説明

積層基板

【課題】搭載面積を制限された立体回路基板を用いながら、搭載面積を稼ぎ高密度実装とする。
【解決手段】立体回路基板11,21,31を複数積層させてなる積層モジュール1であって、立体回路基板11,21,31は、積層時に圧接され、積層する前記立体回路基板間の電気的な接続を確保する凸形状の第1の電極部位である凸部を有し、第1の電極部位である凸部周囲に充填させた接着剤にて各立体回路基板間を接着させることで実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体回路基板に関し、複数の立体回路基板を積層させた積層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、機器内の組立合理化、省スペース化が要求されている。このような要求に伴い、従来のガラスエポキシプリント基板に代表されるような平面的な形のプリント配線基板では対応しきれない電子機器も増加傾向にある。これに対応する手法として、射出成形品の表面に立体的に直接電気回路を形成する射出成型回路部品(MID:Molded Interconnect Device)技術が考案されている。具体的には、射出成形された基板の表面に立体的に、微細な電気回路を形成する微細複合加工技術(MIPTEC:Microscopic Integrated Processing Technology)が考案、開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
微細複合加工技術は、射出成形された基板上に電気回路や機械的・電気的機能を組み込んだ部品を製造する技術(射出成形回路部品の製造技術)であり、特に、レーザを用いた加工により、極めて微細な3次元の回路形成が可能となり、基板上に形成するパターン変更などの自由度を高めることができる。
【特許文献1】特開平7−66533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した微細複合加工技術により形成される回路基板は、基板形状の自由度が極めて高いため、回路基板を搭載する製品の小型化を促進するとともに、製品に応じた所望の形状とすることが容易である。しかしながら、製品によっては、例えば、体内中に投与して内視鏡のように人体を内部から撮影することができるカプセルカメラなどは、長手方向に垂直となるように基板を複数配置させることで電子部品などの搭載面積を稼ぎ高密度配置を実現する必要がある。このような場合、微細複合加工技術を用いたとしても1つの回路基板だけで対応することができない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、搭載面積を制限された立体回路基板を用いながら、搭載面積を稼ぎ高密度実装を可能とする積層基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層基板は、立体回路基板を複数積層させてなる積層基板であって、前記立体回路基板は、積層時に圧接され、積層する前記立体回路基板間の電気的な接続を確保する凸形状の第1の電極部位を有し、前記第1の電極部位周囲に充填させた接着剤にて前記立体回路基板間を接着させることで、上述の課題を解決する。
【0007】
また、本発明の積層基板は、前記第1の電極部位を有する立体回路基板と積層される他の立体回路基板の前記第1の電極部位に対向する位置に凹形状の第2の電極部位を形成することで、上述の課題を解決する。
【0008】
また、本発明の積層基板は、前記立体回路基板の形状を同一形状とすることで、上述の課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子回路などの搭載面積を制限された立体回路基板を用いながら、デバイスの形状に応じて、立体回路基板同士を積層させることで搭載面積を稼ぎ高密度実装を実現できる。積層時には、各立体回路基板に形成された凸形状の第1の電極部位が圧接され積層する立体回路基板間の電気的な接続を確保することを可能とする。
【0010】
また、凸形状の第1の電極部位の周囲に充填させた接着剤にて立体回路基板間を接着させることで、組み立て時に別部材を必要としない。さらに、立体回路基板間は、接着剤による接着であることから接着剤の硬化温度だけに依存するため、立体回路基板上に搭載した電子回路などを必要以上に高温下にさらす危険性を回避することを可能とする。
【0011】
また、立体回路基板に形成した凹形状の第2の電極部位により、立体回路基板同士を積層する際に、容易に位置決めを行うことを可能とする。
【0012】
さらに、各立体回路基板の形状を同一形状とすることで、量産化を容易なものとし低コストで提供することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態として積層モジュール1について説明をする。図1に示すように、積層モジュール1は、立体回路基板モジュール10,20,30を積層することで形成される。各立体回路基板モジュール同士は、接着剤層CTを介して接着されている。
【0015】
図2に示すように、立体回路基板モジュール10は、ボタン型の電池である電池BTを挿入し、その電力を取り出すことができるようになっている。立体回路基板モジュール10は、立体回路基板モジュール同士を積層させた際に他の立体回路基板モジュールに対して電力を供給する電源として機能する。
【0016】
図3に示すように、立体回路基板モジュール10は、電池BTを挿入して両端から組み付けることができるような空間SPが形成された円筒形状の立体回路基板11からなる。立体回路基板11は、挿入した電池BTを両端から挟み込むように組み付ける端部11A,11Bを有し、この端部11A,11Bを支持する支持部11Cを有している。
【0017】
端部11Aには、空間SP側と対向する面上に凹部12Aが形成されている。この凹部12Aは、立体回路基板モジュール10と他の立体回路基板モジュールとを接続させる際の位置決め用として設けられている。凹部12Aの一部には、導体パターン13,14が形成されており、他の立体回路基板モジュールを接続させた際の電気的接続を確保している。
【0018】
図1に示すように、立体回路基板モジュール20,30は、全て同一の形状の立体回路基板からなる。例えば、IC(Integrated Circuit)といった電子回路を搭載する立体回路基板モジュール20,30は、それぞれ図4、図5に示すような立体回路基板21,31からなる。
【0019】
図4(a),(b)は、それぞれ、立体回路基板21を斜め上方、斜め下方から視認した様子を示した図である。図4(a),(b)に示すように、立体回路基板21は、上方、下方中央部に空間SPが形成された薄い円筒形状をしている。立体回路基板21の上面部21Aには、円筒形状の円周に沿うようにして、積層時の位置決め用に用いられる凹部22(ここでは8個)が形成されている。また、立体回路基板21の下面部21Bには、円筒形状の円周に沿うようにして凸部24(ここでは8個)が形成されている。凹部22、凸部24には、それぞれ導体パターン23、25が形成されており、積層時に凸部24が他の立体回路基板の位置決め用の凹部の位置において圧接されることで電気的な接続が確保される。
【0020】
図5(a),(b)は、それぞれ、立体回路基板31を斜め上方、斜め下方から視認した様子を示した図である。図5(a),(b)に示すように、立体回路基板31は、上方、下方中央部に空間SPが形成された薄い円筒形状をしている。立体回路基板31の上面部31Aには、円筒形状の円周に沿うようにして、積層時の位置決め用に用いられる凹部32(ここでは8個)が形成されている。また、立体回路基板31の下面部31Bには、円筒形状の円周に沿うようにして凸部34(ここでは8個)が形成されている。凹部32、凸部34には、それぞれ導体パターン33、35が形成されており、積層時に凸部34が他の立体回路基板の位置決め用の凹部の位置において圧接されることで電気的な接続が確保される。
【0021】
上述したような立体回路基板11,21,31は、絶縁性基材を目的の形状に射出成型、薄膜形成、レーザビームによる必要な導体パターンの輪郭部の薄膜除去、必要な導体パターン部の電気銅メッキ、ソフトエッチングによる余分な薄膜部の除去、ニッケル、金の順で電気メッキするなどして回路形成をすることにより形成される。なお、立体回路基板11,21,31のように3次元立体形状となる基板の製造方法については、特開平7−66533に記載されているため詳細な説明を省略する。
【0022】
図6、図7に、立体回路基板モジュール20,30に、それぞれ電子回路としてIC5,6、IC7を搭載した様子を示す。
【0023】
図6(a),(b)に示すように立体回路基板モジュール20の立体回路基板21の空間SPが形成された位置には上面側にIC5がワイヤ5aにて導体パターン23と電気的に接続されるよように搭載され、下面側にIC6がワイヤ6aにて導体パターン25と電気的に接続されて搭載される。
【0024】
図7に示すように、立体回路基板モジュール30の立体回路基板31の空間SPが形成された位置には上面側にIC7がワイヤ7aにて導体パターン33と電気的に接続されて搭載される。
【0025】
立体回路基板モジュール20,30の同一形状とされた各立体回路基板は、それぞれに形成された凸部を、他の立体回路基板の凹部が形成された位置にて位置決めされて積層されることになる。例えば、図8(a)に示すように、立体回路基板21は、下面部21Bに形成された凸部24を、立体回路基板モジュール30の立体回路基板31の上面部31Aに形成された位置決め用の凹部32に合わせるように積層される。立体回路基板21の凸部24(導体パターン23の厚みを考慮)の高さd1は、立体回路基板31の凹部32(導体パターン33の厚みを考慮)の深さd2と、d1>d2との関係にあるため、積層時には図8(b)に示すように、導体パターン23を含む凸部24が圧接されるが、下面部21Bと上面部31Aとの間には空間が形成される。この形成される空間に接着剤を充填させ、つまり、導体パターン23を含む凸部24の周囲に接着剤を充填させることで形成された接着剤層CTを介して立体回路基板21,31同士を接着させて、立体回路基板モジュール20,30を積層させる。
【0026】
図示しないが、立体回路基板11と、立体回路基板31との接続も全く同様にして接着剤層を介して接着させることで、立体回路基板モジュール10,30を積層させる。
【0027】
このように、積層モジュール1は、電子回路などの搭載面積を制限された立体回路基板を用いながら、デバイスの形状に応じて、立体回路基板同士を積層させることで搭載面積を稼ぎ高密度実装を実現できる。積層時には、各立体回路基板に形成された電極部位となる凸部が圧接され積層する立体回路基板間の電気的な接続を確保することができる。また、電極部位となる凸部の周囲に充填させた接着剤にて立体回路基板間を接着させることで、組み立て時に別部材を必要としない。さらに、立体回路基板間は、接着剤による接着であることから接着剤の硬化温度だけに依存するため、立体回路基板上に搭載した電子回路などを必要以上に高温下にさらす危険性を回避することができる。
【0028】
また、立体回路基板に形成した凹部により、立体回路基板同士を積層する際に、容易に位置決めを行うことができる。
【0029】
さらに、各立体回路基板の形状を同一形状とすることで、量産化を容易なものとし低コストで提供することができる。
【0030】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態として示す積層モジュールについて説明するための図である。
【図2】立体回路基板モジュールの一例を示した図である。
【図3】前記立体回路基板モジュールの立体回路基板について説明するための図である。
【図4】積層用の立体回路基板モジュールの立体回路基板を示した図である。
【図5】同じく積層用の立体回路基板モジュールの立体回路基板を示した図である。
【図6】電子回路を搭載させた立体回路基板モジュールを示した図である。
【図7】同じく電子回路を搭載させた立体回路基板モジュールを示した図である。
【図8】積層する際の立体回路基板同士の接着手法について説明するための図である。
【符号の説明】
【0032】
1 積層モジュール
10 立体回路基板モジュール
11 立体回路基板
12A 凹部
13 導体パターン
14 導体パターン
20 立体回路基板モジュール
21 立体回路基板
22 凹部
23 導体パターン
24 凸部
25 導体パターン
30 立体回路基板モジュール
31 立体回路基板
32 凹部
33 導体パターン
34 凸部
CT 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体回路基板を複数積層させてなる積層基板であって、
前記立体回路基板は、積層時に圧接され、積層する前記立体回路基板間の電気的な接続を確保する凸形状の第1の電極部位を有し、
前記第1の電極部位周囲に充填させた接着剤にて前記立体回路基板間を接着させること
を特徴とする積層基板。
【請求項2】
前記第1の電極部位を有する立体回路基板と積層される他の立体回路基板の前記第1の電極部位に対向する位置に凹形状の第2の電極部位を形成すること
を特徴とする請求項1記載の積層基板。
【請求項3】
前記立体回路基板の形状を同一形状とすること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の積層基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−159933(P2008−159933A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348402(P2006−348402)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】