に赤色電荷輸送性着色層6、緑色電荷輸送性着色層7および青色電荷輸送性着色層8が、これら3色の電荷輸送性着色層上に発光層4が、さらに発光層4上に第2電極5が積層された構造になっている。このような赤、緑、青色の3色の電荷輸送性着色層(正孔輸送層)を微細配置することで、発光層の微細な配置やカラーフィルターを必要とすることなく、赤、緑、青の発光ピクセルを微細配置でき、フルカラー有機ELディスプレイを形成することができる。もちろん、この電荷輸送性着色層の微細配置を発光層の微細配置、カラーフィルターと組み合わせて用いることもできる。
【0015】
本発明に適用される有機EL素子に設けられるEL層とは、対向する第1電極と第2電極間に設けられる有機物層である。少なくともEL層の1層がエレクトロルミネッセンスを起こすものであれば限定されない。また、EL層は第1電極上(第1電極と第2電極の間)に設けられるが、第1電極上に直接設けられたものであっても、必要に応じ第1電極とEL層との間に他の層を介在させたものであってもよい。
【0016】
本発明のEL層はさらに、その構成要素として、必須の層として発光層、電荷輸送性着色層、任意の層として、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層および電子を輸送する電子輸送層(これらはまとめて、電荷輸送層と呼ぶことがある)、ならびに、発光層または正孔輸送層に正孔を注入する正孔注入層および発光層または電子輸送層に電子を注入する電子注入層(これらはまとめて、電荷注入層と呼ぶことがある)を設けることができる。
これらEL層を構成する材料としては以下のものが挙げられる。
【0017】
まず第1に、電荷輸送性着色層であるが、本発明で用いる電荷輸送性着色層は、光透過率が特定の波長領域のみで大きくなる電荷輸送性を有する有機化合物層である。本発明で用いる電荷輸送性着色層は、それ自体電荷輸送性を有する染料、顔料で構成されるか、または、電荷輸送性を有さなくともよい染料、顔料を電荷輸送性材料に分散させて構成される。また、正孔注入、正孔輸送など他の機能を備えたものであってもよい。電荷輸送性着色層に用いることのできる染料、顔料としては、例えばトリフェニルメタン色素、キサンチン色素、アゾ色素などの有機色素、金属フタロシアニン、金属錯体アゾなどの金属錯体、α−Fe2O3、CoO・Al2O3などの無機顔料、CdS、CdSSeなどの可視域にバンドギャップの値を持つ半導体などが挙げられる。染料、顔料を分散させる場合の電荷輸送性材料として、後述の正孔輸送材料などを用いることができる。このような材料を用いた場合、発光強度に悪影響はない。
【0018】
電荷輸送性着色層の厚みは、好ましくは選択透過波長領域以外での透過率を20%以下にするため、20〜2000nm、より好ましくは100〜500nmと通常の正孔輸送層より厚いものとする。染料、顔料を電荷輸送性材料に分散させて用いる場合には、染料、顔料と電荷輸送性材料との間で塩を形成することや電荷移動錯体を形成することによる沈降や色変化を生じにくいことが重要である。
【0019】
次に、発光層は、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層であり、電圧印加時に陽極または正孔輸送層から正孔を注入できるとともに陰極または電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能を有することができる。発光層の材料として用いることのできる材料としては、例えばオキサジアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、キナクリドン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などの高分子化合物、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0020】
次に、正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能の少なくともいずれかを有している層である。また、機能別に正孔注入層、正孔輸送層など複数層に分割してもよい。正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体などの正孔輸送性低分子、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体などの正孔輸送性高分子、ポリメチルメタクリレートやポリスチレンのような電荷輸送性のない高分子をバインダーとして正孔輸送性低分子を分散したものなどが挙げられる。前出の電荷輸送性着色層材料を分散させることで着色した正孔輸送層として用いることができる。
【0021】
本発明においては、先に設ける電極を第1電極、その後EL層上に設ける電極を第2電極として呼ぶ。これらの電極は特に限定されないが、好ましくは電極は陽極と陰極からなり、この場合第1電極は陽極、陰極のいずれであってもよい。好ましくは陽極と陰極のどちらか一方が、透明または半透明である。
【0022】
陽極は正孔を注入しやすいように4eVより大きい仕事関数を持つものが好ましく、例えば酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)などの導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケルなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリピロールなどの有機導電性材料、これらの混合物または積層物などが挙げられ、特に、高導電性、透明性などの点からITOが好ましい。
【0023】
陰極は電子を注入しやすいように4eVより小さい仕事関数を持つものが好ましく、例えばアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、セシウムなど)およびそのフッ化物、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)およびそのフッ化物、アルミニウム、銀などの金属およびこれらの合金または混合物などが挙げられる。
【0024】
本発明においては基板を設けることができる。この基板は、その上に電極やEL層が設けられるものであり、所望により透明材料からなることができるが、不透明材料であってもよい。基板には、例えば石英、ソーダガラスなどのガラス板、金属板や金属箔、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などのプラスチックなどが用いられるが、ガラス、プラスチックのような透明なものが望ましい。特にプラスチック基板は軽量化ができ、壊れにくく、また可撓性があるので、表示手段の操作性が紙に近くなる(他の表示手段との切り替え時にめくるという感覚が紙に近くなる)ので好ましい。
【0025】
本発明の有機EL素子の製造方法は、前記の有機EL素子が製造できる方法であれば限定されない。具体的には、例えば基板上に第1電極を設ける工程と、前記第1電極上に赤色、緑色および青色の電荷輸送性着色層を形成する工程と、前記赤色、緑色および青色の電荷輸送性着色層上に白色発光層を形成する工程と、前記白色発光層上に第2電極を設ける工程から少なくともなる有機EL素子の製造方法を用いることができる。
【0026】
このような手順による製造方法とすることにより、従来一般的な、基板上にカラーフィルター、第1電極、正孔輸送層、白色発光層、第2電極を順次設ける手順と比較して、製造工程を短縮することができる。なお、カラーフィルター、基板、第1電極の順での配置は、視差が大きくなるため実用的ではない。また、発光層と電荷輸送性着色層が隣接するので、従来のカラーフィルターと発光層との間に第1電極を挟む有機EL素子と比べてもさらに色純度が良好である。さらに、第1電極の形成が、耐熱温度が最高でも250℃程度のカラーフィルターなどの熱に弱い中間層を介在させることなく基板上に形成できるので、第1電極が高温で形成でき、そのため第1電極の抵抗値が従来の1/4程度まで低下して、導電性が高まり、有機EL素子の発光効率が高まる利点がある。
【0027】
また、本発明に用いることのできる正孔輸送層は厚膜化が可能なものであるので、正孔輸送層や電荷輸送性着色層の形成に印刷法を用いることができ、この点でも製造工程の簡略化やコストダウンが可能である。さらに、EL素子の発光層は、薄くしかも空気との接触を避ける必要がありパターニングが困難であるが、本発明は発光層のパターニングを行わずパターニングしやすい電荷輸送性着色層について行うことが可能であるので、製造工程上有利である。
【0028】
図3は、本発明に適用される反射型液晶表示素子の概略構成を示す断面図であり、図4は、図3に示す反射型液晶表示素子に適用される表示用光学システムの一例を示す説明図である。
図3ならびに図4を用いて、本発明に適用される一例として液晶表示素子について説明する。ここでは消費電力が少なくてすむ反射型液晶表示素子の実施形態の説明をするが、これによって、本発明が限定されるものではない。
【0029】
本実施形態に好適に適用される反射型液晶表示素子は、対向して配される一対の透光性基板と、該一対の透光性基板の対向面間に挟装される液晶材料とを有し、該液晶材料の有する電気光学効果を用いて表示を行う液晶表示素子であって、上記一対の透光性基板のいずれか一方の対向面側に、光反射層と、透光性の光散乱層とがこの順に積層されてなる構造を有している。より具体的には、液晶表示素子(反射型液晶表示素子)30は図3に示すように、透光性基板11の一方の面(対向面)上に、反射層(光反射層)12、透光性の光散乱層13、平行に配された複数の信号電極(液晶駆動用電極)15、並びに液晶配向膜16が順に形成されてなる信号電極側基板10と、透光性基板21の一方の面(対向面)上に、平行に配された複数の走査電極(液晶駆動用電極)22および液晶配向膜23が順に形成されてなる走査電極側基板20とが、それぞれの対向面により液晶材料17を挟装するべく対向配置された液晶パネル構造を有している。また、上記信号電極15と走査電極22とは互いに直行するように配されている。
【0030】
なお、それぞれの「透光性基板の対向面側」とは、透光性基板11(または透光性基板21)の対向面側と液晶材料17との間を指すものとする。また、「対向面側にA層とB層とがこの順に積層される」とは、A層とB層とが積層構造になっているとともに、該A層がB層より対向面近傍に位置していることを指す。したがって、場合によっては、上記対向面とA層との間に、他の層が介在していてもよい。
【0031】
この液晶表示素子30は、白黒表示に適用された単純マトリクス型の液晶表示素子であり、上記信号電極15と走査電極22との交差部間に所定の電圧を印加し、液晶材料17の有する電気光学効果を用いて表示を行う反射型液晶表示素子である。なお、この液晶パネル構造において、透光性基板11、21それぞれの「対向面」は液晶セル内面を形成するものであり、場合によっては「内面」と称するものとする。また、透光性基板11、21それぞれの「内面」の背向面を、「外面」と称するものとする。
【0032】
以下、上記液晶表示素子30の製造工程の概略について説明を行う。まず、液晶表示素子30を構成する信号電極側基板10の製造工程を説明する。
はじめに、透光性基板11の一方の面(対向面)上にアルミニウム等の高反射特性を有する材料よりなる薄膜、すなわち反射層12をスパッタリング法により面内均一に形成する。反射層12の層厚(膜厚)は特に限定されるものではないが、本実施の形態では約1000Åである。また、反射層12をなす材料は所望される反射特性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銀などを使用することもできる。
【0033】
続いて、基材としてのアクリル系樹脂に粒径2μmの粒状シリカ(光散乱粒子)14がほぼ均一に分散されてなる透光性樹脂材料をスピンコーティングにより反射層12上に均一に塗布し、例えば紫外線硬化することで層厚6μmの光散乱層(透光性樹脂層)13を形成した。なお、本実施の形態では、図3に示すように、反射層12が完全に被覆されるべく光散乱層13を形成している。また、光散乱層13の層厚は特に限定されるものではないが、平面平坦性を確保しながら、膜厚分布による散乱特性の面内分布を抑えるという理由により、5μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0034】
上記透光性樹脂材料をなす基材は、透光性を有し、かつ、光散乱粒子を変質させることなく分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、などをアクリル系樹脂に代えて使用することができる。ただし、平坦な薄膜を容易に形成することが可能である(平面平坦性が良好である)という観点からはアクリル系樹脂がより好ましい。また、光散乱粒子14は、上記基材とは異なる屈折率を有する粒子状物質であって、光散乱層13の層厚以下の粒子径を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラスビーズ、プラスチックビーズなどを使用することができる。
【0035】
続いて、上記光散乱層13上にITO(Indium Tin oxide)などの透明(透光性)導電性材料よりなる透明導電膜をスパッタリング法により面内均一に形成した。そして、該透明導電膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることで、互いに略平行に配された複数の信号電極(1つのみ図示される)15が形成される。そして、この信号電極15を被覆し、かつ、凹凸を平坦化するように、ポリイミド材料等の透光性材料よりなる薄膜が印刷法によりパターン形成され、該薄膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜16が形成される。上記説明のようにして信号電極側基板10は製造される。
【0036】
次に、走査電極側基板20の製造工程の概略について、以下に説明を行う。
はじめに、透光性基板21の一方の面(対向面)上にITO(Indium Tin oxide)等の透明(透光性)導電性材料よりなる透明導電膜をスパッタリング法により面内均一に形成する。そして、該透明導電膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることで、互いに略平行に配された複数の走査電極22が形成される。そして、この走査電極22を被覆し、かつ、凹凸を平坦化するように、ポリイミド材料等の透光性材料よりなる薄膜が印刷法によりパターン形成され、該薄膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜23が形成される。
【0037】
続いて、液晶配向膜16、23の一方(場合によっては両方)に対しスペーサー18を分散するとともに、信号電極側基板10または走査電極側基板20の周縁部に、接着材および封止材としてのシール樹脂層19を形成する。なお、シール樹脂層19は図示しない液晶注入口に相当する部分には形成しない。
【0038】
そして、信号電極側基板10と走査電極側基板20とがシール樹脂19を介して貼り合わされる。次いで、液晶セル内部に対し液晶注入口より液晶材料17を注入・充填し、液晶注入口を封止することで液晶表示素子30が製造される。なお、上記のスペーサー18は、上記液晶表示素子30のセル間隔を一定に保持するべく機能する。また、上記信号電極15が走査電極として、かつ、走査電極22が信号電極として機能する構成であってもよい。
【0039】
上記の製造工程でも説明したように、反射層12と光散乱層13とはいずれも平面状に均一に形成されている。したがって、凹凸形状を有する樹脂層上にその形状に沿って反射層(光反射層)を形成して光散乱・反射板とする従来の反射型液晶表示素子(従来型液晶表示素子と称する)と比較すれば、該凹凸形状平坦化のために平坦化樹脂層を設ける必要がない。よって、目的とする光散乱・反射板(すなわち、本実施の形態における反射層12と光散乱層13との積層構造板)を備えた反射型液晶表示素子を効率よく製造することが可能である。
【0040】
また、本実施の形態において、反射層12は1000Åと極めて薄い層厚で透光性基板11内面上に形成されており、該内面と同等の平坦性を有すると考えられる。すなわち、光散乱層13は、高い平坦性を有する反射層12上に形成されるので、面内分布および基板間分布よく(すなわち、品質安定性よく)形成可能である。本実施の形態では光散乱層13の層厚は6μmであるが、面内分布と基板間分布との双方に優れるとともに、その表面平坦性も水平面を基準として±0.1μm以内と極めて優れた値を示した。さらに、この構造では、反射層12と光散乱層13との間に介在する層がないため光学的なロスを抑制することが可能であり、上記従来型液晶表示素子と同等の極めて優れた光学特性(コントラストや視野角等)を有する反射型液晶表示素子を品質安定性良く製造することが可能である。
【0041】
図4に示すように、製造された液晶表示素子30が反射型のみに適用される場合、表示に利用される光は透光性基板21の外面側(図中、観測者のいる側)にある反射用光源31より該液晶表示素子30内に入射される。この光は、例えば、偏光板と位相差板とを積層してなるフィルム(以下、偏光位相差板27と称する)を透過させた光として液晶表示素子30に与えられ、透光性基板21、透明導電性材料よりなる走査電極22(光の一部は走査電極22、22間を透過する)、液晶配光膜23、液晶材料17、液晶配向膜16、透明導電性材料よりなる信号電極15(光の一部は信号電極15、15間を透過する)、並びに、透光性樹脂層である光散乱層13、を順に透過して反射層12に到達し、該反射層12において透光性基板21方向に反射される。
【0042】
反射層12において反射された上記光は、直ちに光散乱層13に入射され、該光散乱層13中に均一に分散された光散乱粒子14により、液晶セル内部に均一に拡散されて表示に利用される。なお、光散乱層13の光散乱特性(光拡散特性)は、例えば、基材と光散乱粒子14との組合せ;光散乱粒子の粒子径;光散乱粒子14の含有量;層厚;基材中における光散乱粒子14の分散均一性度合い;等の要素を変更することにより所望するように制御可能である。
【0043】
上記偏光位相差板27は、反射用光源31と液晶表示素子30との間に配置されていればよく、透光性基板21の外面上に貼り付けられて液晶表示素子30と一体化されたものであってもよい。偏光位相差板27を設けることにより、反射用光源31の存在下で良好な表示品位を得ることが可能となる。また、上記光を発する反射用光源31は特に限定されるものではなく、自然光源または人工光源(補助光源等)より任意に選択すればよい。
【0044】
なお、透光性基板11、21としては、一般的には寸法安定性に優れている等の理由でガラス基板が使用されるが、本発明のように可搬性を重視し、また、使用時に他の表示手段とを切り替えて使用するという特殊性を考慮すると、透光性プラスチック基板(透光性プラスチック材料からなる基板)を使用することが望ましい。この理由として、本実施の形態にかかる液晶表示素子30は白黒表示に適用されるものゆえ、1)透光性基板11、21のそれぞれに形成される樹脂層の数は比較的少なく、寸法変化の制御が比較的容易であること、2)厳密な位置あわせが要求されるのは、基本的に、液晶駆動用電極(信号電極15および走査電極22)同士の位置関係だけであるため寸法変化に対する許容度が比較的広いこと、3)可撓性とすることにより、他の表示手段との切り替え使用時に、より紙に近い使用感覚(ページをめくる感覚)が得られること等が挙げられる。
【0045】
加えて、ガラス基板にかえて透光性プラスチック基板を使用すれば、本発明にかかる反射型液晶表示素子の薄型化、軽量化が可能となるとともに、割れ・ひびなどの破損が生じにくい等の利点がある。本発明では実際に透光性基板11、21として透光性プラスチック基板を使用した場合でも、図4に示す表示用光学システムを適用することで良好な表示品位を得ることができている。なお、本発明において、プラスチック基板とは、透光性、可撓性を有するプラスチック基板であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリイミドからなる基板を指している。
【0046】
図5は、本発明に適用されるマイクロカプセル型のディスプレイの断面図を示し、図6は、本発明に適用されるマイクロカプセル型のディスプレイの電極構成を示す部分破断斜視図である。デバイスは、一般的に、KAPTON薄膜のような薄い、可撓性の材料である基板40を備える。行電極42は、印刷プロセスによって基板40上に被着されていることが好ましい。例示の実施態様では、非線形バックプレーン44は、粒状バリスター材料または粒状ダイオード材料の連続層である。44で示す非線形バックプレーンの構造は、また、粒状シリコンの層、印刷された金属接点、及び、粒状シリコンの別の層とすることができる。代替的には、構造44は、PNPNPNNPNPNPのような上に向かうパターンで印刷された、P型及びN型のドーピングされた粒状半導体インクの層から構成することができる。任意の多くの数の層を印刷することができ、その最適な数は、主として所望の破壊電圧に依存して決まる。
【0047】
第1の組42に位置合わせされた、オプションの第2の組の印刷された行電極46(図5にのみ示している)は、非線形材料44の他方の面に対する接点を設ける。Acheson ML25208のような絶縁材料が、電極42間の空間を画定するレーン48に印刷被着され、これによって、なめらかな表面が形成される。電気泳動式ディスプレイのマイクロカプセルの層のような電気光学ディスプレイ41は、行電極46上に、もしそれらが省かれている場合には、非線形バックプレーン44上に印刷被着される。1組の透明な列電極49が、行電極42(及び、もし、含まれていれば46)に直交するパターンで、ディスプレイ41上に印刷被着される。絶縁材料は、列電極49間のレーン50に印刷被着される。アクティブな画素は、電気光学ディスプレイ41の領域内で画定され、そこでは、これらの直交する電極の組がオーバーラップする。従って、M個の行電極とN個の列電極を備えるディスプレイは、M×N個の画素を有する。
【0048】
図7、図8は、マイクロカプセル47によるディスプレイ表示の動作原理を示す。図7は、単一のタイプまたは色の粒子を含む電気泳動マイクロカプセルの例である。電極46および49に、選択的に逆向きのバイアスをかけることによって、スピロピランとキレート剤を含み、マイクロカプセル47に封入されている、電荷を有する着色粒子51の多くが、オイルよりなる染料添加懸濁流体52の中で、一方の電極の方向あるいは逆向きに移動をおこす。
【0049】
ここで、白色を得るためにこのような着色粒子51としては、例えば酸化チタンを用いることもできる。その場合、着色粒子51が電極46の方向に引きつけられ、その色(今ここでは白色)が見えるようになる。その逆の形態になると、着色粒子51が電極46の方向に引きつけられ、その結果粒子は、染料添加懸濁流体52によって見えなくなってしまう。
【0050】
図8(A)および(B)は、複数のタイプまたは色の粒子を含む電気泳動マイクロカプセルの例である。図8(A)においては、電気泳動マイクロカプセル47の中にオイルよりなる懸濁流体53があり、その中にはスピロピランおよびキレート剤を含む単一の色の多量の電荷粒子54と、別な色あるいは視覚的に対照的な色で同程度の量の非電荷粒子55が分散されている。
【0051】
ここで、それぞれの粒子54、55は、例えば酸化チタン(白色用粒子)とカーボンブラック(黒色用粒子)とされる。
電極49および46にバイアスをかけると、電荷を有する着色粒子54が、電極49の方に移動する(この場合にはその粒子の色が強くなる。今ここでは白色。)か、あるいは、電極46の方に移動する(この場合には、粒子54は粒子55の後に隠れてしまうので、粒子55の色が強くなる。今ここでは黒色。)。この実施態様においては、それぞれの粒子54、55は、例えば酸化チタン(白色用粒子)とカーボンブラック(黒色用粒子)としたが、スピロピランおよびキレート剤を、電荷粒子54や非電荷粒子55の中に入れてもよい。
【0052】
別な方法を図8(B)に示すが、粒子54と、それとは別の色にした粒子56に逆の電荷を担持させると、プッシュ・プル効果が生まれ、電極49に引きつけられる粒子の視認性を高め、逆側の粒子による視覚的な妨害を防ぐことができる。また、別な方法では、異なった粒子の組を作る際に、同じ符号の電荷であるがその電荷の大きさを変えておくこともできる。これらすべての実施態様において、粒子54と粒子56の電気泳動的な移動性には実質的に差がある。なお、本明細書で「実質的に差がある」という用語を用いる場合には、一方の色の粒子の約25%未満、好ましくは約5%未満しか、他方の色の粒子と同一あるいは類似の電気泳動的挙動を示さないことを意味する。
【0053】
次に、本発明に係る積層型表示および書き込み装置の実施の形態の全体的構成について図9から図11を用いて説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、これに限定されるものではない。
図9(A)は、本発明の積層型表示および書き込み装置の斜視図であり、このように外側カバー60ならびにカバー留め具61よりなり、ブック状に構成される。図9(B)は、留め具61をはずし、内部を本のように開いた状態であり、保持された表示媒体65は、バインダー62により保持されている。
【0054】
本発明においては、この表示媒体65として、上記説明のようなカラー表示を行う有機ELによるディスプレイと、モノクロ表示を行う液晶ディスプレイと、電気泳動粒子を利用したディスプレイ、さらに古典的表示装置である紙をこの順序で積層し、このような電子的な表示装置と紙の混合群をバインダー62(図10)により保持している。紙は、表示媒体であるとともに、いわゆるノートとしての使い方もできるので、表示媒体ならびに書き込み媒体ということもできる。なお、表示媒体65は先のような積層順序で積層するのが一般的であるが、このような積層順序に限られるものではなく、適宜任意の順序に変更することができる。
【0055】
図10は、本発明の積層型表示および書き込み装置に適用されるバインダーを示す斜視図であり、図11は、本発明の積層型表示および書き込み装置に適用される各種表示媒体ならびに紙の概念を示す斜視図である。本発明の積層型表示および書き込み装置は、表示媒体65として、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、そして紙を有しているものであるが、これらの表示媒体ならびに書き込み媒体には、複数個の穴66を設け、バインダー62のピン64によって嵌合されている。そしてこのような電子的な表示媒体と紙の混合群は、本のようにめくることができるので、所望の表示媒体を必要に応じて自由に使用することができる。
【0056】
なお、このバインダー62は、図10に示すように、回転部63を軸とし、バインダー留め部62cとバインダー留め部62dの着脱を行うことにより、バインダー62aとバインダー62bに図の矢印方向に回転分割でき、ピン64も分割され、表示媒体(あるいは紙)65を着脱可能としている。
すなわち、紙などは筆記によりたまったものを新たな紙に交換することができる。また紙に限らず、上記電子的な表示媒体も、故障等が生じた場合に交換することも簡単にできるようになっている。
【0057】
次に、本発明の他の特徴について説明する。
前述のように、本発明は、電子的な表示媒体と紙の混合群よりなる積層型表示および書き込み装置であるが、このような電子的な表示媒体に電力を供給する構成について説明する。
【0058】
本発明の積層型表示および書き込み装置は、本来の趣旨(表示機能あるいは書き込み機能)からいえば、表示媒体65を上記のように積層したものをバインダー62によって保持すれば一応機能する。しかしながら、本発明では図9に示すように、内容物である表示媒体65をバインダー62によって保持するとともに、外側カバー60によって覆っている。これは高価な電子的な表示媒体である内容物を保護するためのものであるが、本発明においては、この外側カバー60に内容物を保護する以上の機能を持たせている。すなわち、電子的な表示媒体に電力供給手段としての機能である。
具体的には本発明においては、外側カバー60を全体を1枚のシート状構成としたバッテリーとしている。より具体的には、ポリマー電解質電池が好適に用いることができる。
【0059】
以下、その構造の1例について図12から図14を用いて説明する。
図12において、70はゲル状ポリマー電解質保持正極ユニットで、72はゲル状ポリマー電解質保持負極ユニットである。上記ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70は、図13に示すように、正極75を袋状の支持体77に収容し、正極75と支持体77とを一体化した後、ゲル化成分含有電解液を含浸させ、その状態で紫外線を照射してモノマー成分を重合するとともに電解液をゲル化してゲル状ポリマー電解質76にすることにより構成されたものである。ただし、この図13はゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70を模式的に示すもので、ゲル状ポリマー電解質76が支持体77の周囲に形成されているかのように図示されているが、実際には、正極ユニットへのゲル化成分含有電解液の含浸時に上記ゲル化成分含有電解液が多孔質の不織布で構成される支持体の内部に侵入し、さらに正極の内部の空孔部分にも侵入し、そこで重合とゲル化が行われてゲル状ポリマー電解質になっている。しかし、その部分のゲル状ポリマー電解質は図示しがたいので、この図13においては図示していない。
【0060】
また、ゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット72は、図14に示すように、負極78を袋状の支持体77に収容し、負極78と支持体77とを一体化した後、ゲル化成分含有電解液を含浸させ、モノマー成分を重合するとともにゲル化してゲル状ポリマー電解質76とすることによって構成されたものであり、このゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット72におけるゲル状ポリマー電解質76の形成態様も上記ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70に関連して説明した場合と同様である。
【0061】
そして、図12において、74は上記ラミネートフィルムからなる外装体であり、この外装体74で上記ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70とゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット72とを積層して構成したユニットセルを外装しており、上記ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット70の正極75のリード部と正極端子71とは溶接によって接続され、ゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット72の負極のリード部と負極端子73とは溶接によって接続され、正極端子71の自由端側と負極端子73の自由端側が外装体74の外部に引き出されて電池が構成されている。
【実施例1】
【0062】
以下、具体的な実施例を説明する。
この実施例では、正極、負極ともあらかじめ支持体となる不織布で包んで電極と支持体とを一体化しておき、そのリード部に熱剥離シートを貼着してから、そのそれぞれにゲル化成分含有電解液を含浸させ、ゲル化してゲル状ポリマー電解質にする。まず、電極と支持体とを一体化して電極ユニット(つまり、電極と支持体との一体化物)とする工程から説明する。
【0063】
正極ユニットの作製:支持体としては、厚さ30μm、坪量12g/m2のポリブチレンテレフタレート不織布〔NKK社製、MB1230(商品名)〕を用い、これを200mm×320mmに切断した。
【0064】
上記正極のリード部に熱剥離シート〔日東電工(株)製のリバアルファ(商品名)〕を貼着した後、この正極を上記ポリブチレンテレフタレート不織布の長さ方向の中央部より左側の部分に載置し、右側の部分を折り返して正極を覆った後、その幅方向の両側部を熱融着器(商品名:ポリシーラー、富士インパルス(株)製)でシールして支持体としてのポリブチレンテレフタレート不織布を袋状にし、両者を密接させて正極と支持体とを一体化して正極ユニットとした。
【0065】
負極ユニットの作製:上記負極のリード部に正極の場合と同様の熱剥離シートを貼着した後、この負極を正極の場合と同様の袋状のポリブチレンテレフタレート不織布に収容し、両者を密接させて負極と支持体とを一体化して負極ユニットとした。
【0066】
上記正極ユニットおよび負極ユニットをそれぞれ前記ゲル化成分含有電解液に減圧下で1分間浸漬して正極ユニットおよび負極ユニットにゲル化成分含有電解液を含浸させた後、それぞれをポリエチレン製の袋に入れ、密閉した。
【0067】
つぎに、上記電極ユニット入りのポリエチレン製袋の両面から、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置を用いて、紫外線を1.2W/cm2の照度で8秒間照射し、電解液中のモノマー成分を重合させるとともに、電解液をゲル化してゲル状ポリマー電解質にした。
【0068】
上記のように、ゲル化してゲル状ポリマー電解質を保持させた正極ユニットおよび負極ユニットを袋から取り出し、そのリード部に140℃〜160℃の熱風を吹きつけることによって熱剥離シートをリード部から剥がした後、上記のゲル状ポリマー電解質保持正極ユニットとゲル状ポリマー電解質保持負極ユニットとを積層してユニットセルとし、それをポリエステルフィルム−アルミニウムフィルム−変性ポリオレフィンフィルムの三層構造のラミネートフィルムからなる外装体で外装して密閉することによりポリマー電解質電池を作製した。
【0069】
このように、ポリマー電解質電池では、電解質をシート状にすることができ、それによって、例えばA5版〜A3版などの大面積でしかも薄形の電池の作製が可能になる。このようなポリマー電解質を用いた電池は、耐漏液性を含めた安全性、貯蔵性が優れている。このポリマー電解質電池は、通常、アルミニウムフィルムを芯材にしたラミネートフィルムを外装体に用い、薄いシート状の電極とシート状のポリマー電解質層とを積層したユニットセルを上記外装体で外装して密閉することによって、薄形電池に仕上げられる。さらに薄く、フレキシブルなものとすることができるので、機器の形状に合わせた電池を設計できる。よって、本発明のような電子的な表示媒体を積層し、ブック状にしたものの外側カバー60として好適に適用でき、カバーと電力供給を兼ね備えた構成とすることができる。
【0070】
以上の説明より明らかなように、本発明では、有機ELを表示媒体としたカラーディスプレイと液晶を表示媒体としたモノクロディスプレイと電気泳動粒子を表示媒体としたディスプレイと紙とを積層してなるディスプレイと紙の混合群によって構成される。そしてそれぞれ、カラー表示を必要とする場合、モノクロ表示で充分な場合、動画表示を必要とする場合、静止画表示で充分な場合、さらには、書き込みを必要とする場合といった用途に応じた表示手段あるいは書き込みならびにその書き込み後の情報の表示手段としてそれぞれの特性に応じて効果的に活用できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に適用される有機EL素子の断面図である。
【図2】本発明に適用されるフルカラー有機EL素子の断面図である。
【図3】本発明に適用される反射型液晶表示素子の概略構成を示す断面図である。
【図4】図3に示す反射型液晶表示素子に適用される表示用光学システムの一例を示す説明図である。
【図5】本発明に適用される電気泳動ディスプレイの断面図である。
【図6】本発明に適用される電気泳動ディスプレイの電極構成を示す部分波断斜視図である。
【図7】本発明に適用される電気泳動ディスプレイで単一のタイプまたは色の粒子を含む電気泳動マイクロカプセルによるディスプレイ表示の動作原理を示す図である。
【図8】本発明に適用される電気泳動ディスプレイで複数のタイプまたは色の粒子を含む電気泳動マイクロカプセルによるディスプレイ表示の動作原理を示す図である。
【図9】本発明の積層型表示および書き込み装置を示す図である。
【図10】本発明の積層型表示および書き込み装置に適用されるバインダーを示す斜視図である。
【図11】本発明の積層型表示および書き込み装置に適用される各種表示媒体ならびに紙の概念を示す斜視図である。
【図12】本発明に適用されるポリマー電解質電池を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明に適用されるポリマー電解質電池のゲル状ポリマー電解質保持正極ユニットを模式的に示す断面図である。
【図14】本発明に適用されるポリマー電解質電池のゲル状ポリマー電解質保持負極ユニットを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…基板、2…第1電極、3…電荷輸送性着色層、4…発光層、5…第2電極、6…赤色電荷輸送性着色層、7…緑色電荷輸送性着色層、8…青色電荷輸送性着色層、10…信号電極側基板、11…透光性基板、12…反射層(光反射層)、13…光散乱層(透光性樹脂層)、14…光散乱粒子、15…信号電極(液晶駆動用電極)、16…液晶配向膜、17…液晶材料、18…スペーサー、19…シール樹脂層、20…走査電極側基板、21…透光性基板、22…走査電極、23…液晶配向膜、27…偏光位相差板、30…液晶表示素子(反射型液晶表示素子)、31…反射用光源、40…基板、41…電気光学ディスプレイ、42…電極、44…非線形バックプレーン、46…電極、47…マイクロカプセル、48…レーン、49…電極、50…レーン、51…着色粒子、52…染料添加懸濁流体、53…懸濁流体、54…電荷を有する着色粒子、55…非電荷粒子、56…別の色にした粒子、60…外側カバー、61…カバー留め具、62(62a、62b)…バインダー、62c…バインダー留め部c、62d…バインダー留め部d、63…回転部、64…ピン、65…表示媒体、66…穴、70…ゲル状ポリマー電解質保持正極ユニット、71…正極端子、72…ゲル状ポリマー電解質保持負極ユニット、73…負極端子、74…外装体、75…正極、76…ゲル状ポリマー電解質、77…支持体、78…負極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ELを表示媒体としたカラーディスプレイと液晶を表示媒体としたモノクロディスプレイと電気泳動粒子を表示媒体としたディスプレイと紙とを積層してなるディスプレイと紙の混合群と、該混合群の外側に配され、全体を1枚のシート状構成としたバッテリー兼カバー部材とからなることを特徴とする積層型表示および書き込み装置。
【請求項2】
積層型表示および書き込み装置は、前記混合群の各ディスプレイならびに紙を保持する複数個のピン状部材を有し、前記各ディスプレイならびに紙は、それぞれ前記ピン状部材に対応して嵌合させるための複数個の穴をそれぞれ有するとともに、前記各ディスプレイならびに紙は、前記バッテリー兼カバー部材に対して前記ピン状部材を介して脱着可能であることを特徴とする請求項1に記載の積層型表示および書き込み装置。
【請求項1】
有機ELを表示媒体としたカラーディスプレイと液晶を表示媒体としたモノクロディスプレイと電気泳動粒子を表示媒体としたディスプレイと紙とを積層してなるディスプレイと紙の混合群と、該混合群の外側に配され、全体を1枚のシート状構成としたバッテリー兼カバー部材とからなることを特徴とする積層型表示および書き込み装置。
【請求項2】
積層型表示および書き込み装置は、前記混合群の各ディスプレイならびに紙を保持する複数個のピン状部材を有し、前記各ディスプレイならびに紙は、それぞれ前記ピン状部材に対応して嵌合させるための複数個の穴をそれぞれ有するとともに、前記各ディスプレイならびに紙は、前記バッテリー兼カバー部材に対して前記ピン状部材を介して脱着可能であることを特徴とする請求項1に記載の積層型表示および書き込み装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−47408(P2006−47408A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224613(P2004−224613)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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